説明

成形体の切削硬さを上昇させる方法

結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体を水蒸気を含有するガスを用いて100〜600℃の温度および0.1〜10バールの絶対圧力で少なくとも20時間に亘って処理することによる、結晶性のアルミノケイ酸塩を含有する成形体の切削硬さの上昇および化学的な合成方法、殊にエチレンジアミン(EDA)および/またはピペラジン(PIP)の反応によるトリエチレンジアミン(TEDA)の製造方法における、上昇された切削硬さを有する成形体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体の切削硬さを上昇させる方法および結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在での化学的な合成方法、その中で殊に、エチレンジアミン(EDA)および/またはピペラジン(PIP)の反応によってトリエチレンジアミン(TEDA)を製造する方法に関する。
【0002】
結晶性アルミノケイ酸塩(ゼオライト)の化学的性質および物理的性質は、例えば一般にUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版,2000 Electronic Release,第3.2章(そこのRef.[46]にも指摘されている)に記載されている。この場合、第8.3.2章には、アルミノケイ酸塩において”蒸気処理”によって約600℃でアルミニウム含量が減少される方法が記載されている。また、第7.6章も参照。
【0003】
また、”蒸気処理”によるアルミノケイ酸塩の脱アルミニウム化は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版,2000 Electronic Release,第6.3.2章およびJ.Weitkamp他(編), Catalysis and Zeolites, Fundamentals and Applications, 第3.3.3.3章(第142〜144頁),Springer VerlagおよびSurface Science and Catalysis, 第51巻, "New solid acids and bases", 第152頁, Elsevier 1989の研究の記載からも公知である。
【0004】
G.W. Huber他, Surface Science and Catalysis, 第139巻 (2001), 第423〜430頁,(第4表, 第427頁)の研究の記載から、微孔質シリカ(SiO)のBET表面積が水蒸気での処理後に明らかに減少され、平均孔径が大きくなることは、公知である。
【0005】
欧州特許出願公開第130407号明細書A1(Nitto)の記載は、先に250〜700℃で水蒸気と、有利に10〜30時間に亘って接触された、モルデナイト、クリノプタイロライト(Clinoptilolit)および毛沸石から選択された、一定のゼオライト触媒を使用しながら、ジメチルアミン(DMA)をアンモニアおよびメタノールから製造するための方法に関する。この方法によれば、反応の触媒活性および選択性は、DMAに有利になるように上昇され、モノメチルアミンおよびトリメチルアミンに有利になるようには上昇されない。
【0006】
欧州特許出願公開第1192993号明細書A1(Tosoh Corp.)の記載は、6〜60nmの平均粒径を有する、一定量の無定形シリカを、少なくとも12のSiO/Alモル比を有する結晶性アルミノケイ酸塩と混合し、引続き”成形機”中で成形することによって、触媒成形体を製造するための方法に関する。こうして製造された成形体は、少なくとも1kgの硬さを示す。
【0007】
特許第3132061号B(Tosoh Corp.)には、アルミノケイ酸塩触媒成形体を500〜950℃および少なくとも1時間、例えば4時間で触媒の実施例1の記載により、水蒸気雰囲気中で焼結させ、トリエチレンジアミンおよびピペラジンの製造の際の選択性を上昇させることが記載されている。
【0008】
トリエチレンジアミン(TEDA=DABCO(登録商標)=1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン)は、重要な中間生成物および最終製品であり、なかんずく、医薬品およびプラスチックの製造の際、殊にポリウレタンの製造の際に触媒として使用されている。
【0009】
TEDAの製造のために、主にエダクトおよび使用される触媒の選択の点で異なる多数の種々の合成方法が存在する:例えば、欧州特許出願公開第382055号明細書A1、WO 01/02404、欧州特許出願公開第1215211号明細書A1およびWO 03/004499参照。
【0010】
欧州特許出願公開第842936号明細書(次のものに対応:米国特許第5741906号明細書)(Air Products)には、キレート化剤で前処理されたZSM−5ゼオライトでTEDAを製造することが記載されている。この前処理は、”蒸気処理”と組み合わせることができる(第4頁、第1行)。
【0011】
更に、TEDA製造のための公知技術水準の概要については、例えば欧州特許出願公開第1215211号明細書(BASF AG)を参照のこと。
【0012】
本発明は、簡単に実施することができ、公知技術水準に対して上昇された触媒の可使時間および触媒の安定性を生じるさせる、公知のゼオライト触媒反応における触媒として使用するため、殊にエチレンジアミン(EDA)および/またはピペラジン(PIP)の反応によってトリエチレンジアミン(TEDA)を製造するための方法における触媒として使用するために、結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体の切削硬さを上昇させるための改善された方法を見出すという課題に基づくものであった。同時に、前記方法によって触媒の失活は生じることも、それぞれのゼオライト触媒反応における選択性、殊にTEDAを製造するための前記方法においてTEDAに関連する選択性が損なわれることもないはずである。
【0013】
触媒成形体の切削硬さは、触媒成形体の機械的安定性の1つの基準である。公知のゼオライト触媒反応、その中でTEDAを製造するための上記方法において工業的に使用するためには、一般に触媒成形体が最小9.8N(1.0kgに相当する)、有利に10N超、殊に20N超の切削硬さを有することが望ましい。
【0014】
それに応じて、結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体を、水蒸気を含有するガスを用いて100〜600℃の温度および0.1〜10バールの絶対圧力で少なくとも20時間に亘って処理することを特徴とする、結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体の切削硬さを上昇させる方法が見い出された。
【0015】
本発明による方法は、第1に触媒成形体の機械的性質を、殊にか焼後に改善し、切削硬さを少なくとも20%、殊に少なくとも50%上昇させることを可能にする。
【0016】
成形体の本発明による処理は、有利に少なくとも50時間、特に有利に少なくとも100時間に亘って行なわれる。
【0017】
好ましくは、成形体の本発明による処理は、連続的に毎時成形体1g当たり水蒸気0.05〜5g、殊に0.1〜1g(g水蒸気/(g成形体・h))のWHSV(weight hourly space velocity質量時間空間速度)で行なわれる。
【0018】
成形体の本発明による処理は、有利に200〜450℃、殊に300〜400℃の温度で行なわれる。
【0019】
好ましくは、成形体の本発明による処理は、0.1〜5バール、殊に0.1〜2バールの絶対圧力で行なわれる。
【0020】
好ましくは、成形体は、水蒸気での処理の際に、例えば管状反応器中に堅固に配置されている(固定床)。
【0021】
好ましくは、結晶性アルミノケイ酸塩は、成形体中で10:1超、特に有利に50:1超、殊に100:1超、殊に有利に200:1超、全く特に有利に400:1超のSiO/Alモル比を有する。SiO/Alモル比の上限は、それぞれ一般に2400:1、殊に2000:1、特に1200:1である。
【0022】
本発明により使用することができる結晶性アルミノケイ酸塩のための硬化する成形法としては、原理的に相応する成形を達成させるための全ての方法が使用されうる。好ましいのは、成形が押出機中で、例えば通常、1〜10mm、殊に2〜5mmの直径を有するストランドへの押出によって行なわれるような方法である。結合剤および/または助剤が必要とされる場合には、押出には、有利に混合処理または混練処理が前接続されている。一般に、押出後になおか焼工程が行なわれる。得られたストランドは、必要な場合には、有利に0.5〜5mm、殊に0.5〜2mmの粒径を有するグラニュールまたは砕石状物に微粉砕される。このグラニュールまたは砕石状物ならびに別の方法で製造された触媒成形体は、実際に最小粒径0.5mmを有するものとして微粒子状含量を全く含有しない。
【0023】
1つの好ましい実施態様において、本発明により使用することができる成形体は、触媒の全質量に対して結合剤を80質量%まで含有する。特に好ましい結合剤含量は、1〜50質量%、殊に3〜35質量%である。結合剤としては、原理的にこの種の目的に使用される全ての化合物が適当であり、好ましいのは、化合物、殊に珪素、アルミニウム、硼素、燐および/またはジルコニウムの酸化物である。結合剤として特に重要であるのは、二酸化珪素であり、この場合SiOは、シリカゾルとしてかまたはテトラアルコキシシランの形で成形法に導入されてもよい。また、結合剤として使用可能であるのは、ベリリウムの酸化物ならびに粘土、例えばモンモリロン石、カオリナイト、ベントナイト、ハロイサイト、ジッカイト、ナクライト(Nacrit)およびアナウキサイト(Anauxit)である。
【0024】
硬化する成形法の助剤としては、例えば押出のためのストランド化助剤を挙げることができ、常用のストランド化助剤は、メチルセルロースである。この種の薬剤は、一般に次のか焼工程で完全に燃焼される。
【0025】
特に好ましくは、本発明による方法で使用される成形体は、先に100〜600℃、殊に200〜450℃、特に300〜400℃の温度でか焼された。この場合、か焼時間は、一般に少なくとも1時間、有利に2〜24時間、殊に2〜10時間である。か焼は、例えば窒素ガス、空気および/または希ガスを含有するガス雰囲気中で行なわれる。一般には、酸素含有雰囲気中でか焼され、この場合酸素含量は、0.1〜90体積%、有利に0.2〜22体積%、特に有利に10〜22体積%である。
【0026】
特に好ましくは、本発明による方法において、結晶性アルミノケイ酸塩は、成形体中で少なくとも部分的にHおよび/またはNH形で存在する。
【0027】
本発明による方法において、結晶性アルミノケイ酸塩は、成形体中でペンタシル型で存在し、即ち結晶性アルミノケイ酸塩は、二酸化珪素と酸化アルミニウムからなる結晶性骨核構造を有する。
【0028】
有利にペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩には、前記材料それ自体に関連して付加的な要件は、存在しないし、この材料が得られた後での方法に関連しても付加的な要件は、存在しない。
【0029】
本発明により使用することができる、ペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩としては、例えば次の型が適当である:ZSM−5(例えば、米国特許第3702886号明細書中に開示されている)、ZSM−11(例えば、米国特許第3709979号明細書中に開示されている)、ZSM−23、ZSM−53、NU−87、ZSM−35、ZSM−48および上記のゼオライトの少なくとも2つ、殊にZSM−5およびZSM−11からの混合構造体ならびにこれらの混合構造体。
【0030】
好ましくは、本発明による方法において、成形体は、水蒸気2〜98質量%、殊に30〜90質量%を含有するガスまたは水蒸気からなるガスを用いて処理される。更に、1つの実施態様において、ガスは、上記量の水蒸気およびEDA2〜80質量%、殊に10〜50質量%をを含有する。
【0031】
更に、本発明は、触媒として先に上記の方法で切削硬さが上昇された成形体を使用することを特徴とする、結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在での化学的な合成方法に関する。
【0032】
この合成方法は、特にアルキル化(例えば、アルケンを有する芳香族化合物の)、不均化(例えば、アルキルベンゾールの)、アシル化、異性体化(例えば、アルキルベンゾールの;例えば、Aris方法)、オリゴマー化、アミン化(例えば、ヒドロアミン化またはアルコールとアンモニアからのアミンの形成)、アルコキシル化、アルケンのエポキシ化、環化、ヒドロキシル化、縮合、水和(例えば、アルケンの)または脱水である。
【0033】
このような方法は、当業者に、例えばG. Perot他, J. Molecular Catalysis, 61 (1990), 第173〜196頁、
K. Weissermel, H.-J. Arpe, Industrielle organische Chemie, Wiley Verlag, 第5版, 1998, (例えば、第365〜373頁)、
J. Weitkamp, L. Puppe, Catalysis and Zeolites, Springer Verlag, Berlin, 1999, 第438〜538頁、および
R. Eckehart, P. Kleinschmit, Zeolites-Applications of Synthetic Zeolites, Ullman's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版 (elektronisch), 2000, 第7.3章の記載から公知である。
【0034】
殊に、触媒として先に上記の方法で切削硬さが上昇された成形体を使用することを特徴とする、結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在でエチレンジアミン(EDA)および/またはピペラジン(PIP)の反応によってトリエチレンジアミン(TEDA)を製造するための方法が見出された。
【0035】
それによって、上昇された切削硬さを有する本発明により製造された触媒を使用しながらTEDA製造のために本発明による方法を実施するために、明らかにWO 01/02404、欧州特許出願公開第1215211号明細書A1およびWO 03/004499の教示が指摘される。
【0036】
TEDAを製造するための本発明による方法は、非連続的に実施されてもよいし、有利に連続的に実施されてもよい。
【0037】
本発明による反応は、液相中で実施されてもよいし、有利には気相中で実施されてもよい。
【0038】
好ましくは、反応は、溶剤または希釈剤の存在で実施される。
【0039】
溶剤または希釈剤として、例えば2〜12個の炭素原子を有する非環式エーテルまたは環式エーテル、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテルまたはその異性体、MTBE、THF、ピラン、またはラクトン、例えばγ−ブチロラクトン、ポリエーテル、例えばモノグリメ、ジグリメ等、芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサンおよび石油エーテル、またはこれらの混合物が適当であり、特にN−メチルピロリドン(NMP)または水または上記種類の水性有機溶剤または水性有機希釈剤も適当である。更に、アンモニアは、溶剤または希釈剤として適当である。
【0040】
特に好ましい溶剤または希釈剤、殊に溶剤は、水である。
【0041】
また、気相中での反応を実施する場合の希釈剤としては、不活性ガス、例えば窒素(例えば、反応器流入量の飽和を超えて)またはアルゴンが適当である。好ましくは、反応は、気相中でアンモニアの存在で実施される。
【0042】
例えば、反応は、使用されるEDAに対して溶剤または希釈剤2〜1200質量%、特に12〜1200質量%、殊に14〜300質量%、特に有利に23〜300質量%の存在で実施される。
【0043】
例えば、本方法で使用される出発混合物または反応器流入量(=連続的な運転形式でのエダクト流)は、EDA5〜80質量%、特に10〜80質量%、特に有利に20〜70質量%、全く特に有利に20〜65質量%および単数または複数の溶剤および希釈剤2〜60質量%、特に10〜60質量%、特に有利に15〜60質量%、殊に20〜50質量%を含有する。
【0044】
本発明による方法の特殊な実施態様において、EDAとそれぞれ2−アミノエチル基、−HN−CH−CH−を有する1つ以上のアミン化合物とは、反応される。
【0045】
このようなアミン化合物は、有利にエタノールアミン(例えば:モノエタノールアミン(MEOA)、ジエタノールアミン(DEOA)、トリエタノールアミン(TEOA))、ピペラジン(PIP)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、トリ(2−アミノエチル)アミン、モルホリン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン(AEEA)およびピペラジン誘導体、例えばN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(HEP)、N−(2−アミノエチル)ピペラジン(AEPIP)、N,N′−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、N,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンおよびN−(2−アミノエチル)−N′−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンである。PIPは、特に好ましい。
【0046】
反応器流入量中での前記アミン化合物の含量は、前記の特殊な実施態様において、(総和で)一般的にそれぞれ使用されるEDAに対して1〜1000質量%、有利に3〜250質量%、殊に7〜250質量%である。
【0047】
例えば、本方法において使用される出発混合物または反応器流入量(=連続的な運転形式でのエダクト流)は、前記アミン化合物0.5〜50質量%、有利に2〜50質量%、殊に5〜50質量%を含有する。
【0048】
前記の特殊な実施態様において使用されるMEOAの場合には、出発混合物または反応器流入量中で反応器搬出量(=連続的な運転形式での生成物流)から分離するのが困難な副生成物が形成されうるので、このアミン化合物の場合には、出発混合物中または反応器流入量中での含量は、使用されるEDAに対して有利に1〜50質量%である。
【0049】
反応後に、生成された生成物は、常法、例えば蒸留および/または精留によって反応搬出物から単離され;未反応の出発物質は、反応に返送されることができる。
【0050】
即ち、本発明による方法の反応搬出物中で生じるPIPは、この反応搬出物から、例えば蒸留により分離されることができ、反応に返送されることができる。
【0051】
また、本方法の利点は、反応搬出物の後処理の際に得られる、TEDAならびにピペラジンを含有する中間留分および例えばN−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン(HEP)、N−(2−アミノエチル)−ピペラジン(AEPIP)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、とり(2−アミノエチル)アミンおよび/またはN−(2−アミノエチル)エタノールアミン(AEEA)を含有する留分が再び反応に返送されうることにある。
【0052】
更に、別のアミン化合物の強制的な廃棄物は、本発明による反応の別のアミン環化反応/縮合反応から供給されることができ、この場合には、TEDAの収量が本質的に悪化することはない。
【0053】
特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、殊に連続的な実施(定常的な状態)の際にEDAとそれぞれEDAに対して水14〜300質量%およびPIP7〜250質量%、
有利にEDAとそれぞれEDAに対して水23〜300質量%およびPIP8〜250質量%、
特に有利にEDAとそれぞれEDAに対して水33〜250質量%およびPIP17〜250質量%、
殊に有利にEDAとそれぞれEDAに対して水110〜185質量%およびPIP25〜100質量%とが反応することを生じる。
【0054】
この実施態様において、PIPまたはEDAの含量は、一方に有利になるようにおよび他方に負担を掛けるように0.01〜20質量%、例えば0.01〜10質量%の程度で減少されてもよいし、上昇されてもよい。
【0055】
例えば、本方法で使用される出発混合物または反応器流入量は、前記の特に好ましい実施態様において、水10〜60質量%、EDA20〜70質量%およびPIP5〜50質量%、
有利に水15〜60質量%、EDA20〜65質量%およびPIP5〜50質量%、
特に有利に水20〜50質量%、EDA20〜60質量%およびPIP10〜50質量%、
殊に有利に水45〜55質量%、EDA30〜40質量%およびPIP10〜30質量%
を含有し、この場合PIPまたはEDAの含量は、一方に有利になるようにおよび他方に負担を掛けるように上記に記載した程度に減少されてもよいし、上昇されてもよい。
【0056】
本方法のこの特に好ましい実施態様において、反応器流入量は、EDA、PIPおよび水と共に、上記量比または上記の量で有利に他の成分10質量%未満、特に5質量%未満、殊に2質量%未満を含有する。
【0057】
この特に好ましい実施態様において、使用物質の上記量比または上記の量の場合に、反応は、殊に連続的な運転形式で(定常状態で)、EDAが殆んど完全に(即ち、95%超、殊に97%超の変換率)90%超、殊に95%超の選択性でTEDAおよびPIPへ変換されるように導かれる。
【0058】
本方法は、特に反応器流入量(=連続的な運転形式でのエダクト流)中で相応するEDA/PIP比を調節することによって上記範囲内で、PIPの消費量が反応搬出物からのPIPの分離および反応器流入量への返送によって全収支が零になり(例えば、反応搬出物中のTEDA100kg当たり0〜30kg、殊に0〜15kg、特に0〜10kg)、殊に零であるように実施され、同時に、使用されるEDAは、完全に(95%超、殊に97%超、特に99%超)反応される。即ち、結果として、連続的な運転形式中で本質的に付加的なPIPは、本方法に供給されることはない。
【0059】
このような反応実施の場合には、搬出されるEDAの量は、零になるので、反応器搬出物の分離は、例えば蒸留および/または精留によって前記の変法により特に簡単である。
【0060】
本発明による方法における反応温度は、有利に270〜400℃、特に有利に310〜390℃、殊に310〜350℃である。
【0061】
エダクト成分または反応器流入量は、好ましくは前温度調節されている。
【0062】
更に、本方法の実施のためには、次の反応条件が好ましいことが判明した:
反応に使用されるアミンに対して、0.05〜6h−1、有利に0.1〜1h−1、特に有利に0.3〜1h−1のWHSV(weight hourly space velocity質量時間空間速度)および
0.01〜40バール、特に0.1〜10バール、有利に0.8〜2バールの圧力(絶対)。
【0063】
本発明による方法が実施される反応器としては、攪拌型容器、殊に管状反応器および管束型反応器が適している。ゼオライト触媒は、反応器中に有利に固定床として配置されている。
【0064】
液相中での反応は、例えば懸濁型運転形式、細流型運転形式または塔底型運転形式で行なうことができる。
【0065】
気相中での好ましい反応は、触媒渦動床中または好ましくは触媒固定床中で行なうことができる。
【0066】
以下の記載は、付加的に本発明による方法が実施されうるように例示的に記載されている:
反応器流入量(組成:前記の記載と同様)は、場合によっては固有の反応器の構成成分であることができる蒸発器中で250〜500℃の温度で気相中に移され、触媒上に導かれる。反応器の出口でガス状で生じる反応搬出物は、循環路内でポンプ輸送される液化された反応搬出物によって20〜100℃の温度、有利に80℃で急冷される。この液化された反応搬出物は、次のように後処理される:第1の蒸留段階で低沸点物、例えばアセトアルデヒド、エチルアミン、アンモニアおよび水ならびに副成分として合成において形成される複素環式化合物は、分離される。第2の蒸留段階で、反応搬出物は、ピペラジンを遊離し、このピペラジンは、再び反応器流入量に供給される。この場合、分離されたピペラジンの流れは、TEDAを20質量%まで含有する。(選択的に、水とピペラジンの同時に分離も可能であり、これら水とピペラジンは、一緒になって反応器流入量中に返送されてよい)。第3の蒸留段階において、価値のある生成物TEDAは、蒸留により反応搬出物から取得され、必要な場合には、例えば次の結晶化段階(例えば、さらに下記に記載したように)でさらに後処理される。
【0067】
実施例
切削硬さは、Zwick社の装置(型:BZ2.5/TS1S;初期力(Vorkraft):0.5N、初期力速度:10mm/分;試験速度:1.6mm/分)上で測定され、それぞれ10回測定された触媒ストランドの平均値である。
【0068】
切削硬さは、詳細には、次のように測定された:
押出物に、この押出物が分離されるまで厚さ0.3mmの刃先によって力を増大させながら荷重を加えた。そのために必要とされる力は、N(ニュートン)での切削硬さである。測定は、堅固に固定された回転皿および厚さ0.3mmの組み込まれた刃先を有する、自由に可動する垂直方向のプランジャーを備えた、Zwick社、Ulm在、の試験装置上で行なわれた。刃先を有する可動のプランジャーは、力を吸収するために力測定ノズルと結合されており、測定中、測定すべき押出物が載置されている固定された回転皿に向かって移動した。この試験装置は、コンピューターによって制御され、このコンピューターは、測定結果を記録し、評価した。良好に混合された触媒試験片から、10個のまさにできるだけ亀裂のない、直径の2〜3倍の平均長さを有する押出物を取り出し、この押出物の切削硬さを測定し、引続き平均値を取った。
【0069】
次の結果表には、WHSV(weight hourly space velocity質量時間空間速度)は、毎時触媒1g当たりEDA+PIP g(=g初期)で記載されている。
【0070】
EDA/PIP/HO比は、質量に対するものである(質量%)。
【0071】
弾性率は、SiO/Alのモル比である。
【0072】
Uは、表中に記載された物質(EDAまたはPIP)の使用された量に対する質量%での変換率であり;Sは、EDAおよびPIPに由来する反応された−CH−CH−に対する記載された生成物のための反応の選択性である。
【0073】
次の第1表には、トリエチレンジアミン(TEDA)へのガス状のエチレンジアミン/ピペラジン/水混合物の変換率に対する試験結果が示されている。”取り外された触媒”は、組み込まれた触媒と比較して明らかに高められた切削硬さを有することが確認される。切削硬さを上昇させることによって、測定精度(+/−1%)の範囲内でTEDAに関連して同じ選択性で失活は、全く観察されない。
【0074】
【表1】

【0075】
次の第2表は、350℃で水蒸気での処理後の触媒C(H−ZSM−5、弾性率1000、結合剤としてのSiO20質量%、ストランド化)の機械的性質に関連する試験結果を示す[WHSV=0.3g水蒸気/(g触媒h)]。259時間(h)後に16Nから26Nへの触媒成形体の切削硬さの明らかな増加が判明する。452時間後、28Nの切削硬さが達成される。TEDA合成[U(EDA)、U(PIP)およびS(TEDA)]の場合の前記触媒の性能は、測定精度(+/−1%)の範囲内の出発値と比較して不変のままである。
【0076】
【表2】

【0077】
次の第3表は、結合材料(触媒D)としてのZrOを基礎とする触媒ストランドの水蒸気処理[T=350℃、WHSV=0.3g水蒸気/g触媒h]についての試験結果を示す。明示されているように、本発明による方法で記載された条件下で結合剤としてのZrOの場合には、2.6Nから3.6Nへの切削硬さの増加率が達成されうる。
【0078】
【表3】

【0079】
次の第4表の試験結果は、本発明による方法で達成される、切削硬さの上昇は、触媒成形体の活性成分としてのH−ZSM−5の使用に制限されるものではないことを示す。例えば、H−モルデナイト[Si/Al比=7.8]80質量%およびSiO20質量%(触媒E)からなる触媒は、この場合には50時間後に処理条件[T=350℃およびWHSV=0.3g水蒸気/g触媒h]下で切削硬さの著しい増加率を示す。
【0080】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体の切削硬さを上昇させる方法において、この成形体を水蒸気を含有するガスを用いて100〜600℃の温度および0.1〜10バールの絶対圧力で少なくとも20時間に亘って処理することを特徴とする、結晶性のアルミノケイ酸塩を含有する成形体の切削硬さを上昇させる方法。
【請求項2】
成形体を少なくとも50時間に亘って処理する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成形体を連続的に毎時成形体1g当たり水蒸気0.05〜5g(g水蒸気/(g成形体・h))のWHSV(weight hourly space velocity質量時間空間速度)で処理する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
成形体を連続的に毎時成形体1g当たり水蒸気0.1〜1g(g水蒸気/(g成形体・h))のWHSV(weight hourly space velocity質量時間空間速度)で処理する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
成形体を200〜450℃の温度および0.1〜2バールの絶対圧力で処理する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
成形体を水蒸気での処理の際に堅固に配置する(固定床)、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
結晶性アルミノケイ酸塩は成形体中で10:1を上廻るSiO/Alモル比を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
結晶性アルミノケイ酸塩は成形体中で50:1を上廻るSiO/Alモル比を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
成形体は、珪素、アルミニウム、硼素、燐、ジルコニウム、ベリリウムの酸化物および/または粘土から選択された結合剤を含有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
成形体を水蒸気を含有するガスを用いての処理前に100〜600℃の温度でか焼する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
結晶性アルミノケイ酸塩は、成形体中で少なくとも部分的にHおよび/またはNH形で存在する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
結晶性アルミノケイ酸塩は、成形体中でペンタシル型で存在する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
成形体を水蒸気2〜98質量%を含有するガスまたは水蒸気からなるガスで処理する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
成形体を水蒸気およびエチレンジアミン2〜80質量%(EDA)を含有するガスで処理する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
エチレンジアミン(EDA)および/またはピペラジン(PIP)を結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在で反応させることによってトリエチレンジアミン(TEDA)を製造する方法において、触媒として先に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法で切削硬さが上昇された成形体を使用することを特徴とする、トリエチレンジアミン(TEDA)を製造する方法。
【請求項16】
反応を連続的に気相中で実施する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
EDAとモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、PIP、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリ(2−アミノエチル)アミン、モルホリン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N,N′−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、N,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンおよびN−(2−アミノエチル)−N′−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの群からの1つ以上のアミン化合物とを反応させる、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
EDAとEDAに対して7〜250質量%のピペラジン(PIP)とを反応させる、請求項15から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
EDAとそれぞれEDAに対して8〜250質量%のPIPおよび23〜300質量%の水とを反応させる、請求項15から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
TEDAへの反応のための反応温度が310〜390℃である、請求項15から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
TEDAへの反応の際の絶対圧力が0.1〜10バールである、請求項15から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
エチレンジアミン(EDA)および/またはピペラジン(PIP)を反応させることによってトリエチレンジアミン(TEDA)を製造するための方法における触媒としての、先に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法で切削硬さが上昇された、結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体の使用。
【請求項23】
結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在での化学的な合成方法において、触媒として先に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法で切削硬さが上昇された成形体を使用することを特徴とする、結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在での化学的な合成方法。
【請求項24】
合成がアルキル化、不均化、アシル化、異性体化、オリゴマー化、アミン化、アルコキシル化、エポキシ化、環化、ヒドロキシル化、縮合、水和または脱水である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
結晶性アルミノケイ酸塩によって触媒反応が行なわれる化学的合成方法における触媒としての、先に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法で切削硬さが上昇された、結晶性アルミノケイ酸塩を含有する成形体の使用。

【公表番号】特表2006−527150(P2006−527150A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508275(P2006−508275)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006035
【国際公開番号】WO2004/108280
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】