説明

成形機、及び成形機用スクリュー

【課題】シリンダ内の樹脂材料を効率的に真空状態に置き、成形品の仕上がりを向上させる。
【解決手段】ホッパから供給口を介してシリンダ内に樹脂材料が供給され、そこでスクリューに樹脂材料をヒータの加熱下で圧縮し、金型内に計量することで成形を行う成形機において、スクリューは、ヒータにより加熱される所定加熱部位から該スクリューに沿って供給口に至るまで延在する第一通路と、該第一通路とは独立した通路であって、該所定加熱部位から該スクリューに沿って該供給口を越える所定排出部位まで延在する第二通路とを有する。そして、第一通路は、開口部を介してホッパからの樹脂材料の供給が行われ、スクリューの回転により樹脂材料が送り出され、第二通路は、樹脂材料の進入が禁止されるとともに所定排出部位においてシリンダの外部から真空引きされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ホッパを有する成形機、もしくはそれに用いられるスクリューに関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形機や射出成形機において樹脂材料を成形する場合、樹脂材料の溶融混練の過程で、ホッパから流入した空気、または樹脂材料中の添加剤が加熱により気化して生じたガスなどが溶融樹脂に取り込まれると、これが金型のキャビティ表面のガス汚れの原因となって、成形品でのヤケ、光沢不良などの成形不良、寸法バラツキ等の問題が生じる。そこで、樹脂材料が蓄えられるホッパやシリンダ内部を可及的に真空状態とする真空ホッパの技術により、上記問題の解決が図られようとしている(例えば、特許文献1を参照。)

【0003】
また、真空ホッパの技術においては、供給される樹脂材料、特にシリンダ内の樹脂材料をいかにして真空状態に置くかが重要となるが、そのような樹脂材料に対して製品の成形に必要な粉状体を添加する場合は、真空状態の維持が困難となる。そこで、供給される樹脂材料を常圧密閉状態に置いて粉状体を添加する技術が公開されている(例えば、特許文献2を参照。)。このように真空ホッパの技術は、広く利用されているものである。
【特許文献1】特開2002−347073号公報
【特許文献2】特開2000−218676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来の真空ホッパの技術では、シリンダ内の樹脂材料やホッパ内の樹脂材料は所定の真空状態に置かれることになるが、その際、当該真空状態の形成はホッパからの真空引きによって行われる。そのため、成形品の加工精度等に最も重要なシリンダ内の樹脂材料における真空状態の観点に立つと、シリンダ内で熱せられた樹脂材料から発生する水分等のガスが、真空引きが行われる部位に至るまでの途中には樹脂材料が存在し、当該樹脂材料がガス等の流れの障害となって、ガス等が十分に外部に放出されにくいという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、シリンダ内の樹脂材料を効率的に真空状態に置き、成形品の仕上がりを向上させる成形機、もしくは当該成形機に使用されるスクリューを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、シリンダ内で樹脂材料を金型に向かって送り出すスクリューに独立した二つの通路を設け、一方の通路を利用して樹脂材料の送り出しが行われ、他方の通路を利用して樹脂材料の加熱によって発生するガスの排出が行われるように成形機が構成される。これにより、成形時に発生するガスが、成形材料である樹脂に邪魔されることなく外部に排出され、成形品の仕上がり向上が期待される。
【0007】
詳細には、本発明は、ホッパから供給される樹脂材料を圧縮し、金型内に計量することで成形を行う成形機であって、前記ホッパから樹脂材料が供給されるための供給口を有する筒状のシリンダと、前記シリンダの軸方向に沿って、該シリンダ内に回転自在に収容されるとともに、該回転によって前記供給口を介して供給された樹脂材料を前記金型に送り出すスクリューと、前記スクリューによって樹脂材料の圧縮が行われる所定圧縮部位から
前記金型もしくはその近傍までの所定範囲を加熱するヒータと、を備える。そして、前記スクリューは、前記ヒータにより加熱される所定加熱部位から該スクリューに沿って前記供給口に至るまで延在する第一通路と、該第一通路とは独立した通路であって、該所定加熱部位から該スクリューに沿って該供給口を越える所定排出部位まで延在する第二通路とを有し、前記第一通路は、前記開口部を介して前記ホッパからの樹脂材料の供給が行われ、前記スクリューの回転により樹脂材料が送り出され、前記第二通路は、樹脂材料の進入が禁止されるとともに前記所定排出部位において前記シリンダの外部から真空引きされる。
【0008】
上記成形機に備えられるスクリューには、第一通路と第二通路が設けられており、そのためスクリューがシリンダに収容され、樹脂材料の送り出しが可能となった状態において、ヒータによって加熱される所定加熱部位、換言するとヒータの加熱により樹脂材料から水分等のガスが発生し得る所定加熱部位と、該樹脂材料の供給口との間に第一通路が形成される。そして、更に、当該第一通路とは別に独立した第二通路が、当該所定加熱部位から所定排出部位との間に形成される。この所定排出部位は、シリンダ内部と第二通路を介してつながる部位であり、該シリンダの外部から真空引きが行われる部位でもある。
【0009】
このように構成される成形機では、シリンダにスクリューが収容された状態において、第一通路を介した供給口から所定加熱部位までの樹脂材料の供給と、第二通路を介した所定加熱部位から所定排出部位までの発生ガスの真空引きが、互いに干渉することなく、且つ同時に行われることになる。そのため、従来の真空ホッパの技術に比べて、発生ガスの排出が極めて効率的に行われるため、成形品の仕上がりの向上を十分に図ることができる。なお、本発明に係る成形機については、その樹脂材料の成形方法は特に限定されない。スクリューによって樹脂材料が送り出され、ヒータによって樹脂材料の加熱が行われる成形機であれば、射出成形機、押出成形機等の従来からの成形機にも適用できる。
【0010】
上記成形機において、前記スクリューは、前記所定加熱部位と前記供給口との間では該スクリューの表面に設けられた、複数のフライトにより形成された複数条のスクリューであって、前記第一通路と前記第二通路は、前記複数のフライトのうち一部又は全部のフライトによって形成される、前記スクリューの表面上を螺旋状に延びる互いに独立した空間として構成してもよい。すなわち、スクリューを複数条のスクリューとして構成し、そのうち少なくとも二条分を上記第一通路と第二通路に割り当てるものである。したがって、スクリューにおける残りの条分は、更に樹脂材料の送り出しや発生ガスの真空引きのための通路として利用してもよく、またその他の目的に利用しても構わない。
【0011】
さらに、上記成形機において、前記スクリューは、前記複数のフライトのうち二つのフライトの間に延在する前記第二通路の一部であって、前記供給口を介して前記ホッパと対向する所定範囲の該第二通路の一部に対して、樹脂材料が侵入することを阻止する進入阻止部材が設けられるように構成してもよい。第一通路および第二通路はスクリューの表面上に設けられているため、供給口を介してホッパから樹脂材料が供給されるときに、第二通路に樹脂材料が侵入する可能性があり、この進入の可能性がある範囲が上記所定範囲である。そこで、所定範囲に進入阻止部材を設けることで、第二通路への樹脂材料の侵入を阻止し、以て発生ガスの円滑な真空引きを継続することが可能となる。
【0012】
そして、侵入阻止部材の例として、以下の二つが挙げられる。一つは、前記進入阻止部材を、前記所定範囲に対応する前記第二通路の一部に、該第二通路に沿って延在して設けられるパイプ部材で構成するものであり、もう一つは、前記進入阻止部材を、前記所定範囲に対応する前記第二通路の一部において、該一部を挟んで位置する前記二つのフライト同士を連結する蓋部材で構成する。前者では、第二通路への樹脂材料が侵入するおそれがある所定範囲にパイプ部材を配置することで、パイプ部材を形成する管壁により樹脂材料
の進入が遮断される。また、後者では、所定範囲に蓋部材を連結させることで、蓋部材自身により樹脂材料の進入が遮断される。なお、両者とも第二通路におけるガスの流れを妨げるものではない。
【0013】
また、上述までの成形機において、前記スクリューは、前記複数のフライトに含まれる第一フライトと第二フライトの二つのフライトにより形成された二条のスクリューとしてもよい。そして、この場合、前記第二通路を形成する前記第一フライトと前記第二フライトにおいて、該第一フライトが該第二フライトより前記金型側に位置する場合、該第二フライトの横断面の厚さは、該第一フライトの横断面の厚さよりも薄くなるように構成してもよい。第一フライトが第二フライトより前記金型側に位置するように構成されることは、樹脂材料を送り出す際に第一フライトに第二フライトよりも大きな荷重が係ることを意味する。そこで強度確保のためにも、第一フライトの厚さを厚くすることは重要であるが、第二フライトの厚さを比較的薄くすることで、第一通路の容積(もしくは、スクリューの長手方向に沿った断面積)を大きくでき、成形機の送り出し能力を向上させることができる。
【0014】
また、本発明を、成形機に用いられる成形機用スクリューの側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、ホッパから供給される樹脂材料を圧縮し、金型内に計量することで成形を行う成形機において、該ホッパから樹脂材料が供給されるための供給口を有する筒状のシリンダの長手方向に沿って、該シリンダ内に回転自在に収容されるとともに、該回転によって該供給口を介して供給された樹脂材料を該金型に送り出すスクリューであって、前記シリンダ内に前記スクリューが収容された状態で、該スクリューによって樹脂材料の圧縮が行われる所定圧縮部位から前記金型もしくはその近傍までの所定範囲がヒータによって加熱され、前記スクリューは、前記ヒータにより加熱される所定加熱部位から該スクリューに沿って前記供給口に至るまで延在する第一通路と、該第一通路とは独立した通路であって、該所定加熱部位から該スクリューに沿って該供給口を越える所定排出部位まで延在する第二通路とを有する。そして、前記第一通路は、前記開口部を介して前記ホッパからの樹脂材料の供給が行われ、前記スクリューの回転により樹脂材料が送り出され、前記第二通路は、樹脂材料の進入が禁止されるとともに前記所定排出部位において前記シリンダの外部から真空引きされる。
【0015】
また、上記成形機用スクリューにおいて、前記スクリューは、前記所定加熱部位と前記供給口との間では該スクリューの表面に設けられた、複数のフライトにより形成された複数条のスクリューであって、前記第一通路と前記第二通路は、前記複数のフライトのうち一部又は全部のフライトによって、前記スクリューの表面上を螺旋状に延びる互いに独立した空間として構成されてもよい。
【0016】
また、上述までの成形機について開示された技術的思想も、上記成形機用スクリューに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
シリンダ内の樹脂材料を効率的に真空状態に置き、成形品の仕上がりを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、本発明に係る成形機の実施例について、明細書添付の図面に基づいて説明する。尚、当該実施例は本発明に係る成形機の一例を示すものであり、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
ここで、図1は、本発明に係る成形機1の全体構成を示す図である。成形機1は、いわゆる押出成形機であるが、そこで用いられる後述するスクリューは、その他のタイプの成形機、例えば射出成形機等にも適用可能である。成形機1には、二段の直列につながった第一ホッパ3と第二ホッパ4が設けられている。そして、第二ホッパ4は、取付装置4aを介して、シリンダ7上の供給口8に取り付けられている。これらのホッパから供給口8を介して供給されてくる樹脂材料が、シリンダ7と、該シリンダ7の軸方向に沿ってその内部に回転自在に収容されているスクリュー10とによって成形用の金型に送り出されることで、成形品の押出成形が実行されることになる。さらに、固形状の樹脂材料を溶解するためにシリンダ7の金型側の部分にはヒータ9が設けられ、その加熱によりスクリュー10によって送り出されている樹脂材料の溶解が促進される。なお、成形機1においては、スクリュー10は、駆動装置(モータ等)とギアボックス20を介して接続され、これにより駆動装置の駆動力が減速され、該スクリュー10に伝えられる。なお、スクリュー10とギアボックス20との連結は、図に示すようにキーを用いて行われる。
【0020】
ここで、第一ホッパ3および第二ホッパ4によるシリンダ7内への樹脂材料の供給について説明する。第一ホッパ3には、成形品の材料となる樹脂材料(例えば、ペレット等)を所定量貯留することが可能であるとともに、当該樹脂材料は、材料投入装置2によって第一ホッパ3内に投入される。また、第一ホッパ3と第二ホッパ4との間には、図示しない開閉可能なシャッターが設けられ、その開閉により第一ホッパ3に貯留されていた樹脂材料が第二ホッパ4内に投入され、そこに貯留されることになる。
【0021】
ここで、第二ホッパ4の上側に配置される第一ホッパ3には、材料投入装置2と同程度の高さの部分に、第一ホッパ3内とその外部とを連通する排気孔3aが設けられている。この排気孔3aは排気ポンプ5につながれ、その結果、排気ポンプ5による排気の結果、第一ホッパ3の内部を所定の真空状態(例えば、−0.05MPa程度)に形成することが可能である。さらに、第一ホッパ3と第二ホッパ4との間に設けられているシャッターを開けた状態で排気ポンプ3aを作動させれば、ある程度第二ホッパ4内も真空状態を形成することは可能である。しかし、本実施例に係る成形機1のおいては、第二ホッパ4内の真空状態の形成およびシリンダ7内の真空状態の形成は、後述するように主に排気ポンプ6が担う。
【0022】
このように第一ホッパ3と第二ホッパ4の二段構成のホッパにより樹脂材料を供給することで、第二ホッパ4内の真空状態が急激に低下することを抑制できる。すなわち、第三ホッパ3から第二ホッパ4へ樹脂材料を供給する場合は、材料供給装置2から樹脂材料の供給を受けた第一ホッパ3の内部を、排気ポンプ5によってある程度低下させた状態で、第三ホッパ3から第四ホッパ4への樹脂材料の移動を行えば、材料供給時に第二ホッパ4の内部を大気圧にさらす必要がなくなる。このようにホッパを二段構成にすることで、シリンダ7に供給される樹脂材料から水分を除去することができるため、樹脂材料の成形時に発生するガスを抑制することが可能となる。
【0023】
しかし、排気ポンプ5のようにホッパ側に設けられた排気ポンプでは、シリンダ7内には順次、成形に供される樹脂材料が充填されているため、樹脂材料の成形時に発生するガスを、シリンダ7から排出させ、金型側に流れ込まないようにするのは容易ではない。そこで、成形1においては、シリンダ7内を効率的に真空状態にするために、スクリュー7の構造を工夫するとともに、主にシリンダ7の内部の真空引きを行うための排気ポンプ6を設置している。
【0024】
先ず、スクリュー10の詳細な構造について、図2、図3に基づいて説明する。なお、成形機1において、スクリュー10によって樹脂材料の送り出しが行われる状態においては、図1に示すように、シリンダ7上の供給口8近傍からヒータ9による加熱が開始され
る部位近傍に至るまでの供給ゾーン、該供給ゾーンに隣接し、ヒータ9の加熱を受けながらスクリュー10の回転によって樹脂材料の圧縮が行われる圧縮ゾーン、押出成形のために溶解した樹脂材料の計量が行われる計量ゾーンが形成される。さらに、成形機1においては、排気ポンプ6によってシリンダ7の内部が排気される排気ゾーンも形成されており、この排気ゾーンは圧縮ゾーンとは反対側で供給ゾーンに隣接し、供給口8近傍からスクリュー10の端部にまで至るゾーンである。なお、図2は、排気ゾーンから圧縮ゾーンにわたる範囲での、シリンダ7の内部に収容されたスクリュー10の断面構成(スクリュー10の軸方向に沿った断面)を示す図であり、図3は、圧縮ゾーンの途中であってヒータ9により加熱が行われている所定加熱部位の近傍に位置する、スクリュー10の詳細な構造を示す図である。
【0025】
図2に示すように、排気ゾーンから圧縮ゾーンにかけてのスクリュー10では、第一フライト11と第二フライト12の二つのフライトによる、二条のスクリューが形成されている。この二つの第一フライト11と第二フライト12によって、その間のスクリュー10の表面上に独立した二つの螺旋状の通路である第一通路13と第二通路14とが形成される。第一通路13は、図2に示す状態では、右側に第二フライト12が位置し左側に第一フライト11が位置することで両フライトに挟まれて形成される。一方で、第二通路14は、図2に示す状態では、右側に第一フライト11が位置し左側に第二フライト12が位置することで両フライトに挟まれて形成される。これら第一通路13と第二通路14とは互いに非干渉で独立した螺旋状の通路である。ここで言う「非干渉で独立した」とは、一方の通路に供給された樹脂材料が他方の通路に漏れ出すおそれがなく、また他方の通路におけるガスの円滑な移動が妨げられない程度を言う。なお、第一フライト11の頂部又は第二フライトの頂部と、シリンダ7の内壁との間に形成されるクリアランスは、0.1〜0.15mmが確保されているが、当該クリアランスは、第一通路13と第二通路14の「非干渉で独立した」状態を阻害するものではない。
【0026】
ここで、第一フライト11と第二フライト12の詳細な構成について説明する。先ず、第一フライト11は、排気ゾーンから計量ゾーンまでの、概ねスクリュー10の全長にわたって、一定のピッチで該スクリュー10の表面上に螺旋状に形成されている。一方で、第二フライト12については、排気ゾーンから圧縮ゾーンまでの間に延在しており、排気ゾーンと供給ゾーン、および圧縮ゾーンの途中までは、第一フライトに対して一定間隔を保った状態で、一定のピッチで該スクリュー10の表面上に螺旋状に形成されている。その後圧縮ゾーンの所定加熱部位(図2を参照)近傍では、図3に示すように、第一フライト11と第二フライト12との間隔が徐々に詰まっていき、最終的には第二フライト12は終端を迎え、スクリュー10の表面上には第一フライト11のみが延在する状態となる。したがって、図3に示す圧縮ゾーンの所定加熱部位近傍に位置するスクリュー10においては、第二通路14の幅(スクリュー10の軸方向の距離)が徐々に狭まっていき、最終的には第二通路14が終端を迎え、スクリュー10の表面上には第一通路13のみが形成される。そして計量ゾーンにおいては、この第一通路13と第一フライト11が、スクリュー10の表面の大半を占めることになる。
【0027】
このように排気ゾーンから圧縮ゾーンの間で、スクリュー10に第一通路13と第二通路14が、互いに干渉することなく独立した経路として形成される。樹脂材料の視点で言い換えると、スクリュー10がシリンダ7内に収容された状態で、排気ゾーンから圧縮ゾーンの間においては、樹脂材料の送り出しが可能な第一通路13と、第一通路13を送り出されている樹脂材料が、通路の境界を越えて進入することが阻止されている第二通路14とが形成されている。これにより、図2に示すように、成形機1では、第二ホッパ4からスクリュー10上の第一通路13に樹脂材料が供給されると、第二通路14に漏れ出すことなく計量ゾーンまで送り出されていき、その結果、金型で樹脂材料の押出成形が行われる。一方で、このように第一通路13を利用して樹脂材料の送り出しが行われている状
態で、第二通路14には樹脂材料は進入しないため、当該第二通路14はいわば空気・ガス等の通り道となっている。(図2では、第一通路13に樹脂材料が含まれている一方で、第二通路14には樹脂材料が含まれていないことが理解できる。)
【0028】
そして、排気ゾーンにおいて、シリンダ7側に排出口16が設けられ、そこよりシリンダ7の外部に設けられた排出ポンプ6によって真空引きが行われる構成となっている。この結果、排気ゾーン、供給ゾーンはもちろんのこと、圧縮ゾーンにおいても、排出ポンプ6の真空引き動作により、第二通路14を介して、シリンダ7内の真空状態の形成が行われる。特に、本実施例では、第二通路14には樹脂材料が存在しないため、排出ポンプ6による真空引きは極めて円滑に行われ得、以てヒータ9の加熱により樹脂材料から発生したガスも効率的に外部に排出され、成形品の仕上がりは極めて良好となる。また、第二フライト12の厚さは、機械的強度が確保される範囲において第一フライト11の厚さよりも薄く設計されている。これは、第二フライト12の厚さを薄くすることで、第一通路13の容量を可及的に大きくし、成形機1の押出能力を向上させる。同様の理由で第一フライト11の厚さも薄くすることは可能であるが、第一フライト11には樹脂材料を送り出す際に荷重がかかるため、第二フライト12の場合以上に機械的強度を十分に見極める必要がある。
【0029】
ここで、第二ホッパ4とシリンダ7との取り付けは、上述の通り取付装置4aを介して行われているが、この取付装置4aのシリンダ7側の端部は、樹脂材料を供給するために開口部が形成されるとともに、上記排出ポンプ6による真空引きが効率的に行われるように、該取付装置4aとシリンダ7との間は、メタルシールリング等を用いた密封構造となっている。このような構成により、排出ポンプ6によって第二ホッパ4内もある程度真空引きできる。
【0030】
また、取付装置4aの上記開口部と、シリンダ7の径やスクリュー10に設けられた第一フライト11、第二フライト12との相関関係にもよるが、該開口部に対向するスクリュー10側に、第一通路13と第二通路14とがともに開放された状態になっていると、第二ホッパ4から第一通路13と第二通路14の両方に樹脂材料が供給されることになる。一般的に、上記開口部の大きさはシリンダ7の直径の1.6倍〜2倍程度であるため、当該開口部に、第二通路14の少なくとも一つの幅が対向する可能性が高い。図2に示す実施例では、第二通路14の二つの幅が、上記開口部と対向する状態となっている。
【0031】
そこで、スクリュー10には、取付装置4aの開口部が対向する該スクリュー10の第二通路14の一部に対して、当該第二通路14の一部の中に樹脂材料が進入しないように、所定の進入阻止部材15が設けられている。この進入阻止部材15は、第二通路14の幅方向の開放部分を実質的に塞いでいるため、第二ホッパ4から供給される樹脂材料はスクリュー10の第一通路13の中にのみ進入していき、最終的には第一通路13のみをつたって、供給ゾーン、圧縮ゾーンを送り出され、計量ゾーンに至ることになる。すなわち、進入阻止部材15によって、第二通路14での空気・ガス等の円滑な移動は確保される。
【0032】
具体的な進入阻止部材15の形態について、図4A、4Bおよび図5A、5Bに基づいて説明する。図4A、4Bに示す形態は、進入阻止部材15をパイプ部材15aを用いて形成したものである。なお、図4Aは、上記第二通路14の一部に対応するスクリュー10の表面を示した図であり、図4Bは、図4Aに示すスクリュー10の横断面の拡大図である。パイプ部材15aは、図4Bに示すように円筒形状を有しており、それが第二通路14の幅に嵌りこむ寸法を有する。そして、図4Aに示すように第二通路14に沿ってパイプ部材15aが螺旋状に巻かれた状態において、上記第二通路14の一部に対応する範囲をカバーする十分な長さを、該パイプ部材15aは有している。
【0033】
このようにパイプ部材15aを用いることで、上記第二通路14の一部において容易に樹脂材料の第二通路14への進入を阻止することが可能となるとともに、パイプ部材15aの空洞部分により第二通路14での空気・ガス等の円滑な移動は十分に確保される。このとき、スクリュー10とシリンダ7との間のクリアランスを考慮すると、パイプ部材15aの端部が、第一フライト11と第二フライト12の端部を越えないように該パイプ部材15aの配置に留意するのが好ましい(図4Bを参照。)。また、パイプ部材15aの断面形状は、必ずしも円形である必要はないが、第二通路14にパイプ部材15aを嵌め込んだときに、上記第二通路14の一部において、第二通路14に樹脂材料が進入できてしまう不必要な間隙が形成されないように留意しなければならない。
【0034】
次に、図5A、5Bに示す形態は、進入阻止部材15を蓋部材15bを用いて形成したものである。なお、図5Aは、上記第二通路14の一部に対応するスクリュー10の表面を示した図であり、図5Bは、図5Aに示すスクリュー10の横断面の拡大図である。蓋部材15bは、上記第二通路の一部において、第二通路14の開放部分を塞ぐように該一部を挟んで位置する第一フライト11と第二フライト12の端部同士を連結する。この結果、上記第二通路の一部において、樹脂材料の進入が阻止されるとともに、蓋部材15bと第一フライト11、第二フライト12によって第二通路14における空気・ガス等の円滑な移動は十分に確保される。
【0035】
なお、蓋部材15bを設ける場合、スクリュー10とシリンダ7との間のクリアランスに留意しなければならない。例えば、上記第二通路14の一部においては、第一フライト11と第二フライト12の高さを、当該一部以外の範囲の第二通路14を形成する第一フライト11と第二フライト12の高さよりも、蓋部材15bの厚さの分だけ低くするのが好ましい。また、蓋部材15bの取り付けの際に生じる歪みにも十分に留意するのが好ましい。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の第2の実施例に係る成形機1について、図6、7A、7Bに基づいて説明する。第2の実施例に係る成形機1と第1の実施例に係る成形機1の相違は、真空引きを行う排出ポンプの配置と、そのためにスクリュー10に設けられたガス等の排出のための通路である。そこで、第1の実施例と共通する構成については同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。なお、図6は、第2の実施例に係る成形機1の構成を示す図である。また、図7Aは、図6におけるA−A断面におけるスクリュー10の断面図であり、図7Bは、圧縮ゾーンの所定加熱部位近傍における、スクリュー10の表面を示す図である。
【0037】
図6に示す成形機1においては、図7A、7Bに示すように、スクリュー10の中心を軸方向に沿って延在する中空部10bが設けられている。そして、この中空部10bからスクリュー10の第一通路13に向けて放射状に延びる貫通穴10aが設けられている。この貫通穴10aは、中空部10bの軸(スクリュー10の軸に平行)に沿った複数個所において、各箇所で四方に放射状に形成されており(図7Aを参照)、また貫通穴10aの直径は、樹脂材料が進入することが困難となる程度の径である。図7Bにおいては、圧縮ゾーンでの所定加熱部位近傍における貫通穴10aのみが記載されており、第一通路13のピッチに合わせて複数個所で設けられている貫通穴10aの記載は省略されている。なお、貫通穴10aは、中空部10bの軸の全長にわたって設けられるのが好ましいが、その一部に設けられる形態でも構わない。その場合、貫通穴10aは、加熱された樹脂材料から多くのガスが発生する圧縮ゾーンに対応する一部分に設けられるのが好ましい。
【0038】
そして、スクリュー10に設けられた中空部10bは、ギアボックス20の内部でその
終端10cを迎える。そして、この10cには、配管18を連結するためのネジ加工が施されており、これによりスクリュー10の中空部10bは、配管18を介して排出ポンプ19に接続されることになる。この排出ポンプ19は、真空引き動作を行うポンプであり、それにより、シリンダ7内での真空状態の形成が実現される。詳細には、排出ポンプ19が真空引き動作を行うことで、中空部10bおよび貫通穴10aを介して、第一通路13内を送り出されている樹脂材料から発生するガスをシリンダ7の外部に排出することができる。この中空部10bおよび貫通穴10aには樹脂材料は侵入できないため、樹脂材料から発生したガスは、排出ポンプ19によって効率的に排出され、成形品の仕上がりが極めて良好となる。
【0039】
また、貫通穴10aの形態として、中空部10bと第二通路14とをつなぐように構成されてもよい。すなわち、第一通路13を送り出されヒータ9によって加熱された樹脂材料から発生したガスが、第1の実施例と同様に第二通路14を排気ゾーンに遡っていく過程で、該第二通路14から中空部10b内に引き込まれるように貫通穴10aを構成する。このように構成しても、シリンダ7内を効率的に真空状態とすることができる。もちろん、貫通穴10aを第一通路13、第二通路14の両通路に開口するように構成しても構わない。
【0040】
また、上記実施例では、スクリュー10を第1の実施例と同様に、一部において第一フライト11と第2フライト12によって形成される二条のスクリューとして構成しているが、第一フライト11のみで構成される一条のスクリューに、上記中空部10bとスクリューの第一フライト部分を除く表面に貫通する上記貫通穴10aとを設ける構成としてもよい。このように構成しても、第二ホッパ4から供給された樹脂材料は、一条のスクリュー10によって送り出されるとともに、ヒータ9の加熱により発生したガスは、樹脂材料が存在しない貫通穴10aおよび中空部10bを通って、排出ポンプ19によって効率的に外部に排出される。これにより、成形品の仕上がりが極めて良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施例に係る成形機の構成を示す図である。
【図2】図1に示す成形機に用いられるスクリューおよびシリンダの構成を示す図である。
【図3】図2に示すスクリューの表面の所定加熱部位での拡大図である。
【図4A】図1に示す成形機において、第二ホッパの開口部に対向するスクリューの表面の第一の拡大図である。
【図4B】図4Aに示すスクリューの断面図である。
【図5A】図1に示す成形機において、第二ホッパの開口部に対向するスクリューの表面の第二の拡大図である。
【図5B】図5Aに示すスクリューの断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る成形機の構成を示す図である。
【図7A】図6に示す成形機に用いられるスクリューの断面図である。
【図7B】図6に示す成形機に用いられるスクリューの表面を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・・成形機
3・・・・第一ホッパ
4・・・・第二ホッパ
5、6、19・・・・排出ポンプ
7・・・・シリンダ
8・・・・供給口
9・・・・ヒータ
10・・・・スクリュー
10a・・・・貫通穴
10b・・・・中空部
11・・・・第一フライト
12・・・・第二フライト
13・・・・第一通路
14・・・・第二通路
15・・・・侵入阻止部材
15a・・・・パイプ部材
15b・・・・蓋部材
20・・・・ギアボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパから供給される樹脂材料を圧縮し、金型内に計量することで成形を行う成形機であって、
前記ホッパから樹脂材料が供給されるための供給口を有する筒状のシリンダと、
前記シリンダの軸方向に沿って、該シリンダ内に回転自在に収容されるとともに、該回転によって前記供給口を介して供給された樹脂材料を前記金型に送り出すスクリューと、
前記スクリューによって樹脂材料の圧縮が行われる所定圧縮部位から前記金型もしくはその近傍までの所定範囲を加熱するヒータと、を備え、
前記スクリューは、前記ヒータにより加熱される所定加熱部位から該スクリューに沿って前記供給口に至るまで延在する第一通路と、該第一通路とは独立した通路であって、該所定加熱部位から該スクリューに沿って該供給口を越える所定排出部位まで延在する第二通路とを有し、
前記第一通路は、前記開口部を介して前記ホッパからの樹脂材料の供給が行われ、前記スクリューの回転により樹脂材料が送り出され、
前記第二通路は、樹脂材料の進入が禁止されるとともに前記所定排出部位において前記シリンダの外部から真空引きされる、
成形機。
【請求項2】
前記スクリューは、前記所定加熱部位と前記供給口との間では該スクリューの表面に設けられた、複数のフライトにより形成された複数条のスクリューであって、
前記第一通路と前記第二通路は、前記複数のフライトのうち一部又は全部のフライトによって形成される、前記スクリューの表面上を螺旋状に延びる互いに独立した空間である、
請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記スクリューは、前記複数のフライトのうち二つのフライトの間に延在する前記第二通路の一部であって、前記供給口を介して前記ホッパと対向する所定範囲の該第二通路の一部に対して、樹脂材料が侵入することを阻止する進入阻止部材が設けられる、
請求項2に記載の成形機。
【請求項4】
前記進入阻止部材は、前記所定範囲に対応する前記第二通路の一部に、該第二通路に沿って延在して設けられるパイプ部材である、
請求項3に記載の成形機。
【請求項5】
前記進入阻止部材は、前記所定範囲に対応する前記第二通路の一部において、該一部を挟んで位置する前記二つのフライト同士を連結する蓋部材である、
請求項3に記載の成形機。
【請求項6】
前記スクリューは、前記複数のフライトに含まれる第一フライトと第二フライトの二つのフライトにより形成された二条のスクリューである、
請求項2から請求項5の何れか一項に記載の成形機。
【請求項7】
前記第二通路を形成する前記第一フライトと前記第二フライトにおいて、該第一フライトが該第二フライトより前記金型側に位置する場合、該第二フライトの横断面の厚さは、該第一フライトの横断面の厚さよりも薄い、
請求項6に記載の成形機。
【請求項8】
ホッパから供給される樹脂材料を圧縮し、金型内に計量することで成形を行う成形機において、該ホッパから樹脂材料が供給されるための供給口を有する筒状のシリンダの長手
方向に沿って、該シリンダ内に回転自在に収容されるとともに、該回転によって該供給口を介して供給された樹脂材料を該金型に送り出すスクリューであって、
前記シリンダ内に前記スクリューが収容された状態で、該スクリューによって樹脂材料の圧縮が行われる所定圧縮部位から前記金型もしくはその近傍までの所定範囲がヒータによって加熱され、
前記スクリューは、前記ヒータにより加熱される所定加熱部位から該スクリューに沿って前記供給口に至るまで延在する第一通路と、該第一通路とは独立した通路であって、該所定加熱部位から該スクリューに沿って該供給口を越える所定排出部位まで延在する第二通路とを有し、
前記第一通路は、前記開口部を介して前記ホッパからの樹脂材料の供給が行われ、前記スクリューの回転により樹脂材料が送り出され、
前記第二通路は、樹脂材料の進入が禁止されるとともに前記所定排出部位において前記シリンダの外部から真空引きされる、
成形機用スクリュー。
【請求項9】
前記スクリューは、前記所定加熱部位と前記供給口との間では該スクリューの表面に設けられた、複数のフライトにより形成された複数条のスクリューであって、
前記第一通路と前記第二通路は、前記複数のフライトのうち一部又は全部のフライトによって、前記スクリューの表面上を螺旋状に延びる互いに独立した空間である、
請求項8に記載の成形機用スクリュー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2010−105332(P2010−105332A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281543(P2008−281543)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(593030990)アイ・ケー・ジー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】