説明

手押し車の補助ハンドル

【課題】片手でもぶれることなく押すことができ走行性が極めて安定した手押し車の補助ハンドルを提供する。
【解決手段】一端部が第一支軸6により互いに軸着される一対の等長アーム1a,1bと、一対の等長アーム1a,1bの各他端部に設けられ、手押し車Bのハンドル43に取着される把持部材7と、一端部が第二支軸19により互いに軸着されると共に他端部がそれぞれ各等長アーム1a,1bにおける第一支軸6を挟んだ等位置に軸着される一対の等長リンク14a,14bと、手で操作するための握杆部材21と、握杆部材21を第一支軸6と第二支軸19とに亘り配置固定する固定手段6a,21b,26と、を備えた構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子、ベビーカーまたはショッピングカーといった手押し車に使用され、走行性が極めて安定する手押し車の補助ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手押し車の一種として例えば車椅子がある。該車椅子は、障害を抱えたり病に罹り歩行が困難な若者や高齢者が利用している。また、病院では、入院患者や通院患者のために、一定の個数の車椅子が配備され利用に供されている。
【0003】
一般に、車椅子は、平行に起立する両側左右の側枠と、この両側枠を相互に連結する座シート支持枠とでフレームが構成されている。そして、左右の側枠間の中央に、被介護者が腰を下ろす座シートが配置されると共に、その後側に上部背もたれシートが配置され、その後の両側にハンドルが取着されている。また、側枠の前方下側には、被介護者が足を乗せるフットプレートが設けられている。さらに、左右の側枠における前側の下方のそれぞれに小径の前輪が軸着され、左右の側枠の後側中央部分に大径の後輪が軸着されている。また、前記座シート支持枠は、前後に平行に配置された2本のリンクを一組とし、これらの二組を中央でパンタグラフ状に交差させて枢支連結してなり、これにより左右方向に折畳み自在に構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−177336号公報(第3−8頁、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一定の個数の車椅子を配備している病院にあっては、火災や地震といった緊急時に、病院内にいる歩行困難な人たちをできるだけ速やかに車椅子で避難させる必要がある。このような場合、基本的に一台の車椅子に歩行困難な一人の患者を座らせて、例えば看護士や職員といった救助者が一人で一台の車椅子を押して走行することになる。
【0006】
しかしながら、救助者一人が一台の車椅子しか扱えないとすると、何度も車椅子を往復させなければならなくなり、その分、多くの時間がかかってしまう。そのため、歩行困難な人が多いとこれらの人を迅速かつ安全に避難させることが困難になる。そこで、歩行困難な人を乗せた車椅子を一人の救助者の両側に一台ずつ配置し、各車椅子をそれぞれ片手で同時に押すようにして走行することも考えられるが、車椅子の後輪は前後方向のみ回転するのに対し、前輪は水平面内で自在に回転するようになっていることから、片側のハンドルを持って前側へ押す場合は、左右にぶれ易く走行性が安定しない。よって、一人の救助者が2台の車椅子を同時に走行させて迅速に避難させることは事実上難しいと考えられていた。
【0007】
そこで、本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、手押し車を片手で押しても、手押し車をぶれることなくまっすぐ走行させることができる補助ハンドルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の手押し車の補助ハンドルは、一端部が第一支軸により互いに軸着される一対の等長アームと、前記一対の等長アームの各他端部に設けられ手押し車のハンドルに取着される把持部材と、一端部が第二支軸により互いに軸着されると共に他端部がそれぞれ前記各等長アームにおける前記第一支軸を挟んだ等位置に軸着される一対の等長リンクと、前記第一支軸と前記第二支軸とを結ぶ直線を含む垂直面内に設けられると共に該第一支軸と該第二支軸に架け渡し可能に設けられ手押し車を押す際に手で操作する握杆部材と、前記握杆部材を前記第一支軸と前記第二支軸とに亘り配置固定する固定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
この際、前記把持部材は、前記各等長アームの他端部に支持軸により回動自在に軸着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る手押し車の補助ハンドルは、手押し車に装着すると、握杆部材が手押し車の前進方向に沿ったほぼ中心線上に必ず位置するため、握杆部材を押して手押し車を前進させると、手押し車を左右にぶれさせることなく真直ぐに安定した状態で走行させることができる。従って、手押し車を使用者の両側に1台ずつ配置し、それぞれの手で握杆部材を握り、同時に2台の車椅子を押すような場合、あるいは、片手に荷物を持っていて、もう片方の手のみで手押し車を押さなければならないような場合でも、手押し車をぶれさせることなく安定した状態で走行させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】等長アームを開いた状態の第1実施形態に係る補助ハンドルの斜視図。
【図2】同握杆部材を固定した状態の補助ハンドルの斜視図。
【図3】(イ)は図1のX−X線断面図、(ロ)は図1のY−Y線断面図。
【図4】把持部材を裏側から見た斜視図。
【図5】補助ハンドルを車椅子に使用した状態の斜視図。
【図6】車椅子を折り畳んだ状態の斜視図。
【図7】作用を説明する補助ハンドル部位の平面図。
【図8】等長アームを開いた状態の第2実施の形態に係る補助ハンドルの斜視図。
【図9】同握杆部材を固定した状態の第2実施の形態に係る補助ハンドルの斜視図。
【図10】第3実施の形態に係る補助ハンドルの裏面図。
【図11】図10のX−X線断面図。
【図12】本発明に係る補助ハンドルをベビーカーに使用した状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る手押し車の補助ハンドル(以下、単に「補助ハンドル」という。)の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。ここで、本発明に係る「手押し車」とは、車椅子、ベビーカー、ショッピングカー、荷物運搬用台車を含む概念であるが、本実施の形態においては、車椅子に本発明が適用される場合を例として説明する。図1は等長アームを開いた状態の本発明に係る補助ハンドルの斜視図、図2は握杆部材を固定した状態の本発明に係る補助ハンドルの斜視図、図3(イ)は図1のX−X線断面図、図3(ロ)は図1のY−Y線断面図、図4は把持部材を裏側から見た斜視図である。
【0013】
本実施形態の補助ハンドルAは、一端部が互いに第一支軸6によって軸着されている一対の等長アーム1a,1bと、該等長アーム1a,1bの各他端部(自由端側)に設けられる把持部材7,7と、一端部が第二支軸19により互いに軸着されていると共に他端部がそれぞれ各等長アーム1a,1bに軸着されている一対の等長リンク14a,14bと、該等長リンク14a,14bの軸支部に軸着された握杆部材21とによって概略構成されている。
【0014】
前記等長アーム1a,1bは、所定の長さを有する平板状の金属製の部材からなり、このうち一方の等長アーム1aの一端部には、断面コ字状の二股状部2が設けられ、他方の等長アーム1bの一端部には、該二股状部2に嵌まる突片3が設けられている。そして、図3(イ)に示すように、二股状部2に開設された軸孔4,4と突片3に開設された軸孔5に第一支軸6が挿通されて、等長アーム1aと等長アーム1bは互いに開閉回動するように軸着されている。また、第一支軸6の上部には、一対の等長アーム1a,1bよりも上方へ突出する支持ピン6a(固定手段)が形成されている。
【0015】
前記把持部材7,7は、上壁7aと該上壁7aの両側縁を略垂直に折曲した一対の側壁7b,7bとによって側面コ字状に形成されている。また、把持部材7,7のそれぞれの上壁7a,7aは、等長アーム1a,1bの他端部(自由端部)に回動自在に軸着されている。さらに、図4に示すように把持部材7の一方の側壁7b下端縁には、該側壁7bと直交するように外側へ折曲された支持片10が設けられており、該支持片10には、細長平板状のロック片12が両側壁7b,7b間の開口8面に沿って回動するように軸着されている。また、把持部材7の他方の側壁7a下端縁は、その一部が延長されていて、その延長部分の内側に切り欠きによる係合溝13が形成されている。そして、この係合溝13は回動されたロック片12の先端部が受け入れられるようになっている。なお、把持部材7,7を後述する車椅子Bのハンドル43に嵌めることによって、補助ハンドルAが車椅子Bに装着されることになる。
【0016】
前記等長リンク14a,14bは、前述した等長アーム1a,1bよりも長さが短い平板状の金属製の部材からなり、このうち一方の等長リンク14aの一端部には、断面コ字状の二股状部15が設けられ、他方の等長リンク14bの一端部には、該二股状部15に嵌まる突片16が設けられている。そして、図3(ロ)に示すように、二股状部15に開設された軸孔17,17と突片16に開設された軸孔18に第二支軸19が挿通されて、等長アーム14aと等長リンク14bは互いに開閉回動するように軸着されている。また、第二支軸19の上部には、一対の等長リンク14a,14bよりも上方へ突出する太径の軸ピン19a(固定手段)が形成されている。さらに、等長リンク14a,14bの各他端部は、それぞれ第三支軸20a,20bにより前記各等長アーム1a,1bに軸着されている。なお、第三支軸20aから第一支軸6までの寸法と、第三支軸20bから第一支軸6までの寸法は、同寸法になっている。すなわち、各等長リンク14a,14bは、前記等長アーム1a,1bに対し第一支軸6を挟んだ等位置に軸着されている。これにより、一対の等長リンク14a,14bは一対の等長アーム1a,1bの回動面に沿って回動し、しかも、一対の等長アーム1a,1bが開いた状態にあると、等長リンク14a,14bと等長アーム1a,1bにより囲まれる図形は菱形になる。
【0017】
前記握杆部材21は、平板状の杆部21aと平板状の握部21bによってT字状に形成されており、そのうち、杆部21aには、その長手方向に沿って係合孔26(固定手段)が等間隔に複数個穿設されている。また、杆部21aの基端部には、平面視コ字状の固定部22が形成されており、該固定部22が前記等長リンク14a,14bの軸着部である第二支軸19の軸ピン19aに横軸25によって軸着されている。これにより、握杆部材21は、軸ピン19aを中心として上下・左右に自在に回動することができる。なお、握杆部材21を等長アーム1a,1bの軸着部である第一支軸6の支持ピン6a側に回動し、握杆部材21の杆部21aに設けられている係合孔26のいずれかを支持ピン6aに嵌めることによって、第一支軸6と第二支軸19の間隔が保持され、等長アーム1a,1bの開き角度が決定される。ちなみに、握杆部材21の杆部21aに複数の係合孔26が設けられているのは、補助ハンドルAを装着する車椅子のハンドル間の寸法が、車椅子の種類や大きさによって異なるため、これらすべてに対応できるようにするためである。
【0018】
次に、本発明に係る補助ハンドルAが使用される車椅子について簡単に説明しておくと、車椅子Bは、図5に示すように平行に起立する両側左右の側枠35,35と、この両側枠35,35を相互に連結する座シート支持枠36とによってフレームが形成されている。そして、左右の側枠35,35間の中央に座シート37が配置されると共に、その後側に上部背もたれシート38が配置され、さらに、フレームの前側下方には足を乗せるフットプレート39が設けられている。また、左右の両側枠35,35の前方下側には、それぞれ小径の前輪40,40が軸着され、左右の両側枠35,35の後側のほぼ中央部分には、それぞれ大径の後輪41,41が軸着されている。また、上部背もたれシート38が張設される左右両側の背もたれ支持管42,42の上端が車椅子Bの後側へほぼ水平に屈曲され、それら屈曲部にハンドル43,43が設けられている。なお、座シート支持枠36は、前後に平行に配置された2本のリンクを一組とし、これらの二組を中央でパンタグラフ状に交差させて枢支連結し、車椅子Bが左右方向に自在に折畳みできるように形成されている。
【0019】
このように構成される車椅子Bは、左右の前輪40,40が水平面内で自在に方向変換可能になっている一方、左右の後輪41,41は、前・後方向へのみ回転しかつ互いに独立して回転し得るようになっている。また、パンタグラフ状の座シート支持枠36を折り畳むことによって、図6に示すように車椅子Bがその前進方向に対して直交する左右方向に折り畳むことができ、コンパクトにして持ち運びが容易に行なえるようになっている。
【0020】
次に、本発明に係る補助ハンドルAの使用方法を説明する。まず、補助ハンドルAをその第一支軸6が使用者の手前側になる向きにして、車椅子Bの左右のハンドル43,43間に位置させる。この時、握杆部材21は、第二支軸19側に傾いた状態にしておく(図1)。次に、左右の把持部材7,7の各開口8,8を車椅子Bの左右のハンドル43,43に挿入する。そして、把持部材7の各ロック片12を回動して係合溝13に係合させて、車椅子Bの左右のハンドル43,43に把持部材7,7をそれぞれ固定させる。この際、一対の把持部材7,7が、車椅子Bのハンドル43,43の前進方向に沿った中心線Oに対して、ほぼ左右均等になるように配置する。次いで、握杆部材21を第一支軸6側へ回動させ、第一支軸6の支持ピン6aに合致する係合孔26に該支持ピン6aを挿通し、握杆部材21を固定する(図2)。このとき、握杆部材21の杆部21aが、車椅子Bの前進方向に沿った中心線O上、すなわち、第一支軸6と第二支軸19を結ぶ直線上に配置される。そのため、図7に示すように、使用者が片手で握杆部材21の握部21bを握り、車椅子Bを後から前へ押すと、車椅子Bは、その中心軸Oに沿って押されることになるため、その前進方向に沿ってぶれることなく真直ぐに走行することになる。他方、車椅子Bの走行を停止させたい時は、使用者が握っている握杆部材21を引っ張るようにすれば容易に停止させることができる。なお、車椅子Bの進行方向を変えたい場合には、握杆部材21を水平面内で右または左へ回動させることにより容易に曲がることができる。
【0021】
以上のとおりであるから、例えば、2台の車椅子B,Bを使用者の前方両側に1台ずつ配置し、使用者が左右の手でそれぞれの補助ハンドルAの握杆部材21,21を握り、同時にこれら2台の車椅子B,Bを押した場合でも、車椅子B,Bは、ぶれることなくまっすぐ安定した状態を保ちながら走行することになる。また、例えば、一方の手に荷物を持ち、片手で車椅子Bを走行させなければならない場合でも、車椅子Bは、まっすぐ安定した状態を保ちながら走行することになる。なお、車椅子Bを使用しないで折り畳む場合でも、補助ハンドルAをそのまま取着しておくことができる。すなわち、補助ハンドルAの握杆部材21を支持ピン6aから抜き、握杆部材21を回動させて元の位置に戻した後、図6に示すように、車椅子Bを折り畳むと、車椅子Bの両ハンドル43,43が近づくにつれ、一対の等長アーム1a,1b及び一対の等長リンク14a,14bも回動して閉じ、補助ハンドルAがコンパクトになって折り畳まれた状態のハンドル43,43内に収まることになる。
【0022】
図8、図9は、第2実施の形態に係る補助ハンドルA1の斜視図である。なお、第2実施の形態の補助ハンドルA1は、前記第1実施の形態の補助ハンドルAとほとんどの構成要素が共通しているので、同じ構成要素には同一符号を付して説明する。第2実施の形態に係る補助ハンドルA1は、一対の等長アーム1a,1bを互いに軸着する第一支軸6の上部に太径の軸ピン6b(固定手段)が設けられており、この軸ピン6bに握杆部材21の固定部22が横軸25によって軸着されている。また、補助ハンドルA1は、一対の等長リンク14a,14bを互いに軸着する第二支軸19の上部に支持ピン19b(固定手段)が設けられている。したがって、この補助ハンドルA1の握杆部材21は、等長アーム1a,1bの第一支軸6を支点として等長リンク14a,14bの第二支軸19側へ回動させ、該握杆部材21の係合孔26を支持ピン19bに挿入して係合することになる。そのため、補助ハンドルA1を車椅子Bに装着する場合、補助ハンドルA1の第二支軸19が使用者の手前側になる向きにする。その他の装着手順は、第1実施の形態と同様である。なお、この補助ハンドルA1も装着すると、握杆部材21の杆部21aが、車椅子Bの前進方向に沿った中心線上、すなわち、第一支軸6と第二支軸19を結ぶ直線上に配置されるため、使用者が片手で車椅子Bを押しても、車椅子Bは、ぶれることなくまっすぐ安定した状態を保ちながら走行することになる。
【0023】
図10は、第3実施の形態に係る補助ハンドルA2の裏面図である。図11は、図10のX−X線拡大断面図である。なお、第3実施の形態の補助ハンドルA2についても、第1実施の形態と共通する構成要素については、同一符号を付して説明する。補助ハンドルA2の等長アーム1a,1bは、所定の長さを有する金属製のパイプからなり、等長アーム1a,1bのそれぞれの一端部はプレスされて平板状部1c,1cが形成されている。そして、等長アーム1a,1bの平板状部1c,1cを互いに重ね合わせ該平板状部1c,1cに開設された軸孔1d,1dに第一支軸60が挿通されて、等長アーム1aと等長アーム1bは互いに開閉回動するように軸着されている。また、第一支軸60は、一対の等長アーム1a,1bの下方に突出しており、その突出部分に筒状の間隔保持部材61を介して後述する握杆部材21が水平方向に回動自在に軸着されている。
【0024】
補助ハンドルA2の把持部材55,55は、U字状に形成されており、その上部一側端に突出片が延設され、該突出片にベルト56が装着されている。また、把持部材55,55のそれぞれの上部は、等長アーム1a,1bの他端部(自由端部)に回動自在に軸着されている。そして、把持部材55,55を手押し車のハンドルに嵌めることによって、補助ハンドルA2が手押し車に装着されることになる。
【0025】
補助ハンドルA2の等長リンク14a,14bは、前述した等長アーム1a,1bよりも長さが短い金属製のパイプからなり、等長リンク14a,14bのそれぞれの両端部にはプレスによって平板状部14c,14c,14d,14dが形成されている。そして、等長リンク14a,14bの一端側の平板状部14c,14cを互いに重ね合わせ、該平板状部14c,14cに開設された軸孔に第二支軸70が挿通されて、等長リンク14aと等長リンク14bは互いに開閉回動するように軸着されている。また、第二支軸70は、一対の等長リンク14a,14bの下方に突出し、該下方部分が後述する握杆部材80の係合孔82に挿入する支持ピン70aになっている。また、支持ピン70aの下部外周面には、係合溝70bが周設されており、該係合溝70bよりも下方部分は先端に向かうに従い窄まるテーパー面になっている。さらに、等長リンク14a,14bの各他端の平板状部14d,14dは、それぞれ第三支軸20a,20bにより前記各等長アーム1a,1bに軸着されている。なお、第三支軸20aから第一支軸6までの寸法と、第三支軸20bから第一支軸6までの寸法は、同寸法になっている。すなわち、各等長リンク14a,14bは、前記等長アーム1a,1bに対し第一支軸60を挟んだ等位置に軸着されている。
【0026】
補助ハンドルA2の握杆部材80は、平板状の杆部80aとパイプ状の握部80bによってT字状に形成されており、そのうち、杆部80aの基端部は、等長アーム1a,1bの第一支軸60に軸着されている。また、杆部80aには、その長手方向の略中央に2つの係合孔82,82(固定手段)が貫設されており、さらに、杆部80aの下面であって係合孔82,82よりも基端部側には、下方へ突出する規制ピン83が設けられている。また、杆部80aには、握杆部材80のロック機構が設けられている。すなわち、杆部80aの下面には、付勢手段としてのコイルバネ84によって杆部80aの基端部側に付勢されている薄板状のロック部材85が摺動自在に配設されている。このロック部材85には、長孔85aが穿設されており、この長孔85aに規制ピン83が挿入されて、ロック部材85の移動範囲が規制されている。また、ロック部材85には、杆部80aの2つの係合孔82と同径の係止孔86が穿設されており、該ロック部材85の係止孔86と杆部80aの係合孔82が若干ずれるようにロック部材85を配置している。さらにロック部材85の握部80b側の一端に摘片85cが設けられている。
【0027】
次に、本発明に係る補助ハンドルA2の使用方法を説明する。まず、補助ハンドルA2をその第2支軸70が使用者の手前側で、且つ握杆部材80が下側になる向きにして、手押し車の左右のハンドル間に位置させる。この時、握杆部材80は、第一支軸60側に位置させておく。さらに、左右の把持部材55,55を手押し車の左右のハンドルに挿入すると共に、左右のベルト56を手押し車の左右のハンドルに巻回して固定する。次いで、握杆部材80を図10に示す矢印方向へ回動させ第二支軸70側に位置させる。そして、握杆部材80の2つの係合孔82,82のうち、第二支軸70の支持ピン70aに合致する係合孔82を選択して該支持ピン70aを挿通し、握杆部材80を上方へ持ち上げるようにすると、ワンタッチで支持ピン70aと係合孔82が嵌ることになり、握杆部材80が固定(ロック)される。ここで、握杆部材80がワンタッチで固定(ロック)される機構について、図11を参照しながら説明しておく。杆部80aの係合孔82とロック部材85の係止孔86は、共に同径であるが、両者が互いに重ならないよう若干ずらして配置されている。そのため、係合孔82に挿入した支持ピン70aの先端部分がロック片85の係止孔85bに到達し、支持ピン70aのテーパー面が係止孔85bに接触すると、テーパー面に係止孔85bの縁が押されてロック部材85をその付勢に抗して握部80b側へ移動させることになる。そして、支持ピン70aのテーパー面が係止孔85bを通過し、支持ピン70aの係合溝70bに係止孔85bが合致すると、ロック片85が再びコイルバネ84の付勢によって握杆部材80の基端部側へ移動する。その結果、係止孔85bが支持ピン70aの係合溝70bに嵌り、握杆部材80はワンタッチで第二支軸70に固定されることになる。一方、握杆部材80を第二支軸70から外す場合には、ロック部材85の摘片85cを握部80b側へ引けば、両者のロックが簡単に解除される。
【0028】
前述のとおり、第3実施の形態に係る補助ハンドルA2には、握杆部材のロック機構を設けたことから、さらに次のような効果が付加された。すなわち、補助ハンドルA2を装着した手押し車の走行中に、手押し車が何らかの衝撃を受けてしまったとしても、第二支軸に固定されている握杆部材が外れてしまうような問題が解消されることになる。また、補助ハンドルA2を手押し車に装着した際、補助ハンドルA2の下側に握杆部材を位置させることが可能になったため、手押し車の走行中に使用者の手が誤って握杆部材にあたって第二支軸に固定されている握杆部材が外れてしまうような問題も解消されることになる。
【0029】
図10は、本発明に係る補助ハンドルAをベビーカーに適用した状態を示すものである。ここで、ベビーカーCの構造を簡単に説明すると、該ベビーカーCは、平行に起立する両側左右の側枠45,45を備えている。そして、両側枠45,45間の前側下部に座シート46が配置され、両側枠45,45間の後側に該座シート46と連続する背もたれ部47が配置されている。また、両側枠45,45から後側上方へ斜めに延びる左右一対の傾斜管48,48の上端同士を繋ぐようにして、平面コ字状のハンドル49が配設されている。50は、側枠45,45の前後位置に配設される車輪である。
【0030】
補助ハンドルAをベビーカーCに取り付ける場合も、車椅子Bの場合と同様にして左右の両把持部材7,7をそれぞれハンドル49,49に左右均等になるように取着し、次いで握杆部材21の係合孔26に支持ピン6aを挿通し、握杆部材21を固定させればよい。
【0031】
なお、本実施の形態では、補助ハンドルA、A1、A2がいずれも金属製である例を示したが、これに限られず、合成樹脂等、他の材質を採用することももちろん可能である。
【0032】
また、本発明の構成要素である把持部材の形状も本実施の形態に示したものに限られず、手押し車のハンドルに取着できるものであれば、その形状は任意に選択可能である。
【0033】
さらに、握杆部材を第一支軸と第二支軸とに亘り配置固定する手段も、実施形態に示した手段に限られない。すなわち、握杆部材が第一支軸と第二支軸とに亘り配置固定されるようになっていれば、その手段は、種々選択可能である。
【0034】
また、第3実施の形態に示した握杆部材のロック機構も、実施形態に示した以外の手段を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1a 等長アーム
1b 等長アーム
6 第一支軸
6a 固定手段(支持ピン)
7 把持部材
14a 等長リンク
14b 等長リンク
19 第二支軸
19a 固定手段(軸ピン)
21 握杆部材
22 固定手段(固定部)
25 固定手段(横軸)
26 固定手段(係合孔)
43 ハンドル
49 ハンドル
A 補助ハンドル
A1 補助ハンドル
B 手押し車(車椅子)
C 手押し車(ベビーカー)
O 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が第一支軸により互いに軸着される一対の等長アームと、前記一対の等長アームの各他端部に設けられ手押し車のハンドルに取着される把持部材と、一端部が第二支軸により互いに軸着されると共に他端部がそれぞれ前記各等長アームにおける前記第一支軸を挟んだ等位置に軸着される一対の等長リンクと、前記第一支軸と前記第二支軸とを結ぶ直線を含む垂直面内に設けられると共に該第一支軸と該第二支軸に架け渡し可能に設けられ手押し車を押す際に手で操作する握杆部材と、前記握杆部材を前記第一支軸と前記第二支軸とに亘り配置固定する固定手段と、を備えたことを特徴とする手押し車の補助ハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−196434(P2012−196434A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49147(P2012−49147)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(500440278)株式会社丸協製作所 (1)
【Fターム(参考)】