説明

成膜用インク、成膜方法、液滴吐出装置、膜付きデバイスおよび電子機器

【課題】所望の位置に所望の寸法で優れた膜質を有する膜を比較的簡単に形成することができる成膜用インクおよび成膜方法を提供すること、また、かかる成膜方法に用いる液滴吐出装置を提供すること、さらに、かかる成膜方法を用いて形成された膜を有する膜付きデバイスおよび電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜用インクは、成膜材料と、成膜材料が溶解または分散される液性媒体とを有し、液性媒体は、第1成分と、常圧での沸点が第1成分の常圧での沸点よりも高く、かつ、常圧での融点が第1成分の常圧での融点よりも高いとともに、第1成分に溶解する第2成分とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜用インク、成膜方法、液滴吐出装置、膜付きデバイスおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜方法としては、例えば、成膜材料を溶媒に溶解してなる成膜用インクを液滴吐出法を用いて基材上に供給し、その基材上の成膜用インクから溶媒を除去することにより膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような成膜方法を用いることにより、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子の有機層(例えば発光層、正孔輸送層等)、カラーフィルタの着色層および配線基板の導体パターン等を形成することができる。また、このような成膜方法は、フォトリソグラフィー法を用いずにパターンニングが可能であるため、製造プロセスが簡単なものとなるとともに、原材料の使用量も少なくて済むという利点がある。
【0003】
しかし、従来の成膜用インクは、溶媒の沸点を高めて、乾燥速度を遅くした場合、基材上に着弾してから乾燥(溶媒除去)するまでの長時間に亘り液状をなし、その間に基材の振動や基材上の静電気等に起因する外力を受けると、基材上の成膜用インクが意図しない部位へ流れ込んでしまうという問題があった。
このような問題は、例えば、有機ELの発光層やカラーフィルタの着色部を形成する場合、隣り合う異なる色の発光層同士や着色部同士の混色を招く。また、配線基板の金属配線を形成する場合、金属配線同士のショートや金属配線の断線等を招く。
【0004】
一方、従来の成膜用インクを、成膜用インク中の溶媒の沸点を低くして、乾燥速度を速くした場合、成膜用インクが基材上に着弾してから乾燥(溶媒除去)するまでの時間を短くなり、前述したような問題を回避できるものの、所望の範囲に濡れ拡がらせることができなかったり、成膜材料同士が凝集しやすくなったりして、均質な膜質や均一な厚さの膜を形成するのが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−54270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、所望の位置に所望の寸法で優れた膜質を有する膜を比較的簡単に形成することができる成膜用インクおよび成膜方法を提供すること、また、かかる成膜方法に用いる液滴吐出装置を提供すること、さらに、かかる成膜方法を用いて形成された膜を有する膜付きデバイスおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の成膜用インクは、成膜材料と、
前記成膜材料が溶解または分散される液性媒体とを有し、
前記液性媒体は、第1成分と、常圧での沸点が前記第1成分の常圧での沸点よりも高く、かつ、常圧での融点が前記第1成分の常圧での融点よりも高いとともに、前記第1成分に溶解する第2成分とを含むことを特徴とする。
【0008】
これにより、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも低いので、成膜用インクを基材上に付与し、成膜用インクから第1成分を第2成分よりも優先的に揮発・除去することができる。そして、成膜材料および第2成分を主成分とする中間体膜(第1膜)を形成することができる。
また、第1成分の沸点を比較的低くすることにより、基材上に付与された成膜用インクから第1成分を速やかに揮発・除去することができる。
また、第2成分の融点をインク付与工程の環境温度よりも高くし、基材上に形成された第1膜を固体状とすることができる。そのため、基材上に付与された成膜用インクが不本意な部位へ流れ込むのを防止することができる。
【0009】
また、基材上の第1膜を第2成分の融点以上に加熱することにより液状とし、その状態で第2成分を除去することができる。これにより、成膜材料を主材料とした膜(第2膜)を得ることができる。その際、第1膜を液状としたときに第1膜の平坦化や第1膜中の成膜材料の均一化(均質化)を図ることができる。そのため、均一な膜厚で均質な膜(第2膜)を形成することができる。また、液状となった第1膜は、その粘度が比較的高いので、基材上の不本意な部位へ流れ込むことはない。
【0010】
本発明の成膜用インクでは、前記第1成分は、常温常圧で液状をなすものであることが好ましい。
これにより、常温常圧下において、基材上に成膜用インクを容易に付与することができる。
本発明の成膜用インクでは、前記第1成分の常圧での融点は、0℃以下であることが好ましい。
これにより、室温付近において、基材上に成膜用インクを容易に付与することができる。
【0011】
本発明の成膜用インクでは、前記第1成分の常圧での沸点は、40℃以上であることが好ましい。
これにより、室温付近において成膜用インクを基材上に付与したときに、成膜用インクから第1成分が揮発・除去される速度を適度に抑えることができる。そのため、成膜用インクを基材上に適度に濡れ広がらせることができる。また、液滴吐出法により成膜用インクを基材上に付与する場合、液滴吐出ヘッドのノズルの目詰まりを防止することができる。
また、第2成分の融点を室温よりも高くすることができる。そのため、第1成分が除去された後に、室温付近において、第2成分を固体状とすることができる。
本発明の成膜用インクでは、前記第2成分は、常温常圧で固体状をなすものであることが好ましい。
これにより、常温常圧下において、基材上に形成された第1膜(第1成分が除去された成膜用インクからなる膜)を固体状とすることができる。
【0012】
本発明の成膜用インクでは、前記成膜材料は、有機材料を主材料とするものであることが好ましい。
これにより、第1成分および第2成分を適宜選択することにより、液性媒体に成膜材料を溶解させることができる。
本発明の成膜用インクでは、前記成膜材料は、前記第2成分に溶解するものであることが好ましい。
これにより、基材上に形成された第1膜中において成膜材料が凝集するのを防止することができる。その結果、得られる膜(第2膜)の均質化および厚さの均一化を図ることができる。
【0013】
本発明の成膜用インクでは、前記成膜材料は、カラーフィルタの着色層の構成材料またはその前駆体であることが好ましい。
これにより、カラーフィルタの着色層を形成することができる。
本発明の成膜用インクでは、前記成膜材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層の構成材料またはその前駆体であることが好ましい。
これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層(例えば、正孔輸送層、正孔注入層、発光層、中間層等)を形成することができる。
【0014】
本発明の成膜用インクでは、前記成膜材料は、配線基板の導体パターンの構成材料またはその前駆体であることが好ましい。
これにより、配線基板の導体パターンを形成することができる。
本発明の成膜用インクでは、インクジェット法を用いた成膜に用いることが好ましい。
これにより、比較的簡単かつ確実に、微細なパターンニングを行うことができる。
【0015】
本発明の成膜方法は、本発明の成膜用インクを基材上に付与する工程と、
前記成膜用インクから前記第1成分を除去して、前記成膜材料および前記第2成分を主成分とする固体状の第1膜を形成する工程と、
前記第1膜を加熱することにより液状とし、その状態で前記第1膜から前記第2成分を除去して、前記成膜材料を主成分とする第2膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
これにより、所望の位置および大きさで、均質で均一な膜厚を有する膜を簡単に形成することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、本発明の成膜用インクを吐出する液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、所望の位置および大きさで、均質で均一な膜厚を有する膜を簡単に形成することができる。
本発明の膜付きデバイスは、本発明の成膜方法により形成された膜またはそれを処理した膜を有することを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する膜付きデバイスを提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の膜付きデバイスを有することを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成膜方法を説明するための図である。
【図2】本発明の成膜方法に用いる液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2の液滴吐出装置に備えられた液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
【図4】本発明の膜付きデバイスの一例である発光装置およびカラーフィルタを備える表示装置を示す断面図である。
【図5】図4に示す表示装置に備えられた発光装置の発光素子の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の成膜方法をカラーフィルタの製造に適用した場合を説明する図である。
【図7】本発明の成膜方法をカラーフィルタの製造に適用した場合を説明する図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(成膜用インク)
本発明の成膜用インクは、成膜材料と、その成膜材料が溶解または分散される液性媒体とを有する。
特に、本発明の成膜用インクは、前記液性媒体が、第1成分と、常圧での沸点が前記第1成分の常圧での沸点よりも高く、かつ、常圧での融点が前記第1成分の常圧での融点よりも高いとともに、前記第1成分に溶解する第2成分とを含むことを特徴としている。
【0019】
後に詳述するが、このような成膜用インクは、基材上に付与した後に第1成分および第2成分を除去することにより、目的とする膜となるものである。特に、かかる成膜用インクは、基材上に付与された後に、第1成分が第2成分よりも優先的に揮発・除去される。そして、第1成分が除去されかつ第2成分が残存した成膜用インクは、固体状をなす。また、第1成分が除去されかつ第2成分が残存した成膜用インクは、加熱により液状とされ、その状態で減圧乾燥されることにより、第2成分を除去される。このようにして成膜用インクから第1成分および第2成分を除去することにより、目的とする膜またはその前駆体膜を得ることができる。
【0020】
以下、本発明の成膜用インクの各成分を詳細に説明する。
(成膜材料)
本発明の成膜用インクに含まれる成膜材料は、成膜の目的とする膜の構成材料またはその前駆体である。
このような成膜材料は、成膜の目的とする膜の種類に応じて決定されるものであり、特に限定されず、各種有機材料、各種無機材料を用いることができる。例えば、成膜材料としては、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子の各層(特に有機層)の構成材料またはその前駆体、カラーフィルタの着色層の構成材料またはその前駆体、配線基板の導体パターンの構成材料またはその前駆体等が挙げられる。
【0021】
このように、前記成膜材料をカラーフィルタの着色層の構成材料またはその前駆体とすることにより、カラーフィルタの着色層を形成することができる。また、前記成膜材料を配線基板の導体パターンの構成材料またはその前駆体とすることにより、配線基板の導体パターンを形成することができる。さらに、前記成膜材料を有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層の構成材料またはその前駆体とすることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層(例えば、正孔輸送層、正孔注入層、発光層、中間層等)を形成することができる。なお、これらの材料については、後に詳述する。
【0022】
また、成膜材料としては、例えば、上記から選択される2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
前記成膜材料が有機材料を主材料とするものである場合、第1成分および第2成分を適宜選択することにより、液性媒体に成膜材料を溶解させることができる。
一方、前記成膜材料が無機材料を含むものである場合や、前記成膜材料が有機材料であっても液性媒体に不溶である場合には、成膜材料を液性媒体に分散させればよい。
【0023】
成膜用インク中において、成膜材料は、後述する液性媒体に溶解しているものであってもよいし、分散しているものであってもよいが、成膜材料が液性媒体中に分散しているものである場合、成膜材料の平均粒径は、20〜100nmであるのが好ましく、5〜50nmであるのがより好ましい。これにより、成膜用インク中における成膜材料の分散安定性を優れたものとすることができる。
【0024】
成膜用インク中における成膜材料の含有率は、成膜用インクの用途に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.05〜5wt%であるのがより好ましい。成膜材料の含有率が前記範囲内の値であると、成膜用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとすることができる。
【0025】
(液性媒体)
本発明の成膜用インクに含まれる液性媒体は、前述した成膜材料を溶解または分散させるもの、すなわち、溶媒または分散媒である。この液性媒体は、後述する成膜過程において、その大部分が除去されるものである。
特に、本発明の成膜用インクに含まれる液性媒体は、常圧での沸点(以下、単に「沸点」とも言う)が前記第1成分の常圧での沸点よりも高く、かつ、常圧での融点(以下、単に「融点」とも言う)が前記第1成分の常圧での融点よりも高いとともに、前記第1成分に溶解する第2成分とを含む。
【0026】
このような第1成分および第2成分は、前述したような沸点および融点の関係を有し、成膜用インクが成膜用材料を溶解または分散させることができれば、特に限定されず、各種溶媒または各種分散媒を用いることができる。
なお、本明細書において、「常圧」とは、大気圧に等しい圧力を言い、具体的には、10Paである。
【0027】
また、液性媒体は、成膜材料の種類や成膜の目的とする膜の用途に応じて最適なものを選択して用いることができる。
また、液性媒体は、成膜用インクに含まれる成膜材料やその他の成分に対する攻撃性ができるだけ少ないものを用いるのが好ましい。
また、液性媒体は、成膜後に膜中に残留する可能性がある場合には、その膜の用途に応じた特性をできるだけ阻害しないものを用いるのが好ましい。例えば、成膜用インクを有機EL素子の有機層の成膜に用いる場合には、電気的特性をも考慮して液性媒体の各成分を選定するのが好ましい。また、成膜用インクをカラーフィルタの着色層の成膜に用いる場合には、光学的特性をも考慮して液性媒体の各成分を選定するのが好ましい。
【0028】
以下、第1成分および第2成分について詳述する。
[第1成分]
液性媒体に含まれる第1成分は、後に詳述するような基材へ成膜用インクを付与する環境下(インク付与工程における温度および圧力下)において、液状をなすものである。
また、第1成分は、その沸点が後述する第2成分の常圧での沸点よりも低く、かつ、常圧での融点が第2成分の常圧での融点よりも低いとともに、第2成分(好ましくは第2成分および成膜材料の双方)を溶解させるものである。
【0029】
このような第1成分としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン(Benzene、沸点80.1℃、融点5.5℃)、トルエン(Toluene、沸点110.6℃、融点-93℃)、o−キシレン(o-Xylene (p-,m-)、沸点144℃、融点-25℃)、トリメチルベンゼン(Trimethylbenzene、沸点165℃、融点-45℃)、テトラリン(Tetralin、沸点208℃、融点-35.8℃)、3−フェノキシトルエン(3-phenoxytoluene、沸点273℃、融点-℃)、シクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbenzene、沸点237.5℃、融点5℃)、1,4−ジクロロベンゼン(1,4-dchlorobenzene、沸点174℃、融点53.5℃)、1,2,3−トリクロロベンゼン(1,2,3-Trichlorobenzene、沸点221℃、融点52.6℃)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、沸点66℃、融点-108.5℃)、ジエチルエーテル(diethyl ether、沸点35℃、融点-116℃)、ジイソプロピルエーテル(Diisopropyl ether、沸点69℃、融点-85.6℃)、エチレングリコール(ethylene glycol、沸点197.3℃、融点-12.9℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(Ethylene glycol diethyl ether、沸点190℃、融点-44.3℃)、ジオキサン(Dioxane、沸点101.1℃、融点11.8℃)、アニソール(メトキシベンゼン:Anisole、沸点154℃、融点-37℃)、ジクロロメタン(dichloromethane、沸点40℃、融点-96.7℃)、トリクロロメタン(trichloromethane、沸点61.2℃、融点-64℃)、塩化炭素四塩化炭素(tetrachloromethane、沸点76.7℃、融点-28.6℃)、ペンタン(pentane、沸点36℃、融点-131℃)、ヘキサン(Hexane、沸点69℃、融点-95℃)、シクロヘキサン(cyclohexane、沸点81℃、融点7℃)、アセトン(Acetone、沸点56.5℃、融点-94℃)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP:1-Methyl-2-pyrrolidinone、沸点204℃、融点-24℃)、メチルエチルケトン(methylethylketone、沸点79.6℃、融点-86℃)、アルファ−テトラロン(Alpha-tetralone、沸点257℃、融点7℃)、シクロヘキサノン(Cyclohexanone、沸点157℃、融点-45℃)、酢酸エチル(ethyl acetate、沸点77.1℃、融点-83.6℃)、酢酸ブチル(butyl acetate、沸点126℃、融点-74℃)、メタノール(methanol、沸点67℃、融点-97℃)、エタノール(ethanol、沸点78.4℃、融点-114.3℃)、イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol、沸点82.4℃、融点-89.5℃)、1−プロパノール(1-Propanol、沸点97.15℃、融点-126.5℃)、アセトニトリル(acetonitrile、沸点82℃、融点-45℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N-dimethylformamide、沸点153℃、融点-61℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc:N,N-Dimethylacetamide、沸点165℃、融点-20℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(1,3-dimethyl-2-imidazolidinone、沸点220℃、融点8℃)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、沸点189℃、融点18.5℃)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、前記第1成分は、常温常圧で液状をなすものであるのが好ましい。これにより、常温常圧下において、基材上に成膜用インクを容易に付与することができる。なお、本明細書において、「常温」とは、20℃±15℃(すなわち5℃以上35℃以下)の範囲を言う。
また、前記第1成分の常圧での融点(または凝固点)は、0℃以下であるのが好ましい。言い換えると、前記第1成分は、常圧かつ0℃よりも高い温度下において単独で存在するときに、液状を呈する化合物であることが好ましい。これにより、室温付近において、基材上に成膜用インクを容易に付与することができる。
【0031】
また、前記第1成分の常圧での沸点は、40℃以上であるのが好ましい。言い換えると、前記第1成分は、常圧かつ40℃よりも低い温度下において、液状を呈する化合物であるのが好ましい。これにより、室温付近において成膜用インクを基材上に付与したときに、成膜用インクから第1成分が揮発・除去される速度を適度に抑えることができる。そのため、成膜用インクを基材上に適度に濡れ広がらせることができる。また、液滴吐出法により成膜用インクを基材上に付与する場合、液滴吐出ヘッドのノズルの目詰まりを防止することができる。
【0032】
また、前記第2成分の沸点が前記第1成分の沸点よりも高く、かつ、前記第2成分の融点が前記第1成分融点よりも高いことから、前記第1成分の常圧での沸点が40℃以上であると、第2成分の融点を室温よりも高くすることができる。そのため、第1成分が除去された後に、室温付近において、第2成分を固体状とすることができる。
また、第1成分の常圧での沸点は、160℃以下であるのが好ましく、120℃以下であるのがより好ましい。これにより、常温常圧下においても、成膜用インクから第1成分を比較的速やかに揮発させることができる。
【0033】
このような第1成分の液状媒体中における含有量は、10wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、10wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、成膜用インクからの第1成分の揮発を速やかなものとするとともに、第1成分を除去する前の成膜用インクの粘度を液滴吐出に適したものとすることができる。
これに対し、かかる含有量が前記下限値未満であると、成膜材料、第1成分および第2成分等の種類によっては、成膜用インクを液滴吐出に適したものとするのが難しい。一方、かかる含有量が前記上限値を超えると、成膜材料、第1成分および第2成分等の種類によっては、成膜用インクから第1成分を速やかに除去するのが難しい。
【0034】
[第2成分]
第2成分は、常圧での沸点が前記第1成分の常圧での沸点よりも高く、かつ、常圧での融点が前記第1成分の常圧での融点よりも高いとともに、前記第1成分に溶解するものである。
この第2成分は、前述した第1成分が溶解した状態で液状をなし、単独または成膜材料と共存している状態で固体状をなすものである。
【0035】
このような第2成分としては、特に限定されないが、例えば、4−tert-ブチルアニソール(4-tert-Butylanisole、沸点222℃、融点18℃)、Trans−アネトール(Trans-Anethole、沸点235℃、融点20℃)、1,2−ジメトキシベンゼン(1,2-Dimethoxybenzene、沸点206.7℃、融点22.5℃)、2−メトキシビフェニル(2-Methoxybiphenyl、沸点274℃、融点28℃)、フェニルエーテル(Phenyl Ether、沸点258.3℃、融点28℃)、2−エトキシナフタレン(2-Ethoxynaphthalene、沸点282℃、融点35℃)、ベンジルフェニルエーテル(Benzyl Phenyl Ether、沸点288℃、融点39℃)、2,6−ジメトキシトルエン(2,6-Dimethoxytoluene、沸点222℃、融点39℃)、2−プロポキシナフタレン(2-Propoxynaphthalene、沸点305℃、融点40℃)、1,2,3−トリメトキシベンゼン(1,2,3-Trimethoxybenzene、沸点235℃、融点45℃)、1,4−ジクロロベンゼン(1,4-dichlorobenzene、沸点174℃、融点53.5℃)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、液性媒体が成膜材料を溶解させるものである場合、第2成分は、前述した成膜材料を溶解させるものであるのが好ましい。すなわち、前記成膜材料は、前記第2成分に溶解するものであるのが好ましい。これにより、基材上に形成された第1膜中において成膜材料が凝集するのを防止することができる。その結果、得られる膜(第2膜)の均質化および厚さの均一化を図ることができる。
また、前記第2成分は、単独で存在する際に、常温常圧で固体状をなすものであるのが好ましい。これにより、常温常圧下において、基材上に形成された第1膜(第1成分が除去された成膜用インクからなる(主として成膜材料および第2成分からなる)膜)を固体状とすることができる。
【0037】
このような第2成分の液状媒体中における含有量は、40wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、50wt%以上90wt%以下であるのがより好ましく、60wt%以上90wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、第1成分の含有量を抑えて、成膜用インクからの第1成分の揮発を速やかなものとするとともに、第1成分を除去する前の成膜用インクの粘度を液滴吐出に適したものとすることができる。
これに対し、かかる含有量が前記下限値未満であると、成膜材料、第1成分および第2成分等の種類によっては、成膜用インクから第1成分を速やかに除去するのが難しい。一方、かかる含有量が前記上限値を超えると、成膜材料、第1成分および第2成分等の種類によっては、成膜用インクを液滴吐出に適したものとするのが難しい。
【0038】
また、第2成分の融点は、第1成分の融点に対して前述したような関係を有するものであればよいが、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましい。これにより、第1成分が除去された後に、室温付近において、第2成分(成膜用インクから第1成分を除去したもの)を固体状とすることができる。
また、第2成分の融点は、60℃以下であるのが好ましく、40℃以下であるのがより好ましい。これにより、成膜材料および第2成分を主材料とする膜を加熱により液化する際に、その加熱温度を比較的低くすることができる。そのため、当該加熱による成膜材料の劣化、変質等を防止または抑制することができる。
【0039】
また、第2成分の沸点は、第1成分の沸点に対して前述したような関係を有するものであればよいが、120℃以上であるのが好ましく、160℃以上であるのがより好ましく、200℃以上であるのがさらに好ましい。これにより、後述するインク付与工程における第2成分の不本意な揮発を抑制または防止することができる。
なお、以上のような液性媒体は、前述した第1成分および第2成分以外の成分を含んでいてもよい。
【0040】
以上説明したような成膜用インクは、後述するようなインクジェット法(液滴吐出法)を用いた成膜に用いるものである。インクジェット法によれば、比較的簡単かつ確実に、微細なパターンニングを行うことができる。
したがって、このような成膜用インクは、後述するインク付与工程[1]において液状をなすものである。
また、このような成膜用インクの粘度は、特に限定されないが、3cP以上20cP以下程度であるのが好ましい。
【0041】
(成膜方法)
次に、前述した成膜用インクを用いた成膜方法、すなわち、本発明の成膜方法について説明する。
図1は、本発明の成膜方法を説明するための図、図2は、本発明の成膜方法に用いる液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図、図3は、図2の液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
【0042】
本発明の成膜方法(膜の製造方法)は、[1]前述した成膜用インクを基材上に付与する工程(インク付与工程)と、[2]前記成膜用インクから前記第1成分を除去して、前記成膜材料および前記第2成分を主成分とする固体状の第1膜を形成する工程(第1乾燥工程)と、[3]前記第1膜を加熱することにより液状とし、前記第1膜から前記第2成分を除去することにより、前記成膜材料を主成分とする第2膜を形成する工程(第2乾燥工程)とを有する。
これにより、所望の位置および大きさで、均質で均一な膜厚を有する膜を簡単に形成することができる。
【0043】
以下、本発明の成膜方法の各工程を順次詳細に説明する。
[1]インク付与工程
1−1
まず、図1(a)に示すように、基材15を用意する。
この基材15は、成膜の目的とする膜が形成される対象物であり、特に限定されず、例えば、各種基板や、各種基板を処理や加工等を施したもの等を用いることができる。
【0044】
1−2
次いで、図1(b)に示すように、基材15上に、前述した成膜用インクである成膜用インク1を供給する。これにより、基材15上に成膜用インク1からなる膜1Aが形成される。
本実施形態では、液滴吐出法により基材15上に成膜用インク1を供給する。すなわち、成膜用インクを吐出する液滴吐出装置を用いて、成膜用インク1を液滴として吐出し、基材15上に成膜用インク1を供給する。これにより、所望の位置および大きさで、均質で均一な膜厚を有する膜を簡単に形成することができる。
【0045】
ここで、かかる液滴吐出装置の好適な実施形態について説明する。
図2は、本発明の成膜方法に用いる液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図、図3は、図2の液滴吐出装置に備えられた液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
図2に示すように、液滴吐出装置100は、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド。以下、単にヘッドと呼ぶ)110と、ベース130と、テーブル140と、インク貯留部(図示せず)と、テーブル位置決め手段170と、ヘッド位置決め手段180と、制御装置190とを有している。
【0046】
ベース130は、テーブル140、テーブル位置決め手段170、およびヘッド位置決め手段180等の液滴吐出装置100の各構成部材を支持する台である。
テーブル140は、テーブル位置決め手段170を介してベース130に設置されている。また、テーブル140は、基材15を載置するものである。
また、テーブル140の裏面には、ラバーヒータ(図示せず)が配設されている。テーブル140上に載置された基材15は、その上面全体がラバーヒータにて所定の温度に加熱可能となっている。
【0047】
テーブル位置決め手段170は、第1移動手段171と、モータ172とを有している。テーブル位置決め手段170は、ベース130におけるテーブル140の位置を決定し、これにより、ベース130における基材15の位置を決定する。
第1移動手段171は、Y方向と略平行に設けられた2本のレールと、当該レール上を移動する支持台とを有している。第1移動手段171の支持台は、モータ172を介してテーブル140を支持している。そして、支持台がレール上を移動することにより、基材15を載置するテーブル140は、Y方向に移動および位置決めされる。
【0048】
モータ172は、テーブル140を支持しており、θz方向にテーブル140を揺動および位置決めする。
ヘッド位置決め手段180は、第2移動手段181と、リニアモータ182と、モータ183、184、185とを有している。ヘッド位置決め手段180は、ヘッド110の位置を決定する。
【0049】
第2移動手段181は、ベース130から立設する2本の支持柱と、当該支持柱同士の間に当該支持柱に支持されて設けられ、2本のレールを有するレール台と、レールに沿って移動可能でヘッド110を支持する支持部材(図示せず)とを有している。そして、支持部材がレールに沿って移動することにより、ヘッド110は、X方向に移動および位置決めされる。
【0050】
リニアモータ182は、支持部材付近に設けられており、ヘッド110のZ方向の移動および位置決めをすることができる。
モータ183、184、185は、ヘッド110を、それぞれα,β,γ方向に揺動および位置決めする。
以上のようなテーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180とにより、液滴吐出装置100は、ヘッド110のインク吐出面115Pと、テーブル140上の基材15との相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールできるようになっている。
【0051】
図3に示すように、ヘッド110は、インクジェット方式(液滴吐出方式)によって成膜用インク1をノズル(突出部)118から吐出するものである。本実施形態では、ヘッド110は、圧電体素子としてのピエゾ素子113を用いてインクを吐出させるピエゾ方式を用いている。ピエゾ方式は、成膜用インク1に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。
【0052】
ヘッド110は、ヘッド本体111と、振動板112と、ピエゾ素子113とを有している。
ヘッド本体111は、本体114と、その下端面にノズルプレート115とを有している。そして、本体114を板状のノズルプレート115と振動板112とが挟み込むことにより、空間としてのリザーバ116およびリザーバ116から分岐した複数のインク室117が形成されている。
【0053】
リザーバ116には、後述するインク貯留部150より成膜用インク1が供給される。リザーバ116は、各インク室117に成膜用インク1を供給するための流路を形成している。
また、ノズルプレート115は、本体114の下端面に装着されており、インク吐出面115Pを構成している。このノズルプレート115には、成膜用インク1を吐出する複数のノズル118が、各インク室117に対応して開口されている。そして、各インク室117から対応するノズル(吐出部)118に向かって、インク流路が形成されている。
【0054】
振動板112は、ヘッド本体111の上端面に装着されており、各インク室117の壁面を構成している。振動板112は、ピエゾ素子113の振動に応じて振動可能となっている。
ピエゾ素子113は、その振動板112のヘッド本体111と反対側に、各インク室117に対応して設けられている。ピエゾ素子113は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路191に接続されている。
【0055】
そして、駆動回路191からピエゾ素子113に電気信号を入力すると、ピエゾ素子113が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子113が収縮変形すると、インク室117の圧力が低下して、リザーバ116からインク室117に成膜用インク1が流入する。また、ピエゾ素子113が膨張変形すると、インク室117の圧力が増加して、ノズル118から成膜用インク1が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子113への印加電圧を制御することにより、成膜用インク1の吐出条件を制御し得るようになっている。
【0056】
制御装置190は、液滴吐出装置100の各部位を制御する。例えば、駆動回路191で生成する印加電圧の波形を調節して成膜用インク1の吐出条件を制御したり、ヘッド位置決め手段180およびテーブル位置決め手段170を制御することにより基材15への成膜用インク1の吐出位置を制御したりする。
インク貯留部(図示せず)は、成膜用インク1を貯留する。
インク貯留部(図示せず)は、図3に示すように、搬送路(図示せず)を介して、ヘッド110(リザーバ116)に接続されている。
【0057】
以上説明したような液滴吐出装置100を用いて、基材15上の所望の位置に所望の量の成膜用インク1を付与することができる。
また、このインク付与工程[1]における雰囲気の温度および圧力は、それぞれ、成膜用インク1の組成や第1成分および第2成分の沸点および融点に応じて決められるものであり、基材15上に成膜用インク1を付与することができれば、特に限定されないが、常温常圧であるのが好ましい。したがって、常温常圧下において、基材15上に成膜用インク1を付与可能な成膜用インク1を用いるのが好ましい。これにより、インク付与工程[1]を簡単に行える。
【0058】
[2]第1乾燥工程
2−2
次に、基材15上に形成された膜1A(成膜用インク1)から第1成分を除去することにより、図1(c)に示すように、中間体膜として膜(第1膜)10Bを形成する。
この第1乾燥工程[2]では、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも低いので、基材15上の膜1A(成膜用インク1)から第1成分を第2成分よりも優先的に揮発・除去することができる。そして、成膜材料および第2成分を主成分とする中間体膜として、膜1Bを形成することができる。
【0059】
また、第1成分の沸点を比較的低くすることにより、基材15上の膜1A(成膜用インク1)から第1成分を速やかに揮発・除去することができる。
また、第1成分の融点(凝固点)が第2成分の融点(凝固点)よりも高いので、基材15上に形成された膜1Bを固体状とすることができる。そのため、基材15の振動や基材15上の静電気等に起因する外力を受けても、基材15上に付与された成膜用インク1が不本意な部位へ流れ込むのを防止することができる。
【0060】
この第1乾燥工程[2]における雰囲気の温度および圧力は、それぞれ、成膜用インク1の組成や第1成分および第2成分の沸点および融点に応じて決められるものであり、基材15上の膜1Aから第1成分を除去することができれば、特に限定されないが、常温常圧であるのが好ましい。したがって、常温常圧下において、基材15上の膜1Aから第1成分を除去可能な成膜用インク1を用いるのが好ましい。これにより、第1乾燥工程[2]を簡単に行える。また、この場合、前述したインク付与工程[1]とほぼ同時に、基材15上の膜1Aから第1成分を除去することができる。
【0061】
また、前述した液滴吐出装置100のテーブル140に設けられたラバーヒータにより基材15を加熱することにより、第1成分の蒸発(除去)を促進させることができる。その場合、基材15の加熱温度は、第1成分および第2成分の沸点および融点に応じて決められる。
また、第1成分の除去に要する時間は、成膜用インク1の組成や第1成分および第2成分の沸点および融点に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、10秒以上90秒以下であるのが好ましい。
なお、本工程において、膜1Aが固体化した膜1Bとなれば、膜1A中の第1成分をすべて除去する必要はなく、膜1B中に一部の第1成分が残存していてもよい。
【0062】
[3]第2乾燥工程
3−1
次に、膜1Bを加熱により溶融させて、図1(d)に示すように、液体状態の膜1Cを得る。
この加熱は、特に限定されないが、ホットプレートや赤外線などで行うことができる。また、この加熱は、前述した液滴吐出装置100のテーブル140に設けられたラバーヒータにより行ってもよい。
【0063】
この加熱温度は、膜1B中の第2成分が溶融すればよく、具体的には、膜1Bを第2成分の融点以上の温度に加熱すればよく、特に限定されないが、第2成分の融点よりも5〜30℃程度高いのが好ましい。
また、加熱時間は、膜1B中の第2成分が溶融すればよく、特に限定されないが、1分以上30分以下程度である。
このようにして形成された膜1Cでは、第2成分が液状となっているので、平坦化が図られるとともに、膜1C中の成膜材料の均一分散化が図られる。
【0064】
3−2
そして、膜1C(すなわち液体状態となった膜1B)から第2成分を除去することにより、図1(e)に示すように、成膜材料を主成分とする膜1Dを得る。
この第2成分の除去は、特に限定されないが、減圧下で行うのが好ましい。これにより、第2成分を速やかに除去することができる。この場合、例えば加熱機付き真空乾燥機を用いればよい。
前述したように減圧するに際し、その圧力は、特に限定されないが、10Pa以上10−7Pa以下程度であるのが好ましい。
また、上記減圧の時間は、特に限定されないが、1分以上30分以下程度であるのが好ましい。
【0065】
このようにして、液体状態の膜1Cから第2成分を除去することができる。これにより、成膜材料を主材料とした膜(第2膜)10を得ることができる。このとき、前述したように、平坦化および成膜材料の均一化が図られた膜1Cがその状態を維持するようにして膜1Dが形成される。そのため、均一な膜厚で均質な膜1Dを得ることができる。また、液状となった膜1Cは、その粘度が比較的高いので、基材15上の不本意な部位へ流れ込むことはない。
【0066】
このようにして得られた膜1Dは、成膜の目的とする膜の構成材料またはその前駆体で構成されたものとなる。
そして、成膜材料として前駆体を用いた場合、膜1Dは、必要に応じて、所定の処理が施される。例えば、成膜材料が低分子量化合物である場合、その低分子量化合物の重合反応を生じさせる処理を行うことにより、高分子量化合物を含んで構成された膜を得ることができる。また、成膜材料が樹脂材料である場合、その樹脂材料の架橋反応を生じさせる処理を行うことにより、高分子量化合物を含んで構成された膜を得ることができる。また、成膜材料が金属粒子およびバインダー(樹脂材料)を含むものである場合、膜1Dに焼成処理を施すことにより、金属で構成された膜を得ることができる。
【0067】
以上説明したように、本発明の成膜方法によれば、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも低いので、成膜用インク1を基材15上に付与し、成膜用インク1(液状の膜1A)から第1成分を第2成分よりも優先的に揮発・除去することができる。そして、成膜材料および第2成分を主成分とする中間体膜である膜1Bを形成することができる。
また、第1成分の沸点を比較的低くすることにより、基材15上に付与された成膜用インク1(膜1A)から第1成分を速やかに揮発・除去することができる。
また、第1成分の融点(凝固点)が第2成分の融点(凝固点)よりも高いので、基材15上に形成された膜1Aを固体状とする(固体状の膜1Bとする)ことができる。そのため、基材15上に付与された成膜用インク1が不本意な部位へ流れ込むのを防止することができる。
【0068】
また、基材15上の膜1Bを第2成分の融点以上に加熱することにより液状とし、その状態で第2成分を除去することができる。これにより、成膜材料を主材料とした膜1Dを得ることができる。その際、膜1Bを液状の膜1Cとしたときに、膜1Cの平坦化や膜1C中の成膜材料の均一化(均質化)を図ることができる。そのため、均一な膜厚で均質な膜1Dを形成することができる。また、液状となった膜1Cは、その粘度が比較的高いので、基材15上の不本意な部位へ流れ込むことはない。
このようなことから、本発明の成膜用インクおよび成膜方法によれば、所望の位置に所望の寸法で優れた膜質を有する膜1Dを比較的簡単に形成することができる。
【0069】
(表示装置)
次に、本発明の膜付きデバイスについて説明する。
図4は、本発明の膜付きデバイスの一例である発光装置およびカラーフィルタを備える表示装置を示す断面図、図5は、図4に示す表示装置に備えられた発光装置の発光素子の一例を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図4中および図5中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0070】
図4に示す表示装置300は、複数の発光素子200R、200G、200Bを備える発光装置101と、各発光素子200R、200G、200Bに対応して設けられた着色層19R、19G、19Bを備えるカラーフィルタ102とを有している。
このような表示装置300は、複数の発光素子200R、200G、200Bおよび複数の着色層19R、19G、19Bがサブ画素300R、300G、300Bに対応して設けられ、トップエミッション構造のディスプレイパネルを構成している。
なお、本実施形態では表示装置の駆動方式としてアクティブマトリックス方式を採用した例に説明するが、パッシブマトリックス方式を採用したものであってもよい。
【0071】
発光装置101は、基板21と、複数の発光素子200R、200G、200Bと、複数のスイッチング素子24とを有している。
基板21は、複数の発光素子200R、200G、200Bおよび複数のスイッチング素子24を支持するものである。本実施形態の各発光素子200R、200G、200Bは、基板21とは反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)である。したがって、基板21には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。なお、各発光素子200R、200G、200Bが基板21側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)である場合には、基板21は、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされる。
【0072】
基板21の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
このような基板21の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0074】
このような基板21上には、複数のスイッチング素子24がマトリクス状に配列されている。
各スイッチング素子24は、各発光素子200R、200G、200Bに対応して設けられ、各発光素子200R、200G、200Bを駆動するための駆動用トランジスタである。
このような各スイッチング素子24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
【0075】
このような複数のスイッチング素子24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
平坦化層22上には、各スイッチング素子24に対応して発光素子200R、200G、200Bが設けられている。
発光素子200Rは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)14(14R)、陰極12、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子200R、200G、200Bの陽極3は、画素電極を構成し、各スイッチング素子24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子200R、200G、200Bの陰極12は、共通電極とされている。
【0076】
また、発光素子200G、200Bの構成は、それぞれ、発光素子200Rと同様に構成することができる。なお、発光素子200R、200G、200Bは、互いに同じ構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。例えば、発光素子200R、200G、200Bの積層体14R、14G、14Bは、互いに同じ構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。ただし、積層体14R、14G、14Bが互いに異なる構成である場合(特に発光層の構成が異なる場合)、本発明の成膜用インクおよび成膜方法を適用することによる効果が顕著となる。
隣接する発光素子200R、200G、200B同士の間には、隔壁31が設けられている。
【0077】
このように構成された発光装置101には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で構成された樹脂層35を介して、カラーフィルタ102が接合されている。
カラーフィルタ102は、基板20と、複数の着色層19R、19G、19Bと、遮光層(隔壁)36とを有している。
基板(封止基板)20は、各着色層19R、19G、19Bおよび隔壁36を支持するものである。前述したように本実施形態の各発光素子200R、200G、200Bはトップエミッション型であるため、基板20には、透明基板が用いられる。
このような基板20の構成材料としては、基板20が光透過性を有するものであれば、特に限定されず、前述した基板20の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0078】
着色層19R、19G、19Bは、発光素子200R、200G、200Bに対応して設けられている。
着色層19Rは、発光素子200Rからの光WRを赤色に変換するフィルタ部である。また、着色層19Gは、発光素子200GからのWGを緑色に変換するフィルタ部である。また、着色層19Bは、発光素子200Bからの光WBを青色に変換するフィルタ部である。このような着色層19R、19G、19Bを発光素子200R、200G、200Bと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0079】
この着色層19R、19G、19Bは、それぞれ、上述した色に対応する着色剤を含んで構成されている。また、着色層19R、19G、19Bは、それぞれ、着色剤のほか、樹脂材料を含んでいてもよい。
このような着色層19R、19G、19Bは、それぞれ、前述したような成膜方法により形成することができる。その場合、成膜用インクの成膜材料として、前述した着色剤や樹脂材料等が含まれる。なお、カラーフィルタ102の製造方法については、後に詳述する。
隣接する着色層19R、19G、19B同士の間には、隔壁36が形成されている。
この隔壁36は、意図しないサブ画素300R、300G、300Bが発光するのを防止する機能を有する。また、後に詳述するように、液滴吐出法によりカラーフィルタ102を製造する際に、隔壁36は、インクをせき止める機能を有する。
【0080】
(発光素子)
ここで、図5に基づき、発光素子200R、200G、200Bを詳細に説明する。なお、以下では、発光素子200Rを代表的に説明し、発光素子200G、200Bについては、発光素子200Rとの相違点を中心に説明し、発光素子200Rと同様の事項については、その説明を省略する。
【0081】
図5に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)200Rは、互いに発光スペクトルの異なるR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3層の発光層を発光させて、略白色に発光するものである。
このような発光素子200Rでは、前述したように2つの電極間(陽極3と陰極12との間)に積層体14が介挿されており、この積層体14は、図5に示すように、陽極3側から陰極12側へ、正孔注入層4と正孔輸送層5と第1の発光層(赤色発光層)6と第1の中間層7Aと第2の発光層(青色発光層)8と第2の中間層7Bと第3の発光層(緑色発光層)9と電子輸送層10と電子注入層11とがこの順に積層されている。
【0082】
言い換えすれば、発光素子200Rは、陽極3と正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層6と第1の中間層7Aと青色発光層8と第2の中間層7Bと緑色発光層9と電子輸送層10と電子注入層11と陰極12とがこの順に積層されてなるものである。
また、本実施形態では、陽極3と平坦化層22との間に、反射膜32および腐食防止膜33が設けられ、また、陰極12の積層体14と反対側には、陰極カバー(封止層)34が設けられている。
【0083】
このような発光素子200Rにあっては、赤色発光層6、青色発光層8、および緑色発光層9の各発光層に対し、陰極12側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。これにより、発光素子200Rは、略白色発光する。
このような発光素子200Rを構成する各層は、前述した成膜方法により形成することができる。特に、有機材料で構成された層、より好ましくは発光層を前述した成膜方法により形成するのが好ましい。その場合、成膜用インクには、後述する発光層を構成する材料またはその前駆体が含まれる。
【0084】
以下、発光素子200Rを構成する各部を順次説明する。
(陽極)
陽極3は、後述する正孔注入層4を介して正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
【0085】
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0086】
(陰極)
一方、陰極12は、後述する電子注入層11を介して電子輸送層10に電子を注入する電極である。この陰極12の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極12の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0087】
特に、陰極12の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極12の構成材料として用いることにより、陰極12の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極12の平均厚さは、特に限定されないが、80〜10000nm程度であるのが好ましく、100〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子200は、ボトムエミッション型であるため、陰極12に、光透過性は、特に要求されない。
【0088】
(正孔注入層)
正孔注入層4は、陽極3からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。
この正孔注入層4の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−p−ジアミノベンゼンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔注入層4は、省略することができる。
【0089】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5は、陽極3から正孔注入層4を介して注入された正孔を赤色発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔輸送層5は、省略することができる。
【0090】
(赤色発光層)
この赤色発光層(第1の発光層)6は、赤色(第1の色)に発光する赤色発光材料を含んで構成されている。
このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0091】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、ジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0092】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
また、赤色発光層6中には、前述した赤色発光材料の他に、赤色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料が含まれていてもよい。
【0093】
ホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
【0094】
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ナフタセン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体のようなアセン誘導体(アセン系材料)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0095】
前述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色発光層6中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
このような赤色発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0096】
(第1の中間層)
この第1の中間層7Aは、前述した赤色発光層6と後述する青色発光層8との層間にこれらに接するように設けられている。そして、第1の中間層7Aは、赤色発光層6のホスト材料と同種または同一の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、赤色発光層(第1の発光層)6と青色発光層(第2の発光層)8との間でキャリア(正孔および電子)の移動を調整する機能を有する。この機能により、赤色発光層6および青色発光層8をそれぞれ効率よく発光させることができる。
【0097】
このような第1の中間層7Aの構成材料としては、第1の中間層7Aが、赤色発光層6のホスト材料と同種または同一の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前述したようなキャリア調整機能を発揮することができるものであれば、特に限定されないが、赤色発光層6のホスト材料と同種または同一の材料として、アセン系材料を含むものが好適に用いられる。
【0098】
アセン系材料としては、アセン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン(ナフタセン)誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、テトラセン(ナフタセン)誘導体を用いるのが好ましい。
【0099】
このような第1の中間層7A中におけるアセン系材料の含有量は、特に限定されないが、10〜90wt%であるのが好ましく、30〜70wt%であるのがより好ましく、40〜60wt%であるのがさらに好ましい。
さらに、第1の中間層7Aの構成材料としては、前述したアセン系材料の他に、アミン系材料(アミン誘導体)を含むのが特に好ましい。
【0100】
また、第1の中間層7Aの平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nmであるのが好ましく、3〜50nmであるのがより好ましく、5〜30nmであるのがさらに好ましい。これにより、駆動電圧を抑えつつ、第1の中間層7Aが赤色発光層6と青色発光層8との間での正孔および電子の移動を確実に調整することができる。
なお、この第1の中間層7Aは、省略することができる。
【0101】
(青色発光層)
青色発光層(第2の発光層)8は、青色(第2の色)に発光する青色発光材料を含んで構成されている。
このような青色発光材料としては、例えば、各種青色蛍光材料および青色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0102】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、ジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられる。
【0103】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
また、青色発光層8中には、前述した青色発光材料の他に、青色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料が含まれていてもよい。
【0104】
このようなホスト材料としては、前述した赤色発光層(第1の発光層)6で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
また、このような青色発光層8のホスト材料は、赤色発光層6のホスト材料と同様に、アセン誘導体(アセン系材料)を用いるのが好ましい。これにより、青色発光層8をより高輝度かつ高効率で赤色発光させることができる。
【0105】
(第2の中間層)
この第2の中間層7Bは、前述した青色発光層8と後述する緑色発光層9との層間にこれらに接するように設けられている。そして、第2の中間層7Bは、青色発光層8のホスト材料および緑色発光層9のホスト材料のうちの少なくとも一方のホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、青色発光層(第2の発光層)8と緑色発光層(第3の発光層)9との間でキャリア(正孔および電子)の移動を調整する機能を有する。この機能により、青色発光層8と緑色発光層9との間での励起子のエネルギー移動を阻止することができることから、青色発光層8から緑色発光層9へのエネルギー移動を抑制して、青色発光層8および緑色発光層9をそれぞれ効率よく発光させることができる。すなわち、青色発光層8および緑色発光層9をバランスよく発光させることができるので、発光素子200を白色発光させることができる。
【0106】
このような第2の中間層7Bの構成材料としては、第2の中間層7Bが、青色発光層8のホスト材料および緑色発光層9のホスト材料のうちの少なくとも一方のホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前述したようなキャリア調整機能を発揮することができるものであれば、特に限定されないが、前記ホスト材料と同種または同一の材料として、アセン系材料を含むものが好適に用いられる。
【0107】
アセン系材料としては、前述した第1の中間層7Aで説明したのと同様のものを用いることができる。
また、このような第2の中間層7Bに含まれるホスト材料は、青色発光層8のホスト材料と同一であるのが好ましい。これにより、ホスト材料が同一である発光層と第2の中間層7Bとの間でのキャリア(電子または正孔)の受け渡しが円滑に行われるようになり、発光素子200の駆動電圧の上昇を的確に抑制または防止することができるとともに、励起子の拡散を的確に抑制または防止することができる。
【0108】
また、第2の中間層7Bの厚さは、特に限定されないが、2nm以上、10nm以下程度であるのが好ましく、3nm以上、7nm以下程度であるのがより好ましい。第2の中間層7Bの厚さをかかる範囲内に設定することにより、励起子(正孔および電子)の拡散を抑制または防止して、励起子の移動を確実に調整することができる。
なお、この第2の中間層7Bは、省略することができる。
【0109】
(緑色発光層)
緑色発光層(第3の発光層)9は、緑色(第3の色)に発光する緑色発光材料を含んで構成されている。
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、例えば、各種緑色蛍光材料および緑色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられる。
【0111】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウム等が挙げられる。
また、緑色発光層9中には、前述した緑色発光材料の他に、緑色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれていてもよい。
【0112】
このようなホスト材料としては、前述した赤色発光層(第1の発光層)6で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
また、このような緑色発光層9のホスト材料は、赤色発光層6のホスト材料と同様に、アセン誘導体(アセン系材料)を用いるのが好ましい。これにより、緑色発光層9をより高輝度かつ高効率で赤色発光させることができる。
さらに、この緑色発光層9のホスト材料は、前述した青色発光層8のホスト材料と同一であるのが好ましい。これにより、双方の発光層8、9において、緑色の光と青色の光とをバランスよく発光させることができるようになる。
【0113】
(電子輸送層)
電子輸送層10は、陰極12から電子注入層11を介して注入された電子を緑色発光層9に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層10の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層10の平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nm程度であるのが好ましく、1〜50nm程度であるのがより好ましい。
なお、この電子輸送層10は、省略することができる。
【0114】
(電子注入層)
電子注入層11は、陰極12からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層11の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
【0115】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層11を構成することにより、発光素子200は、高い輝度が得られるものとなる。
【0116】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0117】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層11の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
なお、この電子注入層11は、省略することができる。
【0118】
(カラーフィルタの製造方法)
次に、本発明の成膜方法のより具体的な応用例として、前述したカラーフィルタ102の製造方法ついて説明する。
図6および図7は、それぞれ、本発明の成膜方法をカラーフィルタの製造に適用した場合を説明する図である。
なお、以下の説明では、色の異なる複数種の成膜用インクを用いる点、および、バンク(隔壁)により画成された区画(領域)内に成膜用インクを供給する点以外は、前述した成膜方法と同様であるので、前述した成膜方法と同様の事項については、その説明を省略する。
【0119】
[A]
A−1
まず、図6(a)に示すように、基板20上に隔壁36(バンク)が形成されてなる基材15Aを用意する。
また、必要に応じて、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、基材15Aを親液化してもよい。
【0120】
A−2
次に、図6(b)に示すように、着色層19Rが形成されるべき区画に、成膜用インク19RAを供給する。
本工程は、前述した成膜方法のインク付与工程[1]と同様にして行うことができる。
成膜用インク19RAは、成膜材料および液性媒体を含み、前述した成膜用インク1と同様に構成されている。
また、成膜用インク19RAの成膜材料は、赤色の染料または顔料等の着色剤を含んでいる。また、成膜用インク19RAの成膜材料には、例えばアクリル樹脂等の樹脂材料が含まれていてもよい。
【0121】
A−3
そして、前述した成膜方法の第1乾燥工程[2]と同様にして、基材15A上に付与された成膜用インク19RAから第1成分を除去する。これにより、図6(c)に示すように、固体状の中間体膜である膜19RBが形成される。
その後、図6(c)に示すように、着色層19Gが形成されるべき区画に、成膜用インク19GAを供給する。このとき、膜19RBは固体状であるので、他の区画へ流れ出すことはない。
【0122】
本工程における基材15Aへの成膜用インク19GAの付与も、前述した成膜方法のインク付与工程[1]と同様にして行うことができる。
成膜用インク19GAは、成膜材料および液性媒体を含み、前述した成膜用インク1と同様に構成されている。
また、成膜用インク19GAの成膜材料は、緑色の染料または顔料等の着色剤を含んでいる。また、成膜用インク19GAの成膜材料には、例えばアクリル樹脂等の樹脂材料が含まれていてもよい。
【0123】
A−4
そして、前述した成膜方法の第1乾燥工程[2]と同様にして、基材15A上に付与された成膜用インク19GAから第1成分を除去する。これにより、図6(d)に示すように、固体状の中間体膜である膜19GBが形成される。
その後、図6(d)に示すように、着色層19Bが形成されるべき区画に、成膜用インク19BAを供給する。このとき、膜19RB、19GBはそれぞれ固体状であるので、他の区画へ流れ出すことはない。
【0124】
本工程における基材15Aへの成膜用インク19BAの付与も、前述した成膜方法のインク付与工程[1]と同様にして行うことができる。
成膜用インク19BAは、成膜材料および液性媒体を含み、前述した成膜用インク1と同様に構成されている。
また、成膜用インク19BAの成膜材料は、青色の染料または顔料等の着色剤を含んでいる。また、成膜用インク19BAの成膜材料には、例えばアクリル樹脂等の樹脂材料が含まれていてもよい。
【0125】
A−5
そして、前述した成膜方法の第1乾燥工程[2]と同様にして、基材15A上に付与された成膜用インク19BAから第1成分を除去する。これにより、図7(a)に示すように、固体状の中間体膜である膜19BBが形成される。
以上のようにして、基材15A上に固体状の中間体膜である膜19RB、19GB、19Bが形成される。なお、基材15A上に、成膜用インク19RA、19GA、19BAを全て付与した後に、前述した成膜方法の第1乾燥工程[2]と同様の処理を一括して施し、膜19RB、19GB、19Bを形成してもよい。
【0126】
[B]
B−1
次に、前述した成膜方法の第2乾燥工程[3]と同様にして、着色層19R、19G、19Bを形成する。
具体的には、膜19RB、19GB、19Bを加熱することにより、図7(b)に示すように、液状の膜19RC、19GC、19BCを形成する。
その後、液状の膜19RC、19GC、19BCからそれぞれ第2成分を除去することにより、図7(c)に示すように、着色層19R、19G、19Bを得る。なお、第2成分の除去後に、適宜所定の処理を施して、着色層19R、19G、19Bを得てもよい。
以上のようにして、カラーフィルタ102を製造することができる。
【0127】
このようにして得られた膜付きデバイスであるカラーフィルタ102は、着色層19R、19G、19Bの混色が防止されるとともに、着色層19R、19G、19Bの厚さの均一化および膜質の均質化が図られているので、所望の光学特性を有するものとなり、優れた信頼性を有する。
このような画素毎の塗り分けによる成膜方法は、前述したカラーフィルタ102の製造に限らず、前述した発光装置101の製造(特に、発光層)にも適用することができる。成膜方法以上説明したような本発明は、カラーフィルタ102の製造に限らず、例えばエレクトロルミネッセンス表示装置等の他方式の画像表示装置の製造にも適用することができる。
【0128】
(他の応用例)
本発明の成膜用インクは、配線基板の導体パターンの形成に用いることもできる。
導体パターンを形成するための成膜用インクは、導体パターン前駆体を形成するためのインクである。
具体的には、成膜用インクの成膜材料は、金属粒子を含んでいる。そして、成膜用インクは、金属粒子を分散媒に分散してなる分散液である。
【0129】
かかる金属粒子としては、銀粒子が好適に用いられ、銀粒子の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上30nm以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより高いものとすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0130】
また、銀粒子(金属粒子)は、その表面に分散剤が付着した銀コロイド粒子(金属コロイド粒子)として、分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、インクの吐出安定性が特に優れたものとなる。
インク中における銀コロイド粒子の含有量は、1wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。
【0131】
また、導体パターンを形成するための成膜用インクの成膜材料は、有機バインダーを含んでいてもよい。有機バインダーは、成膜用インクによって形成された導体パターン前駆体(第2乾燥工程後の膜)において、銀粒子の凝集を防止するものである。また、焼結時においては、有機バインダーは、分解されて除去されることができ、導体パターン前駆体中の銀粒子同士は、結合して導体パターンを形成する。
【0132】
有機バインダーとしては、特には限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#200(重量平均分子量200)、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量300)、ポリエチレングリコール#400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール#600(重量平均分子量600)、ポリエチレングリコール#1000(重量平均分子量1000)、ポリエチレングリコール#1500(重量平均分子量1500)、ポリエチレングリコール#1540(重量平均分子量1540)、ポリエチレングリコール#2000(重量平均分子量2000)等のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール#200(重量平均分子量:200)、ポリビニルアルコール#300(重量平均分子量:300)、ポリビニルアルコール#400(平均分子量:400)、ポリビニルアルコール#600(重量平均分子量:600)、ポリビニルアルコール#1000(重量平均分子量:1000)、ポリビニルアルコール#1500(重量平均分子量:1500)、ポリビニルアルコール#1540(重量平均分子量:1540)、ポリビニルアルコール#2000(重量平均分子量:2000)等のポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル等のポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
【0133】
また、インク中に有機バインダーの含有量は、1wt%以上30wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性を特に優れたものとしつつ、クラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。これに対して、有機バインダーの含有量が前記下限値未満であると、有機バインダーの組成によっては、クラックの発生を防止する効果が小さくなる場合がある。また、有機バインダーの含有量が前記上限値を超えると、有機バインダーの組成によっては、インクの粘度を十分に低いものとすることが困難な場合がある。
【0134】
(電子機器)
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述の表示装置300で構成されている。
【0135】
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の表示装置300で構成されている。
【0136】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0137】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の表示装置300で構成されている。
【0138】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0139】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
このような本発明の膜付きデバイスを有する電子機器は、優れた信頼性を有する。
【0140】
なお、本発明の電子機器は、図8のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図9の携帯電話機、図10のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0141】
以上、本発明の成膜用インク、成膜方法、液滴吐出装置、膜付きデバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、前述した実施形態では、発光素子が3層の発光層を有するものについて説明したが、発光層が1層または2層であってもよいし、4層以上であってもよい。また、発光層の発光色としては、前述した実施形態のR、G、Bに限定されない。
【0142】
また、本発明の成膜方法を用いて複数の層を積層する場合、後の膜形成時に用いる液性媒体の種類を選定したり、先に形成した膜を架橋反応させたりすることにより、先に形成した膜が後の膜形成時に溶解するのを防止することができる。
また、本発明の膜付きデバイスとしては、前述したカラーフィルタ、発光装置、配線基板に限定されず、成膜用インクを用いて形成された膜を有するデバイスであれば、様々なデバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0143】
1‥‥成膜用インク 1A‥‥膜 1B‥‥膜(第1膜) 1C‥‥膜 1D‥‥膜(第2膜) 3‥‥陽極 4‥‥正孔注入層 5‥‥正孔輸送層 6‥‥赤色発光層 7A‥‥第1の中間層 7B‥‥第2の中間層 8‥‥青色発光層 9‥‥緑色発光層 10‥‥電子輸送層 11‥‥電子注入層 12‥‥陰極 14‥‥積層体 14R、14G、14B‥‥積層体 15、15A‥‥基材 19B‥‥着色層(第2膜) 19BA‥‥成膜用インク 19BB‥‥膜(第1膜) 19BC‥‥膜 19G‥‥着色層 19GA‥‥成膜用インク 19GB‥‥膜(第1膜) 19GC‥‥膜 19R‥‥着色層(第2膜) 19RA‥‥成膜用インク 19RB‥‥膜(第1膜) 19RC‥‥膜 20‥‥基板 21‥‥基板 22‥‥平坦化層 24‥‥スイッチング素子 27‥‥導電部 31‥‥隔壁 32‥‥反射膜 33‥‥腐食防止膜 34‥‥陰極カバー 35‥‥樹脂層 36‥‥隔壁 100‥‥液滴吐出装置 101‥‥発光装置 102‥‥カラーフィルタ 110‥‥ヘッド 111‥‥ヘッド本体 112‥‥振動板 113‥‥ピエゾ素子 114‥‥本体 115‥‥ノズルプレート 115P‥‥インク吐出面 116‥‥リザーバ 117‥‥インク室 118‥‥ノズル 130‥‥ベース 140‥‥テーブル 150‥‥インク貯留部 151‥‥搬送路 170‥‥テーブル位置決め手段 171‥‥第1移動手段 172‥‥モータ 180‥‥ヘッド位置決め手段 181‥‥第2移動手段 182‥‥リニアモータ 183、184、185‥‥モータ 190‥‥制御装置 191‥‥駆動回路 200R、200G、200B‥‥発光素子 241‥‥半導体層 242‥‥ゲート絶縁層 243‥‥ゲート電極 244‥‥ソース電極 245‥‥ドレイン電極 300‥‥表示装置 300R、300G、300B‥‥サブ画素 1100‥‥パーソナルコンピュータ 1102‥‥キーボード 1104‥‥本体部 1106‥‥表示ユニット 1200‥‥携帯電話機 1202‥‥操作ボタン 1204‥‥受話口 1206‥‥送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料と、
前記成膜材料が溶解または分散される液性媒体とを有し、
前記液性媒体は、第1成分と、常圧での沸点が前記第1成分の常圧での沸点よりも高く、かつ、常圧での融点が前記第1成分の常圧での融点よりも高いとともに、前記第1成分に溶解する第2成分とを含むことを特徴とする成膜用インク。
【請求項2】
前記第1成分は、常温常圧で液状をなすものである請求項1に記載の成膜用インク。
【請求項3】
前記第1成分の常圧での融点は、0°以下である請求項2に記載の成膜用インク。
【請求項4】
前記第1成分の常圧での沸点は、40℃以上である請求項2または3に記載の成膜用インク。
【請求項5】
前記第2成分は、常温常圧で固体状をなすものである請求項1ないし4のいずれかに記載の成膜用インク。
【請求項6】
前記成膜材料は、有機材料を主材料とするものである請求項1ないし5のいずれかに記載の成膜用インク。
【請求項7】
前記成膜材料は、前記第2成分に溶解するものである請求項6に記載の成膜用インク。
【請求項8】
前記成膜材料は、カラーフィルタの着色層の構成材料またはその前駆体である請求項6または7に記載の成膜用インク。
【請求項9】
前記成膜材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層の構成材料またはその前駆体である請求項6または7に記載の成膜用インク。
【請求項10】
前記成膜材料は、配線基板の導体パターンの構成材料またはその前駆体である請求項1ないし7のいずれかに記載の成膜用インク。
【請求項11】
インクジェット法を用いた成膜に用いる請求項1ないし10のいずれかに記載の成膜用インク。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の成膜用インクを基材上に付与する工程と、
前記成膜用インクから前記第1成分を除去して、前記成膜材料および前記第2成分を主成分とする固体状の第1膜を形成する工程と、
前記第1膜を加熱することにより液状とし、その状態で前記第1膜から前記第2成分を除去して、前記成膜材料を主成分とする第2膜を形成する工程とを有することを特徴とする成膜方法。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の成膜用インクを吐出する液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項14】
請求項12に記載の成膜方法により形成された膜またはそれを処理した膜を有することを特徴とする膜付きデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の膜付きデバイスを有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−49283(P2012−49283A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189187(P2010−189187)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】