説明

感放射線性樹脂組成物、硬化膜及びその形成方法

【課題】スリット塗布法を採用した場合であっても、塗膜に微小な凹凸からなるムラを発生させることなく、高速塗布が可能であり組成物溶液の省液化を可能にする感放射線性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、(C)感放射線性重合開始剤及び(D)下記式(1)で示される溶剤を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物によって達成される。


(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4又は5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、液晶表示素子のスペーサー又は保護膜としての硬化膜及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子においては、二枚の基板間の間隔(セルギャップ)を一定に保つために、従来、所定の粒径を有するガラスビーズ、プラスチックビーズなどのスペーサー粒子が使用されている。これらスペーサー粒子は、ガラス基板などの透明基板上にランダムに散布されるため、画素形成領域にスペーサー粒子が存在すると、スペーサー粒子の写り込み現象を生じたり、入射光が散乱作用を受けて液晶パネルのコントラストが低下するという問題がある。そこで、これらの問題を解決するために、感放射線性樹脂組成物を用いるフォトリソグラフィーによって画素領域以外の領域にスペーサーを形成する方法が採用されるようになっている(特許文献1)。
【0003】
このような液晶表示素子は、基板上に形成されたカラーフィルターの上にスペーサーが配置され、そしてその上に対向電極を有する対向基板が配置され、セルギャップに液晶分子が配置される構造を有する。従って、基板の全領域においてセルギャップを一定に保つためには、スペーサーの高度の膜厚均一性が必要である。特に近年の液晶表示素子には、従来にも増して画質の高精細化及び高速の動画に対する追随性(高速応答性)が求められているため、膜厚均一性に対する要求はますます高度化している。
【0004】
一方、液晶表示素子の製造において、生産性向上、大型画面への対応との観点から、ガラス基板サイズの大型化が進行している。ガラス基板サイズは、300mm×400mmの第一世代、370mm×470mmの第二世代、620mm×750mmの第三世代、960mm×1,100mmの第四世代を経て、1,100mm×1,300mmの第五世代が主流となってきている。さらに、1,500mm×1,850mmの第六世代、1,850mm×2,100mmの第七世代、2,200mm×2,600mmの第八世代と基板サイズは今後さらに大型化が進行している。
【0005】
第二世代までの小型の基板サイズの場合、感放射線樹脂組成物溶液はスピン塗布法により塗布されるが、この方法では、塗布に多量の感放射線樹脂組成物溶液を必要とし、さらに大型基板の塗布には対応できない。また、基板サイズが960mm×1,100mm以下の場合において、スリット&スピン法で塗布が行われているが、第五世代以降の基板サイズへの対応は難しい。
【0006】
第五世代以降の基板サイズへの塗布方式は、組成物をスリット状のノズルから吐出して塗布する、いわゆるスリット塗布法が適用されている(特許文献2及び3)。このスリット塗布法は、スピン塗布法と比較して塗布に要する組成物の量が低減できるメリットもあり、液晶表示素子製造のコスト削減にも資する。しかしながら、かかるスリット塗布法では、基板を真空吸着し、さらに基板の数点を微小なピンで支持した状態で、塗布ノズルを一定方向に掃引して塗膜の形成を行うため、塗膜に真空吸着のための穴に起因する「ステージ真空吸着ムラ」と呼ばれるムラ、支持ピンに起因する「支持ピンムラ」と呼ばれるムラ、塗布ノズルの掃引方向に筋状に現れる「縦筋ムラ」と呼ばれるムラ等が発生する場合があり、上記の如き高度の平坦性を実現する支障となっている。さらに、液晶表示素子製造のコストのさらなる削減の観点から、塗布に要する組成物の液量の少量化(省液化)が強く要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−261761号公報
【特許文献2】特開2006−184841号公報
【特許文献3】特開2001−25645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、塗布方法としてスリット塗布法を採用した場合であっても、塗膜に微小な凹凸からなるムラを発生させることなく、高速塗布が可能であり、省液化が可能な感放射線性樹脂組成物を提供することにある。本発明のさらなる目的は、液晶表示素子のスペーサー又は保護膜として、従来から要求されているラビング耐性と、高い回復率(変形後の状態から変形前の状態へ戻る割合をいう。変形後の状態から変形前の状態に戻った場合を100%とする。以下同じ。)と柔軟性とを併せ持つ圧縮性能を維持しつつ、特に高度の膜厚均一性を有する硬化膜及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(A)アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性不飽和化合物、
(C)感放射線性重合開始剤、及び
(D)下記式(1)で示される溶剤
を含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4又は5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【0010】
当該感放射線性樹脂組成物は、各成分を溶解させる溶剤として上記式(1)で表される特定の溶剤(以下、「(D)溶剤」ともいう。)を用いていることから、たとえ塗布ムラが生じてもそれを自発的に均し得る程度に低い粘度であって、かつ膜厚均一性を維持するのに充分な粘度を有するのと同時に、(D)溶剤が適度な蒸気圧を発揮することができ、その結果、基板等への塗布法としてスリット法を採用したとしても、塗布ムラを防止しつつ高速塗布による均一な膜厚での塗膜形成が可能となる。また、当該感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)重合性不飽和化合物とを併用しており、これらが露光時において(C)感放射線性重合開始剤を端緒とした重合反応を生じることから、得られる硬化膜では一般的に要求されるラビング耐性に加え、外部応力に対する柔軟性と高回復率とを併せ持つ圧縮性能を発揮することができる。
【0011】
上記R及びRが、同一であることが好ましい。このような構造に対称性を有する溶剤を採用することにより、膜厚均一性をより向上させることができる。
【0012】
当該感放射線性樹脂組成物は、(E−1)ジエチレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤、ケトン系溶剤及び脂肪酸アルキルエステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤(以下、「(E−1)溶剤」ともいう。)をさらに含有することが好ましい。(D)溶剤と(E−1)溶剤との併用により、高速塗布性及び膜厚均一性に要求される粘度と蒸気圧とを高度にバランスすることができ、その結果、膜厚均一性と共に高速塗布性をさらに向上させることができる。
【0013】
(E−1)溶剤が、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3−メトキシプロピオン酸メチル及び3−エトキシプロピオン酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。(E−1)溶剤として具体的に上記溶剤を採用することにより、当該感放射線性樹脂組成物の粘度調整が容易となり、高速塗布によっても塗布ムラのない塗膜を得ることができる。
【0014】
当該感放射線性樹脂組成物は、上記(E−1)溶剤に代えて、又は(E−1)溶剤と共に、(E−2)アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤及びプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤(以下、「(E−2)溶剤」ともいう。)を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物が(E−2)溶剤を含むことで、高速塗布性及び膜厚均一性に要求される粘度と蒸気圧とを高度にバランスすることができ、その結果、膜厚均一性と共に高速塗布性をさらに向上させることができる。
【0015】
(E−2)溶剤が、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。(E−2)溶剤として具体的に上記溶剤を採用することにより、(E−1)溶剤同様、当該感放射線性樹脂組成物の粘度調整が容易となり、高速塗布によっても塗布ムラのない塗膜を得ることができる。
【0016】
(D)溶剤の含有量が、全溶剤量に対して5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。(D)溶剤の含有量を上記範囲とすることで、塗布ムラの発生が高レベルで防止され、膜厚均一性をより高めることができる。
【0017】
(A)アルカリ可溶性樹脂が、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有することが好ましい。(A)アルカリ可溶性樹脂がこのような基を有することにより、得られる硬化膜の柔軟性は維持しつつ、高ラビング耐性及び高回復率を硬化膜に与えることができる。
【0018】
当該感放射線性樹脂組成物は、(C)感放射線性重合開始剤としてO−アシルオキシム化合物を含むことが好ましい。このような特定の感放射線性重合開始剤を採用することにより、当該感放射線性樹脂組成物の放射線感度を向上させることができ、所定の硬化膜を効率良く製造することができる。
【0019】
当該感放射線性樹脂組成物は、スリット塗布法を採用した場合でも高速かつ均一な塗布による塗膜形成が可能であり、得られる硬化膜が膜厚均一性、耐ラビング性、高回復率及び柔軟性に優れることから、液晶表示素子のスペーサー又は保護膜としての硬化膜を形成するために好適に用いることができる。
【0020】
本発明の硬化膜は、高レベルでの平坦性、耐ラビング性、回復率及び柔軟性を発揮させるべく、当該感放射線性樹脂組成物から好適に形成することができる。
【0021】
本発明の硬化膜の形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に露光する工程、
(3)露光後の塗膜を現像する工程、及び
(4)現像後の塗膜を加熱する工程
を有する。
【0022】
本発明の硬化膜の形成方法により、当該硬化膜を効率良く形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の感放射線性樹脂組成物によれば、塗布方法としてスリット塗布法を採用した場合であっても、塗膜に微小な凹凸からなるムラを発生させることなく、高速塗布が可能であり、省液化をも達成することができる。また、本発明の硬化膜は、液晶表示素子のスペーサー又は保護膜として、従来から要求されているラビング耐性と、高回復率と柔軟性とを併せ持つ圧縮性能を維持しつつ、特に高度の膜厚均一性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、(C)感放射線性重合開始剤、及び(D)溶剤を含有すると共に、好適な溶剤として(E−1)溶剤及び/又は(E−2)溶剤を含んでいてもよく、さらに界面活性剤等の任意の添加剤等を含んでいてもよい。以下、各成分について説明する。
【0025】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(A)アルカリ可溶性樹脂は、硬化膜形成過程での現像工程において用いられる現像液、好ましくはアルカリ現像液に対する可溶性を有する限り、特に限定されるものではない。このような(A)アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基及びカルボン酸無水物基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有することが好ましく、得られる硬化膜の柔軟性、耐ラビング性及び回復率の観点から、さらにエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有することが好ましい。
【0026】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、上述のようにアルカリ現像液に対する溶解性を示す限り特に限定されないものの、(a1)不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「化合物(a1)」ともいう。)と、(a2)(a1)以外の不飽和化合物(以下、「化合物(a2)」ともいう。)との共重合体が好ましい。(A)成分の調製にこのような単量体を用いることにより、(A)成分にアルカリ可溶性を付与することができると共に、他の要求される特性をも満足する(A)アルカリ可溶性樹脂を提供することができる。
【0027】
このような(A)アルカリ可溶性樹脂の好ましい例として、
(1)化合物(a1)及び1分子中に少なくとも1つの水酸基を有する不飽和化合物(以下、「化合物(a2−1)」ともいう。)を含む単量体の共重合体(以下、「共重合体〔α〕」ともいう。)と、不飽和イソシアネート化合物とを反応させて得られる重合体(以下、「重合体〔A〕」ともいう。)、
(2)化合物(a1)及びエポキシ基を有する不飽和化合物(以下、「化合物(a2−2)」ともいう。)を含む単量体の共重合体(以下、「共重合体〔β〕」ともいう。)、
(3)化合物(a1)と、化合物(a1)、化合物(a2−1)及び化合物(a2−2)以外の不飽和化合物(以下、「化合物(a2−3)」ともいう。)とを含む単量体の共重合体(以下、「共重合体〔γ〕」ともいう。)等を挙げることができる。
なお、当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(a1)、化合物(a2−1)及び化合物(a2−2)を含む単量体の共重合体又はこの共重合体と不飽和イソシアネートとを反応させて得られる重合体を含んでいてもよい。
【0028】
上記共重合体〔α〕を製造するに際して、化合物(a2−3)を共存させ、共重合体〔α〕を化合物(a1)、化合物(a2−1)及び化合物(a2−3)の共重合体としてもよく、上記共重合体〔β〕を製造するに際して、化合物(a1)及び化合物(a2−2)のほかに化合物(a2−3)を共存させ、共重合体〔β〕を化合物(a1)、化合物(a2−2)及び化合物(a2−3)の共重合体としてもよい。
【0029】
共重合体〔α〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕を製造するに際して用いられる化合物(a1)としては、例えば不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及び不飽和ジカルボン酸の無水物等を挙げることができる。
【0030】
上記不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等;
上記不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等;
上記不飽和ジカルボン酸の無水物としては、上記した不飽和ジカルボン酸の無水物等
をそれぞれ挙げることができる。
これらのうち、共重合反応性、得られる共重合体の現像液に対する溶解性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸又は無水マレイン酸が好ましい。化合物(a1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
共重合体〔α〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕において、化合物(a1)に由来する繰り返し単位の含有率は、単量体仕込み比で、好ましくは5〜60質量%であり、さらに好ましくは7〜50質量%であり、特に好ましくは8〜40質量%である。化合物(a1)に由来する繰り返し単位の含有率が上記範囲にあるとき、放射線感度、現像性及び保存安定性等の諸特性がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0032】
共重合体〔α〕の製造に用いられる化合物(a2−1)としては、例えば(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のジヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸の(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)アルキルエステル等を挙げることができる。
【0033】
上記化合物(a2−1)の具体例としては、
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル等;
(メタ)アクリル酸のジヒドロキシアルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸1,3−ジヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸3,4−ジヒドロキシブチルエステル等;
(メタ)アクリル酸の(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)アルキルエステルとして例えば(メタ)アクリル酸2−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルエステル、(メタ)アクリル酸3−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)プロピルエステル等
をそれぞれ挙げることができる。
【0034】
これらの化合物(a2−1)のうち、共重合反応性及びイソシアネート化合物との反応性の点から、アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピルエステル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピルエステル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピルエステル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピルエステル、上記の(メタ)アクリル酸(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)アルキルエステルが好ましい。
【0035】
化合物(a2−1)のうち、上記(メタ)アクリル酸(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)アルキルエステルやメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルは、現像性の向上の点や、得られるスペーサーの圧縮性能向上の観点から特に好ましい。メタクリル酸2−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルエステルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルの混合物の市販品としては、それぞれ、PLACCEL FM1D、FM2D(商品名、ダイセル化学工業(株)製)等を挙げることができる。共重合体〔α〕において、上記の如き化合物(a2−1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
共重合体〔α〕における化合物(a2−1)に由来する繰り返し単位の含有率は、単量体仕込み比で、好ましくは1〜50質量%であり、さらに好ましくは3〜40質量%であり、特に好ましくは5〜30質量%である。化合物(a2−1)に由来する繰り返し単位の含有率が上記範囲にあるとき、不飽和イソシアネート化合物との反応により得られる共重合体の安定性が良好となり、その結果、得られる感放射線性樹脂組成物の保存安定性が良好となる。
【0037】
共重合体〔β〕の製造に用いられる化合物(a2−2)におけるエポキシ基としては、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造を有する。)、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造を有する。)等を挙げることができる。
【0038】
オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、α−アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物等;オキセタニル基を有する不飽和化合物としては、例えばオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等をそれぞれ挙げることができる。
【0039】
これらの具体例としては、例えば
(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等;
α−アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとして、例えばα−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル等;
不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物として、例えばo−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等;
オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−エチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン等のアクリル酸エステル等をそれぞれ挙げることができる。
【0040】
これらのうち特に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン又は3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタンが、重合性の点から好ましい。共重合体〔β〕の製造において、化合物(a2−2)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
共重合体〔β〕において、化合物(a2−2)に由来する繰り返し単位の含有率は、単量体仕込み比で、好ましくは0.5〜70質量%であり、さらに好ましくは1〜60質量%であり、特に好ましくは3〜50質量%である。化合物(a2−2)に由来する繰り返し単位の含有率が上記範囲にあるとき、共重合体の耐熱性、共重合体及び感放射線性樹脂組成物の保存安定性、得られるスペーサー又は保護膜の圧縮性能がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0042】
共重合体〔γ〕の製造に際して使用され、あるいは共重合体〔α〕及び共重合体〔β〕の製造に際して任意的に使用することができる化合物(a2−3)としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、含酸素複素5員環又は含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物及びその他の不飽和化合物を挙げることができる。
【0043】
これらの具体例としては、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等;
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等;
(メタ)アクリル酸アリールエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸フェニル等;
(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸ベンジル等;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとして、例えばマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル等;
含酸素複素5員環又は含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等;
ビニル芳香族化合物として、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等;
共役ジエン化合物として、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン等;
その他の不飽和化合物として、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等をそれぞれ挙げることができる。
【0044】
これらの化合物(a2−3)のうち、共重合反応性の観点から、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、スチレン、p−メトキシスチレン、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、1,3−ブタジエン等が好ましい。共重合体〔α〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕の製造において、化合物(a2−3)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
共重合体〔α〕及び共重合体〔β〕において、化合物(a2−3)に由来する繰り返し単位の含有率は、単量体仕込み比で、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。化合物(a2−3)の繰り返し単位の含有率が上記範囲にある時、共重合体の分子量の制御が容易となり、現像性や放射線感度等がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0046】
共重合体〔α〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕は、好ましくは適当な溶媒中において、好ましくはラジカル重合開始剤の存在下で上記の如き単量体の混合物を共重合することにより製造することができる。上記重合に用いられる溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルコキシプロピオン酸アルキル、酢酸エステル等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
共重合体〔α〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定したポリスチレン換算の質量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは2,000〜100,000であり、より好ましくは5,000〜50,000である。共重合体〔α〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕のMwが2,000〜100,000であるとき、耐熱性、現像性、放射線感度等がより高いレベルでバランスされた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0049】
重合体〔A〕は、共重合体〔α〕に不飽和イソシアネート化合物を反応させることにより得ることができる。上記のようにして得られた共重合体〔α〕は、重合反応溶液のまま重合体〔A〕の製造に供してもよく、あるいは共重合体〔α〕を一旦溶液から分離したうえで重合体〔A〕の製造に供してもよい。
【0050】
上記不飽和イソシアネート化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸誘導体等を挙げることができ、その具体例として、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸2−(2−イソシアネートエトキシ)エチル等を挙げることができる。これらの市販品としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの市販品としてカレンズAOI(昭和電工(株)製)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの市販品としてカレンズMOI(昭和電工(株)製)、メタクリル酸2−(2−イソシアネートエトキシ)エチルの市販品としてカレンズMOI―EG(昭和電工(株)製)を、それぞれ挙げることができる。
【0051】
これらの不飽和イソシアネート化合物のうち、共重合体〔α〕との反応性の点から、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシブチルイソシアネート又はメタクリル酸2−(2−イソシアネートエトキシ)エチルが好ましい。重合体〔A〕の製造において、不飽和イソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
共重合体〔α〕と不飽和イソシアネート化合物との反応は、必要に応じて適当な触媒の存在下において、好ましくは重合禁止剤を含む共重合体〔α〕の溶液に、室温又は加温下で、攪拌しつつ、不飽和イソシアネート化合物を投入することによって実施することができる。上記触媒としては、例えばジラウリン酸ジ−n−ブチルすず(IV)等を;上記重合禁止剤としては、例えばp−メトキシフェノール等を、それぞれ挙げることができる。
【0053】
重合体〔A〕を製造する際の不飽和イソシアネート化合物の使用割合は、共重合体〔α〕中の化合物(a2−1)に由来する水酸基に対して、好ましくは0.1〜95モル%であり、さらに好ましくは1.0〜80モル%であり、特に好ましくは5.0〜75モル%である。不飽和イソシアネート化合物の使用割合が0.1〜95モル%のとき、共重合体〔α〕との反応性、得られるスペーサー又は保護膜の耐熱性並びに弾性特性がより向上することとなり、好ましい。
【0054】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、重合体〔A〕、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕は、これらをそれぞれ単独で使用してもよいが、重合体〔A〕及び共重合体〔β〕を併用すること、又は共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕を併用することが好ましい。重合体〔A〕及び共重合体〔β〕を併用することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の保存安定性並びに得られるスペーサーの強度及び耐熱性をさらに向上することができることとなり、好ましい。重合体〔A〕及び共重合体〔β〕を併用する場合、重合体〔A〕の使用割合としては、共重合体〔β〕100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部であり、さらに好ましくは20〜80質量部であり、特に好ましくは30〜70質量部である。重合体〔A〕の使用割合が上記範囲にあるとき、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と得られるスペーサー又は保護膜の耐熱性が高いレベルでバランスのとれた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0055】
一方、共重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕を併用することにより、感放射線性組成物の保存安定性が向上するという利点が得られることとなり、好ましい。重合体〔β〕及び共重合体〔γ〕を併用する場合、共重合体〔β〕の使用割合としては、共重合体〔γ〕100質量部に対して、好ましくは10〜150質量部であり、さらに好ましくは20〜130質量部であり、特に好ましくは30〜100質量部である。
【0056】
<(B)重合性不飽和化合物>
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(B)重合性不飽和化合物は、後述する(C)感放射線性重合開始剤の存在下において放射線を照射することにより重合する不飽和化合物である。このような重合性不飽和単量体としては特に限定されるものではないが、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが、重合性が良好であり、得られるスペーサー又は保護膜の強度が向上する点からも好ましい。
【0057】
上記単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等を挙げることができる。これらの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックスM−101、同M−111、同M−114、同M−5300(以上、
東亞合成(株)製);KAYARAD TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬(株)製);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0058】
上記2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート等を挙げることができる。これらの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックスM−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD HDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ライトアクリレート1,9−NDA(共栄社化学(株)製等を挙げることができる。
【0059】
上記3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレートのほか、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し且つ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し且つ3個、4個又は5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等を挙げることができる。
【0060】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルの市販品としては、商品名で、例えばアロニックスM−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DPEA−12(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)や、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品とし
て、ニューフロンティア R−1150(第一工業製薬(株)製)、KAYARAD DPHA−40H(日本化薬(株)製)等を挙げることができる。
【0061】
これらのうち、特に、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物
を含有する市販品等が好ましい。
上記の如き(B)重合性不飽和化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0062】
本発明の感放射線性樹脂組成物における(B)重合性不飽和単量体の使用割合は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは50〜300質量部であり、さらに好ましくは80〜250質量部である。(B)重合性不飽和単量体の使用量が上記範囲にあるとき、感放射線性樹脂組成物の感度、得られるスペーサーの耐熱性並びに弾性特性がより良好となる。
【0063】
<(C)感放射線性重合開始剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される[C]感放射線性重合開始剤は、放射線に感応して[B]重合性不飽和化合物の重合を開始しうる活性種を生じる成分である。このような[C]感放射線性重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、ベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
【0064】
上記O−アシルオキシム化合物の具体例としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。
【0065】
これらのうちで、好ましいO−アシルオキシム化合物としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)又はエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。
当該感放射線性樹脂組成物はこのようなO−アシルオキシム化合物を含有していることが好ましく、これらO−アシルオキシム化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
上記アセトフェノン化合物としては、例えば、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物を挙げることができる。α−アミノケトン化合物の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等を挙げることができる。また、α−ヒドロキシケトン化合物の具体例としては、例えば1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等をそれぞれ挙げることができる。
【0067】
これらのアセトフェノン化合物のうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン又は2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンが特に好ましい。
【0068】
上記ビイミダゾール化合物の具体例としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0069】
これらビイミダゾール化合物のうち、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール又は2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、特に2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましい。
【0070】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(C)感放射線性重合開始剤としてビイミダゾール化合物を使用する場合、ジアルキルアミノ基を有する脂肪族又は芳香族化合物(以下、「アミノ系増感剤」という。)及びチオール化合物から選択される少なくとも1種を添加することができる。
【0071】
上記アミノ系増感剤は、ビイミダゾール化合物の放射線感度を増感し、イミダゾールラジカルの発生効率を高める機能を有する化合物であり、感放射線性樹脂組成物の感度及び解像度を向上し、形成されるスペーサー又は保護膜の基板に対する密着性をより向上する目的で添加することができる。かかるアミノ系増感剤としては、例えばN−メチルジエタノールアミン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸i−アミルなどを挙げることができる。これらのアミノ系増感剤のうち、
特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。これらアミノ系増感剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0072】
アミノ系増感剤の添加量は、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。アミノ系増感剤の添加量が上記範囲にある時、感度、解像度や密着性の改善効果が得られる。
【0073】
上記チオール化合物は、イミダゾールラジカルに水素ラジカルを供与し、その結果硫黄ラジカルを有する成分を発生する機能を有する化合物である。ビイミダゾール化合物が放射線の照射を受けて開裂して生ずるイミダゾールラジカルの重合開始能は中程度であり、極めて高いものではないから、これをそのまま液晶表示素子のスペーサーの形成に用いると、スペーサーの断面形状が逆テーパ状(逆台形状)の好ましくない形状となる場合がある。しかし、ここにチオール化合物を添加することにより、イミダゾールラジカルにチオール化合物から水素ラジカルが供与される結果、イミダゾールラジカルが中性のイミダゾールに変換されるとともに、重合開始能のより高い硫黄ラジカルを有する成分が発生し、それによりスペーサーの形状を、確実に、より好ましい順テーパ状(台形状)にすることができる。かかるチオール化合物としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾールなどの芳香族チオール化合物;3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルなどの脂肪族モノチオール化合物;3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)などの2官能以上の脂肪族チオール化合物などを挙げることができる。これらのチオール化合物のうち、特にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0074】
チオール化合物の添加量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。チオール化合物の添加量が上記範囲にある時、得られるスペーサーの基材に対する密着性が向上し、形状が良好となる。
【0075】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(C)感放射線性重合開始剤としてビイミダゾール化合物を使用する場合、上記アミノ系増感剤及びチオール化合物の双方を添加することが好ましい。
【0076】
本発明における(C)感放射線性重合開始剤の使用割合としては、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部であり、より好ましくは2〜50質量部であり、さらに好ましくは5〜40質量部である。上述の範囲で(C)感放射線性重合開始剤を使用することにより、低露光量の場合でも高い硬度及び密着性を有するスペーサー又は保護膜を形成することができる。(C)感放射線性重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよく、2種以上組み合わせて用いる場合は、(C)感放射線性重合開始剤の合計量が上記範囲にあればよい。
【0077】
<(D)溶剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物は下記式(1)で示される(D)溶剤を含有する。これにより、当該感放射線性樹脂組成物は、たとえ塗膜形成の際に塗布ムラが生じてもそれを自発的に均し得る程度に低い粘度であって、かつ膜厚均一性を維持するのに充分な粘度を有するのと同時に、(D)溶剤が適度な蒸気圧を発揮することができ、その結果、基板等への塗布法としてスリット法を採用したとしても、塗布ムラを防止しつつ高速塗布による均一な膜厚での塗膜形成が可能となる。
【0078】
【化2】

【0079】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4又は5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【0080】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、ジ(n−ブチル)エーテル、ジ(イソブチル)エーテル、ジ(t−ブチル)エーテル、(n−ブチル)イソブチルエーテル、n−ブチル−t−ブチルエーテル、イソブチル−t−ブチルエーテル、ジ(n−アミル)エーテル、n−アミル−3−メチルブチルエーテル、n−アミル−2−メチルブチルエーテル、n−アミル−1−メチルブチルエーテル、n−アミル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、n―アミル―1,2−ジメチルプロピルエーテル、n−アミル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、ジ(3−メチルブチル)エーテル、3−メチルブチル−2−メチルブチルエーテル、3−メチルブチル−1−メチルブチルエーテル、3−メチルブチル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、3−メチルブチル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、3−メチルブチル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、ジ(2−メチルブチル)エーテル、2−メチルブチル−1−メチルブチルエーテル、2−メチルブチル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、2−メチルブチル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、2−メチルブチル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、ジ(1−メチルブチル)エーテル、1−メチルブチル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、1−メチルブチル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、1−メチルブチル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、ジ(2,2−ジメチルプロピル)エーテル、2,2−ジメチルプロピル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、ジ(1,2−ジメチルプロピル)エーテル、1,2−ジメチルプロピル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、ジ(1,1−ジメチルプロピル)エーテル、n−ブチル−n−アミルエーテル、n−ブチル−3−メチルブチルエーテル、n−ブチル−2−メチルブチルエーテル、n−ブチル−1−メチルブチルエーテル、n−ブチル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、n−ブチル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、n−ブチル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、イソブチル−n−アミルエーテル、イソブチル−3−メチルブチルエーテル、イソブチル−2−メチルブチルエーテル、イソブチル−1−メチルブチルエーテル、イソブチル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、イソブチル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、イソブチル−1,1−ジメチルプロピルエーテル、t−ブチル−n−アミルエーテル、t−ブチル−3−メチルブチルエーテル、t−ブチル−2−メチルブチルエーテル、t−ブチル−1−メチルブチルエーテル、t−ブチル−2,2−ジメチルプロピルエーテル、t−ブチル−1,2−ジメチルプロピルエーテル、t−ブチル−1,1−ジメチルプロピルエーテルなどがあげられる。
【0081】
これらの中でも特に、スリット塗布性向上の点から、ジ(n−ブチル)エーテル、ジ(イソブチル)エーテル、ジ(t−ブチル)エーテル、n−ブチル−イソブチルエーテル、n−ブチル−t−ブチルエーテル、イソブチル−t−ブチルエーテル、ジ(n−アミル)エーテル、n−アミル−イソアミルエーテル(n−アミル−(3−メチルブチル)エーテル)、ジイソアミルエーテル(ジ(3−メチルブチル)エーテル)、ジ(t−アミル)エーテル(ジ(1,1−ジメチルプロピル)エーテル)を用いることが好ましい。
【0082】
当該感放射線性樹脂組成物における(D)溶剤の含有量は限定されないものの、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、10質量部以上800質量部以下が好ましく、200質量部以上700質量部以下がより好ましく、30質量部以上600質量部以下が特に好ましい。(D)溶剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の粘度及び固形分濃度を適度な範囲とすることができ、高速塗布性及び良好な膜厚均一性を発揮しつつ、塗布ムラなく塗膜を形成することができる。
【0083】
感放射線性樹脂組成物中の全溶剤量に対する(D)溶剤の含有量は、好ましくは5質量%〜90質量%であり、更に好ましくは8質量%〜80質量%の範囲であり、特に好ましくは10質量%〜60質量%である。(D)溶剤の感放射線性樹脂組成物中の全溶剤量に対する含有量が上記範囲にある時、感放射線性樹脂組成物の粘度と固形濃度がより高いレベルでバランスされ、さらに膜厚の均一性に優れた塗布膜が得られる。
【0084】
<(E)その他の溶剤>
本発明では、(D)溶剤以外の溶剤(以下、「(E)溶剤」ともいう。)を(D)溶剤と併用して用いることができる。このような(E)溶剤としては、特に限定されないものの、(E−1)ジエチレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤、ケトン系溶剤及び脂肪酸アルキルエステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤をさらに含むことが好ましい。
【0085】
上記(E−1)溶剤の具体例としては、例えば、
ジエチレングリコールジアルキルエーテル系溶剤として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなど;
プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、など;
ケトン系溶剤として、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルイソアミルケトンなど;
脂肪酸アルキルエステル系溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチルなどがそれぞれ挙げられる。
【0086】
上記(E−1)溶剤としては、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3−メトキシプロピオン酸メチル及び3−エトキシプロピオン酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0087】
当該感放射線性樹脂組成物は、上記(E−1)溶剤に代えて、又は(E−1)溶剤と共に、(E−2)アルコール系溶剤(但し、エーテル基を有しない。)、グリコールエーテル系溶剤、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤及びプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤をさらに含んでいてもよい。
【0088】
上記(E−2)溶剤の具体例としては、例えば、
アルコール系溶剤として、ベンジルアルコールなど;
グリコールエーテル系溶剤として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤として、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなど;
ジエチレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤として、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど;
ジプロピレングリコールジアルキルエーテル系溶剤として、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテルなど;
プロピレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルなど;
プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート系溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネートなどがそれぞれ挙げられることができる。
【0089】
これらのうち、上記(E−2)溶剤として、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0090】
(E)溶剤の含有量は、感放射線性樹脂組成物中の全溶剤量に対し好ましくは10質量%〜80質量%であり、更に好ましくは15質量%〜70質量%の範囲であり、特に好ましくは20質量%〜60質量%である。(E)溶剤の感放射線性樹脂組成物中の全溶剤量に対する含有量が上記範囲にある時、感放射線性樹脂組成物の粘度と固形濃度がより高いレベルでバランスされ、膜厚均一性と共に、さらに高速塗布性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0091】
<界面活性剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、好ましくは、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0092】
上記フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基及び/又はフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましく、その例としては、1,1,2,2−テトラフロロ−n−オクチル(1,1,2,2−テトラフロロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロ−n−オクチル(n−ヘキシル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−ペンチル)エーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロ−n−ブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−ペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロ−n−ブチル)エーテル、パーフロロ−n−ドデカンスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−デカン、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロ−n−ドデカンや、フロロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フロロアルキル燐酸ナトリウム、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、ジグリセリンテトラキス(フロロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フロロアルキルアンモニウムヨージド、フロロアルキルベタイン、他のフロロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフロロアルキルポリオキシエタノール、パーフロロアルキルアルコキシレート、カルボン酸フロロアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0093】
また、上記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、BM−1000、BM−1100(以上、BM CHEMIE社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、同F476(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フタージェントFT−100、同−110、同−140A、同−150、同−250、同−251、同−300、同−310、同−400S、フタージェントFTX−218、同−251(以上、(株)ネオス製)などを挙げることができ
る。
【0094】
上記シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH−190、同SH−193、同SZ−6032、同SF−8428、同DC−57、同DC−190(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)などの商品名で市販されているものを挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0095】
これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の使用量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.15〜3質量部である。界面活性剤の使用量が上記範囲にある時、塗布膜ムラを低減することができる。
【0096】
<その他の任意添加剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記以外の任意添加剤、例えば、接着助剤、保存安定剤なども配合することができる。
上記接着助剤は、形成されたスペーサーと基板との接着性を向上させるために使用する成分である。
【0097】
このような接着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましく、その例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
これらの接着助剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 接着助剤の使用量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部の範囲、より好ましくは2〜15質量部の範囲で用いられる。接着助剤の使用量が上記範囲にある時、現像工程において現像残りを生じることなく、パターンの密着性を向上させることができる。
【0098】
上記保存安定剤としては、例えば、硫黄、キノン類、ヒドロキノン類、ポリオキシ化合物、アミン類、ニトロニトロソ化合物などを挙げることができ、より具体的には、4−メトキシフェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウムなどを挙げることができる。
これらの保存安定剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
保存安定剤の使用量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部の範囲、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。保存安定剤の使用量が上記範囲の時、感放射線性樹脂組成物の保存安定性が良好となる。
【0099】
当該感放射線性樹脂組成物の粘度は、(D)成分の存在により高速塗布性及び膜厚均一性に必要な範囲に制御されている。当該感放射線性樹脂組成物の粘度は本発明の効果が得られる限り限定されないが、2.2mPa・s以上3.8mPa・s以下が好ましく、2.3mPa・s以上3.7mPa・s以下がより好ましく、2.5mPa・s以上3.5mPa・s以下が特に好ましい。当該感放射線性樹脂組成物の粘度が上記範囲に制御されていることにより、塗布ムラを抑制しながらも高速での塗布が可能であり、得られる硬化膜の均一性も良好なものとすることができる。
【0100】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上述の(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、(C)感放射線性重合開始剤及び(D)溶剤と共に、必要に応じて(E)溶剤を加え、上述の如き任意的に添加されるその他の成分を所定の割合でそれぞれ均一に混合することによって調製される。この感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状態で用いられる。このようにして調製された組成物溶液は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタなどを用いて濾過した後、使用に供することもできる。
【0101】
本発明の感放射線性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、固形分濃度(組成物溶液中に占める溶剤以外の成分、すなわち上記の(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性不飽和化合物、(C)感放射線性重合開始剤、及び任意に添加されるその他の成分の合計量の割合)は、使用目的や所望の膜厚の値などに応じて任意の濃度(例えば5〜50質量%)に設定することができる。さらに好ましい固形分濃度は、基板上への塗膜の形成方法により異なる。塗布方法としてスピン塗布法を採用する場合の固形分濃度は、20〜50質量%であることがさらに好ましく、特に30〜40質量%であることが好ましい。スリット塗布法を採用する場合の固形分濃度は、10〜35質量%であることがさらに好ましく、特に15〜30質量%であることが好ましい。
【0102】
<スペーサー又は保護膜としての硬化膜の形成方法>
次に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いてスペーサー又は保護膜としての硬化膜を形成する方法について説明する。
【0103】
本発明の硬化膜の形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に露光する工程、
(3)露光後の上記塗膜を現像する工程、及び
(4)現像後の上記塗膜を加熱する工程
を有する。
以下、これらの各工程について順次説明する。
【0104】
(1)当該感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程
透明基板の片面に透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上に、本発明の感放射線性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する。
ここで用いられる透明基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板などを挙げることができ、より具体的には、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどのガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、例えば酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを挙げることができる。
【0105】
塗布法により塗膜を形成する場合、上記透明導電膜の上に本発明の感放射線性樹脂組成物の溶液を塗布したのち、塗布面を加熱(プレベーク)することにより、塗膜を形成することができる。組成物溶液の塗布方法としては、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピン塗布法)、スリット塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法などの適宜の方法を採用することができ、スピン塗布法又はスリット塗布法が好ましい。特にスリット塗布法を採用した場合に、本発明の有利な効果を最大限に発揮することができるため、好ましい。
【0106】
塗布後、好ましくはプレベーク及びポストベークが行われる。プレベーク及びポストベークの条件は、それぞれ、本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される成分の種類、使用割合等によって適宜に設定されるべきである。プレベークは、例えば70〜100℃において、例えば1〜10分程度の条件で行うことができる。ポストベークは、ホットプレート、クリーンオーブン等の適宜の加熱装置により行うことができる。ポストベークの温度としては、180〜240℃であることが好ましく、200〜230℃であることがより好ましい。ポストベーク時間は、使用する加熱装置の種類によって異なる。ポストベー
クの加熱装置としてホットプレートを使用する場合のポストベーク時間は、好ましくは10〜60分であり、より好ましくは15〜40分である。クリーンオーブンを使用する場合のポストベーク時間は、好ましくは20〜120分であり、より好ましくは30〜90分である。
【0107】
このようにして形成された塗膜の膜厚は、好ましくは0.1〜8μmであり、より好ましくは0.1〜6μmであり、更に好ましくは0.1〜5μmである。
【0108】
(2)上記塗膜の少なくとも一部に露光する工程
次いで、形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射して露光する。このとき、塗膜の一部にのみ照射する際には、例えば所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する方法等によることができる。スペーサー又は保護膜は、使用するフォトマスクの開口部の大きさによって形成方法が異なる。例えば、5μm〜30μmのドット状のパターンマスクを有するフォトマスクを使用すれば、スペーサーが形成される。画素サイズに応じて、1辺が50μm以上の四角パターンを有するフォトマスクを使用すれば、保護膜が形成される。
【0109】
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線などを挙げることができる。このうち波長が250〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。放射線照射量(露光量)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100〜5,000J/m、より好ましくは200〜3,000J/mである。本発明の感放射線性樹脂組成物は、従来知られている組成物と比較して放射線感度が高く、上記放射線照射量が800J/m以下であっても所望の膜厚、良好な形状、優れた密着性及び高い硬度のスペーサー又は保護膜を得ることができる。
【0110】
(3)露光後の上記塗膜を現像する工程
次に、露光後の塗膜を現像することにより、不要な部分(非露光部分)を除去して、所定のパターンを形成する。
【0111】
現像に使用される現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ性化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等の有機アルカリ性化合物の水溶液を使用することができる。上記アルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒及び界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種を適当量添加して使用してもよい。
【0112】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法等のいずれでもよく、現像時間は、10〜180秒間程度とすることが好ましい。現像温度は、常温でよい。現像処理に続いて、好ましくは例えば流水洗浄を30〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって所望のパターンを得ることができる。
【0113】
(4)現像後の上記塗膜を加熱する工程
次いで、現像して得られたパターン状塗膜を、ホットプレート、オーブンなどの適当な加熱装置により、所定温度、例えば100〜250℃で、所定時間、例えばホットプレート上では5〜30分間、オーブン中では30〜180分間、加熱することにより、所望のパターンを有するスペーサーを得ることができる
【0114】
以上の如き工程を経ることによって、塗膜に微小な凹凸からなるムラなく、膜厚均一性等の諸性能に優れる液晶表示素子用のスペーサー又は保護膜としての硬化膜を形成することができる。
【実施例】
【0115】
以下に合成例及び実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例及び実施例に限定されるものではない。実施例における「部」や「%」は、特に断りのない限り、表中も含め全て質量基準である。
【0116】
なお、以下において、重合体の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
測定装置:東ソー(株)製、「HLC8220システム」
分離カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHHR−Nの4本を直列に接続して使用
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μm
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0117】
また、感放射線性樹脂組成物の溶液粘度は、東京計器(株)製のE型粘度計を用いて30℃において測定した。
【0118】
<(A)アルカリ可溶性樹脂の合成>
〔合成例1〕
冷却管と撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)3部、3−メトキシプロピオン酸メチル250質量部を仕込み、引き続いてメタクリル酸14質量部、メタクリル酸グリシジル40質量部、スチレン6質量部及びメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル35質量部を仕込んで、窒素置換したのち、さらに1,3−ブタジエン5質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、固形分濃度28.1%の共重合体溶液を得た。これを共重合体(β―1)とする。得られた共重合体(β―1)のMwは10,500であった。
【0119】
〔合成例2〕
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5質量部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート250質量部を仕込み、引き続いてメタクリル酸18質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル25質量部、スチレン5質量部、メタクリル酸2―ヒドロキシエチルエステル30質量部、メタクリル酸ベンジル22質量部を仕込んで、窒素置換したのち、緩やかに攪拌しつつ溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、固形分濃度28.8%の共重合体〔α−1〕溶液を得た。得られた共重合体〔α−1〕について、MwをGPCを用いて測定したところ、13,000であった。
【0120】
次いで、上記共重合体〔α−1〕溶液に、3−メタアクリロイルオキエチルイソシアネート(商品名カレンズMOI、昭和電工(株)製)12質量部、4−メトキシフェノール0.1質量部を添加したのち、40℃で1時間、さらに60℃で2時間攪拌して反応させた。3−メタアクリロイルオキエチルイソシアネート由来のイソシアネート基と共重合体〔α−1〕の水酸基の反応の進行は、IR(赤外線吸収)スペクトルにより確認した。40℃で1時間後、さらに60℃で2時間反応後の反応溶液のIRスペクトルを測定し、3−メタアクリロイルオキエチルイソシアネートのイソシアネート基に由来する2270c
−1付近のピークが減少していることで、反応が進行しているのを確認した。固形分濃度31.0%の重合体(A―1)溶液を得た。これを重合体(A―1)とする。
【0121】
〔合成例3〕
冷却管と撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)6質量部、3−メトキシプロピオン酸メチル250質量部を仕込み、引き続いてメタクリル酸14質量部、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル20質量部、スチレン5質量部及びメタクリル酸ベンジル56質量部を仕込んで、窒素置換したのち、さらに1,3−ブタジエン5質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、固形分濃度27.9%の共重合体溶液を得た。これを共重合体(γ−1)とする。得られた共重合体(γ−1)のMwは11,400であった。
【0122】
〔合成例4〕
冷却管と撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)6質量部と3−メトキシプロピオン酸メチル250質量部を仕込み、引き続いてスチレン5質量部、メタクリル酸14質量部、メタクリル酸ベンジル33質量部及びメタクリル酸n−ブチル23質量部、3−(メタアクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン20質量部を仕込んで、窒素置換した後、さらに1,3−ブタジエン5質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合する
ことにより、固形分濃度27.9質量%の共重合体溶液を得た。これを共重合体(β−2)とする。得られた共重合体(β−2)について、MwをGPCにより用いて測定したところ、11,200であった。
【0123】
[実施例1〜21及び比較例1〜4]
(I)感放射線性樹脂組成物の調製
(A)アルカリ可溶性樹脂として上記合成例2で得た共重合体(α−1)の溶液を共重合体(α−1)に換算して100質量部(固形分)に相当する量、(B)重合性不飽和化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(商品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬(株)製)150質量部、(C)感放射線性重合開始剤として2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール5質量部、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン3質量部、2−メルカプトベンゾチアゾール3質量部、(D)溶剤としてジイソアミルエーテル685質量部、接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(商品名「フタージェントFTX−218」、(株)ネオス製)0.2質量部を加え、固形分濃度が23.1質量%になるように溶解した後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することで、感放射線性樹脂組成物を調製した。調製後の感放射線性樹脂組成物の粘度は、3.0(mPa・s)であった。
上記で調製した感放射線性樹脂組成物について、下記の手順にしたがって、評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
(1)組成物溶液の粘度の測定
E型粘度計(商品名「VISCONIC ELD.R」、東機産業(株)製)を用いて25℃で測定した。結果を表1に示す。
【0125】
(2)組成物溶液中の固形分濃度の測定
組成物溶液0.3gをアルミ皿に精秤し、ジエチレングリコールジメチルエーテル約1gを加えたのち、175℃で60分間ホットプレート上にて乾燥させて、乾燥前後の質量から固形分濃度を求めた。ここで、一回のスリット塗布に使用する液量は固形分濃度に相関するため、組成物の粘度を3.0mPa・sに合わせた時の固形分濃度が低い場合、使用液量は多くなる。したがって、組成物の粘度を3.0mPa・sに合わせた時の固形分濃度が23%以下の場合、一回のスリット塗布に使用する液量が多くなり、省液化が達成できないと判断できる。結果を表1に示す。
【0126】
(3)ムラの評価
550mm×650mmのクロム成膜ガラス上に、調製した組成物溶液を、スリットダイコーター(商品名「TR632105−CL」、東京応化工業(株)製)を用いて塗布した。0.5Torrまで減圧乾燥した後、ホットプレート上で100℃にて2分間プレベークして塗膜を形成し、さらに2,000J/mの露光量で露光することにより、クロム成膜ガラスの上面からの膜厚が4μmの膜を形成した。膜表面をナトリウムランプにて照らし、目視にて塗布膜面を確認した。縦筋ムラ(塗布方向、もしくはそれに交差する方向にできる一本又は複数本の直線のムラ)、もやムラ(雲状のムラ)、ピン跡ムラ(基板支持ピン上にできる点状のムラ)がはっきりと確認できた場合は×、僅かに確認できた場合は△、殆ど確認できなかった場合は○、筋ムラ、もやムラ、ピン跡ムラを確認できなかった場合は◎と表記する。結果を表1に示す。
【0127】
(4)膜厚均一性(ユニフォミティ)の評価
上述のようにして作製したクロム成膜ガラス上の塗膜の膜厚を、針接触式測定機(商品名「AS200」、KLA−Tencor社製)を用いて測定した。ユニフォミティとして、9つの測定点における膜厚から計算した。9つの測定点とは基板の短軸方向をX、長軸方向をYとすると、(X[mm]、Y[mm])が、(275、20)、(275、30)、(275、60)、(275、100)、(275、325)、(275、550)、(275、590)、(275、620)、(275、630)である。
【0128】
ユニフォミティの計算式は、下記式で表される。下記式のFT(X、Y)maxは9つの測定点における膜厚中の最大値、FT(X、Y)minは9つの測定点における膜厚中の最小値、FT(X、Y)avg.は9つの測定点における膜厚中の平均値である。ユニフォミティが2%以下の場合は、膜厚均一性は良好と判断できる。結果を表1に示す。
(ユニフォミティの計算式)
ユニフォミティ(%)={FT(X、Y)max − FT(X、Y)min}×100/{2×FT(X、Y)avg.}
【0129】
(5)高速塗布性の評価
550mm×650mmの無アルカリガラス基板上にスリットコーターを用いて塗布した。塗布条件として、下地とノズルの距離(GAP)150μm、膜厚露光後2.5μmとなるように、ノズルから塗布液を吐出し、ノズルの移動速度を120mm/sec.〜220mm/sec.の範囲で変量し、液切れによる筋状のムラが発生しない最大速度を求めた。この時、200mm/sec.以上の速度でも筋状のムラが発生しない場合は、高速塗布に対応が可能であると判断できる。結果を表1に示す。
【0130】
(6)感度の評価
95mm×95mmの無アルカリガラス基板上にスピンコート法を用いて感放射線性樹脂組成物を塗布したのち、90℃のホットプレート上で3分間プレベークして、膜厚3.5μmの塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に、開口部として直径12μmの円状パターンが形成されたフォトマスクを介して、365nmにおける強度が250W/mの紫外線で、露光時間を変量して露光した。その後、水酸化カリウム0.05%水溶液により、25℃で60秒間現像したのち、純水で1分間洗浄し、さらに230℃のオーブン中で30分間ポストベークすることにより、スペーサーを形成した。このとき、ポストベーク後の下記式で求められる残膜率が90%以上になる最小の露光量を感度とした。この時の露光量が800J/m以下の感度が良好と言える。結果を表1に示す。
(残膜率の計算式)
残膜率(%)=ポストベーク後の膜厚(μm)×100/露光後膜厚(μm)
【0131】
(7)ラビング耐性の評価
露光量を「(6)感度の評価」で決定した感度に相当する露光量としたほかは、「(6)感度の評価」と同様にして基板上にスペーサーを形成した。得られた基板上に、液晶配向剤(商品名「AL3046」、JSR(株)製)を液晶配向膜塗布用印刷機により塗布し、180℃で1時間乾燥して、膜厚0.05μmの液晶配向剤の塗膜を形成した。次いで、この塗膜に対して、ポリアミド製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/sec.の条件で、ラビング処理を行った。このとき、パターンの削れや剥がれの有無を確認した。結果を表1に示す。
【0132】
(8)圧縮性能の評価
上記「(6)感度の評価」と同様にして、残膜率が90%以上になる露光量で基板上に丸状残しパターンを形成した。このパターンを微小圧縮試験機(商品名「フィッシャースコープH100C」、フィッシャーインストルメンツ製)で50μm角状の平面圧子を用い、40mNの荷重により圧縮試験を行い、荷重に対する圧縮変位量の変化を測定した。この時、40mNの荷重時の変位量と40mNの荷重を取り除いた時の変位量から回復率(%)を算出した。この時、回復率が90%以上でさらに40mNの荷重時の変位が0.15μm以上の時、高い回復率と柔軟性を兼ね備えた圧縮性能を有するスペーサーと言える。結果を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
実施例及び比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
(B)成分
B−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(商品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬(株)製)
B−2:多官能アクリレート系化合物(商品名「KAYARAD DPHA−40H」、日本化薬(株)製)
B−3:コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート
B−4: ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート(商品名「アロニックス M−5300」、東亞合成(株)製)
(C)成分
C−1:エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)(商品名「イルガキュアOXE02」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
C−2:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(商品名「イルガキュア379」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
C−3:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール
C−4:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
C−5:2−メルカプトベンゾチアゾール
(D)成分
D−1:ジイソアミルエーテル
D−2:ジ(n−アミル)エーテル
D−3:ジ(n−ブチル)エーテル
(E)成分
E−1−1:3−メトキシプロピオン酸メチル
E−1−2:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
E−1−3:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
E−1−4:シクロヘキサノン
E−2−1:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
E−2−2:ベンジルアルコール
E−2−3:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
E−2−4:プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性不飽和化合物、
(C)感放射線性重合開始剤、及び
(D)下記式(1)で示される溶剤
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4又は5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項2】
上記R及びRが、同一である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
(E−1)ジエチレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤、ケトン系溶剤及び脂肪酸アルキルエステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
(E−1)溶剤が、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3−メトキシプロピオン酸メチル及び3−エトキシプロピオン酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
(E−2)アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤及びプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
(E−2)溶剤が、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項5に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
(D)溶剤の含有量が、全溶剤量に対して5質量%以上90質量%以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
(A)アルカリ可溶性樹脂が、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
(C)感放射線性重合開始剤として、O−アシルオキシム化合物を含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
液晶表示素子のスペーサー又は保護膜としての硬化膜を形成するために用いられる請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の感放射線性樹脂組成物から形成される硬化膜。
【請求項12】
(1)請求項10に記載の感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に露光する工程、
(3)露光後の塗膜を現像する工程、及び
(4)現像後の塗膜を加熱する工程
を有する硬化膜の形成方法。


【公開番号】特開2010−277069(P2010−277069A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84098(P2010−84098)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】