説明

成膜材料供給装置

【課題】良好な保護膜の形成を可能とし、保護膜成膜時にスプラッシュ発生がなく画素表示欠陥のないプラズマディスプレイパネルを実現する成膜材料供給装置を提供する。
【解決手段】ハースに成膜材料22を供給する成膜材料供給装置であって、フィーダ43と、フィーダ43から供給された成膜材料22をハースに滑落させるシューター60とを備え、シューター60に、所定寸法以上の成膜材料22のみをハースに供給する成膜材料選択部となる開口部63を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置用の成膜材料供給装置に関し、特にAC型プラズマディスプレイパネルの保護膜を成膜する成膜装置の成膜材料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能、視野角が広い、大型化が容易である、自発光で表示品質が高いなどの理由から広く普及しつつある。
【0003】
AC型PDPは、前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに、放電空間を複数に仕切るための隔壁を基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置している。さらに、放電により発光する赤色、緑色、青色に発光する蛍光体を設けて複数の放電セルを構成している。放電によって発生する波長の短い真空紫外光によって蛍光体を励起し、赤色、緑色、青色の放電セルからそれぞれ赤色、緑色、青色の可視光を発光することによりカラー表示を行っている。
【0004】
このような構造のPDPにおいては、基板の放電空間に露出する側が放電に晒され、イオン衝撃のスパッタリングにより表面状態が変化してしまうことを避けるために、基板の放電空間側に例えば酸化マグネシウム(MgO)材料による保護膜を形成している。このような保護膜の形成は、酸化マグネシウム(MgO)粒子などの成膜材料を電子ビームによって加熱して蒸発させる電子ビーム蒸着法により成膜する方法が一般的に用いられている。
【0005】
このとき、成膜装置としての電子ビーム蒸着装置は、成膜室内に設けたハースに成膜材料を供給するための成膜材料供給装置を備え、ハース内の成膜材料に電子ビームを照射して成膜材料を蒸発させ、その蒸発ガスを移動する基板上に蒸着させることにより行われる。
【0006】
これらのハースへの成膜材料の供給方法として、フィーダからシューター上に供給された成膜材料を、シューター上を滑落させながらハースに投入する例が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−19473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような構成の成膜材料供給装置において、成膜材料をフィーダに供給するときやフィーダによって成膜材料を送り出すときに、成膜材料と成膜材料供給装置との接触、あるいは成膜材料どうしの接触により、成膜材料が割れたり削れたりして小粒径の成膜材料を発生する。
【0009】
この小粒径の成膜材料は、保護膜蒸着時にスプラッシュ(突沸)現象を引き起こす。スプラッシュ現象は、成膜材料に必要以上の電子ビームエネルギが与えられることによって発生する。このようなスプラッシュ現象が発生すると、スプラッシュ現象の発生により加熱された成膜材料が飛散して基板上に異物を形成する。このような異物がすでに基板上に形成されている表示電極や誘電体層などを破壊することや、さらには保護膜そのものを破壊して画像表示欠陥を発生させるといった課題があった。
【0010】
本発明はこのような課題を解決して良好な保護膜の形成を可能とし、画素表示欠陥のないPDPの実現する成膜材料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の成膜材料供給装置は、ハースに成膜材料を供給する成膜材料供給装置であって、フィーダと、フィーダから供給された成膜材料をハースに滑落させるシューターとを備え、シューターに、所定寸法以上の成膜材料のみをハースに供給する成膜材料選択部を設けている。
【0012】
このような構成によれば、シューターからハースへ成膜材料を供給する際に、スプラッシュの発生しやすい小粒径の成膜材料はハースに供給させず、ハースでのスプラッシュの発生を抑制して良好な保護膜の形成を可能とし、画素表示欠陥のないPDPを実現することができる。
【0013】
さらに、シューターは成膜材料が滑落する底面部を有し、成膜材料選択部が底面部に設けた開口部であってもよい。このような構成によれば、シューター上を成膜材料が滑落する際に、開口部を通過させて小粒径の成膜材料をシューター上から落下させて排除し、簡単な構成でスプラッシュ現象の発生を抑制できる成膜材料供給装置を実現できる。
【0014】
さらに、所定寸法が成膜材料の平均粒子径であることが望ましい。このような構成によれば、成膜材料の粒子径と電子ビームエネルギとの設定をマッチングさせて確実にスプラッシュ現象の発生を抑制することができる。
【0015】
さらに、シューターに、シューターに振動を付与する振動付与部を設けることが望ましい。このような構成によれば、確実にシューター上から所定寸法未満の成膜材料を落下させて排除することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の成膜材料供給装置によれば、スプラッシュ発生の原因となる小粒径の成膜材料を除去してハースに供給することができ、保護膜の成膜時にスプラッシュ発生を防止し画素欠陥のないPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】AC型PDPの構造を示す斜視図である。
【図2】実施の形態における成膜材料供給装置を用いてPDP用の保護膜を形成するための成膜装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】従来の成膜材料供給装置におけるシューターの構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態における成膜材料供給装置のシューターの斜視図である。
【図5】実施の形態における成膜材料供給装置の材料フィーダとシューターとの連結状態を示す断面図である。
【図6】同シューターの底部開口径とスプラッシュ発生数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態における成膜材料供給装置について図を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態)
まず、PDPの構造について図1を用いて説明する。図1はAC型PDPの構造を示す斜視図である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、キセノン(Xe)とネオン(Ne)などの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
【0020】
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7とが、互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うように電荷を保持してコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその上に保護膜9が形成されている。
【0021】
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝ごとに、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電空間16が形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電空間16がカラー表示のための画素になる。
【0022】
次に、保護膜9を形成するための成膜装置について説明する。図2は本発明の一実施の形態における成膜材料供給装置を用いてPDP1用の保護膜9を形成するための成膜装置の概略構成を示す断面図である。成膜装置20は、成膜材料を電子ビームで加熱、溶融して蒸着させる電子ビーム(EB)蒸着装置である。
【0023】
成膜装置20は、真空槽である真空チャンバ21の内部に、成膜材料22を満たしたハース23が配置されている。真空チャンバ21の側壁には電子ビーム源24が設置され、電子ビーム源24から電子ビーム25をハース23上の成膜材料22に照射する。電子ビーム25の照射は、ハース23の側面に配置された磁気回路(図示せず)による電磁石を制御することにより、その照射位置を制御できる。また、真空チャンバ21を真空排気するための排気ポンプ26や真空度を計測するための真空計27などが設けられている。
【0024】
また、ハース23の略上方には、PDP1の前面ガラス基板3上に表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7、および誘電体層8が形成された前面板2が設置され、さらに、この前面板2の上方には成膜時に前面板2を加熱するための加熱ヒーター28が設置されている。そして、前面板2とハース23との間には、シャッター板29が設けられ、シャッター板29を回転させることにより成膜時以外のタイミングで蒸着粒子30が不用意に前面板2に付着するのを防止するようにしている。なお、前面板2に成膜された保護膜9の膜厚を膜厚モニタ31で随時、計測するようにしている。
【0025】
PDP1の保護膜9としては酸化マグネシウム(MgO)の薄膜が用いられる。そこで本発明の一実施の形態では、成膜材料22としては酸化マグネシウム(MgO)の成膜材料を用いている。
【0026】
ハース23に収容した成膜材料22に電子ビーム25を照射して、成膜材料22を蒸発させ、その蒸発ガスを、前面板2の誘電体層8上に蒸着させることにより保護膜9の形成が行われる。また、図2に示すように、ハース23は回転軸32によって回転可能な構成となっており、ハース23において成膜材料22が供給される位置と、電子ビーム25が照射される位置とを異ならせるようにしている。
【0027】
成膜装置20には、ハース23内の成膜材料22が、成膜に伴う加熱、蒸発により消費されるため、成膜材料22を補給するための成膜材料供給装置40が連結されている。成膜材料供給装置40は材料ホッパー41と、材料ホッパー41の排出口42の直下に配置された材料フィーダ43と、材料フィーダ43のフィーダ排出口44に連結されたシューター45とからなる。なお、材料ホッパー41、材料フィーダ43は、真空排気された真空槽チャンバ(図示せず)に設置され、成膜材料22である酸化マグネシウム(MgO)に吸着した水分を除去する作用とともに、成膜材料22を供給する際の真空チャンバ21内の真空度低下を最小限に抑える予備真空室となる。
【0028】
また、成膜材料供給装置40の材料ホッパー41の排出口42には開閉弁(図示せず)が設けられ、開閉弁の開閉によって材料フィーダ43への成膜材料22の投入を制御している。また、図2に示すように、材料フィーダ43はその下部に駆動モータ43aを備え、駆動モータ43aの駆動軸43bが容器43c内のスクリュー(図示せず)などに連結されている。容器43c内のスクリューの回転によって、材料ホッパー41から材料フィーダ43の容器43cに投入された成膜材料22が容器43cの底部から上部に搬送されて、傾斜した容器43cの上端面のフィーダ排出口44よりシューター45に滑落するようにしている。
【0029】
シューター45への成膜材料22の供給量、すなわちハース23の成膜材料22の供給量の制御は、駆動モータ43aの回転数などを制御することによって行うことができる。
【0030】
次に、図2を参照しながら成膜材料22をハース23に供給する工程について詳細に説明する。材料ホッパー41には、連続運転する期間に応じて、必要量の成膜材料22である酸化マグネシウム(MgO)が収納される。例えば、成膜装置20を所定期間連続運転する場合、その期間にハース23で消費される量に相当する成膜材料22を材料ホッパー41に収納しておく。材料ホッパー41の下部は漏斗状になっていて、排出口42に設けた開閉弁の開閉を制御して材料フィーダ43への供給を制御し、材料フィーダ43の容器43c内の成膜材料22の量が略一定となるように制御している。
【0031】
フィーダ43は容器43cの内周面に軸心を傾斜して回転するリボン状のスクリューを備え、駆動軸43bによって駆動モータ43aに連結されている。容器43cは水平面に対して50度〜60度の角度で傾斜している。
【0032】
材料フィーダ43の容器43cに供給された成膜材料22は、回転するスクリューの回転によって容器43cの上方に移送され、容器43cの最も低くなっている上端面のフィーダ排出口44からシューター45の上端部45aに所定の供給量が滑落供給される。
【0033】
シューター45は、その上端部45aが容器43cの上端面に位置し、下端部45bがハース23に位置するように、全体として容器43cからハース23に向けて傾斜して構成されている。すなわち、シューター45の上端部45aに供給された成膜材料22が、シューター45を滑落しながらハース23に供給される。
【0034】
図3は、従来の成膜材料供給装置におけるシューター50の構成を示す斜視図である。図3に示すように、シューター50は、薄板部材などにより構成され、大粒径成膜材料55、小粒径成膜材料56よりなる成膜材料22が滑落する面となる底面部51と、成膜材料22が滑落する際の案内板の役割を果たす側面部52とにより構成されている。また、シューター50の上端部50aから下端部50bに向けて側面部52により形成される通路面積を縮小するように構成して、ハース23の所定位置への成膜材料22の供給を確実に行うようにしている。
【0035】
前述のように、PDP1の保護膜9としては酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする材料を用いている。したがって、成膜材料22としては、酸化マグネシウム(MgO)を主成分材料として材料調整した焼結体や単結晶粉砕品などの材料を用いている。
【0036】
上記のような構造の成膜材料供給装置において、成膜材料22を材料ホッパー41から材料フィーダ43に供給する際や移送や送出する際に、成膜材料22が材料ホッパー41や材料フィーダ43の底面や側面に衝突したり成膜材料22同士が衝突したりする。その結果、成膜材料22が割れたり削れたりして粒径が小さくなる。
【0037】
したがって、図3に示す従来のシューター50においては、この成膜材料22のうちの小粒径成膜材料56と大粒径成膜材料55とが、ともにシューター50を滑落し、ハース23上に供給される。ハース23に供給されたこのような小粒径成膜材料56は保護膜9を蒸着形成する際にスプラッシュ(突沸)現象を引き起こす。
【0038】
スプラッシュ現象によって小粒径成膜材料56が飛散して表示電極6や誘電体層8が形成された前面板2に衝突すると、前面板2にすでに形成された表示電極6や誘電体層8を破壊したり、保護膜9上に異物として形成されたりする。その結果、画像表示欠陥を発生させる。
【0039】
図4は、実施の形態における成膜材料供給装置40のシューター60の斜視図である。また、図5は材料フィーダ43とシューター60の連結状態を示す断面図である。図4および図5に示すように、本実施の形態における成膜材料供給装置40のシューター60は、底面部61と側面部62とにより構成されている。また、シューター60には、所定寸法以上の成膜材料22のみをハース23に供給する成膜材料選択部となる開口部63が、シューター60の底面部61に設けられている。
【0040】
前述のように、成膜材料供給装置40の側面や底面と衝突したり、および成膜材料22どうしで接触して割れたり削れたりして粒子径が小さくなった小粒径成膜材料64と元々の大粒径成膜材料65が混在してシューター60に供給される。
【0041】
本実施の形態では、これらの小粒径成膜材料64と大粒径成膜材料65とがシューター60上を滑落する際に、成膜材料選択部となる開口部63から所定寸法未満の小粒径成膜材料64を落下させて排除し、所定寸法以上の大粒径成膜材料65のみをハース23に供給するようにしている。すなわち、図5に示すように、開口部63の開口径Aより粒径の小さい小粒径成膜材料64は開口部63より落下する。また、開口部63の開口径Aより粒径の大きい大粒径成膜材料65は、開口部63より落下せずにハース23上に供給される。したがって、ハース23上に供給される成膜材料22は、所定の電子ビームエネルギを照射してもスプラッシュ現象の発生のない大粒径成膜材料65のみとなり、ハース23ではスプラッシュ現象の発生がない安定した蒸着を実現することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、開口部63の所定寸法を成膜材料22の平均粒子径としている。図4に示すように、成膜材料22が平板形状である場合、シューター60の底面部61に落下した成膜材料22は、小粒径成膜材料64であろうが大粒径成膜材料65であろうが、底面部61にその平面部を接するよう滑落する。このような、平板形状で矩形形状の成膜材料22の場合には、成膜材料22の最大長さである対角線長さを代表長さとして平均粒子径としてもよい。一方、成膜材料22が球形形状などの場合にはその径を代表長さとして平均粒子径としている。
【0043】
いずれにしても、このような成膜材料22のうちの平均粒子径未満の成膜材料22が開口部63から落下するように、開口部63の開口径を設定することが望ましい。開口径が大きすぎれば、ハース23上に供給される成膜材料22の粒径は大きくなり、スプラッシュ現象発生の抑止効果は高くなるが、開口部63より落下して利用されない成膜材料22が増えて材料の利用効率が低下する。逆に開口径が小さすぎれば、ハース23上に供給される小粒径成膜材料64の材料の比率が増えてスプラッシュ現象の発生が増加する。したがって、開口径はスプラッシュ抑制効果と材料利用効率より、材料フィーダ43からシューター60に供給される成膜材料22の平均粒径に設定することが望ましく、成膜材料22の粒子径と電子ビームエネルギとの設定をマッチングさせて確実にスプラッシュ現象の発生を抑制することができる。
【0044】
図6は、シューター60の底面部61に設けた開口部63の開口径Aとスプラッシュ発生数を示す。横軸には成膜材料22の平均粒子径に対する開口部63の代表長さの比を示し、縦軸には開口部63の代表長さと平均粒子径とが等しい場合を基準とした場合の、単位時間(分)当たりのスプラッシュ発生回数を示している。図6より、開口部63の代表長さを平均粒子径よりも小さくすると、スプラッシュ発生回数が増加し、平均粒子径よりも大きくしてもスプラッシュ発生回数が極端に減少することはないことがわかる。したがって、開口部63の代表長さは平均粒子径と同等であればよいことがわかる。
【0045】
以上の説明では成膜材料22として、酸化マグネシウム(MgO)用いた場合について説明したが、成膜材料22として酸化マグネシウム(MgO)に限ることはない。また、PDPの保護膜形成に限らず、広く電子ビーム蒸着法で成膜する装置の成膜材料供給装置に適応できる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、図4に示すように、シューター60に振動子と振動軸などからなる振動付与部68を備えている。振動子は超音波振動子または磁歪振動子によって構成される。振動方向はシューター60の底面部61に平行な方向、または底面部61に垂直な方向のいずれでも良い。そして、振動の振幅、周波数、加速度なども目詰まり防止効果などから適宜決定される。このような構成によれば、振動により開口部63より落下する小粒径成膜材料64をシューター60上から落下させる確率が向上し、小粒径成膜材料64の除去効果が向上するとともに、開口部63に小粒径成膜材料64や大粒径成膜材料65が詰まるのを防止できる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、図5に示すように、シューター60の下部に開口部63より落下した小粒径成膜材料64を回収するための回収トレー69を備えている。このような構成によれば、落下した小粒径成膜材料64によって成膜装置を汚染することがなくなり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0048】
なお、開口部63の開口形状は、成膜材料の形状やその平均粒子径を算出する際の代表長さの選定条件に合わせて、丸、角、メッシュなど適宜選定される。
【0049】
なお、上述の実施の形態では、成膜材料選択部として、シューター60の底面部61に開口部63を設けているが、シューター60上を滑落する際の粒子径の違いによる滑落速度の違い、あるいは質量の違いなどによって選別選択するようにしてもよい。
【0050】
以上の説明では成膜材料22として、酸化マグネシウム(MgO)用いた場合について説明したが、成膜材料22として酸化マグネシウム(MgO)に限ることはない。また、PDPの保護膜形成に限らず、広く電子ビーム蒸着法で成膜する装置の成膜材料供給装置に適応できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明による成膜材料供給装置によれば、成膜時のスプラッシュ発生による歩留まり低下を防止することが可能となり、広く薄膜成膜装置などに適用が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護膜
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
20 成膜装置
21 真空チャンバ
22 成膜材料
23 ハース
24 電子ビーム源
25 電子ビーム
26 排気ポンプ
27 真空計
28 加熱ヒーター
29 シャッター板
30 蒸着粒子
31 膜厚モニタ
32 回転軸
40 成膜材料供給装置
41 材料ホッパー
42 排出口
43 材料フィーダ
43a 駆動モータ
43b 駆動軸
43c 容器
44 フィーダ排出口
45,50,60 シューター
45a,50a 上端部
45b,50b 下端部
51,61 底面部
52,62 側面部
55,65 大粒径成膜材料
56,64 小粒径成膜材料
63 開口部
68 振動付与部
69 回収トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハースに成膜材料を供給する成膜材料供給装置であって、フィーダと、前記フィーダから供給された前記成膜材料を前記ハースに滑落させるシューターとを備え、前記シューターに、所定寸法以上の前記成膜材料のみを前記ハースに供給する成膜材料選択部を設けたことを特徴とする成膜材料供給装置。
【請求項2】
前記シューターは前記成膜材料が滑落する底面部を有し、前記成膜材料選択部が前記底面部に設けた開口部であることを特徴とする成膜材料供給装置。
【請求項3】
前記所定寸法が前記成膜材料の平均粒子径であることを特徴とする請求項1に記載の成膜材料供給装置。
【請求項4】
前記シューターに、前記シューターに振動を付与する振動付与部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の成膜材料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−105967(P2011−105967A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259627(P2009−259627)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】