説明

成形用金型

【課題】部品点数を削減でき、金型の小型軽量化及びコストダウンが可能な、型締め機構を備えた成形用金型を得ることである。
【解決手段】本発明は、上型2と下型1との型閉じ時に、両者が開かないように型締め保持すると共に、該型締め保持を解除する型締め機構を備えている成形用金型において、該型締め機構が、上型に固定されたガイドピン3と、下型内に回転可能に組み込まれているクランプブロック4と、下型の下方から挿入され、該クランプブロックと係合してこれを回転させるブロック回転部品5との3つの構成部品からなる。型閉じ時に、該ガイドピンの先端が該クランプブロック内に挿入され、該ブロック回転部品によって該クランプブロックを回転することによって、該ガイドピンと該クランプブロックとが係合して、型締めが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数個の成形用金型を各ステーションへ順次搬送し、成形作業を分割して行う型搬送式成形機に好適な成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に型搬送式成形機においては、図1に示すようにインサート部品のセット、型閉じ、射出、冷却、型開き、成形品取出し等の各作業を行う各々のステーションS1〜S10へ数個の金型Mを順次搬送することで、これらの成形作業を分割して行っている。そして、成形品の取出しが行われた金型Mは、当初のインサート部品のセット作業ステーションS1へと戻される。このように成形作業を分割し閉サイクルの作業とすることで、成形作業のサイクルタイムを短縮することができる。
【0003】
このような型搬送式成形機では、射出ステーションS2で金型Mのキャビティ内に成形機から溶融樹脂が注入され、金型Mのゲートがシールされた直後に金型Mを射出ステーションS2から冷却ステーションS3,S4へと搬送されるため、冷却中に金型M内の樹脂圧により金型Mが開かないようにするため、金型自身が自己クランプする機構(型締め機構)が必要である。
【0004】
型搬送式成形機に用いられる金型において、自己クランプする機構として、従来より特許文献1に示される機構が知られている。この従来の機構は、クランプ本体、クランプバー、クランプブロック、解除バー及び解除ピン等から構成され、下型にはクランプ本体が固定され、上型にはクランプバーが固定されていて、下型と上型とが型閉じされるとクランプ本体に上下方向に形成された溝内にクランプバーが挿入されるようになっている。クランプ本体内には、横方向に摺動可能なクランプブロックが収納されていて、スプリングによって横方向から溝内に突出するようになっている。また、クランプ本体には、クランプブロックの横方向の動きを規制する解除バーが設けられている。
【0005】
このような従来のクランプ/アンクランプ機構においては、クランプ状態において、上下型の型閉じが行われ、クランプバーがクランプ本体の溝内に挿入される。一方クランプブロックはスプリングによって付勢され前進し、溝内にその先端が突出し、クランプバーの係合凹部内に突入することで、クランプブロックがクランプバーに係合し、上型と下型とがロックされるようになっている。
【0006】
アンクランプ動作においては、エジェクタロッドが解除バーを上げ操作する。これによってクランプブロックはスプリングの付勢力によって後退し、クランプ本体の溝内から退く。これによって、クランプバーとクランプブロックの係合が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−216413号公報
【0008】
このように、従来のクランプ/アンクランプ機構(型締め機構)では、機構を構成する部品点数が多いため金型のコストが増加すること、型が大きく、型重量が重くなるという問題がある。また、クランプブロックが直線動作するため、そのストローク分、部品サイズが大きくなるという問題がある。これらの問題点は、金型の数が多く、金型を搬送する方式の型搬送式成形機では、大きな欠点である。
【0009】
また、クランプブロックの駆動がスプリングのため、クランプブロックとクランプバーとが組み合わさっているか、クランプブロックが前進しているかがわからず、別機構を設けてチェックする必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を削減でき、金型の小型軽量化が可能で、かつ金型のコストダウンを図ることができる型締め機構を備えた成形用金型を提供することである。
また、本発明の更なる目的は、クランプ(締付け)が成立しているか否かを容易にチェックすることが可能な成形用金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載の成形用金型を提供する。
請求項1に記載の成形用金型は、下型1、上型2及び型閉じ時に、上型2と下型1とのパーティング面Lが開かないように型締め保持すると共に、この型締め保持を解除する型締め機構とを備えていて、この型締め機構が、上型2に固定され、先端が逆T字形状をしたガイドピン3と、下型1内に回転可能に埋め込まれているクランプブロック4と、下型1の下方から挿入され、クランプブロック4を回転させるブロック回転部品5とより構成されており、型閉じ時に、ガイドピン3の先端がクランプブロック4内に挿入され、ブロック回転部品5によってクランプブロック4を回転することによって、ガイドピン3とクランプブロック4とが係合して、上型と下型とが型締めされることにある。これにより、型締め機構の部品点数を削減できると共に、成形用金型の小型軽量化が可能となり、かつ成形用金型のコストダウンを図ることができる。また、クランプブロック4の駆動源を型毎に持たせていたのを設備側に該機能を持たせることで、システムとして駆動源の数を減少できる。更には、クランプブロック32の駆動を直線方式から回転方式にすることで、型締め機構をコンパクト化できる。
【0012】
請求項2の成形用金型は、クランプブロック4の上面には、ガイドピン3の先端を受け入れることができるスリット又は穴41が形成されていて、その内部は、前記ガイドピン3の先端を受け入れた状態でクランプブロック4が回転できるような空間42が形成されており、さらにクランプブロック4の下部には、ブロック回転部品5の嵌合凹部51と凹凸嵌合する嵌合凸部43が直径方向に直線状に形成されていることにある。これにより、ガイドピン3の先端がクランプブロック4内に挿入された状態で、クランプブロック4をブロック回転部品5により回転させることができる。
請求項3の成形用金型は、ガイドピン3の逆T字状が水平部31と垂直部32とよりなり、水平部31の上面が垂直部32により2つの面に区切られていて、それぞれテーパA面31aとテーパB面31bを形成していて、両者は相反する傾斜面となっているものであり、これにより、クランプブロック4の回転により、ガイドピン3とクランプブロック4とをしっかりと係合させることができる。
【0013】
請求項4の成形用金型は、クランプブロック4の空間42が、スリット41に連通する2つの円弧状の空間42A,42Bであり、それぞれの空間の天井は、テーパ面であって係合A面42aと係合B面42bとなっており、一方の第1の空間42Aには、ガイドピンのテーパA面側の水平部31が入り込むようになっていて、他方の第2の空間42Bには、ガイドピンのテーパB面側の水平部31が入り込むようになっていて、ガイドピンとクランプブロックとがテーパ面同士で接触し、しっかりと係合するようにしたものであり、これにより、両者は一種のくさび作用(又はネジのような作用)でしっかりと締付けられる。
請求項5の成形用金型は、上型2と下型1との締め付けを行う、ガイドピン31とクランプブロック32との締め付けの良否の判定が、クランプブロック32の回転角度θを測定することによって行うようにしているものであり、これにより、締め付け力が正常であるか否かが判断でき、テーパ面の磨耗、異物がテーパ面にのっているか、又は型組付け精度がでていない等の接触異常の要因を早期に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の成形用金型が使用されるトランスファー成形機の概念図である。
【図2】本発明の実施の形態である成形用金型の上型と下型を説明する概念斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態である成形用金型の上型と下型との概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態である成形用金型の型締め機構の分解図である。
【図5】本発明の実施の形態である成形用金型の型締め機構の動作(a)〜(c)を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態である成形用金型の型締め機構における型締め(クランプ)の良否の判定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の成型用金型について説明する。図1は、本発明の成形用金型を用いる型搬送式成形機の全体構成を説明する概念図である。例えば、図1に示すように2列に配置された10個のステーションS1〜S10が設けられていて、各ステーションS1〜S10間を金型Mが移動することで、樹脂成形が行われる。即ち、ステーションS1で金型M内のキャビティにインサート部品が投入され、金型Mが閉じられる。次に、この閉じられた金型Mは、ステーションS2に移送され、ここで後に詳述する型締め機構によって、金型Mの型締め(クランプ)が行われた後に、金型Mは成形機に接続され、キャビティ内への溶融樹脂の充填が行われる。このようにして、ステーションS2では、金型Mの型締め及び成形機からの溶融樹脂の射出が行われる。
【0016】
溶融樹脂の射出・充填が行われた金型Mは、次のステーションS3及びS4に送られ、ここで充填樹脂の冷却が行われる。次いで、ステーションS5では、型締め機構による金型Mの型締めの解除(アンクランプ)が行われ、ステーションS6では、金型Mの型開きが行われる。更に、エジェクタ機構によりエジェクタピンで成形品を型から突き出す。ステーションS7では、型からの成形品の取り出しが行われる。成形品が取り出された金型Mは、ステーションS8〜S10を搬送され、当初のステーションS1に戻される。このような閉サイクルが繰り返えされて成形が行われる。なお、金型Mは、例えばレールによって各ステーション間を移動する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態である型締め機構を備えた成形用金型の分解斜視概略図であり、図3は、同じ型締め機構を備えた成形用金型の分解断面概略図である。本発明の成形用金型Mは、上型2と下型1とよりなり、本発明の特徴である型締め機構の各構成部品が、上型2と下型1とに分けて取り付けられている。上型2には、型締め機構の構成部品であるガイドピン3がボルト6等の固定具によって上型2に取り付けられている。図2,3では、ガイドピン3は4本設けられているが、この本数は適宜決められるものであり、要は金型Mの型締めが十分に行われるような本数であればよい。
【0018】
下型1のガイドピン3に対応する位置には、型閉じ及び型締めの際に上型2に取り付けられたガイドピン3が挿入されるための貫通孔11が形成されている。貫通孔11の数は、ガイドピン3の数に等しい。貫通孔11の中間部には、型締め機構の構成部品であるクランプブロック4が、回転(回動)自在に組み込まれている。クランプブロック4の組み込み位置は、上型2と下型1の型閉じが行われたとき、ガイドピン3の先端がクランプブロック4内に収容されるような位置に組み込まれ又は埋め込まれている。この位置は、貫通孔11の直径より、大き目に形成されている。また、上型2及び下型1の両者には、それぞれキャビティ9の一部が形成されていて、上型2と下型1とが型閉じされることでキャビティ9が形成される。
【0019】
また、下型1のキャビティ9に対応する下面には凹部12が形成されていて、この凹部12内にはエジェクタプレート8が設けられている。エジェクタプレート8には、下型1の内部を貫通してキャビティ9に達する複数のエジェクタピン7が取り付けられている。エジェクタプレート8及びエジェクタピン7を上下動するエジェクタ駆動機構(図示せず)は、例えばステーションS7の金型Mが置かれる下部に設置される。エジェクタ駆動機構によりエジェクタピン7がキャビティ9内に突き出されることにより、成形品が型から離れ、容易に成形品を型から取り出すことができる。
【0020】
金型Mには、型閉じされた上型2と下型1のパーティンク面Lがキャビティ9内に充填された内部の樹脂圧によって開けられないように、金型Mを型締め保持するための型締め機構が、金型Mの周囲に、例えば4ヶ所設けられている。以下、型締め機構の詳細を図4及び5を使用して説明する。
【0021】
型締め機構は、ガイドピン3、クランプブロック4及びブロック回転部品5の3つの構成部品から構成されている。ガイドピン3は、前述したようにボルト6等の固定具によって上型2に取り付けられ、固定されている。ガイドピン3の先端は、逆T字状となっていて、この逆T字状の水平部31の上面は、逆T字状の中心の垂直部32によって2つの面31a,31bに区切られていて、それぞれテーパA面31aとテーパB面31bを形成している。テーパA面31aとテーパB面31bとは、相反する傾斜をしており、図3において、テーパA面31aは手前側が高く奥側が低くなる傾斜に対し、テーパB面31bは手前側が低く奥側が高くなる逆の傾斜になっている。水平部31の長さは、後述するクランプブロック4に形成されるスリット41の長さより短く、またその幅は、スリット41の幅よりも狭くなっている。
【0022】
型締め機構の構成部品であるクランプブロック4は、前述したように下型1内に回転(回動)可能に組み込まれている。クランプブロック4は、全体として略円筒形状であり、その直径は、下型1の貫通孔11の直径よりも大きい。クランプブロック4の上面には、ガイドピン3の水平部31が通り抜けることが出来るような大きさの幅をもつスリット又は矩形状の穴41が形成されていると共に、クランプブロック4の中間部には、スリット41に連通する空間42として、2つの円弧状の空間42A,42Bが周方向に形成されている。この2つの円弧状の空間42A,42Bのそれぞれの天井である係合A面42aと係合B面42bは、スリット41に連通する側(間口側)が高く、奥に行く(連通側から離れる)に従って低くなるテーパ面となっている。一方の第1の円弧状の空間42Aには、ガイドピン3のテーパA面31aを有する側の水平部31が入り込むようになっており、他方の第2の円弧状の空間42Bには、ガイドピン3のテーパB面31bを有する側の水平部31が入り込むようになっている。そのため、テーパA面31aとテーパB面31bの傾斜角度と係合A面42a及び係合B面42bの傾斜角度とが略等しくされている。
【0023】
また、円筒形状のクランプブロック4の下面には、中心を通って直径方向に直線状の嵌合凸部又はキー43が形成されている。好ましくは、嵌合凸部43の延在方向が、クランプブロック4の上面に形成されたスリット41の延長方向と一致していることが望ましい。嵌合凸部43は、動作時に、後述するブロック回転部品5の嵌合凹部に凹凸嵌合される。
【0024】
型締め機構の構成部品であるブロック回転部品5は、クランプブロック4を回転(回動)させるためのものである。ブロック回転部品5は、全体として円筒形状をしていて、下型1の貫通孔11内を自由に出入できるように、その直径は貫通孔11の直径よりも小さく形成されている。また、ブロック回転部品5の先端面51には、中心を通って直径方向に直線状に嵌合凹部又はキー溝52が形成されている。ブロック回転部品5は、図示されていない設備側の回転(回動)駆動機構に結合されており、型締め及び型締め解除を行うステーションS2及びS5又はS6に設けられている。
【0025】
上記構成よりなる型締め機構の動作について、図5に基づいて説明する。図5(a)は、型開きの状態におけるガイドピン3、クランプブロック4及びブロック回転部品5の3者の関係を表わしている。即ち、ガイドピン3はクランプブロック4との係合が解除され、クランプブロック4の上方に待機している。このとき、ガイドピン3の逆T字状の先端の水平部31が水平に延在している方向が、クランプブロック4に形成されたスリット41が延在する方向と一致していることが好ましい。また、ブロック回転部品5もクランプブロック4との凹凸嵌合から解放されている。
【0026】
図5(b)は、型閉じの状態におけるガイドピン3、クランプブロック4及びブロック回転部品5の3者の関係を表わしている。ガイドピン3は、上型2に伴って下降し、その先端の水平部31が、上型2の上方から貫通孔11及びクランプブロック4のスリット41を通って挿入され、円弧状の空間42A,42Bに臨む位置であるスリット41の底面に当接した状態で止まる。その一方、ブロック回転部品5が下型1の下方から貫通穴11内に挿入されて上昇し、ブロック回転部品5の先端面51に形成された嵌合凹部52が、クランプブロック4の下面の嵌合凸部43と凹凸嵌合する。
【0027】
図5(c)は、型締め(クランプ)の状態におけるガイドピン3、クランプブロック4及びブロック回転部品5の3者の関係を表わしている。図5(b)の型閉じ時の3者の状態において、図示しない回転(回動)駆動機構によりブロック回転部品5を反時計回りに回転(回動)すると、ブロック回転部品5と凹凸嵌合しているクランプブロック4も一緒になって反時計回りに回転(回動)する。クランプブロック4の回転に伴って、ガイドピン3の2つのテーパA面31aとテーパB面31bを有している水平部31が、クランプブロック4の2つの円弧状の空間42A,42Bに入り込む。ガイドピン3のテーパA面31aがクランプブロック4の第1の空間42Aの係合A面42aに、またガイドピン3のテーパB面31bがクランプブロック4の第2の空間42Bの係合B面42bにそれぞれしっかりと接触することで、ガイドピン3とクランプブロック4とはしっかりと係合される。このようにして、一種のくさび作用(又はネジのような作用)でガイドピン3とクランプブロック4とはしっかりと係合され、型締めが完了する。
【0028】
型締め解除(アンクランプ)及び型開きは、図5の(a),(b),(c)の動作を逆の順序で行えばよい。即ち、図5(c)において、ブロック回転部品5を逆回転である時計回りに回転(回動)させて、図5(b)の状態にもってくる。これによって、型締めが解除される。次に、クランプブロック4とブロック回転部品5の凹凸嵌合を解放し、両者を離す。また、上型2を下型1から開いて、ガイドピン3を上昇させ、クランプブロック4から離し、図5(a)の状態にする。
【0029】
図6は、ガイドピン3とクランプブロック4とが正常に係合して、十分な締め付け力(クランプ力)を発揮するようになっているかを判定する方法(又は機構)を説明する要部断面図と部分平面図である。(a)は判定が良の場合であり、(b),(c)は判定が不良の場合である。即ち、図6(a)では、ガイドピン3のテーパA面31aとクランプブロック4の係合A面42a(及びガイドピン3のテーパB面31bとクランプブロック4の係合B面42b)とが、テーパ面同士が正常に接触していて所定の締付け力(クランプ力)が確保されている場合を示している。また、このときクランプブロック4は角度θだけ回転(回動)したことを示している。
【0030】
図6(b)では、テーパA面31bと係合A面42a(又はテーパB面31bと係合B面42b)との間に異物が介在していて、両者の十分な接触が得られない場合を示している。また、このときは、クランプブロック4は、正常な場合の回転(回動)角度θよりも小さい角度θ1だけしか回転しないことを示している。
【0031】
図6(c)では、テーパA面31と係合A面42a(又はテーパB面31bと係合B面42b)との両者又はいずれか一方のテーパ面が磨耗し、クランプブロック4が回転過多になった場合を示している。即ち、クランプブロック4は正常な場合の回転角度θよりも大きな角度θ2まで回転する。
【0032】
このように、クランプブロック4の回転角度を測定し、その測定結果が規定値内にあるか否かで、ガイドピン3とクランプブロック4との係合が正常に行われ、所定の締付け力が確保されているかどうかを判定することができる。クランプブロック4の回転角度を測定するには、例えばクランプブロック4にエンコーダ(図示せず)を取り付けることによって、クランプブロック4の回転角度を検出するようにすればよい。
【0033】
上記説明の型締め機構では、クランプブロック4を反時計回りに回転させることによって、ガイドピン3との係合が行われ締付け力を確保するようにしているが、クランプブロック4を時計回りに回転させることによってガイドピン3と係合させるようにすることも可能である。但し、その場合は、ガイドピン3のテーパA面31aとテーパB面31bのテーパの方向をそれぞれ逆にすると共に、クランプブロック4の2つの円弧状の空間42A,42Bも、それぞれスリット41を挟んで反対側に形成する必要がある。
【0034】
また、クランプブロック4とブロック回転部品5との凹凸嵌合を、クランプブロック4側に嵌合凸部43を形成し、ブロック回転部品5側に嵌合凹部52を形成しているが、これを逆にしてクランプブロック4側に嵌合凹部を形成し、ブロック回転部品5側に嵌合凸部を形成するようにしてもよい。
【0035】
また、上記説明では、嵌合凸部と嵌合凹部とをキーとキー溝のようなものとして説明しているが、一方の面に嵌合凸部を断面正多角形の柱状部を中心部に形成し、他方の面に嵌合凹部を同じ断面正多角形の穴部を中心部に形成して、両者を凹凸嵌合させるようにしてもよい。
【0036】
以上説明したように、本発明では、型締め機構をガイドピン、クランプブロック及びブロック回転部品の3つの部品で構成でき、部品点数の削減及び機構の簡素化、更には製造コストの削減を図ることができる。また、本発明では、ガイドピンとクランプブロックとの締付け動作を、直線動作ではなくて回転(回動)動作によって行うことができるので、部品のサイズ及び金型を小型化でき、多数の金型を使用し、金型を搬送する型搬送式成形機にとり、大きな利点となる。
更に本発明では、クランプブロックの回転(回動)角度を検出することで、型締め機構による締付け具合の良否を判定できるので、特別に別機構を設けてチェックする必要がなく、その判定が容易である。
また本発明では、ブロック回転部品を設備側に設けることで、クランプブロックの駆動源を金型毎に設けていたものを、例えばステーションS2とステーションS5又はS6の設備側にして、システムとしての駆動源の数を減少することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 下型
11 貫通孔
2 上型
3 ガイドピン
31 水平部
31a テーパA面
31b テーパB面
32 垂直部
4 クランプブロック
41 スリット又は穴
42 空間
42A 第1の空間
42a 係合A面
42B 第2の空間
42b 係合B面
43 嵌合凸部又はキー
5 ブロック回転部品
51 先端面
52 嵌合凹部又はキー溝
M 金型
S1〜S10 ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型(1)と、前記下型に対して移動可能な上型(2)と、型閉じ時に、前記上型と前記下型とのパーティング面(L)が開かないように型締め保持すると共に、この型締め保持を解除する型締め機構とを備えている、樹脂製品を成形する成形用金型において、
前記型締め機構が、
前記上型(2)に固定され、先端が逆T字形状をしたガイドピン(3)と、
前記下型(1)内に回転可能に組み込まれているクランプブロック(4)と、
前記下型(1)の下方から挿入され、前記クランプブロック(4)と係合して、前記クランプブロックを回転させるブロック回転部品(5)、
から構成されていて、型閉じされたときに、前記ガイドピン(3)の先端が前記クランプブロック(4)内に挿入され、前記ブロック回転部品(5)によって前記クランプブロック(4)を回転することによって、前記ガイドピン(3)と前記クランプブロック(4)とが係合して、前記上型と前記下型とが型締めされることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
前記クランプブロック(4)の上面には、前記ガイドピン(3)の先端を受け入れることができるスリット又は穴(41)が形成されていて、その内部は、前記ガイドピンの先端を受け入れた状態で前記クランプブロックが回転できるような空間(42)が形成されており、さらに、前記クランプブロック(4)の下面には、前記ブロック回転部品(5)の嵌合凹部(52)と凹凸嵌合する嵌合凸部(43)が直径方向に直線状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
【請求項3】
前記ガイドピン(3)の逆T字状が水平部(31)と垂直部(32)からなり、前記水平部(31)の上面が前記垂直部(32)により2つの面に区切られていて、それぞれテーパA面(31a)とテーパB面(31b)を形成していて、両者は相反する傾斜面となっていることを特徴とする請求項2に記載の成形用金型。
【請求項4】
前記クランプブロック(4)の前記空間が、前記スリット(41)に連通する2つの円弧状の空間(42A,42B)であり、それぞれの空間の天井は、テーパ面であって係合A面(42a)と係合B面(42b)となっており、一方の第1の空間(42A)には、前記ガイドピンのテーパA面側の前記水平部(31)が入り込むようになっていて、他方の第2の空間(42B)には、前記ガイドピンのテーパB面側の前記水平部(31)が入り込むようになっていて、前記ガイドピン(3)と前記クランプブロック(4)とがテーパ面同士で接触し、しっかりと係合することを特徴とする請求項3に記載の成形用金型。
【請求項5】
前記上型と前記下型との締め付けを行う前記ガイドピン(3)と前記クランプブロック(4)との締め付けの良否の判定が、前記クランプブロック(4)の回転角度θを測定することによって行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−161721(P2011−161721A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25515(P2010−25515)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】