説明

成形装置及び成型方法

【課題】溶融した樹脂を射出して冷却成形する金型において金型から成型品を離型する際の変形の発生を抑制する成形装置及び成型方法を提供する。
【解決手段】成形装置は気体を金型の温度に基づく所定の範囲内の温度にして保持する気体保持手段と気体保持手段に保持された気体を圧縮する気体圧縮手段と圧縮された気体を成型品の表面に吹き当たるように制御し成型品の表面に当接する開閉手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成型品を成形する成形装置、及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器或いは電気機器を構成する部材は材料コストや製造コスト及び安定した製造精度の観点から熱可塑性樹脂を射出成形して製造されることが多い。特に、光学機器に用いられるレンズなどの光学素子の製造には非常に高い製造精度が求められる。
【0003】
このような部材の製造方法として硬度が高く熱伝導性の高い材質の金型により形成されたキャビティに加熱して溶融した樹脂を射出して充填し金型表面において溶融樹脂から吸熱して溶融樹脂を固化させて成型する射出成型法が用いられる。
【0004】
熱可塑性樹脂は固化と同時に収縮が起きるため射出充填して成型した後に急速に冷却されると不均一な熱分布が発生し冷却後の成型品に歪みが生じやすい。
【0005】
近年、光学機器には高い測定精度及び制御精度が要求され光学素子などにはますます高い製造精度が求められている。一方、射出成形による歪みが光学機器の性能に大きく影響するため射出成形による製造方法における成型品の歪みの抑制が課題となっている。
【0006】
なお、固化収縮による変形を抑制するため金型に射出して成型した成型品を金型により形成されるキャビティに充填したまま冷却すると金型の温度変化が大きくなり、また、金型の製造サイクルが長くなり製造コストを引き上げてしまう。このため通常は、射出した成型品は表面が固化した時点で金型から離型し大気中で自然冷却して固化される。
【0007】
この成型品の離型時には成型品に部分的に力をかけて金型表面から成型品表面を剥離する。このとき力のかかる部分とその周辺部との間に応力が生じ固化が完了していない成型品に変形が発生する。
【0008】
この問題を解決するために成型品表面と金型表面との間に空気を流入させ空気の圧力により成型品を金型から離型する方法が提案されている。
【0009】
例えば特許文献1が開示する成形金型の突出装置は熱硬化性樹脂を原料として加熱加圧することにより成型品を得る成形金型に設けられる突出装置である。該突出装置には一方の型に固定されたシリンダと、シリンダのキャビティ側の端部を閉鎖する弁と、弁が先端に固着されてシリンダ内を摺動するロッドが備えられている。ロッドが移動して弁が開いたときにシリンダとロッドの間に形成された空気通路を介して供給される空気がキャビティ側に吹き出す。特許文献1においてはシリンダのキャビティの反対側の端部に空気供給系が備えられ空気通路に外部から圧縮した空気を供給する。空気通路がシリンダの内面とロッドとの間に形成され、それ以外の構成を内部に有しないので突出装置の構造的な剛性が確保される。
【0010】
また、特許文献2が開示する熱可塑性樹脂射出成型用金型はキャビティ部内に向けて圧縮気体を供給する気体供給手段を有する。気体供給手段が形成されたコア型及びコアピース部には加熱手段が配置されており該加熱手段は充填樹脂に供給される圧縮気体を加熱する。これにより金型表面との接触による樹脂の冷却収縮の速度を低下させ成型品の表面の歪みが抑制される。
【0011】
さらに、特許文献3が開示する光学素子成形金型は金型の先端面先端に樹脂成型品のレンズの突出し工程において圧縮された気体を流出させる開口を有する。圧縮された気体は金型の内部に設けられており圧縮室内の気体が可動金型の温度まで加熱されて保持される。図11は特許文献3に記載される光学素子成形金型1001の要部拡大図である。すなわち光学素子成形金型1001はコア型1052と外周型1051からなる固定金型1041とコア型1062と外周型1061からなる可動金型1042を有する。可動金型1042においてコア型1062と外周型1061との間に流路1074が形成される。充填した溶融樹脂が放熱により冷却され固化し固定金型1041に対して可動金型1042が離間して樹脂成型品1100が固定金型1041から離型する。このとき図示しない圧縮室で金型と熱的に接触している圧縮空気が流路1073を経て開口1073から流出し樹脂成型品1100と可動金型1042の表面との間に浸入し、それにより樹脂成型品1100が可動金型1042から離型する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−187153号公報
【特許文献2】特開2002−172655号公報
【特許文献3】特開2010−083025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら特許文献1に記載される成形金型の突出装置では熱硬化性樹脂に供給される圧縮空気の温度を金型の表面温度と等しくなるよう調整することは困難である。この温度差に起因して成型品の圧縮空気噴出口近傍と該噴出口から離れた部位とは成型品に温度差が生じる。この結果外観不良であるヒケが発生し或いはソリ不良や成型品寸法のバラツキが生じる。
【0014】
また、特許文献2に記載される射出成型用金型においても圧縮空気と金型表面の温度を等しくなるように調整することは困難である。また、加熱手段を配置するために構成部品数が増大し成形装置のコストを引き上げてしまう。すなわち圧縮気体を金型のキャビティ部内に供給する手段が金型の外部にある場合、圧縮された気体が開口部まで到達する前に気体の温度を上昇させなければならない。このため加熱手段を金型内部の気体経路に設置する必要がある。これらの手段は金型内部の構成を複雑にし、装置のコストを引き上げる。
【0015】
さらに、特許文献3に記載される成形金型1001は圧縮空気が流出する開口1073は気体よりも粘度の高い樹脂が流路に入り込まない程度のスリット幅である。すなわち開口1073は開閉機構を有さず溶融樹脂が開口1073付近に充填された状態で開口1073付近の溶融樹脂表面が開口1073の気密性を確保するという前提で気体圧縮室内の気体に圧力が加えられる。しかしながらこの開口1073は可動金型1042を構成するコア型1062と外周型1061との間に形成されるためコア型1062と外周型1061の可動部付近の寸法には高い製造精度が要求される。また、溶融樹脂が高い圧力で充填されると開口1073にも圧力がかかる。すなわち成形金型1001の使用回数の増加と共に開口1073の形状が変化し、例えば開口1073のスリット幅が小さくなると圧縮空気の流出の妨げになり、また、スリット幅が大きくなると開口1073に溶融樹脂が流入し開口1073を閉塞するおそれがある。従って特許文献3に記載される成形金型1001は開口1073の状態により使用寿命が短縮するおそれがある。さらに、圧縮された気体が狭いスリット幅の開口1073からキャビティ内に急速に噴出する場合、断熱膨脹により気体の温度が低下する。このため溶融樹脂に接触する気体の温度は気体圧縮室内の温度よりも低くなる。
【0016】
本発明は上述した点に鑑みてなされたもので金型内部に気体圧縮室を有し気体圧縮室内の気体を圧縮し圧縮された気体を開口部から流出させ、同時に、固化した充填樹脂を金型表面から離型せしめる突き出し手段を有し、さらに開口部に開閉手段を備えた単純な構成の射出成形装置および射出成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の成形装置は加熱された材料を金型により成形し成型品を形成する成形装置であって、気体を金型の温度に基づく所定の範囲内の温度にして保持する気体保持手段と気体保持手段に保持された気体を圧縮する気体圧縮手段と圧縮された気体を成型品の表面に吹き当たるように制御し成型品の表面に当接する開閉手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の成型方法は加熱された材料を金型により成形し成型品を形成する成形方法であって、気体を保持するステップと気体の温度を金型の温度に基づく所定の範囲内の温度にするステップと保持された気体を圧縮するステップと圧縮された気体を成型品の表面に吹き当たるように制御するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば少ない部品点数の構成で金型表面から圧縮気体が流出すると同時に固化した樹脂を突き出す機構を備えたので金型表面から離型した固化した充填樹脂表面の熱的な不均一性が抑制されそれにより成型品の表面の歪みの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の構成の一例を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の型開き工程における構成の一例を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の気体圧縮工程における構成の一例を示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の気体噴出工程における構成の一例を示す。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の成型品を離型する際の構成の一例を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の射出成形処理における突出し機構と突出しピンの突出し量についてのタイミングチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る射出成形処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る射出成形装置の金型の構成の一例を示す。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る射出成形装置の金型の構成の一例を示す。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る射出成形装置の金型の構成の一例を示す。
【図11】関連技術における光学素子形成金型の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図に基づいて説明する。ただし本発明は以下に示す実施形態に限定されない。
【0022】
(第1の実施形態)
(射出成形装置の構成)
図1に本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型の構成の一例を示す。
【0023】
本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置は金型1を含む。
【0024】
該金型1は第1の型2、第2の型3、及び金型1の温度を調整する熱媒体の流路としての水管17を含む。熱媒体は例えば水や油などである。
【0025】
第1の型2は第2の型3と接触してキャビティ8を形成する。第1の型2はさらに該キャビティ8に溶融樹脂を注入するための樹脂経路15と該樹脂経路15に溶融樹脂を流入させるノズル14とを有する。
【0026】
第2の型3は第1の型2の樹脂経路15と対向する側にキャビティ8へ開口する開口穴4と第2の型3の内部からキャビティ8の方向に移動可能な突出しピン5を有する。突出しピン5は断面がくさび形状の円錐形であり開口穴4に嵌合可能な形状を有する頭部5aと該頭部5aの反対側にフランジ5bを有する。第2の型3はさらに開口穴4からキャビティ8内に噴出する気体を第2の型3の内壁からの熱により第2の型3の温度と等しくなるように加熱し加熱された気体を保持する気体溜り6を有する。気体溜まり6の内部には該フランジ5bが位置する。ここで開口穴4と突出しピン5と気体溜まり6により画定される領域を空間Cとする。第2の型3は空間Cにある気体Aを圧縮するための気体圧縮板11を有する。気体圧縮板11には気体圧縮板11を移動する突出し機構7が接続される。気体圧縮板11には気体溜まり6の側面との接触部に気体Aが漏出しないようにシール部材13が設けられている。また、突出しピン5にはフランジ5bよりも小さく開口穴4よりも大きな径とフランジ5bと第2の型3に接する長さを有するバネ12が備えられている。さらに、第2の型3は射出された溶融樹脂と接触して固化する樹脂の形状を決定するキャビブロック16を有する。
【0027】
なお、本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置の金型1においては第1の型2と第2の型3との接触部及び第2の型3とキャビブロック16との接触部の少なくとも1つが間隙を有してもよい。この間隙により金型1の外部と内部との間で気体が漏出する。
【0028】
すなわち突出し機構7によって気体圧縮板11が移動して気体Aが圧縮され圧縮された気体Aが開口穴4からキャビティ8へ噴出した後気体圧縮板11が移動前の位置に戻るためには金型1の外部から気体を内部に供給する必要がある。第2の型3とキャビブロック16との間には間隙があるため気体が金型1の外部から気体溜まり6に供給される。
【0029】
なお、水管17はキャビティ8付近の金型内部の表面温度を所定の温度に維持するものであり第1の型2にも設置してもよい。
【0030】
また、本実施形態に係る構成では気体溜まり6に外部から空気が取り込まれ開口穴4から噴出されるが外部雰囲気がその他の気体で構成されてもよい。
【0031】
なお、突出し機構7とノズル14についてはそれらの構成は当業者にとってよく知られており、また、本発明の特徴とは直接の関係がないのでそれらの構成についての詳細な説明を省略する。
【0032】
(射出成形装置の動作)
次に本発明の第1の実施形態に係る射出成形装置における射出成形処理の各工程について図1乃至5の構成図、図6のタイミングチャートおよび図7のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0033】
図6は本実施形態における射出成形装置の射出成形処理の1サイクルの工程を示している。また、突出しピン5の突出し量と突出し機構7の突出し量をそれぞれ示す。
【0034】
図1は型締めされ所定の温度に制御されている金型1を示す。金型1の内部表面から気体溜まり6に保持される気体Aへ熱が伝導する。所定の時間の経過後気体Aの温度が金型1の温度とほぼ等しくなる(図7のステップS101)。この状態で溶融樹脂をキャビティ8に射出して充填する射出工程を実施する(図7のステップS102)。
【0035】
この射出工程の後キャビティ8の内部表面と射出された充填樹脂表面との間で熱交換が行われる。すなわち溶融のために加熱された充填樹脂から熱がキャビティ8に伝導し充填樹脂が冷却されて固化し成型品Bが形成される(冷却工程、図7のステップS103)。
【0036】
これらの射出工程及び冷却工程においては図6に示すように突出しピン5及び突出し機構7の突出し量はいずれもゼロである。このとき開口穴4は突出しピン5の頭部5aによって閉塞している。
【0037】
冷却工程の完了後図2に示すように金型1を開く(図7のステップS104)。このとき成型品Bの表面の一部が金型から離型するがこの工程においては成型品Bに局所的な応力はかからない。
【0038】
次に図3に示すように突出し機構7により圧縮板11を変位させる(図6(a)−(b))。このとき突出しピン5の頭部5aで閉塞された空間Cの中にある気体Aが圧縮される(図7のステップS105)。圧縮された気体Aは突出しピン5の頭部5aを押すがバネ12の反発力により突出しピン5はまだ変位せず突出しピン5の突出し量はまだゼロである。
【0039】
突出し機構7がさらに変位して圧縮板11を介して突出しピン5のフランジ5bを押すと(図6(b)−(c))図4に示されるように突出しピン5が変位して充填樹脂が固化した成型品Bを突き出す(図7のステップS106)。それと同時に開口穴4と頭部5aとの間に間隙が生じこの間隙から圧縮された気体Aが噴出する。さらに、成型品Bはこの噴出した圧縮気体Aの圧力を受けて図5に示すように第2の型3から離型する(図7のステップS107)。なお、離型した成型品Bは金型1から取り出され所定の工程により室温まで冷却される。
【0040】
その後突出し機構7が突き出す方向と逆方向に変位しこれにより突出しピン5及び気体圧縮板11が初期位置に戻ろうとする。その際に第2の型3とキャビブロック16との間の間隙から気体が供給され気体溜まり6に保持される(図7のステップS108)。これにより次回の成形処理に備える。
【0041】
本発明の実施形態に係る射出成形装置の金型においては圧縮した気体Aで成形品Bを突き出すので突出しピンのみで成型品Bを突き出す関連技術に係る射出成形装置と異なり成型品にかかる応力が局所的でなく、そのため、取り出しにおける応力に起因する変形不良が抑制される。
【0042】
また、金型1内に充填された溶融樹脂は温度の低下に伴い収縮する特性を有する。成型品Bが金型1から離型する際には成型品Bは充填時よりも冷却され固化しているが金型1の温度より下回ることはない。このため成型品Bは離型(取り出し工程)以後もさらに冷却され収縮が亢進する。
【0043】
本発明の実施形態に係る射出成形装置においては気体溜まり6に保持された気体が第2の型3の内壁の温度にまで加熱され成型品Bの離型時に開口穴4から噴出して成型品Bの表面に均一に接触する。このため成型品Bの表面が急激に冷却されることがない。また、成型品Bは開口穴4に近い部分と開口穴4から遠い部分とで表面の温度差の拡大が抑制される。このため圧縮気体Aが原因で生じるようなヒケ不良やソリ不良さらには寸法のバラツキの発生が抑えられる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る射出成形装置における金型の構成の一例を図8に示す。
【0044】
本実施形態に係る射出成形装置においては気体溜まり6に接する第2の型3の内壁に表面に凹凸の加工が施された突起部21を備える。本実施形態に係る金型1はこの突起部21を除けば第1の実施形態に係る金型と構成は同じである。
【0045】
突起部21に施された凹凸の表面加工により気体溜まり6に接する第2の型3の内壁の表面積が大きくなり、第2の型3から気体溜まり6に保持される気体に伝導する熱量が増大する。すなわち短時間で気体溜まり6に保持される気体を所定の温度に上昇させることができる。
【0046】
本発明の第2の実施形態に係る射出成形装置によれば気体溜まり6に保持される気体の温度を迅速に上昇させることができるので射出成形装置に樹脂を充填、溶融樹脂の冷却、成型品の取り出しの一連の工程の周期を短縮でき製造コストの低下が実現される。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る射出成形装置における金型の構成の一例を図9に示す。
【0047】
本実施形態に係る射出成形装置の金型においては突出しピン5の頭部5aで閉塞された空間Cに外部空間から導通する送風路31と送風路31の外部側に逆流防止弁32とが備えられている。逆流防止弁32は外部空間から金型1の内部に気体を供給し、一方、金型1の内部から外部空間へは気体が遺漏しないよう封止する。
【0048】
第1の実施形態においては気体溜まり6へは第1の型2と第2の型3との接触部及び第2の型3とキャビブロック16との接触部の少なくとも一つが間隙を有しこの間隙を介して気体が金型1の外部から供給される。これに対して本実施形態に係る射出成形装置の金型においては第1の実施形態に係るこれらの間隙を介することなく気体が外部から金型内部に供給されるので第1の型2と第2の型3との接触部及び第2の型3とキャビブロック16との接触部を閉塞してもよい。
【0049】
この構成により気体溜まり6の気密性を高く保持することができ突出しピン5の突出し量を小さくすることが可能になる。これにより射出成形装置の設計の自由度が高くなる。また、成型品の製造工程の周期を短縮できる。さらに、所定の大きさの間隙の確保を必要としないので金型1の部品の製造精度の許容量を大きくすることができる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る射出成形装置における金型の構成の一例を図10に示す。
【0050】
本実施形態に係る射出成形装置における金型1はガイド保持部42を備えガイド保持部42内に第2の型3の内部に突出しピン5を保持するガイド穴41を備える。第1乃至3の実施形態においては圧縮された気体が突出しピン5と金型の内壁との間を流路として気体溜まり6から開口穴4に移動する。これに対して本実施形態に係る射出成形装置の金型においては突出しピン5を保持するガイド穴41を有するガイド部42の外側と金型の内壁との間に形成された連通路43を流路として圧縮された気体が気体溜まり6から開口穴4へ移動する。
【0051】
この構成により突出しピン5の偏位方向すなわち図面上で横方向への移動が制限され図面上での縦方向の移動が安定する。すなわち突出しピン5が成型品Bを取り出すために突き出す動作方向からの偏位が抑制され突出し機構7の動作方向に多少の偏位方向成分を含んだとしても、また金型の姿勢によらずに安定して所定の方向に成型品Bを離型することができる。また、射出成形装置の金型において最も大きく変位する突出しピン5の動作が安定することにより射出成形装置の寿命が長くなる。
【0052】
以上述べたように本発明の射出成形装置においては金型の内部に気体溜まりが設けられ保持された気体が金型の内壁表面を介して加熱される。これにより保持された気体の温度を金型の温度と等しくすることが容易でありしかも加熱手段を必要としないため金型の構成を簡単にできる。また、突出しピンの頭部が成型品の表面に接して突き出すと同時に気体溜まりに保持されて圧縮された気体が開口穴から噴出して成型品の表面と金型表面との間に浸入する。これにより突出しピンによる応力と噴出した気体による圧力により成型品の金型からの離型が容易である。このとき成型品の表面に浸入した気体の温度は金型表面の温度と等しいため成型品が離型の際に外気が流入して急速に冷却されることがない。また開口穴からの距離に拠らず成型品の表面の温度が均一に保持されるためヒケ不良やソリ不良さらには寸法のバラツキの発生が抑えられる。さらに、噴出する気体による圧力に加えて突出しピンによる応力もはたらくため確実かつ迅速に成型品が離型する。突出しピンによる応力に起因する成型品の歪みをより小さく抑える場合は突出しピンの変位速度を小さくしおもに圧縮気体の圧力により離型するようにすればよい。突出しピンの応力と圧縮気体の圧力との配分は適宜調整可能である。また、突出しピンの頭部により開口穴を閉塞するので気体溜まりに保持される気体の圧力を高く保持することができる。また、圧縮された気体の噴出口の大きさを調整できるので排出される圧縮気体の噴出速度を調整することができる。
【0053】
圧縮気体を噴出する開口穴は第1の金型2に設けても良い。これにより図2に示される型開き工程においても圧縮気体で成型品Bを離型することができる。
【0054】
また、圧縮された気体が開口穴4を通って噴出する際に断熱膨脹により低下する温度を見込んで圧縮された気体の温度を金型の温度よりも高くする加熱手段を気体溜まり6に備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく物質を塑性変形して成形する装置及び成型方法として好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 金型
2 第1の型
3 第2の型
4 開口穴
5 突出しピン
5a 頭部
5b フランジ
6 気体溜まり
7 突出し機構
8 キャビティ
11 気体圧縮板
12 バネ
13 シール部材
14 ノズル
15 樹脂経路
16 キャビブロック
17 水管
21 突起部
31 送風路
32 逆流防止弁
41 ガイド穴
42 ガイド部
43 連通路
1001 光学素子成形金型
1041 固定金型
1042 可動金型
1051 外周型
1052 コア型
1061 外周型
1062 コア型
1073 開口
1074 流路
1100 樹脂成型品
A 気体
B 成型品
C 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された材料を金型により成形し成型品を形成する成形装置であって、
気体を前記金型の温度に基づく所定の範囲内の温度にして保持する気体保持手段と、
前記気体保持手段に保持された気体を圧縮する気体圧縮手段と、
前記圧縮された気体を前記成型品の表面に吹き当たるように制御し前記成型品の表面に当接する開閉手段を有することを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記気体圧縮手段は前記気体保持手段に保持された気体を圧縮した後に前記開閉手段を制御して前記成型品の表面に前記圧縮された気体を吹き当てることを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記気体圧縮手段は前記開閉手段に当接して前記圧縮された気体を制御し、
前記開閉手段は前記成型品を離型するように変位させることを特徴とする請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記開閉手段は前記気体保持手段を閉塞する形状を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記気体保持手段を前記金型の内部に備え前記金型から前記気体保持手段が保持する気体に熱を伝導させることを特徴とする請求項1乃至4に記載の成形装置。
【請求項6】
加熱された材料を金型により成形し成型品を形成する成形方法であって、
気体を保持するステップと、
前記気体の温度を前記金型の温度に基づく所定の範囲内の温度にするステップと、
前記保持された気体を圧縮するステップと、
前記圧縮された気体を前記成型品の表面に吹き当たるように制御するステップを有することを特徴とする成型方法。
【請求項7】
前記圧縮された気体を制御する開閉手段を前記成型品の表面に当接させ前記成型品が離型するよう変位させるステップをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の成型方法。
【請求項8】
前記気体を圧縮する圧縮手段は、前記気体を圧縮するステップと前記圧縮された気体を前記成型品の表面に吹き当たるように制御するステップと前記成型品を離型するよう変位させるステップを実行することを特徴とする請求項7に記載の成型方法。
【請求項9】
前記開閉手段は前記気体を閉塞する形状を有することを特徴とする請求項7または8に記載の成形方法。
【請求項10】
前記気体を保持するステップにおいて前記気体が前記金型の内部に保持され、
前記気体の温度を所定の範囲内の温度にするステップは前記金型から前記気体に熱を伝導させるステップを含むことを特徴とする請求項6乃至9に記載の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−200882(P2012−200882A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64549(P2011−64549)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】