説明

抗アレルギー剤及び抗アレルギー活性増強剤

【課題】茶葉に茶葉以外の食品成分を組み合わせ、茶葉が有する抗アレルギー成分の活性を増強した抗アレルギー剤及び、増強させる抗アレルギー活性増強剤を提供すること。
【解決手段】抗アレルギー成分であるメチル化カテキンを含有する緑茶もしくは包種茶の抽出物を、抗アレルギー有効成分量含有する抗アレルギー剤は、抗アレルギー成分活性物質を含有する野菜抽出物を、少なくとも抗アレルギー成分活性増強量含有し、野菜抽出物は、ショウガの抽出物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、べにふうき、べにふじ、べにほまれ、やえほ、するがわせ、ゆたかみどり、かなやみどり、青心大パン、青心烏龍、大葉烏龍、べにひかり、やまかい、やまとみどり、おくみどり等のアッサム雑種/中国種/台湾系統/いずれかの茶葉と野菜等の食品成分の組み合わせにより抗アレルギー作用・抗炎症作用が増強された抗アレルギー性食品素材に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、食生活やライフスタイルの多様化が進行すると同時に、アレルギー症状も多様化し、年々増加している。現在ではアレルギー患者は潜在的な患者を含めて3000万人と言われている。また、ステロイド等の薬剤の副作用が懸念され、アレルギー症状を自覚しているにもかかわらず薬剤の副作用を恐れ、積極的に治療に臨むことができずに症状に悩む人々もいる。そのため、抗アレルギー作用を有する成分を手軽に、かつ安心して摂取し得る飲食品の開発への消費者の期待や関心は高い。
【0003】
緑茶に含まれているカテキン類、サポニン、フラボノイド、カフェインが抗アレルギー効果を持つこと(特許文献1、非特許文献1,2参照)、べにふうき、べにふじ等のメチル化カテキン含有茶葉がI型アレルギー抑制効果・抗炎症効果をもつことが報告されてきた(特許文献2参照)。
【0004】
中でも、べにふうき、べにふじ、べにほまれから製造した緑茶又は包種茶は、抗アレルギー作用・抗炎症作用を有し、その利用が図られてきたところである。しかし、これらの茶葉は、現時点では生産量が少なく、非常に高価である。また、これらの茶葉の効果には、個人差があるため、全ての人に効果が期待できる飲食品が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−253879号公報
【特許文献2】特願平10−346646号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Allergy,52,58 (1997), Fragrance J.,11,50 (1990)
【非特許文献2】Biol. Pharm. Bull., 20, 565 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
緑茶に含まれているカテキン類、サポニン、フラボノイド、カフェインが抗アレルギー効果を持つこと(特許文献1、非特許文献1,2参照)、べにふうき等のメチル化カテキン含有茶葉がI型アレルギー抑制効果・抗炎症効果をもつこと等が報告されてきた(特許文献2参照)。しかし、これらはいずれも茶葉のみを用いて抗アレルギー効果を期待するというものであり、茶葉にそれ以外の食品成分を組み合わせてその効果を高めるというアプローチはされてこなかった。
【0008】
以上のような課題に鑑み、本発明の目的は、茶葉に茶葉以外の食品成分を組み合わせ、茶葉が有する抗アレルギー成分の活性を増強した抗アレルギー剤及び、増強させる抗アレルギー活性増強剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0010】
(1) 抗アレルギー成分であるメチル化カテキンを含有する緑茶もしくは包種茶の抽出物を、抗アレルギー有効成分量含有する抗アレルギー剤であって、
抗アレルギー成分活性物質を含有する野菜抽出物を、少なくとも抗アレルギー成分活性増強量含有し、
前記野菜抽出物は、ショウガの抽出物を含む抗アレルギー剤。
【0011】
(1)の発明によれば、抗アレルギー成分を含有する緑茶もしくは包種茶の抽出物に、野菜抽出物を添加したことによって、茶葉が含有する抗アレルギー成分を活性化することが可能となる。従って、従来よりも少ない量の茶葉で同等の抗アレルギー作用を奏することが可能な飲食品を提供することができる。
【0012】
「抗アレルギー有効成分量」とは、抗アレルギー作用を奏する有効成分が、十分な効果を奏すると判断される場合の含有量をいう。また「抗アレルギー成分活性物質」とは、抗アレルギー成分の活性を増強させることが可能な物質をいう。また「抗アレルギー成分活性増強量」とは、上記抗アレルギー成分の抗アレルギー活性を、1.5倍から10倍程度増強させることが可能な量をいう。
【0013】
上記茶葉に含有されている抗アレルギー成分として、カテキン類が挙げられる。中でも下記の一般式(1)で示されるメチル化カテキンは、強い抗アレルギー作用を奏する。従って、抗アレルギー成分をメチル化カテキンとしたことによって、より強い抗アレルギー作用を奏することができる。
【化1】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【0014】
(2) 前記緑茶又は包種茶は、べにふうき、べにふじ、べにほまれ、やえほ、するがわせ、ゆたかみどり、かなやみどり、青心大パン、青心烏龍、大葉烏龍、べにひかり、やまかい、やまとみどり、おくみどり、台湾系統種、中国種もしくはこれらの混合物の茶葉である(1)に記載の抗アレルギー剤。
【0015】
メチル化カテキンは、上記の品種の茶葉固有のものであるため、(2)の発明によればこれらの品種の茶葉を用いたことによって、抗アレルギー効果をより効率よく増強させることができる。従って、従来よりも少ない量の茶葉でも十分な抗アレルギー作用を奏する飲食品を提供することができる。なお、メチル化カテキンを含有する茶葉として上記の品種の茶葉を挙げたが、特にこれらの品種に限られるものではない。
【0016】
(3) 前記緑茶又は包種茶の抽出物又は粉末を、100ml当たり50mgから50g含有する(1)又は(2)に記載の抗アレルギー剤。
【0017】
(3)の発明によれば、抽出物又は茶葉粉末の含有量を上記の量としたことによって、十分な抗アレルギー作用を奏する飲食品を提供することが可能となる。含有量が5mg未満であると十分な抗アレルギー作用を奏することができない。また、含有量が50gを超えると飲食品の風味が落ちてしまう可能性がある。
【0018】
(4) 前記野菜抽出物を、100ml当たり2mlから50ml含有する(1)から(3)いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【0019】
(5) 前記野菜抽出物を、100mg当たり1mgから80mg含有する(1)から(4)いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【0020】
(6) 前記緑茶粉末を、1用量当たり1.5g以上含有する(1)から(5)いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【0021】
(7) 前記ショウガの抽出物を、1用量当たり30mg以上含有する(1)から(6)いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【0022】
(4)〜(7)の発明によれば、野菜抽出物の含有量を上記の量としたことによって、茶葉抽出物の有する抗アレルギー成分の抗アレルギー活性を増強させることが可能となる。
【0023】
(8) 抗アレルギー成分活性物質を含有するショウガ抽出物からなる、メチル化カテキンを含有する緑茶もしくは包種茶の抽出物の抗アレルギー活性増強剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る機能性飲食品によれば、ショウガ抽出物を添加したことによって、茶葉が含有する抗アレルギー成分を活性化することが可能となる。そのため、従来よりも少ない量の茶葉で同等の抗アレルギー作用を奏することが可能な飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に示すショウガエキスによるマスト細胞炎症性サイトカイン産生抑制増強効果を示した図である。
【図2】実施例2におけるアレルギー日誌に基づいて算出したスコアを示した図である。
【図3】実施例2におけるアレルギー日誌に基づいて算出したスコアを示した図である。
【図4】実施例2におけるアレルギー日誌に基づいて算出したスコアを示した図である。
【図5】実施例2におけるアレルギー日誌に基づいて算出したスコアを示した図である。
【図6】実施例2におけるアレルギー日誌に基づいて算出したスコアを示した図である。
【図7】実施例2におけるアレルギー日誌に基づいて算出したスコアを示した図である。
【図8】実施例3に示すショウガエキスによる好酸球炎症性タンパク質産生抑制効果を示した図である。
【図9】実施例4に示すショウガエキスによるマスト細胞ヒスタミン遊離産生抑制効果を示した図である。
【図10】実施例5に示すショウガエキスによるマスト細胞好酸球遊走因子産生抑制増強効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0027】
[飲食品の製造]
本発明に係る機能性飲食品は、所定の茶葉由来のメチル化カテキン成分を有効成分量含有する。ここで「メチル化カテキン」とは、一般式(1)で示されるものであり、メチル化されたカテキン及び精製の際の不可避成分をいう。本発明におけるメチル化カテキンは主として、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、ECG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、ECG4”Meという)、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、EGCG4”Meという)、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、GCG3”Meという)、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、CG3”Meという)、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、CG4”Meという)、又は、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、GCG4”Meという)、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meとする)及びこれらの異性化体を含むことが好ましい。
【化2】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【0028】
茶葉抽出物は、所定の茶葉からメチル化カテキンを従来公知の方法を用いて抽出して得られる。メチル化カテキンを含有している所定の茶葉としては、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「鳳凰単叢」、「鳳凰水仙」、「白葉単叢水仙」、「黄枝香」、「武夷水仙」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物等が挙げられる。これらの茶葉を単一種又は複数種混合して用いてもよい。
【0029】
また、抽出の際の温度は、溶媒の融点より高く、沸点より低い温度であれば、特に限定されるものではないが、水では10℃から100℃、エタノール及びメタノールでは10℃から40℃が望ましい。抽出時間は10秒から24時間の範囲とすることが好ましい。
【0030】
例えば、乾燥させた茶葉を破砕、粉砕等により粉末化処理したものに、抽出溶媒を添加して抽出物又はその処理物として用いることが好ましい。抽出溶媒としては、水;低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等が挙げられるが、水、エタノール、又は水−エタノール混合溶媒が好ましい。
【0031】
得られた抽出物は、そのまま飲食品に添加してもよいが、精製物を添加してもよい。抽出物の精製は、化学分離精製手法として一般的に用いられる方法を使用することが好ましい。例えば、液−液分配、薄層クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、分配カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、電気泳動や高速液体クロマトグラフィー等を用いることができる。また、必要に応じこれらの分離精製手段を組み合わせて行なってもよい。
【0032】
また、ショウガ抽出物も茶葉抽出物と同様の方法で製造する。具体的には、乾燥したショウガを破砕、粉砕等により粉末化処理したものに、上記の抽出溶媒を添加して抽出物又はその処理物として用いることが好ましい。
【0033】
なお、飲料及び食品中で、上記のメチル化カテキンが十分な抗アレルギー作用を奏するために酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0034】
例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。クエン酸もしくはリンゴ酸を飲料中に0.1g/Lから5g/L、好ましくは0.5g/Lから2g/L含有するのがよい。酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、があげられる。飲料中に、0.005質量%から0.5質量%、好ましくは0.01質量%から0.1質量%含有するのがよい。
【0035】
飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供することができる。
【0036】
また、上記の容器は例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた所定の殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して、容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【0037】
また、食品に使用する場合は、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品等に食品添加物として配合することができる。添加対象の食品としては、各種食品に可能である。飲料としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品としての飲料やその他の栄養飲料、健康飲料、各種の健康茶、その他の飲料等に配合できる。他の食品としては、菓子類、パン、麺類、大豆加工品、乳製品、卵加工品、練り製品、油脂、調味料等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
<実施例1>
マスト細胞からの炎症性サイトカイン産生抑制活性に及ぼす組み合わせ効果について検討した。茶葉抽出液には、2.5gのべにふうき茶葉粉末を25mlの熱水で10分抽出し、濾過した上清を用いた。上清はタンニン含量を酒石酸鉄法で測定し、タンニン含量で細胞1×10個当り50μgとなる量で添加した。野菜抽出液は、それぞれの野菜(ブロッコリスプラウト、かいわれ大根、レッドキャベツスプラウト、ルッコラスプラウト、ショウガ)5gに5mlの50%エタノールを添加して乳鉢でよくすりつぶした。これを3000rpmで15分遠心後、上清を細胞1×10個当り50μlとなる量で添加した。得られた飲料を試験飲料1から5とした。
【0039】
マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)は、マウス骨髄から分離した細胞を30ng/mlマウスIL−3(和光純薬、東京)、5%非働化FBS(Invitrogen, USA)添加RPMI1640(大日本製薬、東京)培地で4週間培養することで得た。BMMCを抗DNP−IgE抗体(Sigma Aldrich, USA)で1晩感作(0.5mg/2×10cells)し、前述の各抽出液を添加して10分後、DNP−HSA(Cosmo−Bio, Tokyo) 300ng/mlで刺激して2時間後、上清を回収し、Bio−plexプロテインサスペンジョンアレイ(Bio−Rad, USA)でサイトカイン量を測定した。なお、測定したサイトカインは、IL−1a、IL−1b、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12(p40)、IL−12(p70)、IL−17、IFN−g、TNF−a、GM−CSF、KC、MIP1−a、RANTESである。
【0040】
プロテインサスペンジョンアレイを用いてBMMCからのサイトカイン産生を調べたところ、抗原刺激後2時間で、IL−2、IL−5、IL−6、IL−17、GM−CSF、TNF−a、MIP−1aで抗原刺激による数値の変動が認められた。特に、炎症性サイトカインTNF−a(腫瘍壊死因子)、MIP−1a(好酸球遊走因子)は刺激により多量に産生された。
【0041】
図1に「べにふうき」緑茶熱水抽出液及び野菜抽出液のTNF−a産生への影響を示した。「べにふうき」緑茶に組み合わせた野菜は、ブロッコリスプラウト、かいわれ大根、レッドキャベツスプラウト、ルッコラスプラウト、ショウガである。「べにふうき」緑茶のみでもTNF−a産生を約40%抑制したが、野菜ではショウガのみが単体でTNF−a産生を約70%抑制した。ブロッコリスプラウト、カイワレ大根と「べにふうき」緑茶を組み合わせることにより、産生抑制率が約2倍になった。特に、ショウガとの組み合わせにおいてTNF−a産生は95%抑制され、「べにふうき」緑茶とショウガエキスの組み合わせは、マスト細胞抗原刺激後のサイトカイン産生を強く抑制し、強い抗アレルギー効果が期待された。
【0042】
<実施例2>
アレルギー性鼻炎軽症者における「べにふうき」緑茶とショウガエキスの同時摂取試験を行なった。被験者には、医療機関で治療を受けておらず、かつ、スギ花粉症状を有し、スギ特異的IgE値がプラスである27名(年齢23歳から59歳、男性18名(平均年齢40.4歳)、女性9名(平均年齢37.8歳))を選択した。
【0043】
試験飲料には、「べにふうき」茶葉粉末(1.5g/回)及び30mgショウガエキス(アルプス薬品製)配合「べにふうき」緑茶粉末(50%平均粒径が約20ml、1.5g/回)を用いた。表1に化学成分の含有量を示す。この粉末を摂取開始から摂取終了まで朝、昼1回ずつ、湯に溶かして飲用させた。この被験品は、1回あたり22.35mgのメチル化カテキンを含有している。
【0044】
なお、比較飲料として、「やぶきた」緑茶粉末(1.5g/回)を用いた。この飲料も被験品と全く同じとした。
【0045】
【表1】

【0046】
試験は次のような手順で行なった。試験飲料の摂取開始前5日間及び、摂取後5日間を観察期間とし、試験飲料の摂取開始日、28日目、56日目、86日目にそれぞれ被験者に対し、管理医師の問診、血圧測定、採尿、採血を行った。
【0047】
採取した血液は、血球計測装置で、白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン、ヘマトリクット、血小板数、平均血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)、好酸球数の各項目を、総タンパク質をビューレット法で、アルブミンをBCG法で、グルタミルオキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)をUV法で、クレアチニンをヤッフェ法で、尿酸、中性脂肪(TG)、総コレステロール(T−chol)、HDLコレステロール(HDL−chol)を酵素法で、ヒスタミン、総IgG、抗原特異的IgE及び好塩基球塩基性タンパク質(Eosionophil cationic protein:ECP)をFEIA法で、サイトメガロウイルス抗体(CMV)を補体結合試験法で、血清鉄を比色法でそれぞれ測定した。また採尿時にタンパク質、糖、ウロビリノーゲンを試験紙法で調査した。上記の血液学検査、一般臨床検査、サイトカイン検査等については三菱化学ビーシーエル(株)にて行った。
【0048】
その結果を表2から7に示す。スギ特異的IgE、ヒノキ特異的IgE、ヒスタミン、ECPを測定したが、スギ花粉飛散量が増加しても、各群とも有意な変動は認められなかった。CD23のみ、比較飲料を摂取した対照群(摂取56日目)及び試験飲料を摂取したべにふうき群及びべにふうきショウガ群(摂取86日目)で摂取開始時の値に比べ有意に上昇した。
【0049】
【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】

【0050】
また、被験者全員によるアレルギー日誌を日本アレルギー学会アレルギー性鼻炎委員会の提唱する方法に準拠して作成した。日誌の記載は、くしゃみ及び鼻かみの回数、鼻づまり、眼のかゆみ、咽頭痛、生活への支障度について、症状の程度に相当する5段階評点(1(なにもない)〜5(とてもひどい))及び医薬品の服薬状況を1日1回、夜に記入させた。日誌は試験終了時に回収して解析を行った。アレルギー性鼻炎診療ガイドラインの指針17に従って鼻症状のSymptom Score、 Medication Score(医薬品の服用点数)、これら両スコアを合算したSymptom−Medication Scoreを算出した。
【0051】
また、鼻炎の自覚症状に関しては、2週間毎のスコアの頻度を統計解析の対象とし、Mann−Whitney U検定により試験群間の比較を行った。また同一試験群内における前観察期間と各試験期間の有意差については、Wilcoxon&Bonferroniの不等式の修正による検定により評価した。血液検査値を始めとする上記以外の検査値についてはパラメトリック法により統計解析し、試験群間の比較には対応のないt検定を用いた。また同一試験群内での摂取開始日とその他の試験日の変動については、試験期間中3回以上測定した項目には二元配置分散分析を行った後、下位検定としてDunnet検定を行うことで比較を行った。
【0052】
アレルギー日誌のスコアを図2から7に示す。これより、本発明に係る飲料を摂取した場合は、咽頭痛の11週及び13週で対照群に比べ有意な差が認められた。また、鼻symptom scoreでは11週ショウガエキス入り「べにふうき」緑茶群が対照群に比べ有意に悪化が軽減された。鼻symptom medication scoreにおいても、11週及び13週でショウガエキス入り「べにふうき」緑茶群で対照群に比して症状の軽減が確認された。
【0053】
また、尿検査では、タンパク質、糖、ウロビリノーゲンを測定したが、摂取による各群の変動は認められなかった。
【0054】
<実施例3>
ショウガエキス添加量による好酸球炎症性タンパク質産生抑制効果の検討を行なった。
【0055】
ショウガエキスは以下のような方法で作成した。まず、凍結乾燥ショウガ(高知県産のおたふくショウガ2022g)148gを粉末にしたもの(収量7.3%)を10mg/ml純水で抽出した。これをさらに遠心分離し、その上清を適宜希釈したものをショウガエキスとした。
【0056】
ヒト好酸球株(HL60 clone15)は誘導、刺激をかけると組織障害性炎症性タンパク質(eosinophil derived neurotoxin)を産生する。刺激をかける際、試料を添加し、その産生量の変動を調べた。べにふうきはタンニン換算で2.5μg/ml添加すると、RANTESで刺激した時よりEDNの産生を抑制する。図8に示すように、ショウガエキス(50μg/ml添加)は、それ自身は抑制効果を持たずに、べにふうきと組み合わせたときに、べにふうきの抑制作用をさらに増強した。
【0057】
<実施例4>
ショウガエキス添加量によるマスト細胞ヒスタミン遊離産生抑制効果の検討を行なった。
【0058】
本実施例においても実施例1と同じショウガエキスを使用した。マウス骨髄誘導マスト細胞(BMMC)をアレルゲン特異的IgE抗体で感作後、アレルゲンで刺激すると炎症性物質ヒスタミンを遊離する。べにふうきはヒスタミン遊離抑制効果をもつ。ショウガエキスは、それ自身はヒスタミン遊離抑制効果は低いが、べにふうきに組み合わせると、図9に示すように、べにふうきが持つヒスタミン抑制効果をさらに増強した。
【0059】
<実施例5>
ショウガエキスによるマスト細胞好酸球遊走因子産生抑制増強効果
本実施例におけるショウガエキスは、しょうがをすりおろして50%エタノールに30分浸漬させ、さらに遠心分離したものを用いた。
【0060】
マウス骨髄誘導マスト細胞(BMMC)はアレルゲン特異的IgE感作後、アレルゲンで刺激すると好酸球遊走因子(MIP1−α)を産生し、べにふうきは、その産生量を抑制する。図10に示すように、ショウガエキスはそれ自身強いMIP−α産生抑制作用をもつが、べにふうきと組み合わせるとさらにMIP1−α産生抑制作用が増強された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗アレルギー成分であるメチル化カテキンを含有する緑茶もしくは包種茶の抽出物を、抗アレルギー有効成分量含有する抗アレルギー剤であって、
抗アレルギー成分活性物質を含有する野菜抽出物を、少なくとも抗アレルギー成分活性増強量含有し、
前記野菜抽出物は、ショウガの抽出物を含む抗アレルギー剤。
【請求項2】
前記緑茶又は包種茶は、べにふうき、べにふじ、べにほまれ、やえほ、するがわせ、ゆたかみどり、かなやみどり、青心大パン、青心烏龍、大葉烏龍、べにひかり、やまかい、やまとみどり、おくみどり、台湾系統種、中国種もしくはこれらの混合物の茶葉である請求項1に記載の抗アレルギー剤。
【請求項3】
前記緑茶又は包種茶の抽出物又は粉末を、100ml当たり50mgから50g含有する請求項1又は2に記載の抗アレルギー剤。
【請求項4】
前記野菜抽出物を、100ml当たり2mlから50ml含有する請求項1から3いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【請求項5】
前記野菜抽出物を、100mg当たり1mgから80mg含有する請求項1から4いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【請求項6】
前記緑茶粉末を、1用量当たり1.5g以上含有する請求項1から5いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【請求項7】
前記ショウガの抽出物を、1用量当たり30mg以上含有する請求項1から6いずれかに記載の抗アレルギー剤。
【請求項8】
抗アレルギー成分活性物質を含有するショウガ抽出物からなる、メチル化カテキンを含有する緑茶もしくは包種茶の抽出物の抗アレルギー活性増強剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−173902(P2011−173902A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86500(P2011−86500)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2005−263779(P2005−263779)の分割
【原出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、農林水産省、「食品の安全性及び機能性に関する総合研究」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】