説明

感放射線性樹脂組成物及び重合体

【課題】本発明は、感度、解像度及び露光余裕に優れる新規な感放射線性樹脂組成物及びその組成物等に用いる重合体の提供。
【解決手段】本発明は、[A]下記式(I)で表される構造単位を有する重合体、及び[B]感放射線性酸発生体を含有する感放射線性樹脂組成物である。


(式中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)。また、上記Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路等の半導体の製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程及びその他のフォトリソグラフィー工程における微細加工に有用な化学増幅型の感放射線性樹脂組成物及びその組成物等に用いる重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路等の製造に代表される微細加工の分野において、より高い集積度を得るためにリソグラフィー工程における加工サイズの微細化が進行しており、かかる微細加工を安定的に行う技術が求められている。そのため、用いられるレジストについても微細パターンを高精度に形成できることが必要とされ、より波長の短い放射線を利用したリソグラフィーが検討されている。
【0003】
短波長の放射線としては、KrFエキシマレーザー(波長248nm)及びArFエキシマレーザー(波長193nm)に代表される遠紫外線や、電子線に代表される荷電粒子線等が用いられており、これらの放射線に対応できる種々のレジスト用組成物が検討されている。そのようなレジスト用組成物のうち、放射線の照射(以下、「露光」ともいう。)によって露光部に酸を生成させ、この酸の触媒作用により露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成させる感放射線性樹脂組成物が知られている。また、液浸の利用によりさらなる微細加工を可能にする液浸露光においても上記ArFエキシマレーザーが用いられている。
【0004】
これらの技術として、例えば特開2002−23371号公報には、ArFエキシマレーザーを光源とし、より短波長で微細加工が可能になるリソグラフィー材料として、オキサゾリジノン骨格を有する構造単位を有する重合体を構成成分とする感放射線性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、かかる感放射線性樹脂組成物をもってしても、更なるデバイスの微細化が進んでいる近年にあっては、感度、解像度及び露光余裕等のレジスト特性を十分に満足させることができないのが現状であり、より一層のレジスト特性に優れる化学増幅型レジストを形成可能な感放射線性樹脂組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−23371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる不都合に鑑みてなされたものであり、感度、解像度及び露光余裕に優れる新規な感放射線性樹脂組成物及びその組成物等に用いる重合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(I)で表される構造単位(以下、「構造単位(1)」ともいう。)を有する重合体、及び
[B]感放射線性酸発生体
を含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【0009】
当該感放射線性樹脂組成物は、構造単位(1)を有する重合体[A]と、[B]感放射線性酸発生体(以下、「酸発生体[B]」ともいう。)とを含有する。重合体[A]は、オキサゾリノン基を有するため、アルカリ現像液に対する親和性があり、更にRで示される連結基を有するため、アルカリ現像液に対して接触しやすくなり、より一層アルカリ現像液に対する親和性が向上する。なお本明細書において「構造単位」とは、重合体構造に含まれる一単位をいい、繰り返して存在していてもよい。
【0010】
上記式(I)中、Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基であることが好ましい。Rをより好ましい範囲の鎖長とすることで、側鎖のフレキシビリティと樹脂の剛直性の両立が図れるとともに、感度、解像度及び露光余裕をさらに高めることができる。
【0011】
上記重合体[A]は、さらに下記式(II)で表される構造単位(以下、「構造単位(2)」ともいう。)を有することが好ましい。
【化2】

(式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【0012】
上記重合体[A]が、さらに構造単位(2)を有することで、重合体[A]を含む感放射線性樹脂組成物のパターン形成能が向上し、レジストとしての解像度が向上する。
【0013】
上記重合体[A]は、さらにラクトン構造を含む構造単位及び環状カーボネート構造を含む構造単位から選ばれる少なくとも一種(以下、「構造単位(3)」ともいう。)を有することが好ましい。上記重合体[A]が、さらに構造単位(3)を有することで、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像度及び露光余裕がより高度にバランスされたレジスト特性を発揮することができ、結果としてプロセスマージンに優れたレジストが得られる。ここで、「プロセスマージンに優れる」とは、当該プロセスにおけるパターン形成のための露光や現像時の使用可能条件(例えば時間や温度などの条件)が広いことを意味する。また、レジストとしての現像性、低欠陥性、低Post Exposure Bake(以下、「PEB」ともいう。)温度依存性等を向上する相乗効果が奏される。
【0014】
本発明の重合体は、下記式(I)で表される構造単位を有する。
【化3】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【0015】
当該重合体は、オキサゾリノン基を有するため、アルカリ現像液に対する親和性があり、更にRで示される連結基を有するため、アルカリ現像液に対して接触しやすくなり、より一層アルカリ現像液に対する親和性に優れるものとなり、例えば、リソグラフィー技術に用いられる感放射線性樹脂組成物等に好適に使用され得るものと考える。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の感放射線性樹脂組成物は、特定構造の構造単位を有する重合体を含有することで、従来の感放射線性樹脂組成物と比べ、優れた感度、解像度及び露光余裕を発揮することができる。従って、短波長の活性放射線に感応する化学増幅型感放射線性樹脂組成物として、微細加工時に優れたプロセスマージンを持って製品を製造することができ、今後さらに微細化が進行すると予想される集積回路素子等の分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]構造単位(1)を有する重合体及び酸発生体[B]を含有し、さらに必要に応じて、その他の任意成分を含有できる。以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書にいう「感放射線性樹脂組成物」及び「感放射線性酸発生体」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
【0018】
(重合体[A])
重合体[A]は、通常、アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性であるが、露光時において、酸発生体[B]から生じた酸によって、アルカリ可溶性となる重合体である。また、重合体[A]は、アルカリ現像液に対する親和性を示すオキサゾリノン基を有することを特徴とする。なお、本明細書にいう「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト被膜の代わりに重合体[A]のみを用いた被膜を現像した場合に、被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
【0019】
また、上記式(I)が示すように、オキサゾリジノン基は、適度な鎖長を有するR及びエステル結合を介して、当該樹脂の主鎖骨格を構成する炭素原子に結合している。この特定の構造を有することにより、アルカリ現像液に対して接触しやすくなり、より一層アルカリ現像液に対する親和性が向上する。従って、例えば、重合体[A]は、リソグラフィー技術に用いられる感放射線性樹脂組成物等に好適に使用され得る。
【0020】
上記式(I)のRは、水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基である。Rで表される炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、
メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基等の炭素数1〜20の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基;
シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、トリシクロデカンジイル基、テトラシクロドデカンジイル基、アダマンタンジイル基等の炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基;
フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基;
ベンジレン基、フェニレンエチレン基、フェニレンプロピレン基、ナフチレンメチレン基、ナフチレンエチレン基等の炭素数7〜20のアリーレンアルキレン基等が挙げられる。
【0021】
これらのうち上記Rとしては、炭素数1〜4のアルカンジイル基が好ましく、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。Rをより好ましい範囲の鎖長とすることで、側鎖のフレキシビリティと樹脂の剛直性の両立が図れるとともに、感度、解像度及び露光余裕をさらに高めることができる。
【0022】
構造単位(1)の含有率は、重合体[A]を構成する全構造単位に対して、1mol%〜60mol%が好ましく、1mol%〜50mol%がより好ましく、5mol%〜40mol%が特に好ましい。構造単位(1)の含有率が上記範囲であることで、当該感放射線性樹脂組成物は、感度、解像度及び露光余裕が高度にバランスされたレジスト特性を発揮することができる。1mol%未満の場合、−R−オキサゾリノン基の効果が十分に発揮されない恐れがある。60mol%を超えると、レジストとしての解像性能が劣化する恐れがある。
【0023】
上記重合体[A]は、さらに上記構造単位(2)を有することが好ましい。構造単位(2)は、酸の存在下で−CRが解離して(メタ)アクリル酸構造を生成する基を有する単位であり、そのため構造単位(2)を有する重合体[A]は、酸発生体[B]から生じた酸によって、アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性からアルカリ可溶性となる。
【0024】
上記重合体[A]が、さらに構造単位(2)を有することで、重合体[A]を含む感放射線性樹脂組成物のパターン形成能が向上し、レジストとしての解像度が向上する。
【0025】
上記式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。
【0026】
上記式(II)のRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。Rで表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0027】
上記式(II)のR及びRで表される炭素数1〜4のアルキル基並びに炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、上記式(II)のRの定義を適用することができる。また、上記式(II)のR及びRが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、トリシクロデカンジイル基、テトラシクロドデカンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。
【0028】
構造単位(2)としては、例えば、下記式(II−1)〜(II−20)で表される構造単位が好ましい。これらの構造単位(2)のうち、(II−1)、(II−2)、(II−3)、(II−4)、(II−5)、(II−6)、(II−8)、(II−9)、(II−11)、(II−12)、(II−13)、(II−14)、(II−15)、(II−16)、(II−17)、(II−19)がより好ましい。これらは単独でも2種以上が含まれていてもよい。
【0029】
【化4】

【0030】
(式(II−1)〜(II−20)中、Rは、上記式(II)で定義したものと同義である。)
【0031】
構造単位(2)の含有率は、重合体[A]を構成する全構造単位に対して、5mol%〜80mol%が好ましく、10mol%〜80mol%がより好ましく、20mol%〜70mol%が特に好ましい。構造単位(2)の含有率が、上記範囲内であることで、レジストとしての解像度が向上し、さらに、感度、露光余裕共に優れるものとなる。
【0032】
上記重合体[A]は、さらに、例えば、下記式(III−1)〜(III−6)で表されるラクトン構造を含む構造単位及び環状カーボネート構造を含む構造単位(3)から選ばれる少なくとも一種を有することが好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
((III−1)〜(III−6)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又はメトキシ基である。Aは、単結合またはメチレン基である。Bは、メチレン基又は酸素原子である。a及びbは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。)
【0035】
上記重合体[A]が、さらに構造単位(3)を有することで、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像度及び露光余裕が高度にバランスされたレジスト特性を発揮することができる。また、レジストとしての現像性、欠陥性、低PEBの温度依存性等を向上する相乗効果が奏される。
【0036】
構造単位(3)としては、例えば、下記式(III−1a)〜(III−6)で表される構造単位が好ましい。これらは単独でも2種以上が含まれていてもよい。
【0037】
【化6】

【0038】
(式(III−1a)〜(III−6)中、Rは、上記式(3)で定義したものと同義である。)
【0039】
構造単位(3)の含有率は、重合体[A]を構成する全構造単位に対して、0mol%〜70mol%が好ましく、0mol%〜60mol%がより好ましい。構造単位の含有率を上記範囲とすることで、レジストとしての現像性、欠陥性、低PEB温度依存性等を向上させることができる。なお、構造単位(3)の含有率が70mol%を超えると、レジストとしての解像性が低下するおそれがある。
【0040】
上記重合体[A]は、さらに、例えば、下記式で表される構造単位を1種以上含有してもよい。
【0041】
【化7】

【0042】
(式中、R10は、水素原子又はメチル基である。)
【0043】
さらに、重合体[A]は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ベースポリマーとして重合体[A]を含有することを特徴とする。このベースポリマーは、重合体[A]単独であってもよく、重合体[A]と他の重合体との混合物であってもよい。他の重合体としては、構造単位(1)を含まず、上述した他の構造単位(構造単位(2)、構造単位(3)、構造単位(4)及びその他の構造単位からなる群より選択される少なくとも1種)を適宜含有する重合体が好ましく用いられる。また、他の重合体は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
ポジ型感放射線性樹脂組成物に用いられるベースポリマーでは、重合体[A]と必要に応じて含有させる他の重合体とを合わせた全重合体の全構造単位における構造単位(2)の含有率が、20質量%〜70質量%であることが好ましく、20質量%〜60質量%であることが特に好ましい。構造単位(2)が20質量%以上であると、ベースポリマーは、アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の重合体であって、露光により発生する酸の存在下でアルカリ可溶性となる性質を有する。
【0046】
上記重合体[A]は、ラジカル重合等の常法に従って合成することができる。例えば、
単量体およびラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0047】
なお、単量体溶液に対して、単量体溶液を滴下して反応させる場合、滴下される単量体溶液中の単量体量は、重合に用いられる単量体総量に対して30mol%以上が好ましく、50mol%以上がより好ましく、70mol%以上が特に好ましい。
【0048】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常、30℃〜150℃であり、40℃〜150℃が好ましく、50℃〜140℃がさらに好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がさらに好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜12時間であり、45分〜12時間が好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。
【0049】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう。)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。これらの開始剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0051】
重合反応により得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、樹脂を回収することもできる。
【0052】
上記重合体[A]のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCともいう。)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、1,000以上100,000以下が好ましく、1,000以上30,000以下がより好ましく、1,000以上20,000以下が特に好ましい。なお、上記重合体[A]のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、上記重合体[A]のMwが100,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0053】
また、上記重合体[A]のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう。)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1.0以上5.0以下であり、1.0以上3.0以下が好ましく、1.0以上2.0以下がより好ましい。
【0054】
本明細書のMw及びMnとは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値をいう。
【0055】
当該感放射線性樹脂組成物は、上記重合体[A]を単独又は2種以上併用してもよい。また、重合体[A]と、構造単位(2)、構造単位(3)及びその他の構造単位から選ばれる少なくとも一種を有する他の重合体とを混合して用いてもよい。
【0056】
(酸発生体[B])
酸発生体[B]は、露光により酸を発生し、その酸により重合体[A]中に存在する酸解離性基を解離させ、酸を発生させる。その結果、重合体[A]がアルカリ現像液に易溶性となる。酸発生体[B]の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、後述するような化合物の形態でも、重合体[A]又は上述の他の重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0057】
上記酸発生体[B]としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの酸発生体[B]のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0058】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む。)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。これらのオニウム塩化合物のうち、スルホニウム塩が好ましい。
【0059】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート及びトリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましく、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートがより好ましい。
【0060】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0061】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0062】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0063】
酸発生体[B]は、単独又は2種以上を併用できる。酸発生体[B]の使用量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、重合体[A]100質量部に対して、通常、0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上9質量部以下である。この場合、酸発生体[B]の使用量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方10質量部を超えると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンを得られ難くなる傾向がある。
【0064】
(任意成分)
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の重合体[A]及び酸発生体[B]に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分としてフッ素含有樹脂、脂環式骨格含有化合物、界面活性剤、酸拡散制御体、増感剤、溶媒等を含有することができる。任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0065】
(フッ素含有樹脂)
フッ素含有樹脂は、特に液浸露光においてレジスト膜表面に撥水性を発現させる作用を示す。また、レジスト膜から液浸液への成分の溶出を抑制する効果を奏し、さらに高速スキャンにより液浸露光を行ったとしても液滴を残さない為、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制する効果がある。
【0066】
フッ素含有樹脂の構造としては、例えば、
それ自体が現像液に不溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に可溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に不溶で、アルカリの作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に可溶であり、アルカリの作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂等を挙げることができる。
【0067】
フッ素含有樹脂としては、フッ素含有構造単位を有する重合体が好ましい。フッ素含有構造単位を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0068】
フッ素含有樹脂としては、例えば、上記フッ素含有構造単位と、重合体[A]を構成する構造単位とを有する共重合体等が好ましい。これらのフッ素含有樹脂は、単独又は2種以上を併用できる。
【0069】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0070】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等を挙げることができる。これらの脂環式骨格含有化合物は、単独又は2種以上を併用できる。
【0071】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0072】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名で、KP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学社)、エフトップEF301(トーケムプロダクツ社)、エフトップEF303(トーケムプロダクツ社)、エフトップEF352(トーケムプロダクツ社)、メガファックF171(大日本インキ化学工業社)、メガファックF173(大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430(住友スリーエム社)、フロラードFC431(住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382(旭硝子工業社)、サーフロンSC−101(旭硝子工業社)、サーフロンSC−102(旭硝子工業社)、サーフロンSC−103(旭硝子工業社)、サーフロンSC−104(旭硝子工業社)、サーフロンSC−105(旭硝子工業社)、サーフロンSC−106(旭硝子工業社)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独又は2種以上を併用できる。
【0073】
(酸拡散制御体)
酸拡散制御体は、露光により酸発生体[B]から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態でも、重合体[A]の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0074】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、重合体[A]における構造単位(1)の他に、本発明の効果を損なわない限り、他の酸拡散制御剤として低分子の窒素含有化合物をさらに含有していてもよい。この窒素含有化合物としては、例えば、下記式で表される窒素含有化合物を好適に用いることができる。
【0075】
【化8】

【0076】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基であり、これらは置換基を有していてもよく、又はR11同士若しくはR12同士が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基若しくはその誘導体を形成してもよい。)
【0077】
上記式で表される窒素含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−アルキルアルコキシカルボニル基含有アミノ化合物等を挙げることができる。
【0078】
また、窒素含有化合物としては、上記式で表される窒素含有化合物以外にも、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、光崩壊性塩基化合物、その他含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0079】
3級アミン化合物としては、例えば、
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;
トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等を挙げることができる。
【0080】
4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。
【0081】
上述の他の酸拡散抑制剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。低分子の酸拡散制御剤の含有割合は、全重合体100質量部に対して、5質量部未満が好ましく、1質量部未満がさらに好ましい。合計使用量が5質量部を超えると、レジストとしての感度が著しく低下する傾向にある。
【0082】
(増感剤)
増感剤は、酸発生体[B]に吸収される放射線のエネルギー以外のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを例えばラジカルのような形で酸発生体[B]に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0083】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、単独又は2種以上を併用できる。
【0084】
(溶媒)
当該感放射線性樹脂組成物は、通常溶媒を含有する。溶媒は、少なくとも上記の重合体[A]、酸発生体[B]及び任意成分を溶解可能であれば、特に限定されない。例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0085】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0086】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0087】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0088】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0089】
その他の溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等を挙げることができる。
【0090】
これらの溶媒のうちでも、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン及びγ−ブチロラクトンが好ましい。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0091】
当該感放射線性樹脂組成物は、ポジ型の感放射線特性を有する。ポジ型感放射線性組成物は、例えば、有機溶媒中で、上記重合体[A]、酸発生体[B]、及び任意成分を所定の割合で混合することにより、調製することができる。ポジ型感放射線性組成物は、適当な有機溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0092】
(その他の任意成分)
その他の任意成分としては、例えば、染料、顔料、接着助剤、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等が挙げられる。これらのうち、例えば、染料又は顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善できる。これらのその他の任意成分は、単独又は2種以上を併用できる。
【0093】
(フォトレジストパターンの形成方法)
フォトレジストパターンの形成方法は、例えば、以下に示す方法が一般的である。感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程(以下、工程(i)ともいう。)、形成されたフォトレジスト膜に、必要に応じて液浸媒体を介し、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射して露光する工程(以下、工程(ii)ともいう。)、基板(露光されたフォトレジスト膜)を加熱する工程(以下、工程(iii)ともいう。)、現像工程(以下、工程(iv)ともいう。)を経て、フォトレジストパターンを形成することができる。
【0094】
工程(i)では、感放射線性樹脂組成物又はこれを溶剤に溶解させて得られた組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、基板(シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等)上に所定の膜厚となるように樹脂組成物溶液を塗布し、次いでプレベークすることにより塗膜中の溶媒を揮発させることにより、フォトレジスト膜を形成する。
【0095】
工程(ii)では、工程(i)で形成されたフォトレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光させる。なお、この際、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選択して照射する。ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。
【0096】
工程(iii)は、PEBと呼ばれ、工程(ii)でフォトレジスト膜の露光された部分において、酸発生体[B]から発生した酸が重合体を脱保護する工程である。PEBは、通常50℃から180℃の範囲で適宜選択して実施される。
【0097】
工程(iv)では、露光されたフォトレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0098】
また、液浸露光を行う場合は、工程(ii)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(iv)の前に溶剤により剥離する、溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報参照)、工程(iv)の現像と同時に剥離する、現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0099】
このようにして得られるレジストパターンは、トップロスが防止されて矩形性が良好であり、リソグラフィー技術を応用した微細加工に好適である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0101】
実施例及び比較例の各感放射線性樹脂組成物は、後述する樹脂A−1〜A−4のうち、いずれかを単独又は2種以上併用して合成される。また、樹脂A−1〜A−4は、下記の単量体M−1〜M−5のうち、いずれかを単独又は2種以上併用して合成される。
【0102】
M−1:1−メチルアダマンチルメタクリレート
M−2:下記式で表される単量体
【0103】
【化9】

【0104】
M−3:下記式で表される単量体
【0105】
【化10】

【0106】
M−4:4−オキサ−5−オキソトリシクロ[4,2,1,03,7]ノナン−2−イルメタクリレート
【0107】
M−5:下記式で表される単量体
【0108】
【化11】

【0109】
(実施例1)
樹脂A−1の合成
単量体M−1(17.55g、60mol%)、単量体M−2(2.49g、10mol%)及び単量体M−3(9.97g、30mol%)を2−ブタノン60gに溶解し、開始剤としてAIBN(1.02g、単量体M−1、M−2及びM−3の総モル数に対して5mol%)を加え、単量体溶液を調製した。次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、600gのメタノールに投入し、析出した白色粉末を濾別した。濾別された白色粉末を、120gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、残渣を濾別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体、樹脂A−1を得た(19.6g、収率65%、Mw=4,400、Mw/Mn=1.27)。樹脂A―1の13C−NMR分析の結果、単量体M−1由来の構造単位:単量体M−2由来の構造単位:単量体M−3由来の構造単位の含有比率は、57.5:10.1:32.4(mol%)であった。なお、13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社、JNM−ECX400)を使用し測定した。13C−NMR分析にて組成比算出に用いたピークは以下の通りである。
【0110】
(M−1)由来の構造単位:δ 86.55(1C)
(M−2)由来の構造単位:δ 171.03(1C)
(M−3)由来の構造単位:δ 157.85(1C)
【0111】
(合成例1)
樹脂A−2の合成
単量体M−1(11.38g、60mol%)、単量体M−3(8.62g、40.0mol%)を2−ブタノン40gに溶解し、開始剤としてAIBN(0.66g、単量体M−1及びM−3の総モル数に対して5mol%)を加え、単量体溶液を調製した。次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに20gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、400gの2−プロパノールに投入し、析出した白色粉末を濾別した。濾別された白色粉末を、80gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、残渣を濾別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体、樹脂A−2を得た(13.4g、収率68%、MW=6,800、Mw/Mn=1.35)。樹脂A―2の13C−NMR分析の結果、単量体M−1由来の構造単位:単量体M−3由来の構造単位の含有比率は、54.5:45.5(mol%)であった。
【0112】
(合成例2)
樹脂A−3の合成
単量体M−1(18.38g、60mol%)、単量体M−4(11.62g、40.0mol%)を2−ブタノン60gに溶解し、開始剤としてAIBN(1.07g、単量体M−1及びM−4の総モル数に対して5mol%)を加えし、単量体溶液を調製した。次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、600gのヘキサンに投入し、析出した白色粉末を濾別した。濾別された白色粉末を、120gの2−プロパノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、残渣を濾別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体、樹脂A−3を得た(21.3g、収率71%、Mw=5,400、Mw/Mn=1.65)。樹脂A―3の13C−NMR分析の結果、単量体M−1由来の構造単位:単量体M−4由来の構造単位の含有比率は、55.4:45.6(mol%)であった。
【0113】
(合成例3)
樹脂A−4の合成
単量体M−1(17.87g、60mol%)、単量体M−5(1.97g、10mol%)、単量体M−3(10.16g、30mol%)を2−ブタノン60gに溶解し、開始剤としてAIBN(1.04g、単量体M−1、M−3及びM−5の総モル数に対して5mol%)を加え単量体溶液を調製した。次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、600gの2−プロパノールに投入し、析出した白色粉末を濾別した。濾別された白色粉末を、120gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、残渣を濾別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体、樹脂A−4を得た(19.0g、収率63%、Mw=4,200、Mw/Mn=1.23)。樹脂A―4の13C−NMR分析の結果、単量体M−1由来の構造単位:単量体M−5由来の構造単位:単量体M−3由来の構造単位の含有比率は、56.9:9.9:33.2(mol%)であった。
【0114】
(感放射線性樹脂組成物の調製)
樹脂A−1〜A−4以外の感放射線性樹脂組成物を構成する酸発生体、酸拡散制御体及び溶媒の詳細を以下に示す。
【0115】
(酸発生剤)
トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
【0116】
(酸拡散制御体)
N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0117】
(溶媒)
S−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
S−2:シクロヘキサノン
S−3:γ−ブチロラクトン
【0118】
(実施例2)
溶媒S−1(900質量部)、S−2(390質量部)及びS−3(30質量部)に樹脂A−1(50質量部)、樹脂A−2(50質量部)及び酸発生体(8.4質量部)を混合したものを溶解せしめ、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターで濾過して感放射線性樹脂組成物を得た。
【0119】
(比較例1〜4)
重合体[A]を構成する樹脂の種類及び酸拡散制御体の配合量を表1に示す種類に変更したこと以外は、実施例2と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物を得た。
【0120】
実施例2及び比較例1〜4の感放射線性樹脂組成物について、ArFエキシマレーザーを光源として、下記の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
(感度の測定)
8インチのウエハー表面に、下層反射防止膜形成剤(日産化学社、ARC29A)を用いて、膜厚77nmの下層反射防止膜を形成した。この基板の表面に、実施例2及び比較例1〜4をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、100℃で60秒間ソフトベークを行い、膜厚150nmのレジスト被膜を形成した。
【0122】
このレジスト被膜を、フルフィールド縮小投影露光装置(ニコン社、S306C、開口数0.78)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表1に示す温度にて60秒間PEBを行った後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で30秒現像し、水洗、乾燥を経て、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0123】
このとき、寸法75nmの1対1ライン・アンド・スペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅75nmの1対1ライン・アンド・スペースに形成される露光量(mJ/cm)を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、S9260)を用いた。
【0124】
(解像度の測定)
上記最適露光量で解像される最小の1対1ライン・アンド・スペースパターンの寸法を解像度(nm)とした。
【0125】
(露光余裕の測定)
線幅75nmの1対1ライン・アンド・スペースパターンのマスクを介して露光を行い線幅が67.9nm(75nmの−10%)となる場合の露光量と、82.5nm(75nmの+10%)となる場合の露光量の差の絶対値を感度で除し100を乗じた値を露光余裕(%)とした。露光余裕は数字が大きいほど該感放射線性樹脂組成物がプロセス安定性に優れ良好といえる。なお、パターン寸法の観測には上記走査型電子顕微鏡を用いた。
【0126】
【表1】

【0127】
(評価)
表1から、実施例2は比較例1〜4と比べ良好な感度、解像度及び露光余裕を示すことが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、従来の感放射線性樹脂組成物に比べ、優れた感度、解像度及び露光余裕を発揮することができる。従って、短波長の活性放射線に感応する化学増幅型の感放射線性樹脂組成物として微細加工時に現像欠陥を生じることがなく製品を製造することができ、今後さらに微細化が進行すると予想される集積回路素子等の分野において、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(I)で表される構造単位を有する重合体、及び
[B]感放射線性酸発生体
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【請求項2】
上記式(I)中、Rが炭素数1〜4のアルカンジイル基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記重合体[A]が、さらに下記式(II)で表される構造単位を有する請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】

(式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【請求項4】
上記重合体[A]が、さらにラクトン構造を含む構造単位及び環状カーボネート構造を含む構造単位から選ばれる少なくとも一種を有する請求項1、請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
下記式(I)で表される構造単位を有する重合体。
【化3】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【請求項6】
上記式(I)中、Rが炭素数1〜4のアルカンジイル基である請求項5に記載の重合体。

【公開番号】特開2011−203656(P2011−203656A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73073(P2010−73073)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】