説明

抄造容器及びその製造方法

【課題】 従来、嵌合する蓋を有するプラスチック製の包装容器が広く用いられているが、焼却の際に有害物質の発生や環境汚染の問題があり、焼却しても安全な包装容器が望まれていた。
【解決手段】 蓋体を嵌合できるように形成された構造を有する抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成された抄造容器。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抄造容器とその製造方法に関する。更に詳しくは、抄造成形物からなり、蓋体を嵌合できるよう形成された抄造容器及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プラスチック製の包装容器は、製造が容易で、大量生産に向いていることから広く用いられてきたが、焼却による環境汚染の原因となり、ダイオキシン等の有害物質を発生することから、焼却条件等の見直しが行われると共に、焼却しても有害物質の発生しない容器への転換が求められている。また、プラスチック製の食品用の包装容器は、用いるプラスチックの軟化点、溶融点が低いために、火に近づけたり、電子レンジ等で加熱した時に、変形したり、溶融したりして火傷の原因となる危険性がある。
【0003】これに対し天然パルプを原料とする容器としては、パルプモールディング法による抄造容器が知られ、有害物質を発生することなく焼却処分を行うことができ、環境を汚染することもなく、また、耐熱性が高く、熱による変形等も起こらず、極めて安全性の高い容器として知られている。しかしながら、抄造容器は、その製造工程が抄紙工程と加熱乾燥・プレス工程とからなり、抄紙工程で成形された金網の構造上から、また、プレス工程にて金型を用いているため、上記包装容器底面に対する壁面の立ち上がり角度を、容器内側に90度未満にすることは不可能であった。また、抄造容器の側壁面上部の仕上がりが粗雑で、蓋を装着した場合に容器との密着性が悪かった。従って、上記抄造容器はプラスチック製のタッパーウエアーや密閉容器と比較すると、蓋との密着性が悪く、調理食品、加工食品、貯蔵食品等の食品を封入する容器として用いることはできず、用途が極めて限定されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、上記の問題を解決し、パルプ原料から得られる抄造容器であって、該抄造容器の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるようにし、それに用いる蓋体は上記抄造容器に嵌合するよう形成されているので、上記抄造容器に嵌合密接して、調理食品、加工食品、貯蔵食品等の食品を密封する包装容器として用いることができ、更に上記抄造容器は焼却処理を行っても有害物質の発生もなく、環境を汚染することもなく、また、耐熱性が高く、極めて安全性の高い包装容器として利用することができる抄造容器とその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本願発明は、(1) 蓋体を嵌合できるように形成された構造を有する抄造容器であって、該抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成されていることを特徴とする抄造容器、(2) 抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成されている抄造容器を、(1)上記抄造容器の外形に合わせて成形された金網の上に吸引脱水してパルプ液よりパルプ成分を抄き取り、湿潤成形体を得る工程、(2)上型と下型とよりなる加熱成形型の該下型に、上記湿潤成形体を金網と共に填め込み、上記抄造容器の嵌合部の内側面に接する位置に弾性体を設けた上型を用いて、加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器を得る工程、の(1)及び(2)の工程を順次行って抄造容器を製造することを特徴とする抄造容器の製造方法,(3)抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成されている抄造容器を、上型と下型とよりなる加熱成形型を用いて、(1)上記抄造容器の外形に合わせて成形された金網を上記下型に填め込み、上記金網上に吸引脱水してパルプ液よりパルプ成分を抄き取る工程、(2) 上記抄造容器の嵌合部の内側面に接する位置に弾性体を設けた上型を用いて、加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器を得る工程、の(1)及び(2)の工程を連続して行うことにより抄造容器を製造することを特徴とする抄造容器の製造方法、及び(4)弾性体の上面にスペーサーを設けた上型を用いて成形を行う請求項2又は3記載の抄造容器の製造方法、を要旨とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本願発明を実施例に基づき詳細に説明する。図1は、本願発明の抄造容器1の実施例を示す断面図である。図1には、抄造容器1と該容器に嵌合するよう形成された蓋体5が示され、上記抄造容器1の嵌合部2の内側面3の立ち上がり角度4が、水平面に対し90度未満である例を示している。
【0007】本願発明の抄造容器1は、図1に示すように、上記抄造容器1の嵌合部2の内側面3の立ち上がり角度4が、水平面に対し90度未満であることが必要である。上記嵌合部2は、別に形成される蓋体5の嵌合部6と嵌合するように形成されており、上記嵌合部2に形成される上記角度4は該嵌合部2の内側面3と水平面との間に形成される角度をいい、該角度4が90度未満であることが必要である。上記水平面は、一般的に水準器等を用いて得られる水平面をいい、本願発明においては、上記抄造容器1の底面7が平面である場合には、該底面7を採用することもできる。底面7を用いる場合には、該底面7の内底面を用いることもできる。
【0008】上記立ち上がり角度4は、90度未満となるように設けられるが、90度未満から80度程度までが用いられ、嵌合する蓋体5が抄造容器1に対し、無理なく嵌合することができ、且つ、嵌合後蓋体5が抄造容器1に密接していることが望ましく、90度未満〜85度程度であるのが好ましい。さらに、上記角度4が更に小さくなると、嵌合の際の抵抗が大きくなり、嵌合しても、外れ難くなったり、また、嵌合が不可能となる。
【0009】本願発明の抄造容器1は、天然木又は繊維質の多い植物より得られるパルプ、及び上記パルプより製造された製紙等の古紙より再生して得られるパルプを原材料として得られる。天然木としては、従来パルプ原料に用いられる木がいずれも利用でき、えぞ松、とど松、赤松等の針葉樹、ぶな、なら、かし等の広葉樹、及び輸入原木として、ダグラスファー、マングローブ、ユーカリ等が挙げられる。また、繊維質の多い植物及び原としては、ワラ、葦、バガス、リンター等が挙げられる。
【0010】古紙としては、新聞紙、雑誌、板紙、包装箱、その他印刷物等を回収し、脱墨、脱樹脂して得られる再生パルプを用いることができる。再生パルプは、100%単独でも用いることができるが、新しいパルプに混合して用いることもできる。
【0011】本願発明の抄造容器1は、該抄造容器1に物を収納し、それに蓋体5を嵌合して包装容器として用いるものであり、包装の対象には食品、その他があり、食品としては、少量の総菜を入れる場合、魚等の長いものを入れる場合等様々あり、上から見た形状として、円形、楕円形、四角形、長方形、六角形、八角形等が挙げられるが、特に形状によって限定されるものではない。また、横から見た形状も特に限定されない。抄造容器1の高さより蓋体5の高さが低い場合、抄造容器1の高さより蓋体5の高さが2〜4倍もある場合等様々である。抄造容器1の底面6の形状も、底面全面が平坦の場合、図1に示すように底面の中心部周辺が底面6より盛り上がっている場合等あり、特に限定されない。蓋体5の形状も、台形状、平板状、半円形状等種々あり特に限定されない。
【0012】本願発明の抄造容器1には、これに嵌合するように形成された蓋体5を用いることができる。該蓋体5は、上記抄造容器1の嵌合部2の内側面3の立ち上がり角度4が、水平面に対し90度未満となっている抄造容器1と嵌合するように形成されており、嵌合後は簡単に外れないように、蓋体5の嵌合部6が抄造容器1の嵌合部2に、しっかりと嵌合していることが必要である。そのためには、図1に示すように、上記蓋体5の嵌合部6の外側面3a(或いは内側面)の立ち上がり角度4aが、水平面に対し90度未満となるよう形成されているのが好ましく、両立ち上がり角度が一致しているのがより好ましい。
【0013】上記蓋体5は、抄造成形物より成形されたものであっても、また、プラスチック成形物であってもよく、いずれの場合も上記立ち上がり角度4aが90度未満であるのが、嵌合面が密接し、且つ強固に嵌合できるので好ましい。
【0014】上記蓋体5の成形は、該蓋体5が抄造成形物である場合には、上記抄造容器1に用いる原材料をそのまま用いることができ、また、上記抄造容器1と同様に成形することにより得ることができる。また、プラスチック成形物を用いる場合には、従来公知のプラスチック成形法によって得られる。上記蓋体5の成形に用いるプラスチック原料としては、熱可塑性プラスチックが好ましく、透明な樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂等が挙げられ、また、不透明なものとしては、耐衝撃性ポリスチレン、フィラー入りポリプロピレン等が挙げられる。
【0015】本願発明の抄造容器1を製造するには、まずパルプ液からパルプ成分を金網等の上に抄き取り、押圧又は吸引脱水し、次いで加圧又は減圧下で加熱乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器1が得られる。本願発明の方法においては、通常パルプモールディング法で用いられる装置の多くがそのまま利用することができるが、下記のような装置上の改良を行うことが必要である。つまり、金網は成形して得られる抄造容器1の外形に合わせて予め成形しておくことが必要であり、また、従来のプレス成形用金型のように上型と下型がすべて金属から形成されている場合に、下型11の内側壁面15の立ち上がり角度が水平面に対し90度未満であると、上型を下型に填め込むことができないので、上型の填め込み及び取り外しが自由となるように形成しておくことが必要である。
【0016】本願発明の抄造容器1の製造方法で用いる装置上の、改良点を下記■〜■に示し、これについて説明すると、■得ようとする抄造容器1の外形に合わせた金網の型10を成形しておくことは、正確な寸法の抄造容器1を得るには、パルプ液からパルプ成分を抄取して得られるパルプの湿潤成形物17の形状は、得ようとする抄造容器1により近い物が好ましく、そのためには、得ようとする抄造容器1の外形に合わせた金網10を成形して用いることが必要となる。金網の成形には、図2に示すように、専用の上下の金型20、21により、金網10を加圧成形して図3に示すように、成形された金網10を得る。また、上記金型20、21により成形して得られた上記金網10をそのまま用いることもできるが、上位金網10を使用し、パルプ成分を抄き取る際に、該金網10を四方に拡げてパルプ成分が金網上に載り易いようにして用いることもできる。蓋体5が抄造成形物から形成される場合にも、抄造容器1と同様に蓋体5の外形に合わせた金網を形成して用いることが必要である。
【0017】■下型11は、金属製であり、図6に示すように、プレス成形する抄造容器1の外形に合わせた型に成形されている。つまり、プレス成形の受け手である下型11の型は固定しており、抄造容器1の嵌合部2の外側面の接する下型11の側壁面15の立ち上がり角度は、抄造容器1の内側面3の立ち上がり角度4と同じ90度未満となるよう下型11を成形しておくことが好ましい。
【0018】■上型12は、図6に示すように、金属製の上型12a、12bの2体よりなり、両者はプレス圧をスムースに伝達するようにショルダーボルト19を用いて連結されており、上型12aと12bの間には間隙が設けられている。そして上型12bが上型12aに接している面の該上型12aの周囲には、該周囲を囲繞してスペーサー14と弾性体13が設けられている。該スペーサー14は、設けなくとも成形はできるが、設ける場合には該弾性体13と上型12aに挟まれ、弾性体13の上部にくるように設けるのが好ましい。上型12には、該上型12に圧力を加えていくと、弾性体13は上型12aと下型11の両方から圧力が加わり、側壁面15の方向に押し出されるようになり、該側壁面15に当接するように設けられている。
【0019】図6は、上型12を下型11に填め込む前の状態を、また、図7は、下型11に上型12を填め込んだ時の状態を、各々示している。また更に、図8は、下型11に図4に示す湿潤成形物17を金網10に載せて填め込み、その上から上型12を填め込み、加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行っている時の状態を示している。
【0020】この時上型12に設けた弾性体13は、図7に示すように、上型12を下型11に填め込む時に該下型11の入口から支障なく入るようになっており、更に、上型12は成形終了後も容易に下型11から外すことができるようになっている。上型12に圧力を加えると、図8に示すように、弾性体13は下型11の側壁面15の方向に押し出されて移動し、金網10と湿潤成形体17を押圧し、側壁面15に当接して、圧縮成形が行われ、図9に示すような抄造容器1が得られる。この時該抄造容器1の嵌合部2の内側面3には、該内側面3の立ち上がり角度4が、水平面に対し90度未満となるよう形成されている。
【0021】上記弾性体13は、下型11の内壁面全面に当接するように設けられていても、また、内側壁の全面に当接するように設けられていてもよい。また更に、得られる抄造容器1の嵌合部2の内側面3にのみ当接するように設けられていてもよい。
【0022】上記弾性体13には、ゴム製弾性体、プラスチック製高分子弾性体が用いられ、これらのうち、圧縮性の高い物が好ましい。ゴム製弾性体としては、天然ゴム、合成ゴム等を原材料として得られ、圧縮性ゴムが好ましい。圧縮性ゴムとしては、シリコンゴム等が挙げられる。また、プラスチック製高分子弾性体としては、シリコンゴム発泡樹脂等の高発泡性樹脂が挙げられる。
【0023】上記弾性体13を設ける時には、該弾性体13と上型12aの間に、金属製のスペーサー14を設けることができる。該スペーサー14は、図6〜8に示すように弾性体13の上部に、上型12aと挟まれる形に設けるのが好ましい。スペーサー14は、金属からなっており、金属としては、アルミニウム、銅、真鍮、その他の銅合金、鉛等が挙げられるが、アルミニウム、銅が好ましい。
【0024】上記スペーサー14を用いることによって、上記弾性体13だけでは得られなかった抄造容器1の表面が木目細かく仕上げられ、特に該抄造容器1の内壁面上部の上型12aとの接触する面付近に生じる粗雑な表面の形成が防止でき、均一な面が得られる。更に、スペーサー14を用いることにより、上記立ち上がり角度4を精度よく設定することができる。
【0025】上型12について、上記例で2体よりなる構造について述べたが、上型12が、上型12aと上型12bと分離せず、一体になった上型12を用いることもできる。図6において上型12aと上型12bに分離せず、1体の上型12を形成している場合に、スペーサー14及び弾性体13は、上記2体型の例と全く同様に設けて用いることができる。上記1体型の場合、プレス加工の際の圧力の加わり方が、瞬間的に加わるために、2体型に比較して成形物の厚みにバラツキ生じることがあるので、2体型の方が好ましい。
【0026】製造の順序を説明すると、(1)成形した金網10上にパルプ液からパルプ成分を抄き取り、吸引又は押圧・脱水して湿潤成形体17を形成する(図4、5)、(2)金網10に湿潤成形体17を載せたまま下型11に填め込む、(3)弾性体13を設けた上型12を上記下型11にはめ込む、(4)加圧・加熱して残りの水分を除き、同時にプレス成形して整形する。成形終了後、圧力を下げることにより、弾性体13は元の形状に戻り、上型12を下型11より外し、下型11より成形物を取り出して、本願発明の抄造容器1が得られる。
【0027】本願発明の抄造容器1 を製造する第1の方法は、上記方法において、(1)の工程を分離して行い、(2)〜(4)の工程を、1工程として行う2工程によって行う。(1)の工程は、図4に示すように、吸引又は押圧脱水する脱水用専用型22を用いて、該型22の上に金網10を置き、吸引しながらパルプ液を供給し、該金網10上にパルプ成分を抄き取る。次いで、金網10のまま、一組の上型12と下型11とからなる加熱成形型の下型11に填め込み、上記した改良を施した上型12を用い、図8に示すように、加圧・加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器1を得る。該下型11には、プレス加工用の加圧装置以外に、残存水分の除去を行うことができるように、加熱装置と水・水蒸気の通路16を設けておくことが必要である。
【0028】本願発明の抄造容器1 を製造する第2の方法は、上型12と下型11とよりなる加熱成形型を用いて、上記の工程をすべて行うものである。まず、予め成形した金網10を下型11に填め込み、該金網10の上から吸引しながらパルプ液を供給して該金網上にパルプ成分を抄き取る。次いで、上記下型11の上から上記改良を施した上型12を填め込み、図8に示すように、加圧下に加熱して乾燥を行い、同時にプレス成形を行って抄造容器1を得る。
【0029】上記方法においては、それぞれ下記のような装置を必要とする。第1の製造方法では、図4に示すような脱水用専用型22を用いるが、該型22には水を吸引する装置及び、水の排水通路23等が備えられており、速やかにパルプ液から水を除去することができる。上記加熱成形型において、上型12には加熱装置,減圧装置、蒸気の通路及びプレス(加圧)装置を、また、下型11には加熱装置,減圧装置及び蒸気の通路を、各々設けることができる。加熱成形型には、上型・下型の両型に加熱装置を備えておくのが好ましい。そうすることにより、乾燥後に残存している水分があれば、加圧しながら加熱して除去することができる。加熱装置は、予め型をくり抜いて設けた穴に、棒ヒーター又はパネルヒーターを埋め込んで設けられる。
【0030】第2の製造方法には、吸引脱水装置と、乾燥時の水蒸気を除去するための装置が必要であるが、これらは下型11に水又は蒸気の除去の通路として、両方法に共通して用いることができる。第2の方法の型には、上型12には、排水装置(蒸気通過装置を兼ねる。)、加熱装置,減圧装置及びプレス(加圧)装置を、また、下型11には排水装置(蒸気通過装置)、加熱装置及び減圧装置を、各々設けることができる。
【0031】蓋体5が抄造成形体からなる時には、該蓋体5は上記抄造容器1を製造する2方法のいずれかによって製造することができる。蓋体5の製造は、抄造容器1と同様に金網10の型を成形することから始まり、上記蓋体5を成型するための上下の型を用意し、抄紙、乾燥、プレス成形を行って、上記抄造容器1に嵌合する蓋体5が得られる。該蓋体5の形状は、容器本体2に嵌合するためには、図1に示すように、蓋体5の嵌合部6の外側面3aの立ち上がり角度4aが、水平面に対し90度未満となるようにし、抄造容器1の立ち上がり角度4と一致しているのが好ましい。
【0032】また、上記蓋体5がプラスチック成形体よりなる時には、通常プラスチックの成形に用いられプレス成形機又は真空圧空成形機により製造することができる。抄造容器1が抄造成形体から形成されていても、プラスチック製の蓋体5は、従来の嵌合する容器の製造とはなんら異なるところく、製造し用いることができる。通常店頭にで密封して並べられる食品等の場合、中味が見える方が好ましく、そのためには透明なプラスチック製の蓋体5が用いられることが多い。
【0033】
【発明の効果】本願発明の抄造容器は、抄造成形物より形成され、上記抄造容器の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満であることにより、蓋体とよく嵌合し、食品等の商品を密封する容器に用いて、輸送上及び衛生上、安心して取り扱うことができるという効果が得られる。
【0034】本願発明の抄造容器は、抄造成形物より形成されているために、焼却によって有害物質を発生しないので、焼却のための特別な装置を必要とすることもなく、また、焼却場の周辺及び環境を汚染することもなく、生じる焼却灰の処理も容易に、且つ、安全に処理することができるという効果を有する。
【0035】本願発明の抄造容器は、耐熱性が高く、且つ熱伝導性が低いため、従来のプラスチック製のように加熱により変形したり、溶融することがなく、電子レンジ等で加熱した場合にも、手を火傷したりすることなく安心して取り扱うことができ、更にそのまま食器として用いることもできて、極めて安全な容器及び食器として利用できるという効果が得られる。
【0036】本願発明の抄造容器の製造方法は、抄造成形体より形成され、抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満である抄造容器を、従来の抄造容器の製造装置に、(1)得られる抄造容器の外形に合わせて成形された金網上にパルプ液よりパルプ成分を抄き取り、パルプ成分を金網と共に下型に填め込み、(2)上型と下型とよりなる加熱成形型の該下型を、上記抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満である容器本体の外形に合わせた型に形成し、及び(3)上型に、得られる抄造容器の内側面に接する位置に弾性体を設けて製造を行うことにより、従来得られなかった抄造成形体よりなる上記抄造容器を製造することができるという効果が得られる。
【0037】抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満である抄造容器を、上型と下型とよりなる加熱成形型を用いて、(1)上記抄造容器の外形に合わせて成形した金網を上記下型に填め込み、上記金網上に吸引脱水してパルプ液よりパルプ成分を抄き取る工程、(2) 上記抄造容器の内側面に接する位置に弾性体を設けた上型を用いて、加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器を得る工程、の(1)及び(2)の工程を連続して行うことによって、従来得られなかった抄造成形体よりなる上記抄造容器を得ることができると共に、更に、従来の製造方法において必要とされた吸引脱水装置、乾燥装置を組み込んで一体化した装置により製造することにより、装置に要する敷地も設備投資も少なくて済み、人手も省力化することができ、経済的に有利に、上記抄造容器を製造できるという効果が得られる。
【0038】上記抄造容器を製造する方法において、上型の成形される抄造容器の内側面に接する位置に弾性体を設けた上型を用いているが、該弾性体の上面にスペーサーを設けた上型を用いて成形を行うことによって、表面がきめ細かく仕上げた抄造容器、特に該抄造容器の内側面上部の成形部に生じる粗雑な表面の形成されない、滑らかな面の抄造容器を製造することができる。更に、スペーサーを用いることによって、形成された抄造容器の嵌合部に設けられる立ち上がり角度の精度を向上させることができ、正確な嵌合部を有する抄造容器を製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の抄造容器の一例を示す断面図である。
【図2】本願発明の抄造容器の製造方法で用いる金網を成形する型及び成形前の金網の概略を示す断面図である。
【図3】本願発明の抄造容器の製造方法で用いる金網を成形する型を用いて得られる成形後の金網の概略を示す断面図である。
【図4】本願発明の抄造容器の製造方法で用いる脱水用専用型に金網を填め込み、該金網上にパルプ成分を抄き取った状態の概略を示す断面図である。
【図5】本願発明の抄造容器の製造方法で図4で得られる湿潤成形体と金網の概略を示す断面図である。
【図6】本願発明の抄造容器の製造方法の加熱成形型の下型に上型を填め込む前の状態の概略を示す断面図である。
【図7】本願発明の抄造容器の製造方法の加熱成形型の下型に上型を填め込んだ状態の概略を示す断面図である。
【図8】本願発明の抄造容器の製造方法の加熱成形型の上型と下型の間に、湿潤成形体と金網を填め込んで加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行っている状態の概略を示す断面図である。
【図9】本願発明の抄造容器の製造方法により得られた容器本体の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 抄造容器
2 嵌合部
3 内側面
4 立ち上がり角度
10 金網
11 下型
12 上型
13 弾性体
17 湿潤成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蓋体を嵌合できるように形成された構造を有する抄造容器であって、該抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成されていることを特徴とする抄造容器。
【請求項2】 抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成されている抄造容器を、(1)上記抄造容器の外形に合わせて成形された金網の上に吸引脱水してパルプ液よりパルプ成分を抄き取り、湿潤成形体を得る工程、(2)上型と下型とよりなる加熱成形型の該下型に、上記湿潤成形体を金網と共に填め込み、上記抄造容器の嵌合部の内側面に接する位置に弾性体を設けた上型を用いて、加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器を得る工程、の(1)及び(2)の工程を順次行って抄造容器を製造することを特徴とする抄造容器の製造方法。
【請求項3】 抄造容器の嵌合部の内側面の立ち上がり角度が、水平面に対し90度未満となるよう形成されている抄造容器を、上型と下型とよりなる加熱成形型を用いて、(1)上記抄造容器の外形に合わせて成形された金網を上記下型に填め込み、上記金網上に吸引脱水してパルプ液よりパルプ成分を抄き取る工程、(2) 上記抄造容器の嵌合部の内側面に接する位置に弾性体を設けた上型を用いて、加圧加熱して乾燥を行うと同時にプレス成形を行って抄造容器を得る工程、の(1)及び(2)の工程を連続して行うことにより抄造容器を製造することを特徴とする抄造容器の製造方法。
【請求項4】 弾性体の上面にスペーサーを設けた上型を用いて成形を行う請求項2又は3記載の抄造容器の製造方法。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−2043(P2001−2043A)
【公開日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−174251
【出願日】平成11年6月21日(1999.6.21)
【出願人】(593199460)エヌケー工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】