説明

成形食品の製造装置および製造方法

【課題】成形食品の取り出しを容易にする。
【解決手段】成形食品の製造装置は、加熱ステーションと取出ステーションとの間に設けられ、上下の割型22,26間にキャビティ20aに通じる隙間Sがあくように成形型20を開くギャップ形成手段48と、ギャップ形成手段48によって形成された成形型20の隙間Sに対して進退移動可能で、かつ上下方向に往復移動可能な保持片54を有する保持手段52とを備えている。保持手段52は、成形型20に対して保持片54を前進させて、隙間Sを介してキャビティ20aに保持片54を挿入してから、取出ステーションでの受け渡し側となる下側の割型22側へ移動する離型動作を行うよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形型で原料を焼いて製造される成形食品の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たこやきやまんじゅう等の成形食品を製造する装置として、例えば特許文献1に開示されているような食品焼成機が知られている。特許文献1に開示の食品焼成機は、ループ状に形成された焼型移送路と、この移送路上を間欠的に循環移送される凹所を有する焼型と、定量の液状生地を予熱された焼型の凹所に注入する生地供給装置と、移送路の途中で焼型を加熱して液状生地を焼成するトンネルオーブンとを備えている。また、食品焼成機は、トンネルオーブンで加熱することで得られた成形食品を、食品取出し位置において焼型を180度反転させて落下させる焼型反転手段を備えている。このように、食品焼成機によれば、焼型が移送路を循環する過程で、焼型に供給された液状生地を加熱して成形食品を製造し、焼型から取り出すまでの一連の工程を自動的に行うようになっている。
【0003】
前記食品焼成機は、生地供給装置で焼型に液状生地を供給する前に、油等を焼型の凹所に塗布しているものの、食品取出し位置で焼型反転手段により焼型が反転しても、一部の成形食品が凹所から離れずに残る場合がある。特許文献1の食品焼成機では、食品取出し位置に駆動手段で動作されるハンマーを設け、トンネルオーブンから出た焼型が焼型反転手段により反転された際に、ハンマーによって焼型の裏面を叩いて衝撃を与えることで、焼型から成形食品を落下させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−131057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したハンマーによって焼型に衝撃を与える構成では、成形食品の形状や外面の粘り気等によっては、凹所から成形食品を確実に落下させることができない。例えば、成形食品の焼型からの排出性を向上するために、ハンマーにより付与する衝撃を大きくすることが考えられるが、衝撃を大きくすると、焼型を損傷したり、騒音が発生したりする等の弊害を招いてしまう。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る成形食品の製造装置および製造方法に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、成形型から成形食品を取り出し易くし得る成形食品の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の成形食品の製造装置は、
閉じた状態で所定のキャビティを画成する対をなす割型からなり、これらの割型を開閉可能な成形型と、開いた成形型に原料を供給する供給ステーションと、閉じた成形型を加熱することで前記供給ステーションで供給された原料を焼成して成形食品を得る加熱ステーションと、開いた成形型から成形食品を取り出す取出ステーションと、供給ステーション、加熱ステーションおよび取出ステーションに前記成形型を順次搬送する搬送手段とを備えた成形食品の製造装置において、
前記加熱ステーションと前記取出ステーションとの間に設けられ、対をなす割型間にキャビティに通じる隙間があくように前記成形型を開くギャップ形成手段と、
前記取出ステーションの上流側に設けられ、前記ギャップ形成手段によって形成された前記成形型の隙間に対して進退移動可能で、かつ対をなす割型の対向方向に沿って往復移動可能な保持片を有する保持手段とを備え、
前記保持手段は、前記搬送手段で搬送されて到来した成形型に対して前記保持片を前進させて、前記隙間を介してキャビティに該保持片を挿入してから、前記取出ステーションでの成形食品の受け渡し側となる一方の割型側へ移動する離型動作を行うよう構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、保持手段の保持片によってキャビティ内の成形食品を押える離型動作を行う構成であるので、他方の割型から成形食品を剥離することができる。しかも、保持手段は、保持片をキャビティに単に挿入して成形食品を押えるだけでなく、当接させた状態から一方の割型に向けて保持片を移動させる構成であるので、他方の割型に貼り付いた成形食品をより確実に剥離して一方の割型側に受け渡すことができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記成形型は、前記ギャップ形成手段によって上側に位置する前記他方の割型が押し上げられて前記隙間が形成されると共に、前記一方の割型を下にした状態で前記保持片に前記隙間が臨むように前記搬送手段で搬送され、
前記保持手段は、前記隙間における他方の割型側に保持片をキャビティに臨むまで挿入し、該保持片をキャビティに臨ませた状態で該保持片を隙間内において下方へ移動する構成としたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、隙間における他方の割型側に保持片を挿入する構成であるので、成形食品が他方の割型に貼り付いていても保持片を成形食品に当接させることができ、他方の割型に貼り付いた成形食品をより確実に剥離することができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記取出ステーションでの成形食品の取り出しに先立って前記成形型を開放する型開放手段が、前記保持手段による保持片の離型動作を行う作業位置に設けられ、保持片をキャビティに臨ませた状態で該型開放手段によって成形型を開放するよう構成したことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、キャビティに臨ませた保持片で成形食品を保持した状態で成形型を開放することで、成形型の開放に追従して成形食品が移動するのを防止することができる。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項4に係る発明の成形食品の製造方法は、
閉じた状態で所定のキャビティを画成する対をなす割型からなる成形型を開いた状態で該成形型に原料を供給する工程と、成形型を閉じて原料を焼成して成形食品を得る工程と、成形型を開いて成形食品を取り出す工程とを、成形型を搬送する過程で順次行う成形食品の製造方法において、
原料を焼成して成形食品を得る工程の後に、対をなす割型間にキャビティに通じる隙間があくように前記成形型を開き、
前記成形型の隙間から保持片をキャビティに先端が臨むまで挿入し、該保持片の先端で成形食品を押えた状態で、前記成形食品の取り出し工程での受け渡し側となる一方の割型側に向けて該保持片を隙間内において移動する離型動作を行い、前記成形型を開放するようにしたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、成形型を開く前に保持片によってキャビティ内の成形食品を押える離型動作を行うことで、他方の割型から成形食品を剥離することができる。しかも、保持片をキャビティに単に挿入して成形食品を押えるだけでなく、当接させた状態から一方の割型に向けて保持片を移動させることで、他方の割型に貼り付いた成形食品をより確実に剥離して一方の割型側に受け渡すことができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記成形型は、前記保持片でキャビティの成形食品を押えた状態で開放されることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、保持片で成形食品を保持した状態で成形型を開放することで、成形型の開放に追従して成形食品が移動するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る成形食品の製造装置および製造方法によれば、成形型から成形食品を取り出し易くし得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な実施例1に係る製造装置を示す平面図である。
【図2】実施例1の製造装置の取出準備ステーションを示す平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】(a)は、図2のB−B線断面図であって、型開放手段を省略して示し、(b)は、図2のC矢視図である。
【図5】図2のB−B線に対応する部位で破断した断面図であって、型開放手段によって成形型を開放した状態を示す。
【図6】実施例1の製造装置の保持手段の保持片による離型動作を示す説明図であって、(a)は作業位置に成形型が到来した状態を示し、(b)は成形型の隙間に対して保持片を挿入している状態を示し、(c)は隙間に挿入した保持片を下降している状態を示し、(d)は成形型を開放している状態を示し、(e)は成形型から保持片を退避している状態を示す。
【図7】実施例2に係る製造装置の取出準備ステーションを示す平面図である。
【図8】図7のD−D線に対応する部位で破断した断面図であって、型開放手段を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る成形食品の製造装置および製造装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、小麦粉等を原料とするカステラ状の生地で餡を包んだ、もみじまんじゅう、鯛焼きや人形焼きなどに代表される皮に弾力性がある焼きまんじゅうを、成形食品の例として挙げる。
【実施例1】
【0015】
図1に示すように、実施例1に係る製造装置10は、機枠に平面視でループ状に形成された無端の搬送路14を、成形型20がチェーンコンベア等の搬送手段16によって循環するように構成されている。製造装置10には、成形型20に原料を供給する供給ステーション30と、供給ステーション30の搬送方向下流側に設けられ、成形型20を加熱する加熱ステーション32と、加熱ステーション32の搬送方向下流側に設けられ、成形型20から成形食品Mを取り出す取出ステーション36とが、搬送路14に対応して設けられている。ここで、「搬送方向」とは、搬送手段16によって搬送路14に沿って運ばれる成形型20の流れの向きであって、実施例1の製造装置10では、成形型20が一方向に移動して水平回りに巡るようになっている。また、製造装置10には、取出ステーション36での成形食品Mの取り出しに先立って当該取り出しの円滑化を図る取出準備ステーション34が、加熱ステーション32と取出ステーション36との間に設けられている(図1または図2参照)。更に、製造装置10は、取出ステーション36と供給ステーション30との間に設けられて、供給ステーション30での原料の供給前に、成形型20から屑を除去したり、成形型20の成形面に油等の離型促進剤を塗布したり等する開始準備ステーション38を備えている(図1参照)。
【0016】
前記製造装置10では、原料の供給から成形食品Mの取り出しまでの一連の工程を、成形型20が1つの搬送路14を搬送される過程で順番に行い、成形食品Mが取り出された成形型20が開始準備ステーション38を経て再び供給ステーション30に到来するように循環される(図1参照)。ここで、搬送手段16は、成形型20を間欠的に動かすように制御され、成形型20を各ステーション30,32,34,36,38の作業位置に対応させて停止すると共に、当該ステーション30,32,34,36,38から次のステーション30,32,34,36,38に向けて搬送するようになっている。そして、製造装置10には、複数の成形型20が搬送方向に並べて搬送路14に設置されており、各ステーション30,32,34,36,38に臨んだ成形型20の夫々において各ステーション30,32,34,36,38に設定された所定の作業が行われる。
【0017】
前記成形型20は、対をなす2つの割型22,26をヒンジ部21を介して互いにヒンジ接続することで、これらの割型22,26を開閉可能に構成されている(図2または図3参照)。実施例1の成形型20は、平面視矩形状の割型22,26を2つ組み合わせて構成され(図1参照)、割型22,26における長手辺の一方にヒンジ部21が設けられている。また、各割型22,26には、ヒンジ部21と反対側の側縁に該ヒンジ部21と反対側に延出する開閉操作片24,28が夫々設けられており(図4(a)参照)、両開閉操作片24,28は、成形型20を閉じた際に互い重ならない部分ができるように互い違いに配置されている(図2参照)。また、成形型20では、後述する保持手段52の保持片54に相対する作業位置で下側に位置する第1割型(一方の割型)22の第1開閉操作片24と比べて、該作業位置で上側に位置する第2割型(他方の割型)26の第2開閉操作片28が外側方へ大きく延出するよう形成されている(図4(a)参照)。なお、成形型20は、取出ステーション36において第1割型22から成形食品Mが受け渡される。そして、成形型20は、後述する型閉成手段40および型開放手段46による開閉に際して、開閉操作片24,28を該型開放手段46で支持して割型22,26が回動される(図5参照)。両割型22,26には、長手辺に沿って並べて4つの凹部が対称的に設けられ、両割型22,26を閉じた際に成形型20には、両割型22,26の対応する凹部が互いに繋がって4つのキャビティ20aが画成されるようになっている(図2〜図4参照)。成形型20は、保持手段52の保持片54に相対する作業位置で第2割型26を開放した際に、第1割型22の凹部から成形食品Mが上方へ突出するように構成され、実施例1では、得られる成形食品Mの厚みの略中央部に両割型22,26のパーティングラインがくるようにキャビティ20aが形成されている。そして、成形型20は、搬送路14において搬送方向に4つのキャビティ20aの並び方向を沿わせて載置されている。
【0018】
前記供給ステーション30は、開放された成形型20における両方の割型22,26の凹部に対して、所定量の生地を供給する生地供給手段30aと(図1または図3参照)、生地供給手段30aの搬送方向下流側に設けられ、成形型20における第1割型(一方の割型)22の凹部に対し、所定量の餡を供給する餡供給手段30b(図1参照)とを備えている。供給ステーション30では、搬送路14の下方に設けられた加熱手段(図示せず)によって成形型20が加熱されている。製造装置10には、餡供給手段30bの搬送方向下流側に位置して、供給ステーション30で開放していた成形型20を閉じる型閉成手段40が設けられ、該型閉成手段40によって第2割型26を回動することで、第2割型26を第1割型22に載置して型閉めするようになっている。また、製造装置10には、型閉成手段40の搬送方向下流側に位置して、成形型20を180°反転する第1型反転手段42が設けられ(図1参照)、該第1型反転手段42によって成形型20を反転することで、餡を生地の中央に位置させている。
【0019】
前記加熱ステーション32では、搬送路14の下方に設けられた加熱手段(図示せず)によって成形型20を加熱することで、液状の生地を焼成して該生地をスポンジ状に焼き上げている。実施例1では、加熱ステーション32の途中に位置して、成形型20を180°反転する第2型反転手段44が設けられ、該第2型反転手段44によって成形型20を焼成途中で反転することで、全体をまんべんなく加熱するようになっている。なお、加熱手段としては、ガス等のバーナー、電熱線等のヒータ、成形型20を誘導加熱する誘電コイルなどが採用可能である。
【0020】
前記取出準備ステーション34には、対をなす割型22,26の間にキャビティ20aに通じる隙間Sを形成するギャップ形成手段48と、ギャップ形成手段48によって形成された隙間Sを介してキャビティ20a内に挿入される保持片54により成形食品Mを押える保持手段52とが設けられている(図2〜図4参照)。なお、実施例1の製造装置10は、保持手段52の保持片54による成形食品Mの押えに先立って、キャビティ20a内に空気を吹き付ける空気吹付手段50を備えている(図2参照)。ギャップ形成手段48は、搬送路14の側方に搬送方向に延在するように設けられたレール状の部材であって、搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かうにつれて上面が上方傾斜する案内部(図示せず)と、この案内部の搬送方向下流側に連なるように形成され、上面が搬送路14と平行するよう形成された支持部48aとを備えている。ギャップ形成手段48は、搬送路14に載置された成形型20の第2割型26の第2開閉操作片28より案内部の始端が低く設定されて、成形型20の密閉時における第2開閉操作片28の高さより支持部48aが高く設定されている。すなわち、ギャップ形成手段48は、案内部に乗った第2開閉操作片28を上方へ案内することで、第2割型26を上方へ押し上げて、第1割型22との対向状態を保つ程度に第2割型26を僅かに開き、上下の割型22,26間に隙間Sを形成するようになっている(図4(a)参照)。ギャップ形成手段48は、成形型20を完全に開く型開放手段46の作業位置までに亘って支持部48aが延在するように設けられ、空気吹付手段50による空気の吹き付け、保持手段52による成形食品Mの離型および型開放手段46による成形型20の開放までに亘って、隙間Sが所要間隔で保たれるようになっている。
【0021】
前記保持手段52は、ギャップ形成手段48の案内部より搬送方向下流側に位置して、成形型20の隙間Sが開口する側(ヒンジ部21と反対側)となる搬送路14の側方に設けられている(図2または図3参照)。保持手段52は、成形型20のキャビティ20aに対して挿脱される保持片54と、この保持片54を動かす駆動部56,58とから構成されている(図4参照)。保持片54は、4つ並んだキャビティ20aに対応して爪54aを備える櫛歯状に形成され、作業位置に到来して停止した成形型20の各キャビティ20aの夫々に対し、搬送方向に並ぶ2本の爪54aが臨むようになっている。保持手段52は、保持片54を搬送方向に直交する水平方向に往復移動する第1駆動部56と、この第1駆動部56を搬送方向に直交する垂直方向に往復移動することで、保持片54を垂直方向に往復移動する第2駆動部58とを備え(図4(b)参照)、第1駆動部56および第2駆動部58により保持片54が所謂ボックスモーションを行うよう構成されている(図6参照)。このように、保持手段52は、保持片54がギャップ形成手段48によって形成された隙間Sに対して進退移動可能で、かつ対をなす割型22,26の対向方向となる上下方向に沿って往復移動可能になっている。なお、実施例1では、第1および第2駆動部56,58としてエアシリンダが採用されている。
【0022】
前記保持手段52は、作業位置で停止した成形型20に対して保持片54を前進させて、隙間Sを介してキャビティ20aに保持片54を挿入してから該保持片54を第1割型22側へ下降するように第1および第2駆動部56,58が駆動制御される。また、保持手段52は、保持片54が第1割型22側に下降した状態から第2割型26が型開放手段46で開放された後のタイミングで、成形型20から後退するように第1駆動部56が駆動制御される。そして、保持手段52は、成形型20から退避した位置で保持片54が上昇するように第2駆動部58が駆動制御される。保持手段52は、作業位置で停止した成形型20に対して、隙間Sの上側に偏倚した位置から保持片54が挿入されて、キャビティ20aの内部に形成された成形食品Mの上下半分より上側(第1割型22に載置された通常姿勢の場合)に保持片54が当接するように構成されている。また、保持手段52は、保持片54が隙間Sの上側に偏倚した位置から該隙間Sの上下方向の中央部まで下降するようになっている。
【0023】
前記型開放手段46は、保持手段52による保持片54の離型動作を行う作業位置に設けられている。実施例1の型開放手段46は、第2割型26の第2開閉操作片28を支持する第1レバー46aと、第2割型26の外面を支持する第2レバー46bとを備え(図5参照)、第2レバー46bで第2割型26の外面を支持しつつ第1レバー46aで第2開閉操作片28を押し上げて、第2割型26を開放するようになっている。なお、第1レバー46aは、保持片54と干渉しない位置(実施例1では、保持片54の搬送方向中央部に設けられた凹所)において搬送路14の下方から出没するようになっている。そして、取出ステーション36では、第1割型22に載置されて上部が該第1割型22から突出している成形食品Mをつまんで、包装機等に繋がるコンベヤ等の移送手段60に受け渡すよう構成されている。
【0024】
次に、実施例1に係る製造装置10を用いた成形食品Mの製造方法について、取出ステーション36での取り出しに先立って行われる取出準備ステーション34での取出準備工程を主に説明する。成形型20では、加熱ステーション32で加熱されることで、供給ステーション30でキャビティ20aに供給された原料が焼成され、キャビティ20aに成形食品Mが形成される。成形型20は、搬送手段16で搬送されてギャップ形成手段48に到来すると、第2割型26の第2開閉操作片28がギャップ形成手段48で支持されることで第1割型22から持ち上がり、両割型22,26の間に各キャビティ20aに連通する隙間Sが形成される(図6(a)参照)。成形型20は、空気吹付手段50の前で停止され、空気吹付手段50によって隙間Sを介してキャビティ20aにおける第2割型26側に向けて空気が吹き付けられる。
【0025】
次に、成形型20は、保持手段52の前の作業位置に停止され、成形型20の隙間Sから保持手段52の保持片54をキャビティ20aの内部に先端が臨むまで挿入される(図6(b)参照)。ここで、保持片54は、隙間Sの上側(第2割型26側)に偏倚した位置から挿入される。保持手段52は、保持片54の先端をキャビティ20aに臨ませることで、該キャビティ20a内の成形食品Mに該先端を当接させ、この状態で保持片54を隙間S内において下方(第2割型26側)へ移動する離型動作を行う(図6(c)参照)。そして、保持片54の先端をキャビティ20aに臨ませて成形食品Mを押えた状態で、型開放手段46によって第2割型26が回動され(図6(d)参照)、第1割型22に載置された成形食品Mの上方が開放される。次いで、保持手段52は、保持片54を成形型20から後退させて(図6(e)参照)、次の成形型20での離型動作に備えて保持片54を初期位置まで上昇する一方、開放された成形型20は、搬送手段16によって取出ステーション36まで搬送されて、第1割型22に載置された成形食品Mが取り出される。
【0026】
このように、製造装置10は、成形型20を開く前に保持手段52の保持片54によってキャビティ20a内の成形食品Mを押える離型動作を行う構成であるので、型開放手段46によって開放される第2割型26から成形食品Mを剥離して、取出ステーション36での取り出し側となる第1割型22に成形食品Mを適切な姿勢で載置することができる。しかも、保持手段52は、保持片54をキャビティ20aに単に挿入して成形食品Mを押えるだけでなく、当接させた状態から第1割型22に向けて保持片54を移動させる構成であるので、第2割型26に貼り付いた成形食品Mをより確実に剥離することができる。
【0027】
前記保持手段52は、保持片54を隙間Sの上側に挿入して下方に移動する構成であるので、第2割型26に貼り付いた成形食品Mをより確実に剥離することができる。成形食品Mは、ギャップ形成手段48によって隙間Sをあけた際に、第2割型26に貼り付いて持ち上がった姿勢になることがある(図4(a)参照)。仮に、保持片54を水平に挿入しただけでは、持ち上がった姿勢となっている成形食品Mの下側に保持片54が入ったり、成形食品Mの下面に保持片54が当接して滑ったりする等、成形食品Mをうまく押えることができない。これに対して、実施例1の保持手段52は、保持片54を隙間Sの上側に挿入する構成であるので、上側の第2割型26に成形食品Mが貼り付いて持ち上がった姿勢になっていても、成形食品Mの側面に保持片54を当接させることができ、成形食品Mの側面に保持片54を引っ掛けて下降することで、成形食品Mを第2割型26から積極的に剥離させることができる。また、保持手段52は、保持片54を成形食品Mの側面に当接させてから下降することで、該成形食品Mの側面と保持片54との引っ掛かりがよくなる。
【0028】
前記製造装置10は、保持手段52の保持片54で成形食品Mを押えた状態で型開放手段46によって成形型20を開放する構成であるので、第2割型26の開口縁等に引っ掛かって成形食品Mの姿勢が乱れたりすることを回避できる。また、製造装置10は、保持手段52の保持片54が下降して離型動作を終えた後に型開放手段46で成形型20を開放することで、第2割型26から成形食品Mが剥離して第1割型22に受け渡された状態で第2割型26を動かすことになり、第2割型26の開放に追従して成形食品Mの姿勢が乱れることを回避できる。このように、実施例1の製造装置10によれば、成形型20において開放する側となる上側の第2割型26から成形食品Mを剥離して、取出ステーション36での取り出し側となる下側の第1割型22に適切に受け渡すことができるので、取出ステーション36での取り出し作業を円滑に行うことができる。
【実施例2】
【0029】
実施例1では、保持手段52による保持片54の離型動作を行う作業位置に、型開放手段46を設けたが、図7に示す実施例2の取出準備ステーション62では、保持手段52の作業位置の下流側に型開放手段46が設けられている。そして、実施例2の取出準備ステーション62には、型開放手段46の作業位置に、型開放手段46による成形型20の開放時に成形食品Mを押さえる規制手段64が設けられている。なお、実施例2では、実施例1と同様の構成については実施例1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0030】
前記規制手段64は、保持手段52の作業位置より搬送方向下流側に位置して、成形型20の隙間Sが開口する側(ヒンジ部21と反対側)となる搬送路14の側方に設けられている(図7参照)。規制手段64は、成形型20のキャビティ20aに対して挿脱される規制片66と、この規制片66を動かす作動部(図示せず)とから構成されている(図7または図8参照)。規制片66は、4つ並んだキャビティ20aに対応して爪66aを備える櫛歯状に形成され、作業位置に到来して停止した成形型20の各キャビティ20aの夫々に対し、搬送方向に並ぶ3本の爪66aが臨むようになっている。規制手段64は、規制片66が作動部によって成形型20の搬送方向に直交する水平方向に往復移動するよう構成される。このように、規制手段64は、規制片66がギャップ形成手段48によって形成された隙間Sに対して進退移動可能になっているが、保持手段52の保持片54のように上下方向には変位しない構成となっている。なお、実施例2の作動部としては、エアシリンダ、モータ、あるいはカムやリンクを組み合わせた機構を採用し得る。
【0031】
前記規制手段64は、型開放手段46の作業位置で停止した成形型20に対して、型開放手段46によって第2割型26を開放する前のタイミングで規制片66を前進させて、隙間Sを介してキャビティ20aに保持片54を挿入することで、キャビティ20aの成形食品Mを押さるように作動部が駆動制御される。また、規制手段64は、第2割型26が型開放手段46で開放された後のタイミングで、規制片66が成形型20から後退するように作動部が駆動制御される。
【0032】
このように、実施例2によれば、実施例1で説明した作用効果に加えて、保持手段52の作業位置で成形型20を開放しない場合であっても、型開放手段46の作業位置に規制手段64を設け、規制手段64の規制66で成形食品Mを押えた状態で型開放手段46によって成形型20を開放する構成であるので、第2割型26の開口縁等に引っ掛かって成形食品Mの姿勢が乱れたりすることを回避できる。
【0033】
前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)保持片を動かす駆動部としては、空気や油圧等の流体圧シリンダに限定されず、モータ、あるいはカムやリンクを組み合わせた機構も採用し得る。
(2)実施例では、保持片で保持した状態で上側の割型を開放する例を挙げたが、保持片を成形食品から離した状態で成形型を開放してもよい。保持片を下降した後のタイミングで成形型を開放するのではなく、保持片を下降するのに合わせて成形型を開放してもよい。
(3)成形型の搬送姿勢は、実施例のように横向きに限定されず、縦向き等であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
16 搬送手段,20 成形型,20a キャビティ,22 第1割型(一方の割型),
26 台第2割型(他方の割型),30 供給ステーション,32 加熱ステーション,
36 取出ステーション,48 ギャップ形成手段,52 保持手段,54 保持片,
M 成形食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた状態で所定のキャビティ(20a)を画成する対をなす割型(22,26)からなり、これらの割型(22,26)を開閉可能な成形型(20)と、開いた成形型(20)に原料を供給する供給ステーション(30)と、閉じた成形型(20)を加熱することで前記供給ステーション(30)で供給された原料を焼成して成形食品(M)を得る加熱ステーション(32)と、開いた成形型(20)から成形食品(M)を取り出す取出ステーション(36)と、供給ステーション(30)、加熱ステーション(32)および取出ステーション(36)に前記成形型(20)を順次搬送する搬送手段(16)とを備えた成形食品の製造装置において、
前記加熱ステーション(32)と前記取出ステーション(36)との間に設けられ、対をなす割型(22,26)間にキャビティ(20a)に通じる隙間(S)があくように前記成形型(20)を開くギャップ形成手段(48)と、
前記取出ステーション(36)の上流側に設けられ、前記ギャップ形成手段(48)によって形成された前記成形型(20)の隙間(S)に対して進退移動可能で、かつ対をなす割型(22,26)の対向方向に沿って往復移動可能な保持片(54)を有する保持手段(52)とを備え、
前記保持手段(52)は、前記搬送手段(16)で搬送されて到来した成形型(20)に対して前記保持片(54)を前進させて、前記隙間(S)を介してキャビティ(20a)に該保持片(54)を挿入してから、前記取出ステーション(36)での成形食品(M)の受け渡し側となる一方の割型(22)側へ移動する離型動作を行うよう構成した
ことを特徴とする成形食品の製造装置。
【請求項2】
前記成形型(20)は、前記ギャップ形成手段(48)によって上側に位置する前記他方の割型(26)が押し上げられて前記隙間(S)が形成されると共に、前記一方の割型(22)を下にした状態で前記保持片(54)に前記隙間(S)が臨むように前記搬送手段(16)で搬送され、
前記保持手段(52)は、前記隙間(S)における他方の割型(26)側に保持片(54)をキャビティに臨むまで挿入し、該保持片(54)をキャビティ(20a)に臨ませた状態で該保持片(54)を隙間(S)内において下方へ移動する構成とした請求項1記載の成形食品の製造装置。
【請求項3】
前記取出ステーション(36)での成形食品(M)の取り出しに先立って前記成形型(20)を開放する型開放手段(46)が、前記保持手段(52)による保持片(54)の離型動作を行う作業位置に設けられ、保持片(54)をキャビティ(20a)に臨ませた状態で該型開放手段(46)によって成形型(20)を開放するよう構成した請求項1または2記載の成形食品の製造装置。
【請求項4】
閉じた状態で所定のキャビティ(20a)を画成する対をなす割型(22,26)からなる成形型(20)を開いた状態で該成形型(20)に原料を供給する工程と、成形型(20)を閉じて原料を焼成して成形食品(M)を得る工程と、成形型(20)を開いて成形食品(M)を取り出す工程とを、成形型(20)を搬送する過程で順次行う成形食品の製造方法において、
原料を焼成して成形食品(M)を得る工程の後に、対をなす割型(22,26)間にキャビティ(20a)に通じる隙間(S)があくように前記成形型(20)を開き、
前記成形型(20)の隙間(S)から保持片(54)をキャビティ(20a)に先端が臨むまで挿入し、該保持片(54)の先端で成形食品(M)を押えた状態で、前記成形食品(M)の取り出し工程での受け渡し側となる一方の割型(22)側に向けて該保持片(54)を隙間(S)内において移動する離型動作を行い、前記成形型(20)を開放するようにした
ことを特徴とする成形食品の製造方法。
【請求項5】
前記成形型(20)は、前記保持片(54)でキャビティ(20a)の成形食品(M)を押えた状態で開放される請求項4記載の成形食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−165670(P2012−165670A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27726(P2011−27726)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511037218)森川フードマシン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】