成形型内混練装置
【課題】異形任意形状等の成形型内混練装置を提供するものである。
【解決手段】ハウジング(4、4’)内で、成形型(3)に注入した混練材を、攪拌羽根(21)を自転及び公転させて、混練させる混練装置であって、公転用モータ(41)により駆動される公転軸(45)と、自転用モータ(42)により駆動される自転軸(46)と、前記公転軸(45)に設けられた公転プレート(47)に対して、直線方向に摺動可能に設置されたスライダ(31)と、前記スライダ(31)に回転自在に軸支され、かつ、前記自転軸(46)により回転させられる前記攪拌羽根(21)と、前記攪拌羽根(21)を、カム倣いさせて成形型(3)内において移動させるカムプレート(22)を具備する混練装置。
【解決手段】ハウジング(4、4’)内で、成形型(3)に注入した混練材を、攪拌羽根(21)を自転及び公転させて、混練させる混練装置であって、公転用モータ(41)により駆動される公転軸(45)と、自転用モータ(42)により駆動される自転軸(46)と、前記公転軸(45)に設けられた公転プレート(47)に対して、直線方向に摺動可能に設置されたスライダ(31)と、前記スライダ(31)に回転自在に軸支され、かつ、前記自転軸(46)により回転させられる前記攪拌羽根(21)と、前記攪拌羽根(21)を、カム倣いさせて成形型(3)内において移動させるカムプレート(22)を具備する混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形任意形状等の成形型内混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1にみられるように、従来、部品材料(製品10)を型で成形する場合、混練する装置と注型する装置を別々に用意して、あらかじめまとめて混練装置で混練しておいた材料を、所定形状の成形型2(図1では3つ割り型)に、注入する装置をつかって材料を注入する方法で対応していた。この場合、まとめて混練するために、混練機や注入装置の大型化や、混練しておいた材料の移送保管時の沈殿等品質面や生産合理化面でも、大きな障害となっていた。混練時に気泡抜き(真空引き)をした場合でも、成形型への再注入時に気泡の巻き込みが発生するので、再注入用に大型の真空注入装置が、さらに必要であった。
【0003】
従来から知られる混練技術としては、特許文献1、2にみられるように、容器内に粘性流体を密閉したまま公転、自転を利用して均一に混練を行う装置が挙げられる。これらは、いずれも容器内に液体を封入して攪拌するものであって、成形型内で混練するものではなく、上記混練課題の解決には何ら資するものではなかった。特許文献3のものも、ワイヤービーターにより、カスタードクリームを短時間で効率良く製造できるようした煮炊き攪拌装置に過ぎず、しかも、成形型内で混練するものではなかった。以上の従来技術では、成形型内でダイレクトに混練することはできず、異形形状容器内の均一混練成形は到底不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−24231号公報
【特許文献2】特開2006−122781号公報
【特許文献3】特開平7−115908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、異形任意形状等の成形型内混練装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ハウジング(4、4’)内で、成形型(3)に注入した混練材を、攪拌羽根(21)を自転及び公転させて、混練させる混練装置であって、公転用モータ(41)により駆動される公転軸(45)と、自転用モータ(42)により駆動される自転軸(46)と、前記公転軸(45)に設けられた公転プレート(47)に対して、直線方向に摺動可能に設置されたスライダ(31)と、前記スライダ(31)に回転自在に軸支され、かつ、前記自転軸(46)により回転させられる前記攪拌羽根(21)と、前記攪拌羽根(21)を、カム倣いさせて成形型(3)内において移動させるカムプレート(22)と、を具備する混練装置。
【0007】
これにより、従来の様にまとめて混練したものを型に注入するのでなく、製品形状に最初から合せ、直接成形型内で混練できる。すなわち、円形製品だけでなく、製品特性や取付け形状に合わせた異形形状製品を混練することが可能となった。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ハウジング(4、4’)内を真空にしたことを特徴とする。
これにより、気泡化の巻き込みの発生を防止することができ、真空注入装置が不要となった。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記公転軸(45)を中空軸とし、前記自転軸(46)が、前記公転軸(45)と同軸に前記公転軸(45)内に設けられて、前記自転軸(45)からベルト伝動(51)により前記攪拌羽根(21)に回転が伝動され、前記ベルト伝動(51)には、テンショナー(53)が設置されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の発明において、前記ハウジング(4’、74)の一部に開口部(75)が設けられており、該開口部(75)は、前記成形型(3)によって密閉されることを特徴とする。これにより、成形型の自動搬送を可能とし、混練作業を自動化することができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記ハウジング(4’、74)に対して、前記成形型(3)を保持したパレットを上下に昇降する昇降装置をさらに具備し、前記昇降装置が上動して、前記成形型(3)が、前記開口部(75)を密閉するように構成したことを特徴とする。これにより、混練作業を自動化することができる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の発明において、前記公転モータ(41)及び前記自転モータ(42)を制御して、前記成形型(3)の各部位ごとの形状に応じて、前記攪拌羽根(21)の公転周速と自転速度を適宜設定したことを特徴とする。これにより、成形型内のどの部位においても混合状態を均一にすることができる。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の発明において、前記攪拌羽根(21)を、スクリュー羽根を含むねじり羽根として、羽根の正転で、練りの回転力を与え、羽根の反転で、前記混練材の付着を最小限にして前記成形型(3)から抜くことを特徴とする。これにより、混練する材料の粘度が高い場合や、付着性の良い材料の場合に、混練材のスクリューへの付着による量のバラツキや、成形型入れ替え時の材料落下付着の問題を、低減可能にすることができる。
【0014】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】所定形状の成形型に、注入する装置をつかって材料を注入する従来技術を示す図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態における注型3(成形型)を示す斜視図であり、(b)は、成形品(製品10)の完成形状の一例を示す概略図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態が対象とする成形品(製品)の平面形状を例示する図である。
【図4】本発明の一実施形態の概略を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の詳細を示す全体図である。
【図6】(a)は、カムプレート22の正面図であり、(b)は下方から見た平面図である。
【図7】本発明の一実施形態の伝動機構を示す部分図である。
【図8】本発明の一実施形態のオートテンション機構を示す部分図である。
【図9】真空引きするときのハウジング内の圧力の状況を示す図である。
【図10】羽根形状を示す図である。
【図11】本発明の他の一実施形態の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。従来技術に対しても同様に同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0017】
図2(a)は、本発明の一実施形態における注型3を示す斜視図であり、(b)は、製品10の完成形状の一例を示す概略図である。
製品10としては、一例として、リアクトルを例示して説明するが、これに限定されるものではない。この場合、製品10は、コイル12を、注型3(成形型を以下「注型3」ともいう)の内部に中子のようにして挿入した後、混練材を注入し、後述の本発明の一実施形態の混練装置により、混練して成形される。混練材としては、粉末と流体(例えば、鉄粉、樹脂材料等)とを別々に注入して最初から混練してもよく、また、ある程度予備的に混練した材料を注入してもよい。
11は、端子であり、13は、取り付け金具である。
【0018】
本発明の対象とする製品(成形品)は、上述のリアクトルなどの電気部品に限られず、混練を必要とするあらゆる成形品の混練に適用できるものである。図3(a)〜(d)は、本発明の一実施形態が対象とする成形品の平面形状を例示する図である。本発明の一実施形態の混練装置は、特に非円形形状の場合にその効果が発揮されるものである。本発明の対象とする製品としては、中央の中子相当部は、あっても無くても適用可能である。
【0019】
図4は、本発明の一実施形態の概要を示す斜視図である。図5は、本発明の一実施形態の詳細を示す全体図である。図6(a)は、カムプレート22の正面図であり、(b)は下方から見た平面図である。図7は、本発明の一実施形態の伝動機構を示す部分図である。図8は、本発明の一実施形態のオートテンション機構を示す部分図である。
【0020】
まず、本発明の一実施形態の概要を、図4〜8により説明する。
図4に概要を示すように、成形型である注型3に、混練材が注入された状態で、2本の攪拌羽根21(図4ではスクリュー形状、図5ではブラシ形状)が、公転軸(図5、7では、中空軸45)を中心にして、公転すると共に、自転する構造となっている。伝動機構については後述する。(4図では、図2のコイル12が説明のため省略されている。)攪拌羽根21は、本実施形態では2本としたが、これに限定されるものではなく、1本でも2本以上であっても良く、適宜設定すれば良い。
【0021】
図7に示すように、攪拌羽根21の軸21’上端部には、カムフォロア23が存在し、このカムフォロア23は、図6に示すようなカム溝24内を、カム軌跡25に沿って、カム倣い制御される。カムフォロア23は、ブラケット26により上部ハウジング4’に固定されている(図7)。このカム倣い機構の作動については再度詳説する。攪拌羽根21は、カム溝によって生成されるカム軌跡25に沿って移動し、注型3内の混練材を混練し成形する。これらの機構は、下部ハウジング4と上部ハウジング4’によって形成された密閉空間内で行われる。上下部ハウジング4、4’の壁面の一部から約1Torr(133Pa)程度で真空引きされている。
【0022】
本発明の一実施形態の詳細を示す図5を参照して、混練装置を以下に説明する。
上部ハウジング4’には、公転用モータ41と自転用モータ42がブラケット60を介して固定されている。
まず、公転伝動機構について説明すると、公転用モータ41による回転は、公転駆動ギア43に伝動されて、公転軸45と一体の公転ギア44を回転させる。公転軸45は中空軸となっており、自転軸46が同芯に回転自在に支持されている。自転軸46は自転用モータ42に連結している。自転伝動機構については後述する。公転軸45の下端部の公転軸受け45’は、7図に見られるように、公転プレート47を締結ボルトにて固定している。したがって、公転軸45の回転に伴って、公転プレート47も回転することになる。
【0023】
公転プレート47の回転に伴って、攪拌羽根21の軸21’上端部に設けられたカムフォロア23が、カム溝24内をカム軌跡25に沿って、カム倣い制御される点について説明する。このためには、攪拌羽根21の軸21’が、公転プレート47の回転に伴って、公転中心に関して半径方向に移動可能とする、スライダ機構が必要となる。
図4の右上には、スライダ機構31〜33、47’が示されている。公転プレート47には、直動ガイドレール33の支持板47’が固定されており、直動ガイドレール33に、直動ガイド32がスライド可能に移動する。直動ガイド32にはスライダ31が固定されて、スライダ31は、公転中心に関して半径方向に移動可能となっている。
【0024】
スライダ31に、攪拌羽根21の軸21’のための軸受けが固定されており、その軸受けに、攪拌羽根21の軸21’が保持され回転できるようになっている。このようなスライダ機構により、公転プレート47の回転に伴って、攪拌羽根21の軸21’上端部に設けられたカムフォロア23が、カム溝24内をカム軌跡25に沿って、カム倣い制御される。カム溝の代わりに、レール状の凸条にして、カムフォロアの方を、2個のローラで凸条を両側から挟むようにしても良い。その他、機械的なカム倣いの代わりに、NC制御なども可能である。
【0025】
次に、図5、8を参照して、自転伝動機構について述べる。自転軸46は、自転用モータ42と連結しており、自転用モータ42の回転により回転する。図8に示すように、攪拌羽根21の軸21’は、自転軸46とタイミングベルト51で連結して、自転軸46の回転により回転させられる。攪拌羽根21の軸21’上端部に設けられたカムフォロア23が、カム溝24内をカム軌跡25に沿って移動するには、攪拌羽根21の軸21’が、自転軸46の中心(公転中心と同じ)に関して、半径方向に移動可能でなければならない。そして、攪拌羽根21の軸21’が、自転軸46の回転により回転させるためには、タイミングベルト51を弛ませないように、図8のオートテンション機構が必要となってくる。
【0026】
テンショナー53は、バネ54(つるまきバネ)により押圧されているので、図8のy軸方向に攪拌羽根21の軸21’が移動すると、テンショナー53はx軸方向に移動して、タイミングベルト51の弛みを吸収する。テンショナー53及びバネ54は図示されていない支持板62に取り付けられている(テンショナー53は、支持板62に対してスライド可能である)。この支持板62は、公転プレート47に、図5に想像線で示したブラケット61により支持されている。このため、公転プレート47の回転に伴い、図8のx−y座標も回転することになる。2本の攪拌羽根21の軸21’は、自転軸46の中心に関して対称に設けられている。支持板62、62’は、自転軸46の軸方向に、段差をもって公転プレート47に取り付けられている(図8において、支持板62、62’は、平面上に重なってみえるが、支持板62、62’は、紙面垂直方向に段差を持って設置されている)。
【0027】
以上説明した本発明の一実施形態の混練装置の作動について説明する。
各攪拌羽根21の軸21’端部には、カムフォロア23が取り付けられており、製品形状に合わせたカム軌跡25を有するガイド溝24に、カムフォロア23が案内させられる。この攪拌羽根21の軸21’とカムフォロア23は、スライダに、軸受けで支持されており、スライダ31に設けた軸受けで混練抵抗を受ける。ガイド溝24に、カムフォロア23が案内されると、直動ガイドレール33に沿って、攪拌羽根21の軸21’は、公転軸を中心に放射状に摺動する(直動ガイドレール33は、公転プレート47に取り付けられているので回転している)。公転用モータ41は、1〜20rpm程度で回転する。公転用モータ41の回転は、公転駆動ギア43から、公転ギア44に伝動されて公転軸45を回転させる。
【0028】
一方、自転用モータ42は、10〜120rpmで回転し、中空の公転軸に同芯に設置された自転軸46を回転させる。2本の攪拌羽根21の軸21’は、上下2段のタイミングベルト51(ベルト伝動)により、自転軸46からの回転が伝動される。この時、攪拌羽根21の軸21’と自転軸46との間のピッチが変動する(駆動軸間距離の収縮)ので、タイミングベルト51を用いて、ばね54の押圧によるテンショナー53で、そのピッチ補正を行わせる(これをオートテンション機能という。)。また、気泡抜きを行う必要があるので、注型3をハウジング4、4’で覆い、チャンバー内を1Torr程度で真空引きして真空状態にする。公転用モータ41、自転用モータ42にはサーボモータを使用すると良い。
【0029】
上記実施形態において、均一混練するための制御について以下に述べる。
高い粘度(一例として、20〜200Pa・s)の異種材料を、均一に混合する必要がある。これは、部位による混合状態が不均一であると、製品特性の安定性に問題がおきるためである。異形形状の混練の場合には、円形の場合の自・公転一定の速度設定での混練方式とは異なり、公転の速度が、公転中心からの距離により、各部位で異なる為、混練状態が部位で差ができてしまう。
さらに、中子相当部が存在する場合には、図3(c)の左上隅部のように、混練量の多いところでは、より十分な混練が必要であるので、公転速度を遅くするか、攪拌羽根21の自転速度を早くするか、あるいは、この2変数を同時に変化させるかして、部位に応じて均一混練するための制御を行うと良い。すなわち、公転モータ41及び自転モータ42を制御して、成形型(注型)3の各部位ごとの形状に応じて、攪拌羽根21の公転周速と自転速度を適宜設定する。
【0030】
異形形状の均一混練には、もっとも不均一部分の均一性を確保する時間が必要なため、混練完了までの時間が長くなってしまう欠点があったが、不均一部分のみ、前段の制御を行うことで混練スピードをあげることができる。製品の部位別周速度・自転速度設定を任意に設定することで、円形製品同等の混練時間で、均一化が実現することが可能となった。公転用モータ41、自転用モータ42には、サーボモータが使用されるので、異形形状の位置特性に合わせたプログラム混練(自転速度・公転・正逆転・停止移動等、任意制御可能なシステムとなる)を行うことができる。
【0031】
本実施形態においては、注型3を上下部ハウジング4、4’で覆い、それに覆われたチャンバー内を真空引きして真空状態にする。気泡抜きを行うための、上下部ハウジング4、4’内の圧力制御について、以下に述べる。一気に真空にすると、材料内の気泡膨張により注型3内の材料が3倍となって溢れてしまうので、真空引きを行うときには、上下部ハウジング4、4’内の圧力を検出しながら段階的に脱泡圧力Pを変化させる。図9は、真空引きするときのハウジング内の圧力の状況(材料液面変位H)を一例として示す図である。このようにして、混練をしながら混練室内の真空圧力を変化(コントロール)させるとよい。
【0032】
これまでの説明では、攪拌羽根21の形状は、図4ではスクリュー形状、図5ではブラシ形状であったが、これに限られるものではない。例えば、スプリング形状、板状、それらを捻ったものなどが考えられる。図10は、羽根形状を示す図である。図10(a)においては、上下でブラシ長の変化するツリー形状にしても良い。
【0033】
攪拌羽根21の形状を、スクリュー形状とした理由として、正転で練りの回転力を与え、反転で材料の付着を最小限にして製品から抜くためである。スクリュー形状にすると、混練する材料の粘度が高い場合や付着性の良い材料の場合に、成形型入れ替え時の混練材のスクリューへの付着による量(付着量自体、バラツキ)を低減させることができる。
低粘度材料や付着力の少ない混練材料の場合は、攪拌羽根の形状は任意形状に設定しても良い。図10(c)は、羽根を捻ったものとすれば、成形型(注型3)の入れ替え時の混練材のスクリューへの付着による量を低減させることができ、効果を有するものである。その他の板状の羽根をねじれば、同様の効果が生じる。したがって、攪拌羽根21を、スクリュー羽根を含むねじり羽根とすれば、羽根の正転で、練りの回転力を与え、羽根の反転で、前記混練材の付着を最小限にして注型3から抜くことができる。
【0034】
攪拌羽根を、混練後に材料より引き抜く(分離)時に、高粘度材が攪拌羽根に付着しないように、表面処理コートや面粗度を上げることが好ましい。さらに、攪拌羽根を材料より離す時に、羽根と材料間に正逆転の回転を交互に加えることで、羽根に付着した持ち出し量を低減すると良い。一例として、引き抜き条件40mm/4秒の時、正逆回転角度±45度/1秒程度にすると、付着量低減に有効である。
【0035】
以上述べたように、従来の様にまとめて混練したものを型に注入するのでなく、本実施形態は、1個取りで製品形状に最初から合せ、直接成形型内で混練するできるものである。1〜複数本の攪拌羽根で、製品形状に合せて攪拌羽根が公転軌道を行い、また練り上げるための自転も行わせるようにした。特に、スクリュー式の羽根の場合(平板状体をねじった羽根)では、正転で練りの回転力を与え、反転で材料の付着を最小限にして製品から抜くことができる。ハウジング内は必ずしも真空にしなくても、混練材の特性、混練条件等によっては可能である。
【0036】
本発明の他の一実施形態として、次のような変形形態が考えられる。
図11は、本発明の他の一実施形態の概略を示す斜視図である。この実施形態の上部は、図5の側面図と同様である。(図5の上部を側部から見た図が、図11の上部と同じものとなっている。公転・自転機構は、図5の実施形態と同じなので省略する。)
下部ハウジング4については、大きく異なるものである。本発明の他の一実施形態は、注型3を上下動させて、上部ハウジング4’に密着密閉させるようにしたものである。自動化を目的として、注型3をパレットに装着させて、間歇搬送装置でパレットを供給させるようにできるようにした点が大きな変形箇所である。
【0037】
上部ハウジング4’には、中部ハウジング74が新たに設けられており、中部ハウジングの下面には、開口部75が設けられており、開口部75は、注型3によって密閉される。73は、いわゆる甲山紐ガスケットや、Oリングなどであり、注型3の上部の端面との間でハウジング全体を密閉するシールである。注型3はパレット71に固定されている。パレットは図示されていない間歇搬送機構により、昇降装置72に載置される。昇降装置72は、ハウジングに対して、注型3を保持したパレットを、上下に昇降する。昇降装置72が上動して、注型3とハウジングとをガスケット73で密閉する。混練作業が終われば、昇降装置72が下降して、注型3を搬送位置に位置させる。そして、注型3を保持したパレットは、間歇搬送装置により次の工程に移送される。この構成により、混練作業を自動化することができる。
【符号の説明】
【0038】
3 成形型、注型
4、4’ ハウジング
21 攪拌羽根
22 カムプレート
31 スライダ
41 公転用モータ
42 自転用モータ
45 公転軸
46 自転軸
47 公転プレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形任意形状等の成形型内混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1にみられるように、従来、部品材料(製品10)を型で成形する場合、混練する装置と注型する装置を別々に用意して、あらかじめまとめて混練装置で混練しておいた材料を、所定形状の成形型2(図1では3つ割り型)に、注入する装置をつかって材料を注入する方法で対応していた。この場合、まとめて混練するために、混練機や注入装置の大型化や、混練しておいた材料の移送保管時の沈殿等品質面や生産合理化面でも、大きな障害となっていた。混練時に気泡抜き(真空引き)をした場合でも、成形型への再注入時に気泡の巻き込みが発生するので、再注入用に大型の真空注入装置が、さらに必要であった。
【0003】
従来から知られる混練技術としては、特許文献1、2にみられるように、容器内に粘性流体を密閉したまま公転、自転を利用して均一に混練を行う装置が挙げられる。これらは、いずれも容器内に液体を封入して攪拌するものであって、成形型内で混練するものではなく、上記混練課題の解決には何ら資するものではなかった。特許文献3のものも、ワイヤービーターにより、カスタードクリームを短時間で効率良く製造できるようした煮炊き攪拌装置に過ぎず、しかも、成形型内で混練するものではなかった。以上の従来技術では、成形型内でダイレクトに混練することはできず、異形形状容器内の均一混練成形は到底不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−24231号公報
【特許文献2】特開2006−122781号公報
【特許文献3】特開平7−115908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、異形任意形状等の成形型内混練装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ハウジング(4、4’)内で、成形型(3)に注入した混練材を、攪拌羽根(21)を自転及び公転させて、混練させる混練装置であって、公転用モータ(41)により駆動される公転軸(45)と、自転用モータ(42)により駆動される自転軸(46)と、前記公転軸(45)に設けられた公転プレート(47)に対して、直線方向に摺動可能に設置されたスライダ(31)と、前記スライダ(31)に回転自在に軸支され、かつ、前記自転軸(46)により回転させられる前記攪拌羽根(21)と、前記攪拌羽根(21)を、カム倣いさせて成形型(3)内において移動させるカムプレート(22)と、を具備する混練装置。
【0007】
これにより、従来の様にまとめて混練したものを型に注入するのでなく、製品形状に最初から合せ、直接成形型内で混練できる。すなわち、円形製品だけでなく、製品特性や取付け形状に合わせた異形形状製品を混練することが可能となった。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ハウジング(4、4’)内を真空にしたことを特徴とする。
これにより、気泡化の巻き込みの発生を防止することができ、真空注入装置が不要となった。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記公転軸(45)を中空軸とし、前記自転軸(46)が、前記公転軸(45)と同軸に前記公転軸(45)内に設けられて、前記自転軸(45)からベルト伝動(51)により前記攪拌羽根(21)に回転が伝動され、前記ベルト伝動(51)には、テンショナー(53)が設置されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の発明において、前記ハウジング(4’、74)の一部に開口部(75)が設けられており、該開口部(75)は、前記成形型(3)によって密閉されることを特徴とする。これにより、成形型の自動搬送を可能とし、混練作業を自動化することができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記ハウジング(4’、74)に対して、前記成形型(3)を保持したパレットを上下に昇降する昇降装置をさらに具備し、前記昇降装置が上動して、前記成形型(3)が、前記開口部(75)を密閉するように構成したことを特徴とする。これにより、混練作業を自動化することができる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の発明において、前記公転モータ(41)及び前記自転モータ(42)を制御して、前記成形型(3)の各部位ごとの形状に応じて、前記攪拌羽根(21)の公転周速と自転速度を適宜設定したことを特徴とする。これにより、成形型内のどの部位においても混合状態を均一にすることができる。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の発明において、前記攪拌羽根(21)を、スクリュー羽根を含むねじり羽根として、羽根の正転で、練りの回転力を与え、羽根の反転で、前記混練材の付着を最小限にして前記成形型(3)から抜くことを特徴とする。これにより、混練する材料の粘度が高い場合や、付着性の良い材料の場合に、混練材のスクリューへの付着による量のバラツキや、成形型入れ替え時の材料落下付着の問題を、低減可能にすることができる。
【0014】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】所定形状の成形型に、注入する装置をつかって材料を注入する従来技術を示す図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態における注型3(成形型)を示す斜視図であり、(b)は、成形品(製品10)の完成形状の一例を示す概略図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態が対象とする成形品(製品)の平面形状を例示する図である。
【図4】本発明の一実施形態の概略を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の詳細を示す全体図である。
【図6】(a)は、カムプレート22の正面図であり、(b)は下方から見た平面図である。
【図7】本発明の一実施形態の伝動機構を示す部分図である。
【図8】本発明の一実施形態のオートテンション機構を示す部分図である。
【図9】真空引きするときのハウジング内の圧力の状況を示す図である。
【図10】羽根形状を示す図である。
【図11】本発明の他の一実施形態の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。従来技術に対しても同様に同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0017】
図2(a)は、本発明の一実施形態における注型3を示す斜視図であり、(b)は、製品10の完成形状の一例を示す概略図である。
製品10としては、一例として、リアクトルを例示して説明するが、これに限定されるものではない。この場合、製品10は、コイル12を、注型3(成形型を以下「注型3」ともいう)の内部に中子のようにして挿入した後、混練材を注入し、後述の本発明の一実施形態の混練装置により、混練して成形される。混練材としては、粉末と流体(例えば、鉄粉、樹脂材料等)とを別々に注入して最初から混練してもよく、また、ある程度予備的に混練した材料を注入してもよい。
11は、端子であり、13は、取り付け金具である。
【0018】
本発明の対象とする製品(成形品)は、上述のリアクトルなどの電気部品に限られず、混練を必要とするあらゆる成形品の混練に適用できるものである。図3(a)〜(d)は、本発明の一実施形態が対象とする成形品の平面形状を例示する図である。本発明の一実施形態の混練装置は、特に非円形形状の場合にその効果が発揮されるものである。本発明の対象とする製品としては、中央の中子相当部は、あっても無くても適用可能である。
【0019】
図4は、本発明の一実施形態の概要を示す斜視図である。図5は、本発明の一実施形態の詳細を示す全体図である。図6(a)は、カムプレート22の正面図であり、(b)は下方から見た平面図である。図7は、本発明の一実施形態の伝動機構を示す部分図である。図8は、本発明の一実施形態のオートテンション機構を示す部分図である。
【0020】
まず、本発明の一実施形態の概要を、図4〜8により説明する。
図4に概要を示すように、成形型である注型3に、混練材が注入された状態で、2本の攪拌羽根21(図4ではスクリュー形状、図5ではブラシ形状)が、公転軸(図5、7では、中空軸45)を中心にして、公転すると共に、自転する構造となっている。伝動機構については後述する。(4図では、図2のコイル12が説明のため省略されている。)攪拌羽根21は、本実施形態では2本としたが、これに限定されるものではなく、1本でも2本以上であっても良く、適宜設定すれば良い。
【0021】
図7に示すように、攪拌羽根21の軸21’上端部には、カムフォロア23が存在し、このカムフォロア23は、図6に示すようなカム溝24内を、カム軌跡25に沿って、カム倣い制御される。カムフォロア23は、ブラケット26により上部ハウジング4’に固定されている(図7)。このカム倣い機構の作動については再度詳説する。攪拌羽根21は、カム溝によって生成されるカム軌跡25に沿って移動し、注型3内の混練材を混練し成形する。これらの機構は、下部ハウジング4と上部ハウジング4’によって形成された密閉空間内で行われる。上下部ハウジング4、4’の壁面の一部から約1Torr(133Pa)程度で真空引きされている。
【0022】
本発明の一実施形態の詳細を示す図5を参照して、混練装置を以下に説明する。
上部ハウジング4’には、公転用モータ41と自転用モータ42がブラケット60を介して固定されている。
まず、公転伝動機構について説明すると、公転用モータ41による回転は、公転駆動ギア43に伝動されて、公転軸45と一体の公転ギア44を回転させる。公転軸45は中空軸となっており、自転軸46が同芯に回転自在に支持されている。自転軸46は自転用モータ42に連結している。自転伝動機構については後述する。公転軸45の下端部の公転軸受け45’は、7図に見られるように、公転プレート47を締結ボルトにて固定している。したがって、公転軸45の回転に伴って、公転プレート47も回転することになる。
【0023】
公転プレート47の回転に伴って、攪拌羽根21の軸21’上端部に設けられたカムフォロア23が、カム溝24内をカム軌跡25に沿って、カム倣い制御される点について説明する。このためには、攪拌羽根21の軸21’が、公転プレート47の回転に伴って、公転中心に関して半径方向に移動可能とする、スライダ機構が必要となる。
図4の右上には、スライダ機構31〜33、47’が示されている。公転プレート47には、直動ガイドレール33の支持板47’が固定されており、直動ガイドレール33に、直動ガイド32がスライド可能に移動する。直動ガイド32にはスライダ31が固定されて、スライダ31は、公転中心に関して半径方向に移動可能となっている。
【0024】
スライダ31に、攪拌羽根21の軸21’のための軸受けが固定されており、その軸受けに、攪拌羽根21の軸21’が保持され回転できるようになっている。このようなスライダ機構により、公転プレート47の回転に伴って、攪拌羽根21の軸21’上端部に設けられたカムフォロア23が、カム溝24内をカム軌跡25に沿って、カム倣い制御される。カム溝の代わりに、レール状の凸条にして、カムフォロアの方を、2個のローラで凸条を両側から挟むようにしても良い。その他、機械的なカム倣いの代わりに、NC制御なども可能である。
【0025】
次に、図5、8を参照して、自転伝動機構について述べる。自転軸46は、自転用モータ42と連結しており、自転用モータ42の回転により回転する。図8に示すように、攪拌羽根21の軸21’は、自転軸46とタイミングベルト51で連結して、自転軸46の回転により回転させられる。攪拌羽根21の軸21’上端部に設けられたカムフォロア23が、カム溝24内をカム軌跡25に沿って移動するには、攪拌羽根21の軸21’が、自転軸46の中心(公転中心と同じ)に関して、半径方向に移動可能でなければならない。そして、攪拌羽根21の軸21’が、自転軸46の回転により回転させるためには、タイミングベルト51を弛ませないように、図8のオートテンション機構が必要となってくる。
【0026】
テンショナー53は、バネ54(つるまきバネ)により押圧されているので、図8のy軸方向に攪拌羽根21の軸21’が移動すると、テンショナー53はx軸方向に移動して、タイミングベルト51の弛みを吸収する。テンショナー53及びバネ54は図示されていない支持板62に取り付けられている(テンショナー53は、支持板62に対してスライド可能である)。この支持板62は、公転プレート47に、図5に想像線で示したブラケット61により支持されている。このため、公転プレート47の回転に伴い、図8のx−y座標も回転することになる。2本の攪拌羽根21の軸21’は、自転軸46の中心に関して対称に設けられている。支持板62、62’は、自転軸46の軸方向に、段差をもって公転プレート47に取り付けられている(図8において、支持板62、62’は、平面上に重なってみえるが、支持板62、62’は、紙面垂直方向に段差を持って設置されている)。
【0027】
以上説明した本発明の一実施形態の混練装置の作動について説明する。
各攪拌羽根21の軸21’端部には、カムフォロア23が取り付けられており、製品形状に合わせたカム軌跡25を有するガイド溝24に、カムフォロア23が案内させられる。この攪拌羽根21の軸21’とカムフォロア23は、スライダに、軸受けで支持されており、スライダ31に設けた軸受けで混練抵抗を受ける。ガイド溝24に、カムフォロア23が案内されると、直動ガイドレール33に沿って、攪拌羽根21の軸21’は、公転軸を中心に放射状に摺動する(直動ガイドレール33は、公転プレート47に取り付けられているので回転している)。公転用モータ41は、1〜20rpm程度で回転する。公転用モータ41の回転は、公転駆動ギア43から、公転ギア44に伝動されて公転軸45を回転させる。
【0028】
一方、自転用モータ42は、10〜120rpmで回転し、中空の公転軸に同芯に設置された自転軸46を回転させる。2本の攪拌羽根21の軸21’は、上下2段のタイミングベルト51(ベルト伝動)により、自転軸46からの回転が伝動される。この時、攪拌羽根21の軸21’と自転軸46との間のピッチが変動する(駆動軸間距離の収縮)ので、タイミングベルト51を用いて、ばね54の押圧によるテンショナー53で、そのピッチ補正を行わせる(これをオートテンション機能という。)。また、気泡抜きを行う必要があるので、注型3をハウジング4、4’で覆い、チャンバー内を1Torr程度で真空引きして真空状態にする。公転用モータ41、自転用モータ42にはサーボモータを使用すると良い。
【0029】
上記実施形態において、均一混練するための制御について以下に述べる。
高い粘度(一例として、20〜200Pa・s)の異種材料を、均一に混合する必要がある。これは、部位による混合状態が不均一であると、製品特性の安定性に問題がおきるためである。異形形状の混練の場合には、円形の場合の自・公転一定の速度設定での混練方式とは異なり、公転の速度が、公転中心からの距離により、各部位で異なる為、混練状態が部位で差ができてしまう。
さらに、中子相当部が存在する場合には、図3(c)の左上隅部のように、混練量の多いところでは、より十分な混練が必要であるので、公転速度を遅くするか、攪拌羽根21の自転速度を早くするか、あるいは、この2変数を同時に変化させるかして、部位に応じて均一混練するための制御を行うと良い。すなわち、公転モータ41及び自転モータ42を制御して、成形型(注型)3の各部位ごとの形状に応じて、攪拌羽根21の公転周速と自転速度を適宜設定する。
【0030】
異形形状の均一混練には、もっとも不均一部分の均一性を確保する時間が必要なため、混練完了までの時間が長くなってしまう欠点があったが、不均一部分のみ、前段の制御を行うことで混練スピードをあげることができる。製品の部位別周速度・自転速度設定を任意に設定することで、円形製品同等の混練時間で、均一化が実現することが可能となった。公転用モータ41、自転用モータ42には、サーボモータが使用されるので、異形形状の位置特性に合わせたプログラム混練(自転速度・公転・正逆転・停止移動等、任意制御可能なシステムとなる)を行うことができる。
【0031】
本実施形態においては、注型3を上下部ハウジング4、4’で覆い、それに覆われたチャンバー内を真空引きして真空状態にする。気泡抜きを行うための、上下部ハウジング4、4’内の圧力制御について、以下に述べる。一気に真空にすると、材料内の気泡膨張により注型3内の材料が3倍となって溢れてしまうので、真空引きを行うときには、上下部ハウジング4、4’内の圧力を検出しながら段階的に脱泡圧力Pを変化させる。図9は、真空引きするときのハウジング内の圧力の状況(材料液面変位H)を一例として示す図である。このようにして、混練をしながら混練室内の真空圧力を変化(コントロール)させるとよい。
【0032】
これまでの説明では、攪拌羽根21の形状は、図4ではスクリュー形状、図5ではブラシ形状であったが、これに限られるものではない。例えば、スプリング形状、板状、それらを捻ったものなどが考えられる。図10は、羽根形状を示す図である。図10(a)においては、上下でブラシ長の変化するツリー形状にしても良い。
【0033】
攪拌羽根21の形状を、スクリュー形状とした理由として、正転で練りの回転力を与え、反転で材料の付着を最小限にして製品から抜くためである。スクリュー形状にすると、混練する材料の粘度が高い場合や付着性の良い材料の場合に、成形型入れ替え時の混練材のスクリューへの付着による量(付着量自体、バラツキ)を低減させることができる。
低粘度材料や付着力の少ない混練材料の場合は、攪拌羽根の形状は任意形状に設定しても良い。図10(c)は、羽根を捻ったものとすれば、成形型(注型3)の入れ替え時の混練材のスクリューへの付着による量を低減させることができ、効果を有するものである。その他の板状の羽根をねじれば、同様の効果が生じる。したがって、攪拌羽根21を、スクリュー羽根を含むねじり羽根とすれば、羽根の正転で、練りの回転力を与え、羽根の反転で、前記混練材の付着を最小限にして注型3から抜くことができる。
【0034】
攪拌羽根を、混練後に材料より引き抜く(分離)時に、高粘度材が攪拌羽根に付着しないように、表面処理コートや面粗度を上げることが好ましい。さらに、攪拌羽根を材料より離す時に、羽根と材料間に正逆転の回転を交互に加えることで、羽根に付着した持ち出し量を低減すると良い。一例として、引き抜き条件40mm/4秒の時、正逆回転角度±45度/1秒程度にすると、付着量低減に有効である。
【0035】
以上述べたように、従来の様にまとめて混練したものを型に注入するのでなく、本実施形態は、1個取りで製品形状に最初から合せ、直接成形型内で混練するできるものである。1〜複数本の攪拌羽根で、製品形状に合せて攪拌羽根が公転軌道を行い、また練り上げるための自転も行わせるようにした。特に、スクリュー式の羽根の場合(平板状体をねじった羽根)では、正転で練りの回転力を与え、反転で材料の付着を最小限にして製品から抜くことができる。ハウジング内は必ずしも真空にしなくても、混練材の特性、混練条件等によっては可能である。
【0036】
本発明の他の一実施形態として、次のような変形形態が考えられる。
図11は、本発明の他の一実施形態の概略を示す斜視図である。この実施形態の上部は、図5の側面図と同様である。(図5の上部を側部から見た図が、図11の上部と同じものとなっている。公転・自転機構は、図5の実施形態と同じなので省略する。)
下部ハウジング4については、大きく異なるものである。本発明の他の一実施形態は、注型3を上下動させて、上部ハウジング4’に密着密閉させるようにしたものである。自動化を目的として、注型3をパレットに装着させて、間歇搬送装置でパレットを供給させるようにできるようにした点が大きな変形箇所である。
【0037】
上部ハウジング4’には、中部ハウジング74が新たに設けられており、中部ハウジングの下面には、開口部75が設けられており、開口部75は、注型3によって密閉される。73は、いわゆる甲山紐ガスケットや、Oリングなどであり、注型3の上部の端面との間でハウジング全体を密閉するシールである。注型3はパレット71に固定されている。パレットは図示されていない間歇搬送機構により、昇降装置72に載置される。昇降装置72は、ハウジングに対して、注型3を保持したパレットを、上下に昇降する。昇降装置72が上動して、注型3とハウジングとをガスケット73で密閉する。混練作業が終われば、昇降装置72が下降して、注型3を搬送位置に位置させる。そして、注型3を保持したパレットは、間歇搬送装置により次の工程に移送される。この構成により、混練作業を自動化することができる。
【符号の説明】
【0038】
3 成形型、注型
4、4’ ハウジング
21 攪拌羽根
22 カムプレート
31 スライダ
41 公転用モータ
42 自転用モータ
45 公転軸
46 自転軸
47 公転プレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4、4’)内で、成形型(3)に注入した混練材を、攪拌羽根(21)を自転及び公転させて、混練させる混練装置であって、
公転用モータ(41)により駆動される公転軸(45)と、
自転用モータ(42)により駆動される自転軸(46)と、
前記公転軸(45)に設けられた公転プレート(47)に対して、直線方向に摺動可能に設置されたスライダ(31)と、
前記スライダ(31)に回転自在に軸支され、かつ、前記自転軸(46)により回転させられる前記攪拌羽根(21)と、
前記攪拌羽根(21)を、カム倣いさせて成形型(3)内において移動させるカムプレート(22)と、
を具備する混練装置。
【請求項2】
前記ハウジング(4、4’)内を真空にしたことを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
前記公転軸(45)を中空軸とし、前記自転軸(46)が、前記公転軸(45)と同軸に前記公転軸(45)内に設けられて、前記自転軸(45)からベルト伝動(51)により前記攪拌羽根(21)に回転が伝動され、前記ベルト伝動(51)には、テンショナー(53)が設置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の混練装置。
【請求項4】
前記ハウジング(4’、74)の一部に開口部(75)が設けられており、該開口部(75)は、前記成形型(3)によって密閉されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項5】
前記ハウジング(4’、74)に対して、前記成形型(3)を保持したパレットを上下に昇降する昇降装置をさらに具備し、前記昇降装置が上動して、前記成形型(3)が、前記開口部(75)を密閉するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の混練装置。
【請求項6】
前記公転モータ(41)及び前記自転モータ(42)を制御して、前記成形型(3)の各部位ごとの形状に応じて、前記攪拌羽根(21)の公転周速と自転速度を適宜設定したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項7】
前記攪拌羽根(21)を、スクリュー羽根を含むねじり羽根として、羽根の正転で、練りの回転力を与え、羽根の反転で、前記混練材の付着を最小限にして前記成形型(3)から抜くことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項1】
ハウジング(4、4’)内で、成形型(3)に注入した混練材を、攪拌羽根(21)を自転及び公転させて、混練させる混練装置であって、
公転用モータ(41)により駆動される公転軸(45)と、
自転用モータ(42)により駆動される自転軸(46)と、
前記公転軸(45)に設けられた公転プレート(47)に対して、直線方向に摺動可能に設置されたスライダ(31)と、
前記スライダ(31)に回転自在に軸支され、かつ、前記自転軸(46)により回転させられる前記攪拌羽根(21)と、
前記攪拌羽根(21)を、カム倣いさせて成形型(3)内において移動させるカムプレート(22)と、
を具備する混練装置。
【請求項2】
前記ハウジング(4、4’)内を真空にしたことを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
前記公転軸(45)を中空軸とし、前記自転軸(46)が、前記公転軸(45)と同軸に前記公転軸(45)内に設けられて、前記自転軸(45)からベルト伝動(51)により前記攪拌羽根(21)に回転が伝動され、前記ベルト伝動(51)には、テンショナー(53)が設置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の混練装置。
【請求項4】
前記ハウジング(4’、74)の一部に開口部(75)が設けられており、該開口部(75)は、前記成形型(3)によって密閉されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項5】
前記ハウジング(4’、74)に対して、前記成形型(3)を保持したパレットを上下に昇降する昇降装置をさらに具備し、前記昇降装置が上動して、前記成形型(3)が、前記開口部(75)を密閉するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の混練装置。
【請求項6】
前記公転モータ(41)及び前記自転モータ(42)を制御して、前記成形型(3)の各部位ごとの形状に応じて、前記攪拌羽根(21)の公転周速と自転速度を適宜設定したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項7】
前記攪拌羽根(21)を、スクリュー羽根を含むねじり羽根として、羽根の正転で、練りの回転力を与え、羽根の反転で、前記混練材の付着を最小限にして前記成形型(3)から抜くことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の混練装置。
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【公開番号】特開2011−168026(P2011−168026A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36427(P2010−36427)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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