説明

投写光学系およびこれを用いた投写型表示装置

【課題】色収差や台形ひずみを始めとする諸収差を良好に維持しつつフロントプロジェクションタイプのものに用いる場合にも、コンパクト化という要求に応え得る投写光学系および投写型表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示素子3により光変調された光束を、8枚構成の正の第1群Gと、3枚構成の負の第2群Gと、非球面単レンズよりなる第3群Gから構成されてなる第1光学系1と、非球面反射ミラー4よりなる第2光学系2とからなる投写光学系10によりスクリーン5上に拡大投写する。投写光学系10は軸はずし光学系とされ、投写レンズ系1と第2光学系2の間の位置に、中間像を結像する。また、式(1)、(2)を満足する。T1/Y<12.5(1)、T12/f1<6.0(2) T1は第1光学系1の全長、Yは画像表示素子3上における最大光線高さ、T12は第1光学系1と第2光学系2の距離、f1は第1光学系1の焦点距離。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写光学系および投写型表示装置に関し、特に、画像表示素子に表示された画像を複数枚のレンズからなる第1光学系および凹面ミラーからなる第2光学系を用いてスクリーン上に結像せしめる投写光学系およびこれを用いた投写型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置や投写型テレビ装置の投写光学系においては、従来より光学ガラスを用いた屈折光学系によるものが広く知られているが、近年、光学ガラスにより発生する色収差を改善するために、また、広画角化を図るために投写光学系の一部に反射ミラーを用いたものが知られている。
【0003】
特に、例えば下記特許文献1、2のものでは、装置のコンパクト化の要請から、光学素子を光軸からチルトさせた斜め投映タイプとされており、さらに、このような斜め投映タイプのものにおいて発生する、大きな台形ひずみを低減するため、上記反射ミラーは非球面ミラーとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−235516号公報
【特許文献2】特開2007−79524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のものは、いずれもリアプロジェクションタイプのものに搭載することを主目的として構成されたものであり、コンパクトに構成されているとはいっても、フロントプロジェクションタイプのものに用いる場合には、さらなるコンパクト化が要求される。すなわち、フロントプロジェクションタイプのものでは、持ち運びに便利であること、および机上に置いて投影することが求められていることから、さらに大幅にコンパクト化を促進する必要があった。特に、光学系の光軸方向にコンパクト化を図ることが要求されていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、色収差や台形ひずみを始めとした諸収差を良好に維持しつつフロントプロジェクションタイプのものに用いる場合にも、コンパクト化という要求に応え得る投写光学系および投写型表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の投写光学系は、
1対の共役面のうち、縮小側の共役面である画像表示素子面上の画像を拡大側の共役面であるスクリーン上に拡大して投写する投写光学系において、
前記画像表示素子側から順に、
複数のレンズにより構成され、前記画像表示素子上の画像を中間像として結像させる第1光学系と、前記第1光学系に対して凹面を向けた凹面ミラーからなり、前記中間像を前記スクリーン上に結像する第2光学系とを、配設してなり、
かつ下記の条件式(1)を満足してなることを特徴とするものである。
T1/Y<12.5 (1)
ここで、
T1:前記第1光学系の全長
Y :前記画像表示素子上における最大光線高さ
【0008】
また、上記第1の投写光学系において、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
T12/f1<6.0 (2)
ここで、
T12:前記第1光学系と前記第2光学系の距離
f1 :前記第1光学系の焦点距離
【0009】
また、本発明の第2の投写光学系は、
1対の共役面のうち、縮小側の共役面である画像表示素子面上の画像を拡大側の共役面であるスクリーン上に拡大して投写する投写光学系において、
前記画像表示素子側から順に、
複数のレンズにより構成され、前記画像表示素子上の画像を中間像として結像させる第1光学系と、前記第1光学系に対して凹面を向けた凹面ミラーからなり、前記中間像を前記スクリーン上に結像する第2光学系とを、配設してなり、
前記第1光学系は、前記画像表示素子側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、および少なくとも1枚の非球面レンズを有する第3レンズ群により構成されてなることを特徴とするものである。
【0010】
上記第2の投写光学系において、前記第2光学系と、前記第1光学系のうちの前記第1レンズ群および前記第2レンズ群と、を光軸方向に移動させることによってフォーカス調整を行なうことが好ましい。
【0011】
また、前記凹面ミラーは、回転対称な非球面形状や、回転非対称な非球面形状をなすように構成することが可能である。
【0012】
また、前記第1光学系は、少なくとも1枚の非球面レンズを有することが好ましい。
この場合において、前記第1光学系の前記非球面レンズは回転対称な非球面形状をなすことが好ましい。
【0013】
また、前記第1光学系および前記第2光学系は、互いに共通の光軸を備えていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の投写型表示装置は、前記いずれかの投写光学系を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の投写光学系およびこれを用いた投写型表示装置によれば、前記画像表示素子上における最大光線高さYに対する第1光学系の全長T1を12.5より小さい範囲となるように設定している。すなわち、投写光学系のコンパクト化は、まず、第1光学系の全長を短縮化することにより、図られることになるので、この第1光学系の全長T1が画像表示素子上における最大光線高さYに対して12.5より小さく設定することにより、フロントプロジェクションタイプに搭載する際にも、十分満足しうる程度にコンパクト化を図ることできる。
【0016】
また、1対の共役面のうち、縮小側の共役面側から順に、第1光学系と第2光学系とを配してなり、第1光学系は複数のレンズを有するのに対し、第2光学系は非球面の凹面形状をなす反射ミラーを有するように構成し、かつ第1光学系と第2光学系の間の位置に、中間像を結像するように構成している。したがって、斜入射光学系において入射角を大きな状態としても歪みの少ない実像を、少ない数の反射ミラーを用いてスクリーン上に形成することができ、また、投写光学系を屈折光学系のみで構成した場合と比べて、色収差の発生を抑制することができる。また、第2光学系の反射ミラーを1枚とすることで光学系の組立てが容易となり、また、装置のコンパクト化を促進することができる。
【0017】
また、第1光学系と第2光学系の間の位置に中間像を結像するように構成したことにより、第2光学系のミラーのサイズを小さく構成することができる。
【0018】
本発明の第2の投写光学系およびこれを用いた投写型表示装置によれば、1対の共役面のうち、縮小側の共役面側から順に、第1光学系と第2光学系とを配してなり、第1光学系は、画像表示素子側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、および屈折力の小さい(正または負の屈折力を有する)第3レンズ群により構成されているのに対し、第2光学系は非球面の凹面形状をなす反射ミラーを有するように構成し、かつ第1光学系と第2光学系の間の位置に、中間像を結像するように構成している。したがって、斜入射光学系において入射角を大きな状態としても歪みの少ない実像を、少ない数の反射ミラーを用いてスクリーン上に形成することができ、また、投写光学系を屈折光学系のみで構成した場合と比べて、色収差の発生を抑制することができる。また、第2光学系の反射ミラーを1枚とすることで光学系の組立てが容易となり、また、装置のコンパクト化を促進することができる。
【0019】
また、第1光学系と第2光学系の間の位置に中間像を結像するように構成したことにより、第2光学系のミラーのサイズを小さく構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る投写光学系およびこれを用いた投写型表示装置の実施形態について図1〜3を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る投写型表示装置20を示すものであり、また、図2は、本発明の実施形態に係る投写光学系10を示すものであり、図3は、投写光学系10の第1光学系1のレンズ構成を拡大して示すものである。
【0021】
この投写型表示装置20は、光源(不図示)からの光束を照明光学部(不図示)を介して画像表示素子3に照射し、画像表示素子3により光変調され画像情報を担持した光束を、投写レンズ系からなる第1光学系1および1枚の反射ミラー4からなる第2光学系2により、前側(観察者側)からスクリーン5に拡大投写するものである。スクリーン5はこの投写光学系10の拡大側共役面に、また画像表示素子3はこの投写光学系10の縮小側共役面に略一致するように配置されている。画像表示素子3の光出射側にはカバーガラス(平行平面板)6およびプリズム部(色合成プリズムや光偏向プリズム等)7が配されている。そして、第1光学系1と第2光学系2の間の位置に中間像が形成される。
【0022】
また、本実施形態に係る投写光学系10は軸はずし光学系とされており、反射ミラー4においては、光軸Zの片側(図1中で光軸Zよりも下方)が有効な光反射領域として利用されている。このように、片側に偏った光線のみを利用することにより、図1に示すような位置にスクリーン5を配置することができ、これにより装置の薄型化、コンパクト化をある程度図ることが可能となる。
【0023】
また、この投写光学系10の各要素は図1の紙面(対称面)に関して略面対称形状とされており、光学系の組立てを容易なものとすることができる。
【0024】
また、本実施形態に係る投写光学系10は下記条件式(1)を満足するように構成されている。
T1/Y<12.5 (1)
ここで、
T1:第1光学系1の全長
Y :画像表示素子3上における最大光線高さ
【0025】
投写光学系10のコンパクト化は、第1光学系1の全長によって大きな影響を受けるので、この第1光学系の全長T1が画像表示素子3上における最大光線高さYに対して12.5より小さい値となるように設定することにより、携帯性や机上操作性が要求されるフロントプロジェクションタイプのものに搭載する場合にも、十分満足しうる程度に装置のコンパクト化を図ることできる。
【0026】
なお、上記条件式(1)に替えて、下記条件式(1´)を満足する場合には、上記作用効果を格段と良好なものとすることが可能である。
T1/Y<10.0 (1´)
【0027】
さらに、本実施形態に係る投写光学系10では、下記条件式(2)を満足するように構成することが好ましい。
【0028】
すなわち、投写光学系10のコンパクト化は、上記条件式(1)または上記条件式(1´)を満足した上で下記条件式(2)を満足することにより、より確実なものとすることができる。
T12/f1<6.0 (2)
ここで、
T12:第1光学系1と第2光学系2の距離
f1 :第1光学系1の焦点距離
【0029】
さらに、上記条件式(2)に替えて、下記条件式(2´)を満足する場合には、上記作用効果を格段と良好なものとすることが可能である。
T12/f1<5.5 (2´)
【0030】
また、本実施形態に係る投写光学系10のうち、第1光学系1は、3つのレンズ群G〜Gにより構成され、縮小側から順に、正の第1レンズ群G(下記実施例1では8枚構成、下記実施例2では7枚構成)と、負の第2レンズ群G(下記実施例1、2共に3枚構成)と、収差補正を主目的とされた、屈折力の小さい1枚の非球面レンズからなる第3レンズ群Gから構成される。
【0031】
また、本実施形態の投写光学系10においては、上述したように第2光学系2は1枚の反射ミラー4によって構成されている。この第2光学系2を複数の反射ミラーにより構成した場合、アラインメント調整が難しく、また、そのためにどうしても発生する組立誤差に伴って性能維持が困難となってしまう。これに対し、本実施形態の投写光学系においては、第2光学系2を1枚の反射ミラー4によって構成しているので、組立誤差が小さく、光学系の性能維持が容易であり、装置のコンパクト化を促進することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る投写光学系10のフォーカス調整は、第2光学系2、ならびに第1光学系1中の第1レンズ群Gおよび第2レンズ群Gを、第1光学系1の光軸Zに沿って各々移動させることにより行われるように構成することが好ましい。
【0033】
このように構成された本実施形態に係る投写光学系10によれば、斜入射光学系において入射角を大きな状態としても歪みの少ない実像を、少ない数の反射ミラーを用いてスクリーン上に形成することができ、また、投写光学系を屈折光学系のみで構成した場合と比べて、色収差の発生を抑制することができる。
【0034】
また、この実施形態のものにおいては、第1光学系1の第3レンズ群Gを構成する最も拡大側の非球面レンズL12は、図1〜3に示すように図中の上方部分が欠如した回転非対称形状とされている。すなわち、反射ミラー4からスクリーン5に向かう光束のうち、最も第1光学系1に近接して射出された光束sがレンズL12によってケラレないように、レンズL12の有効域外領域であって、反射ミラー4からスクリーン5に向かう光線sと干渉する部分L12Aが欠如した回転非対称形状とされてなるものである。これにより、スクリーン5上の画面と、第1光学系1の光軸Zを互いに近づけたとしても、反射ミラー4からスクリーン5に向かう光線sが、第1光学系1の最も拡大側のレンズと干渉するおそれが小さくなることから、スクリーン5上の画面と第1光学系1との距離を短縮化することができるとともに、第1光学系1を反射ミラー4に、より近づけることもできるので、装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0035】
なお、同様の趣旨により、第1光学系1内のレンズであって、レンズL12以外のレンズにおいても、有効域外領域であって、反射ミラー4からスクリーン5に向かう光線sと干渉する部分が欠如した回転非対称形状とするようにしてもよい。
【0036】
したがって、本実施形態のものでは下記条件式(3)を満足させ得る。
Ymin/Ymax<0.35 (3)
ここで、
Ymin:スクリーン5上の投映画面内の位置において、第1光学系1の光軸Zから最も近い点の、第1光学系1の光軸Zからの距離
Ymax:スクリーン5上の投映画面内の位置において、第1光学系1の光軸Zから最も遠い点の、第1光学系1の光軸Zからの距離
【0037】
ここに、投写光学系10全体のコンパクト化は、上記条件式(3)を満足させた上で、上記条件式(1)または(1´)、ならびに上記条件式(2)または(2´)を満足させて第1光学系1の光軸方向の短縮化を図るようにすることで、より確実なものとすることができる。
【0038】
また、反射ミラー4は、光軸Zを軸とする回転対称な非球面形状により構成されていてもよく(後述する実施例1)、この場合には光学系のアラインメント調整が容易となるように構成されている。前記凹面ミラーは、勿論、回転非対称な非球面形状により構成されていてもよく(後述する実施例2)、この場合、諸収差をより向上させることができる。
【0039】
さらに、第1光学系1および第2光学系2は共通の光軸を備えており、これによっても光学系のアラインメント調整が容易となるように工夫されている。
【0040】
また、第1光学系1中に非球面レンズを配置することが望ましく、この場合の非球面は回転対称な非球面形状としてもよいし、回転非対称な非球面形状としてもよい。
【0041】
また、図1〜3に示す実施形態の投写光学系においては、第1光学系1と第2光学系2の間には反射ミラー等の反射光学素子を配設しないように構成することが肝要である。上述したように、本発明の投写光学系においては、第1光学系1と第2光学系2の間の位置で中間結像するようになっており、したがって、仮に第1光学系1と第2光学系2の間に反射ミラー等の反射光学素子を配したとすると、反射ミラー面上に付着していた塵埃の像がスクリーン5上に投映されてしまうという不都合を生じるからである。
【0042】
なお、本実施形態に係る投写型表示装置はフロント型のプロジェクション装置に適用されたものであるが、リア型のプロジェクション装置に適用することもできる。
【0043】
以下、本発明に係る投写光学系の具体的な実施例について説明する。
また、上述したように、第2光学系2を構成する反射ミラー4の反射面および第1光学系1を構成するレンズL12のレンズ面は、各々非球面とされている。これら非球面形状は、光軸Zを軸とする回転対称な非球面形状により構成されていてもよいし、回転非対称な非球面形状により構成されていてもよい。
【0044】
回転対称な非球面形状は、下記非球面式(A)により表される。
【0045】
【数1】

【0046】
また、回転非対称な非球面形状(自由曲面形状)は、下記非球面式(B)により表される。
【0047】
【数2】

【0048】
<実施例1>
実施例1に係る、投写型表示装置20の構成は図1に示すとおりであり、投写光学系10の構成は、図2に示すとおりであり、その第1光学系1を形成するレンズ系の詳細構成は図3に示すとおりである。
【0049】
図2および図3に示すように、この第1光学系1は、縮小側において、図中光軸Zよりも上方に偏って配された画像表示素子3から出射された、画像情報を担持した光束を第2光学系2を構成する反射ミラー4に向けて出射するものであり、縮小側から順に、カバーガラス(平行平面板)6およびプリズム部7と、8枚のレンズL〜Lからなる正の第1レンズ群Gと、絞り8と、3枚のレンズL〜L11からなる負の第2レンズ群Gと、1枚の非球面レンズL12からなる、収差補正を主目的とした(光軸近傍で若干負とされた)第3レンズ群Gとを配設してなり、いわゆる軸はずしの光学系とされている。
【0050】
また、非球面レンズL12の有効域外領域であって、第2光学系2からスクリーン5に向かう光線sと干渉する部分L12Aが欠如した回転非対称形状とされてなる。
ここで、第1光学系1の第1レンズ群G中において、両凸レンズLおよび両凹レンズLとは互いに接合されており、色収差の補正を良好なものとするように配慮されている。
【0051】
また、下記表1に、実施例1の投写光学系の各部材面の曲率半径R、各部材の光軸Z上の面間隔(各部材間の空気間隔および各部材の中心厚:光軸Z上に存在しない面においては各面位置(上記反射ミラー4の面では面頂点位置、上記スクリーン5の面では該面頂点位置からの光軸Z方向の距離が最小となる位置)から光軸Z上に垂線を下ろした位置を基準とする)D、各部材のd線における屈折率Nおよびアッベ数νを示す。また、面番号の左側に*を付した面は非球面であることを表している(表3において同じ)。
【0052】
【表1】

【0053】
さらに、上記非球面レンズL12の両面および反射ミラー4の反射面は、いずれも上記非球面式(A)により表され、下記表2には、これら各非球面について上記非球面式(A)における各非球面係数を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
なお、本実施例の上記条件式(1)、(2)、(3)に対応する数値は下記表6に示されているように、条件式(1)、(2)、(3)のみならず、条件式(1´)、(2´)も満足しており、投写光学系10全体として十分コンパクトなものとされている。
【0056】
また、図4は実施例1に係る投写光学系のスクリーン5上の各位置(x座標を、主光線に対する出射光線高さ、y座標を、画像表示素子3表示面での主光線からのズレ量とした場合の、各(x,y)座標(x座標、y座標ともに任意単位、原点は主光線と画像表示素子3表示面との交差位置)からの距離を示す:図8において同じ)における各波長(d線、F線およびC線)に対する横収差を示すものである。
【0057】
図4に示すように、実施例1に係る投写光学系10は、各収差を良好に補正し得る高性能な投写光学系とされている。
【0058】
<実施例2>
実施例2に係る、投写型表示装置20の構成は図5に示すとおりであり、投写光学系10の構成は、図6に示すとおりであり、その第1光学系1を形成するレンズ系の詳細構成は図7に示すとおりである。
【0059】
図6および図7に示すように、この投写型表示装置20および投写光学系10は、上記実施例1に係る投写型表示装置20および投写光学系10と略同様に構成されているが、特に、第1レンズ群Gが7枚のレンズL〜Lからなる点において相違している。なお、第2レンズ群Gは3枚のレンズL〜L10からなり、第3レンズ群Gは、光軸近傍で若干正とされた1枚の非球面レンズL11からなる。
【0060】
また、レンズL11の有効域外領域であって、反射ミラー4からスクリーン5に向かう光線sと干渉する部分L11Aが欠如した回転非対称形状とされてなる。
【0061】
ここで、第1光学系1の第1レンズ群G中において、両凸レンズLおよび縮小側に凹面を向けた負レンズLとは互いに接合されており、第1光学系1の第2レンズ群G中において、両凸レンズLおよび両凹レンズLが互いに接合されており、各々、色収差の補正が良好とされている。
【0062】
また、下記表3に、実施例2の投写光学系の各部材面の曲率半径R、各部材の光軸Z上の面間隔D、各部材のd線における屈折率Nおよびアッベ数νを示す。
【0063】
【表3】

【0064】
さらに、本実施例2における上記非球面レンズL11の両面は、いずれも上記非球面式(A)により表され、下記表4には、これら各非球面について上記非球面式(A)における各非球面係数を示す。
【0065】
【表4】

【0066】
さらに、本実施例2における上記反射ミラー4の反射面は、上記非球面式(B)により表され、下記表5には、これら各非球面について上記非球面式(B)における各非球面係数が示されている。
【0067】
【表5】

【0068】
なお、本実施例の上記条件式(1)、(2)、(3)に対応する数値は下記表6に示されているように、条件式(1)、(2)、(3)のみならず、条件式(1´)、(2´)も満足しており、投写光学系10全体として十分コンパクトなものとされている。
【0069】
また、図8は実施例2に係る投写光学系のスクリーン5上の各位置における各波長(d線、F線およびC線)に対する横収差を示すものである。
【0070】
図8に示すように、実施例2に係る投写光学系10は、各収差を良好に補正し得る高性能な投写光学系とされている。
【0071】
【表6】

【0072】
本発明に係る投写光学系およびこれを用いた投写型表示装置としては、上述したものに限られるものではなく、種々の態様の変更が可能である。例えば、第1光学系1のレンズ構成、ならびに第2光学系2を形成する反射ミラー4の曲面形状や配設位置は適宜設定することができる。
【0073】
さらに、第1光学系1中に、2枚以上の非球面レンズを配置することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1に係る投写型表示装置の構成を示す図
【図2】実施例1に係る投写光学系の構成を示す図
【図3】実施例1の投写光学系の一部を詳細に示す図
【図4】実施例1に係る投写光学系の横収差を示す図
【図5】実施例2に係る投写型表示装置の構成を示す図
【図6】実施例2に係る投写光学系の構成を示す図
【図7】実施例2の投写光学系の一部を詳細に示す図
【図8】実施例2に係る投写光学系の横収差を示す図
【符号の説明】
【0075】
1 第1光学系
2 第2光学系
3 画像表示素子
4 反射ミラー
5 スクリーン
6 カバーガラス
7 プリズム部
8 絞り
10 投写光学系
20 投写型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の共役面のうち、縮小側の共役面である画像表示素子面上の画像を拡大側の共役面であるスクリーン上に拡大して投写する投写光学系において、
前記画像表示素子側から順に、
複数のレンズにより構成され、前記画像表示素子上の画像を中間像として結像させる第1光学系と、前記第1光学系に対して凹面を向けた凹面ミラーからなり、前記中間像を前記スクリーン上に結像する第2光学系とを、配設してなり、
かつ下記の条件式(1)を満足してなることを特徴とする投写光学系。
T1/Y<12.5 (1)
ここで、
T1:前記第1光学系の全長
Y :前記画像表示素子上における最大光線高さ
【請求項2】
下記条件式(2)を満足してなることを特徴とする請求項1記載の投写光学系。
T12/f1<6.0 (2)
ここで、
T12:前記第1光学系と前記第2光学系の距離
f1 :前記第1光学系の焦点距離
【請求項3】
1対の共役面のうち、縮小側の共役面である画像表示素子面上の画像を拡大側の共役面であるスクリーン上に拡大して投写する投写光学系において、
前記画像表示素子側から順に、
複数のレンズにより構成され、前記画像表示素子上の画像を中間像として結像させる第1光学系と、前記第1光学系に対して凹面を向けた凹面ミラーからなり、前記中間像を前記スクリーン上に結像する第2光学系とを、配設してなり、
前記第1光学系は、前記画像表示素子側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、および少なくとも1枚の非球面レンズを有する第3レンズ群により構成されてなることを特徴とする投写光学系。
【請求項4】
前記第2光学系と、前記第1光学系のうちの前記第1レンズ群および前記第2レンズ群と、を光軸方向に移動させることによってフォーカス調整を行なうことを特徴とする請求項3記載の投写光学系。
【請求項5】
前記凹面ミラーは、回転対称な非球面形状をなすことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の投写光学系。
【請求項6】
前記凹面ミラーは、回転非対称な非球面形状をなすことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載の投写光学系。
【請求項7】
前記第1光学系は、少なくとも1枚の非球面レンズを有することを特徴とする請求項1、2、5および6のうちいずれか1項記載の投写光学系。
【請求項8】
前記第1光学系の前記非球面レンズは回転対称な非球面形状をなすことを特徴とする請求項3〜7のうちいずれか1項記載の投写光学系。
【請求項9】
前記第1光学系および前記第2光学系は、互いに共通の光軸を備えていることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項記載の投写光学系。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1項記載の投写光学系を備えたことを特徴とする投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−251457(P2009−251457A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101705(P2008−101705)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】