投射型表示装置
【課題】簡単な構造で、光源からの光の熱による寿命の劣化が無く、光量を滑らかなに制御しなからコントラストを向上できる投射型表示装置を提供する。
【解決手段】この投射型表示装置は、ライトバルブ3と、ライトバルブ3に光を照射するための光源5aと、光源5aからライトバルブ3に至る前記光の光路上に配置され、光源5aからの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、前記光路上に配置され、ライトバルブ3に照射される前記光の光量を調整するシャッタ機構17aとを備え、シャッタ機構17aは、前記光路の両側から前記光路に直交する様に前記光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に前記光の通過を制限する凹状部17gが形成され、前記光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材17L,17Rを有する。
【解決手段】この投射型表示装置は、ライトバルブ3と、ライトバルブ3に光を照射するための光源5aと、光源5aからライトバルブ3に至る前記光の光路上に配置され、光源5aからの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、前記光路上に配置され、ライトバルブ3に照射される前記光の光量を調整するシャッタ機構17aとを備え、シャッタ機構17aは、前記光路の両側から前記光路に直交する様に前記光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に前記光の通過を制限する凹状部17gが形成され、前記光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材17L,17Rを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトバルブを用いた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投射型表示装置は、一般に、ライトバルブと、ライトバルブに光を照射するための光源と、光源からの光をライトバルブに誘導する誘導光学系と、光源からライトバルブに至る光の光路上に配置され、光源からの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、ライトバルブから照らし出される映像を所定のスクリーンに投射する投射レンズとを備えて主構成されている。
【0003】
この様な従来の投射型表示装置においては、誘導光学系や投射レンズ等の光学系を構成する様々な光学要素で生じる光漏れおよび迷光のため、スクリーンに投射される映像の明暗が明確ではなく、十分なコントラストが得られないという問題があった。ここで、コントラストとは映像の明暗の度合いを示す。
【0004】
特に、液晶ライトバルブを用いた投射型表示装置においては、映像のコントラストは液晶ライトバルブの性能にも起因し、映像信号処理により映像のコントラストの向上を図る場合にも限界があった。
【0005】
上記の問題を解決する方法は、ライトバルブに照射される光量を映像信号に追従して制御することにより、映像のコントラストの向上を図ることである。
【0006】
そして、ライトバルブに照射される光量を制御する最も簡便な方法は、投射型表示装置に用いる光源の光出力を制御することにより、ライトバルブに照射される光量を制御することである。しかしながら、光源の光出力を制御することは極めて困難であり、且つこの様な光源の光出力を制御する方法では、人間の目で認識可能な程度の短時間で明るさが変化するため、スクリーンに投射された映像がちらつくという問題が生じる。
【0007】
この問題を解決する技術として、インテグレータレンズを構成する2つのレンズアレイの入射側、出射側またはそれらの間に、その透過率がセグメント毎に制御可能なセグメント液晶素子で構成された調光手段を設け、映像信号に基づいて前記調光手段の各セグメントの透過率を制御することにより、光源の光出力を制御すること無く(即ちスクリーンに投射された映像がちらつくこと無く)、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献1)(以後、従来技術1と呼ぶ)。
【0008】
また別の技術として、従来技術1の調光手段の代わりに、遮光板を用いて上下または左右から光路を遮るか、または絞り機構を用いて光路を遮る光量調整部を用いることにより、光源の光出力を制御すること無く、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献2)(以後、従来技術2と呼ぶ)。
【0009】
更に別の技術として、従来技術1の調光手段の代わりに、2つのレンズアレイの間において、光路の両側に遮光板を観音扉状に回動自在に設け、その遮光板の回動量に応じて光路を遮る量を制御することにより、光源の光出力を制御すること無く、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献3)(以後、従来技術3と呼ぶ)。
【0010】
また更に別の技術として、従来技術1の調光手段の代わりに、2つのレンズアレイの間において、レンズアレイの主面と略平行にスライドする様に、光路の左右両側および上下両側に遮光板を設け、それら遮光板をスライドさせて光路を遮ることにより、光源の光出力を制御すること無く、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献4)(以後、従来技術4と呼ぶ)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−131322号公報(段落番号〔0024〕)
【特許文献2】特開2003−241311号公報(段落番号〔0034〕および図2)
【特許文献3】特開2005−31103号公報(段落番号〔0073〕〔0074〕および図15)
【特許文献4】特開2005−31103号公報(段落番号〔0069〕および図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の従来技術1では、調光手段が液晶で構成されるので、光源からの光による熱により、寿命が劣化するという問題がある(特に紫外線は調光手段の寿命に影響を及ぼす)。特に、調光手段が2つのレンズアレイの入射側または2つのレンズアレイの間に配置された場合、他の位置と比較して光学要素の影響による光束量の減衰が少ないため光源からの光束量が多く、調光手段に多くの熱が蓄積されるので、調光手段の寿命が劣化しやすい。
【0013】
また上記の従来技術4の様に遮光板を用いる場合では、遮光部の先端の辺部が平坦なので、遮光板を連続的に稼動させたときに、ライトバルブに照射される光量を滑らかに制御できないという問題がある。これにより、映像信号に追随して滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れないという問題が生じる。
【0014】
また上記の従来技術2の様に絞り機構を用いる場合では、構造が複雑になるという問題がある。
【0015】
また上記の従来技術3の様に遮光板を観音開き状に回動させる場合では、遮光板が回動してその先端の辺部が光源側のレンズアレイ付近を通過した際、その辺部の形状がスクリーンに投射された像に結像して、照度むらとなって現れるという問題がある。
【0016】
本発明は、上述のような問題を解消するためになされたもので、第1に、簡単な構造で、光源からの光の熱による寿命の劣化が無く、滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れる投射型表示装置を提供すること、第2に、照度むらの生じない映像を表示できる投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、ライトバルブと、前記ライトバルブに光を照射するための光源と、前記光源から前記ライトバルブに至る前記光の光路上に配置され、前記光源からの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、前記光路上に配置され、前記ライトバルブに照射される前記光の光量を調整するシャッタ機構とを備え、前記シャッタ機構は、前記光路の両側から前記光路に略直交する様に前記光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に前記光の通過を制限する凹状部が形成され、前記光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、光路の両側から光路に略直交する様に光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に光の通過を制限する凹状部が形成され、光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材を有するシャッタ機構を備えるので、簡単な構造で構成でき、光源からの光の熱による寿命の劣化が無く、滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
この実施の形態に係る投射型表示装置1は、図1の様に、ライトバルブ3と、ライトバルブ3に光を照射するための光源系5と、光源系5からライトバルブ3に至る前記光の光路上に配置されたインテグレータレンズ7と、インテグレータレンズ7の後段に配置された偏光変換素子9と、偏光変換素子9の後段に配置されたコンデンサレンズ11と、コンデンサレンズ11の後段に配置されたフィールドレンズ13と、フィールドレンズ13の後段に配置された偏光板15と、前記光路上に配置された光量調整系17とを備えている。
【0020】
尚、ライトバルブ3の後段に配置される投射レンズと、該投射レンズの後段に配置されるスクリーンとを更に備えるが、これらの構成要素は、本願発明の内容と特に関係ないため、図1では図示省略されている。また図1では、便宜上、RGBの光路それぞれに液晶ライトバルブを備えた投射型表示装置における単一光路のみを示している。
【0021】
ライトバルブ5は、この実施の形態では液晶ライトバルブが用いられるが、どのようなライトバルブを用いてもよい。例えば、マイクロミラーを使ったものや反射型液晶を用いたものでもよい。
【0022】
光源系5は、光源5aと、光源5aの光をライトバルブ3側に反射させる反射鏡5bとから構成される。
【0023】
光源5aは、通常、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプが用いられるが、発光デバイスであればどのようなものでもかまわない。例えば、LED、レーザ、ELでもかまわない。
【0024】
反射鏡5bは、特に限定されないが例えば放物面または楕円面に形成されている。尚、光が偏光変換素子9に集光すればどのような形状・構造でもよく、例えば、インテグレータレンズ7に入射する光は光軸Cと略並行でもよく、その場合、反射鏡5bを放物面とするか、楕円面の場合は略並行にすべく、光源系5とインテグレータレンズ7との間に凹レンズを配置する等工夫をすればよい。また反射鏡5が楕円面かつ凹レンズを用いない場合は、インテグレータレンズ7に偏芯をもたせる等工夫すればよい。
【0025】
インテグレータレンズ7は、第1のレンズアレイ7aと、第1のレンズアレイ7aの後段側に離間配置された第2のレンズアレイ7bとから構成される。各レンズアレイ7a,7bはともに、複数の凸レンズが縦横に配置されて構成されており、第1のレンズアレイ7aの各凸レンズと第2のレンズアレイ7bの各凸レンズとはそれぞれ対応しており、対応する凸レンズ同士、正面方向に配置している。
【0026】
偏光変換素子9は、自身に入射した光束を1種類の直線偏光光に変換して射出するものである。この偏光変換素子9は、図2の様に、互いに光軸Cに対して上下方向(x方向)に適宜間隔あけて配置され、それぞれ光軸C方向に対して傾斜(例えば45度傾斜)する様に配置された複数の偏光分離膜9aと、各偏光分離膜9a間において光軸Cに対して傾斜(例えば45度傾斜)する様に配置された複数の反射膜9bと、各偏光分離膜9aの後方に配置されたλ/2位相差板9cとを備えて主構成されている。
【0027】
この偏光変換素子9では、偏光変換素子9に入射した光は、偏光分離膜9aによってs偏光光とp偏光光に分離される。そしてそのp偏光光は、偏光分離膜9aを通過して、偏光分離膜9aの後方に配置されたλ/2位相差板9cにより、s偏光光に偏光変換されて偏光変換素子9から射出される。他方、そのs偏光光は、偏光分離膜9aを反射して、さらに反射膜9bに反射されて偏光変換されることなく、偏光変換素子9から射出される。従って、偏光変換素子9から射出される光束は、ほぼ全てs偏光光となる。
【0028】
光量調整系17は、第1のレンズアレイ7aおよび第2のレンズアレイ7bの間に配置されたシャッタ機構17aと、ライトバルブ3に入力される映像信号を検知しその検知結果から光量比率(ライトバルブ3に照射されるべき光量の相対光量比)を算出する信号検知部17bと、信号検知部17bにより算出された光量比率に基づきシャッタ機構17aを開閉制御するシャッタ制御部17cとを備えている。
【0029】
シャッタ機構17aは、図3の様に、シャッタ制御部17cにより光路の両側から光路に略直交する様に突出・退避自在に直進稼動され、光路上への突出量に応じて光(ライトバルブ5に照射される光)の光量を調整する一対の遮光部材17L,17Rを有する。各遮光部材17L,17Rにおける突出方向側の辺部の中央には、光の通過を制限する凹状部17gが互いに(y軸に)対称的に形成されている。凹状部17gの形状としては、特に限定されないが、例えば凹状曲線形状、略放物線形状または略半楕円形状に形成される。
【0030】
ここでは、各遮光部材17L,17Rは、例えば図3の様に、各遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部のうちの上半部に第2のレンズアレイ7b(インテグレータレンズ7)の上半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成され、下半部に第2のレンズアレイ7bの下半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成される(換言すれば、第2のレンズアレイ7bを縦横に4等分に区分(各区分領域を右上領域から反時計回りに順に第1象限、第2象限、第3象限および第4象限と呼ぶ)し、遮光部材17Rの突出方向側の辺部に、第2のレンズアレイ7bの第1象限部分に対応する凹状部17gおよび第4象限部分に対応する凹状部17gが形成され、遮光部材17Lの突出方向側の辺部に、第2のレンズアレイ7bの第2象限部分に対応する凹状部17gおよび第3象限部分に対応する凹状部17gが形成される)。
【0031】
そしてシャッタ機構17aを全開状態から全閉状態にする場合は、例えば図4の(a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f)→(g)→(h)→(i)→(j)→(k)の順に、各遮光部材17L,17Rを稼動させればよい。尚、図4(a)は、各遮光部材17L,17Rの退避状態(即ちシャッタ機構17aの全開状態)を示した図であり、図4の(b)から(i)は、その順に、それぞれ(a)の退避状態から各遮光部材17L,17Rを1ステップ(=0.4セル)ずつ光路側に突出させた状態であり、図4(k)は、各遮光部材17L,17Rの完全突出状態(即ちシャッタ機構17aの全閉状態)を示した図である。尚、ここでは、各遮光部材17R,17Lを稼動させる際は、相互に対称的に稼動される様になっている。
【0032】
その際、各遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部には例えば凹状曲線形状、略放物線形状または略半楕円形状の凹状部17gが形成されているので、第2のレンズアレイ7bの周縁を通過する光から遮光されて行く。通常、第2のレンズアレイ7bの周縁のセルを射出した光30は、図6の様に、大きい入射角度を持ってライトバルブ3に入射するが、ライトバルブ3の特性により、ライトバルブ3に入射する光の入射角が大きくなるに従ってコントラストが低下するので、上記の様に各遮光部材17L,17Rに例えば凹状曲線形状、略放物線形状または略半楕円形状の凹状部17gを形成して第2のレンズアレイ7bの周縁を通過する光から遮光して行くことで、コントラストの低下を防止しつつライトバルブ3に照射される光量を減少させている。
【0033】
そして図4(k)の全閉状態では、各遮光部材17L,17Rの凹状部17gにより、第2のレンズアレイ7bにおける通過光量の最も多い部分、即ち中心(光軸C)から少し上側にずれた部分(ここでは中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセル)および中心から少し下側にずれた部分(ここでは中心から下側に数セル目(2,3セル目)のセル)を通過する光だけを透過させる2つの開口17iが構成される様になっている。
【0034】
ここで、シャッタ機構17aの配置場所について述べると、第2のレンズアレイ7bの焦点位置が第1のレンズアレイ7aの近傍にあるため、シャッタ機構17aの配置が第1のレンズアレイ7aの付近になると、各遮光部材17L,17Rの凹状部17gの形状(以後、シャッタ形状と呼ぶ)がライトバルブ3に結像する可能性が高くなる。そしてシャッタ形状がライトバルブ3に結像すると、スクリーンに投射される映像にシャッタ形状が観察されて照度むらとなる。従って、シャッタ機構17aは、第2のレンズアレイ7bの前側近傍に配置されることが好ましい。尚、ここでは例えば、シャッタ機構17aは、第2のレンズアレイ7bと接する様に配置されている。
【0035】
尚、シャッタ機構17aは、第2のレンズアレイ7bと偏光変換素子9との間に配置されても良い。この様にしても、スクリーンに投射される映像にシャッタ形状が結像して照度むらが生じる事を防止できる。
【0036】
尚、シャッタ機構17aは、遮光部材17L,17Rが、光路の両側から光路上に光路に略直交する様に突出・退避自在に直進稼動する機構であれば、どのような機構でもかまわない。例えば、スライダークランク機構を用い、回転運動を直動運動に変換する機構を用いても良い。
【0037】
この様に構成された投射型表示装置1では、光源系5からの光は、光軸Cと略並行な光束となって第1のレンズアレイ7aに入射し、第1のレンズアレイ7aの各凸レンズ(セル)毎に分割されて、第2のレンズアレイ7bの対応する凸レンズを通過することで、照度分布が均一化される。そして第2のレンズアレイ7bを通過した光は、偏光変換素子9を通過してほぼ全てs偏光光に変換され、次いでコンデンサレンズ11を通過して集光される。そしてその集光された光は、フィールドレンズ13により再び光軸Cに略並行な光束にされた後、偏光板15により、偏光変換素子9で偏光変換されたs偏光光だけが通過させられてライトバルブ3に照射され、ライトバルブ3で生成された像が投射レンズ(不図示)を介してスクリーン(不図示)に投射される。
【0038】
その際、信号検知部17bによりライトバルブ3に入力される映像信号が検知されており、その検知結果に基づき、シャッタ制御部17aにより、スクリーン上の映像のコントラストが向上する様にシャッタ機構17aが制御される(即ち、各遮光部材17L,17Rが光路上に突出・退避自在に直進稼動されて、ライトバルブ3に照射される光の光量が増減調整される)。
【0039】
図5は、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成するシャッタ機構の開閉状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路上への突出状態)とライトバルブ3に照射させる光の光量の関係(曲線51)および図4の場合のシャッタ機構の開閉状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路上への突出状態)とライトバルブ3に照射させる光の光量との関係(曲線81)を示したグラフの一例を示す。ただし、図4の場合のシャッタ機構の開閉状態とライトバルブ3に照射させる光の光量との関係は実測した結果を示している。図5の横軸は、図4(a)の場合のシャッタ機構17aの全開状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路の両側への退避状態)においてライトバルブ3に照射される光の光量を100%とした場合の相対光量比を示す。図5の横軸は、シャッタ機構17aの開閉状態(図4(a)〜(k))を示す。
【0040】
図5の曲線51および81は、ライトバルブ3に照射される光の光量とシャッタ機構17aの開閉状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路上への突出状態)との関係を示している。同図より、シャッタ機構17aが閉じるほど(即ち各遮光部材17L,17Rの突出量が増加するほど)、ライトバルブ3に照射される光の光量が次第に減少していることが確認できる。即ち、シャッタ機構17aを用いることにより光量を調整することが可能であることを示している。尚、従来例の曲線を51,図4の場合の曲線を81としている。
【0041】
図5の曲線81から、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成するシャッタ機構の場合(曲線51)と比べて、シャッタ機構17aの開閉量の増加に応じてライトバルブ3に照射される光の光量が滑らかに(特に凹凸感なく)減少している事が分かる(特徴1)。
【0042】
また図5の曲線81から、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成するシャッタ機構の場合(曲線51)と比べて、相対光量比40%以下の範囲では、ライトバルブ3に照射される光の光量が急峻に低下せずに緩やかに低下していることが分かる(特徴2)。
【0043】
また実際に実験したところ、シャッタ機構17aの全閉状態(図4(k))では、ライトバルブ3に照射される光の照度分布は均一であり、スクリーン上で照度むらは観察されなかった(特徴3)。
【0044】
上記の特徴1,2,3から、図3の様に各遮光部材17L,17Rに凹状部17gを形成する方が(即ち遮光部材17L,17Rの辺部の上半部および下半部にそれぞれ凹状部17gを形成する方が)、従来の様に遮光部材の辺部が平坦な凹状部を形成するよりも(即ち遮光部材17L,17Rの辺部の中央に凹状部を1つ形成するよりも)、シャッタ機構17aの開閉状態の全範囲に亘って、より滑らかにライトバルブ3に照射される光の光量を調整できることが分かる。また、シャッタ機構17aの全閉状態では、ライトバルブ3に照射される光の照度分布は均一になり、スクリーン上で照度むらが生じない事が分かる。
【0045】
図8は、第2のレンズアレイ7bを通過する光の光量(明るさ)の分布(換言すれば、第2のレンズアレイ7bに結像する光源像の分布)のシミュレーション結果を光量に応じて色分けして示したグラフである。同図から、第2のレンズアレイ7bの中心(光軸C)を中心として同心円状に光量が変化しており、且つ第2のレンズアレイ7bにおける中心の各セル(4つのセル)S1での光量が比較的低く、その中心から外側に数セル目(2,3セル目)のセルでの光量が比較的に高く(特にその中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセルS2(図8参照)および下側に数セル(2,3セル目)のセルS3(図8参照)での光量が最も高く)、更に外周側のセルに行くほど次第に光量が低下していることが分かる(特徴A)。
【0046】
尚、図9は、第2のレンズアレイ7bの各セル7sを通過する光の光量をシミュレーションにより算出し、その結果を各セル7s毎に数値で示したグラフであり(但し、第1のレンズアレイ7bは上下左右対称なため、その第1象限のみ示し、且つ第1象限全体を100%に正規化して示している)、また図10は、図9の結果を棒状グラフで示したものである。図9および図10からも、第2のレンズアレイ7bを通過する光の光量の分布が上記の特徴Aのような特徴を有することが分かる。
【0047】
尚、上記の様に第2のレンズアレイ7bにおける中心の各セルS1での光量が比較的低くなるのは、反射鏡5bにおける光源5aの真後ろ部分5c(図11参照)には、発光管が存在するため孔が開いており、そのため、その真後ろ部分5cでは反射鏡とならないからである。図12は、その様な構成の下で、光源5aからの光が反射鏡5bで反射される様子をシミュレーションした図であるが、この図からも、反射鏡5bにおける真後ろ部分5cでは光の反射が殆ど無く、これにより光軸C上を通過する光の光量、従って第2のレンズアレイ7bにおける中心の各セルS1を通過する光の光量が、上記の様に比較的低くなることが分かる。尚、図12中の符号5dは、光源系5からインテグレータレンズ7に向かう光50が光軸Cと略並行となる様に配置された凹レンズである。
【0048】
図8から、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合では、その凹状部の凹形状が第2のレンズアレイ7bの光量分布の同心円にうまく重なり、その結果、各遮光部材を稼動させた際、その凹状部が第2のレンズアレイ7bの同心状の明部分および暗部分を順に遮光し、これが原因で、図5の曲線51は凸凹した感じの曲線になっている事が分かる。これに対し、図3の様に遮光部材17L,17Rに凹状部17gを形成した場合では、その凹状部19gの凹形状が第2のレンズアレイ7bの光量分布の同心円にうまく重ならず、その結果、遮光部材17L,17Rを稼動させた際、第2のレンズアレイ7bの同心状の明部分および暗部分を順に遮光しなくなり、これが原因で、図5の曲線81は滑らかな曲線(凸凹感の無い曲線)になっている事が分かる。このような理由で、上記の特徴1が得られている。
【0049】
また図8および図4(k)から、この実施の形態では、シャッタ機構17aを閉じる際、第2のレンズアレイ7bにおける通過光量の最も多い部分、即ち中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセルS2および中心から下側に数セル目(2,3セル目)のセルS3を通過する光を遮光しない様にして光を遮光するが、これが原因で、図5の曲線81の様に、特に相対光量比40%以下の範囲において、ライトバルブ3に照射される光の光量が急峻に低下せずに緩やかに低下していることが分かる。これに対し、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合では、図5の曲線51から、シャッタ機構17aを閉じる際、第2のレンズアレイ7bのセルS2,S3を通過する光を遮光するが、これが原因で、特に相対光量比40%以下の範囲において、ライトバルブ3に照射される光の光量が急峻に低下していることが分かる。このような理由で、上記の特徴2が得られている。
【0050】
またこの実施の形態では、シャッタ機構17aの全閉状態では、第2のレンズアレイ7bにおける通過光量の最も多い部分、即ち中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセルS2および中心から下側に数セル目(2,3セル目)のセルS3を通過する光を遮光しないので、ライトバルブ3に十分な量の光が重畳されることが分かる。これに対し、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合では、シャッタ機構17aの全閉状態では、第2のレンズアレイ7bのセルS2,S3を通過する光を遮光するので、ライトバルブ3に十分な量の光が重畳されないことが分かる。このような理由で、上記の特徴3が得られている。
【0051】
以上の様に構成された投射型表示装置1によれば、各遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部のうちの上半部にインテグレータレンズ7の上半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成され、下半部にインテグレータレンズ7の下半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成されるので、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合と比べて、光の光量を滑らかに調整しながらコントラストの向上を図れることができる。
【0052】
また、特に相対光量比40%以下の範囲では、図5より、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合(曲線51)と比べて、ライトバルブ3に照射される光の光量が緩やかに減少するので、信号検知部17bが低光量の信号を検知した場合、ライトバルブ3に照射される光の光量の制御性が良くなる。
【0053】
また特にシャッタ機構17aの全閉状態において、ライトバルブ3に十分な量の光が重畳されてライトバルブ3に照射される光の照度分布が均一となるので、スクリーン上での照度むらを防止できる。
【0054】
また、光路の両側から光路に略直交する様に光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれその突出方向側の辺部に光の通過を制限する凹状部17gが形成され、光路上への突出量に応じて、光源5aからの光の光量を調整する一対の遮光部材17L,17Rを有するシャッタ機構17aを備えるので、簡単な構造で構成でき、光源5aからの光の熱による寿命の劣化が無く、滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れる。特に、遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部に凹状部17gが形成されることで、コントラストが滑らかに制御できる様になっており、またシャッタ機構17aが液晶を用いないことで、光源5aからの光の熱による寿命の劣化が防止されている。
【0055】
また、各遮光部材17L,17Rが、光路の両側から光路に略直交する様に光路上に突出・退避自在に直進稼動される様に(即ち従来技術4の様に回動しない様に)構成され、且つ第2のレンズアレイ7bの前側(前段側)近傍に配置されるので、遮光部材17L,17Rのシャッタ形状がライトバルブ3から照らし出される像と結像して照度むらが生じる事を防止できる。
【0056】
実施の形態2.
上記の実施の形態1の投射型表示装置1,1Bでは、シャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7aと第2のレンズアレイ7bとの間に配置したが、この実施の形態の投射型表示装置1Cでは、図13の様に、シャッタ機構17aを、偏光変換素子9より後段に(図13では例えば偏光変換素子9とコンデンサレンズ11の間)に配置している。この実施の形態の他の部分は、上記の実施の形態1または2と同様に構成されている。
【0057】
偏光変換素子9を通過した光束による光源像の分布は、図14の様に、第2のレンズアレイ7bに結像する光源像の分布(図8)と比べて、光源像の数が倍に増加している。従って、この実施の形態の様にシャッタ機構17aを偏光変換素子8より後段に配置した場合は、シャッタ機構17aの開閉により、ライトバルブ3に照射される光の光量をより滑らかに制御できる様になる(即ちコントラストをより滑らかに制御できる様になる)。
【0058】
また、上記の実施の形態1の様にシャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7aと第2のレンズアレイ7bの間に配置する場合では、特にシャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7a近傍に配置する場合では、ライトバルブ3の共役位置が第1のレンズアレイ7a近傍にあるため、シャッタ形状がライトバルブ3に結像してしまい、また特にシャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7a近傍から第2のレンズアレイ7bまでの間に配置する場合では、光源5aの形が点光源に近づくと、第2のレンズアレイ7bの焦点深度が深くなるため、光源5aの形によっては、シャッタ形状がライトバルブ3に結像してしまう。
【0059】
しかし、この実施の形態の様にシャッタ機構17aを偏光変換素子9より後段に配置した場合は、ライトバルブ3の共役位置や光源5aの形によらず、シャッタ形状がライトバルブ3に結像することはない。
【0060】
つまり、この実施の形態の様にシャッタ機構17aを偏光変換素子9より後段に配置した場合は、シャッタ機構17aにより、シャッタ形状がライトバルブ3に結像することなく、ライトバルブ3に照射される光量をより滑らかに制御できる様になる。
【0061】
更に、シャッタ機構17aの制御性を考慮すると、光の通過する面積の大きい偏光変換素子9−コンデンサレンズ11間およびコンデンサレンズ11近傍にシャッタ機構17aを配置することが好ましい。コンデンサレンズ11からライトバルブ3に光が向かうに従って光の通過する面積がライトバルブ3の面積に近づいて小さくなるので、シャッタ機構17aの制御が困難になるからである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態1に係る投射型表示装置の構成概略図である。
【図2】実施の形態1で用いられる偏光変換素子9の断面概略図である。
【図3】実施の形態1で用いられるシャッタ機構17aの形状の一例を示す図である。
【図4】図3のシャッタ機構17aを全開状態(a)から全閉状態(k)まで1ステップずつ稼動させた状態を示した図である。
【図5】実施の形態1におけるライトバルブ3上に照射される光量とシャッタ機構17aの開閉状態との関係(曲線81)および従来技術の場合におけるライトバルブ3上に照射される光量とシャッタ機構17aの開閉状態との関係(曲線51)を示したグラフの一例図である。
【図6】ライトバルブ3に入射する光の入射角度が第2のレンズアレイ7bを通過する部分に応じて異なることを説明する図である。
【図7】ライトバルブの入射角度とコントラストの関係を示したグラフである。
【図8】第2のレンズアレイ7bに結像する光源像の分布の一例を示す図である。
【図9】第2のレンズアレイ7bの各セル7sを通過する光の光量をシミュレーションにより算出し、その結果を各セル7s毎に数値で示した図である。
【図10】図9の結果を棒状グラフで示した図である。
【図11】光源系5の拡大図である。
【図12】光源5aからの光の反射鏡5bでの反射をシミュレーションした結果を示す図である。
【図13】実施の形態2に係る投射型表示装置の構成概略図である。
【図14】偏光変換素子9を通過した光束の光源像の分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 投射型表示装置、3 ライトバルブ、5 光源系、5a 光源、5b 反射鏡、7 インテグレータレンズ、7a 第1のレンズアレイ、7b 第2のレンズアレイ、9 偏光変換素子、9a 偏光分離膜、9b 反射膜、9c λ/2位相差板、11 コンデンサレンズ、13 フィールドレンズ、15 偏光板、17 光量調整系、17a シャッタ機構、17b 信号検知部、17c シャッタ制御部、17L,17R 遮光部材、17f,17g 凹状部、17i 開口、C 光軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトバルブを用いた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投射型表示装置は、一般に、ライトバルブと、ライトバルブに光を照射するための光源と、光源からの光をライトバルブに誘導する誘導光学系と、光源からライトバルブに至る光の光路上に配置され、光源からの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、ライトバルブから照らし出される映像を所定のスクリーンに投射する投射レンズとを備えて主構成されている。
【0003】
この様な従来の投射型表示装置においては、誘導光学系や投射レンズ等の光学系を構成する様々な光学要素で生じる光漏れおよび迷光のため、スクリーンに投射される映像の明暗が明確ではなく、十分なコントラストが得られないという問題があった。ここで、コントラストとは映像の明暗の度合いを示す。
【0004】
特に、液晶ライトバルブを用いた投射型表示装置においては、映像のコントラストは液晶ライトバルブの性能にも起因し、映像信号処理により映像のコントラストの向上を図る場合にも限界があった。
【0005】
上記の問題を解決する方法は、ライトバルブに照射される光量を映像信号に追従して制御することにより、映像のコントラストの向上を図ることである。
【0006】
そして、ライトバルブに照射される光量を制御する最も簡便な方法は、投射型表示装置に用いる光源の光出力を制御することにより、ライトバルブに照射される光量を制御することである。しかしながら、光源の光出力を制御することは極めて困難であり、且つこの様な光源の光出力を制御する方法では、人間の目で認識可能な程度の短時間で明るさが変化するため、スクリーンに投射された映像がちらつくという問題が生じる。
【0007】
この問題を解決する技術として、インテグレータレンズを構成する2つのレンズアレイの入射側、出射側またはそれらの間に、その透過率がセグメント毎に制御可能なセグメント液晶素子で構成された調光手段を設け、映像信号に基づいて前記調光手段の各セグメントの透過率を制御することにより、光源の光出力を制御すること無く(即ちスクリーンに投射された映像がちらつくこと無く)、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献1)(以後、従来技術1と呼ぶ)。
【0008】
また別の技術として、従来技術1の調光手段の代わりに、遮光板を用いて上下または左右から光路を遮るか、または絞り機構を用いて光路を遮る光量調整部を用いることにより、光源の光出力を制御すること無く、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献2)(以後、従来技術2と呼ぶ)。
【0009】
更に別の技術として、従来技術1の調光手段の代わりに、2つのレンズアレイの間において、光路の両側に遮光板を観音扉状に回動自在に設け、その遮光板の回動量に応じて光路を遮る量を制御することにより、光源の光出力を制御すること無く、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献3)(以後、従来技術3と呼ぶ)。
【0010】
また更に別の技術として、従来技術1の調光手段の代わりに、2つのレンズアレイの間において、レンズアレイの主面と略平行にスライドする様に、光路の左右両側および上下両側に遮光板を設け、それら遮光板をスライドさせて光路を遮ることにより、光源の光出力を制御すること無く、ライトバルブに照射される光量を制御する投射型表示装置が開示されている(例えば特許文献4)(以後、従来技術4と呼ぶ)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−131322号公報(段落番号〔0024〕)
【特許文献2】特開2003−241311号公報(段落番号〔0034〕および図2)
【特許文献3】特開2005−31103号公報(段落番号〔0073〕〔0074〕および図15)
【特許文献4】特開2005−31103号公報(段落番号〔0069〕および図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の従来技術1では、調光手段が液晶で構成されるので、光源からの光による熱により、寿命が劣化するという問題がある(特に紫外線は調光手段の寿命に影響を及ぼす)。特に、調光手段が2つのレンズアレイの入射側または2つのレンズアレイの間に配置された場合、他の位置と比較して光学要素の影響による光束量の減衰が少ないため光源からの光束量が多く、調光手段に多くの熱が蓄積されるので、調光手段の寿命が劣化しやすい。
【0013】
また上記の従来技術4の様に遮光板を用いる場合では、遮光部の先端の辺部が平坦なので、遮光板を連続的に稼動させたときに、ライトバルブに照射される光量を滑らかに制御できないという問題がある。これにより、映像信号に追随して滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れないという問題が生じる。
【0014】
また上記の従来技術2の様に絞り機構を用いる場合では、構造が複雑になるという問題がある。
【0015】
また上記の従来技術3の様に遮光板を観音開き状に回動させる場合では、遮光板が回動してその先端の辺部が光源側のレンズアレイ付近を通過した際、その辺部の形状がスクリーンに投射された像に結像して、照度むらとなって現れるという問題がある。
【0016】
本発明は、上述のような問題を解消するためになされたもので、第1に、簡単な構造で、光源からの光の熱による寿命の劣化が無く、滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れる投射型表示装置を提供すること、第2に、照度むらの生じない映像を表示できる投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、ライトバルブと、前記ライトバルブに光を照射するための光源と、前記光源から前記ライトバルブに至る前記光の光路上に配置され、前記光源からの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、前記光路上に配置され、前記ライトバルブに照射される前記光の光量を調整するシャッタ機構とを備え、前記シャッタ機構は、前記光路の両側から前記光路に略直交する様に前記光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に前記光の通過を制限する凹状部が形成され、前記光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、光路の両側から光路に略直交する様に光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に光の通過を制限する凹状部が形成され、光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材を有するシャッタ機構を備えるので、簡単な構造で構成でき、光源からの光の熱による寿命の劣化が無く、滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
この実施の形態に係る投射型表示装置1は、図1の様に、ライトバルブ3と、ライトバルブ3に光を照射するための光源系5と、光源系5からライトバルブ3に至る前記光の光路上に配置されたインテグレータレンズ7と、インテグレータレンズ7の後段に配置された偏光変換素子9と、偏光変換素子9の後段に配置されたコンデンサレンズ11と、コンデンサレンズ11の後段に配置されたフィールドレンズ13と、フィールドレンズ13の後段に配置された偏光板15と、前記光路上に配置された光量調整系17とを備えている。
【0020】
尚、ライトバルブ3の後段に配置される投射レンズと、該投射レンズの後段に配置されるスクリーンとを更に備えるが、これらの構成要素は、本願発明の内容と特に関係ないため、図1では図示省略されている。また図1では、便宜上、RGBの光路それぞれに液晶ライトバルブを備えた投射型表示装置における単一光路のみを示している。
【0021】
ライトバルブ5は、この実施の形態では液晶ライトバルブが用いられるが、どのようなライトバルブを用いてもよい。例えば、マイクロミラーを使ったものや反射型液晶を用いたものでもよい。
【0022】
光源系5は、光源5aと、光源5aの光をライトバルブ3側に反射させる反射鏡5bとから構成される。
【0023】
光源5aは、通常、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプが用いられるが、発光デバイスであればどのようなものでもかまわない。例えば、LED、レーザ、ELでもかまわない。
【0024】
反射鏡5bは、特に限定されないが例えば放物面または楕円面に形成されている。尚、光が偏光変換素子9に集光すればどのような形状・構造でもよく、例えば、インテグレータレンズ7に入射する光は光軸Cと略並行でもよく、その場合、反射鏡5bを放物面とするか、楕円面の場合は略並行にすべく、光源系5とインテグレータレンズ7との間に凹レンズを配置する等工夫をすればよい。また反射鏡5が楕円面かつ凹レンズを用いない場合は、インテグレータレンズ7に偏芯をもたせる等工夫すればよい。
【0025】
インテグレータレンズ7は、第1のレンズアレイ7aと、第1のレンズアレイ7aの後段側に離間配置された第2のレンズアレイ7bとから構成される。各レンズアレイ7a,7bはともに、複数の凸レンズが縦横に配置されて構成されており、第1のレンズアレイ7aの各凸レンズと第2のレンズアレイ7bの各凸レンズとはそれぞれ対応しており、対応する凸レンズ同士、正面方向に配置している。
【0026】
偏光変換素子9は、自身に入射した光束を1種類の直線偏光光に変換して射出するものである。この偏光変換素子9は、図2の様に、互いに光軸Cに対して上下方向(x方向)に適宜間隔あけて配置され、それぞれ光軸C方向に対して傾斜(例えば45度傾斜)する様に配置された複数の偏光分離膜9aと、各偏光分離膜9a間において光軸Cに対して傾斜(例えば45度傾斜)する様に配置された複数の反射膜9bと、各偏光分離膜9aの後方に配置されたλ/2位相差板9cとを備えて主構成されている。
【0027】
この偏光変換素子9では、偏光変換素子9に入射した光は、偏光分離膜9aによってs偏光光とp偏光光に分離される。そしてそのp偏光光は、偏光分離膜9aを通過して、偏光分離膜9aの後方に配置されたλ/2位相差板9cにより、s偏光光に偏光変換されて偏光変換素子9から射出される。他方、そのs偏光光は、偏光分離膜9aを反射して、さらに反射膜9bに反射されて偏光変換されることなく、偏光変換素子9から射出される。従って、偏光変換素子9から射出される光束は、ほぼ全てs偏光光となる。
【0028】
光量調整系17は、第1のレンズアレイ7aおよび第2のレンズアレイ7bの間に配置されたシャッタ機構17aと、ライトバルブ3に入力される映像信号を検知しその検知結果から光量比率(ライトバルブ3に照射されるべき光量の相対光量比)を算出する信号検知部17bと、信号検知部17bにより算出された光量比率に基づきシャッタ機構17aを開閉制御するシャッタ制御部17cとを備えている。
【0029】
シャッタ機構17aは、図3の様に、シャッタ制御部17cにより光路の両側から光路に略直交する様に突出・退避自在に直進稼動され、光路上への突出量に応じて光(ライトバルブ5に照射される光)の光量を調整する一対の遮光部材17L,17Rを有する。各遮光部材17L,17Rにおける突出方向側の辺部の中央には、光の通過を制限する凹状部17gが互いに(y軸に)対称的に形成されている。凹状部17gの形状としては、特に限定されないが、例えば凹状曲線形状、略放物線形状または略半楕円形状に形成される。
【0030】
ここでは、各遮光部材17L,17Rは、例えば図3の様に、各遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部のうちの上半部に第2のレンズアレイ7b(インテグレータレンズ7)の上半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成され、下半部に第2のレンズアレイ7bの下半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成される(換言すれば、第2のレンズアレイ7bを縦横に4等分に区分(各区分領域を右上領域から反時計回りに順に第1象限、第2象限、第3象限および第4象限と呼ぶ)し、遮光部材17Rの突出方向側の辺部に、第2のレンズアレイ7bの第1象限部分に対応する凹状部17gおよび第4象限部分に対応する凹状部17gが形成され、遮光部材17Lの突出方向側の辺部に、第2のレンズアレイ7bの第2象限部分に対応する凹状部17gおよび第3象限部分に対応する凹状部17gが形成される)。
【0031】
そしてシャッタ機構17aを全開状態から全閉状態にする場合は、例えば図4の(a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f)→(g)→(h)→(i)→(j)→(k)の順に、各遮光部材17L,17Rを稼動させればよい。尚、図4(a)は、各遮光部材17L,17Rの退避状態(即ちシャッタ機構17aの全開状態)を示した図であり、図4の(b)から(i)は、その順に、それぞれ(a)の退避状態から各遮光部材17L,17Rを1ステップ(=0.4セル)ずつ光路側に突出させた状態であり、図4(k)は、各遮光部材17L,17Rの完全突出状態(即ちシャッタ機構17aの全閉状態)を示した図である。尚、ここでは、各遮光部材17R,17Lを稼動させる際は、相互に対称的に稼動される様になっている。
【0032】
その際、各遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部には例えば凹状曲線形状、略放物線形状または略半楕円形状の凹状部17gが形成されているので、第2のレンズアレイ7bの周縁を通過する光から遮光されて行く。通常、第2のレンズアレイ7bの周縁のセルを射出した光30は、図6の様に、大きい入射角度を持ってライトバルブ3に入射するが、ライトバルブ3の特性により、ライトバルブ3に入射する光の入射角が大きくなるに従ってコントラストが低下するので、上記の様に各遮光部材17L,17Rに例えば凹状曲線形状、略放物線形状または略半楕円形状の凹状部17gを形成して第2のレンズアレイ7bの周縁を通過する光から遮光して行くことで、コントラストの低下を防止しつつライトバルブ3に照射される光量を減少させている。
【0033】
そして図4(k)の全閉状態では、各遮光部材17L,17Rの凹状部17gにより、第2のレンズアレイ7bにおける通過光量の最も多い部分、即ち中心(光軸C)から少し上側にずれた部分(ここでは中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセル)および中心から少し下側にずれた部分(ここでは中心から下側に数セル目(2,3セル目)のセル)を通過する光だけを透過させる2つの開口17iが構成される様になっている。
【0034】
ここで、シャッタ機構17aの配置場所について述べると、第2のレンズアレイ7bの焦点位置が第1のレンズアレイ7aの近傍にあるため、シャッタ機構17aの配置が第1のレンズアレイ7aの付近になると、各遮光部材17L,17Rの凹状部17gの形状(以後、シャッタ形状と呼ぶ)がライトバルブ3に結像する可能性が高くなる。そしてシャッタ形状がライトバルブ3に結像すると、スクリーンに投射される映像にシャッタ形状が観察されて照度むらとなる。従って、シャッタ機構17aは、第2のレンズアレイ7bの前側近傍に配置されることが好ましい。尚、ここでは例えば、シャッタ機構17aは、第2のレンズアレイ7bと接する様に配置されている。
【0035】
尚、シャッタ機構17aは、第2のレンズアレイ7bと偏光変換素子9との間に配置されても良い。この様にしても、スクリーンに投射される映像にシャッタ形状が結像して照度むらが生じる事を防止できる。
【0036】
尚、シャッタ機構17aは、遮光部材17L,17Rが、光路の両側から光路上に光路に略直交する様に突出・退避自在に直進稼動する機構であれば、どのような機構でもかまわない。例えば、スライダークランク機構を用い、回転運動を直動運動に変換する機構を用いても良い。
【0037】
この様に構成された投射型表示装置1では、光源系5からの光は、光軸Cと略並行な光束となって第1のレンズアレイ7aに入射し、第1のレンズアレイ7aの各凸レンズ(セル)毎に分割されて、第2のレンズアレイ7bの対応する凸レンズを通過することで、照度分布が均一化される。そして第2のレンズアレイ7bを通過した光は、偏光変換素子9を通過してほぼ全てs偏光光に変換され、次いでコンデンサレンズ11を通過して集光される。そしてその集光された光は、フィールドレンズ13により再び光軸Cに略並行な光束にされた後、偏光板15により、偏光変換素子9で偏光変換されたs偏光光だけが通過させられてライトバルブ3に照射され、ライトバルブ3で生成された像が投射レンズ(不図示)を介してスクリーン(不図示)に投射される。
【0038】
その際、信号検知部17bによりライトバルブ3に入力される映像信号が検知されており、その検知結果に基づき、シャッタ制御部17aにより、スクリーン上の映像のコントラストが向上する様にシャッタ機構17aが制御される(即ち、各遮光部材17L,17Rが光路上に突出・退避自在に直進稼動されて、ライトバルブ3に照射される光の光量が増減調整される)。
【0039】
図5は、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成するシャッタ機構の開閉状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路上への突出状態)とライトバルブ3に照射させる光の光量の関係(曲線51)および図4の場合のシャッタ機構の開閉状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路上への突出状態)とライトバルブ3に照射させる光の光量との関係(曲線81)を示したグラフの一例を示す。ただし、図4の場合のシャッタ機構の開閉状態とライトバルブ3に照射させる光の光量との関係は実測した結果を示している。図5の横軸は、図4(a)の場合のシャッタ機構17aの全開状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路の両側への退避状態)においてライトバルブ3に照射される光の光量を100%とした場合の相対光量比を示す。図5の横軸は、シャッタ機構17aの開閉状態(図4(a)〜(k))を示す。
【0040】
図5の曲線51および81は、ライトバルブ3に照射される光の光量とシャッタ機構17aの開閉状態(即ち各遮光部材17L,17Rの光路上への突出状態)との関係を示している。同図より、シャッタ機構17aが閉じるほど(即ち各遮光部材17L,17Rの突出量が増加するほど)、ライトバルブ3に照射される光の光量が次第に減少していることが確認できる。即ち、シャッタ機構17aを用いることにより光量を調整することが可能であることを示している。尚、従来例の曲線を51,図4の場合の曲線を81としている。
【0041】
図5の曲線81から、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成するシャッタ機構の場合(曲線51)と比べて、シャッタ機構17aの開閉量の増加に応じてライトバルブ3に照射される光の光量が滑らかに(特に凹凸感なく)減少している事が分かる(特徴1)。
【0042】
また図5の曲線81から、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成するシャッタ機構の場合(曲線51)と比べて、相対光量比40%以下の範囲では、ライトバルブ3に照射される光の光量が急峻に低下せずに緩やかに低下していることが分かる(特徴2)。
【0043】
また実際に実験したところ、シャッタ機構17aの全閉状態(図4(k))では、ライトバルブ3に照射される光の照度分布は均一であり、スクリーン上で照度むらは観察されなかった(特徴3)。
【0044】
上記の特徴1,2,3から、図3の様に各遮光部材17L,17Rに凹状部17gを形成する方が(即ち遮光部材17L,17Rの辺部の上半部および下半部にそれぞれ凹状部17gを形成する方が)、従来の様に遮光部材の辺部が平坦な凹状部を形成するよりも(即ち遮光部材17L,17Rの辺部の中央に凹状部を1つ形成するよりも)、シャッタ機構17aの開閉状態の全範囲に亘って、より滑らかにライトバルブ3に照射される光の光量を調整できることが分かる。また、シャッタ機構17aの全閉状態では、ライトバルブ3に照射される光の照度分布は均一になり、スクリーン上で照度むらが生じない事が分かる。
【0045】
図8は、第2のレンズアレイ7bを通過する光の光量(明るさ)の分布(換言すれば、第2のレンズアレイ7bに結像する光源像の分布)のシミュレーション結果を光量に応じて色分けして示したグラフである。同図から、第2のレンズアレイ7bの中心(光軸C)を中心として同心円状に光量が変化しており、且つ第2のレンズアレイ7bにおける中心の各セル(4つのセル)S1での光量が比較的低く、その中心から外側に数セル目(2,3セル目)のセルでの光量が比較的に高く(特にその中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセルS2(図8参照)および下側に数セル(2,3セル目)のセルS3(図8参照)での光量が最も高く)、更に外周側のセルに行くほど次第に光量が低下していることが分かる(特徴A)。
【0046】
尚、図9は、第2のレンズアレイ7bの各セル7sを通過する光の光量をシミュレーションにより算出し、その結果を各セル7s毎に数値で示したグラフであり(但し、第1のレンズアレイ7bは上下左右対称なため、その第1象限のみ示し、且つ第1象限全体を100%に正規化して示している)、また図10は、図9の結果を棒状グラフで示したものである。図9および図10からも、第2のレンズアレイ7bを通過する光の光量の分布が上記の特徴Aのような特徴を有することが分かる。
【0047】
尚、上記の様に第2のレンズアレイ7bにおける中心の各セルS1での光量が比較的低くなるのは、反射鏡5bにおける光源5aの真後ろ部分5c(図11参照)には、発光管が存在するため孔が開いており、そのため、その真後ろ部分5cでは反射鏡とならないからである。図12は、その様な構成の下で、光源5aからの光が反射鏡5bで反射される様子をシミュレーションした図であるが、この図からも、反射鏡5bにおける真後ろ部分5cでは光の反射が殆ど無く、これにより光軸C上を通過する光の光量、従って第2のレンズアレイ7bにおける中心の各セルS1を通過する光の光量が、上記の様に比較的低くなることが分かる。尚、図12中の符号5dは、光源系5からインテグレータレンズ7に向かう光50が光軸Cと略並行となる様に配置された凹レンズである。
【0048】
図8から、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合では、その凹状部の凹形状が第2のレンズアレイ7bの光量分布の同心円にうまく重なり、その結果、各遮光部材を稼動させた際、その凹状部が第2のレンズアレイ7bの同心状の明部分および暗部分を順に遮光し、これが原因で、図5の曲線51は凸凹した感じの曲線になっている事が分かる。これに対し、図3の様に遮光部材17L,17Rに凹状部17gを形成した場合では、その凹状部19gの凹形状が第2のレンズアレイ7bの光量分布の同心円にうまく重ならず、その結果、遮光部材17L,17Rを稼動させた際、第2のレンズアレイ7bの同心状の明部分および暗部分を順に遮光しなくなり、これが原因で、図5の曲線81は滑らかな曲線(凸凹感の無い曲線)になっている事が分かる。このような理由で、上記の特徴1が得られている。
【0049】
また図8および図4(k)から、この実施の形態では、シャッタ機構17aを閉じる際、第2のレンズアレイ7bにおける通過光量の最も多い部分、即ち中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセルS2および中心から下側に数セル目(2,3セル目)のセルS3を通過する光を遮光しない様にして光を遮光するが、これが原因で、図5の曲線81の様に、特に相対光量比40%以下の範囲において、ライトバルブ3に照射される光の光量が急峻に低下せずに緩やかに低下していることが分かる。これに対し、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合では、図5の曲線51から、シャッタ機構17aを閉じる際、第2のレンズアレイ7bのセルS2,S3を通過する光を遮光するが、これが原因で、特に相対光量比40%以下の範囲において、ライトバルブ3に照射される光の光量が急峻に低下していることが分かる。このような理由で、上記の特徴2が得られている。
【0050】
またこの実施の形態では、シャッタ機構17aの全閉状態では、第2のレンズアレイ7bにおける通過光量の最も多い部分、即ち中心から上側に数セル目(2,3セル目)のセルS2および中心から下側に数セル目(2,3セル目)のセルS3を通過する光を遮光しないので、ライトバルブ3に十分な量の光が重畳されることが分かる。これに対し、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合では、シャッタ機構17aの全閉状態では、第2のレンズアレイ7bのセルS2,S3を通過する光を遮光するので、ライトバルブ3に十分な量の光が重畳されないことが分かる。このような理由で、上記の特徴3が得られている。
【0051】
以上の様に構成された投射型表示装置1によれば、各遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部のうちの上半部にインテグレータレンズ7の上半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成され、下半部にインテグレータレンズ7の下半部を通過する光の通過を制限する凹状部17gが形成されるので、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合と比べて、光の光量を滑らかに調整しながらコントラストの向上を図れることができる。
【0052】
また、特に相対光量比40%以下の範囲では、図5より、従来の辺部が平坦かつ辺部の中央に凹状部を1つ形成した場合(曲線51)と比べて、ライトバルブ3に照射される光の光量が緩やかに減少するので、信号検知部17bが低光量の信号を検知した場合、ライトバルブ3に照射される光の光量の制御性が良くなる。
【0053】
また特にシャッタ機構17aの全閉状態において、ライトバルブ3に十分な量の光が重畳されてライトバルブ3に照射される光の照度分布が均一となるので、スクリーン上での照度むらを防止できる。
【0054】
また、光路の両側から光路に略直交する様に光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれその突出方向側の辺部に光の通過を制限する凹状部17gが形成され、光路上への突出量に応じて、光源5aからの光の光量を調整する一対の遮光部材17L,17Rを有するシャッタ機構17aを備えるので、簡単な構造で構成でき、光源5aからの光の熱による寿命の劣化が無く、滑らかな光量調整によるコントラストの向上が図れる。特に、遮光部材17L,17Rの突出方向側の辺部に凹状部17gが形成されることで、コントラストが滑らかに制御できる様になっており、またシャッタ機構17aが液晶を用いないことで、光源5aからの光の熱による寿命の劣化が防止されている。
【0055】
また、各遮光部材17L,17Rが、光路の両側から光路に略直交する様に光路上に突出・退避自在に直進稼動される様に(即ち従来技術4の様に回動しない様に)構成され、且つ第2のレンズアレイ7bの前側(前段側)近傍に配置されるので、遮光部材17L,17Rのシャッタ形状がライトバルブ3から照らし出される像と結像して照度むらが生じる事を防止できる。
【0056】
実施の形態2.
上記の実施の形態1の投射型表示装置1,1Bでは、シャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7aと第2のレンズアレイ7bとの間に配置したが、この実施の形態の投射型表示装置1Cでは、図13の様に、シャッタ機構17aを、偏光変換素子9より後段に(図13では例えば偏光変換素子9とコンデンサレンズ11の間)に配置している。この実施の形態の他の部分は、上記の実施の形態1または2と同様に構成されている。
【0057】
偏光変換素子9を通過した光束による光源像の分布は、図14の様に、第2のレンズアレイ7bに結像する光源像の分布(図8)と比べて、光源像の数が倍に増加している。従って、この実施の形態の様にシャッタ機構17aを偏光変換素子8より後段に配置した場合は、シャッタ機構17aの開閉により、ライトバルブ3に照射される光の光量をより滑らかに制御できる様になる(即ちコントラストをより滑らかに制御できる様になる)。
【0058】
また、上記の実施の形態1の様にシャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7aと第2のレンズアレイ7bの間に配置する場合では、特にシャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7a近傍に配置する場合では、ライトバルブ3の共役位置が第1のレンズアレイ7a近傍にあるため、シャッタ形状がライトバルブ3に結像してしまい、また特にシャッタ機構17aを第1のレンズアレイ7a近傍から第2のレンズアレイ7bまでの間に配置する場合では、光源5aの形が点光源に近づくと、第2のレンズアレイ7bの焦点深度が深くなるため、光源5aの形によっては、シャッタ形状がライトバルブ3に結像してしまう。
【0059】
しかし、この実施の形態の様にシャッタ機構17aを偏光変換素子9より後段に配置した場合は、ライトバルブ3の共役位置や光源5aの形によらず、シャッタ形状がライトバルブ3に結像することはない。
【0060】
つまり、この実施の形態の様にシャッタ機構17aを偏光変換素子9より後段に配置した場合は、シャッタ機構17aにより、シャッタ形状がライトバルブ3に結像することなく、ライトバルブ3に照射される光量をより滑らかに制御できる様になる。
【0061】
更に、シャッタ機構17aの制御性を考慮すると、光の通過する面積の大きい偏光変換素子9−コンデンサレンズ11間およびコンデンサレンズ11近傍にシャッタ機構17aを配置することが好ましい。コンデンサレンズ11からライトバルブ3に光が向かうに従って光の通過する面積がライトバルブ3の面積に近づいて小さくなるので、シャッタ機構17aの制御が困難になるからである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態1に係る投射型表示装置の構成概略図である。
【図2】実施の形態1で用いられる偏光変換素子9の断面概略図である。
【図3】実施の形態1で用いられるシャッタ機構17aの形状の一例を示す図である。
【図4】図3のシャッタ機構17aを全開状態(a)から全閉状態(k)まで1ステップずつ稼動させた状態を示した図である。
【図5】実施の形態1におけるライトバルブ3上に照射される光量とシャッタ機構17aの開閉状態との関係(曲線81)および従来技術の場合におけるライトバルブ3上に照射される光量とシャッタ機構17aの開閉状態との関係(曲線51)を示したグラフの一例図である。
【図6】ライトバルブ3に入射する光の入射角度が第2のレンズアレイ7bを通過する部分に応じて異なることを説明する図である。
【図7】ライトバルブの入射角度とコントラストの関係を示したグラフである。
【図8】第2のレンズアレイ7bに結像する光源像の分布の一例を示す図である。
【図9】第2のレンズアレイ7bの各セル7sを通過する光の光量をシミュレーションにより算出し、その結果を各セル7s毎に数値で示した図である。
【図10】図9の結果を棒状グラフで示した図である。
【図11】光源系5の拡大図である。
【図12】光源5aからの光の反射鏡5bでの反射をシミュレーションした結果を示す図である。
【図13】実施の形態2に係る投射型表示装置の構成概略図である。
【図14】偏光変換素子9を通過した光束の光源像の分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 投射型表示装置、3 ライトバルブ、5 光源系、5a 光源、5b 反射鏡、7 インテグレータレンズ、7a 第1のレンズアレイ、7b 第2のレンズアレイ、9 偏光変換素子、9a 偏光分離膜、9b 反射膜、9c λ/2位相差板、11 コンデンサレンズ、13 フィールドレンズ、15 偏光板、17 光量調整系、17a シャッタ機構、17b 信号検知部、17c シャッタ制御部、17L,17R 遮光部材、17f,17g 凹状部、17i 開口、C 光軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトバルブと、
前記ライトバルブに光を照射するための光源と、
前記光源から前記ライトバルブに至る前記光の光路上に配置され、前記光源からの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、
前記光路上に配置され、前記ライトバルブに照射される前記光の光量を調整するシャッタ機構とを備え、
前記シャッタ機構は、
前記光路の両側から前記光路に略直交する様に前記光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に前記光の通過を制限する凹状部が形成され、前記光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材を有することを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記凹状部は、前記インテグレータレンズの上半部を通過する前記光の通過を制限する凹状部と、前記インテグレータレンズの下半部を通過する前記光の通過を制限する凹状部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記インテグレータレンズが、第1のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイの後方に離間配置された第2のレンズアレイとから構成される場合において、
前記シャッタ機構は、前記第2のレンズアレイの前側近傍に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記インテグレータレンズの後段に配置され、前記インテグレータレンズを通過した光を偏光変換する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子の後段に配置され、前記偏光変換素子を通過した光を前記ライトバルブに集光させるコンデンサレンズとを更に備える場合において、
前記シャッタ機構は、前記インテグレータレンズと前記偏光変換素子との間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記インテグレータレンズの後段に配置され、前記インテグレータレンズを通過した光を偏光変換する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子の後段に配置され、前記偏光変換素子を通過した光を前記ライトバルブに集光させるコンデンサレンズとを更に備える場合において、
前記シャッタ機構は、前記偏光変換素子と前記コンデンサレンズとの間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記インテグレータレンズの後段に配置され、前記インテグレータレンズを通過した光を偏光変換する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子の後段に配置され、前記偏光変換素子を通過した光を前記ライトバルブに集光させるコンデンサレンズとを更に備える場合において、
前記シャッタ機構は、前記コンデンサレンズの近傍に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記凹状部は、凹状曲線形状に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記凹状部は、略放物線形状に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記凹状部は、略半楕円形状に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項1】
ライトバルブと、
前記ライトバルブに光を照射するための光源と、
前記光源から前記ライトバルブに至る前記光の光路上に配置され、前記光源からの光の照度分布を均一化するインテグレータレンズと、
前記光路上に配置され、前記ライトバルブに照射される前記光の光量を調整するシャッタ機構とを備え、
前記シャッタ機構は、
前記光路の両側から前記光路に略直交する様に前記光路上に突出・退避自在に直進稼動され、それぞれの突出方向側の辺部に前記光の通過を制限する凹状部が形成され、前記光路上への突出量に応じて前記光の光量を調整する一対の遮光部材を有することを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記凹状部は、前記インテグレータレンズの上半部を通過する前記光の通過を制限する凹状部と、前記インテグレータレンズの下半部を通過する前記光の通過を制限する凹状部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記インテグレータレンズが、第1のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイの後方に離間配置された第2のレンズアレイとから構成される場合において、
前記シャッタ機構は、前記第2のレンズアレイの前側近傍に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記インテグレータレンズの後段に配置され、前記インテグレータレンズを通過した光を偏光変換する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子の後段に配置され、前記偏光変換素子を通過した光を前記ライトバルブに集光させるコンデンサレンズとを更に備える場合において、
前記シャッタ機構は、前記インテグレータレンズと前記偏光変換素子との間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記インテグレータレンズの後段に配置され、前記インテグレータレンズを通過した光を偏光変換する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子の後段に配置され、前記偏光変換素子を通過した光を前記ライトバルブに集光させるコンデンサレンズとを更に備える場合において、
前記シャッタ機構は、前記偏光変換素子と前記コンデンサレンズとの間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記インテグレータレンズの後段に配置され、前記インテグレータレンズを通過した光を偏光変換する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子の後段に配置され、前記偏光変換素子を通過した光を前記ライトバルブに集光させるコンデンサレンズとを更に備える場合において、
前記シャッタ機構は、前記コンデンサレンズの近傍に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記凹状部は、凹状曲線形状に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記凹状部は、略放物線形状に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記凹状部は、略半楕円形状に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の投射型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図14】
【公開番号】特開2008−46468(P2008−46468A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223178(P2006−223178)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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