説明

成形装置

【課題】バリの発生を抑制して複雑な形状の成形品を成形することができる成形装置を提供する。
【解決手段】本装置は、成形型34の内部に、第1空洞部8を形成するための第1スライドピン31と、第1空洞部に連通する第2空洞部9を形成するための第2スライドピン32と、を備える成形装置30であって、第1スライドピンは、第1スライドピンのスライド軸C1回りに非回転とされ且つ第2スライドピンと当接する当接部35aを備える芯部35と、芯部の外周に摺接して第1スライドピンのスライド軸C1回りに回転可能とされる回転部36と、を備え、当接部及び第2スライドピンのうちの一方には、凹部39が設けられ、他方には凹部に嵌合する凸部40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置に関し、さらに詳しくは、バリの発生を抑制して複雑な形状の成形品を成形することができる成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オイルフィルタブラケット等の樹脂成形品として、例えば、図8に示すように、ネジ部108aを有する第1空洞部108と、この第1空洞部108に交差して連なる第2空洞部109と、を備えるものが知られている。このような成形品の成形装置としては、成形型134の内部に、第1空洞部108を形成するための第1スライドピン131と、第2空洞部109を形成するための第2スライドピン132と、をスライド可能に備え、第1及び第2スライドピン131,132をスライドさせ突き合わせて成形品を成形するとともに、成形後に第1スライドピン131をスライド軸C回りに回転させてネジ部108aから脱出させる技術が提案されている。
【0003】
しかし、上記提案技術では、第1スライドピン131全体を回転可能としているので、第1スライドピン131の回転角度のバラツキ等により、成形時に第1及び第2スライドピン131,132の突き合わせ部において金型ダレ・バリが発生し易い。その結果、型の摩耗が著しく製品品質の信頼性が低下してしまう恐れがある。
【0004】
なお、特許文献1及び2には、樹脂成形型においてスライド型にバリが発生し易いため、スライド型と成形型とを凹凸嵌合させて密着度を高める技術が開示されている。また、特許文献3及び4には、一対のスライド型同士を突き合わせてアンダーカット部を成形する技術が開示されている。また、特許文献5及び6には、ネジ部をスライド型で形成する場合に、回転型とスライド型とを組み合わせることが開示されている。さらに、特許文献7には、回転コアの対向位置に樹脂の射出ゲートを配置することが開示されている。しかしながら、上記特許文献1〜6には、回転スライド型の突き合わせにより成形品を成形することについて全く開示されていない。また、上記特許文献7には、ゲート位置とパーティングラインによるバリの発生の関係について全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−202667号公報
【特許文献2】特開2002−67091号公報
【特許文献3】特開平11−34110号公報
【特許文献4】特開2009−23104号公報
【特許文献5】特開2000−53155号公報
【特許文献6】実開平5−68867号公報
【特許文献7】特開平5−200772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、バリの発生を抑制して複雑な形状の成形品を成形することができる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、成形型の内部に、第1空洞部を形成するための第1スライドピンと、第1空洞部に連通する第2空洞部を形成するための第2スライドピンと、を備える成形装置であって、前記第1スライドピンは、該第1スライドピンのスライド軸回りに非回転とされ且つ前記第2スライドピンと当接する当接部を備える芯部と、該芯部の外周に摺接して該第1スライドピンのスライド軸回りに回転可能とされる回転部と、を備え、前記当接部及び前記第2スライドピンのうちの一方には、凹部が設けられ、他方には該凹部に嵌合する凸部が設けられていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記成形型の内部には、前記当接部と前記第2スライドピンとが当接する方向に射出圧が作用するように射出ゲートが配設されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記第1スライドピンの前記芯部の直径は、前記第2スライドピンの直径より大きな値であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成形装置によると、第1スライドピンを、非回転の芯部と、回転可能な回転部と、を備えて構成したので、成形時に回転部により第1空洞部にネジ部が形成されるとともに、成形後に回転部の回転により第1空洞部のネジ部から回転部が脱出される。また、当接部及び第2スライドピンのうちの一方に凹部を設け、他方に凸部を設けたので、回転しない芯部及び第2スライドピンのスライドにより凹部及び凸部が嵌合され、成形時に第1及び第2スライドピンの密着性が高められバリの発生が抑制される。その結果、型の長寿命化を図るとともに製品品質の信頼性を向上させることができる。
また、前記成形型の内部に、前記当接部と前記第2スライドピンとが当接する方向に射出圧が作用するように射出ゲートが配設されている場合は、成形時に射出圧により第1及び第2スライドピンの密着性が更に高められる。
さらに、前記第1スライドピンの前記芯部の直径が、前記第2スライドピンの直径より大きな値である場合は、第1及び第2スライドピンの突き合わせ部でのシャープエッジを極力なくしてバリの発生を更に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るブラケットを模式的に示す縦断面図である。
【図2】実施例に係る封止プラグを説明するための説明図である。
【図3】実施例に係る成形装置を説明するための縦断面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】実施例に係る第1及び第2スライドピンの突き合わせ部の斜視図である。
【図6】図2の要部拡大図である。
【図7】他の形態の第1及び第2スライドピンの突き合わせ部の斜視図である。
【図8】従来の成形装置を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.成形装置
本実施形態1.に係る成形装置は、成形型(34)の内部に、第1空洞部(8)を形成するための第1スライドピン(31)と、第1空洞部に連通する第2空洞部(9)を形成するための第2スライドピン(32)と、を備える成形装置(30)であって、第1スライドピンは、第1スライドピンのスライド軸(C1)回りに非回転とされ且つ前記第2スライドピンと当接する当接部(35a)を備える芯部(35)と、芯部の外周に摺接して第1スライドピンのスライド軸(C1)回りに回転可能とされる回転部(36)と、を備え、当接部及び第2スライドピンのうちの一方には、凹部(39)が設けられ、他方には凹部に嵌合する凸部(40)が設けられていることを特徴とする(例えば、図3等参照)。
【0012】
上記成形装置は、通常、ネジ部(8a)を有する第1空洞部(8)と、第1空洞部に連通する第2空洞部(9)と、を備える成形品(1)を成形する装置である。この場合、上記回転部(36)の外周側には、ネジ部(8a)を形成するためのネジ形成部(36a)が設けられている。なお、上記回転部(36)は、一方向にのみ回転可能であってもよいし、両方向に回動可能であってもよい。
【0013】
本実施形態1.に係る成形装置としては、例えば、上記成形型(34)の内部には、当接部(35a)と第2スライドピン(32)とが当接する方向に射出圧が作用するように射出ゲート(42)が配設されている形態(例えば、図4等参照)を挙げることができる。この場合、上記射出ゲート(42)は、第1スライドピン(31)の当接部(35a)を挟んで第2スライドピン(32)の先端側に対向するように配設されていることが好ましい。これは、第1及び第2スライドピンの密着性を更に高め得るためである。
【0014】
本実施形態1.に係る成形装置としては、例えば、上記第1スライドピン(31)の芯部(35)の直径(D1)は、第2スライドピン(32)の直径(D2)より大きな値である形態(例えば、図4等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、上記当接部(35a)には、第1スライドピン(31)のスライド軸(C1)に対して傾斜する傾斜面(38)が形成され、この傾斜面上に上記凹部(39)が設けられ、第2スライドピン(32)の先端側に上記凸部(40)が設けられていることができる。これにより、第1及び第2スライドピンの突き合わせ部でのシャープエッジをより確実になくすことができる。特に、上記当接部(35a)においては、凹部(39)の周縁の板厚(t:図5参照)を少なくとも2.5mm以上確保するように設定することが好ましい。これは、スライドピンの十分な強度を確保するためである。なお、上記芯部(35)の直径(D1)は、例えば、15〜30mmであることができる。また、上記第2スライドピン(32)の直径(D2)は、例えば、10〜15であることができる。
【0015】
本実施形態1.に係る成形装置としては、例えば、上記第1スライドピン(31)の芯部(35)には、スライド方向の一端側に上記当接部(35a)が設けられ、スライド方向の他端側に上記回転部(36)が設けられている形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、第1空洞部(8)の一端側と第2空洞部(9)の一端側とが連通されるとともに、第1空洞部(8)の他端側にネジ部(8a)が形成された成形品が成形される。
【0016】
2.成形方法
本実施形態2.に係る成形方法は、上記実施形態1.の成形装置(30)を用いる成形方法であって、上記第1及び第2スライドピン(31、32)のスライドにより、当接部(35a)と第2スライドピン(32)とを当接させ凹部(39)及び凸部(40)を嵌合させ、その嵌合状態において成形型(34)のキャビティ内に成形材料を注入して成形品(1)を成形し、その後、芯部(35)に対して回転部(36)を回転させて成形品のネジ部(8a)から脱出させるとともに、芯部(35)をスライドさせて成形品の第1空洞部(8)から脱出させ、第2スライドピン(32)をスライドさせて成形品の第2空洞部(9)から脱出させることを特徴とする(例えば、図3等参照)。なお、上記回転部、芯部及び第2スライドピンは、これら3部材のうち2以上が異なるタイミングで脱出されてもよいし、3部材が略同時に脱出されてもよい。また、上記芯部及び第2スライドピンの脱出にあたっては、芯部の抜き方向、第2スライドピンの抜き方向、当接部の設定角度、凹凸嵌合の角度などを考慮し、それぞれが干渉しないように脱出順序を設定する。
【実施例】
【0017】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、オイルフィルタ用のブラケットを成形する成形装置を例示する。
【0018】
(1)ブラケットの構成
本実施例に係るブラケット1は、図1に示すように、オイルフィルタ2をエンジン3に取り付けるためのブラケット1である。このブラケット1は、オイルフィルタ2が装着される一端側を開放した筒状の装着部5と、エンジン3に取り付けられる平板状の取付部6と、これら装着部5及び取付部6の間に設けられ且つエンジン3内の油路3aとオイルフィルタ2とを連通する通路部7a,7bと、を備えている。なお、上記ブラケット1は、レーザ吸収性を有する樹脂製(例えば、ナイロン製等)とされている。
【0019】
上記各通路部7a,7bは、その一端側に雌ネジ部8aを有する略直線状の第1空洞部8と、その一端側が第1空洞部8の他端側に連通し且つその他端側が取付部6に連なる略直線状の第2空洞部9と、を備えている。これら第1及び第2空洞部8,9は、所定角度(例えば、約120度)で交差している。また、第1空洞部8の一端側には、雌ネジ部8aに連なる段差部8bが形成されている。また、各通路部7a,7bは、その一端側が第1空洞部8の一端側に連通し且つその他端側が装着部5に連なる略直線状の第3空洞部10を更に備えている。これら第1及び第3空洞部8,10は、所定角度(例えば、約90度)で交差している。
【0020】
なお、上記通路部7aは、オイルフィルタ2でろ過されたオイルをエンジン3に戻すための戻し用の通路を形成する。また、上記通路部7bは、エンジン3からオイルフィルタ2にオイルを送るための送り用の通路を形成する。
【0021】
上記第1空洞部8の一端側の開口部(捨て穴部)には、レーザ透過性を有する樹脂製(例えば、ナイロン製等)の封止プラグ12が装着されている。この封止プラグ12は、図2に示すように、雌ネジ部8aに螺合する雄ネジ部12aと、この雄ネジ部12aの軸方向の一端側に連なり段差部8bに係止する段差状の頭部12bと、を備えている。この雄ネジ部12aは、多条ネジ(例えば、3条ネジ等)からなっている。また、この頭部12bは、レーザ溶着により段差部8bに接合される接合面13aを有する第1鍔部13と、この第1鍔部13に連なり且つ雄ネジ部12aの過締付時に段差部8bに当接する当接面14aを有する第2鍔部14と、を有している。この第2鍔部14の当接面14aの段差部8bへの当接により、過締付時に封止プラグ12の破損等が防止される。なお、上記封止プラグ12は、第2鍔部14の当接面14aを型割りのパーティングラインPTとして成形されている。よって、第1鍔部13の接合面13aは高精度に成形される。また、上記封止プラグ12は、開口部(捨て孔部)をシールする機能があればよいので、例えば、レーザ吸収部材として段差部8bとの境界部にレーザを照射して、封止プラグ12と段差部8の双方のレーザ吸収部材を溶着するようにしてもよい。
【0022】
なお、上記オイルフィルタ2は、エレメント交換型であり、ブラケット1の装着部5に装着されるケース16と、これら装着部5及びケース16の間に形成されるろ過室17内に収容されるフィルタエレメント18と、を備えている。このフィルタエレメント18は、ろ材19と、このろ材19を外周側に装着してなる円筒状のプロテクタ20と、を備えている。このプロテクタ20の一端側には、第3空洞部10に連結される筒状の連結部20aが設けられている。
【0023】
(2)成形装置
次に、上記ブラケット1を成形する成形装置30の構成について説明する。本実施例に係る成形装置30は、図3に示すように、成形型34の内部に、上記第1空洞部8を形成するための第1スライドピン31と、上記第2空洞部9を形成するための第2スライドピン32と、をそれぞれスライド可能に備えている。また、成形型34の内部には、上記第3空洞部10を形成するための第3スライド型33がスライド可能に設けられている。上記第1スライドピン31は、スライド軸C1回りに非回転とされる芯部35と、この芯部35のスライド方向の一端側の外周に摺接してスライド軸C1回りに回転可能とされる回転部36と、を備えている。この芯部35は、スライド方向の他端側に第2スライドピン32の先端側と当接する当接部35aを備えている。
【0024】
なお、上記芯部35及び第2スライドピン32のそれぞれは、油圧シリンダ(図示省略)の作用でスライドされる。また、上記回転部36は、型開閉の際にスライドされるスライドカム(図示省略)にラック・ピニオン機構(図示省略)を介して連繋され、型開閉動作に伴って回転される。
【0025】
ここで、図4に示すように、上記第1スライドピン31の芯部35の直径D1(例えば、約22mm)は、第2スライドピン32の直径D2(例えば、楕円の長い直径が約13.3mm)より大きな値とされている。この芯部35の当接部35aには、第1スライドピン31のスライド軸C1に対して傾斜する平面状の傾斜面38が形成されている(図5参照)。この傾斜面38上には、テーパ状の凹部39が形成されている。一方、上記第2スライドピン32の先端側は、凹部39に嵌合するテーパ状の凸部40となっている。また、上記回転部36の外周側には、図6に示すように、上記雌ネジ部8aを形成するネジ形成部36aと、このネジ形成部36aと軸方向に連なり且つ上記段差部8bを形成する段差形成部36bと、が設けられている。
【0026】
上記成形型34の内部には、図4に示すように、当接部35と第2スライドピン32の先端側とが当接する方向に射出圧が作用するように射出ゲート42が配設されている。この射出ゲート42は、芯部35の当接部35aを挟んで第2スライドピン32の先端側に対向するように配設されている。また、この射出ゲート42は、成形型34において第1空洞部8を形成するキャビティ部分に開口している。
【0027】
(3)成形装置の作用
次に、上記構成の成形装置30を用いる成形方法について説明する。図3に示すように、上記第1及び第2スライドピン31,32のスライドにより、当接部35aと第2スライドピン32とを当接させて凹部39に凸部40を嵌合させる。次に、その嵌合状態において成形型34のキャビティ内に射出ゲート42から溶融樹脂(成形材料)を注入してブラケット1を射出成形する。次いで、型開き動作に伴って、芯部35に対して回転部26を回転させて雌ネジ部8aから脱出させるとともに、成形型34に対して第2スライドピン32をスライドさせて第2空洞部9から脱出させた後、成形型34に対して芯部35をスライドさせて第1空洞部8から脱出させる。
【0028】
なお、上記構成のブラケット1では、図1に示すように、エンジン3の駆動によりオイルポンプ(図示省略)が作動すると、通路部7bを介してエンジン3内のオイルがオイルフィルタ2のろ過室17のダスティ側に供給される。そして、フィルタエレメント18によりろ過されたろ過室のクリーン側のオイルは、ブラケット1の通路部7aを介してエンジン3内に戻される。一方、フィルタエレメント18の交換時には、ブラケット1の装着部5に対してオイルフィルタ2のケース16を緩め方向に回して取り外す。これにより、プロテクタ20が第3空洞部10の一端側から抜き出され、ブラケット1からオイルフィルタ2が取り外される。これにより、プロテクタ20に装着されたろ材19を交換することができる。
【0029】
(4)実施例の効果
本実施例の成形装置30によると、第1スライドピン31を、非回転の芯部35と、回転可能な回転部36と、を備えて構成したので、成形時に回転部36により第1空洞部8に雌ネジ部8aが形成されるとともに、成形後に回転部36の回転により第1空洞部8の雌ネジ部8aから回転部36が脱出される。また、当接部35a及び第2スライドピン32のうちの一方に凹部39を設け、他方に凸部40を設けたので、回転しない芯部35のスライドにより凹部39及び凸部40が嵌合され、成形時に第1及び第2スライドピン31,32の密着性が高められバリの発生が抑制される。その結果、型の長寿命化を図るとともに製品品質の信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、本実施例では、成形型34の内部に、当接部35aと第2スライドピン32とが当接する方向に射出圧が作用するように射出ゲート42が配設されているので、成形時に射出圧により第1及び第2スライドピン31,32の密着性が更に高められる。特に、本実施例では、射出ゲート42を、芯部35の当接部35aを挟んで第2スライドピン32の先端側に対向するように配設したので、第1及び第2スライドピン31,32の密着性を更に高めることができる。
【0031】
また、本実施例では、第1スライドピン31の芯部35の直径D1を第2スライドピン32の直径D2より大きな値としたので、第1及び第2スライドピン31,32の突き合わせ部でのシャープエッジを極力なくしてバリの発生を更に低減させることができる。特に、本実施例では、芯部35の当接部35aに、第1スライドピン31のスライド軸C1に対して傾斜する傾斜面38を形成し、この傾斜面38上に、第2スライドピン32の先端側の凸部40が嵌合する凹部39を設けるようにしたので、凹部39の設置面積を容易に確保でき、第1及び第2スライドピン31,32の突き合わせ部でのシャープエッジをより確実になくすことができる。これに対して、図7に示すように、芯部35の略円柱状の先端側に、第2スライドピン32の先端側の凸部40が嵌合する凹部39’を設ける場合には、第1及び第2スライドピン31,32の突き合わせ部でシャープエッジが形成され易い。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、ネジ部として第1空洞部8に形成される雌ネジ部8aを例示したが、これに限定されず、例えば、ネジ部としてバヨネット構造を構成する凹溝又は凸部を採用してもよい。
【0033】
また、上記実施例では、型開閉動作の動力伝達により回転部36を回転させるようにしたが、これに限定されず、例えば、各種駆動源(例えば、モータ、シリンダ等)により回転部36を回転させるようにしてもよい。また、上記実施例では、シリンダにより芯部35をスライドさせるようにしたが、これに限定されず、例えば、モータにより芯部35をスライドさせたり、型開閉動作の動力伝達により芯部35をスライドさせたりしてもよい。
【0034】
また、上記実施例では、芯部35の当接部35aに凹部39を設け、第2スライドピン32に凹部39に嵌合する凸部40を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、芯部35の当接部35aに凸部を設け、第2スライドピン32に凸部が嵌合する凹部を設けるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、芯部35の当接部35aに傾斜面38を形成し、この傾斜面38上に凹部39を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図7に示すように、芯部35の略円柱状の当接部35aに、第2スライドピン32の凸部40(又は凹部)が嵌合する凹部39’(又は凸部)を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、第1スライドピン31のスライド方向の一端側に当接部35aを設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、第1スライドピン31のスライド方向の中間部に当接部を設けるようにしてもよい。また、上記実施例では、第1スライドピン31に対して第2スライドピン32のスライド方向の一端側を当接させるようにしたが、これに限定されず、例えば、第1スライドピン31に対して第2スライドピン32のスライド方向の中間部を当接させるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、第1空洞部8を形成するキャビティ部分に開口する射出ゲート42を例示したが、これに限定されず、例えば、第2空洞部9を形成するキャビティ部分に開口する射出ゲートとしたり、第1及び第2空洞部以外8,9の部位を形成するキャビティ部分に開口する射出ゲートとしたりすることができる。
【0038】
また、上記実施例では、第1スライドピン31の芯部35の直径D1を第2スライドピン32の直径より大きな値としたが、これに限定されず、例えば、第1スライドピン31の芯部35の直径D1を第2スライドピン32の直径D2より小さな値としたり、両者D1,D2の直径を略同じ値としたりしてもよい。
【0039】
また、上記実施例において、第1及び第2スライドピン31,32は、成形型34を構成する互いに近接・離間する一対の型のうちの一方の型のみにスライド可能に設けられていてもよいし、一方の型に一方のスライドピンがスライド可能に設けられ且つ他方の型に他方のスライドピンがスライド可能に設けられてもよい。
【0040】
さらに、上記実施例では、樹脂製の成形品を成形する成形装置を例示したが、これに限定されず、例えば、金属製の成形品を成形する成形装置としてもよい。
【0041】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0042】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
複雑な形状を有する成形品を成形する技術として広く利用される。特に、オイルフィルタとエンジンとを連繋するオイル通路を有するブラケットを成形する技術として好適に利用される。
【符号の説明】
【0044】
1;ブラケット、8;第1空洞部、9;第2空洞部、30;成形装置、31;第1スライドピン、32;第2スライドピン、34;成形型、35;芯部、35a;当接部、36;回転部、39,39’;凹部、40;凸部、42;射出ゲート、C1;第1スライドピンのスライド軸、C2;第2スライドピンのスライド軸C2、D1;芯部の直径、D2;第2スライドピンの直径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型の内部に、第1空洞部を形成するための第1スライドピンと、第1空洞部に連通する第2空洞部を形成するための第2スライドピンと、を備える成形装置であって、
前記第1スライドピンは、該第1スライドピンのスライド軸回りに非回転とされ且つ前記第2スライドピンと当接する当接部を備える芯部と、該芯部の外周に摺接して該第1スライドピンのスライド軸回りに回転可能とされる回転部と、を備え、
前記当接部及び前記第2スライドピンのうちの一方には、凹部が設けられ、他方には該凹部に嵌合する凸部が設けられていることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記成形型の内部には、前記当接部と前記第2スライドピンとが当接する方向に射出圧が作用するように射出ゲートが配設されている請求項1記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項3】
前記第1スライドピンの前記芯部の直径は、前記第2スライドピンの直径より大きな値である請求項1又は2に記載の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171258(P2012−171258A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36404(P2011−36404)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】