説明

成形装置および成形方法

【課題】樹脂組成物を加圧してシート状に成形する際に当該樹脂組成物に金属粉末が混入するのを確実に防止することができる成形装置および成形方法を提供すること。
【解決手段】成形装置1は、並べて設置された一対のローラ2a、2bを備えている。この成形装置1は、ローラ2aとローラ2bとの間で樹脂組成物を加圧してシート状に成形する装置である。そして、成形装置1では、ローラ2a、2bは、それぞれ、その少なくとも外周面41がセラミックスで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の封止材により半導体チップ(半導体素子)を被覆(封止)してなる半導体パッケージが知られている。半導体パッケージの封止材は、樹脂組成物を、例えば、トランスファー成形等により成形したものである。この樹脂組成物を製造する過程では、当該樹脂組成物を一対のローラ間で加圧してシート状にすることが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の各ローラは、それぞれ、その外周面が金属材料で構成されているのが通常であると考えられる。このように各ローラの外周面が金属材料で構成されていると、ローラ間で樹脂組成物を加圧するときに、当該樹脂組成物と各ローラの外周面との間の摩擦によって、各外周面から金属粉が生じる。このため、金属粉が異物として混入した樹脂組成物が製造されてしまうという問題があった。そして、金属粉が混入した樹脂組成物を半導体パッケージの封止として用いた場合、半導体チップを確実に絶縁して封止することができず、混入した金属粉で半導体チップに短絡が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−297701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、樹脂組成物を加圧してシート状に成形する際に当該樹脂組成物に金属粉末が混入するのを確実に防止することができる成形装置および成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 並べて設置された一対のローラを備え、該一対のローラの間で樹脂組成物を加圧してシート状に成形する成形装置であって、
前記各ローラは、それぞれ、その少なくとも外周面がセラミックスで構成されていることを特徴とする成形装置。
【0007】
(2) 前記各ローラは、それぞれ、円柱状または円筒状をなす芯部と、該芯部の外周部に設けられ、前記セラミックスで構成された外層とを有する上記(1)に記載の成形装置。
【0008】
(3) 前記外層の厚さは、0.2〜100mmである上記(2)に記載の成形装置。
【0009】
(4) 前記セラミックスは、酸化物系セラミックスを含むものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の成形装置。
【0010】
(5) 前記各ローラの外周面の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)は、0〜2μmである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の成形装置。
【0011】
(6) 前記一対のローラは、互いの軸間距離が可変に構成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の成形装置。
【0012】
(7) 前記一対のローラの間を通過する前記樹脂組成物を冷却する冷却手段を備える上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の成形装置。
【0013】
(8) 前記冷却手段により、前記各ローラの外周面の表面温度が20℃以下となっている上記(7)に記載の成形装置。
【0014】
(9) 前記樹脂組成物は、混練装置で混練された混練物であり、
前記一対のローラは、前記混練装置の前記混練物を排出する排出口の下流側に設置される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の成形装置。
【0015】
(10) 前記混練装置は、前記混練物を脱気する機能を有するものであり、
前記一対のローラにより、前記脱気された混練物がシート状に成形される上記(9)に記載の成形装置。
【0016】
(11) 前記樹脂組成物は、ICパッケージの外装部を構成するモールド部となるものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の成形装置。
【0017】
(12) 並べて設置された一対のローラを用い、該一対のローラの間で樹脂組成物を加圧してシート状に成形する成形方法であって、
前記各ローラは、それぞれ、その少なくとも外周面がセラミックスで構成されていることを特徴とする成形方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂組成物を加圧してシート状に成形する際に、その樹脂組成物と各ローラの外周面との間で摩擦が生じ、外周面が摩耗して一部が削れたとしても、その削れたものは、当然にセラミックスである。これに対し、例えば各ローラの外周面が金属製である場合には、樹脂組成物を成形する際に、前述したような摩耗により、当該外周面から金属粉末が生じ、その金属粉末が混入した樹脂組成物となってしまう。しかしながら、本発明では、このような金属粉末が樹脂組成物に混入するのを確実に防止することができ、また、前記削れたセラミックスが樹脂組成物に混入しても、その樹脂組成物は、使用するのに十分耐え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】樹脂組成物の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の成形装置およびその周辺の装置の部分断面側面図である。
【図3】図2に示す成形装置のローラの縦断面図である。
【図4】本発明の成形装置の第2実施形態を示す側面図である。
【図5】本発明の成形装置の第3実施形態を示す部分断面側面図である。
【図6】樹脂組成物を用いたICパッケージの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の成形装置および成形方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、樹脂組成物の製造工程を示す図、図2は、本発明の成形装置およびその周辺の装置の部分断面側面図、図3は、図2に示す成形装置のローラの縦断面図、図6は、樹脂組成物を用いたICパッケージの部分断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図2、図5、図6中の上側を「上」、「上方」または「上流」、下側を「下」、「下方」または「下流」と言う。
【0022】
図2に示す本発明の成形装置1は、最終的に成形体となる樹脂組成物を製造する際のシート化工程で使用される装置である。この成形装置1の説明に先立って、まずは、原材料から樹脂組成物を製造するまでの製造工程の全体を説明する。
【0023】
まず、樹脂組成物の原材料である各材料を用意する。
原材料は、樹脂と、硬化剤と、充填材(微粒子)とを有し、さらに必要に応じて、硬化促進剤、カップリング剤等を有している。樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型、ビフェニール型、ジシクロペンタジエン型、トリフェノールメタン型、多芳香族環型等が挙げられる。
【0025】
硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック型、フェノールアラルキル型、トリフェノールメタン型、多芳香族環型等が挙げられる。
【0026】
充填材としては、例えば、溶融シリカ(破砕状、球状)、結晶シリカ、アルミナ等が挙げられる。
【0027】
硬化促進剤としては、例えば、リン化合物、アミン化合物等が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、シラン化合物等が挙げられる。
【0028】
なお、原材料は、前記材料のうち所定の材料が省略されていてもよく、また、前記以外の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、例えば、着色剤、離型剤、難燃剤、低応力剤等が挙げられる。
【0029】
(微粉砕)
図1に示すように、原材料のうちの所定の材料については、まず、粉砕装置により、所定の粒度分布となるように粉砕(微粉砕)する。この粉砕する原材料としては、例えば、樹脂、硬化剤、促進剤等の充填材以外の原材料であるが、充填材の一部を加えることもできる。また、粉砕装置としては、例えば、連続式回転ボールミル等を用いることができる。
【0030】
(表面処理)
原材料のうちの所定の材料、例えば、充填材の全部または一部(残部)については、表面処理を施すことができる。この表面処理としては、例えば、充填材の表面にカップリング剤等を付着させる。なお、前記微粉砕と表面処理とは、同時に行ってもよく、また、いずれか一方を先に行ってもよい。
【0031】
(混合)
次に、混合装置により、前記各材料を完全に混合する。この混合装置としては、例えば、回転羽根を有する高速混合機等を用いることができる。
【0032】
(混練)
次に、混練装置100により、前記混合された材料を混練する。この混練装置100としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機やミキシングロール等のロール式混練機を用いることができる。
【0033】
(脱気)
次に、前記混練された材料である混練物(樹脂組成物)に対し脱気を行う。この脱気は、例えば混練装置100の前記混練された材料を排出する排出口101に接続された真空ポンプ(図示せず)によって行うことができる。
【0034】
(シート化)
次に、前記脱気された混練物(以下「混練物Q1」と言う)を、成形装置1でシート状に成形し、シート状の材料(以下「シート材Q2」と言う)を得る。なお、成形装置1については、後に詳述する。
【0035】
(冷却)
次に、冷却装置により、シート材Q2を冷却する。これにより、次工程でシート材Q2の粉砕を容易かつ確実に行うことができる。
【0036】
(粉砕)
次に、粉砕装置により、シート材Q2を所定の粒度分布となるように粉砕し、粉末状の材料を得る。この粉砕装置としては、例えば、ハンマー式粉砕機、ナイフ式粉砕機、ピンミル等を用いることができる。
【0037】
(タブレット化)
次に、成形体製造装置(打錠装置)により、前記粉末状の材料を圧縮成形し、成形体である樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
図6に示すように、この樹脂組成物は、例えば、半導体チップ(ICチップ)901の被覆(封止)に用いられ、半導体パッケージ(ICパッケージ)900の外装部を構成するモールド部902となるものである。このモールド部902により、半導体チップ901を保護することができる。なお、樹脂組成物で半導体チップ901を被覆するには、樹脂組成物を、例えばトランスファー成形等により成形し、封止材として半導体チップ901を被覆する方法が挙げられる。図6に示す構成の半導体パッケージ900は、複数のリードフレーム903がモールド部902から突出しており、各リードフレーム903がそれぞれ、例えば金等のような導電性を有する金属材料で構成されたワイヤ904を介して、半導体チップ901と電気的に接続されたものとなっている。
【0039】
なお、前記タブレット化の工程を省略し、粉末状の材料を樹脂組成物としてもよい。この場合は、例えば、圧縮成形や射出成形等により、封止材を成形することができる。
【0040】
次に、成形装置1について説明する。
図2に示す成形装置1は、本発明の成形方法を実行するための装置である。この成形装置1は、混練装置100の排出口101の下流側に設置される。そして、成形装置1で成形されたシート材Q2は、ベルトコンベア200で次工程へ搬送される。
【0041】
成形装置1は、一対のローラ2a、2bを有している。ローラ2aとローラ2bとは、水平に互いに平行に並べて設置されている。また、ローラ2aとローラ2bとの間が、混練装置100の排出口101の鉛直下方に位置している。これにより、混練装置100の排出口101から排出された混練物Q1が迅速にローラ2aとローラ2bとの間を通過することができる。そして、混練物Q1は、ローラ2aとローラ2bとの間を通過する際に、当該ローラ間で加圧されて、シート材Q2となる。
【0042】
また、成形装置1は、ローラ2aとローラ2bとの間を通過するシート材Q2(混練物Q1)を冷却する冷却手段6も有している。同時にローラ2a、2bを冷却することで混練物Q1がローラ2a、2bへ付着するのを防止することができる。
【0043】
ローラ2a、2bの回転数は、特に限定されず、例えば、1〜100rpmであるのが好ましく、4〜45rpmであるのがより好ましい。
【0044】
また、ローラ2aとローラ2bとの軸間距離Pは一定であり、この場合、ローラ2aとローラ2bとの空隙gは、特に限定されず、例えば、0.5〜5mmであることが好ましく、1〜3mmであるのがより好ましい。
【0045】
ローラ2aとローラ2bとの構成は、ほぼ同一であるため、以下、ローラ2aについて代表的に説明する。
【0046】
図2、図3に示すように、ローラ2aは、円筒状をなす、すなわち、中空の芯部3と、芯部3の外周面31に設けられた外層4とを有している。
【0047】
芯部3の両端部には、それぞれ、その外径が縮径した縮径部32が形成されている。そして、各縮径部32は、それぞれ、軸受け5に挿入されている。また、ローラ2aの一方の端部側には、モータ(図示せず)が接続されている。これにより、ローラ2aは、回転することができる。
【0048】
なお、芯部3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような各種金属材料が挙げられる。
【0049】
芯部3の外周面31の縮径部32が形成された部分を除く領域には、外層4が設けられている。外層4は、その外周面41が混練物Q1を押し潰してシート材Q2とするものである。
【0050】
この外層4は、セラミックスで構成されている。セラミックスとしては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、イットリア、リン酸カルシウム等の酸化物セラミックス、窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン、窒化ボロン等の窒化物セラミックス、タングステンカーバイト等の炭化物系セラミックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組合せた複合セラミックスが挙げられる。この中でも特に、酸化物系セラミックスを含むものであるのが好ましい。
【0051】
外層4がこのようなセラミックスで構成されていることにより、シート材Q2を成形する際に、シート材Q2と外層4の外周面41との間で摩擦が生じ、外周面41が摩耗して一部が削れたとしても、その削れたものは、当然にセラミックスである。これに対し、例えばローラ2aの外周面が金属製である場合には、シート材Q2を成形する際に、前述したような摩耗により、当該外周面から金属粉末が生じ、その金属粉末が混入したシート材Q2となってしまう。しかしながら、成形装置1では、このような金属粉末がシート材Q2に混入するのを確実に防止することができ、また、前記削れたセラミックスがシート材Q2に混入しても、そのシート材Q2は、半導体パッケージ900のモールド部902に使用するのに十分耐え得るものである。
【0052】
また、外層4を構成するセラミックスとして酸化物系セラミックス、特に、耐摩耗性、絶縁性に優れたアルミナを用いることにより、ローラ2a、2bの外周面41が摩耗して一部が削れたとしても半導体パッケージ900のモールド部902に使用するのに十分耐え得る。
【0053】
なお、外層4の厚さtは、特に限定されず、例えば、0.2〜100mmであるのが好ましく、0.3〜40mmであるのがより好ましい。厚さtがこのような数値範囲に設定されていることにより、シート材Q2を過不足なく冷却することができる。例えば、冷却が不十分である場合、シート材Q2が外層4の外周面41に不本意に貼り付いてしまい、当該外周面41から剥離し難くなるおそれがある。また、シート材Q2を加圧している最中に、外層4にひび割れ等の破損が生じるのを確実に防止することができる。
【0054】
また、外層4のローラ長手方向の長さLは、特に限定されず、例えば、300〜1500mmであるのが好ましく、500〜1000mmであるのがより好ましい。
【0055】
また、ローラ2aの外層4が形成されている部分の直径φdは、特に限定されず、例えば、300mm以上であるのが好ましく、350〜600mmであるのがより好ましい。
【0056】
また、外層4の外周面41の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)は、特に限定されず、例えば、0〜2μmであるのが好ましく、0〜1.5μmであるのがより好ましい。
【0057】
表面粗さRaがこのような数値範囲に設定されていることにより、シート材Q2が外層4の外周面41に不本意に貼り付くのを確実に防止することができ、よって、シート材Q2の外周面41からの剥離が確実に行なわれる。
【0058】
冷却手段6は、ローラ2a、2bの芯部3の中空部33にそれぞれ冷媒61を供給する供給源(図示せず)を有している。この供給源としては、例えば、冷媒61を貯留するタンクと、タンクとローラ2a、2bの芯部3の中空部33とを接続する接続管と、冷媒61を送液するポンプとで構成することができる。
【0059】
混練物Q1は、前記各工程で所定の装置を経るため加熱されている。そして、シート材Q2となったときに、その形状を維持するのに、当該シート材Q2を冷却手段6で冷却するのが好ましい。また、シート材Q2を冷却することにより、次の冷却工程への搬送設備への貼り付きを防止し、同時に次工程での冷却作業への負担が少なくなると言う利点もある。
【0060】
図3に示すように、冷媒61は、ローラ2aの中空部33をその一端側(図中の左側)から他端側(図中の右側)に向かって通過する(ローラ2bについても同様)。これにより、冷媒61が循環することができ、よって、シート材Q2を確実に冷却することができる。
【0061】
なお、冷却手段6により、ローラ2a、2bの外周面41の表面温度が20℃以下となっているのが好ましく、−5〜15℃となっているのがより好ましい。表面温度がこのような数値範囲に設定されていることにより、シート材Q2を好適に、すなわち、過不足なく冷却することができる。
【0062】
また、冷媒61としては、特に限定されないが、例えば、水、油、無機系ブライン液、有機系ブライン液等が挙げられる。
【0063】
図2に示すように、成形装置1は、ローラ2a側およびローラ2b側にそれぞれ配置されたスクレーパ7を有している。各スクレーパ7の構成は、ほぼ同一であるため、以下、ローラ2a側のスクレーパ7について代表的に説明する。
【0064】
スクレーパ7は、ローラ2aの外周面41に残留した混練物Q1を削ぎ取るものである。このスクレーパ7は、その材質が例えばステンレス鋼等のような金属やセラミック、樹脂等である板部材で構成されるが、少なくともスクレーパ7の表面は非金属であることがより好ましい。また、スクレーパ7は、ローラ2aの外周面41に対し接近・離間可能に支持されている。スクレーパ7は、ローラ2aの外周面41に接近して当接した状態では、前述したように混練物Q1を削ぎ取ることができ、その必要がない場合には、ローラ2aの外周面41から離間した状態となる。
【0065】
<第2実施形態>
図4は、本発明の成形装置の第2実施形態を示す側面図である。
【0066】
以下、この図を参照して本発明の成形装置および成形方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0067】
本実施形態は、ローラ同士の軸間距離が可変に構成されていること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0068】
図4に示す成形装置1では、ローラ2aを支持するアーム8は、水平方向(図4中の左右方向)に移動することができる。これにより、ローラ2aがローラ2bに対し接近・離間することができよって、ローラ2aとローラ2bとの互いの軸間距離Pを変更することができる。このような構成により、本実施形態の成形装置1は、シート材Q2を成形する際、当該シート材Q2を所望の厚さにし易いものとなる。
【0069】
<第3実施形態>
図5は、本発明の成形装置の第3実施形態を示す部分断面側面図である。
【0070】
以下、この図を参照して本発明の成形装置および成形方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0071】
混練装置100には、排出口101の途中に脱気装置300が設置されている。
脱気装置300は、ハウジング302と、ハウジング302内に回転自在に設置されたロータ(封止手段)303と、ハウジング302の後述する脱気室3022を減圧する減圧機構(減圧手段)304とを有している。
【0072】
ハウジング302は、混練装置100の排出口101の途中に設けられ、混練装置100により混練物Q1に対して脱気を行う脱気室3022および円筒状(筒状)をなす筒状部3023とを有している。筒状部3023は、脱気室3022の下側に位置している。
【0073】
脱気室3022は、図示の構成では、その横断面が四角形をなす筒状をなしている。また、脱気室3022内の横断面での面積は、管路3021内の横断面での面積よりも大きく設定されている。なお、脱気室3022内の横断面での面積と、管路3021内の横断面での面積とを等しく設定してもよいことは、言うまでもない。
【0074】
筒状部3023は、図示の構成では、円筒状で、その両端部を塞いだ形状をなしている。この筒状部3023内には、ロータ303が図5中の時計回りに回転自在に設置されている。このロータ303により、脱気室3022と脱気室3022の下流側との間が封止される。これにより、脱気室3022を容易かつ確実に減圧することができる。なお、ハウジング302の上流側は、混練装置100内の混練物Q1で封止されている。
【0075】
ロータ303は、筒状部3023内を複数の空間(図示の構成では4つの空間231、232、233および234)に仕切る複数(図示の構成では4つ)の仕切板3031を有している。また、各仕切板3031は、等間隔(等角度間隔)、すなわち図示の構成では、90°間隔で配置されている。このロータ303は、図示しないモータ(駆動源)の作動により回転する。そして、このロータ303が回転することにより、仕切板3031により混練物Q1が下流側へ搬送される。
【0076】
また、筒状部3023の内周面と仕切板3031の先端との間には、隙間が形成されている。これにより、ロータ303が回転した際、仕切板3031の先端が筒状部3023の内周面を擦って仕切板3031や筒状部3023を構成している材料の紛体(異物)が混練物Q1中に混入してしまうことを防止することができる。
【0077】
前記隙間の大きさ、すなわち、筒状部3023の内周面と仕切板3031の先端との間の間隙距離は、0.2mm以下であることが好ましく、0.01〜0.1mm程度であることがより好ましい。これにより、リークを防止しつつ、仕切板3031が筒状部3023を擦ってしまうことを防止することができる。
【0078】
ハウジング302の構成材料は、特に限定されないが、筒状部3023の少なくとも内周面は、非金属で構成されていることが好ましく、ハウジング302の少なくとも内周面は、非金属で構成されていることがより好ましい。この場合、筒状部3023の全体を非金属で構成してもよい。また、ハウジング302の全体を非金属で構成してもよい。
【0079】
また、ロータ303の構成材料は、特に限定されないが、ロータ303の少なくとも表面は、非金属で構成されていることが好ましい。この場合、ロータ303の全体を非金属で構成してもよい。
【0080】
これにより、脱気の際、混練物Q1中に金属製の異物(金属異物)が混入してしまうことを防止することができ、製造された樹脂組成物を用いて半導体チップ901を封止したとき、短絡等の発生を防止することができる。
【0081】
前記非金属材料としては、特に限定されないが、例えば、前述したようなセラミックスを用いることができる。
【0082】
減圧機構304は、脱気室3022に接続された(脱気室3022内に連通する)管路3043と、管路3043を介して脱気室3022内を減圧するポンプ3041と、脱気室3022とポンプ3041との間に設置されたバルブ3042とを有している。
【0083】
混練物Q1に対して脱気を行う際は、バルブ3042を開き、ポンプ3041作動させ、脱気室3022内を減圧する。
【0084】
この脱気の際の減圧の程度(真空度)、すなわち、脱気室3022内の圧力(気圧)は、特に限定されないが、60kPa以下に設定されることが好ましく、50kPa以下に設定されることがより好ましく、50〜30kPa程度に設定されることがさらに好ましい。
これにより、より確実に脱気を行うことができる。
【0085】
次に、図5に基づいて、脱気工程における脱気装置300の作用を説明する。
前述したように、脱気装置300のハウジング302は、筒状部3023においてロータ303の仕切板3031により、脱気室3022と脱気室3022の下流側との間が封止された封止状態となっている。
【0086】
混練装置100で混練された混練物Q1に対して脱気を行う際は、脱気装置300のバルブ3042を開き、ポンプ3041を作動させ、脱気室3022内を減圧して減圧状態とするとともに、図示しないモータを作動させてロータ303を回転させる。なお、脱気室3022内を減圧すると、その脱気室3022内のみならず、脱気室3022の上側も減圧されて減圧状態となり、また、脱気室3022の下側の管路3021内およびその管路3021に連通する筒状部3023内の仕切板3031で仕切られた空間231も減圧されて減圧状態となる。
【0087】
混練物Q1は、脱気装置300に導入(供給)されると、自重(重力)により下方に向って移動し、脱気室3022および管路3021を通過し、その管路3021に連通する筒状部3023内の空間231に収納され、その空間231が管路3021に連通している間に脱気される。これにより、混練物Q1から気体(例えば、空気等)や水分が除去される。これによって、製造された樹脂組成物を用いて半導体チップ901を封止したとき、ボイドの発生を防止することができ、半導体パッケージの信頼性を向上させることができる。
【0088】
空間231内の混練物Q1は、ロータ303の回転により、仕切板3031によって搬送され、その排出口101から排出される。
【0089】
以上、本発明の成形装置および成形方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、成形装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0090】
また、本発明の成形装置および成形方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0091】
また、本発明の成形装置の各ローラは、それぞれ、芯部と外層とを有し、当該外層がセラミックスで構成されたものとなっているが、これに限定されず、ローラ全体がセラミックスで構成されたものとなっていてもよい。
【0092】
また、本発明の成形装置の各ローラは、それぞれ、芯部が円筒状をなすものであるが、これに限定されず、例えば、芯部が円柱状をなすもの、すなわち、芯部が中実体のものであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 成形装置
2a、2b ローラ
3 芯部
31 外周面
32 縮径部
33 中空部
4 外層
41 外周面
5 軸受け
6 冷却手段
61 冷媒
7 スクレーパ
8 アーム
100 混練装置
101 排出口
200 ベルトコンベア
300 脱気装置
302 ハウジング
3021 管路
3022 脱気室
3023 筒状部
231〜234 空間
303 ロータ
3031 仕切板
304 減圧機構
3041 ポンプ
3042 バルブ
3043 管路
900 半導体パッケージ(ICパッケージ)
901 半導体チップ(ICチップ)
902 モールド部
903 リードフレーム
904 ワイヤ
φd 直径
g 空隙
L 長さ
P 軸間距離
Q1 混練物
Q2 シート材
t 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並べて設置された一対のローラを備え、該一対のローラの間で樹脂組成物を加圧してシート状に成形する成形装置であって、
前記各ローラは、それぞれ、その少なくとも外周面がセラミックスで構成されていることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記各ローラは、それぞれ、円柱状または円筒状をなす芯部と、該芯部の外周部に設けられ、前記セラミックスで構成された外層とを有する請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記外層の厚さは、0.2〜100mmである請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記セラミックスは、酸化物系セラミックスを含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の成形装置。
【請求項5】
前記各ローラの外周面の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)は、0〜2μmである請求項1ないし4のいずれかに記載の成形装置。
【請求項6】
前記一対のローラは、互いの軸間距離が可変に構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の成形装置。
【請求項7】
前記一対のローラの間を通過する前記樹脂組成物を冷却する冷却手段を備える請求項1ないし6のいずれかに記載の成形装置。
【請求項8】
前記冷却手段により、前記各ローラの外周面の表面温度が20℃以下となっている請求項7に記載の成形装置。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、混練装置で混練された混練物であり、
前記一対のローラは、前記混練装置の前記混練物を排出する排出口の下流側に設置される請求項1ないし8のいずれかに記載の成形装置。
【請求項10】
前記混練装置は、前記混練物を脱気する機能を有するものであり、
前記一対のローラにより、前記脱気された混練物がシート状に成形される請求項9に記載の成形装置。
【請求項11】
前記樹脂組成物は、ICパッケージの外装部を構成するモールド部となるものである請求項1ないし9のいずれかに記載の成形装置。
【請求項12】
並べて設置された一対のローラを用い、該一対のローラの間で樹脂組成物を加圧してシート状に成形する成形方法であって、
前記各ローラは、それぞれ、その少なくとも外周面がセラミックスで構成されていることを特徴とする成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178135(P2011−178135A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47145(P2010−47145)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】