説明

成形条件設定方法

【課題】本発明は、型タッチの判断を精度よく行うことで、トグルサポートを所望の位置
に精度よく停止させることのできる成形条件設定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】トグルサポート15を型閉方向に前進させ、型締力センサからの検出値を監
視する。検出値が閾値に達したらトグルサポート15を停止する。型締力センサは、タイ
バーの歪を検出するタイバー歪センサ18、可動プラテン13Aに加わる押圧力を検出す
る圧力センサ40、又はトグル機構20の構成部品の歪を検出する歪センサ41である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形条件設定方法に係り、特にトグル機構を用いた型締装置における成形条件
設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型装置は、一般的に、固定金型と可動金型とよりなり、型締装置によって可動金型を
固定金型に対して進退させて、型閉、型締及び型開が行なわれる。型締装置は、固定金型
が取り付けられる固定プラテン、可動金型が取り付けられる可動プラテン、及び可動プラ
テンを進退させるための移動機構であるトグル機構を備える。すなわち、トグル機構を駆
動して可動プラテンを固定プラテンに対して接近または離間方向に移動することで金型装
置の型閉、型締及び型開を行なうようになっている(例えば、特許文献1参照。)
上述のような型締装置において、金型を交換して異なる型厚となった場合、適切な型締
力が得られるようにトグル機構を調整する必要がある。より詳細には、トグル機構の原点
となるトグルサポートの位置を、取り付けた金型の型厚に応じて構成する。型締め装置に
はトグルサポートを移動するための駆動源として型厚モータが設けられている。したがっ
て、金型を交換して異なる型厚となった場合などは、型締力の調整作業として、まず型厚
モータを駆動して、トグルサポートを適当な位置に移動する。
【0003】
より具体的には、まず、型締モータを駆動してトグル機構のトグルを伸ばし、可動プラテ
ンを型全閉位置まで移動させる。この際、トグルサポートは、可動金型が固定金型に接触
しないような位置、すなわち型タッチしない位置まで後退させられている。次に、規準金
型を用いた場合に所定の型締力が印加される距離だけ型開を行なう。すなわち、型締モー
タを駆動して型締力設定値が印加される距離だけ可動プラテンを後退させる。そして、ト
グル機構の状態を保ったまま、可動金型が固定金型に接触するまで、すなわち型タッチす
るまで、型厚モータ駆動してトグルサポート前進させる。以上により、金型交換時のトグ
ルサポート位置の調整(型厚調整と称する)が完了する。
【0004】
上述の型厚調整を行う際、トグル機構をたたみ込んだ状態でトグルサポートを前進させ
、可動金型を固定金型に接触させる型タッチが行われる。この際、トグルサポートを前進
させながら可動プラテンを固定プラテンに接近させ、型タッチした時点でトグルサポート
の前進を停止する。したがって、型タッチしたことを検出あるいは判断して、その時点で
トグルサポートを駆動する型厚モータの駆動を停止する必要がある。
【0005】
従来の型タッチの判断は、型厚モータのトルクを監視することで行われている。すなわ
ち、図1に示すように型厚モータの出力トルクが100%となっていって時間が経過した
時点で、型タッチしたと判断している。図1は型厚モータを一定の電圧で駆動してトグル
サポートを前進させて型タッチした際の型厚モータの出力トルクの変化を示すグラフであ
る。
【0006】
可動プラテンが固定プラテンから離れている状態から型厚モータを駆動してトグルサポ
ートを前進させると、トグル機構によりトグルサポート連結されている可動プラテンも同
時に前進し、したがって、可動プラテンに取り付けられている可動金型も前進する。トグ
ルサポートが停止した状態から前進し始める際、トグルサポートの摺動部での静摩擦に打
ち勝つために、型厚モータの出力トルクは一瞬100%まで上昇する。一旦トグルサポー
トが動きだすと、トグルサポートの摺動部での摩擦は動摩擦になるので、型厚モータの出
力トルクは減少し、一定の値となる。出力トルクが一定の時間はトグルサポート(すなわ
ち、可動金型)が前進していることを示している。
【0007】
そして、可動金型が前進して固定金型に接触した時点から、型厚モータのトルクは上昇
し始め、最終的に100%となるまで上昇し、その後100%で一定となる。従来は、型
厚モータのトルクが100%で一定となったことを検出して、型タッチが完了したと判断
していた。すなわち、型厚モータが100%の出力トルクで作動している状態が続いた際
に、可動金型が固定金型に当接してトグルサポートがそれ以上前進できないものと判断し
ている。
【0008】
上述の型厚調整を行う際、トグル機構をたたみ込んだ状態でトグルサポートを前進させ
、可動金型を固定金型に接触させる型タッチが行われる。この際、トグルサポートを前進
させながら可動プラテンを固定プラテンに接近させ、型タッチした時点でトグルサポート
の前進を停止する。したがって、型タッチしたことを検出あるいは判断して、その時点で
トグルサポートを駆動する型厚モータの駆動を停止する必要がある。
【0009】
従来の型タッチの判断は、型厚モータのトルクを監視することで行われている。すなわ
ち、図1に示すように型厚モータの出力トルクが100%となり、そのままある時間が経
過した時点Tで、型タッチしたと判断している。図1は型厚モータを駆動してトグルサポ
ートを前進させて型タッチした際の型厚モータの出力トルクの変化を示すグラフである。
【0010】
可動プラテンが固定プラテンから離れている状態から型厚モータを駆動してトグルサポ
ートを前進させると、トグル機構によりトグルサポートに連結されている可動プラテンも
同時に前進し、したがって、可動プラテンに取り付けられている可動金型も前進する。ト
グルサポートが停止した状態から前進し始める際、トグルサポートの摺動部での静摩擦に
打ち勝つために、型厚モータの出力トルクは一瞬100%まで上昇する。一旦トグルサポ
ートが動きだすと、トグルサポートの摺動部での摩擦は動摩擦になるので、型厚モータの
出力トルクは減少し、一定の値となる。出力トルクが一定の時間はトグルサポート(すな
わち、可動金型)が前進し続けていることを示している。
【0011】
そして、可動金型が前進して固定金型に接触した時点から、型厚モータのトルクは上昇
し始め、最終的に100%となるまで上昇し、その後100%で一定となる。従来は、型
厚モータのトルクが100%で一定となったことを検出して、型タッチが完了したと判断
していた。すなわち、型厚モータが100%の出力トルクで作動している状態が続いた際
に、可動金型が固定金型に当接してトグルサポートがそれ以上前進できないものと判断し
ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−337184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、型厚調整の際に、型厚モータの出力トルクが100%で一定となったこ
とで、型タッチが完了したと判断する場合、可動金型が固定金型に押し付けられた状態で
の位置にトグルサポートが停止する。この状態は、すでに型厚モータのトルクに応じた押
圧力による型締力が作用している状態であり、型締力が加わっていない正確な型タッチ位
置ではない。本来トグルサポートが停止されるべき型タッチした時点は、型厚モータの出
力トルクが小さな一定の値から上昇し始める時点である。
【0014】
したがって、型厚モータの出力トルクに基づいて型タッチを判断する場合には、トグル
サポートの位置は、所望の型締力を得るための位置より前進した位置に設定されることと
なる。これにより、本体トグルサポートを停止すべき位置より前進した位置からトグル機
構を作動して型締力を加えることとなり、所望の型締力を精度よく加えることができない
という問題がある。特に、型締力を精度よく制御する必要がある場合、トグルサポートに
位置を精度よく設定する必要があり、この点で、より精度よく金型タッチの判断を行うこ
とができる技術が必要となっている。
【0015】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、型タッチの判断を精度よく行うことで
、トグルサポートを所望の位置に停止させることのできる成形条件設定方法を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的の達成するために、本発明によれば、トグル機構を用いた型締装置に適用さ
れる成形条件設定方法であって、トグルサポートを型閉方向に前進させ、型締力センサか
らの検出値を監視し、該検出値が閾値に達したらトグルサポートを停止することを特徴と
する成形条件設定方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
上述の発明によれば、型締センサの検出値に基づいて型タッチを判断するため、型厚モ
ータの出力トルクに基づいて型タッチを判断することに比べて、より精度よく型タッチし
たことを判断することができる。したがって、トグルサポートを精度よく所望の位置に停
止させることができ、精度の高い型締力の制御を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】型厚モータの出力トルクの変化を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施の形態による成形条件設定方法が行われる成形機の型締装置の側面図である。
【図3】型厚調整処理のフローチャートである。
【図4】型厚調整処理において型タッチを判断するために用いられる型締力センサの検出値の変化を示すグラフである。
【図5】可動プラテンに取り付けられた型締力センサを有する型締装置の側面図である。
【図6】トグル機構のトグルアームに取り付けられた型締力センサを有する型締装置の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図2は本発明の一実施の形態による成形条件設定方法が行われる成形機の型締装置の側
面図である。図2において、射出成形機の型締装置10は、フレーム17と、フレーム1
7に固定された固定金型支持装置としての固定プラテン12と、固定プラテン12との間
に所定の距離を置いてフレーム17に対して移動可能に配設されたベースプレートとして
のトグルサポート15とを具備する。トグルサポート15はトグル式型締装置支持装置と
して機能する。固定プラテン12とトグルサポート15との間には、複数(例えば、四本
)のガイド手段としてのタイバー16が延在している。
【0021】
可動プラテン13は、固定プラテン12に対向して配設され、タイバー16に沿って進
退(図における左右方向に移動)可能に配設された可動金型支持装置として機能する。金
型装置11は、固定金型11aと可動金型11bとから成る。固定金型11aは、固定プ
ラテン12における可動プラテン13と対向する金型取付面に取り付けられる。一方、可
動金型11bは、可動プラテン13における固定プラテン12と対向する金型取付面に取
り付けられる。
【0022】
なお、前記可動プラテン13の後端 (図における左端)には図示されないエジェクタ
ピンを移動させるための駆動装置が取り付けられてもよい。
【0023】
可動プラテン13とトグルサポート15との間には、トグル式型締装置としてのトグル
機構20が取り付けられる。トグルサポート15の後端にはトグル機構20を作動させる
型締用駆動源としての型締モータ26が配設される。型締モータ26は、回転運動を往復
運動に変換するボールねじ機構等から成る図示されない運動方向変換装置を備え、駆動軸
25を進退(図における左右方向に移動)させることによって、トグル機構20を作動さ
せることができる。なお、型締モータ26は、サーボモータであることが,好ましく、回
転数を検出するエンコーダとしての型開閉位置センサ27を備える。
【0024】
ここで、上述のトグル機構20は、駆動軸25に取り付けられたクロスヘッド24、ク
ロスヘッド24に揺動可能に取り付けられた第2トグルレバー23、トグルサポート15
に揺動可能に取り付けられた第1トグルレバー21、及び、可動プラテン13に揺動可能
に取り付けられたトグルアーム22を有する。第1トグルレバー21と第2トグルレバー
23との間、及び、第1トグルレバー21とトグルアーム22との間は、それぞれ、リン
ク結合される。なお、トグル機構20は、いわゆる、内巻五節点ダブルトグル機構であり
、上下が対称の構成を有する。
【0025】
そして、型締モータ26が駆動して、被駆動部材としてのクロスヘッド24を進退させ
ることによって、トグル機構20を作動させることができる。この場合、クロスヘッド2
4を前進(図における右方向に移動)させると、可動プラテン13が前進させられて型閉
が行われる。そして、型締モータ26による推進力にトグル倍率を乗じた型締力が発生さ
せられ、その型締力によって型締が行われる。
【0026】
また、トグルサポート15の後端(図における左端)には、固定プラテン12に対する
トグルサポート15の位置を調整するために、型締位置調整装置35が配設される。トグ
ルサポート15には、タイバー挿通孔(図示せず)が複数、例えば、四つ形成され、タイ
バー16の図における左端が、それぞれのタイバー挿通孔に挿入される。なお、タイバー
16の右端は、固定ナット16aによって固定プラテン12に固定されている。
【0027】
タイバー16は、図における左端の外周にねじが形成されたねじ部36を有し、調整ナ
ット37がそれぞれのタイバー16のねじ部36に螺合される。なお、調整ナット37は
、トグルサポート15の後端に回転可能に、かつ、タイバー16の軸方向に移動不能に取
り付けられる。また、調整ナット37の外周には被駆動用歯車37aが取り付けられてい
る。
【0028】
トグルサポート15の後端における上方部には、型締位置調整用駆動源としての型厚モ
ータ31が配設される。型厚モータ31の回転軸には、駆動用歯車33が取り付けられて
いる。調整ナット37の被駆動用歯車37a及び駆動用歯車33の周囲には、チェーン、
歯付きベルト等の駆動用線状体34が架け回されている。そのため、型厚モータ31を駆
動して、駆動用歯車33を回転させると、それぞれのタイバー16のねじ部36に螺合さ
れた調整ナット37が同期して回転させられる。これにより、型厚モータ31を所定の方
向に所定の回転数だけ回転させて、トグルサポート15を所定の距離だけ進退させること
ができる。なお、型厚モータ31は、サーボモータであることが好ましく、回転数を検出
するエンコーダとしての型締位置センサ32を備える。
【0029】
型厚モータ31の回転を調整ナット37に伝達する手段は、それぞれのタイバー16の
ねじ部36に螺合された調整ナット37が同期して回転させられるものであれば、いかな
るものであってもよい。例えば、駆動用線状体34に代えて、駆動用歯車33及び駆動用
歯車33のすべてに噛(か)み合う大径の歯車をトグルサポート15の後端に回転可能に
配設することとしてもよい。
【0030】
また、図2に示す型締装置では、タイバー16の一つに型締力センサ18が配設される
。型締力センサ18は、タイバー16の歪み(主に、伸び)を検出するセンサである。タ
イバー16には、型締の際に型締力に対応して引張力が加わり、型締力に比例して僅かで
はあるが伸長する。したがって、タイバー16の伸び量を型締力センサ18により検出す
ることで、金型装置11に実際に印加されている型締力を知ることができる。
【0031】
本実施の形態では、後述のように、型厚調整を行う際に、型締力センサ18により検出
した型締力を用いて型タッチを判断し、型厚モータ31の駆動の動作を制御する。
【0032】
上述の型締力センサ18、型開閉位置センサ27、型締モータ26及び型厚モータ31
は制御装置19に接続され、型締力センサ18及び型開閉位置センサ27から出力される
検出信号は制御装置19に送られる。制御装置19は、検出信号に基づいて型締モータ2
6及び型厚モータ31の動作を制御する。
【0033】
ここで、通常の成形時における型締装置の動作について説明する。型締モータ26を正
方向に駆動させると、ボールねじ軸25が正方向に回転させられ、図1に示されるように
、ボールねじ軸25は前進(図1における右方向に移動)させられる。それに伴って、ク
ロスヘッド24が前進させられ、トグル機構20が作動させられると、可動プラテン13
が前進させられる。
【0034】
可動プラテン13に取り付けられた可動金型11bが固定金型11aと接触すると(型
閉状態)、型締工程に移行する。型締工程では、型締モータ26を更に正方向に駆動する
ことで、トグル機構20によって金型11に型締力が発生させられる。
【0035】
そして、図示されない射出装置に設けられた射出駆動部が駆動されてスクリュが前進す
ることにより、金型11内に形成されたキャビティ空間に溶融樹脂が充填される。型開き
を行なう場合、型締モータ26を逆方向に駆動すると、ボールねじ軸25が逆方向に回転
させられる。それに伴って、クロスヘッド24が後退させられ、トグル機構20が作動さ
れると、可動プラテン13が後退させられる。
【0036】
型開工程が完了すると、図示されないエジェクタ駆動部が駆動され、可動プラテンに取
り付けられたエジェクタ装置が作動する。これにより、エジェクタピンが突き出され、可
動金型11b内の成形品は可動金型11bより突き出される。また、エジェクタ駆動部の
駆動と同時に、図示されない把持手段としての成形品取出機が駆動され、成形品取出機の
アームが固定金型11aと可動金型11bとの間に進入し、成形品取出位置で停止する。
そして、エジェクタピンの前進により可動金型11bから突き出された成形品は成形品取
出機のアームにより把持されて取り出され、射出成形機の外に設けられた搬送手段として
のコンベア装置まで搬送される。
【0037】
次に、上述の型締装置で行なわれる成形条件設定方法である型厚調整方法について説明
する。図3は本実施の形態による型厚調整処理のフローチャートである。また、図4は型
厚調整方法において型タッチを判断するために用いられる型締力センサの検出値の変化を
示すグラフである。
【0038】
例えば、型締装置10に新たに金型装置11を取り付けた場合、設定型締力の位置(原
点)において所望の型締力(目標型締力Z)が得られるように、図3に示す型厚調整処理
を行なって型締装置10を調整する必要がある。型締装置10の調整は、取り付けられた
金型装置11の厚み及び剛性(圧縮変形量)に基づいて、トグルサポート15の位置を変
更して行なう。上述のように、トグルサポート15の固定位置調整は、型厚モータ31を
駆動してトグルサポート15を前後に移動させることで行なう。
【0039】
図3に示す型厚調整処理において、まず、型締モータ26を駆動してトグル機構20の
トグルを伸ばし、可動プラテン13を型全閉位置まで移動させる(ステップS1)。この
際、トグルサポート15は、可動金型11bが固定金型11aに接触しないような位置、
すなわち型タッチしない位置まで後退させられている。
【0040】
次に、トグル機構20を作動させて、規準金型を用いた場合に所定の型締力が印加され
る距離だけ型開を行なう(ステップS2)。すなわち、型締モータ26を駆動して型締力
設定値が印加される距離だけ可動プラテン13を後退させる。そして、トグル機構20の
状態をステップ2の状態に保ったまま、可動金型11bが固定金型11aに接触するまで
、すなわち型タッチするまで、型厚モータ31を駆動してトグルサポート15を前進させ
る(ステップS3)。
【0041】
次に、型締力センサ18の検出値を監視し、検出値が所定のしきい値に達したか否かを
判定する(ステップS4)。検出値が所定の閾値に達していない場合は、ステップS4の
判定処理を繰り返す。一方、ステップS4において検出値が所定のしきい値に達したと判
定された場合、型タッチが完了したと判断して型厚モータ31を停止してトグルサポート
15の前進を停止する(ステップS5)。
【0042】
型締力センサ18から出力される検出値は、図4(a)に示すように、トグルサポート
15の前進を開始した時点(グラフの原点)からは上昇せず、実際に金型タッチした時点
(A点)から上昇し始める。したがって、検出値が上昇し始めた時点で金型タッチと判断
することとすればよいが、型締力センサ18の検出値にはばらつきがあり、また、外乱に
よりわずかに検出値が上昇するおそれがある。そこで、本実施の形態では、外乱による検
出値の上昇を型タッチと誤って判断することを避けるために、所定の閾値Xが設定されて
いる。すなわち、型締力センサ18から出力される検出値が所定の閾値となった時点で、
金型タッチがあったと判断する。
【0043】
図4(b)は型厚モータの出力トルクを示すグラフであり、図4(a)のグラフと同じ
時間軸を有している。図4(a)と図4(b)とを比較すると明らかなように、型締セン
サの検出値に基づいて型タッチを判断する(B点での判断)ほうが、型厚モータの出力ト
ルクに基づいて型タッチを判断すること(T点での判断)に比べて、実際に型タッチが行
われた時点により近い時点で金型タッチを判断できることがわかる。すなわち、型締セン
サの検出値に基づいて型タッチを判断するほうが、型厚モータの出力トルクに基づいて型
タッチを判断することに比べて、より精度よく型タッチしたか否かを判断することができ
る。
【0044】
以上のように、本実施の形態による型厚調整方法によれば、型タッチしたことを精度よ
く判断することができ、より精度の高い型締力の制御を達成することができる。
【0045】
なお、上述の例では、タイバー16の歪を検出する型締力センサ18を用いたが、以下
に説明するように他の型締力センサを用いるとしてもよい。
【0046】
図5は可動プラテンに取り付けられた型締力センサを有する型締装置の側面図である。
図5において、図2に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略す
る。
【0047】
図5に示す型締力センサ40は、可動プラテン13Aと可動プラテン支持部材13Bと
の間に設けられた圧力センサである。可動プラテン支持部材13Bはトグル機構20に接
続されており、トグル機構20により移動される。可動プラテン13Aは、型締力センサ
40を介して可動プラテン支持部材13Bに固定されているので、可動プラテン支持部材
13Bと共に移動する。可動プラテン支持部材13Bに加えられる押圧力は型締力センサ
40と可動プラテン13Aとを介して可動金型11bに加えられ、この押圧力が型締力と
なる。したがって、可動プラテン13Aと可動プラテン支持部材13Bとの間に設けられ
た型締力センサ40に加えられた押圧力が型締力であり、これを検出することで型締力を
検出することができる。型締力センサ40からの検出値は制御装置19に供給され、上述
の型厚調整処理における型タッチの判断に用いられる。
【0048】
図6はトグル機構のトグルアームに取り付けられた型締力センサを有する型締装置の側
面図である。図5において、図2に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その
説明は省略する。
【0049】
図6に示す型締センサ41は、トグルアーム22に取り付けられた歪センサであり、ト
グルアーム22を介して可動プラテン13に加えられる押圧力による圧縮歪や曲げ歪を検
出する。トグルアーム22は、可動プラテン13に加えられる押圧力により弾性変形しや
すい部品であり、このような部品に歪サンサである型締センサ41を取り付けることによ
り、容易に型締力を検出することができる。型締力センサ41からの検出値は制御装置1
9に供給され、上述の型厚調整処理における型タッチの判断に用いられる。
【0050】
なお、型締力センサ41を取り付ける場所は、トグルアーム22に限られず、トグル機
構20により発生する押圧力により弾性変形する部分であればよい。例えば第1トグルレ
バー21やトグルサポート15に型締力センサ41を取り付けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 型締装置
11 金型装置
12 固定プラテン
13,13A 可動プラテン
13B 可動プラテン支持部材
15 トグルサポート
16 タイバー
18,40,41 型締力センサ
19 制御装置
20 トグル機構
26 型締モータ
27 型開閉位置センサ
31 型厚モータ
32 型締位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トグル機構を用いた型締装置に適用される成形条件設定方法であって、
トグルサポートを型閉方向に前進させ、
型締力センサからの検出値を監視し、
該検出値が閾値に達したらトグルサポートを停止する
ことを特徴とする成形条件設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−105410(P2010−105410A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34442(P2010−34442)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【分割の表示】特願2005−162831(P2005−162831)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】