把持用センサ及びロボットハンド駆動制御装置
【課題】部品点数を削減することのできる把持用センサ及びロボットハンド駆動制御装置を提供する。
【解決手段】把持用センサ10は、厚肉部14に取り囲まれた空洞部16と、空洞部16を架橋して厚肉部14上に形成されたメンブレン18を有する基板12と、メンブレン18の一面12a上に、下部電極32、圧電体膜34、上部電極36の順に積層形成された圧電素子30と、を備える。互いに電気的に分離された複数の圧電素子30のうち、一部の圧電素子30の上部電極36上に、電気絶縁性材料からなる突起部38が形成され、突起部38を有する圧電素子30は、垂直圧力を検出するための垂直圧力検出素子40とされている。また、垂直圧力検出素子40とは別の圧電素子30として、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子42を有し、該超音波素子42は、少なくとも基板12の空洞部16上に設けられている。
【解決手段】把持用センサ10は、厚肉部14に取り囲まれた空洞部16と、空洞部16を架橋して厚肉部14上に形成されたメンブレン18を有する基板12と、メンブレン18の一面12a上に、下部電極32、圧電体膜34、上部電極36の順に積層形成された圧電素子30と、を備える。互いに電気的に分離された複数の圧電素子30のうち、一部の圧電素子30の上部電極36上に、電気絶縁性材料からなる突起部38が形成され、突起部38を有する圧電素子30は、垂直圧力を検出するための垂直圧力検出素子40とされている。また、垂直圧力検出素子40とは別の圧電素子30として、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子42を有し、該超音波素子42は、少なくとも基板12の空洞部16上に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持用センサ、及び、該把持用センサを備えるロボットハンド駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドなど把持対象物を把持する際に用いられる把持用センサとして、例えば特許文献1に示されるように、距離センサと触覚センサを備えるものが知られている。
【0003】
また、触覚センサとしては、例えば特許文献2に示す形態のものが知られている。特許文献2に示される触覚センサは、基板上に、基板側から順に配置された第1の層及び第2の層を含む積層部と、第1の層及び第2の層を第2の層側に曲げることによって形成された起立部と、起立部の変形を検出するための検出手段を有する。積層部及び起立部は、それぞれ、互いに格子定数が異なる複数の層を含み、第1の層及び第2の層は、複数の層における格子定数の差によって生じた力によって曲げられている。また、積層部及び起立部は被膜によって覆われており、被膜に力が加えられると起立部が変形するようになっている。上記検出手段としては、ピエゾ抵抗効果や電極間の静電容量の変化に基づいて起立部の変形を検出する素子を採用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−294001号公報
【特許文献2】特許第4403406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、距離センサとして、撮像により把持対象物の距離などを検知する視覚センサを採用しており、この視覚センサはロボットハンドのベース部に接続されている。一方、触覚センサは、ロボットハンドの指先に設けられ、これにより、指先に加わる力が検出できるようになっている。すなわち、距離センサと触覚センサが別個に設けられている。
【0006】
また、特許文献2に示される触覚センサを用いる場合も、基板に対して起立した構造を有するため、距離センサとの集積化が困難である。すなわち、距離センサと触覚センサとが、別個に設けられることとなる。
【0007】
このように従来の把持用センサでは、距離センサと触覚センサとを別個に設けなければならず、部品点数が多いため、体格を小型化するのが困難であった。また、製造コストを低減するのが困難であった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、部品点数を削減することのできる把持用センサ及びロボットハンド駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の把持用センサは、
厚肉部(14)と、該厚肉部(14)に取り囲まれた空洞部(16)と、該空洞部(16)を架橋して厚肉部(14)上に形成されたメンブレン(18)と、を有する基板(12)と、
メンブレン(18)における厚肉部(14)と反対の一面(12a)上に、下部電極(32)、圧電体膜(34)、上部電極(36)の順に積層形成された圧電素子(30)と、を備え、
圧電素子(30)は、互いに電気的に分離されて複数形成されており、
複数の圧電素子(30)のうち、一部の圧電素子(30)の上部電極(36)上には、電気絶縁性材料からなる突起部(38)が形成され、該突起部(38)を有する圧電素子(30)は、圧電素子(30)が積層された垂直方向に加わる垂直圧力を検出するための垂直圧力検出素子(40)とされており、
複数の圧電素子(30)のうち、垂直圧力検出素子(40)とは別の圧電素子(30)として、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子(42)を有し、該超音波素子(42)は、垂直方向に直交する水平方向において、少なくとも基板(12)の空洞部(16)上に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、メンブレン(18)上に複数の圧電素子(30)が形成され、この圧電素子(30)の一部を、垂直圧力検出素子(40)として機能させ、垂直圧力検出素子(40)を除く圧電素子(30)の少なくとも一部を、超音波素子(42)として機能させる。したがって、把持用センサとして、距離センサとしての超音波センサ(42)と、触覚センサとしての垂直圧力検出素子(40)とを備えながらも、部品点数を削減することができる。また、部品点数削減により、体格の小型化や、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載のように、
垂直圧力検出素子(40)は、水平方向において、基板(12)の厚肉部(14)上に設けられると良い。
【0012】
水平方向において厚肉部(14)が形成された部分は、基板(12)の他の部分、例えばメンブレン(18)における空洞部(16)上の部分、に較べて剛性が高いため、精度よく垂直圧力を検出することができる。
【0013】
請求項3に記載のように、
水平方向において、垂直圧力検出素子(40)の隣には、別の圧電素子(74,42)が設けられ、
互いに隣り合う垂直圧力検出素子(40)及び別の圧電素子(74,42)において、それぞれの少なくとも上部電極(36)により、水平方向に加わるせん断力を静電容量値の変化として検出するためのせん断力検出素子(72)が構成されることが好ましい。
【0014】
これによれば、垂直圧力検出素子(40)を利用して、静電容量式のせん断力検出素子(72)を構成する。したがって、垂直圧力検出素子(40)を利用せずにせん断力検出素子(72)を設ける構成に較べて、構成を簡素化することができる。これにより、例えば水平方向において体格の小型化を図ることができる。
【0015】
請求項4に記載のように、
垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)は、水平方向において矩形状をなし、
垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)の矩形4辺に対して、別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)が対向配置され、
垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)に対向配置された別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)は、互いに電気的に分離されると良い。
【0016】
これによれば、水平方向の2軸において、せん断力を検出することができる。すなわち、垂直圧力と合わせて3軸力を検出することができる。
【0017】
請求項5に記載のように、
圧電素子(30)のうち、少なくともせん断力検出素子(72)を構成する垂直圧力検出素子(40)及び別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)上には、該上部電極(36)と電気的に接続され、水平方向において矩形状をなす柱部(76)が形成され、
垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)の矩形4辺に対して、別の圧電素子(74,42)の柱部(76)が対向配置され、
せん断力検出素子(72)は、上部電極(36)と柱部(76)とにより構成され、
垂直圧力検出素子(40)において、突起部(38)は、柱部(76)を介して上部電極(36)上に形成されることが好ましい。
【0018】
これによれば、上部電極(36)と柱部(76)により、せん断力検出素子(72)を構成する1組の容量電極が構成される。したがって、せん断力検出素子(72)が上部電極(36)のみからなる構成に較べて、容量電極の対向面積を大きくし、初期の静電容量値を大きくすることができる。また、容量電極が変形しやすいため、容量電極の対向距離の変化量を大きくすることができる。
【0019】
請求項6に記載のように、
前記垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)のほうが、該垂直圧力検出素子(40)に隣り合う別の圧電素子(74,42)の柱部(76)よりも、前記水平方向における断面積が小さい構成とすると良い。
【0020】
これによれば、垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)が変形しやすいため、水平方向の2軸において、せん断力の検出感度を向上することができる。
【0021】
請求項7に記載のように、柱部(76)は、上部電極(36)よりもヤング率の低い材料を用いて形成されると良い。これによれば、上部電極(36)のみにより、同じ高さの容量電極を形成する構成に較べて、容量電極を変形しやすくすることができる。
【0022】
請求項8に記載のように、
基板(12)は、空洞部(16)を複数有し、
各空洞部(16)上に位置する超音波素子(42)は、互いに電気的に分離されており、複数の超音波素子(42)として、超音波を送信する超音波素子(42a)を少なくとも1つ有しつつ、超音波を受信する超音波素子(42a,42b)を複数有することが好ましい。
【0023】
これによれば、1つの基板(12)に、少なくとも1つの送信用の超音波素子(42a)と、複数の受信用の超音波素子(42a,42b)が集積されるため、1つの基板(12)、すなわち1つの把持用センサ(10)の出力から、把持対象物の実態像(大きさや位置)を掴むことができる。
【0024】
請求項9に記載のように、
前記圧電素子(30)として、複数の前記垂直圧力検出素子(40)を有し、
前記水平方向において、複数の前記垂直圧力検出素子(40)は分散して設けられると良い。
【0025】
これによれば、把持対象物の形状や大きさによらず、垂直圧力などを検出することができる。
【0026】
次に、請求項10に記載のロボットハンド駆動制御装置は、
請求項1に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
時間情報と、超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
距離算出手段(S13)にて算出された距離と、硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力を用いて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とする。
【0027】
このように本発明によれば、把持対象物との距離だけでなく、把持対象物の硬度を算出することができる。このため、算出された硬度に応じた圧力や速度で把持対象物を掴むことができる。また、把持対象物の位置及び大きさを算出することもできるため、精度よく把持対象物を掴むことができる。
【0028】
また、垂直圧力を算出し、算出した垂直圧力に基づいて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態を補正(フィードバック制御)することができる。
【0029】
次に、請求項11に記載のロボットハンド駆動制御装置は、
請求項3に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する前記超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の前記超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
前記超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が前記超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
前記時間情報と、前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、前記把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、前記把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
前記距離算出手段(S13)にて算出された距離と、前記硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、前記実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、前記把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
前記垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
前記せん断力検出素子(72)の検出した静電容量値に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での前記水平方向に加わるせん断力を算出するせん断力算出手段(S21)と、
前記垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力と、前記せん断力算出手段(S21)にて算出されたせん断力とを用いて、前記ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とする。
【0030】
これによれば、請求項10に記載の発明の作用効果に加えて、せん断力を算出することができる。このため、上記した垂直圧力とせん断力に基づいて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態を、より精度よく補正(フィードバック制御)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る把持用センサの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す把持用センサを備えたロボットハンド駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】把持対象物をロボットハンドにより把持する手順を示すフローチャートである。
【図5】把持用センサの変形例を示す平面図である。
【図6】把持用センサの変形例を示す平面図である。
【図7】第2実施形態に係る把持用センサのうち、領域A1の概略構成を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】せん断力検出素子の周辺を拡大した断面図である。
【図10】図7に示す把持用センサを備えたロボットハンド駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】把持対象物をロボットハンドにより把持する手順を示すフローチャートである。
【図12】把持用センサの変形例を示す平面図である。
【図13】把持用センサのその他変形例を示す断面図である。この断面図は、図7のXIII−XIII線に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。以下においては、圧電素子30を構成する下部電極32、圧電体膜34、上部電極36の積層方向を垂直方向と示し、該垂直方向に直交する直交方向を水平方向と示す。
(第1実施形態)
先ず、把持用センサについて説明する。
【0033】
図1及び図2に示す把持用センサ10は、基板12に圧電素子30が形成され、この圧電素子30として、垂直圧力検出素子40と超音波素子42を有する点を主たる特徴とする。
【0034】
基板12は、厚肉部14と、水平方向において厚肉部14に取り囲まれた空洞部16と、空洞部16を架橋して厚肉部14上に形成されたメンブレン18と、を有する。そして、メンブレン18のうち、空洞部16を架橋する部分が、基板12において厚肉部14の形成された部分よりも薄い薄肉部18aとされ、この薄肉部18aは変形可能に設けられている。
【0035】
本実施形態では、図2に示すように、基板12が、単結晶シリコンからなる支持基板20に、酸化シリコンなどの絶縁膜22を介して、単結晶シリコンからなる半導体層24が配置されたSOI(Silicon On Insulator)基板と、半導体層24における絶縁膜22と反対の面上に形成された酸化シリコンなどの絶縁膜26とにより構成されている。基板12において、絶縁膜26側の表面を一面12a、一面12aと反対の支持基板20側の表面を裏面12bとすると、空洞部16は、半導体層24を底部として支持基板20及び絶縁膜22を貫通し、基板12の裏面12bに開口している。このような空洞部16は、基板12を裏面12b側から周知の方法でエッチングすることで形成することができる。基板12のうち、半導体層24及び絶縁膜26がメンブレン18をなしており、空洞部16を架橋している。したがって、水平方向において、空洞部16を取り囲む支持基板20及び絶縁膜22の部分が、厚肉部14となっている。また、基板12において厚肉部14の形成された部分とは、上記厚肉部14と厚肉部14上に位置するメンブレン18からなる。
【0036】
また、本実施形態では、基板12に、一面12aから支持基板20の途中まで到達する深さをもってトレンチ28が形成されている。トレンチ28は、平面略正方形の基板12(チップ)を、水平方向に沿う面積が略等しい4つの領域A1〜A4に区画するように、平面十字状に設けられている。このトレンチ28により、相互の領域A1〜A4において振動伝達が抑制される。トレンチ28にて区画された各領域A1〜A4は、上記した基板12の構造を有している。すなわち、各領域A1〜A4には、空洞部16が形成されており、空洞部16を架橋するメンブレン18の部分が薄肉部18aとなっている。なお、図1では、各領域A1〜A4の薄肉部18aを、破線で囲まれた領域として示している。
【0037】
圧電素子30は、基板12の一面12a上に、下部電極32、圧電体膜34、上部電極36の順に積層形成されてなる。このような圧電素子30によれば、圧電体膜34の圧電効果により、印加された外力を、電極32,36間に生じる電圧として検出することができる。一方、電極32,36間に電圧を印加すると、圧電体膜34の逆圧電効果により、圧電体膜34自体を変形させることができる。
【0038】
本実施形態では、圧電体膜34として、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる膜を採用している。なお、圧電体膜34を挟む電極32,36としては、PtやCuのスパッタ、めっき、導電ペーストの焼き付けなどにより形成されたものを採用することができる。
【0039】
この圧電素子30は、同一の基板12上において、互いに電気的に分離されて複数形成されている。複数の圧電素子30の一部は、メンブレン18の薄肉部18a上に形成されており、複数の圧電素子30の一部は、メンブレン18を介して厚肉部14上に形成されている。そして、互いに電気的に分離された複数の圧電素子30として、垂直圧力検出素子40と超音波素子42を有している。また、複数の圧電素子30の電極32,36は、基板12の一面12a上に形成された図示しないパッド(外部接続用電極)と電気的に接続されている。電極32,36とパッドとの電気的な接続は、基板12の一面12a上に形成された図示しない配線を用いても良い。また、絶縁膜26に形成された図示しないコンタクトホール、及び、半導体層24の表層に形成された図示しない拡散層を用いても良い。また、絶縁膜26が多層膜の場合、絶縁膜26内に設けられた内層配線を用いても良い。さらには、図示しない貫通電極により、基板12の裏面12bに形成されたパッドと電気的に接続されても良い。
【0040】
垂直圧力検出素子40は、把持用センサ10に対して垂直方向に加わる垂直圧力(接触圧とも言う)を検出すべく、圧電素子30のうち、上部電極36上に、樹脂やゴムなどの電気絶縁性材料からなる突起部38を有している。このため、後述するロボットハンドが把持対象物を掴むと、把持対象物は、圧電素子30のうち、垂直圧力検出素子40の突起部38に接触する。このため、垂直圧力検出素子40において、圧電体膜34の圧電効果により、垂直圧力を、電極32,36間に生じる電圧として検出することができる。
【0041】
本実施形態において、垂直圧力検出素子40は、メンブレン18の薄肉部18a上に設けられず、メンブレン18を介して、基板12の厚肉部14上に設けられている。また、各領域A1〜A4に垂直圧力検出素子40がそれぞれ設けられており、図1に示すように、各領域A1〜A4において、平面矩形状の薄肉部18aを取り囲むように、矩形の四辺に対応して垂直圧力検出素子40がそれぞれ設けられている。すなわち各領域A1〜A4に、4つの垂直圧力検出素子40がそれぞれ設けられており、各垂直圧力検出素子40は互いに電気的に分離されている。
【0042】
超音波素子42は、超音波の送信及び超音波の受信(送信した超音波の反射波の受信)の少なくとも一方に用いられるものであり、水平方向において、少なくとも基板12の空洞部16上に設けられている。すなわち、メンブレン18の薄肉部18a上に設けられている。このため、送信用の超音波素子42では、電極32,36に駆動信号が印加されると、圧電体膜34の逆圧電効果により圧電体膜34自体が変形し、これによりメンブレン18の薄肉部18aが垂直方向に振動して、外部に超音波を送信することができる。一方、受信用の超音波素子42では、超音波を受けてメンブレン18の薄肉部18aが垂直方向に振動すると圧電体膜34に歪が生じ、圧電体膜34の圧電効果により、超音波を、電極32,36間に生じる電圧として検出する、すなわち超音波を受信することができる。
【0043】
本実施形態では、各領域A1〜A4において、メンブレン18の薄肉部18a上に超音波素子42が形成されている。より詳しくは、図1に示すように平面矩形状の薄肉部18a全域を覆うように、薄肉部18aに対応した矩形状を有して形成されている。各領域A1〜A4において、超音波素子42と垂直圧力検出素子40との間には所定の空隙が設けられている。そして、また、4つの超音波素子42は互いに電気的に分離されており、領域A1の超音波素子42のみが送信と受信が可能な送受信用素子42aとされ、残りの領域A2〜A4の超音波素子42は、受信専用の受信用素子42bとなっている。すなわち、同一の基板12に、超音波を送信できる超音波素子42(42a)を1つと、超音波を受信できる超音波素子42(42a,42b)を4つ有している。このように、超音波を受信できる超音波素子42を複数有すると、位相差から、把持対象物との距離や硬度だけでなく、位置や大きさといった把持対象物の実態像を検出することができる。
【0044】
次に、上記した把持用センサ10を備えるロボットハンド駆動制御装置の構成について説明する。
【0045】
図3に示すように、ロボットハンド駆動制御装置50は、上記した把持用センサ10以外にも、制御回路52、発振回路54、ドライバ56、受信回路58,62、A/D変換回路60,64,68、処理回路66、メモリ70を備えている。
【0046】
制御回路52は、図示しない中央演算装置(CPU)、CPUが実行する各種プログラムが格納されたリードオンメモリ(ROM)、CPUがROMに格納された各プログラムにしたがって実行する各種演算のための作業領域として用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えている。そして、発振回路54に対し、超音波素子42aを駆動させる駆動信号の生成を指示する機能、送受信素子42aの送信/受信を切り替える機能、把持対象物の有無、距離、硬度、位置、及び形状を算出する機能、算出した距離、硬度、位置、及び形状を用いて、ロボットハンドを動かすアクチュエータ100の駆動を制御する機能、垂直圧力を算出する機能、算出された垂直圧力に基づいて、アクチュエータ100の駆動を補正(フィードバック制御)する機能などを有している。
【0047】
発振回路54は、制御回路52からの指示信号を受けると、所定周波数の駆動信号を出力する。ドライバ56は、発振回路54からの駆動信号により送受信素子42aを駆動する駆動回路であり、これにより、送受信素子42aから所定周波数の超音波が送信される。なお、本実施形態では、ドライバ56が、トランスなどの電力増幅回路を含んでいる。
【0048】
受信回路58,62は、対応する超音波素子42a,42bの受信信号を増幅するアンプや、増幅された受信信号に対してフィルタ処理を行うフィルタなどを含む。そして、受信回路58,62にて処理された信号は、A/D変換回路60,64を経て、制御回路52に入力される。なお、図3では、受信用素子42bと、該受信用素子42bの受信信号を処理する受信回路62及びA/D変換回路64とを、便宜上、1つずつのみ示している。しかしながら、上記したように、把持用センサ10は受信用素子42bを3つ有しており、ロボットハンド駆動制御装置50は、3つの受信用素子42bと、各受信用素子42bに対応する受信回路62及びA/D変換回路64を有している。
【0049】
処理回路66も、受信回路58,62同様、対応する垂直圧力検出素子40の出力信号を増幅するアンプや、増幅された信号に対してフィルタ処理を行うフィルタなどを含む。そして、処理回路66にて処理された信号は、A/D変換回路68を経て、制御回路52に入力される。なお、図3では、垂直圧力検出素子40と、処理回路66及びA/D変換回路68とを、便宜上、1つずつのみ示している。しかしながら、上記したように、把持用センサ10は各領域A1〜A4に4つの垂直圧力検出素子40、すなわち計16個の垂直圧力検出素子40を有しており、ロボットハンド駆動制御装置50は、16個の垂直圧力検出素子40と、各垂直圧力検出素子40に対応する処理回路66及びA/D変換回路68を有している。
【0050】
メモリ70は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、ロボットハンドを動かすアクチュエータ100の駆動を制御するためのパラメータが格納されている。具体的には、把持用センサ10にて検出することができないパラメータ、例えば把持対象物の重量を示す情報と、把持対象物の摩擦係数を示す情報などが格納されている。また、硬度を算出する際の距離と振幅と対応関係を示すマップ、硬度、把持対象物の重量、及び摩擦係数と、垂直圧力との関係を示すマップなどが格納されている。
【0051】
次に、制御回路52が所定のプログラムにしたがって実行する、ロボットハンドの把持対象物を掴む動作について、図4を用いて説明する。
【0052】
先ずロボットハンド駆動制御装置50の電源がオンされると、制御回路52は、発振回路54に対し、駆動信号を出力すべく指示信号を出力する。発振回路54は、制御回路52から指示を受け、所定周波数の駆動信号を出力する(ステップS10)。
【0053】
生成された駆動信号(電圧信号)は、ドライバ56を介して送受信用素子42aに伝達される。これにより、送受信用素子42aは垂直方向に振動し、振動がメンブレン18の薄肉部18aに伝達され、外部に超音波として送信される。この超音波の周波数は駆動信号の周波数と一致している。
【0054】
送信処理の開始後、所定時間が経過すると、制御回路52は、送受信用素子42aが受信回路58に接続されるように切り替える。そして、制御回路52は、受信回路58,62及びA/D変換回路60,64を経て取得した超音波を受信できる素子42a,42bの受信信号の振幅が、所定の閾値より大きいか否か、すなわち、把持対象物からの反射波を受信した超音波素子42a,42bがあるか否かを判定する(ステップS11)。
【0055】
ステップS11において、反射波を受信した超音波素子42a,42bがないと判定した場合、制御回路52は、対応する計測時間を経過したか否かを判定する(ステップS12)。そして、計測時間を経過していなければステップS11に戻る。一方、計測時間を超えたと判定した場合は、ステップS10に戻る。なお、計測時間とは、把持対象物による反射波が検出可能なタイミング(検出可能開始タイミング)から検出可能終了までの時間であり、本実施形態では予め設定されている。
【0056】
ステップS11において、反射波を受信した超音波素子42a,42bがあると判定した場合、制御回路52は、送受信用素子42aから超音波が送信され、該超音波の反射波が、いずれかの超音波素子42a,42bにて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する(ステップS13)。このステップS13が、特許請求の範囲に記載の距離算出手段に相当する。なお、以下においては、全ての超音波素子42a,42bにおいて反射波を受信したものとする。
【0057】
次いで、制御回路52は、上記した時間情報と、超音波素子42a,42bにて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、把持対象物の硬度(予想硬度)を算出する(ステップS14)。このステップS14が、特許請求の範囲に記載の硬度算出手段に相当する。超音波は、対象物が硬いほどその反射量が多くなり、受信信号の振幅は大きくなる。一方、対象物が軟らかいほど反射量が少なくなり、受信信号の振幅が小さくなる。また、受信信号の振幅は、対象物との距離にも依存する。したがって、時間情報、すなわち距離と、振幅とから、メモリ70に格納されたマップにより、制御回路52は、把持対象物の硬度(予想硬度)を算出することができる。
【0058】
また、ステップS11にて、反射波を受信した超音波素子42a,42bが複数あると判定した場合、制御回路52は、複数の超音波素子42a,42bにて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、把持対象物の位置及び大きさ、すなわち把持対象物の実態像を算出する(ステップS15)。このステップS15が、特許請求の範囲に記載の実態像算出手段に相当する。なお、超音波素子42a,42bにおいて、素子間の位相差を検出してプロットしていくと、把持対象物の位置だけでなく、大きさもわかる。このため、大きさを算出するには、超音波を受信できる超音波素子42a,42bの個数が多いほど好ましい。
【0059】
そして、制御回路52は、ステップS13にて算出した距離と、ステップS14にて算出した硬度と、ステップS15にて算出した位置及び大きさとを用いて、ロボットハンドが把持対象物を把持するように、モータ等のアクチュエータ100の駆動を制御する(ステップS16)。このステップS16が、特許請求の範囲に記載の把持制御手段に相当する。本実施形態では、算出した硬度情報を用いるため、把持対象物を掴むスピードや圧力を硬度に応じて設定することができる。なお、本実施形態では、制御回路52が、メモリ70に格納された把持対象物の重量、摩擦係数の情報を読み出し、これら情報もアクチュエータ100の駆動制御に用いる。このため、把持対象物に応じたロボットハンドの高精度の動作が可能となる。
【0060】
次いで、制御回路52は、ロボットハンドの把持動作が完了したか否かを判定する(ステップS17)。この判定は、アクチュエータ100が、ステップS16で指示した所定動作を完了したか否かで判定される。例えばアクチュエータ100としてサーボモータを用いると、サーボモータが回転角度を検出するエンコーダーを備えているため、エンコーダーの出力から、モータが所定位置に到達したか否か、すなわちロボットハンドの把持動作が完了か否かを検出することができる。
【0061】
ステップS17で把持動作完了と判定すると、制御回路52は、垂直圧力検出素子40の検出信号に基づいて、垂直圧力を算出する(ステップS18)。このステップS18が、特許請求の範囲に記載の垂直圧力算出手段に相当する。
【0062】
そして、制御回路52は、ステップS18で算出した垂直圧力が所定の閾値を超えたか否かで、ロボットハンドが把持対象物に接触しているか否かを判定する(ステップS19)。このステップS19で、接触していないと判定した場合、ステップS10に戻る。
【0063】
一方、ステップS19において、接触ありと判定した場合、制御回路52は、ステップS18で算出した垂直圧力を用いて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する(ステップS20)。このステップS20が、特許請求の範囲に記載の把持補正手段に相当する。例えば、制御回路52は、ステップS18にて算出した垂直圧力が、メモリ70に格納された推奨垂直圧力と異なる場合には、垂直圧力が推奨垂直圧力となるように、アクチュエータ100をフィードバック制御する。すなわち、把持対象物を掴んだロボットハンドの把持力を調整する。なお、推奨垂直圧力とは、硬度、把持対象物の重量、及び摩擦係数との対応関係が、マップとしてメモリ70に格納されている。
【0064】
以上が、ロボットハンドにより把持対象物を掴む動作である。この動作の完了後、図示しない別のフローにしたがって、例えば把持対象物を所定位置に移送し、位置決め配置する動作が実行される。
【0065】
次に、本実施形態に係る把持用センサ10及びロボットハンド駆動制御装置50について、特徴部分の効果を説明する。
【0066】
本実施形態では、メンブレン18上に複数の圧電素子30が形成され、この圧電素子30の一部を、垂直圧力検出素子40として機能させ、垂直圧力検出素子40を除く圧電素子30の少なくとも一部を、超音波素子42として機能させる。したがって、把持用センサ10として、距離センサとしての超音波素子42と、触覚センサとしての垂直圧力検出素子40とを備えながらも、部品点数を削減することができる。また、部品点数削減により、体格の小型化や、製造コストの低減を図ることができる。
【0067】
特に本実施形態では、垂直圧力検出素子40を、水平方向において、メンブレン18を介して厚肉部14上に設けている。厚肉部14は、基板12の他の部分、例えば空洞部16上の位置するメンブレン18の薄肉部18a、に較べて剛性が高いため、精度よく垂直圧力を検出することができる。
【0068】
また、本実施形態では、基板12が空洞部16を複数有しており、各空洞部16上の薄肉部18aをそれぞれ覆うように形成された超音波素子42は、互いに電気的に分離されている。また、同一の基板12に、複数の超音波素子42として、超音波を送信する送受信用素子42aと、超音波を受信する複数の超音波素子42a,42bが集積されている。このため、1つの把持用センサ10から、把持対象物との距離や硬度だけでなく、把持対象物の実態像(大きさや位置)を掴むことができる。すなわち、ロボットハンドの動作を、把持対象物に応じて高精度に制御することができる。
【0069】
また、本実施形態では、圧電素子30として、複数の垂直圧力検出素子40を有し、水平方向において、複数の垂直圧力検出素子40が分散して設けられている。このため、把持対象物の形状や大きさによらず、垂直圧力を検出することができる。
【0070】
また、本実施形態では、把持用センサ10が備える超音波素子42a,42bにより、把持対象物との距離だけでなく、把持対象物の硬度を算出することができる。このため、把持対象物の硬さが不明でも、算出された硬度に応じた圧力や速度で把持対象物を掴むことができる。また、把持対象物の位置及び大きさを算出することもできるため、精度よく把持対象物を掴むことができる。さらには、垂直圧力検出素子40により、垂直圧力を算出することができる。このため、把持対象物を掴んだ後に、算出した垂直圧力に基づいて、ロボットハンドの動作を補正(フィードバック制御)することができる。
【0071】
(変形例)
上記実施形態では、基板12の裏面12b側から形成された空洞部16の例を示した。しかしながら、空洞部16は、基板12の一面12a側から形成されてもよい。
【0072】
把持用センサ10における圧電素子30の配置(垂直圧力検出素子40及び超音波素子42の配置)は上記例に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、把持用センサ10が、超音波素子42として、送受信用素子42aを1つ、受信用素子42bを3つ有する例を示した。しかしながら、把持用センサ10としては、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子42を少なくとも1つ有するものであれば良い。例えば超音波の送信のみに用いられる超音波素子42を1つ有し、受信用素子42bを複数有する構成としても良い。また、1つの基板12に形成される垂直圧力検出素子40の個数も特に限定されない。
【0073】
図5に示す例では、把持用センサ10が、基板12に空洞部16(図示せず)を1つのみ有しており、メンブレン18における空洞部16上の薄肉部18aを覆うように1つの超音波素子42が形成されている。また、基板12には、垂直圧力検出素子40が1つ形成されている。このように、把持用センサ10が1つの超音波素子42を有する構成の場合、ロボットハンド駆動制御装置50として、位相差から把持対象物の実態像(位置及び大きさ)を算出するには、複数の把持用センサ10(複数のチップ)を備えれば良い。
【0074】
一方、図6に示す例では、圧電素子30が、領域A1における基板12の一面12aほぼ全面においてマトリクス状(行列状)に設けられている。具体的には、9行×9列の配置となっており、各圧電素子30は、水平方向において略正方形をなしている。そして、厚肉部14上に位置する圧電素子30の一部、詳しくは、最外周を1周目として2周目の圧電素子30が、一つ置きに垂直圧力検出素子40となっている。また、それ以外の圧電素子30は、超音波素子42となっている。これら複数の超音波素子42は、下部電極32同士、上部電極36同士が、それぞれ同電位となるように、ロボットハンド駆動制御装置50において制御される。すなわち、構造上分割されているものの、電気的には1つの超音波素子42として振る舞う。なお、他の領域A2〜A4でも同様の構成となっている。図6に示す構成は、図5のように、基板12に1つの空洞部16のみを有する構成にも適用することができる。
【0075】
上記実施形態では、メモリ70に、把持対象物の重量や摩擦係数に関するデータが格納される例を示した。しかしながら、把持用センサ10と別のセンサとして、ロボットハンド駆動制御装置50が、荷重センサ、表面状態(摩擦係数)を検出するセンサを備え、これらセンサからの信号に基づいて、把持対象物の重量や表面状態(摩擦係数)を算出する構成としても良い。
【0076】
上記実施形態では、トレンチ28を空隙としたが、トレンチ28内を、振動減衰部材にて埋めた構成としても良い。このような振動減衰部材としては、減衰定数が高い材料、好ましくは、弾性率が低く、密度が小さい材料が好適である。例えば、ゴム系材料、発泡樹枝などの気孔を含む樹脂などを用いることができる。また、トレンチ28を有さない構成としても良い。しかしながら、トレンチ28を設けたほうが、水平方向において体格を小型化することができる。
【0077】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した把持用センサ10及びロボットハンド駆動制御装置50と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、把持用センサ10が、触覚センサとして垂直圧力検出素子40のみを有する例を示した。
【0078】
これに対し、本実施形態では、把持用センサ10が、触覚センサとして、垂直圧力検出素子40とともに、せん断力検出素子72も備える点を特徴とする。また、ロボットハンド駆動制御装置50が、上記した垂直圧力とともにせん断力検出素子72にて検出されたせん断力を用いて、ロボットハンドの把持状態をフィードバック制御する点を特徴とする。
【0079】
図7及び図8に示すように、本実施形態に係る把持用センサ10は、第1実施形態と同じ態様の超音波素子42を備えている。なお、図7では、基板12のうち、領域A1のみを示しているが、残りの領域A2〜A4も、領域A1と同様の構成を有している。
【0080】
また、第1実施形態同様、メンブレン18を介して、基板12の厚肉部14上には、垂直圧力検出素子40が設けられている。本実施形態では、図7に示すように、平面矩形状の薄肉部18a(平面矩形状の超音波素子42)を取り囲むように、複数(図7では12個)の垂直圧力検出素子40が所定ピッチを有しつつ矩形環状に設けられている。これら垂直圧力検出素子40は、互いに電気的に分離されており、個別に垂直圧力の検出が可能となっている。
【0081】
また、水平方向において、垂直圧力検出素子40の隣には、垂直圧力検出素子40及び超音波素子42とは別の圧電素子74が設けられている。そして、互いに隣り合う垂直圧力検出素子40及び圧電素子74において、それぞれの少なくとも上部電極36同士により、水平方向に加わるせん断力(すべり角とも言う)を静電容量値の変化として検出するためのせん断力検出素子72が構成されている。
【0082】
本実施形態では、垂直圧力検出素子40の上部電極36、ひいては垂直圧力検出素子40全体が、水平方向において矩形状(略正方形)をなしており、垂直圧力検出素子40の上部電極36の矩形各辺に対して、互いに電気的に分離された圧電素子74がそれぞれ配置されている。そして、垂直圧力検出素子40の上部電極36の4辺に対して、圧電素子74の上部電極36がそれぞれ対向配置されている。
【0083】
また、圧電素子30のうち、少なくともせん断力検出素子72を構成する垂直圧力検出素子40及び圧電素子74の上部電極36上には、水平方向において矩形状をなし、垂直方向において所定高さを有する柱部76がそれぞれ形成されている。本実施形態では、超音波素子42の感度を向上するために、超音波素子42には柱部76を設けず、垂直圧力検出素子40及び圧電素子74のみに柱部76を設けている。この柱部76は、対応する上部電極36と電気的に接続されており、垂直圧力検出素子40の柱部76の矩形4辺に対して、互いに電気的に分離された圧電素子74の柱部76がそれぞれ対向配置されている。そして、図9に示すように、せん断力検出素子72を構成する容量電極は、垂直圧力検出素子40の上部電極36及び柱部76と、圧電素子74の上部電極36及び柱部76により構成されている。なお、垂直圧力検出素子40において、突起部38は、柱部76を介して上部電極36上に形成されている。
【0084】
本実施形態では、1つの垂直圧力検出素子40に対し、4つの圧電素子74が設けられている。1つの垂直圧力検出素子40に対応する4つの圧電素子74は互いに電気的に分離されており、異なる垂直圧力検出素子40に対応する圧電素子74も互いに電気的に分離されている。このように、1つの垂直圧力検出素子40につき、4つのせん断力検出素子72が形成されている。圧電素子74は、図7に示すように、平面長方形をなしており、短手方向の幅が垂直圧力検出素子40の幅とほぼ等しく、長手方向の幅が垂直圧力検出素子40の幅よりも長くなっている。このため、垂直圧力検出素子40の柱部76のほうが、圧電素子74の柱部76よりも、水平方向における断面積が小さくなっている。
【0085】
なお、矩形状の柱部76の直交する2辺にそれぞれ沿う方向と、矩形状の上部電極36の直交する2辺にそれぞれ沿う方向は互いに一致している。柱部76の構成材料としては、上部電極36と電気的に接続される材料、すなわち後述するせん断力検出素子72の容量電極を形成できるものであれば採用することができる。例えば、ポリアセチレンやポリチオフェンなどの導電性樹脂、ドープドポリシリコン、銅合金などがある。好ましくは、水平方向に変形しやすいように、上部電極36よりもヤング率の低い材料を用いて形成されると良い。
【0086】
次に、本実施形態に係るロボットハンド駆動制御装置50の構成について、図10を用いて説明する。
【0087】
図10に示すように、ロボットハンド駆動制御装置50は、第1実施形態に示したロボットハンド駆動制御装置50に対し、把持用センサ10が、せん断力検出素子72も有している。そして、せん断力検出素子72の検出した静電容量値を電圧信号に変換するC−V変換回路78と、A/D変換回路80をさらに備えている。なお、C−V変換回路78については周知構成のものを採用することができるため、詳細な説明は割愛する。
【0088】
次に、制御回路52が所定のプログラムにしたがって実行する、ロボットハンドの把持対象物を掴む動作について、図11を用いて説明する。
【0089】
ステップS10からステップS19までは、第1実施形態に示す図4と同じである。ステップS19において、接触ありと判定した場合、制御回路52は、せん断力検出素子72の検出した静電容量値に基づいて、水平方向に加わるせん断力を算出する(ステップS21)。このステップS21が、特許請求の範囲に記載のせん断力算出手段に相当する。
【0090】
そして、制御回路52は、ステップS18で算出した垂直圧力と、ステップS21で算出したせん断力とを用いて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する(ステップS20)。このステップS20が、特許請求の範囲に記載の把持補正手段に相当する。例えば、制御回路52は、第1実施形態同様、ステップS18にて算出した垂直圧力が、メモリ70に格納された推奨垂直圧力と異なる場合には、垂直圧力が推奨垂直圧力となるように、アクチュエータ100をフィードバック制御する。すなわち、把持対象物を掴んだロボットハンドの把持力を調整する。また、ステップS19にて算出したせん断力が所定の閾値未満である場合には、把持対象物を落とす虞があるため、垂直圧力が高まる方向に、アクチュエータ100をフィードバック制御する。例えば、せん断力の閾値もメモリ70に格納されている。
【0091】
次に、本実施形態に係る把持用センサ10及びロボットハンド駆動制御装置50について、特徴部分の効果を説明する。
【0092】
本実施形態では、垂直圧力検出素子40を利用して、静電容量式のせん断力検出素子72が構成されている。したがって、垂直圧力検出素子40を利用せずに、せん断力検出素子72を設ける構成に較べて、把持用センサ10の構成を簡素化することができる。これにより、例えば水平方向において体格の小型化を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態では、1つの垂直圧力検出素子40に対し、4つの圧電素子74がそれぞれ対向配置されている。また、垂直圧力検出素子40の容量電極(上部電極36及び柱部76)は平面矩形状をなしており、該容量電極の矩形4辺に対して、互いに電気的に分離された圧電素子74の容量電極(上部電極36及び柱部76)がそれぞれ対向配置されている。したがって、水平方向の2軸(図7に示す紙面左右方向と紙面上下方向)において、せん断力を検出することができる。すなわち、垂直圧力と合わせて3軸力を検出することができる。
【0094】
特に本実施形態では、上記したように、せん断力検出素子72を構成する垂直圧力検出素子40及び圧電素子74の上部電極36上に、柱部76が形成されている。このため、せん断力検出素子72を構成する容量電極が上部電極36のみからなる構成に較べて、容量電極の対向面積を大きくし、初期の静電容量値を大きくすることができる。また、柱部76を設けることで、容量電極の垂直方向の長さが長くなり、容量電極が変形しやすくなるため、容量電極の対向距離の変化量を大きくすることができる。
【0095】
さらに本実施形態では、垂直圧力検出素子40の柱部76のほうが、圧電素子74の柱部76よりも、水平方向における断面積が小さくされている。これにより、垂直圧力検出素子40の柱部76が変形しやすいため、水平方向の2軸において、せん断力の検出感度を向上することができる。なお、上部電極36よりもヤング率の低い材料を用いて柱部76を形成すると、上部電極36のみによって同じ高さの容量電極を形成する構成に較べて、容量電極を変形しやすくすることができる。
【0096】
また、本実施形態では、把持用センサ10が、せん断力検出素子72を有しており、ロボットハンド駆動制御装置50は、せん断力検出素子72の検出信号から、せん断力を算出するせん断力算出手段(ステップS21)を備える。このため、把持対象物を掴んだ後に、垂直圧力とせん断力に基づいて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態を、より精度よく補正(フィードバック制御)することができる。
【0097】
(変形例)
上記実施形態では、せん断力検出素子72を構成する垂直圧力検出素子40及び圧電素子74が、容量電極の構成要素として、上部電極36及び柱部76をそれぞれ有する例を示した。しかしながら、柱部76を有さず、容量電極が上部電極36のみにより構成されても良い。
【0098】
本実施形態においても、把持用センサ10における圧電素子30の配置(垂直圧力検出素子40、超音波素子42、せん断力検出素子72、及び圧電素子74の配置)は上記例に限定されるものではない。少なくとも1つの垂直圧力検出素子40、少なくとも1つの超音波素子42、垂直圧力検出素子40を利用した少なくとも1つのせん断力検出素子72を有せば良い。上記実施形態では、垂直圧力検出素子40と圧電素子74とによりせん断力検出素子72を構成したが、圧電素子74を設けず、垂直圧力検出素子40と超音波素子42とによりせん断力検出素子72を構成しても良い。
【0099】
例えば図12に示す例では、圧電素子30が、領域A1における基板12の一面12aほぼ全面においてマトリクス状(行列状)に設けられている。具体的には、12行×12列の配置となっている。詳しくは、図7に示した構成において、垂直圧力検出素子40を中心とし、4辺に圧電素子74を対向配置させた十字状の配置を、厚肉部14上だけでなく、メンブレン18の薄肉部18a上においても繰り返し構造としている。そして、厚肉部14上に設けられた垂直圧力検出素子40を除く圧電素子30を、超音波素子42としている。これら複数の超音波素子42は、超音波の送信時(ステップS10)、又は、超音波の受信時(ステップS11)に、下部電極32同士、上部電極36同士が同電位となるように、ロボットハンド駆動制御装置50において制御される。すなわち、構造上分割されているものの、電気的には1つの超音波素子42として振る舞う。一方、せん断力の算出時(ステップS21)に、超音波素子42のうち、水平方向に沿う2軸(図12の紙面左右方向と紙面上下方向)で垂直圧力検出素子40の隣り合う超音波素子42のみ、その容量電極(上部電極36及び柱部76)がせん断力検出に用いられるように、ロボットハンド駆動制御装置50において制御される。なお、他の領域A2〜A4でも同様の構成となっている。図12に示す構成は、図5のように、基板12に1つの空洞部16のみを有する構成にも適用することができる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0101】
上記実施形態では、垂直圧力検出素子40が、基板12の厚肉部14上に形成される例を示したが、垂直圧力検出素子40が、メンブレン18の薄肉部18a上に形成された構成とすることもできる。しかしながら、薄肉部18aは変形可能に設けられているため、垂直圧力の検出ばらつきや、薄肉部18aのダメージ等が考えられる。したがって、上記実施形態に示すように、厚肉部14上に垂直圧力検出素子40を設けることが好ましい。
【0102】
上記実施形態では、せん断力検出素子72として、静電容量式の例を示した。しかしながら、例えば図13に示すように、接触式のスイッチを接触タイミングがずれるように複数設けてなるせん断力検出素子を採用することもできる。図13は、図7のXIII−XIII線に沿う断面図であり、その断面構造は、垂直圧力検出素子40と垂直圧力検出素子40に隣り合う圧電素子74との間隔が一定でない点を除けば図7(第2実施形態)と同じである。図13に示す断面図には、3つの垂直圧力検出素子40が示されており、紙面左側から、圧電素子74との間隔がD1、D2(>D1)、D3(>D2)となっている。このため、せん断力が小さいときには、例えば間隔D1の垂直圧力検出素子40の柱部76のみが、隣り合う圧電素子74の柱部76に接触する。すなわち、垂直圧力検出素子40と圧電素子74の上部電極36が電気的に接続される(ショートする)。また、せん断力が中程度のときには、例えば間隔D1と間隔D2の垂直圧力検出素子40の柱部76が、隣り合う圧電素子74の柱部76に接触する。また、せん断力が大きいときには、間隔D1、間隔D2、間隔D3の垂直圧力検出素子40の柱部76が、隣り合う圧電素子74の柱部76に接触する。したがって、どの間隔の垂直圧力検出素子40まで隣り合う圧電素子74とショートしているかにより、せん断力がどの程度かを算出することができる。例えば、間隔とせん断力との対応関係を示すマップがメモリ70に格納され、制御回路52は、このマップに基づいてせん断力を算出する。
【0103】
すなわち、把持用センサ10が、
圧電素子30として、複数の垂直圧力検出素子40を有し、
垂直圧力検出素子40の隣には別の圧電素子74(超音波素子42でも良い)が設けられ、水平方向において、複数の垂直圧力検出素子40は分散しており、
互いに隣り合う垂直圧力検出素子40及び別の圧電素子74において、上部電極36上には、該上部電極36と電気的に接続された柱部76が形成され、
垂直圧力検出素子40において、突起部38は、柱部76を介して上部電極36上に形成されており、
各垂直圧力検出素子40の柱部76と、該垂直圧力検出素子40に隣り合う別の圧電素子74の柱部76との間隔は、水平方向のうちの少なくとも1軸方向において、多段(間隔D1〜D3)に設定された構成としても良い。
【符号の説明】
【0104】
10・・・把持用センサ
12・・・基板
12a・・・一面
14・・・厚肉部
16・・・空洞部
18・・・メンブレン
30・・・圧電素子
38・・・突起部
40・・・垂直圧力検出素子
42・・・超音波素子
50・・・ロボットハンド駆動制御装置
72・・せん断力検出素子
74・・・圧電素子(別の圧電素子)
76・・・柱部
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持用センサ、及び、該把持用センサを備えるロボットハンド駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドなど把持対象物を把持する際に用いられる把持用センサとして、例えば特許文献1に示されるように、距離センサと触覚センサを備えるものが知られている。
【0003】
また、触覚センサとしては、例えば特許文献2に示す形態のものが知られている。特許文献2に示される触覚センサは、基板上に、基板側から順に配置された第1の層及び第2の層を含む積層部と、第1の層及び第2の層を第2の層側に曲げることによって形成された起立部と、起立部の変形を検出するための検出手段を有する。積層部及び起立部は、それぞれ、互いに格子定数が異なる複数の層を含み、第1の層及び第2の層は、複数の層における格子定数の差によって生じた力によって曲げられている。また、積層部及び起立部は被膜によって覆われており、被膜に力が加えられると起立部が変形するようになっている。上記検出手段としては、ピエゾ抵抗効果や電極間の静電容量の変化に基づいて起立部の変形を検出する素子を採用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−294001号公報
【特許文献2】特許第4403406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、距離センサとして、撮像により把持対象物の距離などを検知する視覚センサを採用しており、この視覚センサはロボットハンドのベース部に接続されている。一方、触覚センサは、ロボットハンドの指先に設けられ、これにより、指先に加わる力が検出できるようになっている。すなわち、距離センサと触覚センサが別個に設けられている。
【0006】
また、特許文献2に示される触覚センサを用いる場合も、基板に対して起立した構造を有するため、距離センサとの集積化が困難である。すなわち、距離センサと触覚センサとが、別個に設けられることとなる。
【0007】
このように従来の把持用センサでは、距離センサと触覚センサとを別個に設けなければならず、部品点数が多いため、体格を小型化するのが困難であった。また、製造コストを低減するのが困難であった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、部品点数を削減することのできる把持用センサ及びロボットハンド駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の把持用センサは、
厚肉部(14)と、該厚肉部(14)に取り囲まれた空洞部(16)と、該空洞部(16)を架橋して厚肉部(14)上に形成されたメンブレン(18)と、を有する基板(12)と、
メンブレン(18)における厚肉部(14)と反対の一面(12a)上に、下部電極(32)、圧電体膜(34)、上部電極(36)の順に積層形成された圧電素子(30)と、を備え、
圧電素子(30)は、互いに電気的に分離されて複数形成されており、
複数の圧電素子(30)のうち、一部の圧電素子(30)の上部電極(36)上には、電気絶縁性材料からなる突起部(38)が形成され、該突起部(38)を有する圧電素子(30)は、圧電素子(30)が積層された垂直方向に加わる垂直圧力を検出するための垂直圧力検出素子(40)とされており、
複数の圧電素子(30)のうち、垂直圧力検出素子(40)とは別の圧電素子(30)として、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子(42)を有し、該超音波素子(42)は、垂直方向に直交する水平方向において、少なくとも基板(12)の空洞部(16)上に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、メンブレン(18)上に複数の圧電素子(30)が形成され、この圧電素子(30)の一部を、垂直圧力検出素子(40)として機能させ、垂直圧力検出素子(40)を除く圧電素子(30)の少なくとも一部を、超音波素子(42)として機能させる。したがって、把持用センサとして、距離センサとしての超音波センサ(42)と、触覚センサとしての垂直圧力検出素子(40)とを備えながらも、部品点数を削減することができる。また、部品点数削減により、体格の小型化や、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載のように、
垂直圧力検出素子(40)は、水平方向において、基板(12)の厚肉部(14)上に設けられると良い。
【0012】
水平方向において厚肉部(14)が形成された部分は、基板(12)の他の部分、例えばメンブレン(18)における空洞部(16)上の部分、に較べて剛性が高いため、精度よく垂直圧力を検出することができる。
【0013】
請求項3に記載のように、
水平方向において、垂直圧力検出素子(40)の隣には、別の圧電素子(74,42)が設けられ、
互いに隣り合う垂直圧力検出素子(40)及び別の圧電素子(74,42)において、それぞれの少なくとも上部電極(36)により、水平方向に加わるせん断力を静電容量値の変化として検出するためのせん断力検出素子(72)が構成されることが好ましい。
【0014】
これによれば、垂直圧力検出素子(40)を利用して、静電容量式のせん断力検出素子(72)を構成する。したがって、垂直圧力検出素子(40)を利用せずにせん断力検出素子(72)を設ける構成に較べて、構成を簡素化することができる。これにより、例えば水平方向において体格の小型化を図ることができる。
【0015】
請求項4に記載のように、
垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)は、水平方向において矩形状をなし、
垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)の矩形4辺に対して、別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)が対向配置され、
垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)に対向配置された別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)は、互いに電気的に分離されると良い。
【0016】
これによれば、水平方向の2軸において、せん断力を検出することができる。すなわち、垂直圧力と合わせて3軸力を検出することができる。
【0017】
請求項5に記載のように、
圧電素子(30)のうち、少なくともせん断力検出素子(72)を構成する垂直圧力検出素子(40)及び別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)上には、該上部電極(36)と電気的に接続され、水平方向において矩形状をなす柱部(76)が形成され、
垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)の矩形4辺に対して、別の圧電素子(74,42)の柱部(76)が対向配置され、
せん断力検出素子(72)は、上部電極(36)と柱部(76)とにより構成され、
垂直圧力検出素子(40)において、突起部(38)は、柱部(76)を介して上部電極(36)上に形成されることが好ましい。
【0018】
これによれば、上部電極(36)と柱部(76)により、せん断力検出素子(72)を構成する1組の容量電極が構成される。したがって、せん断力検出素子(72)が上部電極(36)のみからなる構成に較べて、容量電極の対向面積を大きくし、初期の静電容量値を大きくすることができる。また、容量電極が変形しやすいため、容量電極の対向距離の変化量を大きくすることができる。
【0019】
請求項6に記載のように、
前記垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)のほうが、該垂直圧力検出素子(40)に隣り合う別の圧電素子(74,42)の柱部(76)よりも、前記水平方向における断面積が小さい構成とすると良い。
【0020】
これによれば、垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)が変形しやすいため、水平方向の2軸において、せん断力の検出感度を向上することができる。
【0021】
請求項7に記載のように、柱部(76)は、上部電極(36)よりもヤング率の低い材料を用いて形成されると良い。これによれば、上部電極(36)のみにより、同じ高さの容量電極を形成する構成に較べて、容量電極を変形しやすくすることができる。
【0022】
請求項8に記載のように、
基板(12)は、空洞部(16)を複数有し、
各空洞部(16)上に位置する超音波素子(42)は、互いに電気的に分離されており、複数の超音波素子(42)として、超音波を送信する超音波素子(42a)を少なくとも1つ有しつつ、超音波を受信する超音波素子(42a,42b)を複数有することが好ましい。
【0023】
これによれば、1つの基板(12)に、少なくとも1つの送信用の超音波素子(42a)と、複数の受信用の超音波素子(42a,42b)が集積されるため、1つの基板(12)、すなわち1つの把持用センサ(10)の出力から、把持対象物の実態像(大きさや位置)を掴むことができる。
【0024】
請求項9に記載のように、
前記圧電素子(30)として、複数の前記垂直圧力検出素子(40)を有し、
前記水平方向において、複数の前記垂直圧力検出素子(40)は分散して設けられると良い。
【0025】
これによれば、把持対象物の形状や大きさによらず、垂直圧力などを検出することができる。
【0026】
次に、請求項10に記載のロボットハンド駆動制御装置は、
請求項1に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
時間情報と、超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
距離算出手段(S13)にて算出された距離と、硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力を用いて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とする。
【0027】
このように本発明によれば、把持対象物との距離だけでなく、把持対象物の硬度を算出することができる。このため、算出された硬度に応じた圧力や速度で把持対象物を掴むことができる。また、把持対象物の位置及び大きさを算出することもできるため、精度よく把持対象物を掴むことができる。
【0028】
また、垂直圧力を算出し、算出した垂直圧力に基づいて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態を補正(フィードバック制御)することができる。
【0029】
次に、請求項11に記載のロボットハンド駆動制御装置は、
請求項3に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する前記超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の前記超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
前記超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が前記超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
前記時間情報と、前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、前記把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、前記把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
前記距離算出手段(S13)にて算出された距離と、前記硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、前記実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、前記把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
前記垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
前記せん断力検出素子(72)の検出した静電容量値に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での前記水平方向に加わるせん断力を算出するせん断力算出手段(S21)と、
前記垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力と、前記せん断力算出手段(S21)にて算出されたせん断力とを用いて、前記ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とする。
【0030】
これによれば、請求項10に記載の発明の作用効果に加えて、せん断力を算出することができる。このため、上記した垂直圧力とせん断力に基づいて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態を、より精度よく補正(フィードバック制御)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る把持用センサの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す把持用センサを備えたロボットハンド駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】把持対象物をロボットハンドにより把持する手順を示すフローチャートである。
【図5】把持用センサの変形例を示す平面図である。
【図6】把持用センサの変形例を示す平面図である。
【図7】第2実施形態に係る把持用センサのうち、領域A1の概略構成を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】せん断力検出素子の周辺を拡大した断面図である。
【図10】図7に示す把持用センサを備えたロボットハンド駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】把持対象物をロボットハンドにより把持する手順を示すフローチャートである。
【図12】把持用センサの変形例を示す平面図である。
【図13】把持用センサのその他変形例を示す断面図である。この断面図は、図7のXIII−XIII線に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。以下においては、圧電素子30を構成する下部電極32、圧電体膜34、上部電極36の積層方向を垂直方向と示し、該垂直方向に直交する直交方向を水平方向と示す。
(第1実施形態)
先ず、把持用センサについて説明する。
【0033】
図1及び図2に示す把持用センサ10は、基板12に圧電素子30が形成され、この圧電素子30として、垂直圧力検出素子40と超音波素子42を有する点を主たる特徴とする。
【0034】
基板12は、厚肉部14と、水平方向において厚肉部14に取り囲まれた空洞部16と、空洞部16を架橋して厚肉部14上に形成されたメンブレン18と、を有する。そして、メンブレン18のうち、空洞部16を架橋する部分が、基板12において厚肉部14の形成された部分よりも薄い薄肉部18aとされ、この薄肉部18aは変形可能に設けられている。
【0035】
本実施形態では、図2に示すように、基板12が、単結晶シリコンからなる支持基板20に、酸化シリコンなどの絶縁膜22を介して、単結晶シリコンからなる半導体層24が配置されたSOI(Silicon On Insulator)基板と、半導体層24における絶縁膜22と反対の面上に形成された酸化シリコンなどの絶縁膜26とにより構成されている。基板12において、絶縁膜26側の表面を一面12a、一面12aと反対の支持基板20側の表面を裏面12bとすると、空洞部16は、半導体層24を底部として支持基板20及び絶縁膜22を貫通し、基板12の裏面12bに開口している。このような空洞部16は、基板12を裏面12b側から周知の方法でエッチングすることで形成することができる。基板12のうち、半導体層24及び絶縁膜26がメンブレン18をなしており、空洞部16を架橋している。したがって、水平方向において、空洞部16を取り囲む支持基板20及び絶縁膜22の部分が、厚肉部14となっている。また、基板12において厚肉部14の形成された部分とは、上記厚肉部14と厚肉部14上に位置するメンブレン18からなる。
【0036】
また、本実施形態では、基板12に、一面12aから支持基板20の途中まで到達する深さをもってトレンチ28が形成されている。トレンチ28は、平面略正方形の基板12(チップ)を、水平方向に沿う面積が略等しい4つの領域A1〜A4に区画するように、平面十字状に設けられている。このトレンチ28により、相互の領域A1〜A4において振動伝達が抑制される。トレンチ28にて区画された各領域A1〜A4は、上記した基板12の構造を有している。すなわち、各領域A1〜A4には、空洞部16が形成されており、空洞部16を架橋するメンブレン18の部分が薄肉部18aとなっている。なお、図1では、各領域A1〜A4の薄肉部18aを、破線で囲まれた領域として示している。
【0037】
圧電素子30は、基板12の一面12a上に、下部電極32、圧電体膜34、上部電極36の順に積層形成されてなる。このような圧電素子30によれば、圧電体膜34の圧電効果により、印加された外力を、電極32,36間に生じる電圧として検出することができる。一方、電極32,36間に電圧を印加すると、圧電体膜34の逆圧電効果により、圧電体膜34自体を変形させることができる。
【0038】
本実施形態では、圧電体膜34として、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる膜を採用している。なお、圧電体膜34を挟む電極32,36としては、PtやCuのスパッタ、めっき、導電ペーストの焼き付けなどにより形成されたものを採用することができる。
【0039】
この圧電素子30は、同一の基板12上において、互いに電気的に分離されて複数形成されている。複数の圧電素子30の一部は、メンブレン18の薄肉部18a上に形成されており、複数の圧電素子30の一部は、メンブレン18を介して厚肉部14上に形成されている。そして、互いに電気的に分離された複数の圧電素子30として、垂直圧力検出素子40と超音波素子42を有している。また、複数の圧電素子30の電極32,36は、基板12の一面12a上に形成された図示しないパッド(外部接続用電極)と電気的に接続されている。電極32,36とパッドとの電気的な接続は、基板12の一面12a上に形成された図示しない配線を用いても良い。また、絶縁膜26に形成された図示しないコンタクトホール、及び、半導体層24の表層に形成された図示しない拡散層を用いても良い。また、絶縁膜26が多層膜の場合、絶縁膜26内に設けられた内層配線を用いても良い。さらには、図示しない貫通電極により、基板12の裏面12bに形成されたパッドと電気的に接続されても良い。
【0040】
垂直圧力検出素子40は、把持用センサ10に対して垂直方向に加わる垂直圧力(接触圧とも言う)を検出すべく、圧電素子30のうち、上部電極36上に、樹脂やゴムなどの電気絶縁性材料からなる突起部38を有している。このため、後述するロボットハンドが把持対象物を掴むと、把持対象物は、圧電素子30のうち、垂直圧力検出素子40の突起部38に接触する。このため、垂直圧力検出素子40において、圧電体膜34の圧電効果により、垂直圧力を、電極32,36間に生じる電圧として検出することができる。
【0041】
本実施形態において、垂直圧力検出素子40は、メンブレン18の薄肉部18a上に設けられず、メンブレン18を介して、基板12の厚肉部14上に設けられている。また、各領域A1〜A4に垂直圧力検出素子40がそれぞれ設けられており、図1に示すように、各領域A1〜A4において、平面矩形状の薄肉部18aを取り囲むように、矩形の四辺に対応して垂直圧力検出素子40がそれぞれ設けられている。すなわち各領域A1〜A4に、4つの垂直圧力検出素子40がそれぞれ設けられており、各垂直圧力検出素子40は互いに電気的に分離されている。
【0042】
超音波素子42は、超音波の送信及び超音波の受信(送信した超音波の反射波の受信)の少なくとも一方に用いられるものであり、水平方向において、少なくとも基板12の空洞部16上に設けられている。すなわち、メンブレン18の薄肉部18a上に設けられている。このため、送信用の超音波素子42では、電極32,36に駆動信号が印加されると、圧電体膜34の逆圧電効果により圧電体膜34自体が変形し、これによりメンブレン18の薄肉部18aが垂直方向に振動して、外部に超音波を送信することができる。一方、受信用の超音波素子42では、超音波を受けてメンブレン18の薄肉部18aが垂直方向に振動すると圧電体膜34に歪が生じ、圧電体膜34の圧電効果により、超音波を、電極32,36間に生じる電圧として検出する、すなわち超音波を受信することができる。
【0043】
本実施形態では、各領域A1〜A4において、メンブレン18の薄肉部18a上に超音波素子42が形成されている。より詳しくは、図1に示すように平面矩形状の薄肉部18a全域を覆うように、薄肉部18aに対応した矩形状を有して形成されている。各領域A1〜A4において、超音波素子42と垂直圧力検出素子40との間には所定の空隙が設けられている。そして、また、4つの超音波素子42は互いに電気的に分離されており、領域A1の超音波素子42のみが送信と受信が可能な送受信用素子42aとされ、残りの領域A2〜A4の超音波素子42は、受信専用の受信用素子42bとなっている。すなわち、同一の基板12に、超音波を送信できる超音波素子42(42a)を1つと、超音波を受信できる超音波素子42(42a,42b)を4つ有している。このように、超音波を受信できる超音波素子42を複数有すると、位相差から、把持対象物との距離や硬度だけでなく、位置や大きさといった把持対象物の実態像を検出することができる。
【0044】
次に、上記した把持用センサ10を備えるロボットハンド駆動制御装置の構成について説明する。
【0045】
図3に示すように、ロボットハンド駆動制御装置50は、上記した把持用センサ10以外にも、制御回路52、発振回路54、ドライバ56、受信回路58,62、A/D変換回路60,64,68、処理回路66、メモリ70を備えている。
【0046】
制御回路52は、図示しない中央演算装置(CPU)、CPUが実行する各種プログラムが格納されたリードオンメモリ(ROM)、CPUがROMに格納された各プログラムにしたがって実行する各種演算のための作業領域として用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えている。そして、発振回路54に対し、超音波素子42aを駆動させる駆動信号の生成を指示する機能、送受信素子42aの送信/受信を切り替える機能、把持対象物の有無、距離、硬度、位置、及び形状を算出する機能、算出した距離、硬度、位置、及び形状を用いて、ロボットハンドを動かすアクチュエータ100の駆動を制御する機能、垂直圧力を算出する機能、算出された垂直圧力に基づいて、アクチュエータ100の駆動を補正(フィードバック制御)する機能などを有している。
【0047】
発振回路54は、制御回路52からの指示信号を受けると、所定周波数の駆動信号を出力する。ドライバ56は、発振回路54からの駆動信号により送受信素子42aを駆動する駆動回路であり、これにより、送受信素子42aから所定周波数の超音波が送信される。なお、本実施形態では、ドライバ56が、トランスなどの電力増幅回路を含んでいる。
【0048】
受信回路58,62は、対応する超音波素子42a,42bの受信信号を増幅するアンプや、増幅された受信信号に対してフィルタ処理を行うフィルタなどを含む。そして、受信回路58,62にて処理された信号は、A/D変換回路60,64を経て、制御回路52に入力される。なお、図3では、受信用素子42bと、該受信用素子42bの受信信号を処理する受信回路62及びA/D変換回路64とを、便宜上、1つずつのみ示している。しかしながら、上記したように、把持用センサ10は受信用素子42bを3つ有しており、ロボットハンド駆動制御装置50は、3つの受信用素子42bと、各受信用素子42bに対応する受信回路62及びA/D変換回路64を有している。
【0049】
処理回路66も、受信回路58,62同様、対応する垂直圧力検出素子40の出力信号を増幅するアンプや、増幅された信号に対してフィルタ処理を行うフィルタなどを含む。そして、処理回路66にて処理された信号は、A/D変換回路68を経て、制御回路52に入力される。なお、図3では、垂直圧力検出素子40と、処理回路66及びA/D変換回路68とを、便宜上、1つずつのみ示している。しかしながら、上記したように、把持用センサ10は各領域A1〜A4に4つの垂直圧力検出素子40、すなわち計16個の垂直圧力検出素子40を有しており、ロボットハンド駆動制御装置50は、16個の垂直圧力検出素子40と、各垂直圧力検出素子40に対応する処理回路66及びA/D変換回路68を有している。
【0050】
メモリ70は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、ロボットハンドを動かすアクチュエータ100の駆動を制御するためのパラメータが格納されている。具体的には、把持用センサ10にて検出することができないパラメータ、例えば把持対象物の重量を示す情報と、把持対象物の摩擦係数を示す情報などが格納されている。また、硬度を算出する際の距離と振幅と対応関係を示すマップ、硬度、把持対象物の重量、及び摩擦係数と、垂直圧力との関係を示すマップなどが格納されている。
【0051】
次に、制御回路52が所定のプログラムにしたがって実行する、ロボットハンドの把持対象物を掴む動作について、図4を用いて説明する。
【0052】
先ずロボットハンド駆動制御装置50の電源がオンされると、制御回路52は、発振回路54に対し、駆動信号を出力すべく指示信号を出力する。発振回路54は、制御回路52から指示を受け、所定周波数の駆動信号を出力する(ステップS10)。
【0053】
生成された駆動信号(電圧信号)は、ドライバ56を介して送受信用素子42aに伝達される。これにより、送受信用素子42aは垂直方向に振動し、振動がメンブレン18の薄肉部18aに伝達され、外部に超音波として送信される。この超音波の周波数は駆動信号の周波数と一致している。
【0054】
送信処理の開始後、所定時間が経過すると、制御回路52は、送受信用素子42aが受信回路58に接続されるように切り替える。そして、制御回路52は、受信回路58,62及びA/D変換回路60,64を経て取得した超音波を受信できる素子42a,42bの受信信号の振幅が、所定の閾値より大きいか否か、すなわち、把持対象物からの反射波を受信した超音波素子42a,42bがあるか否かを判定する(ステップS11)。
【0055】
ステップS11において、反射波を受信した超音波素子42a,42bがないと判定した場合、制御回路52は、対応する計測時間を経過したか否かを判定する(ステップS12)。そして、計測時間を経過していなければステップS11に戻る。一方、計測時間を超えたと判定した場合は、ステップS10に戻る。なお、計測時間とは、把持対象物による反射波が検出可能なタイミング(検出可能開始タイミング)から検出可能終了までの時間であり、本実施形態では予め設定されている。
【0056】
ステップS11において、反射波を受信した超音波素子42a,42bがあると判定した場合、制御回路52は、送受信用素子42aから超音波が送信され、該超音波の反射波が、いずれかの超音波素子42a,42bにて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する(ステップS13)。このステップS13が、特許請求の範囲に記載の距離算出手段に相当する。なお、以下においては、全ての超音波素子42a,42bにおいて反射波を受信したものとする。
【0057】
次いで、制御回路52は、上記した時間情報と、超音波素子42a,42bにて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、把持対象物の硬度(予想硬度)を算出する(ステップS14)。このステップS14が、特許請求の範囲に記載の硬度算出手段に相当する。超音波は、対象物が硬いほどその反射量が多くなり、受信信号の振幅は大きくなる。一方、対象物が軟らかいほど反射量が少なくなり、受信信号の振幅が小さくなる。また、受信信号の振幅は、対象物との距離にも依存する。したがって、時間情報、すなわち距離と、振幅とから、メモリ70に格納されたマップにより、制御回路52は、把持対象物の硬度(予想硬度)を算出することができる。
【0058】
また、ステップS11にて、反射波を受信した超音波素子42a,42bが複数あると判定した場合、制御回路52は、複数の超音波素子42a,42bにて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、把持対象物の位置及び大きさ、すなわち把持対象物の実態像を算出する(ステップS15)。このステップS15が、特許請求の範囲に記載の実態像算出手段に相当する。なお、超音波素子42a,42bにおいて、素子間の位相差を検出してプロットしていくと、把持対象物の位置だけでなく、大きさもわかる。このため、大きさを算出するには、超音波を受信できる超音波素子42a,42bの個数が多いほど好ましい。
【0059】
そして、制御回路52は、ステップS13にて算出した距離と、ステップS14にて算出した硬度と、ステップS15にて算出した位置及び大きさとを用いて、ロボットハンドが把持対象物を把持するように、モータ等のアクチュエータ100の駆動を制御する(ステップS16)。このステップS16が、特許請求の範囲に記載の把持制御手段に相当する。本実施形態では、算出した硬度情報を用いるため、把持対象物を掴むスピードや圧力を硬度に応じて設定することができる。なお、本実施形態では、制御回路52が、メモリ70に格納された把持対象物の重量、摩擦係数の情報を読み出し、これら情報もアクチュエータ100の駆動制御に用いる。このため、把持対象物に応じたロボットハンドの高精度の動作が可能となる。
【0060】
次いで、制御回路52は、ロボットハンドの把持動作が完了したか否かを判定する(ステップS17)。この判定は、アクチュエータ100が、ステップS16で指示した所定動作を完了したか否かで判定される。例えばアクチュエータ100としてサーボモータを用いると、サーボモータが回転角度を検出するエンコーダーを備えているため、エンコーダーの出力から、モータが所定位置に到達したか否か、すなわちロボットハンドの把持動作が完了か否かを検出することができる。
【0061】
ステップS17で把持動作完了と判定すると、制御回路52は、垂直圧力検出素子40の検出信号に基づいて、垂直圧力を算出する(ステップS18)。このステップS18が、特許請求の範囲に記載の垂直圧力算出手段に相当する。
【0062】
そして、制御回路52は、ステップS18で算出した垂直圧力が所定の閾値を超えたか否かで、ロボットハンドが把持対象物に接触しているか否かを判定する(ステップS19)。このステップS19で、接触していないと判定した場合、ステップS10に戻る。
【0063】
一方、ステップS19において、接触ありと判定した場合、制御回路52は、ステップS18で算出した垂直圧力を用いて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する(ステップS20)。このステップS20が、特許請求の範囲に記載の把持補正手段に相当する。例えば、制御回路52は、ステップS18にて算出した垂直圧力が、メモリ70に格納された推奨垂直圧力と異なる場合には、垂直圧力が推奨垂直圧力となるように、アクチュエータ100をフィードバック制御する。すなわち、把持対象物を掴んだロボットハンドの把持力を調整する。なお、推奨垂直圧力とは、硬度、把持対象物の重量、及び摩擦係数との対応関係が、マップとしてメモリ70に格納されている。
【0064】
以上が、ロボットハンドにより把持対象物を掴む動作である。この動作の完了後、図示しない別のフローにしたがって、例えば把持対象物を所定位置に移送し、位置決め配置する動作が実行される。
【0065】
次に、本実施形態に係る把持用センサ10及びロボットハンド駆動制御装置50について、特徴部分の効果を説明する。
【0066】
本実施形態では、メンブレン18上に複数の圧電素子30が形成され、この圧電素子30の一部を、垂直圧力検出素子40として機能させ、垂直圧力検出素子40を除く圧電素子30の少なくとも一部を、超音波素子42として機能させる。したがって、把持用センサ10として、距離センサとしての超音波素子42と、触覚センサとしての垂直圧力検出素子40とを備えながらも、部品点数を削減することができる。また、部品点数削減により、体格の小型化や、製造コストの低減を図ることができる。
【0067】
特に本実施形態では、垂直圧力検出素子40を、水平方向において、メンブレン18を介して厚肉部14上に設けている。厚肉部14は、基板12の他の部分、例えば空洞部16上の位置するメンブレン18の薄肉部18a、に較べて剛性が高いため、精度よく垂直圧力を検出することができる。
【0068】
また、本実施形態では、基板12が空洞部16を複数有しており、各空洞部16上の薄肉部18aをそれぞれ覆うように形成された超音波素子42は、互いに電気的に分離されている。また、同一の基板12に、複数の超音波素子42として、超音波を送信する送受信用素子42aと、超音波を受信する複数の超音波素子42a,42bが集積されている。このため、1つの把持用センサ10から、把持対象物との距離や硬度だけでなく、把持対象物の実態像(大きさや位置)を掴むことができる。すなわち、ロボットハンドの動作を、把持対象物に応じて高精度に制御することができる。
【0069】
また、本実施形態では、圧電素子30として、複数の垂直圧力検出素子40を有し、水平方向において、複数の垂直圧力検出素子40が分散して設けられている。このため、把持対象物の形状や大きさによらず、垂直圧力を検出することができる。
【0070】
また、本実施形態では、把持用センサ10が備える超音波素子42a,42bにより、把持対象物との距離だけでなく、把持対象物の硬度を算出することができる。このため、把持対象物の硬さが不明でも、算出された硬度に応じた圧力や速度で把持対象物を掴むことができる。また、把持対象物の位置及び大きさを算出することもできるため、精度よく把持対象物を掴むことができる。さらには、垂直圧力検出素子40により、垂直圧力を算出することができる。このため、把持対象物を掴んだ後に、算出した垂直圧力に基づいて、ロボットハンドの動作を補正(フィードバック制御)することができる。
【0071】
(変形例)
上記実施形態では、基板12の裏面12b側から形成された空洞部16の例を示した。しかしながら、空洞部16は、基板12の一面12a側から形成されてもよい。
【0072】
把持用センサ10における圧電素子30の配置(垂直圧力検出素子40及び超音波素子42の配置)は上記例に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、把持用センサ10が、超音波素子42として、送受信用素子42aを1つ、受信用素子42bを3つ有する例を示した。しかしながら、把持用センサ10としては、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子42を少なくとも1つ有するものであれば良い。例えば超音波の送信のみに用いられる超音波素子42を1つ有し、受信用素子42bを複数有する構成としても良い。また、1つの基板12に形成される垂直圧力検出素子40の個数も特に限定されない。
【0073】
図5に示す例では、把持用センサ10が、基板12に空洞部16(図示せず)を1つのみ有しており、メンブレン18における空洞部16上の薄肉部18aを覆うように1つの超音波素子42が形成されている。また、基板12には、垂直圧力検出素子40が1つ形成されている。このように、把持用センサ10が1つの超音波素子42を有する構成の場合、ロボットハンド駆動制御装置50として、位相差から把持対象物の実態像(位置及び大きさ)を算出するには、複数の把持用センサ10(複数のチップ)を備えれば良い。
【0074】
一方、図6に示す例では、圧電素子30が、領域A1における基板12の一面12aほぼ全面においてマトリクス状(行列状)に設けられている。具体的には、9行×9列の配置となっており、各圧電素子30は、水平方向において略正方形をなしている。そして、厚肉部14上に位置する圧電素子30の一部、詳しくは、最外周を1周目として2周目の圧電素子30が、一つ置きに垂直圧力検出素子40となっている。また、それ以外の圧電素子30は、超音波素子42となっている。これら複数の超音波素子42は、下部電極32同士、上部電極36同士が、それぞれ同電位となるように、ロボットハンド駆動制御装置50において制御される。すなわち、構造上分割されているものの、電気的には1つの超音波素子42として振る舞う。なお、他の領域A2〜A4でも同様の構成となっている。図6に示す構成は、図5のように、基板12に1つの空洞部16のみを有する構成にも適用することができる。
【0075】
上記実施形態では、メモリ70に、把持対象物の重量や摩擦係数に関するデータが格納される例を示した。しかしながら、把持用センサ10と別のセンサとして、ロボットハンド駆動制御装置50が、荷重センサ、表面状態(摩擦係数)を検出するセンサを備え、これらセンサからの信号に基づいて、把持対象物の重量や表面状態(摩擦係数)を算出する構成としても良い。
【0076】
上記実施形態では、トレンチ28を空隙としたが、トレンチ28内を、振動減衰部材にて埋めた構成としても良い。このような振動減衰部材としては、減衰定数が高い材料、好ましくは、弾性率が低く、密度が小さい材料が好適である。例えば、ゴム系材料、発泡樹枝などの気孔を含む樹脂などを用いることができる。また、トレンチ28を有さない構成としても良い。しかしながら、トレンチ28を設けたほうが、水平方向において体格を小型化することができる。
【0077】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した把持用センサ10及びロボットハンド駆動制御装置50と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、把持用センサ10が、触覚センサとして垂直圧力検出素子40のみを有する例を示した。
【0078】
これに対し、本実施形態では、把持用センサ10が、触覚センサとして、垂直圧力検出素子40とともに、せん断力検出素子72も備える点を特徴とする。また、ロボットハンド駆動制御装置50が、上記した垂直圧力とともにせん断力検出素子72にて検出されたせん断力を用いて、ロボットハンドの把持状態をフィードバック制御する点を特徴とする。
【0079】
図7及び図8に示すように、本実施形態に係る把持用センサ10は、第1実施形態と同じ態様の超音波素子42を備えている。なお、図7では、基板12のうち、領域A1のみを示しているが、残りの領域A2〜A4も、領域A1と同様の構成を有している。
【0080】
また、第1実施形態同様、メンブレン18を介して、基板12の厚肉部14上には、垂直圧力検出素子40が設けられている。本実施形態では、図7に示すように、平面矩形状の薄肉部18a(平面矩形状の超音波素子42)を取り囲むように、複数(図7では12個)の垂直圧力検出素子40が所定ピッチを有しつつ矩形環状に設けられている。これら垂直圧力検出素子40は、互いに電気的に分離されており、個別に垂直圧力の検出が可能となっている。
【0081】
また、水平方向において、垂直圧力検出素子40の隣には、垂直圧力検出素子40及び超音波素子42とは別の圧電素子74が設けられている。そして、互いに隣り合う垂直圧力検出素子40及び圧電素子74において、それぞれの少なくとも上部電極36同士により、水平方向に加わるせん断力(すべり角とも言う)を静電容量値の変化として検出するためのせん断力検出素子72が構成されている。
【0082】
本実施形態では、垂直圧力検出素子40の上部電極36、ひいては垂直圧力検出素子40全体が、水平方向において矩形状(略正方形)をなしており、垂直圧力検出素子40の上部電極36の矩形各辺に対して、互いに電気的に分離された圧電素子74がそれぞれ配置されている。そして、垂直圧力検出素子40の上部電極36の4辺に対して、圧電素子74の上部電極36がそれぞれ対向配置されている。
【0083】
また、圧電素子30のうち、少なくともせん断力検出素子72を構成する垂直圧力検出素子40及び圧電素子74の上部電極36上には、水平方向において矩形状をなし、垂直方向において所定高さを有する柱部76がそれぞれ形成されている。本実施形態では、超音波素子42の感度を向上するために、超音波素子42には柱部76を設けず、垂直圧力検出素子40及び圧電素子74のみに柱部76を設けている。この柱部76は、対応する上部電極36と電気的に接続されており、垂直圧力検出素子40の柱部76の矩形4辺に対して、互いに電気的に分離された圧電素子74の柱部76がそれぞれ対向配置されている。そして、図9に示すように、せん断力検出素子72を構成する容量電極は、垂直圧力検出素子40の上部電極36及び柱部76と、圧電素子74の上部電極36及び柱部76により構成されている。なお、垂直圧力検出素子40において、突起部38は、柱部76を介して上部電極36上に形成されている。
【0084】
本実施形態では、1つの垂直圧力検出素子40に対し、4つの圧電素子74が設けられている。1つの垂直圧力検出素子40に対応する4つの圧電素子74は互いに電気的に分離されており、異なる垂直圧力検出素子40に対応する圧電素子74も互いに電気的に分離されている。このように、1つの垂直圧力検出素子40につき、4つのせん断力検出素子72が形成されている。圧電素子74は、図7に示すように、平面長方形をなしており、短手方向の幅が垂直圧力検出素子40の幅とほぼ等しく、長手方向の幅が垂直圧力検出素子40の幅よりも長くなっている。このため、垂直圧力検出素子40の柱部76のほうが、圧電素子74の柱部76よりも、水平方向における断面積が小さくなっている。
【0085】
なお、矩形状の柱部76の直交する2辺にそれぞれ沿う方向と、矩形状の上部電極36の直交する2辺にそれぞれ沿う方向は互いに一致している。柱部76の構成材料としては、上部電極36と電気的に接続される材料、すなわち後述するせん断力検出素子72の容量電極を形成できるものであれば採用することができる。例えば、ポリアセチレンやポリチオフェンなどの導電性樹脂、ドープドポリシリコン、銅合金などがある。好ましくは、水平方向に変形しやすいように、上部電極36よりもヤング率の低い材料を用いて形成されると良い。
【0086】
次に、本実施形態に係るロボットハンド駆動制御装置50の構成について、図10を用いて説明する。
【0087】
図10に示すように、ロボットハンド駆動制御装置50は、第1実施形態に示したロボットハンド駆動制御装置50に対し、把持用センサ10が、せん断力検出素子72も有している。そして、せん断力検出素子72の検出した静電容量値を電圧信号に変換するC−V変換回路78と、A/D変換回路80をさらに備えている。なお、C−V変換回路78については周知構成のものを採用することができるため、詳細な説明は割愛する。
【0088】
次に、制御回路52が所定のプログラムにしたがって実行する、ロボットハンドの把持対象物を掴む動作について、図11を用いて説明する。
【0089】
ステップS10からステップS19までは、第1実施形態に示す図4と同じである。ステップS19において、接触ありと判定した場合、制御回路52は、せん断力検出素子72の検出した静電容量値に基づいて、水平方向に加わるせん断力を算出する(ステップS21)。このステップS21が、特許請求の範囲に記載のせん断力算出手段に相当する。
【0090】
そして、制御回路52は、ステップS18で算出した垂直圧力と、ステップS21で算出したせん断力とを用いて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する(ステップS20)。このステップS20が、特許請求の範囲に記載の把持補正手段に相当する。例えば、制御回路52は、第1実施形態同様、ステップS18にて算出した垂直圧力が、メモリ70に格納された推奨垂直圧力と異なる場合には、垂直圧力が推奨垂直圧力となるように、アクチュエータ100をフィードバック制御する。すなわち、把持対象物を掴んだロボットハンドの把持力を調整する。また、ステップS19にて算出したせん断力が所定の閾値未満である場合には、把持対象物を落とす虞があるため、垂直圧力が高まる方向に、アクチュエータ100をフィードバック制御する。例えば、せん断力の閾値もメモリ70に格納されている。
【0091】
次に、本実施形態に係る把持用センサ10及びロボットハンド駆動制御装置50について、特徴部分の効果を説明する。
【0092】
本実施形態では、垂直圧力検出素子40を利用して、静電容量式のせん断力検出素子72が構成されている。したがって、垂直圧力検出素子40を利用せずに、せん断力検出素子72を設ける構成に較べて、把持用センサ10の構成を簡素化することができる。これにより、例えば水平方向において体格の小型化を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態では、1つの垂直圧力検出素子40に対し、4つの圧電素子74がそれぞれ対向配置されている。また、垂直圧力検出素子40の容量電極(上部電極36及び柱部76)は平面矩形状をなしており、該容量電極の矩形4辺に対して、互いに電気的に分離された圧電素子74の容量電極(上部電極36及び柱部76)がそれぞれ対向配置されている。したがって、水平方向の2軸(図7に示す紙面左右方向と紙面上下方向)において、せん断力を検出することができる。すなわち、垂直圧力と合わせて3軸力を検出することができる。
【0094】
特に本実施形態では、上記したように、せん断力検出素子72を構成する垂直圧力検出素子40及び圧電素子74の上部電極36上に、柱部76が形成されている。このため、せん断力検出素子72を構成する容量電極が上部電極36のみからなる構成に較べて、容量電極の対向面積を大きくし、初期の静電容量値を大きくすることができる。また、柱部76を設けることで、容量電極の垂直方向の長さが長くなり、容量電極が変形しやすくなるため、容量電極の対向距離の変化量を大きくすることができる。
【0095】
さらに本実施形態では、垂直圧力検出素子40の柱部76のほうが、圧電素子74の柱部76よりも、水平方向における断面積が小さくされている。これにより、垂直圧力検出素子40の柱部76が変形しやすいため、水平方向の2軸において、せん断力の検出感度を向上することができる。なお、上部電極36よりもヤング率の低い材料を用いて柱部76を形成すると、上部電極36のみによって同じ高さの容量電極を形成する構成に較べて、容量電極を変形しやすくすることができる。
【0096】
また、本実施形態では、把持用センサ10が、せん断力検出素子72を有しており、ロボットハンド駆動制御装置50は、せん断力検出素子72の検出信号から、せん断力を算出するせん断力算出手段(ステップS21)を備える。このため、把持対象物を掴んだ後に、垂直圧力とせん断力に基づいて、ロボットハンドによる把持対象物の把持状態を、より精度よく補正(フィードバック制御)することができる。
【0097】
(変形例)
上記実施形態では、せん断力検出素子72を構成する垂直圧力検出素子40及び圧電素子74が、容量電極の構成要素として、上部電極36及び柱部76をそれぞれ有する例を示した。しかしながら、柱部76を有さず、容量電極が上部電極36のみにより構成されても良い。
【0098】
本実施形態においても、把持用センサ10における圧電素子30の配置(垂直圧力検出素子40、超音波素子42、せん断力検出素子72、及び圧電素子74の配置)は上記例に限定されるものではない。少なくとも1つの垂直圧力検出素子40、少なくとも1つの超音波素子42、垂直圧力検出素子40を利用した少なくとも1つのせん断力検出素子72を有せば良い。上記実施形態では、垂直圧力検出素子40と圧電素子74とによりせん断力検出素子72を構成したが、圧電素子74を設けず、垂直圧力検出素子40と超音波素子42とによりせん断力検出素子72を構成しても良い。
【0099】
例えば図12に示す例では、圧電素子30が、領域A1における基板12の一面12aほぼ全面においてマトリクス状(行列状)に設けられている。具体的には、12行×12列の配置となっている。詳しくは、図7に示した構成において、垂直圧力検出素子40を中心とし、4辺に圧電素子74を対向配置させた十字状の配置を、厚肉部14上だけでなく、メンブレン18の薄肉部18a上においても繰り返し構造としている。そして、厚肉部14上に設けられた垂直圧力検出素子40を除く圧電素子30を、超音波素子42としている。これら複数の超音波素子42は、超音波の送信時(ステップS10)、又は、超音波の受信時(ステップS11)に、下部電極32同士、上部電極36同士が同電位となるように、ロボットハンド駆動制御装置50において制御される。すなわち、構造上分割されているものの、電気的には1つの超音波素子42として振る舞う。一方、せん断力の算出時(ステップS21)に、超音波素子42のうち、水平方向に沿う2軸(図12の紙面左右方向と紙面上下方向)で垂直圧力検出素子40の隣り合う超音波素子42のみ、その容量電極(上部電極36及び柱部76)がせん断力検出に用いられるように、ロボットハンド駆動制御装置50において制御される。なお、他の領域A2〜A4でも同様の構成となっている。図12に示す構成は、図5のように、基板12に1つの空洞部16のみを有する構成にも適用することができる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0101】
上記実施形態では、垂直圧力検出素子40が、基板12の厚肉部14上に形成される例を示したが、垂直圧力検出素子40が、メンブレン18の薄肉部18a上に形成された構成とすることもできる。しかしながら、薄肉部18aは変形可能に設けられているため、垂直圧力の検出ばらつきや、薄肉部18aのダメージ等が考えられる。したがって、上記実施形態に示すように、厚肉部14上に垂直圧力検出素子40を設けることが好ましい。
【0102】
上記実施形態では、せん断力検出素子72として、静電容量式の例を示した。しかしながら、例えば図13に示すように、接触式のスイッチを接触タイミングがずれるように複数設けてなるせん断力検出素子を採用することもできる。図13は、図7のXIII−XIII線に沿う断面図であり、その断面構造は、垂直圧力検出素子40と垂直圧力検出素子40に隣り合う圧電素子74との間隔が一定でない点を除けば図7(第2実施形態)と同じである。図13に示す断面図には、3つの垂直圧力検出素子40が示されており、紙面左側から、圧電素子74との間隔がD1、D2(>D1)、D3(>D2)となっている。このため、せん断力が小さいときには、例えば間隔D1の垂直圧力検出素子40の柱部76のみが、隣り合う圧電素子74の柱部76に接触する。すなわち、垂直圧力検出素子40と圧電素子74の上部電極36が電気的に接続される(ショートする)。また、せん断力が中程度のときには、例えば間隔D1と間隔D2の垂直圧力検出素子40の柱部76が、隣り合う圧電素子74の柱部76に接触する。また、せん断力が大きいときには、間隔D1、間隔D2、間隔D3の垂直圧力検出素子40の柱部76が、隣り合う圧電素子74の柱部76に接触する。したがって、どの間隔の垂直圧力検出素子40まで隣り合う圧電素子74とショートしているかにより、せん断力がどの程度かを算出することができる。例えば、間隔とせん断力との対応関係を示すマップがメモリ70に格納され、制御回路52は、このマップに基づいてせん断力を算出する。
【0103】
すなわち、把持用センサ10が、
圧電素子30として、複数の垂直圧力検出素子40を有し、
垂直圧力検出素子40の隣には別の圧電素子74(超音波素子42でも良い)が設けられ、水平方向において、複数の垂直圧力検出素子40は分散しており、
互いに隣り合う垂直圧力検出素子40及び別の圧電素子74において、上部電極36上には、該上部電極36と電気的に接続された柱部76が形成され、
垂直圧力検出素子40において、突起部38は、柱部76を介して上部電極36上に形成されており、
各垂直圧力検出素子40の柱部76と、該垂直圧力検出素子40に隣り合う別の圧電素子74の柱部76との間隔は、水平方向のうちの少なくとも1軸方向において、多段(間隔D1〜D3)に設定された構成としても良い。
【符号の説明】
【0104】
10・・・把持用センサ
12・・・基板
12a・・・一面
14・・・厚肉部
16・・・空洞部
18・・・メンブレン
30・・・圧電素子
38・・・突起部
40・・・垂直圧力検出素子
42・・・超音波素子
50・・・ロボットハンド駆動制御装置
72・・せん断力検出素子
74・・・圧電素子(別の圧電素子)
76・・・柱部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚肉部(14)と、該厚肉部(14)に取り囲まれた空洞部(16)と、該空洞部(16)を架橋して前記厚肉部(14)上に形成されたメンブレン(18)と、を有する基板(12)と、
前記メンブレン(18)における厚肉部(14)と反対の一面(12a)上に、下部電極(32)、圧電体膜(34)、上部電極(36)の順に積層形成された圧電素子(30)と、を備え、
前記圧電素子(30)は、互いに電気的に分離されて複数形成されており、
複数の前記圧電素子(30)のうち、一部の前記圧電素子(30)の上部電極(36)上には、電気絶縁性材料からなる突起部(38)が形成され、該突起部(38)を有する圧電素子(30)は、前記圧電素子(30)が積層された垂直方向に加わる垂直圧力を検出するための垂直圧力検出素子(40)とされており、
複数の前記圧電素子(30)のうち、前記垂直圧力検出素子(40)とは別の圧電素子(30)として、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子(42)を有し、該超音波素子(42)は、前記垂直方向に直交する水平方向において、少なくとも前記基板(12)の空洞部(16)上に設けられていることを特徴とする把持用センサ。
【請求項2】
前記垂直圧力検出素子(40)は、前記水平方向において、前記基板(12)の厚肉部(14)上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の把持用センサ。
【請求項3】
前記水平方向において、前記垂直圧力検出素子(40)の隣には、前記別の圧電素子(74,42)が設けられ、
互いに隣り合う前記垂直圧力検出素子(40)及び前記別の圧電素子(74,42)において、それぞれの少なくとも上部電極(36)により、前記水平方向に加わるせん断力を静電容量値の変化として検出するためのせん断力検出素子(72)が構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の把持用センサ。
【請求項4】
前記垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)は、前記水平方向において矩形状をなし、
前記垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)の矩形4辺に対して、前記別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)が対向配置され、
前記垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)に対向配置された前記別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)は、互いに電気的に分離されていることを特徴とする請求項3に記載の把持用センサ。
【請求項5】
前記圧電素子(30)のうち、少なくとも前記せん断力検出素子(72)を構成する前記垂直圧力検出素子(40)及び前記別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)上には、該上部電極(36)と電気的に接続され、前記水平方向において矩形状をなす柱部(76)が形成され、
前記垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)の矩形4辺に対して、前記別の圧電素子(74,42)の柱部(76)が対向配置され、
前記せん断力検出素子(72)は、前記上部電極(36)と前記柱部(76)とにより構成され、
前記垂直圧力検出素子(40)において、前記突起部(38)は、前記柱部(76)を介して前記上部電極(36)上に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の把持用センサ。
【請求項6】
前記垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)のほうが、該垂直圧力検出素子(40)に隣り合う別の圧電素子(74,42)の柱部(76)よりも、前記水平方向における断面積が小さいことを特徴とする請求項5に記載の把持用センサ。
【請求項7】
前記柱部(76)は、前記上部電極(36)よりもヤング率の低い材料を用いて形成されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の把持用センサ。
【請求項8】
前記基板(12)は、前記空洞部(16)を複数有し、
各空洞部(16)上に位置する超音波素子(42)は、互いに電気的に分離されており、複数の前記超音波素子(42)として、超音波を送信する超音波素子(42a)を少なくとも1つ有しつつ、超音波を受信する超音波素子(42a,42b)を複数有することを特徴とすることを特徴とする請求項3〜7いずれか1項に記載の把持用センサ。
【請求項9】
前記圧電素子(30)として、複数の前記垂直圧力検出素子(40)を有し、
前記水平方向において、複数の前記垂直圧力検出素子(40)は分散して設けられていることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の把持用センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する前記超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の前記超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
前記超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が前記超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
前記時間情報と、前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、前記把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、前記把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
前記距離算出手段(S13)にて算出された距離と、前記硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、前記実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、前記把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
前記垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
前記垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力を用いて、前記ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とするロボットハンド駆動制御装置。
【請求項11】
請求項3に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する前記超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の前記超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
前記超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が前記超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
前記時間情報と、前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、前記把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、前記把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
前記距離算出手段(S13)にて算出された距離と、前記硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、前記実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、前記把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
前記垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
前記せん断力検出素子(72)の検出した静電容量値に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での前記水平方向に加わるせん断力を算出するせん断力算出手段(S21)と、
前記垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力と、前記せん断力算出手段(S21)にて算出されたせん断力とを用いて、前記ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とするロボットハンド駆動制御装置。
【請求項1】
厚肉部(14)と、該厚肉部(14)に取り囲まれた空洞部(16)と、該空洞部(16)を架橋して前記厚肉部(14)上に形成されたメンブレン(18)と、を有する基板(12)と、
前記メンブレン(18)における厚肉部(14)と反対の一面(12a)上に、下部電極(32)、圧電体膜(34)、上部電極(36)の順に積層形成された圧電素子(30)と、を備え、
前記圧電素子(30)は、互いに電気的に分離されて複数形成されており、
複数の前記圧電素子(30)のうち、一部の前記圧電素子(30)の上部電極(36)上には、電気絶縁性材料からなる突起部(38)が形成され、該突起部(38)を有する圧電素子(30)は、前記圧電素子(30)が積層された垂直方向に加わる垂直圧力を検出するための垂直圧力検出素子(40)とされており、
複数の前記圧電素子(30)のうち、前記垂直圧力検出素子(40)とは別の圧電素子(30)として、超音波の送信及び超音波の受信の少なくとも一方に用いられる超音波素子(42)を有し、該超音波素子(42)は、前記垂直方向に直交する水平方向において、少なくとも前記基板(12)の空洞部(16)上に設けられていることを特徴とする把持用センサ。
【請求項2】
前記垂直圧力検出素子(40)は、前記水平方向において、前記基板(12)の厚肉部(14)上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の把持用センサ。
【請求項3】
前記水平方向において、前記垂直圧力検出素子(40)の隣には、前記別の圧電素子(74,42)が設けられ、
互いに隣り合う前記垂直圧力検出素子(40)及び前記別の圧電素子(74,42)において、それぞれの少なくとも上部電極(36)により、前記水平方向に加わるせん断力を静電容量値の変化として検出するためのせん断力検出素子(72)が構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の把持用センサ。
【請求項4】
前記垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)は、前記水平方向において矩形状をなし、
前記垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)の矩形4辺に対して、前記別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)が対向配置され、
前記垂直圧力検出素子(40)の上部電極(36)に対向配置された前記別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)は、互いに電気的に分離されていることを特徴とする請求項3に記載の把持用センサ。
【請求項5】
前記圧電素子(30)のうち、少なくとも前記せん断力検出素子(72)を構成する前記垂直圧力検出素子(40)及び前記別の圧電素子(74,42)の上部電極(36)上には、該上部電極(36)と電気的に接続され、前記水平方向において矩形状をなす柱部(76)が形成され、
前記垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)の矩形4辺に対して、前記別の圧電素子(74,42)の柱部(76)が対向配置され、
前記せん断力検出素子(72)は、前記上部電極(36)と前記柱部(76)とにより構成され、
前記垂直圧力検出素子(40)において、前記突起部(38)は、前記柱部(76)を介して前記上部電極(36)上に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の把持用センサ。
【請求項6】
前記垂直圧力検出素子(40)の柱部(76)のほうが、該垂直圧力検出素子(40)に隣り合う別の圧電素子(74,42)の柱部(76)よりも、前記水平方向における断面積が小さいことを特徴とする請求項5に記載の把持用センサ。
【請求項7】
前記柱部(76)は、前記上部電極(36)よりもヤング率の低い材料を用いて形成されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の把持用センサ。
【請求項8】
前記基板(12)は、前記空洞部(16)を複数有し、
各空洞部(16)上に位置する超音波素子(42)は、互いに電気的に分離されており、複数の前記超音波素子(42)として、超音波を送信する超音波素子(42a)を少なくとも1つ有しつつ、超音波を受信する超音波素子(42a,42b)を複数有することを特徴とすることを特徴とする請求項3〜7いずれか1項に記載の把持用センサ。
【請求項9】
前記圧電素子(30)として、複数の前記垂直圧力検出素子(40)を有し、
前記水平方向において、複数の前記垂直圧力検出素子(40)は分散して設けられていることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の把持用センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する前記超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の前記超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
前記超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が前記超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
前記時間情報と、前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、前記把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、前記把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
前記距離算出手段(S13)にて算出された距離と、前記硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、前記実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、前記把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
前記垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
前記垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力を用いて、前記ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とするロボットハンド駆動制御装置。
【請求項11】
請求項3に記載の把持用センサ(10)を、超音波を送信する前記超音波素子(42a)と、超音波を受信する複数の前記超音波素子(42a,42b)とを有するように備えるとともに、
前記超音波素子(42a)から超音波が送信され、該超音波の反射波が前記超音波素子(42a,42b)にて受信されるまでの時間情報に基づいて、ロボットハンドにより把持される把持対象物までの距離を算出する距離算出手段(S13)と、
前記時間情報と、前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の振幅を示す振幅情報に基づいて、前記把持対象物の硬度を算出する硬度算出手段(S14)と、
複数の前記超音波素子(42a,42b)にて受信した反射波の位相差を示す位相差情報に基づいて、前記把持対象物の位置及び大きさを算出する実体像算出手段(S15)と、
前記距離算出手段(S13)にて算出された距離と、前記硬度算出手段(S14)にて算出された硬度と、前記実体像算出手段(S15)にて算出された位置及び大きさとを用いて、前記把持対象物を把持するためのロボットハンドの駆動を制御する把持制御手段(S16)と、
前記垂直圧力検出素子(40)の検出信号に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での垂直圧力を算出する垂直圧力算出手段(S18)と、
前記せん断力検出素子(72)の検出した静電容量値に基づいて、前記把持制御手段(S16)による駆動制御が完了した時点での前記水平方向に加わるせん断力を算出するせん断力算出手段(S21)と、
前記垂直圧力算出手段(S18)にて算出された垂直圧力と、前記せん断力算出手段(S21)にて算出されたせん断力とを用いて、前記ロボットハンドによる把持対象物の把持状態をフィードバック制御する把持補正手段(S20)と、を備えることを特徴とするロボットハンド駆動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−96870(P2013−96870A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240522(P2011−240522)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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