説明

成膜用真空バルブ

【課題】弁座と弁シール部材とに対する副生成物の付着を防止することができる、簡単で効果的な機構を備えた成膜用真空バルブを提供する。
【解決手段】真空バルブにおける弁座16と弁シール部材18とによる弁開閉部19の内周側の位置に、上記弁座16の開放初期に相互に嵌合し合って微小な絞り流路43を形成する環状壁41と環状溝42とを配設し、反応ガスが上記弁開閉部19を流通する前にこの絞り流路43を高速で流通することにより、上記環状壁41及び環状溝42に副生成物が付着するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置において、反応ガスを用いてウエハに成膜処理を施したあとの真空チャンバの排気を行う場合に好適に使用される、成膜用真空バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、反応ガスを用いて半導体ウエハ上に成膜膜処理を施す場合、真空チャンバ内でその処理が行われる。処理後の真空チャンバは、真空ポンプにより真空バルブを通じて内部の反応ガスが排気されるが、その際、この反応ガスとの接触によってバルブの内部に副生成物(成膜による生成物以外の生成物)が付着し易いという問題がある。この問題は特に、排気の初期段階において上記真空バルブの弁座と弁シール部材との間隔が小さいときに、反応ガスが速い流速で上記弁座や弁シール部材に接触することによって生じ易い。
上記弁座や弁シール部材に副生成物が付着すると、弁閉時のシールが不完全になり、リークを生じるなど真空バルブの機能低下につながるため、副生成物の付着はできるだけ避けなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の目的は、弁座と弁シール部材とに対する副生成物の付着を防止することができる、簡単で効果的な機構を備えた成膜用真空バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明によれば、バルブハウジングに形成されて真空チャンバに接続される第1ポート及び真空源に接続される第2ポートと、これらのポートに第1流路孔及び第2流路孔を通じて連通する弁室と、該弁室内に開口した上記第1流路孔の孔口の回りを取り囲む環状の弁座と、上記弁室内に配設されて該弁座を環状の弁シール部材で開閉する弁部材と、上記第1ポートからこれらの弁座と弁シール部材とで構成される弁開閉部までの流路を絞るための絞り機構とを有し、上記絞り機構が、上記バルブハウジング及び弁部材の一方と他方とに形成されて相互に嵌合可能な環状壁と環状溝とからなっていて、これらの環状壁と環状溝とが、上記弁開閉部の内周側の位置に、上記弁部材が弁座を開放したあと中間の開位置に達するまでの開放初期段階に相互に嵌合して、該弁座の開口面積より小さい流路面積の絞り流路を形成するように配設されていることを特徴とする成膜用真空バルブが提供される。
【0005】
本発明においては、上記環状壁が、上記第1流路孔の孔口の位置に該孔口と同心状かつ弁室内に突出するように形成され、また、上記環状溝が、上記弁部材における上記弁シール部材の内周側の位置に該弁シール部材と同心状に配設されていることが望ましい。
【0006】
この場合、上記第1流路孔内に円筒部材が嵌め付けられていて、該円筒部材の先端部が上記弁室内に延出し、該先端部によって上記環状壁が形成されていても、あるいは、上記弁室内における上記第1流路孔の孔口の回りに円環部材が取り付けられ、該円環部材が、上記孔口の回りを取り囲んで周方向に延在するフランジ部と、このフランジ部から弁室内に立ち上がった円筒部とを有していて、該円筒部によって上記環状壁が形成され、上記フランジ部によって上記弁座が形成されていても良い。
【0007】
本発明においては、上記環状溝における内外周の壁面のうち少なくとも一方を、該環状溝の溝幅が溝口側に向かって次第に広がる方向に傾斜させることもでき、あるいは、上記環状壁の先端に、該環状壁の内側に向けて延出するフランジ部を形成すると共に、上記環状溝を、このフランジ部に適合する溝幅に形成することもできる。
【0008】
また、本発明においては、上記絞り機構が、上記第1流路孔の孔口の部分に形成された絞り用孔部と、上記弁部材の前面に形成されてこの絞り用孔部に嵌合する絞り用突部とからなっていて、上記絞り用孔部には、弁室側に向かって次第に孔径が拡大する傾斜部が設けられ、これらの絞り用孔部と絞り用突部とが、上記弁部材が弁座を開放したあと中間の開位置に達するまでの開放初期段階に相互に嵌合することにより、上記弁座の開口面積より小さい流路面積の絞り流路を形成するように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の真空バルブは、真空チャンバに接続される第1ポートから弁座と弁シール部材とで構成される弁開閉部に至る流路中に、絞り機構を設け、この絞り機構で、弁部材が弁座を開放したあと中間の開位置に達するまでの開放初期の段階に該弁座の開口面積より小さい流路面積の絞り流路を形成するようにしたので、該真空バルブによる反応ガスの排出時に、上記第1ポートからの反応ガスが、上記弁開閉部を流通する前にこの流路面積の小さい絞り流路を高速で流通することになり、この結果、この絞り流路中に反応ガスによる副生成物が付着するため、上記弁シール部材や弁座の部分に副生成物が付着するのが著しく軽減されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に係る成膜用真空バルブの第1実施形態を示すものである。この真空バルブ1Aは、流路中の弁座16を開閉する弁部材17を備えた主弁部2と、上記弁部材17を開閉操作するためのシリンダ部3とを有していて、これらの主弁部2とシリンダ部3とが、バルブの中心軸線Lに沿って直列に結合されている。
【0011】
上記主弁部2は、実質的に角柱状又は円柱状をした中空のバルブハウジング10を有している。このバルブハウジング10は、ステンレスなどの高耐食性素材からなるもので、真空チャンバ5に接続するための第1ポート11と、真空源6に接続するための第2ポート12とを有し、上記第1ポート11は、バルブハウジング10の上記中心軸線L方向の一端側に該中心軸線Lに沿う方向に開口し、第2ポート12は、バルブハウジング10の側面に上記中心軸線Lと直交する方向に開口している。
【0012】
上記バルブハウジング10の内部には、上記第1ポート11から上記中心軸線Lに沿って延びる第1流路孔13と、上記第2ポート12から上記中心軸線Lと直角に延びる第2流路孔14と、これらの流路孔13,14が連通する弁室15とが形成され、上記第1流路孔13の端部の該弁室15内に開口する孔口13aの回りには、円環状の上記弁座16が該孔口13aと同心状に形成されている。また、上記弁室15の内部には、上記弁座16を開閉するポペット式の上記弁部材17が、該弁座16と同心状に設けられている。この弁部材17は、円形のディスク形をしていて、その前面17aの外周端寄りの位置に、上記弁座16に接離する円環形をした弾性部材製の弁シール部材18が取り付けられている。
【0013】
上記弁部材17の背面中央部には、バルブハウジング10の内部を上記シリンダ部3側に向けて延びる弁シャフト20が、第1取付部材21と第2取付部材22とを介して着脱自在に取り付けられている。即ち、上記弁シャフト20の基端部が、円板形をした上記第1取付部材21に取り付けられていて、この第1取付部材21が円環形をした上記第2取付部材22に螺子23で分離自在なるように結合され、この第2取付部材22が、図示しない螺子等の取付手段で上記弁部材17の背面に着脱自在に取り付けられている。
上記弁シャフト20は、上記主弁部2とシリンダ部3とを区画する隔壁24を、シール部材25を介して気密にかつ摺動自在に貫通し、その先端が該シリンダ部3のピストン室26内に延出してピストン27に連結されている。
【0014】
また、上記弁部材17の背面には、該弁部材17が弁座16を全開した時の位置を規定するスリーブ状のストッパ28が、上記弁シャフト20を取り囲むように取り付けられている。このストッパ28は、上記弁部材17の背面から弁シャフト20に沿って一定長さ延びていて、上記弁部材17の全開位置でその先端が上記隔壁24の端部に当たるようになっている。
また、上記弁部材17の背面には、ばね座を兼ねる上記第1取付部材21と隔壁24との間に、該弁部材17を弁座16側に向けて弾発するコイル状の復帰ばね29が設けられている。
【0015】
さらに、上記弁部材17の背面には、上記弁シャフト20とストッパ28及び復帰ばね29の回りを取り囲むように伸縮自在のベローズ30が設けられている。このベローズ30は、金属等の耐食性素材で形成され、その一端が上記弁部材17の背面の上記第2取付部材22に連結され、他端が、上記バルブハウジング10と隔壁24との間に挟持された支持部材31に取り付けられ、上記弁部材17の開閉に伴って伸縮する。なお、該ベローズ30の内側空間は、図示しない呼吸孔を通じて外部に開放されている。
【0016】
上記シリンダ部3は、上記バルブハウジング10に同軸状に結合されたシリンダハウジング33を有している。該シリンダハウジング33は、上記バルブハウジング10と同じ四角柱状又は円柱状をしていて、該バルブハウジング10側の端部に主弁部2との間を隔てる上記隔壁24を有すると共に、内部に上記ピストン室26を有している。円形孔からなるこのピストン室26の内部には、ディスク形をした上記ピストン27が、シール部材34を介して軸線L方向に摺動自在に収容され、上記弁シャフト20に連結されている。図中35は、この弁シャフト20をピストン27に固定するナットである。
【0017】
上記ピストン27の前面側には、該ピストン27と上記隔壁24との間に圧力室36が形成され、この圧力室36が、上記シリンダハウジング33の側面に開口するパイロットポート37に連通している。また、上記ピストン27の背面側の空間は外部に開放している。
【0018】
従って、上記パイロットポート37を外部に開放して上記圧力室36を排気状態にすると、図1の左半部に示すように、復帰ばね29のばね力によって上記弁部材17が弁座16に押し付けられ、弁シール部材18によって該弁座16が閉鎖される。また、上記パイロットポート37から圧力室36に圧力エアを供給すると、図1の右半部に鎖線で示すように、ピストン27が図の上向きに移動することによって弁部材17が引き上げられ、弁シール部材18が弁座16から離れて該弁座16が開放する。
【0019】
上記パイロットポート37への圧力エアの供給は、エア源を備えた制御装置38を通じて行われ、また、上記ピストン27の動作位置の検出は、位置検出装置39により弁シャフト20の位置を検出することにより行われる。そして、この位置検出装置39により検出されたピストン27の動作位置に応じて、上記制御装置38でパイロットポート37への圧力エアの給排を制御することにより、上記弁部材17による弁座16の開放度を調整できるようになっている。
【0020】
また、上記真空バルブ1Aには、上記第1ポート11から上記弁座16と弁シール部材18とで構成される弁開閉部19に至るまでの流路中に、該流路を絞るための絞り機構40が設けられている。この絞り機構40は、図2からも分かるように、上記バルブハウジング10側と弁部材17側とに形成されて相互に嵌合可能な環状壁41と環状溝42とからなるもので、これらの環状壁41と環状溝42とが、上記弁開閉部19の内周側の位置に、相互に嵌合し合うことによってそれらの間に微小ギャップからなる絞り流路43を形成するように配設されている。
【0021】
上記絞り機構40は、上記真空源6で真空チャンバ5内の反応ガスを排気する際に、この反応ガスによる副生成物が上記弁座16と弁シール部材18とに付着するのを防止する機能を有するもので、排気時に上記反応ガスが、上記弁開閉部19を流通する前に、上記絞り流路43を該弁開閉部19を流通するときよりも高速で流通するようにし、そのときこの反応ガスが上記環状壁41及び環状溝42の壁面に接触することにより、これらの壁面に副生成物が付着するようにしたものである。この絞り機構40について以下に詳述する。
【0022】
上記環状壁41は、上記第1流路孔13の孔口13aと同心をなす位置に上記弁室15内に突出するように形成されている。即ち、上記第1流路孔13の内部には、該第1流路孔13の内径と同程度かそれより僅かに小さい外径を有する円筒部材46が、密にしかも着脱自在なるように嵌め付けられていて、該円筒部材46の先端部が上記孔口13aから弁室15内に突出し、該先端部によって上記環状壁41が形成されている。
【0023】
上記円筒部材46は、上記第1流路孔13の全長にわたり延びていて、その基端部に外周方向に延出する取付用のフランジ部46aを有し、このフランジ部46aが、上記第1ポート11を有する管部11aの先端の連結用フランジ部11bと、上記真空チャンバ5に通じる管部47の先端のフランジ部47aとの間に挟持されている。図中48は、シール用のOリングである。
上記円筒部材46の第1流路孔13内に嵌合する部分は、その全長にわたり実質的に均一な内外径を有している。
【0024】
一方、上記環状溝42は、上記弁部材17の前面17aにおける上記弁シール部材18の内周側の、該弁シール部材18と同心をなす位置に、一定の溝幅を保って上記中心軸線Lに沿って真っ直ぐに形成されている。
上記環状溝42の溝幅は、その内部に上記環状壁41が嵌合しているとき、これらの環状壁41及び環状溝42の内外周における相対する壁面41aと42aとの間及び/又は41bと42bとの間に、反応ガスが高速で流通可能な微小ギャップからなる円環状の上記絞り流路43が形成されるような溝幅である。
【0025】
また、上記環状溝42の深さと上記環状壁41の高さとの関係は、図1の左半部に示すように弁部材17が弁座16を閉鎖している状態では、上記環状壁41が環状溝42内に最大限嵌合するが、該環状壁41の先端は環状溝42の溝底に当接しない位置を占め、この状態から、上記弁部材17が弁座16を開放し、中間の開位置に達するまでの開放初期段階においては、上記環状壁41が環状溝42内に嵌合した状態を維持し、さらに上記弁部材17が変位して中間の開位置を過ぎると、上記環状壁41が環状溝42から完全に抜け出すように関係付けられている。そして、上記開放初期段階においては、上記弁シール部材18が弁座16から離れた直後の該弁座16の開口面積が未だ非常に小さい瞬間を除き、上記絞り流路43の流路面積が、実質的に上記弁座16の開口面積より小さい状態を維持するようになっている。
【0026】
上記構成を有する真空バルブ1Aを半導体ウエハの成膜膜処理に使用する場合、該真空バルブ1Aにより、第1ポート11に接続された真空チャンバ5内の圧力が一定に保持される。この圧力を一定に保持する操作は、上記制御装置38により、上記位置検出装置39で検出されるピストン27の動作位置に応じてパイロットポート37への圧力エアの給排を制御し、上記弁部材17による弁座16の開放度を調整することにより行われる。このとき、上記弁座16が開放した状態にあっても、例えば図1の右半部に示すようにその開口量は小さく、従って、上記絞り機構40においては、上記環状壁41が環状溝42内に嵌合した状態にある。
【0027】
上記成膜処理のあとに上記真空バルブ1Aを通じて真空チャンバ5内の反応ガスを排気する場合には、上述した動作状態から、上記制御装置60でパイロットポート37に供給される圧力エアを制御することにより弁部材17を変位させ、弁シール部材18を弁座16から離間させて該弁座16を開放する。これによって上記真空チャンバ5内の反応ガスは、真空源6により第1ポート11から第2ポート12へと排出される。
【0028】
ここで、上記反応ガスの排気の初期段階においては、図1の右半部及び図2に示すように、上記弁部材17が弁座16を開放し、かつ上記環状壁41が環状溝42内に嵌合した状態にあり、上記環状壁41と環状溝42との壁面41a,41bと42a,42bとの間には、一定の開口面積を有する微小ギャップからなる絞り流路43が形成されており、この絞り流路43の流路面積は、上記弁シール部材18による弁座16の開口面積より小さい。
【0029】
このため、上記第1ポート11からの反応ガスは、面積の小さい上記絞り流路43を高速で流通し、そのあと、上記弁シール部材18と弁座16とによる上記弁開閉部19を流速を落とした状態で緩速で流通し、第2流路孔14から第2ポート12へと排出されることになる。そして、上記絞り流路43を高速で流通する際に、上記環状壁41及び環状溝42の壁面41a,42a及び41b,42bと接触することによってそれらの壁面に副生成物として付着する。このため、上記反応ガスが上記弁開閉部19に達したときには、副生成物を生成する成分の減少と流速の緩和との相乗効果が働いて、弁シール部材18や弁座16に対する副生成物の付着が著しく軽減されることになる。
【0030】
上記弁部材17が弁座16から次第に離れて該弁座16の開口面積が増大していくと、上記環状壁41が環状溝42に嵌合する度合いも次第に減少していくが、それが嵌合状態にある間は引き続いて上記絞り流路43が形成されたままである。
そして、上記弁部材17がさらに変位して中間の開位置まで達すると、上記環状壁41が環状溝42から完全に抜け出して上記絞り流路43は解消されるが、このころには、副生成物の付着が生じにくい程度にまで反応ガスの排出は進行している。その後上記弁部材17は、上記ストッパ28が隔壁24の端部に当接する図1の鎖線の位置まで変位し、上記弁座16を全開にさせる。
【0031】
上記環状壁41や環状溝42の壁面部分に付着した副生成物は、洗浄等によって落とすことができる。この場合、上記環状壁41を形成する円筒部材46や、環状溝42を有する弁部材17等を、取り外して洗浄することもできる。
【0032】
図3は本発明に係る成膜用真空バルブの第2実施形態を示すものである。この第2実施形態の真空バルブ1Bが上記第1実施形態の真空バルブ1Aと相違する点は、副生成物の絞り機構40における環状壁41と、弁開閉部19における弁座16とが、円環部材50によって形成されている点である。それ以外の構成は実質的に第1実施形態と同じであるから、主要な同一構成部分に第1実施形態と同じ符号を付し、それらの符号を用いながら上述した構成の相違する部分について説明し、同一構成部分についての説明は省略するものとする。
【0033】
即ち、上記円環部材50は、弁室15内における第1流路孔13の孔口13aの回りの位置に着脱自在に取り付けられている。この円環部材50は、上記孔口13aの回りを取り囲んで周方向に延在する厚さの厚い円環状のフランジ部50aと、このフランジ部50aの内周縁から弁室15内に立ち上がった厚さの薄い円筒部50bとからなるもので、上記フランジ部50aが螺子51でバルブハウジング10に固定されている。そして、上記フランジ部50aによって弁座16が形成され、上記円筒部50bによって上記環状壁41が形成されている。
図中52は、上記フランジ部50aとバルブハウジング10との間に介設されたシール部材である。
この第2実施形態の真空バルブ1Bにおいても、上記第1実施形態の真空バルブ1Aと同様の副生成物の付着防止効果が得られる。
【0034】
図4は、本発明に係る成膜用真空バルブの第3実施形態を、その要部である絞り機構40の形成部分について示すものである。図示されていないその他の構成部分については、上記第1又は第2実施形態と同様である。
この第3実施形態の真空バルブ1Cにおいては、環状溝42の内周側の壁面42aを、該環状溝42の溝幅がその溝口側に向けて次第に広くなるような円錐形の傾斜面に形成することにより、絞り流路43の流路面積が、上記壁面42aと環状壁41の壁面41aとの協同作用によって、該環状溝42への環状壁41の嵌合の度合いに応じて変化するように構成されている。
しかし、上記内周側の壁面42aに代えて、あるいはそれに加えて、外周側の壁面42bを溝口側に向けて次第に溝幅が広くなるような円錐形の傾斜面に形成しても良い。
なお、上記環状壁41の内外周の壁面41a,41bは、中心軸線Lに沿って真っ直ぐに延びている。
【0035】
図5は、本発明に係る成膜用真空バルブの第4実施形態を、その要部である絞り機構40の形成部分について示すものである。図示されていないその他の構成部分については、上記第1又は第2実施形態と同様である。
この第4実施形態の真空バルブ1Dにおいては、環状壁41の先端部に、該環状壁41の内側に向けて延出する環状のフランジ部41cを有し、環状溝42が、このフランジ部41cの断面幅より僅かに広い溝幅を有するように形成されている。
この構成により、環状壁41の厚さに対して環状溝42の溝幅を広くすることができるので、付着した副生成物の清掃が行い易い。
【0036】
上記各実施形態においては、絞り機構40の環状壁41をバルブハウジング10側に形成し、環状溝42を弁部材17側に形成しているが、それとは逆に、環状壁41を弁部材17側に形成し、環状溝42をバルブハウジング10側に形成することもできる。
【0037】
図6及び図7は、本発明に係る成膜用真空バルブの第5実施形態を、その要部である絞り機構40の形成部分について示すものである。図示されていないその他の構成部分については、上記第1又は第2実施形態と同様である。
この第5実施形態の真空バルブ1Eにおいては、上記絞り機構40が、上記第1流路孔13の孔口13aの部分に該孔口と同心状に形成された絞り用孔部55と、上記弁部材17の前面17aに形成されてこの絞り用孔部55に嵌合する短円柱状の絞り用突部56とで構成されていて、これらの絞り用孔部55と絞り用突部56との間に絞り流路43が形成されるようになっている。
【0038】
上記絞り用孔部55は、一定の孔径を有する孔奥側の第1孔部分55aと、弁室15側に向かって次第に孔径が拡大するように傾斜する孔先端側の第2孔部分55bとからなっている。そして、図6の左半部に示すように弁部材17が弁座16を閉鎖している状態では、上記絞り用突部56がこの絞り用孔部55内に嵌合し、該絞り用突部56の先端部は上記第1孔部分55aの位置まで達している。一方、上記弁部材17が弁座16を開放して中間の開位置に達するまでのバルブ開放初期段階においては、上記絞り用突部56が、上記絞り用孔部55内に嵌合した状態のまま上記第2部分55bの位置まで変位する。このとき、テーパ状をなすこの第2孔部分55bによって上記絞り流路43の流路面積が変化することになる。
【0039】
また、上記バルブの開放初期段階においては、上記絞り用突部56が絞り用孔部55の第1孔部分55aに嵌合している場合のほか、第2孔部分55bに嵌合している場合においても、これらの絞り用突部56と絞り用孔部55との間に形成される絞り流路43の流路面積は、上記弁座16の開口面積よりも小さく保たれるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図であって、左半部は弁閉状態を示し、右半部は弁解初期の状態を示すものである。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す断面図であって、左半部は弁閉状態を示し、右半部は弁解初期の状態を示すものである。
【図4】本発明の第3実施形態を示す要部断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態を示す要部断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
1A,1B,1C,1D,1E 真空バルブ
5 真空チャンバ
6 真空源
10 バルブハウジング
11 第1ポート
12 第2ポート
13 第1流路孔
13a 孔口
14 第2流路孔
15 弁室
16 弁座
17 弁部材
17a 前面
18 弁シール部材
19 弁開閉部
40 絞り機構
41 環状壁
41c フランジ部
42 環状溝
42a 内周側の壁面
42b 外周側の壁面
43 絞り流路
46 円筒部材
50 円環部材
50a フランジ部
50b 円筒部
55 絞り用孔部
55a 第2流路孔部分(傾斜部)
56 絞り用突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジングに形成されて真空チャンバに接続される第1ポート及び真空源に接続される第2ポートと、これらのポートに第1流路孔及び第2流路孔を通じて連通する弁室と、該弁室内に開口した上記第1流路孔の孔口の回りを取り囲む環状の弁座と、上記弁室内に配設されて該弁座を環状の弁シール部材によって開閉する弁部材と、上記第1ポートからこれらの弁座と弁シール部材とで構成される弁開閉部までの流路を絞るための絞り機構とを有し、
上記絞り機構が、上記バルブハウジング及び弁部材の一方と他方とに形成されて相互に嵌合可能な環状壁と環状溝とからなっていて、これらの環状壁と環状溝とが、上記弁開閉部の内周側の位置に、上記弁部材が弁座を開放したあと中間の開位置に達するまでの開放初期段階に相互に嵌合して、該弁座の開口面積より小さい流路面積の絞り流路を形成するように配設されていることを特徴とする成膜用真空バルブ。
【請求項2】
上記環状壁が、上記第1流路孔の孔口の位置に該孔口と同心状かつ弁室内に突出するように形成され、また、上記環状溝が、上記弁部材における上記弁シール部材の内周側の位置に該弁シール部材と同心状に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
上記第1流路孔内に円筒部材が嵌め付けられていて、該円筒部材の先端部が上記弁室内に延出し、該先端部によって上記環状壁が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
上記弁室内における上記第1流路孔の孔口の回りに円環部材が取り付けられ、該円環部材は、上記孔口の回りを取り囲んで周方向に延在するフランジ部と、このフランジ部から弁室内に立ち上がった円筒部とを有していて、該円筒部によって上記環状壁が形成され、上記フランジ部によって上記弁座が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項5】
上記環状溝における内外周の壁面のうち少なくとも一方の壁面が、該環状溝の溝幅が溝口側に向かって次第に広がる方向に傾斜していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の真空バルブ。
【請求項6】
上記環状壁の先端に、該環状壁の内側に向けて延出するフランジ部を有すると共に、上記環状溝が、このフランジ部に適合する溝幅に形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の真空バルブ。
【請求項7】
バルブハウジングに形成されて真空チャンバに接続される第1ポート及び真空源に接続される第2ポートと、これらのポートに第1流路孔及び第2流路孔を通じて連通する弁室と、該弁室内に開口した上記第1流路孔の孔口の回りを取り囲む環状の弁座と、上記弁室内に配設されて該弁座を環状の弁シール部材によって開閉する弁部材と、上記第1ポートからこれらの弁座と弁シール部材とで構成される弁開閉部までの流路を絞るための絞り機構とを有し、
上記絞り機構が、上記第1流路孔の孔口の部分に形成された絞り用孔部と、上記弁部材の前面に形成されてこの絞り用孔部に嵌合する絞り用突部とからなっていて、上記絞り用孔部には、弁室側に向かって次第に孔径が拡大する傾斜部が設けられ、これらの絞り用孔部と絞り用突部とが、上記弁部材が弁座を開放したあと中間の開位置に達するまでの開放初期段階に相互に嵌合することにより、上記弁座の開口面積より小さい流路面積の絞り流路を形成するように構成されていることを特徴とする成膜用真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−69943(P2008−69943A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251759(P2006−251759)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】