説明

扉の圧接装置

【課題】大形,大重量の気密扉の閉じ終りにおいて、扉受けに密着当接するまでのストロークが大きな扉を、扉受けに圧接させるのに好適な構造を提供する。
【解決手段】圧接機構を備えた金属製扉4(5)において、該扉4(5)の内部から回転進出し、該扉4(5)
の内部に後退して没入するカンヌキ12を該扉4(5)に
支持し、該扉4(5)の内部に、前記カンヌキ12にその進退動作をさせる駆動源19と伝動系14〜26とを設ける一方、該扉4(5)のカンヌキ12が設けられた外周側を受け止める扉受けには、進出して来る前記カンヌキ12の進出方向手前にカンヌキ受け18を設けてあり、該扉4(5
)を閉じるとき扉4(5)の内部に没入しているカンヌキ12が前記カンヌキ受け18を通過したら当該カンヌキ12を回転進出させてその進出動作を前記カンヌキ受け18に受け止めさせることにより、閉じる扉を扉受け2側に押出して当該扉受け2に圧接させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドラマ収録などの各種スタジオ,コンピュータ室,金庫室,収蔵庫,各種実験室の出入口扉のように、高度の防水性,防音性,防電磁波性などの高度の機能(以下、高機能性という)を必要とする扉について、その高機能を実現するために扉と扉受けとを気密に密着させる圧接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高機能性の扉についての圧接装置は、従来から数多くの提案がなされ、それらのうちいくつかは実用に供されているものもある。
【0003】
扉の密閉装置又は密閉機構となる圧接装置において代表的な構造例としては、扉受け(扉枠を含む)側にカム受状の受溝を設ける一方、前記受溝に対面する扉の外周面に当該受溝に嵌まるエキセン式(偏心式)のピンやスライド式の閂を設け、そのピンや閂をモータ等の動力で正,逆回転させたり進退させて、扉を扉受け側に強制的に引寄せて密着させたり、その密着を解くものが知られている(特許文献1〜4参照)。
【0004】
しかし、上記の公知密着機構(圧接機構)は、その構造上、或は、動作が許容される範囲が、扉の厚さと扉受けの奥行き量(前後幅)の制約を受けるため、動力を用いて動作するピンや閂による締付け量(扉の面が扉受けに当ってから密接されるまでのストローク量、距離)に限度があり、このため高さや幅が数メートルにも及ぶ大形で大重量の扉には適用し難い乃至は適用できない面があった。
【0005】
すなわち、気密扉などの高機能扉では、閉扉時の気密性を確保するため、扉受け側又は扉受け側に対面した扉の外周に、扉と扉受けの対向面に圧着的に挟持されるパッキンが設けられているが、閉扉時に、扉と扉受けの間に配置されているパッキンが閉じてくる扉を弾ね返すように作用するため、上記圧接機構におけるピン(又は閂)とその受溝が嵌り合わず、圧接機構が空転して圧接作用をしない現象が生じる。
【0006】
このような空転を防ぐため、閉じようとする扉を人手によりパッキンの弾ね返し力に抗して扉受け側に押し付け乍ら圧接機構を作動させているが、これが大形,大重量の扉となると、人手による押し付け力だけでは、パッキンの弾ね返し力に抗して扉を扉受け側に押し付けることは不可能乃至殆んど不可能である。
【特許文献1】実公平7−29678号公報
【特許文献2】特開平8−232529号公報
【特許文献3】実用新案登録第2539288号公報
【特許文献4】実開昭60−89398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、特に大形,大重量の気密扉のように、扉の閉じ終りにおいてその扉を扉受けに密着当接するまでのストロークが大きな扉を、扉受けに圧接させるのに好適な構造を備えた扉の圧接装置を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明圧接装置の構成は、出入口に設けられる圧接機構を備えた金属製扉において、その扉の外周面上に前記扉の内部から回転進出し、当該扉の内部に後退して没入するカンヌキをこの扉の内部に支持して設けると共に、この扉の内部に、前記カンヌキにその進退動作をさせる駆動源と伝動系とを設ける一方、前記扉のカンヌキが設けられた外周側を受け止める扉受けには、進出して来る前記カンヌキの進出方向手前にカンヌキ受けを設けてあり、前記扉を閉じるとき扉の内部に没入しているカンヌキが前記カンヌキ受けを通過したら当該カンヌキを回転進出させてその進出動作を前記カンヌキ受けに受け止めさせることにより、閉じる扉を扉受け側に押出して当該扉受けに圧接させるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明圧接装置は、上記構成において、駆動源にその出力端がストローク(又は進退)動作をするモータや流耐圧シリンダ等のアクチュエータを用いる。また、伝動系には、前記出力端のストローク動作を前記カンヌキの進退動作に変換して伝動する連接リンク機構により構成する。さらに、扉の外周面に設けるカンヌキは、当該扉における外周面上の上,下両面と扉受け側の外側面に設けることが扉と扉受けの圧接度を十分なものとする上で好ましいが、適用する扉の大きさ,形状などによっては、外周面上の上,下両面、又は、扉受け側の外周側面で足りる場合もある。
【発明の効果】
【0010】
録音スタジオ等の出入口に設けられる圧接機構を備えた金属製扉において、その扉の外周面上に前記扉の内部から回転進出し、当該扉の内部に後退して没入するカンヌキをこの扉の内部に支持して設けると共に、この扉の内部に、前記カンヌキにその進退動作をさせる駆動源と伝動系とを設ける一方、前記扉のカンヌキが設けられた外周側を受け止める扉受けには、進出して来る前記カンヌキの進出方向手前にカンヌキ受けを設けてあり、前記扉を閉じるとき扉の内部に没入しているカンヌキが前記カンヌキ受けを通過したら当該カンヌキを回転進出させてその進出動作を前記カンヌキ受けに受け止めさせることにより、閉じる扉を扉受け側に押出して当該扉受けに圧接させるようにしたので、至って簡潔な構造で気密扉などの扉の圧接装置を提供することができる。
【0011】
本発明では上記構成において、駆動源にその出力端がストローク(又は進退)動作をするモータや流体圧シリンダ等のアクチュエータを用い、伝動系には、前記出力端のストローク動作を前記カンヌキの進退動作に変換して伝動する連接リンク機構を用いたので、扉の扉受けに対するより強力で均質な圧接度を、簡単な構造の圧接機構により得ることができる。
また、強力で均質な扉と扉受けの圧接度は、カンヌキを当該扉における外周面上の上,下両面と扉受け側の外周側面に設けると共に、各カンヌキに対応する扉受けの部位にカンヌキ受けを設けることによって容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明圧接装置の実施の形態例について、図を参照しつつ説明する。
図1は本発明圧接装置を備えて観音開き態様で配置した両開扉の一例を示す正面図、図2は図1の扉の幅方向中間を省略して拡大した図1のA−A線断面図、図3は図1の扉において本発明圧接装置の構成を抽出して示した正面図、図4〜図6は図3のB−B矢視拡大断面図において、本発明圧接装置の作用を説明するための要部の断面図であり、図4は圧接装置の作動開始時、図5は圧接装置のカンヌキが進出してカンヌキ受けに当接し始めた時点、図6はカンヌキが進出し終えてカンヌキ受けに支持され本発明圧接装置が圧接を完了した時点の、それぞれ断面図、図7は本発明圧接装置の作動開始タイミングを検出すると共に閉じられる扉をその位置に保持するための扉保持機構の概要を説明するための側断面図である。
【0013】
図1は本発明圧接装置を適用した観音開き扉の正面図である。本発明圧接装置は、片開き扉、或は、横引き扉にも適用できることは勿論である。図1において、1は建物の躯体で、1aは床、1bは壁である。2はこの建物の躯体壁1bに開口された出入口3に設けた扉枠で、図の例では2枚の扉4,5が複数個のヒンジ6によって扉枠2における左右の柱部に開閉自在に取付けられている。本明細書では、図1の右側の扉4を親扉4、左側の扉5を子扉5ともいう。また、図示した例の扉4,5が設けられる大形スタジオなどに設けられる出入口3、即ち、扉枠2は、一例として左右の内幅が4〜8m程度、上下幅4〜8m程度もある大形出入口である場合には、各扉4と5は、一枚の幅が2〜4m、高さも4〜8m程度のものである。本発明は、このような大形扉だけでなく、人の出入り口専用に設けられた高機能扉に適用できること、勿論である。
【0014】
図2は、図1の扉4,5を、その幅方向の中間部を省略して拡大し平断面図として示したものである。本発明圧接装置が適用される図1,図2の扉4,5は、防音性、電磁波シールド性などの機能を付与するため、図示しないが、扉枠2、扉4,5自体の内部に適切な防音材,電磁波シールド材などが内装されていることは勿論、両扉4,5のめし合せ部と、両扉4,5と扉枠2の間にも同様の防音材,電磁波シールド材などが設けられているものとする。
【0015】
防音性及び電磁波シールド性などの機能を確保するため、まず、扉枠2の平断面は、部屋の内側に向って開口間口が階段状に狭くなった段差部2aに形成されている。従って、扉4,5の前記扉枠2の段差部2aに対応する外周面は、当該段差部2aとは逆向きの段差部4a,5aに形成されている。また、両扉4,5のめし合せ部は、両扉4,5の境界端面が一律の平坦面とならないように、開閉の支障にならず、しかも互い噛み合う形態の階段状断面の段差部4b,5bに形成されている。
【0016】
そして、扉枠2の段差部2aと両扉4,5の夫々に対応する段差部4a,5aには、スポンジ材などを主体とする弾力性があり、かつ、電磁波シールド性などの機能を備えたパッキン7,8と、そのパッキン7,8に食い込むエッジ材9,10が設けられている。また、両扉4,5のめし合せ部にも、上記パッキン7,8とエッジ材9,10と同趣旨のパッキン7,8とエッジ材9,10が設けられている。本発明においては、上記の扉枠2における段差部2aと両扉4,5のめし合せ部が、扉受けとして機能する部位である。
【0017】
上記のように、扉受けにパッキン7,8が設けられていると、扉4,5の閉じ終りにおいて、そのエッジ材9,10が対応するパッキン7,8に当接すると、パッキン7,8の弾力によって閉じようとする扉4又は5が弾き返され加減になり、圧接装置が空転することがあることは、先に述べたとおりである。
【0018】
そこで本発明では、扉4,5の閉じ終り近傍、具体的には、各扉4,5に設けたエッジ材9,10が対応するパッキン7,8に当接するときに合せて、その位置に閉じられている扉4,5を保持する手段を、一例として図7に例示した扉保持機構11として設けた。次にこの扉保持機構11について、図7を参照して説明する。
【0019】
この保持機構11は、扉4と5の上端面近くの内部と対応した上部の扉枠2の前面側に設けられた枠カバー2Aの下面21Aとの間に相対させて設けたラッチとラッチ受けを主要部材として、次の構成を備えたものである。即ち、箱状乃至筒状のケーシング11aに、上端にローラ11bを備えた縦向きのロッド11cを、バネ11dにより常時上方へ向け付勢してローラ11bが扉4(5)の上端面4a(5a)から少し突出できるように設けると共に、ピン11eにより上死点(リミット)を決めたローラ式ラッチを、扉4と扉5の上端内部に夫々に設ける一方、前記ローラ11bを受け入れる受溝11fを備えたラッチ受け11gを、扉枠2におけるカバー2Aの下面21Aの側に設けてある。従って、上記ケーシング11aは、ラッチとなるローラ11bを扉の上端面4a(5a)から少し突出させて扉4と扉5の上端近くの内部に取付けられる。ここで、バネ11dの撥力やロッド11cの上死点は調整可能であることが望ましい。図7において、S1は、閉じられる扉4(5)が、その保持機構11が作動する位置(ローラ11bが受溝11fに入ったこと)まで閉じられたことを検出するセンサーで、このセンサーS1の信号検出が本発明圧接装置の駆動をスタートさせるトリガー信号となる。なお、センサーS1の設置は図7の位置に限られるものではない。例えば、リミットスイッチ可動片を扉4(5)の上面4a(5a)から小し突出させて設け、閉じられる扉4(5)が上記位置まで来たとき、そのリミットスイッチの可動片が、例えば扉枠2の前カバー2Aに叩かれる形態としてもよい。
【0020】
上記の扉保持機構11の作用によって、閉じ終り加減の扉4,5が、そのエッジ材9,10が夫々のパッキン7,8に当接しても、パッキン7,8の反撥力で開扉側に戻ることはないので、以下に説明する本発明圧接機構は、至ってシンプルな構成で、大形,大重量の扉4,5を、扉受け(実施例では扉枠2)に確実かつ均等に圧接することができる。そこで、本発明圧接装置について図を参照して以下に説明する。本実施例において、扉4,5の閉扉は、まず子扉5を閉じてその圧接装置を作用させ、次いで、親扉4を閉じて圧接装置を作用させる。開扉の順序は、当然ながら閉扉とは逆の順に開けることになる。
【0021】
本発明圧接装置は、図3の例では、親扉4に5箇所、子扉5に2箇所設けられているが、何箇所に設けるかは扉4,5の大きさ,形状などによって、適宜設定すればよい。
親扉4の圧接装置は、この扉4の外周面(扉の厚み側の外側面、以下、同じ。)上,下両面に各1箇所と、子扉5とめし合せになる外周面上の側面に3箇所に設けられている。一方、子扉5では、上,下面に各1箇所は親扉4と同じであるが、親扉4とのめし合せになる側面内部は、親扉4側の圧接装置のカンヌキを支持するカンヌキ受け18を設け(後に説明する)て圧接装置が形成されている。
【0022】
両扉4,5における外周面上の側面と上,下面(子扉5は上,下面のみ)に対し出没自在(進退自在)設けられるカンヌキ12は、カンヌキ作用部12aと該作用部12aと直交した入力レバー部12bと両部の交叉部を軸13により支持した略L字状部材により形成されている(図4〜図6参照)。
【0023】
扉4と同5の外周面に対して進退(出没)するように設けられるカンヌキ12の作用部12aは、カンヌキ12が設けられる扉4,5の外周面(図4〜図5では扉4と5の上面)と平行な向きで扉の厚み方向に直交した軸13に支持させて設けたことにより、図4〜図6の例では反時計回り方向に前記軸13を中心にして回転し、当該扉4(5)の外周面4a(5a)の外部側に進出する(図5参照)。この進出動作は、作用部12aが扉4(5)の外周面4a(5a)と直角になった位置で動作エンドとなる(図6参照)。また、進出したカンヌキ作用部12aの後退は、上記の進出動作とは逆方向に動作することによってなされ、扉4(5)の内部へ没入する(図4参照)。
【0024】
図4〜図6は、扉4(5)の外周面上における上端面から出没するカンヌキ12の動作状態を順に示したものであるが、当該扉4(5)の外周面上の側面、並びに、下端面において出没するように設けられた各カンヌキ12も、図4〜図6の例と同じ態様で扉の内部に設けられている。
【0025】
ここで、扉の各面に対して出没する各カンヌキ12の回転中心となる軸13は、カンヌキ12の設置位置が扉4(5)の外周上の上,下端面又は外周上の側面のいずれであっても、そのカンヌキ12が設置される部位(扉内部)の外周面4a(5a)と平行で、かつ、当該扉4(5)が閉扉終端で動作する方向(扉の厚み方向)に直交した向きで設けられている。
従って、扉4(5)の外周上の側面に対して出没するように設けられたカンヌキ12は、図4〜図6に示された姿が、設置状態を平面視したものとなる。また、扉4(5)の下端面に対して出没するように設けられたカンヌキ12は、図4〜図6に示された姿を180度回転させた向き(図4〜図6の天地を逆にした向き)になる。なお、13aは前記軸13を支持して扉4(5)の内部に設けられた軸受けである。
【0026】
以上に説明したカンヌキ12は、その入力レバー部12bの後端に、連動リンク14の先端部が枢着14aされ、この連動リンク14の後端部には、ストローク動作(進退動作)をする作動ロッド15の先端部15aが枢着14bされている。作動ロッド15はそのストローク動作がブレないように、先端部15aが滑りガイド16に支持され、中間部がブッシュ状のガイド17に摺動可能に保持されている。
【0027】
一方、上記のカンヌキ12の作用部12aが回転して扉4(5)の外周面の外に進出するとき、その進出するカンヌキ12の作用部12aを受け止めるのは、図4〜図6の例では扉枠2に設けたカンヌキ受け18である。カンヌキ受け18は、カンヌキ12を支持した軸13と平行な軸状体乃至棒状体で形成されているが、要は回転進出するカンヌキ12の作用部12aを受け止めて扉4(5)を、扉受け(扉枠2や子扉5の段差部2a,5a)側に押出す作用(扉受けに圧接する作用)をする部材であればよい。なお、カンヌキ受け18は、カンヌキ12の作用部12aを転がり接触で支持する構造を備えていることが、圧接装置の作動負荷を軽減し、かつ、円滑にする上で望ましい。
【0028】
次に、夫々に連動リンク14と作動ロッド15に連結された各カンヌキ12に出没動作を行わせる駆動源と、その出力を前記作動ロッド15に伝える伝動系について、以下に説明する。
【0029】
図3に例示するように、駆動源19は扉4と同5の内部下方に、夫々に設けられている。この駆動源19は、図3の例では、モータ19aの回転を出力軸19bの上下ストローク運動に変換して出力するタイプであるが、伝達ロッド24,25を上,下ストロークさせることができるものであれば、駆動源の型式,構造は任意である。例えば、モータの回転をピニオンで取出し、このピニオンでラックを上下ストロークさせる構造などである。
【0030】
上記駆動源19の出力軸19bの動作は、以下に説明する連接リンクを主体に構成された伝動系を経て、上述のカンヌキ12に連結された作動ロッド15に伝動される。
【0031】
前記出力軸19bは、その同軸上に出力ロッド20が連結されている。出力ロッド20は、サポート20aによって摺動可能に支持されている。また、出力ロッド20は、そのストローク軸に直交したアーム20bを具備しており、アーム20bの先端部は、当該先端部に設けた横向きの長穴20cにおいて、当該アーム20bの延長線上に設けた中継ディスク21にピン21aによって連結されている。21bはディスク21の回転軸である。
【0032】
駆動源19の出力によって作動ロッド20が上,下方向にストローク運動すると、そのストロークがアーム20bを介して中継ディスク21に伝達され、ディスク21が角回転する。このディスク21の回転は、当該ディスク21の周上に設けた2本の変換リンク22,23に伝達される。
【0033】
変換リンク22と23の先端側には、扉4(5)の内部で上,下方向に延びた伝達ロッド24,25が配置されている。24a,25aは当該ロッド24,25を摺動可能に支持したサポートである。
【0034】
ここで、扉4(5)の内部に設けた中継ディスク21の軸21b、伝達ロッド24,25、扉4(5)の上端外面と下端外面に出没するカンヌキ12は、同一線上に並べて配置されている。このため、扉4(5)の内部の上,下端部に設けたカンヌキ12の作動ロッド15は、扉の上,下端部に設けた夫々の作動ロッド15は、ともに伝達ロッド24と同25の先端部に直接連結されている。
【0035】
一方、扉4の外側面(子扉5とのめし合せ側)に出没するカンヌキ12、ここでは3箇所の各カンヌキ12に対しては、それぞれに大略L字状の第2変換リンク26を介して、各カンヌキ12の作動ロッド15にストローク運動が伝達される。
【0036】
いま、すべてのカンヌキ12が扉4(5)の内部に没入(後退)した状態では、駆動源19に連結された出力ロッド20のアーム20bは、図3の下位側の位置にある。また、中継ディスク21に連結された2本の変換リンク22,23も、図3に示す傾斜姿勢にあるので、2本の伝達ロッド24,25も、中継ディスク21の側に引き寄せられた位置にある。L字型の第2変換リンク26は、中継ディスク21より上方にある2つのリンク26は右側が下った姿勢に、当該ディスク21より下方にあるリンク26は上方のリンク26と逆向き配置であるから右側が上った姿勢にある。
【0037】
扉4(5)の内部に没入しているすべてのカンヌキ12を扉4(5)の外周面上に突出させるには、駆動源19を駆動させてその出力ロッド20を、図3の例では上方へ進出させる。このロッド20の進出は中継ディスク21の角回転に変換されて傾斜していた変換リンク22,23を垂直に立上げる(23は立下がる)。変換リンク22,23が垂直姿勢になると、それが連結されている伝達ロッド24,25は、夫々に上方と下方へストローク運動し、当該ロッド24と25の先端に作動ロッド15を介して連結されている扉4(5)の上,下部のカンヌキ12を扉外周面から直角に突出させると共に、このロッド24,25の中間部位に第2変換リンク26を介して作動ロッド15が連結されている扉側面の3箇所のカンヌキ12を扉側面から直角に突出させる。
【0038】
上記のように扉内部への没入状態(図4参照)から扉4(5)の外周面4a(5a)に垂直に突出した姿勢になる各カンヌキ12(図6参照)は、扉4又は同5の閉じ終り近くにおいて、扉4又は同5に設けたエッジ材9,10がパッキン7,8に当接してそのパッキン7,8の弾性によって弾き返され加減になるところを扉保持機構11で保持しているとき、当該扉4又は同5を、当該各カンヌキ12と対応する各カンヌキ受け18の協働作用で扉受け(扉枠2と子扉5の段差部2aと5a)に圧接させる。
【0039】
実際には、観音開き状に全開されている親扉4と子扉5は、まず、子扉5を人手により閉じその閉じ終端近くの位置を扉保持機構11の作用で仮固定する。扉保持機構11の扉保持作用がセンサーS1に検出されたら当該子扉5の駆動源19が作動させられてこの扉5の上,下端面に設けた2つのカンヌキ12を床1bと扉枠2に設けたカンヌキ受け18に押付け、これによってこの子扉5は扉受け(扉枠2)に圧接される。なお、上記の両扉4,5は、例えばヒンジ6に内蔵又は外付けしたモータ等の回転駆動源によって動力的に閉扉,開扉をするように形成することができる。開閉に駆動力を用いた扉4(5)では、先に述べた扉保持機構11は不要になる。
【0040】
圧接装置を作動させて子扉5を閉じ終えてから、親扉4を人手により閉じ、閉じ終り近くの位置を扉保持機構11により仮固定する。この位置で扉4がセンサーS1により検出され、この検出信号に基づいて駆動源19を作動させて扉4のすべてのカンヌキ12を扉4の外周面に突出させて圧接装置を作用させ、当該扉4を扉受け(扉枠2と子扉5の側面の段差部2aと5a)圧接させた状態で密閉する。
【0041】
本発明では、上記扉保持機構11の動作検出と駆動源19の始動、並びに、全てのカンヌキ12の進出(突出)と駆動源19の停止とを、連動的に制御する。
このため、扉保持機構11においてローラ11bがラッチ受け11gの受溝11fに入ったことを、例えばロッド11cのストロークをセンサーS1を設けて検出し、このセンサーS1の検出信号の入力に基づいて駆動源19の始動開始信号を出力する。
一方、全てのカンヌキ12が突出してしまったことは、一例として駆動源19の出力軸19bに、そのストロークエンドで信号を出力するセンサー(図に表われず)を設け、このセンサーの検出信号で前記駆動源19の駆動停止信号を出力する。
【0042】
もちろん本発明では、マニュアル操作によって駆動源19の始動,停止をさせることもできるようにしてある。また、駆動源19は電気モータ19aの駆動力を利用しているので、停電時などには駆動力が得られない。このため本発明では、モータ19aの軸19bの下端部に手動の回転ハンドルHの回転を伝動できるようにしておき、停電時などにおいて本発明圧接装置が手動可能であることを確保している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は以上の通りであって、扉の外周面上に前記扉の内部から回転進出し、当該扉の内部に後退して没入するカンヌキをこの扉の内部に支持して設けると共に、この扉の内部に、前記カンヌキにその進退動作をさせる駆動源と伝動系とを設ける一方、前記扉のカンヌキが設けられた外周側を受け止める扉受けには、進出して来る前記カンヌキの進出方向手前にカンヌキ受けを設けてあり、前記扉を閉じるとき扉の内部に没入しているカンヌキが前記カンヌキ受けを通過したら当該カンヌキを回転進出させてその進出動作を前記カンヌキ受けに受け止めさせることにより、閉じる扉を扉受け側に押出して当該扉受けに圧接させるようにしたから、特に大形,大重量の気密扉のように、扉の閉じ終りにおいてその扉を扉受けに密着当接させるためのストローク量が大きな扉であっても、扉を引き込んで扉受けに圧接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明圧接装置を備えて観音開き態様で配置した両開扉の一例を示す正面図。
【図2】図1の扉の幅方向中間を省略して拡大した図1のA−A線断面図。
【図3】図1の扉において本発明圧接装置の構成を抽出して示した正面図。
【図4】本発明圧接装置の作動開始時における当該圧接装置の作用を説明するための要部の断面図。
【図5】カンヌキが進出してカンヌキ受けに当接し始めた時点の本発明圧接装置の作用を説明するための要部の断面図。
【図6】カンヌキが進出し終えてカンヌキ受けに支持され本発明圧接装置が圧接を完了した時点の当該圧接装置の作用を説明するための要部の断面図。
【図7】本発明圧接装置の作動開始タイミングを検出すると共に閉じられる扉をその位置に保持するための扉保持機構の概要を説明するための側断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 建物の躯体
2 扉枠
3 出入口
4,5 扉(親扉4,子扉5)
6 ヒンジ
7,8 パッキン
9,10 エッジ材
11 扉保持機構
12 カンヌキ
13 軸
14 連動リンク
15 作動ロッド
16 滑りガイド
17 プッシュ状のガイド
18 カンヌキ受け
19 駆動源
20 出力ロッド
21 中継ディスク
22,23 変換リンク
24,25 伝達ロッド
26 第2変換リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口に設けられる圧接機構を備えた金属製扉において、その扉の外周面上に前記扉の内部から回転進出し、当該扉の内部に後退して没入するカンヌキをこの扉の内部に支持して設けると共に、この扉の内部に、前記カンヌキにその進退動作をさせる駆動源と伝動系とを設ける一方、前記扉のカンヌキが設けられた外周側を受け止める扉受けには、進出して来る前記カンヌキの進出方向手前にカンヌキ受けを設けてあり、前記扉を閉じるとき扉の内部に没入しているカンヌキが前記カンヌキ受けを通過したら当該カンヌキを回転進出させてその進出動作を前記カンヌキ受けに受け止めさせることにより、閉じる扉を扉受け側に押出して当該扉受けに圧接させるようにしたことを特徴とする扉の圧接装置。
【請求項2】
駆動源にその出力端がストローク(又は進退)動作をするモータや流体圧シリンダ等のアクチュエータを用い、伝動系には、前記出力端のストローク動作を前記カンヌキの進退動作に変換して伝動する連接リンク機構を用いた請求項1の扉の圧接装置。
【請求項3】
扉の外周面に設けるカンヌキは、当該扉における外周面上の少なくとも上,下両面、又は、扉受け側の外周面、若しくは、外周面上の上下両面と扉受け側の外周側面に設けた請求項1又は2の扉の圧接装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−8097(P2008−8097A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181761(P2006−181761)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】