説明

抗体カリケアマイシン結合体

抗ルイスY抗体が記載される。以前に報告された手順におけるよりも有意に高い薬物ローディングの、かつ低凝集物、かつ低結合体画分(LCF)の、単量体の細胞毒性薬物/キャリア結合体を調製するための方法が記載される。細胞毒性薬物誘導体/抗体結合体、この結合体を含む組成物およびこの組成物の使用も開示される。詳細には、単量体のカリケアマイシン誘導体/抗ルイスY抗体結合体、この結合体を含む組成物、およびこの結合体の使用も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、より高い薬物ローディング、および実質的に減少した低結合体画分(LCF)を有する、IgG1抗体に結合体化された単量体のカリケアマイシン(calicheamicin)細胞毒性薬物の生成のための方法に関する。詳細には、本発明は、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体に関する。本発明はまた、これらの結合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
細胞毒性の化学療法の使用によって、種々のタイプの癌に罹患している患者の生存は改善している。例えば、若年者における急性リンパ球性白血病(Kalwinsky,D.K.(1991)、3:39−43,1991)およびホジキンリンパ腫(非特許文献1)のような選択された新生物性疾患に対する使用では、細胞毒性薬物のカクテルは、完全な治癒を誘導し得る。不幸にも、現在承認されている化学療法では、ほとんどの癌では完全な寛解は生じない。有効性のこの相対的な欠如は複数の理由によって説明できる(概説については、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照のこと)。これらのなかでも、ほとんどの化学療法の低い治療指数は、おそらく薬学的な改善の標的である。低い治療指数は、腫瘍を根絶して治癒効果を得るのに必要な十分に高い用量の投与を妨げ得る、薬物の有効性の用量と毒性の用量との間の狭い範囲を反映している。
【0003】
この問題を回避するための1つのストラテジーは、いわゆる特効薬(magic bullet)の使用である。特効薬は、Ehrlich(非特許文献5)によって着想されて、抗体に化学的に結合される細胞毒性化合物からなる。腫瘍関連抗原を認識する抗体に対して細胞毒性抗癌薬物を結合することによって、薬物の治療指数が改善され得る。この抗体は理想的には、腫瘍細胞の表面で排他的に発現される腫瘍関連抗原(TAA)を認識すべきである。このストラテジーによって、正常な組織の曝露を最小限にしながら腫瘍部位に細胞毒性因子を送達することが可能になる。この抗体は、特に腫瘍に対して細胞毒性因子を送達し、それによって全身の毒性を軽減し得る。
【0004】
全身的な薬物学的治療のために開発された薬物結合体は、標的特異的な細胞毒性因子である。この概念は、規定の標的細胞集団に対して特異性を有するキャリア分子に対して治療因子を結合することを包含する。抗原について高い親和性を有する抗体は、標的性部分としての天然の選択肢である。このような抗原の1つは、正常な組織で発現されるが発現のレベルが特定の腫瘍タイプにおいてより高い、ルイスY抗原である。ルイスY(Le)抗原は、いくつかの乳房、結腸、胃、食道、膵臓、十二指腸、肺、膀胱および腎臓の癌、ならびに胃および島細胞の神経内分泌腫瘍の細胞で見出される。いくつかの腫瘍細胞上でのその存在は、その血清レベルの増大は伴わず、従って、投与されたルイスY特異的抗体は、可溶性抗原に多くは結合されない。
【0005】
高い親和性のモノクローナル抗体のアベイラビリティーによって、抗体標的療法の見通しが有望となった。モノクローナル抗体に結合体化されている毒性物質としては、毒素、低分子量細胞毒性薬物、生物学的応答修飾因子および放射性核種が挙げられる。抗体−毒素結合体は頻繁に、免疫毒素と呼ばれるが、抗体ならびにメトトレキサートおよびアドリアマイシンのような低分子量薬物からなる免疫結合体は、化学免疫結合体(chemoimmunoconjugate)と呼ばれる。免疫調節因子は、リンホカイン、増殖因子および補体活性化コブラ毒因子(CVF)のような、調節機能を有することが公知である生物学的応答修飾因子を含む。放射性免疫結合体は、放射性同位体からなり、この放射性同位体は、その放射線によって細胞を殺傷するための治療剤として用いられても、または画像化のために用いられてもよい。腫瘍細胞に対する細胞毒性薬物の抗体媒介性の特異的送達は、それらの抗腫瘍効力を増強するだけでなく、正常な組織による非標的化された取り込みを妨げ、これによってそれらの治療指数を向上させると期待される。
【0006】
カリケアマイシンまたはLL−E33288複合体として集合的に公知である、抗菌および抗腫瘍因子の強力なファミリーのメンバーを用いる免疫結合体は、癌の処置における使用のために開発された。最も強力なカリケアマイシンは、γと命名されて、本明細書では単にγと称される。これらの化合物は、メチルトリスルフィドを含み、これは適切なチオールと反応されてジスルフィドを形成し得、同時にキャリアに対してカリケアマイシン誘導体を結合させるのに有用であるヒドラジドまたは他の官能基のような官能基を導入する。カリケアマイシンは、二本鎖DNAの破壊を生じる−S−S−結合の還元によって活性化されるエネジエン弾頭(enediyne warhead)(図1)を含む。
【0007】
CMA−676またはCMAとも呼ばれているMYLOTARG(登録商標)(非特許文献6)は、この原理に従って作用する唯一の市販の薬物である。MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾカマイシン)は現在、高齢患者での急性の骨髄球性白血病の処置に承認されている。この薬物は、酸性の加水分解性リンカーによってカリケアマイシンに結合するCD33に対する抗体からなる。半合成のN−アセチルγカリケアマイシンのジスルフィドアナログが結合体化に用いられた(特許文献1、特許文献2)。この分子であるN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジドは、本明細書において以降ではCMと省略される。
【0008】
いくつかの系統の実験的な証拠によって、CD33とは異なるTAAを認識する抗体を用いることは、特効薬のアプローチの適用範囲を拡大できるという概念が補強される。抗体および化学療法剤の多数の結合体(免疫結合体)は、異種移植片の腫瘍のホストを治療する能力が証明されている。標的されたTAAのいくつかの例は:HER2/neu(非特許文献7;非特許文献8;PSCA(非特許文献9);ムチン型糖タンパク質(MIRACL−26457)(非特許文献10;非特許文献11);EGFR(非特許文献12);CEA(非特許文献13);CD22(非特許文献14)およびルイス−抗原(Le)(非特許文献15)である。細胞毒性効果を達成するために、これらの表面抗原に対する抗体を緑膿菌外毒素(非特許文献8)、マイタシノイド(maytansinoid)(非特許文献9;非特許文献10)、カリケアマイシン(非特許文献11;非特許文献14),RNase(非特許文献12)、ビンカ・アルカロイド(非特許文献13)またはドキソルビシン(非特許文献15)に対して結合体化させた。
【0009】
広範な種々の癌のための治療の開発における単量体のカリケアマイシン誘導体/キャリア結合体の使用は、特定の標的因子(キャリア)のアベイラビリティーと、このキャリアに結合体化されるカリケアマイシン誘導体の量(すなわち薬物ローディング)が増大される場合にタンパク質凝集物の形成を生じる結合体化方法との両方によって、制限されている。薬物ローディングが高いほど、結合体の固有の力価が増大されるので、キャリアタンパク質の親和性を保持する限りキャリア上にできるだけ多くの薬物をローディングさせることが所望される。
【0010】
カリケアマイシンを含む多くの細胞毒性薬物の天然の疎水性の性質によって、良好な薬物ローディングおよび合理的な収率を有する単量体の薬物結合体の調製をすることが困難になる。結合の疎水性の増大およびキャリア(抗体)から治療因子を隔てる共有結合的な距離の増大は、この問題を増悪させるようである。非特異的に毒性かつ免疫原性であり得、従って治療用途には除去されるべきである、凝集されたタンパク質の存在によって、これらの結合体の産生のための大規模処理がさらに困難になり、この生成物の収率が低下される。
【0011】
キャリアタンパク質上にローディングされたカリケアマイシンの量(薬物ローディング)、この結合体化反応で形成される凝集物の量、および得られ得る最終精製された単量体の結合体の収率は全て関連している。ある場合には、特許文献3に開示された反応条件を用い、治療適用のために有用なローディング、有用な収率で結合体を作製することは、過剰な凝集のせいでしばしば困難である。これらの反応条件は、結合体化反応における共溶媒としてDMFを利用した。従って、凝集および物質の元々の損失なしに、より高い薬物ローディング/収率を可能にする方法が必要である。凝集を減少させるための改良は、その全体が本明細書に援用されている、特許文献4および特許文献5、ならびに特許文献6および特許文献7に記載されている。
【0012】
カリケアマイシン結合体が凝集する傾向は、結合体化反応が、本明細書にその全体が援用される特許文献8および特許文献9に記載されるリンカーで行われる場合に、特に問題である。この場合、生成された結合体は高い割合で凝集型であり、これらのプロセスによって(例えば、治療用途のために、特許文献8に記載されるプロセスを用いて)作製される結合体を精製することはかなり困難である。いくつかのキャリアタンパク質に関しては、適度なローディングを有する結合体でさえ、小規模で以外は作製することが事実上不可能である。これは、抗体のアイソタイプおよび異なるグリコシル化パターンが結合体化プロセスに影響する抗体には特にあてはまる。結果として、特定の抗体に対してカリケアマイシンを結合体化させて、それによって凝集の量を最小化して生成物の合理的な収量とともにできるだけ高い薬物ローディングを可能にするため、新規でかつ改善された方法を考案する必要がある。
【特許文献1】米国特許第5,606,040号明細書
【特許文献2】米国特許第5,770,710号明細書
【特許文献3】米国特許第5,053,394号明細書
【特許文献4】米国特許第5,712,374号明細書
【特許文献5】米国特許第5,714,586号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0082764号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0192900号明細書
【特許文献8】米国特許第5,877,296号明細書
【特許文献9】米国特許第5,773,001号明細書
【非特許文献1】Dusenbery,K.Eら,「American Journal of Hematology」,1988年,第28巻,p.246−251
【非特許文献2】Gottesman,M.M.,「Ann.Rev.of Med.」,2002年,第53巻,p.615〜62
【非特許文献3】Mashima,T.ら,「Biotherapy」,1998年,第12巻、第6号,p.947〜952
【非特許文献4】Mareel,M.M.ら,「Radiotherapy and Oncology」,1986年,第6巻,p.135〜142
【非特許文献5】Ehrlich,P.,「Collected Studies on Immunity」,第2巻,p.442〜447
【非特許文献6】Sievers,E.L.ら,「Blood」,1999年,第93巻,p.3678〜3684
【非特許文献7】Starling,J.Jら,「Bioconjugate Chemistry」,1992年,第3巻,第4号,p.315〜322
【非特許文献8】DiJoseph,J.F.ら,「European Journal of Cancer」,2002年,第38巻(補遺7),S150
【非特許文献9】Sjogren,H.Oら,「Cancer Res.」,1997年,第57巻,p.4530〜4536
【非特許文献10】Zhang,S.ら,「Int.J.Cancer」,1997年,第73巻:p.50〜56
【非特許文献11】Wahl,A.F.ら,「Int.J.Cancer」,2000年,第93巻:p.590〜600
【非特許文献12】Furokawa,K.ら,「Mol.Immunol.」,1990年,第27巻:p.723〜732
【非特許文献13】Kitamura,K.ら,「Proc.Natl.Acad.Sci.USA.」,1994年,第91巻:p.12957〜12961
【非特許文献14】Clarke,K.ら,「Cancer Res.」,2000年,第60巻:p.4804〜4811
【非特許文献15】Morgan,A.ら,「Immunology」,1995年,第86巻:p.319〜324
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、デオキシコール酸ファミリーのメンバーまたはその塩の存在下において約7〜約9(好ましくは約8.2)のpHで、(i)活性化されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体と、(ii)IgG1抗体とを反応させる工程を包含する、カリケアマイシン結合体を調製するためのプロセス、ならびにこのプロセスによって調製された結合体を提供する。本発明によってまた、抗ルイスY抗体に対して共有結合されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体の結合体を含む組成物も提供される。
【0014】
1実施形態では、上記デオキシコール酸ファミリーのメンバーは、以下の構造:
【0015】
【化4】

であって、ここで
〜Xのうちの2つがHまたはOHであり、そして他の3つが独立してOまたはHのいずれかであり;
が(CHであって、nが0〜4であり、そして
がOH、NH(CHCOOH、NH(CHSOH、またはNH(CHPOであって、mが1〜4である、(A)、
あるいは
【0016】
【化5】

であって、ここで
〜Xのうちの1つがHまたはOHであり、そして他の3つが独立してOまたはHのいずれかであり;
が(CHであって、nが0〜2であり、そして
がOH、NH(CHCOOH、またはNH(CHSOHであって、mが2である、(B)、
あるいは、
【0017】
【化6】

であって、ここで
〜Xのうちの1つがOHであり、そして他の3つがHであり;
が(CHであって、nが0〜2であり、そして
がOH、NH(CHSOHである、(C)、
のうち1つを有する。
【0018】
このデオキシコール酸ファミリーのメンバーはまた、ケノデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸またはタウロケノデオキシコール酸であってもよい。好ましくはこのデオキシコール酸ファミリーのメンバーは約10mMの濃度のデオキシコール酸である。
【0019】
別の実施形態では、前記カリケアマイシン誘導体は、IgG1抗体の約3〜約9重量%、好ましくはIgG1抗体の約7重量%である。
【0020】
このIgG1抗体は、1実施形態では、抗ルイスY抗体であり、好ましくは、抗ルイスY抗体は、G193またはHu3S193である。
【0021】
別の実施形態では、カリケアマイシン誘導体は、カリケアマイシンのN−アシル誘導体またはカリケアマイシンのジスルフィドアナログである。好ましくはこのカリケアマイシン誘導体は、N−アセチルγカリケアマイシンジメチル
ヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)である。
【0022】
さらに別の実施形態では、この加水分解性リンカーは、4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)である。
【0023】
このプロセスは必要に応じて、カリケアマイシン結合体を精製する工程をさらに包含する。このような精製は、クロマトグラフィー分離および限外濾過/ダイアフォルトレーションを含んでもよい。好ましくは、このクロマトグラフィー分離はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。この精製工程後、好ましくは、結合体の平均ローディングは、IgG1抗体1モルあたり、カリケアマイシン約5〜約7モルであり、この結合体の低結合体化画分(LCF)は10%未満である。
【0024】
本発明のカリケアマイシン結合体は好ましくは、約1×10−7M〜約4×10−7MのK、そしてより好ましくは、約3.4×10−7MのKを有する。このような結合体は、ルイスY抗原に結合し、そして、ルイスXおよびH−2血液型群抗原には結合せず、細胞毒性活性を有し、そして抗腫瘍活性を有する。好ましくは、この結合体は、治療有効量で組成物中に存在する。
【0025】
従って、本発明は、G193に共有結合されたN−アセチルγカリケアマイシンジメチチルヒドラジド−4−(4−アセチルフェノキシ))ブタン酸(N−アセチルカリケアマイシンDMH−AcBut)の結合体を含む組成物であって、上記平均ローディングが、1モルのG193あたり約5〜約7モルのN−アセチルカリケアマイシンDMHであり、かつ上記結合体の低結合体化画分(LCF)が約10%未満である、組成物を提供する。
【0026】
本発明はまた、これらの組成物の生物学的活性を保存するためのプロセスであって:溶液中においてこの組成物と、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤、および電解質とを接触させる工程と;この溶液を凍結乾燥させる工程、とを包含するプロセスを提供する。
【0027】
1実施形態では、上記結合体は、約0.5mg/mL〜約2mg/mLの濃度である。好ましくは、この結合体は、1mg/mLの濃度である。
【0028】
別の実施形態では、上記凍結保護物質は、約1.5重量%〜約6重量%の濃度である。上記凍結保護物質は、糖アルコールであっても、または炭水化物であってもよい;好ましくは、この凍結保護物質はトレハロース、マンニトールまたはソルビトールであり、そしてさらに好ましくは、この凍結保護物質は約5%の濃度のスクロースである。
【0029】
界面活性物質は1実施形態では、約0.005%〜約0.05%の濃度である。好ましくは、この界面活性物質は、0.01重量%の濃度のPolysorbate80または約0.01%の濃度のTween80である。
【0030】
別の実施形態では、上記緩衝化剤は約5mM〜約50mMの濃度である。好ましくはこの緩衝化剤は約20mMの濃度のTrisである。
【0031】
上記電解質は別の実施形態では、約5mM〜約100mMの濃度である。好ましくは、この電解質は、ナトリウム塩またはカリウム塩であり、さらに好ましくはこの電解質は約10mMの濃度のNaClである。
【0032】
凍結乾燥の前に、1実施形態では、pHは約7.8〜約8.2であり、そして好ましくはこのpHは約8.0である。
【0033】
1実施形態では、凍結乾燥は:約−35℃〜約−50℃の温度で溶液を凍結させる工程;約20〜約80ミクロンの初期乾燥圧力で、約−10℃〜約−40℃の保管温度で、24〜78時間の間、この凍結した溶液を最初に乾燥させる工程;ならびに、約20〜約80ミクロンの二次乾燥圧力で、約+10℃〜約+30℃の保管温度で、15〜30時間の間、この凍結乾燥した生成物を二次乾燥させる工程;を包含する。好ましくは、凍結は約−45℃で行われ;上記最初の凍結乾燥は約60ミクロンの初期乾燥圧力で、約−30℃の保管温度で、60時間の間であり;かつ、上記第二の乾燥工程は約60ミクロンの乾燥圧力で、約+25℃の保管温度で、約24時間の間である。
【0034】
上記プロセスはさらに、凍結乾燥前に充填剤を添加する工程を包含してもよい。好ましくは、この充填剤は約0.5〜約1.5重量%の濃度であり、さらに好ましくは、この充填剤が、約0.9重量%の濃度のDextran 40または、約0.9重量%の濃度のヒドロキシエチルデンプン40である。
【0035】
本発明はさらに、上記のカリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体組成物、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤および電解質を含む処方物を提供する。
【0036】
癌または別の増殖性障害を処置する方法も本発明によって提供され、この方法は、本明細書に記載の組成物の治療有効量を投与する工程を包含し、癌を処置するための医薬の製造においても用いられ得る。
【0037】
これらの組成物は、セカンドラインの単独療法として投与されても、またはファーストラインの併用療法として投与されてもよい。
【0038】
好ましくは、上記の癌はルイスY抗原について陽性であり、さらに好ましくはこの癌は癌腫である。または、好ましくは、この癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、前立腺癌または結腸直腸癌である。
【0039】
本発明の方法は、例えば、抗癌剤のような生物活性因子と組み合わせて行われてもよい。
【0040】
本発明によってまた(i)本発明の処方物のいずれかを保持する容器と;(ii)希釈剤を用いて上記処方物を再構成し、この再構成された処方物中での結合体濃度を約0.5mg/mL〜約5mg/mLの範囲内とするための説明書、とを備えるキットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
本発明は、カリケアマイシン結合体を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、デオキシコール酸ファミリーのメンバーまたはその塩の存在下において約7〜約9のpHで(i)活性化されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体と、(ii)IgG1抗体(例えば、抗ルイスY抗体)とを反応させる工程、ならびにこれらによって生成された結合体を包含する。本発明によってまた、抗ルイスY抗体に対して共有結合されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体の結合体を有する組成物も提供される。溶液中においてこの組成物と、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤、および電解質とを接触させる工程と;この溶液を凍結乾燥させる工程とを包含する、これらの組成物の生物学的活性を保存するためのプロセスも提供される。カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤および電解質の処方物がさらに提供され、製品も同様に提供される。最後に、本発明は、このような組成物/処方物の治療有効量を投与することによって癌または他の増殖性障害を処置する方法を提供し、この方法は、癌または他の増殖性疾患の処置のための医薬の製造におけるこれらの組成物/処方物の使用を包含する。以下に、本発明の種々の実施形態を記載する。
【0042】
確立された結合体化条件が、ヒト化抗CD22抗体G5/44カリケアマイシン結合体である、MYLOTARG(CMA−676またはCMAとも呼ばれる)およびCMC−544の処方物に適用されている。これらの両方がIgG4抗体である。MYLOTARGの導入から、カリケアマイシンはこれらのタイプの抗体に均一な様式で分配されないということが、イオン交換クロマトグラフィーの使用を通じて、確認されている。これらの結合体の平均ローディングは、抗体1モルあたり0.1〜10または15モルのカリケアマイシンであるが、ほとんどのカリケアマイシンは、この抗体の約半分にあり、他の半分は、少量のカリケアマイシンしか含まない低結合画分(LCF)に存在する。
【0043】
キャリアに対してカリケアマイシンのような細胞毒性薬物を結合体化させて、これによって凝集物の量を最小化させて、結合体産物の有意に改善された収率を伴う高度に均一な薬物ローディングを可能にするための改良方法は、CMC−544の開発の間に達成された。特異的な例は、G5/44−ヒト化抗CD22抗体−NAc−γカリケアマイシンDMH AcBut結合体(すなわち、CMC−544)のものである。総抗体の10%未満までのLCFの量の減少がCMC−544の改善について所望され、そしてLCFのレベルの減少のための種々の選択肢が考慮された。抗原結合および細胞毒性のような免疫結合体の他の特性は、最終的な解決策によって影響されてはならない。考慮される選択肢としては、抗体分子の遺伝的改変または物理的改変、クロマトグラフィー分離技術、または反応条件の改変が挙げられた。
【0044】
古い反応条件(CMA−676 Process Conditions)を用いるNAc−γカリケアマイシン−DMH−AcBut−OSuとのG5/44抗体の反応によって、CMA−676と同様の物理的特性(薬物ローディング、LCF)および凝集を有する産物が得られた。しかし、結合後に存在する高レベル(50〜60%)のLCFは、望ましくないとみなされた。最適反応条件は、統計学的な実験デザイン方法論を通じて決定し、ここでは重要な反応の変数、例えば温度、pH、カリケアマイシン誘導体投入、および添加濃度を評価した。LCFを10%未満に減少させるために、カリケアマイシン誘導体投入を、反応中で抗体の量に対して3%〜8.5%(w/w)まで増大させた。添加物は、200mM(CMAプロセス)の濃度のオクタン酸またはその塩から、37.5mMの濃度のデカン酸またはその塩まで変化した。これらの変化を組み込む反応条件によって、LCFは10パーセント未満に減少されたが、カリケアマイシンローディングは増大した。この反応条件は、本明細書において以降では、CMC−544 Process Conditionと呼ばれる。
【0045】
カリケアマイシン投入の増大によって、薬物ローディングは2.5〜3.0重量パーセントから5.0〜9.0(最も代表的には5.5〜8.5)重量パーセントに増大し、反応中のタンパク質凝集では増大を生じなかった。凝集およびLCF減少に起因して、CMC−544 Process Conditionsでは、さらに均一な生成物が生じた。
【0046】
アミノ酸の配列およびアイソタイプにおける変動に起因して、全ての抗体が同じ物理的特徴を示すわけではないので、反応条件は、各々の特異的な抗体に合わせられなければならない。CMA−676結合体化反応条件をIgG1抗体(例えば、抗ルイスY抗体)とともに用いた場合、得られた結合体は、CMA−676と同様の物理的特性(薬物ローディング、LCFおよび凝集)を有し、そして結合後に存在する高レベル(50〜60%)のLCFは望ましくないとみなされた。IgG1抗体を有するCMC−544のために開発された改変された条件を用いて、よりLCFの低い生成物を生じたが、反応中で生じた凝集物の量は、高すぎるとみなされた。特異的な胆汁酸であるデオキシコール酸ファミリーまたはそれらの塩は、この場合にはLCFおよび凝集物の両方を減少させる最適の添加物として機能したことが確認された。CMA−676、CMC−544の両方および新規な最適化されたプロセスから添加物とともに調製した1つのIgG1抗体結合体の比較を表1に示す(オクタン酸塩、デカン酸塩およびデオキシコール酸塩の比較)
【0047】
【表1】

従って、本発明は、カリケアマイシン結合体を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスでは、活性化カリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体およびIgG1抗体は、デオキシコール酸ファミリーのメンバーまたはその塩の存在下で反応させられる。このプロセスは、凝集物の量を最小化して、IgG1抗体結合体についての薬物ローディングを有意に増大する。
【0048】
胆汁酸のデオキシコール酸ファミリーの任意の適切なメンバーまたはその塩が、本発明のプロセスにおいて用いられ得る。1実施形態では、デオキシコール酸ファミリーのメンバーは以下の構造を有し:
【0049】
【化7】

ここで
〜Xのうちの2つがHまたはOHであり、そして他の3つが独立してOまたはHのいずれかであり;
が(CHであって、nが0〜4であり、そして
がOH、NH(CHCOOH、NH(CHSOH、またはNH(CHPOであって、mが1〜4である。
【0050】
あるいは、このデオキシコール酸ファミリーのメンバーは、以下の構造を有してもよく:
【0051】
【化8】

ここで
〜Xのうちの1つがHまたはOHであり、そして他の3つが独立してOまたはHのいずれかであり;
が(CHであって、nが0〜2であり、そして
がOH、NH(CHCOOH、またはNH(CHSOHであって、mが2である。
【0052】
また代替的には、このデオキシコール酸ファミリーのメンバーは、以下の構造を有してもよく:
【0053】
【化9】

ここで
〜Xのうちの1つがOHであり、そして他の3つがHであり;
が(CHであって、nが0〜2であり、そして
がOH、NH(CHSOHである。
【0054】
好ましくは、このデオキシコール酸ファミリーのメンバーは、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸またはタウロケノデオキシコール酸である。さらに好ましくはこのデオキシコール酸ファミリーのメンバーは、デオキシコール酸であり、これは好ましくは約10mMの濃度で存在する。
【0055】
以前に考察されたとおり、カリケアマイシンとは、米国特許第4,970,198号(米国特許第5,108,912号も参照のこと)に記載されるように、抗菌および抗腫瘍因子のファミリーをいう。本発明のプロセスの1つの好ましい実施形態では、カリケアマイシンは、カリケアマイシンのN−アシル誘導体またはカリケアマイシンのジスルフィドアナログである。これらの化合物のジヒドロ誘導体は、米国特許第5,037,651号に記載され、そしてN−アシル化誘導体は、米国特許第5,079,233号に記載される。本発明においてまた有用である関連の化合物としては、米国特許第4,675,187号;同第4,539,203号;同第4,554,162号;および同第4,837,206号に記載されるエスペラマイシンが挙げられる。これらの化合物の全てが、メチルトリフルフィドを含み、これは、適切なチオールと反応してジスルフィドを形成し得、同時に、ヒドラジドまたは類似の求核試薬のような官能基を導入する。上述の特許の引用における全ての情報は、参照によって本明細書に援用される。本発明において有用である2つの化合物は、米国特許第5,053,394号に開示され、そして米国特許第5,877,296号の表1に、γジメチルヒドラジドおよびN−アセチルγジメチルヒドラジドとして示される。
【0056】
好ましくは、本発明の状況では、カリケアマイシンはN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)である。N−アセチルカリケアマイシンDMHは、現在の用途では大多数の細胞毒性カリケアマイシン因子よりも少なくとも10〜100倍強力である。その力価の高さによって、これは抗体標的化療法の理想的な候補物となり、それによって抗腫瘍活性が最大化され、一方では正常な器官および組織の非特異的な曝露が減少する。
【0057】
従って、1実施形態では、本発明の結合体は、以下の式を有し:
Pr(−X−W)
ここで:
PrはIgG1抗体であり;
XはIgG1抗体と反応し得る任意の反応性基の生成物を含むリンカーであり;
Wはカリケアマイシンファミリー由来の細胞毒性薬物であり;
mは、カリケアマイシンが結合体の3〜9重量%を構成するような、精製された結合体化生成物についての平均ローディングであり;そして
(−X−W)は細胞毒性薬物誘導体であり
好ましくは、Xは式
(CO−Alk-Sp−Ar−Sp−Alk−C(Z)=Q−Sp)であり、
ここでAlkおよびAlkは独立して、結合であるか、または分枝もしくは未分枝の(C−C10)アルキレン鎖であり;
Spは、結合、−S−、−O−、−CONH−、−NHCO−、−NR−、−N(CHCHN−、または−X−Ar−Y−(CH−Zであり、ここでX、Y、およびZは、独立して、結合、−NR−、−S−、または−O−であり、ただし、n=0である場合、YおよびZのうちの少なくとも1つは結合でなければならず、そしてArは、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR、−CONHR、−(CHCOOR、−S(CHCOOR、−O(CHCONHR、または−S(CHCONHRのうちの1、2または3つの基で必要に応じて置換された、1,2−フェニレン、1,3−フェニレンまたは1,4−フェニレンであって、ただしAlkが結合である場合、Spは結合であり;
nが0〜5の整数であり;
Rが−OH、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、(C−C)ジアルキルアミノ、または(C−C)トリアルキルアンモニウム−Aのうちの1つまたは2つの基によって必要に応じて置換された、分枝もしくは未分枝の(C−C)鎖であり、ここでAは塩を完成させる薬学的に受容可能な陰イオンであり;
Arは、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR,−CONHR、−O(CHCOOR、−S(CHCOOR、−O(CHCONHR、または−S(CHCONHRのうちの1、2または3つの基で必要に応じて置換された、1,2−フェニレン、1,3−フェニレンまたは1,4−フェニレンであり、ここでnおよびRは、本明細書において以前に規定されており、あるいは1,2−ナフチリデン、1,3−ナフチリデン、1,4−ナフチリデン、1,5−ナフチリデン、1,6−ナフチリデン、1,7−ナフチリデン、1,8−ナフチリデン、2,3−ナフチリデン、2,6−ナフチリデンまたは2,7−ナフチリデンであるか、または
【0058】
【化10】

であり、ここで各々のナフチリデンまたはフェノチアジンは、必要に応じて、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR、−CONHR、−O(CHCOOR、−S(CHCOOR、または−S(CHCONHRのうちの1、2、3または4つの基で必要に応じて置換され、ここでnおよびRは上記で規定されており、ただしArがフェノチアジンである場合、Spは窒素にのみ結合された結合であり;
Spは結合、−S−または−O−であり、ただしAlkが結合である場合、Spは結合であり;
は、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR、−ONHR、−O(CHCOOR、−S(CHCOOR、−O(CHCONHRまたは−S(CHCONHRのうちの1、2または3つの基で必要に応じて置換されたH、(C−C)アルキル、またはフェニルであり、ここでnおよびRは上記に規定されており;
Spは、直鎖または分枝鎖の二価または三価の(C−C18)ラジカル、二価もしくは三価のアリールラジカルまたは二価もしくは三価のヘテロアリールラジカル、二価もしくは三価の(C−C18)シクロアルキルラジカルまたは二価もしくは三価のヘテロシクロアルキルラジカル、二価または三価のアリール−または二価もしくは三価のヘテロアリール−アリール(C−C18)ラジカル、二価または三価のシクロアルキル−または二価もしくは三価のヘテロシクロアルキル−アルキル(C−C18)ラジカル、あるいは二価もしくは三価の(C−C18)不飽和アルキルラジカルであり、ここでヘテロアリールは、好ましくはフリル、チエニル、N−メチルピロリル、ピリジニル、N−メチルイミダゾリル、オキサゾリル、ピリミジニル、キノリル、イソキノリル、N−メチルカルバゾイル、アミノコルマリニル(aminocourmarinyl)、またはフェナジニルであり、ここでSpが三価のラジカルである場合、Spは、低級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ、ヒドロキシまたは低級(C−C)アルキルチオ基によってさらに置換されてもよく;そして
Qは=NHNCO−、=NHNCS−、=NHNCONH−、=NHNCSNH−、または=NHO−である。
【0059】
好ましくは、Alkは、分枝もしくは未分枝の(C−C10)アルキレン鎖であり;Spは、結合、−S−、−O−、−CONH−、−NHCO−、または−NRであり、ここでRは本明細書において以前に規定されているとおりであり、ただし、Alkが結合である場合、Spは結合であり;
Arは、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR、−CONHR、−O(CHCOOR、−S(CHCOOR、−O(CHCONHR、または−S(CHCONHRのうちの1、2または3つの基で必要に応じて置換された、1,2−フェニレン、1,3−フェニレンまたは1,4−フェニレンであり、ここでnおよびRは、本明細書において以前に規定されたとおりであり、あるいはArは、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR、−CONHR、−O(CHCOOR、−S(CHCOOR、−O(CHCONHR、または−S(CHCONHRのうちの1、2、3、または4つの基で各々必要に応じて置換された、1,2−ナフチリデン、1,3−ナフチリデン、1,4−ナフチリデン、1,5−ナフチリデン、1,6−ナフチリデン、1,7−ナフチリデン、1,8−ナフチリデン、2,3−ナフチリデン、2,6−ナフチリデン、または2,7−ナフチリデンである。
【0060】
は、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR、−CONHR、−O(CHCOOR、−S(CHCOOR、−O(CHCONHR、または−S(CHCONHRのうちの1、2または3つの基で必要に応じて置換された、(C−C)アルキルまたはフェニルである。
【0061】
AlkおよびSpは一緒になって結合である。
【0062】
SpおよびQはすぐ上に規定されたとおりである。
【0063】
本発明のプロセスでは、カリケアマイシンは好ましくは、IgG1抗体の約3〜約9重量%で、そしてより好ましくはIgG1抗体の約7重量%で反応物に添加される。
【0064】
本発明の結合体は、IgG1抗体と反応する任意の反応性基を含むリンカーで誘導体化された細胞毒性薬物カリケアマイシンを利用しており、これは、タンパク質性キャリア標的性因子として用いられて細胞毒性薬物誘導体−抗体結合体を形成する。その全体が本明細書に援用される、米国特許第5,773,001号;同第5,739,116号および同第5,877,296号は、カリケアマイシンから調製された、求核性誘導体、特にヒドラジドおよび関連の求核試薬とともに用いられ得るリンカーを開示する。これらのリンカーは特に、薬物とリンカーとの間で形成された結合が加水分解性である場合に良好な活性が得られるという場合に有用である。これらのリンカーは、2つの官能基を含む。1つの基は代表的には、キャリアと反応するために利用されるカルボン酸である。酸官能基は、適切に活性化された場合、キャリアの遊離のアミン基(例えば、抗体または他のタンパク質性キャリアのリジンの側鎖のアミンなど)とアミド結合を形成し得る。他の官能基は一般にカルボニル基、すなわち、アルデヒドまたはケトンであり、これは適切に修飾された治療因子と反応する。カルボニル基は、薬物上のヒドラジド基と反応して、ヒドラゾン結合を形成し得る。この結合は加水分解性であって、これによって、標的細胞に対する結合後に結合体からの治療因子の放出が可能になる。好ましくは、この加水分解性リンカーは4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)である。
【0065】
N−ヒドロキシスクシンイミド(OSu)エステルまたは他の同等に活性化されたエステルは、活性化されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体を生成するために用いられ得る。他の適切な活性化エステルの例としては、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)、スルホ−NHS(スルホン化NHS)、PFP(ペンタフルオロフェニル)、TFP(テトレフルオロフェニル)およびDNP(ジニトロフェニル)が挙げられる。
【0066】
本発明において用いられ得る抗体の例としては、モノクローナル抗体(mAbs)、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、再表面化抗体、ヒト抗体およびそれらの生物学的に活性なフラグメントが挙げられる。抗体という用語は、本明細書において用いる場合、他に示さない限り広義には、抗体分子および種々の抗体由来分子の両方を指すとして用いられる。このような抗体由来分子は、少なくとも1つの可変領域(重鎖または軽鎖可変領域のいずれか)を含み、そしてFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fdフラグメント、Fabcフラグメント、Sc抗体(単鎖抗体)、二価抗体、個々の抗体の軽鎖単鎖、個々の抗体の重鎖、抗体の鎖と他の分子との間のキメラ融合物などの分子を含む。
【0067】
好ましくは、本発明のIgG1抗体は、癌のような増殖性障害における標的の細胞および/または組織上に発現された細胞表面抗原に指向する。1実施形態では、IgG1抗体は、抗ルイスY抗体である。ルイスYは糖鎖抗原であって、その構造はFucα1→2Galβ1→4[Fucα1→3]GlcNacβ1→3R(Abeら(1983)J.Biol.Chem.,258 11793−11797)である。ルイスY抗原は、ヒト上皮腫瘍(乳房、結腸、肺、および前立腺の腫瘍を含む)の60%〜90%の表面上で発現され、そのうち少なくとも40%がこの抗原を過剰発現して、正常な組織では発現が限定されている。
【0068】
Leを標的し、かつ腫瘍を効率的に標的するために、抗原に対して排他的な特異性を有する抗体が理想的には必要である。従って、好ましくは、本発明の抗ルイスY抗体は、1型の構造(すなわち、ラクトシリーズ(lacto−series)の血液型群(LeおよびLe))とは交差反応せず、そして好ましくは、LeおよびH−2型の構造のような他の2型エピトープ(すなわち、ネオラクト構造(neolacto−structure)には結合しない。
【0069】
ここ数十年間の間、Leを認識するいくつかの抗体が生成されている。しかし、これらのほとんどが、Leおよび2型のHの抗原構造との交差反応性を示す(Furokawa、Kら、723〜732)。好ましい抗ルイスY抗体の例は、hu3S193と命名される(その全体が本明細書に援用される米国特許第6,310,185号;同第6,518,415号;同第5,874,060号を参照のこと)。抗ルイスY抗体の他の例(例えば、欧州特許第0 285 059号;米国特許第4,971,792号および同第5,182,192号)としては、SGN−15中のドキソルビシン結合体(例えば、米国特許第5,980,896号)として現在評価されているモノクローナル抗体BR96(例えば、米国特許第5,491,088号;同第5,792,456号;同第5,869,045号)、Pseudomonas Aeruginosaの外毒素A(PE)に由来する38kDの毒性エレメントを含む組換えのジスルフィド安定化抗ルイスY IgGκ免疫毒素である、LMB−9のモノクローナル抗体(B3(dsFv)PE38)(例えば、米国特許第5,980,895号)、およびIGN311ヒト化抗体(例えば、欧州特許第0 528 767号および米国特許第5,562,903号)が挙げられる。
【0070】
ヒト化抗体hu3S193(Attia,M.A.,ら、1787〜1800)は、Leに対して例外的な特異性を有する腺癌細胞に対して惹起されたマウスモノクローナル抗体である3S193からCDRグラフティングによって生成された(Kitamura,K.,12957〜12961)。Hu3S193は、Leについて3S193の特異性を保持するだけでなく、補体依存性の細胞毒性(本明細書において以降ではCDCと呼ばれる)および抗体依存性の細胞毒性(本明細書において以降ではADCCと呼ばれる)を媒介する能力も得ていた(Attia,M.A.ら,1787〜1800)。この抗体は、125I、111In、または18Fで標識されたhu3S193、ならびに111In、99mTcまたは90Yのようなキレート剤を要する他の放射性標識を用いた生体分布研究によって実証されるとおり、ヌードマウスにおいてLeを発現する異種移植片を標的する(Clarkら,4804〜4811)。
【0071】
本発明は、マウスモノクローナル抗体のCDR領域が、ルイスY抗原に特異的なヒト組換え抗体を生じるようにヒトアクセプターフレームワークにスプライシングされ得るという発見に基づいて、ルイスY抗原に特異的な多数のヒト化抗体を提供する。CDRは、当該分野で公知の任意の従来の命名法、例えば、Kabatナンバリングシステム、Chothiaナンバーシステム、またはOxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられるKabatとChothiaとの間の折衷であるAbM定義を用いて既定され得る。本発明の特に好ましい実施形態は、優れた抗原結合特性を有する例示的なヒト化抗体分子である。ルイスY抗原に特異的なヒト化組換え抗体を産生するためのプロトコールは、その全体が本明細書に援用される、米国特許第6,518,415号に説明される。前に考察したとおり、本発明の好ましい実施形態では、ヒト化ルイスY特異的抗体のCDRは、マウス抗体3S193に由来する。
【0072】
CDRがグラフティングされる場合、マウス、霊長類およびヒトのフレームワーク領域を含む、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプに関して用いられ得る。本発明において用いられ得るヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOMである(Kabatら,Seq.of Proteins of Immunol.Interest、1:310〜334(1994))。例えば、KOLおよびNEWMは、重鎖に用いられ得、REIは、軽鎖に用いられ得、そしてEU、LAYおよびPOMは、重鎖および軽鎖の両方に用いられ得る。
【0073】
実際には、もとのマウス抗体の特異性を保持する有効なヒト化抗体の生成のためには、単にCDRを代用することは通常十分ではない。ヒト可変領域フレームワークは、少数の重要なマウス抗体残基を含む必要がある。これらの残基の同一性は、もとのマウス抗体およびアクセプターのヒト抗体の両方の構造に依存する。従って、本明細書に記載されるヒト化抗体は、アクセプター抗体のいくつかの変更を含む、すなわち、ドナーモノクローナル抗体の結合特異性を保持するために必要なヒト、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインフレームワーク領域。換言すれば、本明細書に記載されるヒト化抗体である、いくつかの実施形態のフレームワーク領域は、天然に存在するヒト抗体可変領域のフレームワーク領域の正確なアミノ酸配列から構成される必要はないが、マウス抗体3S193と同じ標的に特異的であるヒト化抗体領域の結合特性を改善する種々の置換を含む。非ヒトフレームワーク残基の大規模な導入を避けて、かつ最低のヒト化抗体免疫原性を確実にするために、フレームワーク領域に対して最低数の置換を行う。従って、本発明の状況では好ましい抗ルイスY抗体はhu3S193およびG193である。
【0074】
1実施形態では、本発明の抗体分子の改変体は、ルイスYに関しており、ルイスYについて改善された親和性を示す。このような改変体は、CDRを変異させること(Yangら,J.Mol.Biol.,254,392〜403,1995)、鎖シャッフリング(chain shuffling)(Marksら,Bio/Technology,10,779〜783,1992)、E.coliのミューテーター株の使用(Lowら,J.Mol.Biol.,250,359〜368,1996)、DNAシャッフリング(Pattenら,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724〜733,1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら,J.Mol.Biol.,256,77〜88,1996)およびPCR(Crameriら,Nature,391,288〜291,1998)を含む多数の親和性成熟プロトコールによって得ることができる。
【0075】
本発明のヒト化抗体は、ポリペプチドの産生(例えば、インビトロ合成)、組換えDNA産生などのために有用な種々の方法によって生成され得る。好ましくは、ヒト化抗体は、組換えDNA技術によって生成される。従って、本発明のヒト化ルイスY特異的抗体は、DNA技術を用いる組換えタンパク質発現方法によって産生され得る。DNA(例えば、ポリヌクレオチド)を操作するための技術は、分子生物学的の当業者に周知である。このような周知の技術の例は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版,Sambrookら,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)に見出すことができる。ヒト化免疫グロブリンを含む、免疫グロブリンの組換え発現のための技術はまた、とりわけ、Goeddelら,Gene Expression Technology Methods in Enzymology,第185巻,Academic Press(1991),およびBorreback,Antibody Engineering,W.H.Freeman(1992)に見出すことができる。組換え抗体の生成、設計および発現に関するさらなる情報は、Mayforth,Designing Antibodies,Academic Press,San Diego(1993)に見出すことができる。従来の分子生物学的技術の例としては、限定はしないが、インビトロライゲーション、制限エンドヌクレアーゼ消化、PCR、細胞の形質転換、ハイブリダイゼーション、電気泳動、DNA配列決定などが挙げられる。
【0076】
本発明のベクターの構築、本発明の宿主細胞を産生するための細胞のトランスフェクション、本発明の抗体を産生するための細胞の培養のための一般的な方法は全て、従来の分子生物学の方法である。同様に、一旦産生されれば、本発明の組換え抗体は、クロスフロー濾過、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、ダイアフィルトレーションなどを含む、当該分野の標準的な手順によって精製され得る。組換え抗体を発現するために用いられる宿主細胞は、細菌細胞(例えば、E.coli)、または好ましくは真核生物細胞のいずれであり得る。好ましくは、哺乳動物細胞、例えば、PER.C.6細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を用いる。発現ベクターの選択は、宿主細胞の選択に依存し、そして選択された宿主細胞において所望の発現および調節の特徴を有するように選択される。
【0077】
分離プロセスと一緒に、特定の共溶媒、添加物および特定の反応条件を使用して、LCFの有意な減少を伴う単量体の細胞毒性薬物誘導体抗体結合体の形成が得られる。凝集型に対して、この結合体の単量体の形成は、有意な治療価を有しており、そしてLCFの最小化および実質的な凝集の減少は、より高度に結合体化された画分(HCF)とLCFが競合することを妨げることによって、治療上有意義な様式での抗体出発材料の利用という結果をもたらす。
【0078】
本発明の状況では、単量体の細胞毒性薬物結合体とは、抗体の有意な凝集なしに多数のカリケアマイシン分子に対して共有結合される単独の抗体をいう。抗体に対して共有結合されたカリケアマイシン部分の数はまた、薬物ローディングとも呼ばれる。例えば、本発明によれば、平均のローディングは、1抗体あたり0.1〜10または15のいずれかのカリケアマイシン部分であり得る。結合体の所与の集団(例えば、組成物または処方物中)は、薬物ローディングに関して異種であっても同種であってもよい。異種の集団では、平均ローディングは、抗体に結合体化された薬物分子の平均数(またはモル)に相当するので、1抗体あたりの薬物部分の実際の数はかなり変化し得る。非結合体化抗体または有意な結合体化に満たない抗体を有する所与の集団における抗体の割合は、低結合画分すなわちLCFと呼ばれる。
【0079】
非求核性で、タンパク質適合性の緩衝化溶液とのデオキシコール酸の使用によって、より高い薬物ローディング/収率で、かつ凝集の減少をともなう、優れた活性を有する単量体の細胞毒性薬物誘導体/キャリア結合体を一般に生成することが見出された。N−ヒドロキシスクシンイミド(OSu)エステルまたは他の比較的活性化されたエステルから作製された結合体にとって好ましい緩衝溶液は、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N−(4−ブタンスルホン酸)(HEPBS)またはN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES緩衝液)である。このような結合体化反応において用いられる緩衝化溶液は、遊離のアミンも求核試薬も含むことはできない。当業者は、他のタイプの結合体に関して受容可能な緩衝液を容易に決定することができる。
【0080】
単量体結合体を効率的に形成するために必要な添加物の量はまた、抗体間で異なる。この量はまた、過度の実験なしに当業者によって決定され得る。本発明の反応では、抗体の濃度は、1〜15mg/mlの範囲におよんでもよく、そしてカリケアマイシン誘導体、例えば、N−アセチルγカリケアマイシンDMH AcBut OSuエステルの濃度は、抗体の約3〜9重量%におよぶ。
【0081】
共溶媒は代替的には、エタノールであり得、6〜11.4%(容積に基づく)の範囲の濃度で良好な結果が実証されている。この反応は、PBS、HEPES、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N−(4−ブタンスルホン酸)(HEPBS)、または他の競合的な緩衝液中で、約7〜約9、好ましくは8〜9のpHで、約25℃〜約40℃の範囲の温度で、好ましくは約30℃〜約35℃で、そして15分から24時間の範囲の時間で行なわれ得る。さらに好ましくは、この反応は、約8.2のpHで行なわれる。当業者は、他のタイプの結合体について受容可能なpHの範囲を容易に決定可能である。種々の抗体に関して、上述の添加物の組み合わせにおけるわずかな変更の利用は、薬物ローディングおよび単量体結合体の収率を改善することが見出されており、そして任意の特定の抗体は、最適の結果を得るには正確な条件または添加物の選択においていくつかのわずかな変更を要し得るということが理解される。
【0082】
結合体化後、単量体の結合体は、非結合体化反応物(例えば、タンパク質のキャリア分子/抗体および遊離の細胞毒性薬物/カリケアマイシン)から精製されてもよく、そして/または結合体の凝集型から精製されてもよい。精製のための従来の方法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、等電点電気泳動(CF)が用いられ得る。例えば、クロマトグラフィー)による分離後、この結合体は、限外濾過されても、そして/またはダイアフィルトレーションされてもよい。
【0083】
精製された結合体は、単量体であって、通常、3〜9重量%の細胞毒性薬物/カリケアマイシンを含む。好ましい実施形態では、この結合体は、HICを用いて精製される。細胞毒性薬物が、カリケアマイシン誘導体のように高度に疎水性の性質を有し、そして結合体中で用いられる場合、HICは結合体化された抗体と非結合体化抗体の有効な分離を得るために好ましい候補である。HICは、SECを上回る3つの重要な利点がある:(1)HICは、LCF含量と同様に凝集物を効率的に減少させる能力を有する;(2)HICについてのカラムローディング容量はより高い;そして(3)HICは生成物の過度の希釈を回避する。ブチル、フェニルおよびオクチルセファロース4 Fast Flow(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)のような、製造規模での使用に適切な、多数の高容量のHIC媒体は、結合体化プロセスの後、単量体の結合体化成分から未結合の結合体および結合体の凝集物を効率的に分離し得る。
【0084】
好ましくは、HICは、ローディングを伴うブチルセファロースFF樹脂、および0.60Mのリン酸カリウムの洗浄緩衝液および20mM Tris/25mM NaClの溶出緩衝液を用いて行う。また好ましくは、限外濾過は再生したセルロース膜を用いて行なわれ、ダイアフィルトレーションは、10倍透析容積の20mMのTris/10mMのNaClの緩衝液を用いて8.0のpHで行われる。
【0085】
このように、本発明のプロセスによれば、精製工程後、結合体の平均ローディングは、IgG1抗体1モルあたりカリケアマイシン約5〜約7モルである。さらに、精製工程後、結合体の低結合体化画分(LCF)は、約10%未満である。
【0086】
本発明はまた、これらのプロセスによって調製された結合体を提供する。このような結合体は好ましくは、裸の抗体の結合反応速度および特異性を保持している。従って、本発明の結合体は好ましくは、BIAcore分析によって決定した場合、約100〜400nM、好ましくは3.4×10−7MのKを有し、ルイスY抗原に結合し、そしてルイスXおよびH−2血液型群抗原に結合せず、細胞毒性活性を有し、そして/または抗腫瘍活性を有する。結合体の結合反応速度および特異性を決定するためには、FACSまたはBIAcore分析のような、任意の公知の方法を用い得る。
【0087】
本発明のプロセスによって調製された好ましいカリケアマイシン結合体は、抗ルイスY抗体G193に共有結合された、加水分解性のリンカー4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)に共有結合されたN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)であって(CMD−193またはCMDと様々に呼ばれる)、このカリケアマイシン結合体の平均ローディングは、抗体1モルあたりカリケアマイシン約5〜約7モルであり、そしてこの結合体の低結合体化画分(LCF)は約10%未満である。
【0088】
また本発明によって、薬学的に受容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリアと一緒になって抗ルイスY抗体に共有結合したカリケアマイシン−加水分解性リンカーの結合体を含む組成物が提供される。従って、本発明による好ましい組成物は、G193に共有結合されたN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド−4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(N−アセチルカリケアマイシンDMH−AcBut)の結合体を含み、ここでこの平均ローディングは、G193の1モルあたり、約5〜約7モルのN−アセチルカリケアマイシンDMHであり、そしてこの結合体の低結合体化画分(LCF)は約10%未満である。
【0089】
ヒト化したルイスY特異的抗体は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体のような他の抗体(またはその一部)と組み合わせて、またはそれと結合されて用いられ得る。これらの他の抗体は、本発明の抗体が関連する疾患に対して特徴的な他のマーカー(エピトープ)と反応性であり得、または、例えば疾病状態の細胞に対してヒト免疫系の分子または細胞を補充するための、種々の目的の特性を有してもよい。本発明の抗体(またはその一部)は、別々に投与された組成物として、このような抗体(またはその一部)とともに投与されてもよいし、または従来の化学的方法によってもしくは分子生物学的方法によって結合された2つの因子を有する単独の組成物として投与されてもよい。さらに、本発明の抗体の診断的および治療的な価値は、検出可能シグナルを生じる標識で(インビトロまたはインビボのいずれか)、または治療特性を有する標識で、このヒト化抗体を標識することによって増強され得る。いくつかの標識(例えば、放射性核種)は、検出可能シグナルを生じ、かつ治療特性を有し得る。放射性核種標識の例としては、125I、1311、14Cが挙げられる。他の検出可能な標識の例としては、蛍光顕微鏡用の蛍光発色団(例えば、フルオレセイン、フィコビリプロテインまたはテトラエチルローダミン)、電子顕微鏡による実証のための電子高密度生成物を生じる、蛍光、吸光可視色または凝集による検出のための蛍光または着色生成物を生じる酵素;あるいは、直接または間接的な電子顕微鏡可視化のための高電子密度の分子(例えば、フェリチン、ペルオキシダーゼまたは金ビーズ)が挙げられる。治療特性を有する標識としては、メトトレキサートなどのような癌の処置のための薬物が挙げられる。
【0090】
単量体の細胞毒性薬物誘導体/キャリア結合体は、治療もしくは診断の組成物/処方物における唯一の活性成分であってもよいし、または他の抗体成分(例えば抗CD19、抗CD20、抗CD33、抗T細胞、抗IFNγもしくは抗LPS抗体)、または非抗体成分(例えば、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、抗ホルモン、細胞毒性薬物およびキサンチン)を含む、他の活性成分(例えば、下記の化学療法剤、ホルモン療法剤または生物学的治療剤)をともなってもよい。
【0091】
これらの組成物/処方物は、癌を処置するために患者に投与され得る。本発明によれば、カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤および電解質の治療有効量の組成物または処方物は、それを必要とする患者に投与される。あるいは、この組成物または処方物は、癌の処置のための医薬の製造に用いられる。この方法または医薬は、細胞表面でルイスY抗原を発現する細胞によって特徴付けられる増殖性障害を有する任意の患者を処置するために用いられ得るということが理解されるべきである。従って、1実施形態では、処置される癌はルイスY抗原に陽性である。癌は好ましくは、多数のルイスY抗原を発現するもの(すなわち、高ルイスY発現腫瘍)である。処置される癌は、癌腫であり得、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)または乳癌であるか、あるいは前立腺癌または結腸直腸癌である。
【0092】
好ましくは、hu3S193−AcBut−CMまたはCMD−193は、本明細書に開示される組成物または医薬で処置されている被験体に存在するルイスYを発現する細胞のレベルを減少させることが所望される、任意の治療で利用され得る。詳細には、この組成物または医薬は、増殖性障害(すなわち細胞表面上でルイスY抗原を発現する癌腫)を有するヒトまたは動物を処置するために用いられる。これらのルイスY発現細胞は、身体中に循環され得るか、または身体の特定の部位に局在して望ましくないほど多数存在し得る。
【0093】
本発明の処置方法は、手術、放射線、化学療法、ホルモン療法、生物学的療法、骨髄移植(白血病および極めて高用量の化学療法が必要である他の癌のために)を含む他の癌処置と組み合わせて用いられてもよい。癌の生物学の理解の向上に基づいて新規な処置がまた現在開発中であり、承認される。
【0094】
2つの一般的なクラスの放射線療法が存在し、そして本発明の方法に用いられ得る。1つのクラスでは、放射性同位体の直接移植である近接照射療法を腫瘍に行って、高用量をその領域に送達させる。他のクラスでは、遠隔療法(ビーム)を用いて、放射線を身体の広い領域に送達するか、または全身照射(TBI)で全身に送達する。
【0095】
任意の適切な化学療法剤が本発明で用いられ得る。これらの化学療法剤は一般に、以下のクラスにおさまる(各々の例を付記する):代謝アンタゴニスト(例えば、葉酸アンタゴニスト、例えば、メトトレキサート、プリンアンタゴニスト、例えば、6−メルカプトプリン(6−MP)、およびピリミジンアンタゴニスト、例えば、5−フルオロウラシル(5−FU));アルキル化剤(シクロホスファミド);DNA結合剤(シスプラチンまたはオキサリプラチン);抗腫瘍抗生物質(ドキソルビシンまたはミトキサントロン);分裂インヒビター(例えば、タキサンもしくはビンクリスチンのような微小管インヒビター)またはトポイソメラーゼインヒビター(カンプトテカンもしくはタキソール)。さらなる具体例を以下に記載する。
【0096】
本発明に関するホルモン療法としては、例えば、白血病および骨髄腫のためのコルチコステロイド、乳癌のためのエストロゲンおよび抗エストロゲン、ならびに前立腺癌のためのアンドロゲンおよび抗アンドロゲンが挙げられる。
【0097】
生物学的治療は、身体由来の物質を使用する。本発明における適切な療法の例としては、抗体(例えば、抗EGFR抗体、例えば、セツキシマブもしくはトラスツズマブ、または抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)、T細胞療法、インターフェロン、インターロイキンおよび造血性増殖因子が挙げられる。
【0098】
骨髄移植は、いくつかの癌、とりわけ白血病の処置のために用いられ得る。白血病を処置するには、患者の骨髄細胞を化学療法または放射線処置によって破壊する。次いで、細胞表面上のHLA抗原が適合しているかほぼ適合しているドナー由来の骨髄を患者に導入する。骨髄移植はまた、腫瘍細胞を殺傷するために極めて高用量の放射線または化学療法を要する患者の骨髄を置き換えるために用いられる。移植はドナーの供給源に基づいて分類される。同種異系移植では、骨髄ドナーはしばしば遺伝的に無関係であるが、免疫系によって認識される主要なタンパク質である6つの細胞表面抗原(HLA抗原)のうち少なくとも5つが適合している。自家移植では、患者は化学療法または放射線処置後に自分自身の骨髄を戻される。このタイプの骨髄移植は、従来の処置用量では有効性が不完全である、骨髄に無関係な癌に用いられ得る。
【0099】
さらに、本発明の方法において用いられ得る新規に出現したアプローチ(そのいくつかは承認されるか臨床試験中である)は、ガンおよび疾患の進行の分子的基礎および細胞的基礎の理解の増大に基づいて開発されている。リン酸化カスケードを阻害するプロテインキナーゼインヒビター(低分子および抗体の両方)を用いてもよい(例えば、エルロチニブ(erlotinib)またはイマチニブ(imatinib)のメシレート)。ガン細胞の伝播および新しい組織の浸潤をブロックする任意の抗転移剤を用いてもよい。腫瘍に栄養を与える血管の発達をブロックする抗血管形成剤を用いてもよい(例えば、サリドマイド)。用いられ得る他の因子は、腫瘍細胞の増殖を生じる異常なタンパク質の産生をブロックするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。遺伝子療法はまた、患者に注射されてかつ特定の腫瘍細胞を殺傷するように設計される遺伝子を、T細胞に導入するために用いられてもよい。p53はまた、例えば、化学療法薬物に対する感度を再確立するために、変異体のガン細胞に正常なp53遺伝子を導入することによって標的化され得る。
【0100】
1実施形態では、本発明の組成物/処方物は、生物活性因子と組み合わせて用いられる。一般に用いられる生物活性因子としては、抗体、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗ホルモン、キサンチン、インターロイキン、インターフェロン、細胞毒性薬物および抗血管新生タンパク質が挙げられる。
【0101】
ガンのような増殖性障害を処置するために一般に用いられ、カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体と一緒に用いられ得る生物活性の細胞毒性薬物としては以下が挙げられる:アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン(idarubicin)、アクラルビシン、ゾルビシン、ミトザントロン、エピルビシン、カルビシン(carubicin)、ノガラマイシン(nogalamycin)、メノガリル(menogaril)、ピタルビシン(pitarubicin)およびバルルビシン(valrubicin)を最大3日間;ピリミジンまたはプリンヌクレオシド、例えば、シタラビン、ゲムシタビン、トリフルリジン、アンシタビン(ancitabine)、エノシタビン、アザシチジン(azacitidine)、ドキシフルリジン、ペントスタチン、ブロクスウリジン(broxuridine)、カペシタビン、クラドリビン、デシタビン(decitabine)、フロクスウリジン、フルダラビン、グウゲロチン(gougerotin)、プロマイシン、テガフール、チアゾフリン(tiazofurin);アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、メルファラン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、シスプラチン、CKD−602、レドキサントロン(ledoxantrone)、ルビテカン(rubitecan)、塩酸トポテカン、LE−SN38、塩酸アフェレテカン、XR−11576およびXR−11612;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、5フルオロウラシル、テガフール/ウラシル(UFT)、ラリチトレキセド(ralititrexed)、カペシタビン、ロイコボリン/UFT、S−1、ペメトレキセド二ナトリウム、テザシタビン、グルクロン酸トリメトレキセート、チメクタシン(thymectacin)、デシタビン(decitabine);抗腫瘍抗体、例えば、エドレコロマブ(edrecolomab)、マイトマイシン、マイトマイシンCおよびオキサリプラチン;ビンカ・アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、無水ビンブラスチン;血管形成阻害薬、例えば、コハク酸ベタラニブ(vatalanib succinate)、オグルファニド(oglufanide)、RPI−4610;シグナル伝達阻害薬、例えば、ゲフィチニブ、317615.2 HCL、インジスラム(indisulam)、ラパチニブ(lapatinib)、ソラフェニブ(sorafenib)、WHI−P131;アポトーシス誘導因子、例えば、塩酸アルボシジブ(alvocidib hydrochloride)、イロフルベン(irofulven)、フェニル酪酸ナトリウム、ボルテゾミブ(bortezomib)、エキシスリンド(exisulind)、MS−2167;エピポドフィロトキシン、例えば、エトポシド;ならびにタキサン、例えば、パクリタキセル、ドセルタキセル、DHA−パクリタキセル、イキサベピロン(ixabepilone)、ポリグルタミン酸パクリタキセル、またはエポチロン(epothilones)。
【0102】
hu3S193−AcBut−CMまたはCMD−193またはAG G193−AcBut−CMと組み合わせて投与され得る他の化学療法/抗悪性腫瘍剤としては、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、デカルバジン、イホスファミド、ビンデシン、ゲムシタビン、エダトレキセート、イリノテカン、メクロレタミン、アルトレタミン(altretamine)、カルボプラチン、テニポシド、トポテカン、ゲムシタビン、チオテパ、フルクスウリジン(FUDR)、MeCCNU、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトザントロン、ブレオマイシン、メクロレタミン、プレドニゾン、プロカルバジンメトトレキサート、フルオロウラシル、エトポシド、タキソールおよびその種々のアナログ、マイトマイシン、サリドマイドおよびその種々のアナログ、GBC−590、トロキサシタビン(troxacitabine)、ZYC−300、TAU、(R)フルルビプロフェン、塩酸ヒスタミン、タリクイダール(tariquidar)、davanat−1、ONT−093が挙げられる。投与はこれらの治療因子のうちの1つ以上と同時であってもよいし、あるいはこれらの治療因子のうちの1つ以上と連続してでもよい。
【0103】
本発明の抗体結合体と投与され得る生物活性抗体としては、限定はしないが、ハーセプチン(Herceptin)、Zevalin、Bexxar、Campath、セツキシマブ(cetuximab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、ABX−EGF、MDX−210、パーツズマブ(pertuzumab)、トラスツズマブ(trastuzumab)、I−131 ch−TNT−1/b、hLM609、6H9、CEA−Cide Y90,IMC−1C11、ING−1、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、TRAIL−R1 Mab、YMB−1003、2C5、ギバレックス(givarex)およびMH−1が挙げられる。
【0104】
カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体はまた、単独で投与されても、または増殖因子、サイトカイン、ステロイド、抗体、例えば抗ルイスY抗体、リツキシマブおよび化学療法剤のような他の生物活性因子と組み合わせて同時か、もしくは連続して処置レジメンの一部として投与されてもよい。カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体はまた、単独で投与されても、または任意の上記で同定された治療レジメンと同時か、もしくは連続して導入治療段階、地固め療法(consolidation therapy)段階および維持療法段階の一部として投与されてもよい。
【0105】
本発明の結合体はまた、再発した侵襲性の癌腫の処置のための併用化学療法レジメンの一部として他の生物活性および化学療法剤と一緒に投与されてもよい。このような処置レジメンとしては以下が挙げられる:CAP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、シスプラチン)、PV(シスプラチン、ビンブラスチンまたはビンデシン)、CE(カルボプラチン、エトポシド)、EP(エトポシド、シスプラチン)、MVP(マイトマイシン、ビンブラスチンまたはビンデシン、シスプラチン)、PFL(シスプラチン、5−フルオロウラシル、ロイコボリン)、IM(イホスファミド、マイトマイシン)、IE(イホスファミド、エトポシド);IP(イホスファミド、シスプラチン);MIP(マイトマイシン、イホスファミド、シスプラチン)、ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);PIE(シスプラチン,イホスファミド,エトポシド);ビオレルビンおよびシスプラチン;カルボプラチンおよびパクリタキセル;CAV(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン)、CAE(シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド);CAVE(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド);EP(エトポシド、シスプラチン);CMCcV(シクロホスファミド、メトトレキサート、ロムスチン、ビンクリスチン);CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル);CAF(シクロホスファミド、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル);CEF(シクロホスファミド、エピルビシン、5−フルオロウラシル);CMFVP(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、プレドニゾン);AC(ドキソルビシン、シクロホスファミド);VAT(ビンブラスチン、ドキソルビシン、チオテパ);VATH(ビンブラスチン ドキソルビシン、チオテパ、フルオシメステロン);CDDP+VP−16(シスプラチン、エトポシド、マイトマイシンC+ビンブラスチン)。
【0106】
本発明はまた、ルイスYを発現する細胞によって特徴付けられる増殖性障害に罹患しているかまたはそのリスクにあるヒト被験体または動物被験体を処置する方法を提供し、この方法は、本発明のカリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体の有効量を被験体に投与する工程を包含する。処置するとは、腫瘍増殖の遅延および転移の阻害を含む、ガンの増殖を阻害、予防または遅らせることを意味することが理解されるべきである。
【0107】
本発明の組成物/処方物は、第二選択(second−line)の単独療法として投与され得る。第二選択とは、その例が上記されている種々の抗癌処置での処置後に、本発明の組成物/処方物が用いられることを意味する。あるいは、この組成物または処方物は、上記の別の抗癌処置での第一選択(first−line)の併用療法として投与されてもよい。
【0108】
本発明のヒト化抗体組成物は、種々の方法で患者に投与され得る。この組成物の直接送達は一般に、注射によって、皮下に、腹腔内に、静脈内にもしくは筋肉内に達成され、または組織の間質腔に送達される。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的に、すなわち、皮下に、筋肉内に、静脈内に投与され得る。この組成物はまた、病変に投与されてもよい。投薬処置は、単回用量スケジュールであっても、複数回用量スケジュールであってもよい。
【0109】
従って、本発明は、ヒトモノクローナル抗体の溶液、または受容可能なキャリア、好ましくは水性のキャリアに溶解されたそのカクテルを含む、非経口投与のための組成物/処方物を提供する。例えば、カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤、および電解質の処方物。
【0110】
種々の水性キャリア、例えば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどを用いてもよい。これらの溶液は、無菌であり、そして一般には粒子状物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。この組成物は、適切な生理学的条件に必要な場合、pH調節剤および緩衝化剤、毒性調節剤(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム)など、薬学的に受容可能な補助物質を含んでもよい。これらの処方物中の抗体の濃度は、例えば、約0.5重量%未満、通常は約1重量%または少なくとも約1重量%から、15重量%または20重量%程まで広範に変化し得、そして例えば、選択される投与の特定の様式に従って、液体の容積および粘度に主に基づいて選択される。
【0111】
組成物中の活性成分は抗−ルイスY抗体−カリケアマイシン結合体であることが理解される。従って、この組成物は消化管における分解に対して感受性である。従って、この組成物が消化管を用いる経路によって投与されるべき場合、この組成物は分解からタンパク質のキャリアを保護するが、一旦消化管から吸収されればこの結合体を放出させる因子を含む必要がある。
【0112】
非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法および被験体に対する投与に必要な調節は、当業者に公知であるか、または明らかであり、そして、参考として本明細書に援用される、例えば、Remingtons Pharmaceutical Science,第15版、Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)にさらに詳細に記載される。薬学的に受容可能なキャリアの詳細な考察は、Remingtons Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)に利用可能である。
【0113】
組成物は、患者に個々に投与されてもよいし、または他の因子、薬物またはホルモンと組み合わせて投与されてもよい。ガンのような増殖性障害を処置するために用いられ得、そして本発明の細胞毒性薬物誘導体/キャリア結合体と一緒に用いられ得るサイトカインおよび増殖因子としては、インターフェロン、インターロイキン、例えば、インターロイキン2(IL−2)、TNF、CSF、GM−CSFおよびG−CSFが挙げられる。ガンのような増殖性障害を処置するために一般に用いられ、そして本発明の細胞毒性薬物誘導体/キャリア結合体と一緒に用いられ得るホルモンとしては、エストロゲン(ジエチルスチルベストロール、エストラジオール)、アンドロゲン(テストステロン、ハロテスチン(Halotestin))、プロゲスチン(Megace、Provera)、およびコルチコステロイド(プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)が挙げられる。抗ホルモン、例えば、抗エストロゲン(タモキシフェン)、抗アンドロゲン(フルタミド)および抗アドレナリン因子が通常、ガンのような増殖性障害を処置するために用いられ、そして本発明の細胞毒性薬物誘導体/キャリア結合体と一緒に用いられてもよい。
【0114】
さらに、ガンのような増殖性障害を処置するために一般に用いられ、そして本発明の細胞毒性薬物誘導体/キャリア結合体と一緒に用いられ得る化学療法剤/抗腫瘍性因子としては、限定はしないが、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、メトトレキサート、ドキソルビシン、フルオロウラシル、エトポシド、タキソールおよびその種々のアナログ、マイトマイシン、サリドマイドおよびその種々のアナログが挙げられる。
【0115】
薬学的組成物/処方物は好ましくは、治療有効量の本発明の結合体を含むべきである。本明細書において使用される用語、治療有効量は、標的化される疾患もしくは状態を処置、改善もしくは予防するために、または検出可能な治療もしくは予防的な効果を示すために必要な治療因子の量を指す。任意の結合体に関して、治療上有効な用量は最初に、細胞培養アッセイまたは動物モデルのいずれかにおいて、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタもしくは霊長類において評価され得る。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するために用いられ得る。次いで、このような情報を用いて、ヒトにおける投与に有用な用量および経路を決定し得る。
【0116】
ヒト被験体に対する正確な有効量はまた、疾患状態の性質および重篤度、被験体の全体的な健康状態、被験体の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物併用、治療に対する反応感度および耐性/応答に依存する。この結合体が、既存の状態を処置するために予防的に用いられる場合、これも有効量に影響する。この量は慣用的な実験によって決定され得、そして臨床家の判断の範疇内である。一般には、有効用量は、タンパク質のキャリアに基づいて計算して、0.01mg/m〜50mg/m、好ましくは0.1mg/m〜20mg/m、より好ましくは約10〜15mg/mである。
【0117】
用量の頻度は、この結合体の半減期およびその持続期間に依存する。この結合体が短い半減期(例えば、2〜10時間)を有する場合、1日あたり1回以上の用量を与えることが必要であり得る。あるいは、この結合体分子が長い半減期(例えば、2〜15日)を有する場合、1日あたり1回、1週あたり1回、または1もしくは2ヶ月ごとに1回の投薬量を与える必要だけでよい。
【0118】
組成物はまた、抗体結合体の投与のために薬学的に受容可能なキャリアを含んでもよい。薬学的なキャリアは、患者に対するモノクローナル抗体の送達に適切な任意の適合性の非毒性物質であってもよい。滅菌水、アルコール、脂肪、ろうおよび不活性な固体がキャリアに含まれてもよい。キャリアは、それ自体で、組成物を受容する個体に対して有害な抗体の産生を誘導してはならず、かつ毒性であってもいけない。適切なキャリアとは、大きい、緩徐に代謝される高分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性なウイルス粒子であってもよい。薬学的に受容可能なアジュバント(緩衝化剤、分散剤)も薬学的組成物に組み込まれてもよい。
【0119】
薬学的に受容可能な塩は、例えば、無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩、または有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩が用いられ得る。
【0120】
治療用組成物/処方物における薬学的に受容可能なキャリアはさらに、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含んでもよい。補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝化物質が、このような組成物中に存在してもよい。このようなキャリアによって組成物は、患者による摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリーおよび懸濁剤として処方することが可能になる。
【0121】
投与のために好ましい形態としては、例えば、注射または注入による、例えば、ボーラス注射または持続注入による、非経口投与に適切な形態が挙げられる。この生成物が注射または注入のためである場合、これは油状または水性のビヒクル中で懸濁物、溶液またはエマルジョンの形態をとってもよく、そして懸濁剤、保存剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含んでもよい。
【0122】
緩衝化結合体溶液の安定性は、短時間では十分であるが、長期の安定性は乏しい。結合体の安定性を増強するため、そしてその保存期間を延ばすために、抗体−薬物結合体を、適切な無菌の液体による使用前の再構成のための、乾燥形態に凍結乾燥してもよい。タンパク質溶液の凍結乾燥に伴う問題は十分実証されている。二次、三次および四次構造の消失が、凍結および乾燥のプロセスの間に生じ得る。それらを溶液中で凍結保護物質(cryoprotectant)、界面活性物質、緩衝化剤および電解質と接触させ、次いでその溶液を凍結乾燥させることによって、これらの組成物/処方物の生理学的活性が保存できる。凍結乾燥保護物質(lyoprotectant)も溶液中に添加されてもよい。
【0123】
安定な処方物とは、その中にある抗体が本質的に、保存の際に、その物理的安定性および化学的安定性ならびに完全性を保持している処方物である。抗体安定性を測定するための種々の分析技術は、当該分野で利用可能であり、そして、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)、およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)に概説される。安定性は、選択された時間にわたって選択された温度で測定され得る。迅速なスクリーニングのために、処方物を、40℃で2週間〜1ヶ月間保管してもよく、その時点で安定性が測定される。処方物が2〜8℃で保管されるべき場合、一般にはこの処方物は30℃または40℃で少なくとも1ヶ月安定であるか、および/または2〜8℃で少なくとも2年間安定でなければならない。処方物が30℃で保管されるべき場合、一般にはこの処方物は30℃で少なくとも2年間安定であるか、および/または40℃で少なくとも6ヶ月間安定でなければならない。凍結乾燥後および保管後の凝集の程度は、抗体安定性の指標として用いられ得る。例えば、安定な処方物とは、抗体の約10%未満、そして好ましくは約5%未満が、処方物中で凝集物として存在する処方物であり得る。他の実施形態では、凍結乾燥および凍結乾燥された処方物の保管後の凝集物形成のあらゆる増大が決定され得る。例えば、安定な凍結乾燥処方物とは、この凍結乾燥された処方物が、2〜8℃で少なくとも1年間保管されたとき、この凍結乾燥された処方物における凝集の増大が約5%未満、そして好ましくは約3%未満である処方物であり得る。さらに、抗体処方物の安定性は、生理学的な活性のアッセイを用いて測定され得る。
【0124】
凍結乾燥プロセスの間、この結合体の非晶性の安定化剤として作用するように、そしてタンパク質の構造の完全性を維持するように、凍結保護物質が含まれる必要があり得る。1実施形態では、本発明において有用な凍結保護物質は、糖アルコール、例えば、アルジトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ポリスチレングリコールおよびその組み合わせである。別の実施形態では、凍結保護物質は、糖酸であり、これには、アルドン酸、ウロン酸、アルダン酸およびその組み合わせが含まれる。
【0125】
本発明の凍結保護物質はまた、炭水化物であってもよい。適切な炭水化物は、2つ以上のヒドロキシル基を含むアルデヒドまたはケトン化合物である。炭水化物は、環状であっても直鎖状であってもよく、これには、例えば、アルドース、ケトース、アミノ糖、アルジオール、イノシトール、アルドン酸、ウロン酸、またはアルダン酸またはその組み合わせが挙げられる。炭水化物はまた、単糖類(mono−carbohydrate)、二糖類(di−carbohydrate)または多糖類(poly−carbohydrate)、例えば、二糖類または多糖類などであってもよい。適切な炭水化物としては、例えば、グリセルアルデヒド、アラビノース、リキソース、ペントース、リボース、キシロース、ガラクトース、グルコース、ヘキソース、イドース、マンノース、タロース、ヘプトース、グルコース、フルクトース、グルコン酸、ソルビトール、ラクトース、マンニトール、メチルαグルコピラノシド、マルトース、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸、ラクトース、ソルボース、グルカル酸、エリトロース、トレオース、アラビノース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、タガトース、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、スクロース、トレハロース、もしくはノイラミン酸、またはそれらの誘導体が挙げられる。適切な多糖類としては、例えば、アラビナン類、フルクタン類、フカン類(fucans)、ガラクタン類、ガラクツロナン類、グルカン類、マンナン類、キシラン類(例えば、イヌリンなど)、レバン、フコイダン、カラギナン、ガラクトカロロース(galactocarolose)、ペクチン、ペクチン酸、アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、プスツラン(pustulan)、キチン質、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンチンゴムまたはデンプンが挙げられる。なかでも特に有用な炭水化物は、スクロース、グルコース、ラクトース、トレハロースおよびその組み合わせである。スクロースは特に有用な凍結保護物質である。
【0126】
好ましくは、本発明の凍結保護物質は、炭水化物または糖アルコールであり、これは多価アルコールであってもよい。多価化合物は、2つ以上のヒドロキシル基を含む化合物である。好ましくはこの多価化合物は直鎖である。適切な多価化合物としては、例えば、グリコール、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、グリセロール、またはペンタエリトリトール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、凍結保護物質はスクロース、トレハロース、マンニトールまたはソルビトールである。別の実施形態では、凍結保護物質は、約1.5重量%〜約6重量%の濃度である。好ましくは凍結保護物質は、約5%の濃度のスクロースである。
【0127】
凍結乾燥前の処方物に界面活性物質を添加することが望まれることが見出されている。あるいは、またさらに、この界面活性物質は、凍結乾燥された処方物および/または再構成された処方物に添加され得る。界面活性物質の例としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(poloxamer)(例えば、ポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル−、ミリスチル−、リノリル−またはステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノリル−またはステアリル−サルコシン;リノリル−、ミリスチル−、またはセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノールアミドプロピル−、ミリスタミドプロピル−、パルニドプロピル−またはイソステアラミドプロピル−ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウム、またはオレイルメチルタウリン二ナトリウム;およびMONAQUATTMシリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.),ポリエチレングリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例えば、PluronicsまたはPF68)、ならびにTween 80が挙げられる。界面活性物質は、1実施形態では、約0.005重量%〜約0.05重量%の濃度である。好ましい実施形態では、界面活性物質は、0.01重量%の濃度のポリソルベート80または約0.01重量%の濃度のTween 80である。
【0128】
再構成された処方物とは、希釈液中で凍結乾燥された抗体処方物を溶解することによって、この抗体が再構成された処方物中で分散されるように、調製されている処方物である。目的の抗体で処置されるべき患者に対する投与(例えば、非経口投与)のために、そして本発明の特定の実施形態で適切である、再構成された処方物とは、皮下投与のために適切である処方物であり得る。
【0129】
等張性とは、目的の処方物がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張性処方物は一般に、約250〜350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧またはアイスフリージングタイプの浸透圧計を用いて測定され得る。
【0130】
凍結乾燥保護物質(lyoprotectant)がまた、凍結乾燥前の処方物に添加され得る。凍結乾燥保護物質とは、目的の抗体と組み合わされた場合、凍結乾燥および引き続く保管の際に抗体の化学的および/または物理的な不安定性を有意に防止または軽減する分子である。例示的な凍結乾燥保護物質としては、糖、例えば、スクロースまたはトレハロース;アミノ酸、例えば、グルタミン酸一ナトリウムまたはヒスチジン;メチルアミン、例えば、ベタイン;親液性の塩、例えば、硫酸マグネシウム;ポリオール、例えば、三価またはそれより高い価の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;Pluronic;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい凍結乾燥保護物質は、非還元糖、例えば、トレハロースまたはスクロースである。
【0131】
好ましい実施形態では、凍結乾燥保護物質は、非還元糖、例えば、スクロースまたはトレハロースである。凍結乾燥前の処方物における凍結乾燥保護物質の量は一般には、再構成の際に得られる処方物が等張性であるような量である。しかし、高張性の再構成された処方物も安定であり得る。さらに、凍結乾燥保護物質の量は、凍結乾燥の際に生じる抗体の分解/凝集の量が受容できないほど少なすぎてはならない。凍結乾燥保護物質が糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)である場合、凍結乾燥前の処方物における例示的な凍結乾燥保護剤の濃度は、約10mM〜約400mM、好ましくは約30mM〜約300mM、そして最も好ましくは約50mM〜約100mMである。凍結乾燥保護物質に対する抗体の比は、各々の抗体および凍結乾燥保護物質の組み合わせについて選択される。糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)の場合、高い抗体濃度を有する等張性の再構成された処方物を生成するための凍結乾燥保護物質として、抗体に対する凍結乾燥保護物質のモル比は、抗体1モルに対して約100〜約1500モルの凍結乾燥保護物質であり、好ましくは抗体1モルに対して約200〜約1000モルの凍結乾燥保護物質であり、そしてさらに好ましくは抗体1モルに対して約200〜約600モルの凍結乾燥保護物質である。
【0132】
凍結乾燥保護物質は、凍結乾燥保護量で凍結乾燥前の処方物に添加される。この凍結乾燥保護量とは、この凍結乾燥保護量の凍結乾燥保護物質の存在下における抗体の凍結乾燥後に、この抗体が凍結乾燥および保管の際にその物理的および化学的な安定性および完全性を本質的に保持するということを意味する。
【0133】
本明細書の目的の希釈剤とは、薬学的に受容可能(ヒトへの投与に安全かつ非毒性)であり、そして再構成された処方物の調製のために有用である希釈剤である。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射のための静菌性の水(BWFI)、pH緩衝化溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)、滅菌生理食塩水溶液、リンゲル溶液またはブドウ糖溶液が挙げられる。
【0134】
保存剤とは、再構成された処方物における細菌の活動を本質的に軽減させて、これによって例えば、多数回使用の再構成された処方物の生成を容易にするために希釈剤に添加され得る化合物である。可能性のある保存剤の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他のタイプの保存剤としては、芳香族アルコール(例えば、フェノール)、ブチルおよびベンジルアルコール、アリールパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールが挙げられる。本明細書において最も好ましい保存剤はベンジルアルコールである。
【0135】
充填剤は、凍結乾燥された混合物のかさを増やして、凍結乾燥されたケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開放細孔構造を保持する本質的に均一に凍結乾燥されたケーキの生成を容易にする)化合物である。例示的な充填剤としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびキソルビトール(xorbitol)が挙げられる。
【0136】
いくつかの場合には、凍結乾燥保護物質(例えば、スクロースまたはトレハロース)および充填剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)の混合物を、凍結乾燥前の処方物の調製に用いる。充填剤によって、その中に過度のポケットのない均一に凍結乾燥されたケーキの生成が可能になり得る。従って、充填剤はまた、凍結乾燥の前に添加されてもよい。適切な充填剤は、約0.5〜約1.5重量%の濃度を有してもよい。好ましくは、充填剤は0.9重量%の濃度のデキストラン40または、0.9重量%の濃度のヒドロキシエチルデンプン40である。
【0137】
Remingtons Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.編(1980)に記載されるような他の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、それが処方物の所望の特徴に有害に影響しないという条件では、凍結乾燥前の処方物(および/または凍結乾燥された処方物および/または再構成された処方物)に含まれてもよい。受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、そしてこれにはさらなる緩衝化剤;保存剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAのようなキレート剤;金属錯体(例えば、Zn−抗体錯体);生分解性ポリマー、例えば、ポリエステル;ならびに/または塩形成する対イオン、例えば、ナトリウムが挙げられる。
【0138】
インビボの投与のために用いられるべき処方物は無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前、または後に滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。あるいは、混合物全体の無菌性は、例えば、抗体以外の成分を約120℃で約30分間オートクレーブすることによって達成され得る。
【0139】
目的の抗体の調製後、凍結乾燥前の処方物を生成する。この凍結乾燥前の処方物に存在する抗体の量は、所望の用量の容積、投与の様式を考慮して決定される。この抗体は一般に溶液に存在する。例えば、抗体は、pH緩衝化溶液中に存在し得る。例示的な緩衝化剤としては、ヒスチジン、リン酸塩、Tris、クエン酸塩、コハク酸塩、および他の有機酸が挙げられる。1実施形態では、この結合体は、約0.5mg/mL〜約2mg/mLの濃度で、好ましくは1mg/mLの濃度である。1実施形態では、緩衝化剤は、約5mM〜約50mMの濃度である。好ましい実施形態では、緩衝化剤は、約20mMの濃度のTrisである。凍結乾燥前に、pHは任意の適切なpH、例えば、約7.8〜約8.2、そして好ましくは約8.0であってもよい。
【0140】
本処方物の別の実施形態における電解質は、約5mM〜約100mMの濃度である。任意の適切な電解質、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、リン酸塩および重炭酸塩などが用いられてもよい。好ましくは電解質はナトリウム塩またはカリウム塩であり、さらに好ましくは電解質は、約10mMの濃度のNaClである。
【0141】
抗体、凍結乾燥保護物質および他の選択的な成分を一緒に混合した後、処方物を凍結乾燥する。Hull50.TM.(Hull,USA)またはGT20.TM.(Leybold−Heraeus,Germany)凍結乾燥機のような、多くの異なる凍結乾燥機がこの目的のために利用可能である。凍結乾燥は、処方物を凍結させ、引き続いて初回の乾燥に適切な温度でこの凍結成分から氷を昇華させることによって達成される。この条件下では、生成物の温度は、処方物の共融点または破壊温度未満である。代表的には、初回の乾燥のための貯蔵温度は、代表的には約50〜250mTorrにおよぶ、適切な圧力で約−30℃〜25℃におよぶ(ただし生成物が初回の乾燥の間に凍結したままである条件)。処方物、サンプルを保持している容器(例えば、ガラスバイアル)のサイズおよびタイプ、ならびに液体の容積が主に、乾燥に必要な時間に影響し、この時間は、2〜3時間から数日(例えば、40〜60時間)に及んでもよい。二次乾燥段階は、容器のタイプおよびサイズ、ならびに使用される抗体のタイプに主に依存して、約0〜40℃で行なわれ得る。しかし、二次乾燥工程はなくてもよいことが、本明細書において見出された。例えば、凍結乾燥の完全な水分除去段階を通じた保管温度は、約15〜30℃であってもよい(例えば、約20℃)。二次乾燥に必要な時間および温度とは、例えば、温度および他のパラメーターに依存して、適切な凍結乾燥ケーキを生じるものである。二次乾燥時間は、生成物中の所望の残留湿度レベルによって影響され、そして代表的には、少なくとも約5時間(例えば、10〜15時間)かかる。この圧力は、初回乾燥工程の間に使用される圧力と同じであってもよい。凍結乾燥条件は、処方物およびバイアルのサイズに依存して変化し得る。
【0142】
本発明による凍結乾燥は、約−35℃〜約−50℃の温度で溶液を凍結させる工程と;約−10℃〜−40℃の保管温度で24〜78時間の間、20〜80ミクロンの初回乾燥圧力で凍結溶液をまず乾燥させる工程と;約+10℃〜約+30℃の保管温度で15〜30時間の間、20〜80ミクロンの二次乾燥圧力でこの凍結乾燥生成物を二次乾燥させる工程とを包含し得る。凍結は、−45℃で行われてもよく、ここで初回の凍結乾燥は60ミクロンの初回乾燥圧力で、−30℃の保管温度で60時間であって、二次乾燥工程は60ミクロンの乾燥圧力で、+25℃の保管温度で24時間である。
【0143】
移し換えの工程を回避するために、抗体の再構成が行われる容器において抗体処方物を凍結乾燥することが所望され得る。この場合の容器は、例えば、3、5、10、20、50または100ccのバイアルであってもよい。
【0144】
一般的な提案として、凍結乾燥によって、その湿度が約5%未満、好ましくは約3%未満である凍結乾燥処方物が生じる。
【0145】
所望の段階では、代表的には、患者に対する抗体を投与する時点では、凍結乾燥された処方物は、希釈剤で再構成され得、その結果再構成された処方物中の抗体濃度は、少なくとも50mg/mL、例えば、約50mg/mL〜約400mg/mL、さらに好ましくは約80mg/mL〜約300mg/mL、そして最も好ましくは約90mg/mL〜約150mg/mLである。再構成された処方物中のこのような高い抗体濃度は、再構成された処方物の皮下送達が意図される場合特に有用であるとみなされる。しかし、静脈内投与のような他の投与経路に関しては、再構成された処方物中では、より低い濃度の抗体が所望され得る(例えば、再構成された処方物中に、約5〜50mg/mL、または約10〜40mg/mLの抗体)。特定の実施形態では、再構成された処方物中の抗体濃度は、凍結乾燥前の処方物中の濃度よりも有意に高い。例えば、再構成された組成物中の抗体濃度は、凍結乾燥前の処方物の濃度の約2〜40倍、好ましくは3〜10倍、そして最も好ましくは3〜6倍(例えば、少なくとも3倍または少なくとも4倍)であってもよい。
【0146】
再構成は一般に、完全な水和を確実にするために約25℃の温度で行われるが、必要に応じて他の温度が用いられてもよい。再構成のために必要な時間は、例えば、希釈剤のタイプ、賦形剤および抗体の量に依存する。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射のための静菌性の水(BWFI)、pH緩衝化溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)、滅菌生理食塩溶液、リンゲル溶液またはブドウ糖溶液が挙げられる。希釈剤は必要に応じて保存剤を含む。例示的な保存剤は、上記されており、芳香族アルコール、例えば、ベンジルアルコールまたはフェノールアルコールが好ましい保存剤である。使用される保存剤の量は、抗体および保存剤の有効性の試験と適合性であるように種々の保存剤の濃度を評価することによって決定される。例えば、保存剤が芳香族アルコール(例えば、ベンジルアルコール)である場合、約0.1〜2.0%、そして好ましくは約0.5〜1.5%、ただし最も好ましくは約1.0〜1.2%の量で存在し得る。好ましくは、この再構成された処方物は、10μmのサイズを超える粒子を、1バイアルあたり6000個未満有する。
【0147】
再構成された処方物は、抗体での処置の必要なヒトに対して、静脈内投与のような公知の方法に従って、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、くも膜下腔内経路、経口経路、局所経路または吸入経路による、ボーラスとしてまたは一定期間にわたる持続注入によって投与される。
【0148】
本発明の凍結乾燥処方物を含み、その再構成および/または使用のための説明書を提供する製品が提供される。この製品またはキットは、(i)本発明の組成物/処方物を保持する容器と;(ii)凍結乾燥された処方物を、0.5mg/mL〜5mg/mLの範囲内の再構成された処方物中の結合体の濃度まで希釈剤を用いて再構成するための説明書とを有する。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば、二重チャンバのバイアル)、シリンジ(例えば、二重チャンバのシリンジ)および試験管が挙げられる。この容器は、ガラスまたはプラスチックのような種々の物質から形成され得る。この容器は、凍結乾燥された処方物を保持し、そしてこの容器上のまたはそれに関連した表示は、再構成および/または使用の指示を示し得る。例えば、表示は、凍結乾燥された処方物が上記のような抗体濃度に再構成されることを示し得る。この表示はさらに、この処方物が皮下投与のために有用であるか、またはそれを意図されることを示し得る。この処方物を保持する容器は、再構成された処方物の反復投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にする、多数回使用のバイアルであってもよい。この製品はさらに、適切な希釈剤(例えば、BWFI)を含む第二の容器を備えてもよい。希釈剤および凍結乾燥処方物の混合の際に、再構成された処方物中の最終抗体濃度は一般に少なくとも50mg/mLである。製品はさらに、商業上および使用者の観点から所望される他の物質を含んでもよく、これには、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、シリンジ、および使用上の説明を含む添付文書が挙げられる。
【0149】
一旦処方されれば、本発明の組成物は、被験体に直接投与されてもよい。処置されるべき被験体は動物であってもよい。しかし、この組成物は、ヒト被験体に対する投与に適合していることが好ましい。
【0150】
本発明の組成物は、限定はしないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、関節内経路、髄内経路、くも膜下腔内経路、心室内経路、経皮経路(transdermal)、経皮経路(transcutaneous)(PCT国際公開番号WO98/20734号を参照のこと)、皮下経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、腸内経路、局所経路、舌下経路、膣内経路または直腸経路を含む多数の経路によって投与され得る。皮下噴射器も、本発明の組成物を投与するために用いられ得る。代表的には、組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかのように注射可能に調製され得る。注射の前の液体ビヒクル中の溶液または液体ビヒクル中の懸濁物に適切な固体形態もまた調製され得る。
【実施例】
【0151】
(実施例)
(一般的な材料および方法)
(ガン細胞)
表面上に種々のレベルのルイスY抗原を発現するヒトのガン細胞株を選択した。これらの株としては、ルイスY抗原の発現が高い細胞株(L2987肺癌、N87胃癌、A431/LeY類表皮癌、AGS結腸癌、およびLS174T結腸癌)、ルイスY抗原の発現が低い細胞株(LOVO結腸癌およびLNCaP前立腺癌)、ならびにルイスY抗原の発現が極めて低いか全くない細胞株(PC3MM2前立腺癌、およびA431類表皮癌)が挙げられた。使用した癌細胞株のルイスY発現状態を、フローサイトメトリーによって確認した。用いた細胞株の例は以下のとおりである。
【0152】
DLD−1(CCL−221)、HCT8S11、HCT8S11/R1およびLOVO(CCL−229)は、細胞膜の上でLe抗原を呈示する結腸癌細胞株である。
【0153】
NCI−H157(CRL−5802)、NCI−H358(CRL−5807)およびA549(CCL−159)は、肺癌細胞株である。これら3つの細胞株のうちでも、NCI−H358は、細胞表面上に検出可能なレベルのLeを呈示した。
【0154】
胃癌N87(CRL−5822)およびAGS(CRL−1739)は両方ともLeを発現する。
【0155】
A431(CRL−1555)およびA431/Leは、類表皮の(頸部の)癌細胞である。後者の改変体のみがLeを発現する。
【0156】
MDA−MB435(Ley−)およびMDA−MB−361(Ley+)は乳癌細胞のモデルとして用いられた。
【0157】
PC3−MM2(Ley−)およびLNCaP(Ley+、CRL−1740)は、前立腺癌に由来した。
【0158】
HCT8S11、HCT8S11/R1、MDA−MB435、PC3−MM2およびA431/Leを除く全ての細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。ATCCから入手した細胞株を、ATCC−カタログ中に指定される培養培地中で維持した。HCT8S11およびHCT8S11/R1は、M.Mareel博士(University Hospital,Ghent,Belgium)から贈呈された。これらの細胞を、10(v/v)%のウシ胎仔血清(FBS)、1mMのピルビン酸ナトリウム、100μg/mlのストレプトマイシンおよび100U/mlのペニシリン(本明細書において以後、pen/strepと呼ぶ)を補充したRPMI 1640中で増殖させた。MDA−MB435およびPC3−MM2は、I.Fidler博士(MD Anderson,TX)から入手した。これらの細胞を、10(v/v)%のFBS、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.2mMの非必須アミノ酸、2%のMEMビタミン溶液、およびpen/strepを補充した、最小必須培地中で培養した。A431/Leは、Ludwig Institute for Cancer Research(Melbourne、Australia)から提供された。それらを、10% FBS、2mMのグルタミンおよびpen/strepを補充したDMEM/F12中で培養した。
【0159】
(抗体)
RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ(rituximab);IDEC Pharmaceuticals Corporation and Genentech,San Diego and San Francisco,CA)は、マウスの重鎖および軽鎖の可変領域と、ヒトIgG1k定常領域とを組み合わせるキメラ抗体である。この抗体は、Bリンパ球マーカーCD20を認識する、FACS分析については、ヒトIgG(huIgG,Zymed,San Francisco,CA)およびFITC−標識ヤギ抗huIgG(FITC/α−huIgG,Zymed,San Francisco,CA)をそれぞれ、コントロール抗体および二次抗体として用いた。RITUXANは、ネガティブコントロールとして用いた。なぜならFACS分析は、RITUXAN(CD20)によって認識される抗原が、記載された実験に用いられる細胞の表面上に微量に存在したことを示したからである。RITUXANのカリケアマイシン結合体は、免疫グロブリンのキャリア機能およびカリケアマイシンの加水分解性の放出を制御した。
【0160】
MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin)、CMA−676または単にCMAとも呼ばれる)は、カリケアマイシン結合体(Wyeth,Madison,NJ)である。1mgの抗体に結合体化された、平均量35μgのカリケアマイシンを有するバッチを用いた。CMAまたはCMA−676の抗体部分は、多能性の造血幹細胞および急性骨髄性白血病細胞によって発現される白血球分化抗原である、CD33に特異的である。どの記載された実験で用いた細胞でも、有意なレベルのCD33を発現するものはなかった。実際に、FACS分析によって、これらの細胞株に結合したCMAの量がCD33発現の欠失を示すコントロールのhuIgG1の量と同様であったことが示された。CMAの最大の結合は、PC3MM2細胞において確認された(re MCF=2.3)。従って、CMAはまた、結合体の抗原標的化なしに、放出されたCMの有効性を制御する。
【0161】
(プラズモン共鳴分析(BIACORE))
ルイス−BSA結合体(すなわち、H型I−、H型II−、シアリルLe−、シアリルLe−、スルホLe−、スルホLe−、Le−、Le−、Le−およびLe−BSA)は、Alberta Research Council(Edmonton,Alberta,Canada)から購入した。抗原/BSAローディングは、1モルのBSAあたり20〜42モルの間の抗原であった。各々の抗原を、4,000〜9,000 RUの密度でCM5バイオセンサーチップの表面に固定した。このチップを、試薬EDC/NHS[1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド−HCl]/[N−ヒドロキシスクシンイミド]を5μl/分の流速で6分間カップリングし、続いて、5μl/分で6分間、50μg/mlの濃度で10mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH4.5中に含有されるルイスBSA抗原の添加によって活性化した。スルホ−ルイスおよびシアリル−ルイス−BSA結合体をpH4.0でカップリングさせた。余剰の結合部位を、1Mのエタノールアミン−HCl pH8.5を用いて、5μl/分で6分間ブロックした。結合特異性分析をHBS−EP緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、50ppmのポリソルベート20)中において、20μl/分の流速で行った。Hu3S193を、6.67nMまたは50nMで3分間注射した。HBS−EP緩衝液での30秒の洗浄後に結合したままの抗体の量を測定した。抗原の表面を、10mMのNaOH、200mMのNaClによって1分間20μl/分によって再生し、ベースラインを再確立した。
【0162】
反応速度分析のために、抗体を、1〜16nMの濃度で用いた。Le−BSAの密度は9,000であった。会合および解離を、3および15分の間、HBS−EP緩衝液中で30μl/分で測定した。
【0163】
(FACS−分析)
一連のヒト腫瘍細胞株上のLeの存在を、FACS分析によって評価した。10個の細胞のアリコートを、1(v/v)%のウシ血清アルブミンを補充した100μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS/BSA)中に懸濁した。次いで細胞を種々の濃度の一次抗体、hu3S193もしくはG193、hu3S193、またはCM−結合体中で4℃で30分間インキュベートした。細胞に対する一次抗体の結合を、FITC標識化/α−huIgGによって明らかにした。
【0164】
MCF(平均チャネル蛍光(mean channel fluorescence))の値は、一次抗体(huIgGおよびhu3S193)との結合、それに続く蛍光標識した二次抗体での染色後の細胞集団の平均蛍光強度である。HuIgGはネガティブコントロールである。MCFは結合した一次抗体分子の数に直接比例する。調べた細胞株の過半数(13のうち8つ)が、ネガティブコントロールのMCFを超えるhu3S193結合後のMCFの少なくとも10倍の増加(相対的MCF、reMCF)によって示されるようにLeを発現した。Leの高い発現を有する細胞株の例は、各々の抑制されずに増殖する組織(histiotypic)の腫瘍カテゴリーにおいて見出された。結腸直腸および胃に由来する全ての腫瘍細胞がLe−陽性であった。
【0165】
(カリケアマイシンに対して結合体化された抗ルイスY抗体のED50
生体色素(MTS)染色を用いて、種々の処置への暴露後に生存している細胞の数を決定した。MTS(非放射性細胞増殖アッセイキット)は、Promega(Madison,WI)から購入して、製造業者の仕様書に従って用いた。各々の細胞株に関しては、較正曲線(2時間後の細胞数対光学密度)を作製して、適切な初期播種密度を見積もった。次いで細胞を、1ウェルあたり750個〜5,000個の細胞の密度で96マルチウェルのディッシュに播種した。播種の直後に、細胞を種々の濃度(0ng、0.01ng、0.05ng、0.1ng、1ng、10ng、100ngおよび500ngのカリケアマイシン当量/ml)のCMA、hu3S193−AcBut−CMもしくはCMまたはPBSへ曝露させた。各ウェルに、10μlの100×薬物溶液を与えた。96時間の薬物曝露を生存した細胞の数の決定後、用量応答曲線から得られた対数回帰パラメーターに基づいてED50を算出した。ED50を、薬物への96時間の曝露後に細胞数を50%減少させる薬物(CM)のモル濃度として規定した。カリケアマイシン当量(cal.eq.)とは、純粋な物質または結合体のいずれかとして与えられたCMの濃度であることに注意すべきである。抗体に結合されたCMの量(抗体薬物ローディング)に依存して、種々の結合体のカリケアマイシン当量は、種々のタンパク質濃度を意味し得る。
【0166】
(実施例1.抗ルイスY抗体の生成)
野性型(hu3S193)および変異体(G193)抗−ルイスY抗体を生成した。マウス3S193 mAbを、ルイスY抗原に対して陽性のヒト腺癌細胞によるBALB/cマウスの免疫法によって生成した。3S193抗体のヒト化バージョンを引き続いて生成した(hu3S193)。詳細な特異性分析によって、hu3S193は、Leに高度に特異性であって(H型2またはH型1の抗原に結合しない)、Le三糖類とは最小限の交差反応性しか示さなかったことが実証された。hu3S193の変異したIgG1バージョン(G193)は、CH2ドメインに2つのアミノ酸置換;すなわち:ロイシン(234)からアラニン、そしてグリシン(237)からアラニンを有するという点でhu3S193とは異なる。上記の2つの変異に加えて、IgG1のCH3ドメインには、Gmzアロタイプに相当する2つのさらなる保存的変異(358位のアスパラギン酸からグルタミン酸へ、そして360位のメチオニンからロイシンへ)が存在した。従って、ヒト化変異体IgG1抗ルイスY抗体は、Fc領域内の4つの残基でhu3S193とは異なった;L236A、G239A、D358EおよびM360L。抗ルイスY抗体のこの変異体IgG1形態は、G193と命名され、チャイニーズハムスター卵巣細胞で発現され、そしてCMD−193を作製するために用いられた。図7は、2つの抗体の成熟し分泌された重鎖のアミノ酸配列の比較を示す。この図では、変異残基は、太字でかつ強調しており、CDRは太字でかつ影付きにしている。
【0167】
(細胞および培養条件)
hu3S193抗体を発現するハイブリドーマ細胞を、Ludwig Institute for Cancer Researchから入手した。Hu3S193は、相補性決定領域のみがマウス起源由来であるように操作された、マウスモノクローナル抗体MuS193由来のヒト化抗Le抗体(IgG1)である。
【0168】
この細胞株は、コレステロール依存性細胞株であり、そしてHyclone HyQ−CCM(登録商標)1増殖培地(Hyclone Labs,Logan,Utah)中にコレステロールの添加を要する.コレステロールは水溶性ではないので、この培地には、0.2% ExCyte VLE(Miles Pentex,Kankake,IL)を補充した。細胞を、5%のCO中で37℃で維持した。COS−7細胞を、ATCC(Rockville,Maryland)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FBS)および2mMのグルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(本明細書において以後、pen/strepと呼ぶ)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持した。
【0169】
PA−DUKX 153.8細胞は、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)の産生を欠く。これらの細胞を、10μg/mlのアデノシン、デオキシアデノシンおよびチミジン(Sigma,St.Louis,MO)、10%のFBS、20mMのHEPES、0.1%の炭酸水素ナトリウム、2mMのグルタミンおよびpen/strepを補充した最小基本培地(Minimum Essential Medium)(MEM−α,Gibco BRL,Grand Island,NY)中で維持した。トランスフェクション後の細胞をヌクレオチドの非存在下で増殖させ、1mg/mlのG418(Gibco)および250nMのメトトレキサート(Sigma)を選択マーカーとして用いて維持した。
【0170】
(ベクター)
野性型(hu3S193)および変異体(G193)の抗−ルイスY抗体の重鎖および軽鎖の構築物を作製するために、以下のベクターを用いた:PED6_HC_IgG1、PED6_HC_mIgG 1およびpED6_LCκベクター。PED6_HC_mIgG 1ベクターは、変異したCH2ドメインについてのテンプレートを含む(このベクターは、234位のロイシンおよび237位のグリシンの両方においてアラニンへの置換をコードする)。hu3S193の軽鎖の可変領域のDNAを、pED6_LCκ発現ベクターのBssH II制限部位とPacI制限部位との間で連結した。hu3S193の重鎖の可変領域のDNAを、pED6_HCIgG1発現ベクターのBssH II制限部位とSalI制限部位との間で結合した。ベクターpED6_Hc_mIgG1を用いてG193の重鎖を生成した。このベクターはそのドメインの配列においてpED6_HC_IgG1とは異なった。pED6_HC_mIgG1の発現によって、ロイシン(234)およびグリシン(237)がアラニン置換された重鎖が得られる。
【0171】
G193またはhu3S193の軽鎖の可変領域および定常領域をコードするDNAを、pMEN2ベクターのPpUM制限部位とEcoR I制限部位との間で連結されたpED6_LCκプラスミドから切り出した。G193またはhu3S193の重鎖の可変領域および定常領域をコードするDNAを、pED6_HC_IgG1またはpED6_HC_mIgG1ベクターから切り出して、pTDMEDLベクターのBgl II制限部位とXba I制限部位との間に挿入した。
【0172】
(抽出およびクローニング)
製造業者の指示に従って、RNAzolBキット(RNAzol B,TEL−TEST,Inc.,Friendswood,TX)によってhu3S193産生細胞からRNAを抽出した。キット(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて、抽出したRNAを一本鎖cDNAに転写した。総RNAの10μgをオリゴdTプライマーと混合した。この反応混合物を5分間65℃に加熱して、22℃にゆっくり冷却した。第一鎖cDNAを、総容積50μl中に、5μlの10倍濃縮した第一鎖緩衝液、5μl DTT、1μlのRNAseブロック、2μlのDNTPs(1.25mM)および1μlのMMLV逆転写酵素(20U/μl)を含有する混合物中で合成した。この成分を穏やかに混合して、37℃で1時間インキュベートした。このcDNAを用いてhu3S193のVHおよびVKの両方を増幅した。ポリメラーゼ連鎖(PCR)反応には以下のプライマーを用いた:
Hu3S193 VH UP(BssH II)
【0173】
【数1】

Hu3S193 VH DN(Sal I)
【0174】
【数2】

Hu3S193 VK UP(BssH II)
【0175】
【数3】

Hu3S193 VK DN(Pac I)
【0176】
【数4】

PCR反応を、総容積50μl中の5μlの第一鎖cDNA、100ngのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー、5μl 10×PFUポリメラーゼ緩衝液、500μM MgCl、1.25mM DNTPsおよび1μlのPFU酵素(2U/μl)の混合物中で行った。この反応は、35回の交互のサイクルの変性(95℃−1分)および合成(72℃−4分)、ならびに1回の終止サイクル(72℃−7分)からなった。この反応産物を、1%アガロースでの電気泳動によって分析した。PCR産物を精製して、重鎖PCR産物をBssH IIおよびSal Iで消化して、BssH II/Sal Iで消化したpED6_HC_mIg1またはpED6_HC_Ig1発現ベクターに連結し、それぞれG193およびhu3S193重鎖構築物を作製した。同様に軽鎖PCR生成物をBssH II/Pac Iで消化して、BssH II/Pac I消化したpED6_LCκ発現ベクターに連結し、G193軽鎖構築物を作製した。pEDベクターを用いて、一過性のトランスフェクション実験において抗体の発現を確認した。
【0177】
さらに、G193またはhu3S193の重鎖および軽鎖を含むpEDベクターを、pTDMEDL−DHFR/VHおよびpMEN2−Neo/VKにサブクローニングした。これらの構築物を作製するために、hu3S193 pED6_HC_mIgG1 VH(hu3S193 VH+CH1+mtCH2+CH3)およびhu3S193 pED6_HC_IgG1 VH(hu3S193 VH+CHI+CH2+CH3)を、Bgl IIおよびXba Iで消化して、Bgl II/Xba Iで消化したpTDMEDLベクターに連結し、G193 VH/pTDMEDL−DHFRまたはhu3S193 VH/pTDMEDL−DHFRを作製した。同様にpED6_LCκhu3S193 VKを、PpUMおよびEcoR I(hu3S193 VK+CK)で消化して、PpUMおよびEcoR Iで消化したpMEN2ベクターに連結し、Hu3S193 VK/pMEN2−Neoを作製した。G193 mAbの配列は、配列番号13である。
【0178】
(ライゲーション、形質転換、およびプラスミドの精製)
消化した生成物をT4DNAリガーゼ(Gibco)を用いて12℃で一晩ライゲーションして、DH5α細胞に形質転換した。単一のコロニーを50μg/mlのアンピシリンの存在下で2mLのLB培地中に播種して、37℃で一晩増殖させた。ミニプレップ(miniprep)DNA上の制限マッピングによってインサートの適切な長さを確認した。確認の際、マキシプレップ(maxiprep)DNAを、製造業者の推奨に従って、Qiagen−kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて作成した。
【0179】
(VHおよびVKのDNAの配列決定)
マキシプレップDNAを、hu3S193の可変性の重鎖および軽鎖を配列決定するためにDNAコア施設に送った。DNA配列を以下のとおり決定した。Qiagen 9600ロボット(Qiagen)によって、製造業者によって提供されたターボプレップ法(turbo prep method)に従ってミニプレップを作成した。このミニプレップDNAの500μgを13μlのHO中の20pMのプライマーDNAと混合した。次いで、このDNAを加熱(98℃、5分)および冷却(4℃、5分)によって変性させた。8μlのBig Dye Terminators(ABI,Foster City,CA)をこの変性したDNAに添加した。この混合物を98℃に加熱して、一連の25サーモサイクル(96℃、20秒;55℃、20秒;62℃、120秒)および20サーモサイクル(96℃、20秒;60℃、120秒)に供した。この反応混合物を、Biosystemsの96ウェル濾過プレート(Edge,Gaithersburg,MD)を通して濾過して、過剰な色素ターミネーターを除去した。次いで、このDNAフラグメントを3700キャピラリーアレイシーケンサー(ABI)上で分析した。G193およびhu3S193の重鎖および軽鎖の両方の配列を図7および8に示す。
【0180】
(COS−7細胞の一過性のトランスフェクション)
抗体発現は、COS−7細胞における一過性のトランスフェクション後に確認した。百万個のCOS−7細胞を、6ウェルのディッシュに入れた。翌日、等モル濃度(各々1μgの混合物)のいずれかのhu3S193 pED6_HC_mIgG1 VHおよびhu3S193 pED6_HC_mIgG1 VHまたはhu3S193 pED6_HC_IgG1 VHおよびhu3S193 pED6_HC_IgG1 VHを、250μlの無血清DMEMに希釈した。また、6μlの1mg/mlのリポフェクタミン(Invitrogen)も、250μlの無血清DMEMに希釈した。DNAおよびリポフェクタミンを混合して、室温で15分間インキュベートした。この混合物を細胞に添加した(細胞を、DNA−リポフェクタミン複合体の曝露の前に無血清培地で洗浄した)。37℃で8時間のインキュベーション後に、新鮮な培地を細胞に添加した。48時間細胞に対して曝された培養培地を、FACSおよびBIAcore分析によって、抗体の存在についてアッセイした。
【0181】
(安定な細胞株)
抗体発現の確認後、変異(G193)および野性型(hu3S193)抗ルイスYIgG1抗体を発現する安定な株を、以下のようにPA−DUKX 153.8細胞中で生成した。5百万個の細胞を10cmの直径を有するディッシュにプレートした。16時間後、G193 VH/pTDMEDL(クローン#18)およびVK/pMEN2(クローン#1)またはhu3S193についての等価な構築物のいずれかの等モルの混合物(各々10μg)を、1.5mlの無血清MEM−αで希釈した。60μlのリポフェクタミンをまた、1.5mlの無血清MEMαで希釈した。DNAおよびリポフェクタミンを、混合して、室温で15分間インキュベートした。この混合物を細胞に添加して、次いでこれを37℃に8時間おいた。この期間後、この混合物を15mlの新鮮増殖培地で置き換えた。24時間後、細胞培養物を1:10希釈で、1mg/mlのG418を含有し、新鮮なメトトレキサートの濃度が段階的に漸増している(20、40、80、100、120、160、200および250nM/ml)増殖培地(リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシド非含有)に継いだ。コロニーを採取して増殖させた。これらのクローンからの馴化培養培地をFACS、BIAcoreおよびELISAによって分析した。次いで、G193またはhu3S193を発現する安定な細胞株を抗体の大量生産および精製のために用いた。
【0182】
(G193のエフェクター機能)
G193およびその結合体であるCMD−193のエフェクター機能の能力を確認するために、その両方を、ルイスY抗原の発現を有するN87胃癌腫細胞およびルイスY抗原の発現が極めて低いかまたは存在しないA431類表皮癌腫細胞の両方を用いて試験した。野性型のヒト化IgG1抗ルイスY抗体hu3S193を陽性のコントロールとして用いた。この抗体はADCCおよびCDCの両方の活性を媒介することが示されている。新鮮に単離したヒト末梢血単核球細胞(PBMNC)をADCCアッセイの間のエフェクター細胞の供給源として用い、そして新鮮に調製したヒト血清をCDCアッセイにおける補体の供給源として用いた。
【0183】
G193およびCMD−193のCDC活性を、補体の供給源として1:100希釈の新鮮なヒト血清の存在下で種々の濃度の抗ルイスY抗体とともに4時間培養した、固定した数の腫瘍細胞を用いて評価した。腫瘍細胞の溶解の結果として放出された乳酸脱水素酵素の活性を測定した。非イオン性界面活性剤によるLDH活性放出を、全溶解の呈示として測定した。同様の評価を、高レベルのルイスY(LewisY+++)、すなわち高ルイスYを発現するA431細胞で行った。
【0184】
エフェクター細胞として、50というエフェクター細胞:標的細胞比で用いた末梢血単核球細胞の存在下または非存在下で、種々の濃度の抗ルイスY抗体とともに4時間培養した固定数の腫瘍細胞を用いて、G193およびCMD−193のADCC活性を決定した。腫瘍細胞の溶解の結果として放出された乳酸脱水素酵素活性を測定した。非イオン性界面活性剤によるLDH活性放出を、総溶解の表示として測定した。同様の評価をルイスY+++N87細胞で行った。
【0185】
野性型IgG1抗ルイスY抗体および変異体IgG1抗ルイスY抗体の両方は、等しく、図24および図25に示されるように、ルイスY抗原の高い発現を有するN87癌腫細胞に対してADCC活性およびCDC活性の両方を媒介することが可能であった。いずれの抗体も、ルイスY抗原の発現が極めて低いかまたは全くないA431細胞に対しては、同様の活性が観察されなかった。対照的に、hu3S193およびG193の配列と同一であるVH配列およびVK配列を有する抗ルイスY抗体のIgG4バージョンは、ADCC活性およびCDC活性の両方とも促進できなかった。ヒトIgG4アイソタイプは、ADCCおよびCDCを媒介する能力を欠くことが公知であり、そしてこの概念と一致して、抗ルイスY IgG4抗体は、ADCCアッセイおよびCDCアッセイにおいて不活性である。
【0186】
これらの結果によって、G193のFcにおけるL236A変異体およびG239A変異体の導入は、G193をそのエフェクター機能能力において欠損しないということが示唆される。CMD−193はまた、ルイスY抗原の高い発現を有するN87癌細胞に対してCDC活性を媒介するのにG193と同じ程度に有効であった。これらの結果によってさらに、カリケアマイシンに対するG193の結合体化は、G193がCDC活性を媒介する能力を変更しないことが示される。従ってG193およびCMD−193の両方ともエフェクター機能活性を媒介し得、そしてCMD193は、エフェクター機能を受容可能な(effector function−competent)抗体結合体である。
【0187】
(実施例2.カリケアマイシンに対する抗ルイスY抗体の結合)
抗体を最初に以下のようにカリケアマイシン(CM)に結合体化した。約10mg/mlのタンパク質濃度の抗体を、高モル濃度の非球核性緩衝液(1M HEPES)を用いてpH8〜8.5に調節した。次に、タンパク質凝集を防止する賦形剤(オクタン酸ナトリウム)を、最終濃度0.1〜0.2Mで添加した。最終的に、活性化されたカリケアマイシン誘導体のタンパク質量の5%を、濃縮溶液(10〜20mg/ml)として有機溶媒(エタノールまたはジメチルホルムアミド)中に添加した。次いで、この反応混合物を25〜35℃で1〜2時間インキュベートした。反応の進行を、SEC−HPLCによってモニターした。反応の終了後、この結合体を、分取SECカラム上で、凝集した抗体および遊離のカリケアマイシンから分離した。呈示した実験で用いた結合体調製物の抗体あたりのCMの量は、それぞれ、hu3S193−AcBut−CMおよびRITUXAN−AcBut−CMについて、22〜47μg/mg、および17〜30μg/mgにおよんだ。
【0188】
(結合体化条件の最適化)
代表的な結合体化反応では、ヒト化抗−ルイスY抗体(hu3S193)を、NAc−γ−カリケアマイシン−DMH−AcBut−OSu(カリケアマイシン誘導体)に結合体化したが、ここで標的タンパク質の濃度は10mg/mlであって、標的カリケアマイシン誘導体ローディングはタンパク質の重量あたり7.0パーセントであった。標的の反応pHは、8.2±0.2であって、他の反応成分の標的濃度は、以下のとおりであった:50mMのHEPBS、10mMのデオキシコール酸ナトリウム、および9%(v/v)のエタノール。この反応は、33±2℃で1時間行った。精製前のこの代表的な反応の分析の結果は以下のとおりであった:タンパク質:9.92mg/ml;カリケアマイシンローディング:70μg/mg;凝集物:1.9%;非結合体化タンパク質(LCF):0.81%。
【0189】
生成物の収率および純度に対する種々の界面活性物質の添加およびその濃度の効果を試験して、hu3S193の結合体化したモノマーの産生に対するそれらの効果を決定した。結果を以下の表2に示す。添加物およびその濃度を除いて全ての変数を一定に保って反応を行った。これらの反応から生成した結合体を凝集物、LCFおよびタンパク質の回収について分析した。いくつかの添加物では、低凝集物または低LCFのいずれかを有する結合体を生じたが、デオキシコール酸塩のみが低凝集物、低LCFおよび高いタンパク質回収を有する結合体を生じた。
【0190】
(表2)
【0191】
【表2】

オクタン酸塩は、CMA−676結合体化反応において用いられる標準的な触媒であるが、デカン酸塩は、CMC−544結合体化反応において用いられる標準的な触媒である。デオキシコール酸の結果は、5つの反応の平均であって、カッコ内の範囲を伴う。界面活性剤の胆汁酸ファミリーの他のメンバーを試験したところ、同様の結果を得た。
【0192】
結合体化反応の終わりの凝集物パーセントおよび遊離タンパク質のパーセントを、オクタン酸塩、デカン酸塩およびデオキシコール酸塩を用いて種々のIgG1抗体およびIgG4抗体について決定した。試験したIgG1抗体は、G193およびコントロール抗体(mAb01)であったが、試験したIgG4抗体は、IgG4定常領域を有するG193(G193−IgG4)、CMA−676結合体由来のmAb676、CMC−544結合体由来のmAb G544、およびコントロールの抗体(mAb 02)であった。以下の表3に示されるとおり、デオキシコール酸塩の存在下のIgG1抗体の結合体化によって、低いパーセントの凝集物および低いパーセントの非結合体化タンパク質(またはLCF)が得られたが、オクタン酸塩またはデカン酸塩の存在下の結合体化は、高いパーセントの凝集物または高いパーセントの非結合体化タンパク質のいずれかを生じた。これは、デカン酸塩またはデオキシコール酸のいずれかの存在下で結合体化された場合、低いパーセントの凝集物および低いパーセントの非結合体化タンパク質を有するIgG4抗体と対照的である。
【0193】
(表3)
【0194】
【表3】

(CMD−193の種々の薬物ローディング)
1つの抗ルイスY抗体(G193)あたりのカリケアマイシンの種々の薬物ローディングを評価した。G193抗体タンパク質の1ミリグラムあたり、30、60または90mgのNac−γカリケアマイシンDMHの薬物ローディングを有するCMD−193調製物を生成して、N87異種移植されたマウスにおける1キログラムあたり160mgのカリケアマイシン当量の用量でIP Q4D×3で投与した。CMD−193の抗腫瘍有効性は、薬物ローディングにおける相違によっては影響されなかった。
【0195】
図23に示されるように、種々のカリケアマイシンローディングを有するCMD−193の抗腫瘍有効性を本質的に同定した。非結合体化標的抗体G193は抗腫瘍活性を媒介することにおいて無効であるので、CMD−193の全体的な抗腫瘍有効性は、カリケアマイシンの腫瘍細胞に対して標的された送達に起因し得る。これらの結果によって、30〜90μg/mgのCMD−193の範囲では、カリケアマイシン結合体(ローディング)の程度は、その治療転帰に影響しないことが示唆される。
【0196】
(クロマトグラフィーの精製)
精製のための出発物質は、70μg/mgというカリケアマイシン誘導体ローディングでタンパク質1mLあたり9.92mgを含有する結合反応混合物であって、これは1.9%という凝集物含量(HPLCによる領域パーセント)、そして0.82%のLCF含量(HPLCによる領域パーセント)である。結合体化反応が終了した後、この反応混合物を、0.6Mの最終リン酸濃度(pH8.2)までリン酸カリウム溶液の添加によって10倍に希釈した。混合後、この溶液を0.45ミクロンのフィルターを通して濾過した。希釈された溶液を、ブチルセファロース(Butyl Sepharose)4 Fast Flow column上にロードした。このカラム上にロードしたタンパク質の総量は、1mlのベッド容積あたり20mgであった。0.6Mのリン酸カリウムでの洗浄後、このカラムを、0.6M〜4mMのリン酸カリウム、pH8.2の段階的勾配を用いて溶出した(あるいは、このカラムは、20mM Tris/25mM NaClで溶出され得てもよい)。段階的勾配からのこの画分をプールした。そのプールは、以下を含んだ:タンパク質8.3mg/mL;カリケアマイシン69.3μg/mg;凝集物0.42%;LCF:0.31%。
【0197】
緩衝液の交換を、再生されたセルロース膜での限外濾過/ダイアフィルトレーションを用いて達成した。この結合体を、20mM Tris/10mM NaCl,pH 8.0(10倍透析容積)に対してダイアフィルトレーションした。このプールを処方物に適切な緩衝液に処理するには、サイズ排除クロマトグラフィーまたは限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれを用いてもよい。
【0198】
(実施例3.抗ルイスY抗体カリケアマイシン結合体の特異性および反応速度論)
野性型(hu3S193)抗ルイスYおよび変異体(G193)抗ルイスYに対するカリケアマイシンの結合体化がLeに対する結合を抹消することを確認するために、これらの抗体およびそれらのそれぞれの結合体を、プラズモン共鳴分析(BIAcore)および/またはFACS分析に供した。hu3S193およびhu3S193−AcBut−CMは、Le−BSAのみを認識し、以下のオリゴヌクレオチド抗原のいずれも認識しない:H−I型、H−II型、シアリル−Le、シアリル−Le、スルホ−Le、スルホ−Le、Le、Le、またはLe。hu3S193−AcBut−CMの結合の反応速度論は、hu3S193の反応速度論とは異なった。抗体のKaおよびKdもまた、CMへの結合体化によって変更された。
【0199】
まとめると、BIAcoreおよびFACSの分析からの結果によって、hu3S193またはG193に対するCMの結合体化は、Le−BSAについて、またはLe陽性細胞についての特異性には影響しなかったことが示された(データ示さず)。hu3S193と比較した場合のhu3S193−AcBut−CMの変更された反応速度論のパラメーターは、N87細胞に対して結合し得る結合体または抗体の種々の量に変換される必要はなかった。
【0200】
(BIAcore分析)
LeについてのG193、hu3S193、hu3S193−AcBut−CMおよびCMDの特異性を確認するために、種々のLe関連抗原についての抗体およびそれらのCM結合体の親和性を、BIAcore 3000を用いて表面プラズモン共鳴分析を用いることによって評価した。ルイスY−BSA(30モルのルイスY/BSAのモル)を、バイオセンサーチップ上に固定して、種々の濃度(2、4、8、12および16nM)の種々のルイスY反応性因子に曝した。G193、hu3S193、hu3S193−AcBut−CMおよびCMD−193は、hu3S193と同一の親和性および特異性でLe−BSAに結合する。BIAcoreによって決定した反応速度論のパラメーターは、人工的なLe−BSA基質に対する抗体または結合体の結合に依存する。
【0201】
3つの抗体が同一の反応速度論の定数を有した。これらの評価によって、非結合体化抗ルイスY抗体、非結合体化G193および非結合体化hu3S193が、中程度の親和性(KDは100〜300nMにおよぶ)でルイスY−BSAに結合することが示された。下の表4に示されるように、カリケアマイシンに対する結合体化は、この人工的な系において抗体のルイスY結合強度におけるこれらのわずかな減少を生じた。CMD−193は、低い親和性および高いナノモルKDでルイスY抗原に結合する。
【0202】
(表4)
【0203】
【表4】

この抗体および結合体は、Leのみを認識し、関連の多糖類のいずれも認識しなかった。また、ルイスYに構造的に関連する種々の炭水化物抗原に対するG193、hu3S193およびそれらのカリケアマイシン結合体の結合を、バイオセンサー分析を用いて検討した。BSAに結合体化された種々のルイスY関連抗原を、バイオセンサーチップ上に固定して、抗ルイスY抗体およびそれらのカリケアマイシン結合体に曝した。図20に示されるこれらの結果によって、G193およびCMD−193は、ルイスY抗原に特異的であり、そしてルイスYに構造的に近い抗原であるルイスXおよびH−2血液群抗原に対してさえ結合を示さないことが示された。これらの結果によってもさらに、カリケアマイシンに対する結合体化は抗ルイスY抗体の抗原特異性を変更しないことが示唆される。
【0204】
(FACS分析)
結合体化が、Le細胞に対するhu3S193の結合に影響したか否かを確認するために、N87細胞に結合したhu3S193およびhu3S193−AcBut−CMの量を、フローサイトメトリー(FACS)によって比較した。種々の濃度のhu3S193またはhu3S193−AcBut−CMのいずれかに対してN87の曝露後に得られた、平均のチャネル蛍光(mean channel fluorescence)(MCF)は、類似した。N87細胞を、種々の濃度のhu3S193およびhu3S193−AcBut−CMとともにインキュベートした。結合した結合体または抗体の量をMCFとして表した。下の表5は、種々の癌腫細胞株に対するhu3S193の結合のフローサイトメトリーの検出を示す(ヒトIgG1をコントロールの抗体として用いた)。ルイスY発現状態を、抗ルイスY抗体でのMCF/コントロール抗体でのMCFの比に基づいて任意に割り当てた。3〜10の範囲の比は、+のレベルを表し、10〜100がルイスY発現の++レベルを表し、100〜300が+++のレベルを表し、そして>300が++++レベルを表す。この最初の評価に基づいて、ルイスY高発現癌腫細胞株および低発現癌腫細胞株をさらなる研究に用いた。
【0205】
(表5)
【0206】
【表5】

G193およびhu3S193結合体は、hu3S193と同様に培養中のLey+胃癌腫細胞(N87)に結合する。種々の濃度のhu3S193またはG193に対してN87単層を曝露した後決定したMCF(平均チャネル蛍光:mean channel fluorescence)値もまた、同一であった。従って、BIAcoreで実証されたLe−BSAに対する等しい結合に加えて、天然に呈示されたLeに対するhu3S193,G193およびhu3S193の結合も同一であった。
【0207】
(薬物動態)
CMD−193での薬物動態研究は以下から構成された:CMD193(ラット)、G193抗体(ラット、イヌ)、非結合体化カリケアマイシン誘導体(ラット、イヌ)、総カリケアマイシン誘導体(ラット、イヌ)の濃度、ならびにラット血清におけるCMD−193に特異的な抗体、そしてイヌ血清におけるG193抗体に特異的な抗体の存在を決定するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のバリデーション;雌性ヌードマウスにおけるCMD−193の単回腹腔内(IP)投薬の投与後のG193抗体の薬物動態評価;ヒト肝臓ミクロソームおよびシトゾールにおけるNacγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(CM)のインビトロ代謝、ならびにNacγカリケアマイシンDMH AcButのインビトロ代謝、およびHL60前骨髄球性白血病細胞におけるNacγカリケアマイシンDMHのインビトロ代謝。
【0208】
ヌードマウスにおけるインビボの薬物動態研究のために、5%スクロース、0.01%ポリソルベート80、2.92mg/mL(50mM)塩化ナトリウム、2.42mg/mL(20mM)Tris、および注射用滅菌水を含む、8.0にpH調整されたビヒクル中で、CMD−193をIP投与した。この研究では、ローディングは、抗体の1mgあたり約75mgのカリケアマイシン誘導体であって、これは、抗体の1モルあたり約6モルのカリケアマイシンに等価である。
【0209】
雌性ヌードマウスにおいて1kgあたり15mgというカリケアマイシン当量の用量(最小有効用量(MED))でのCMD193の単回用量のIP投与後のG193抗体の薬物動態は、中程度の吸収速度および長期の見かけ上の終末半減期(t1/2)によって特徴付けられた。G193抗体の平均の濃度下面積対時間の曲線(AUC0−¥)は222mg・h/mLであった。
【0210】
NAcγカリケアマイシンDMHおよびNAcγカリケアマイシンDMH AcButの代謝的運命を、ヒトの肝臓ミクロソームおよびサイトゾル中でインビトロで検査して、Nac−γカリケアマイシンDMHの代謝運命を、HL−60前骨髄球性細胞中で検査した。ヒトの肝臓ミクロソームおよびサイトゾル中でのインキュベーション後に多くの代謝物を見出した。ミクロソーム中の生体内変換経路は、水酸化および脱メチルであるが、NAc−εカリケアマイシンおよびその誘導体の形成は、サイトゾル中の主要な経路であると考えられた。Nac−εカリケアマイシンおよびそのアイソマーを含むいくつかの代謝物が、HL−60白血病細胞でのインキュベーションの間に生じた。肝臓および白血病細胞調製物の両方において共通の代謝物が観察された。このことは、カリケアマイシン誘導体の代謝が細胞特異的ではないかもしれないことを示唆している。細胞中のNAc−εカリケアマイシンおよびその誘導体の検出によって、NAcεカリケアマイシンの反応性のジラジカル種はおそらく、細胞内のNAc−γカリケアマイシンDMHのジスルフィド結合のグルタチオン依存性の還元を介して形成されるという仮説が支持される。
【0211】
(実施例4.ヒト癌腫細胞株のインビトロ増殖に対する抗ルイスY抗体カリケアマイシン結合体の有効性)
ヒト癌細胞株のインビトロ増殖に対する、hu3S193(hu3S193−CM)およびG193(CMD−193)の両方に結合体化したカリケアマイシンの効果を、ヒト癌腫細胞株に対して評価した。評価した細胞株としては、ルイスY抗原の高発現または低発現のいずれかを有する癌腫、ならびに乳房、結腸、肺および前立腺からの癌腫が挙げられた。hu3S193−AcBut−CMおよびCMD−193の有効性を、両方とも、CM(遊離の薬物)および/または種々のコントロールの結合体の有効性に対してインビトロで比較した。
【0212】
下の表6および7に示されるとおり、hu3S193およびCMD−193の両方とも、ルイスY発現癌腫細胞に対してコントロール結合体(例えば、CMA−676)よりも一貫して有効であった。対照的に、hu3S193およびCMD−193はいずれも、ルイスY抗原の発現が低いかまたはほとんどない細胞に対して、コントロール結合体よりも有効であるか有効性が低いかのいずれかであった。
【0213】
(hu3S193−CM)
hu3S193−AcBut−CMはインビトロでLe発現癌腫細胞の増殖を特異的に阻害する。遊離のhu3S193抗体は、1×10−4〜6.9μgタンパク質/mlにおよぶ範囲の濃度で用いた場合、LOVO、L2987、N87またはAGSの増殖に影響しなかった。このタンパク質濃度の範囲は、結合体として与えられた抗体の量と等価であった。ED50は、CMに対してまたは結合体に対して96時間曝露された後に細胞培養のうち50%が生存する用量(ng/ml)を示す。hu3S193−AcBut−CMのED50は、CMAのED50よりもLe陽性細胞(re MCF>10)において一貫して低かった。hu3S193−AcBut−CMのED50は、CMAのED50よりもLe陽性細胞(reMCF>10)において一貫して低かった。
【0214】
両方の結合体のED50の実験内の変動が観察された。しかし、hu3S193−AcBut−CMのED50範囲は、Ley+ AGS細胞に対するこの結合体の有効性を試験した場合、CMAのED50よりも一貫して低かった。対照的に、これらの範囲は、両方の結合体の有効性をLey−PC3MM2細胞上で決定した場合、重複した。この結果が、2つの細胞株の選択によって生じた可能性は、低かった。Ley+細胞を用いる平行実験でのCMAおよびhu3S193−AcBut−CMのED50の比較によって、CMAについてよりもhu3S193−AcBut−CMについて平均して低いED50が示された(CMA倍数は1未満)。この知見は、細胞株の起源、カリケアマイシンに対するその感度、およびLeのその相対量とは独立していた。パラメーターであるCMA倍数は、種々のLey−細胞を用いた場合1以上であった。種々のhu3S193−AcBut−CM結合体調製物をこれらの実験に用いたところ(タンパク質1mgあたり22μgおよび47μgのカリケアマイシン)、この観察はこの変数とは独立していたことが示された。まとめると、この結果によって、Leに対するカリケアマイシンの標的化に起因する、hu3S193−AcBut−CMの選択的な細胞毒性が例示される。
【0215】
この知見を、異なるバッチのhu3S193−AcBut−CMでの一連の実験によって確認した。これらの実験に用いタンパク質結合体調製物は、タンパク質1mgあたり22〜47μgのCMを有した。hu3S193−AcBut−CMおよびMYLOTARG(CMA)のED50値を、9つの実験からプールして、その出現度数の関数としてプロットした(図2Aおよび2Bを参照のこと)。Ley+細胞に対する有効性(AGS、図2A)を、Ley−細胞に対する有効性と比較した(PC3MM2、図2B)。10個の細胞株の群について、hu3S193−AcBut−CMのED50値をまた、各々の実験における最初のコントロールとして用いたCMAのED50値に対して評価した(CMA倍数)。ここでnは、独立したED50測定の回数である(図2Cを参照のこと)。ED50のある程度の実験間の変動にかかわらず、hu3S193−AcBut−CMは一貫して、Le陽性細胞に対してCMAよりも有効性のままであった(AcBut−CMA倍数は1より大きい)。この結果によって、Leに対してCMを標的することに起因する選択的な細胞毒性が実証される。
【0216】
(表6)
【0217】
【表6】

この実験では、ヒト癌細胞を、漸増濃度の非結合体化カリケアマイシンまたは結合体化カリケアマイシン(CMA−676またはCMD−193)の存在下で96時間培養して、その後に各々の培養物中の生きた細胞をMTSアッセイキットを用いて計数した。上の表6では、CMとはNAc−Calich DMHを指し、CMA−676およびCMD−193の両方の濃度がカリケアマイシン当量(nM)として表されており、そして選択性比の倍数は、CMAのED50対CMDのED50の比として表される。6.7mg/mL(試験した最高濃度)の非結合体体化抗ルイスY抗体は、検査した腫瘍細胞株のいずれの増殖にも影響を有さなかった。
【0218】
(CMD−193)
遊離のG193抗体は、1mlあたり5,700〜6,900ngのタンパク質の範囲の濃度で用いた場合、いずれの検査した細胞型の増殖にも影響しなかった。hu3S193の場合と同様に、CMDのED50は、CMAのED50よりもLe陽性細胞において一貫して低かった。これらの実験に用いた結合体の調製物は、タンパク質1mgあたり56〜88μgのCMを有した。ED50のある程度の実験間の変動にかかわらず、CMDはLe陽性細胞に対してCMAよりも一貫して有効であるままであった(AcBut−CMA倍数は1より大きい)。この結果によって、Leに対してCMを標的することに起因する選択的な細胞毒性が例示される。
【0219】
CMD−193の選択性は、CMAおよびCMDでの処置後のA431およびA431/Leの減衰プロットの比較によって最もよく図示された(図9)。この実験では、A431細胞およびA431/Le細胞の単層を、CMDまたはCMAの存在下で96時間培養した。処置後に残った細胞の数を、生体染色色素法(vital dye method)によって確認して、コントロールのパーセンテージとして表した。2つの型のA431細胞がCMに対して同様の感度を有した。CMD減衰曲線の、CMAに関して有意な左方向シフトが、図9Bに示されるように、Le陽性細胞株(A431/Le)の処置後に観察され、そして図9Aに示されるように、Le陰性細胞株(A431)の処置後に観察された。
【0220】
(表7)
【0221】
【表7】

これらの実験では、ヒト癌腫細胞を、漸増濃度の非結合体化カリケアマイシンまたは結合体化カリケアマイシン(CMA−676またはCMD−193)の存在下で96時間培養して、その後に各々の培養物中の生きた細胞をMTSアッセイキットを用いて計数した。上の表7では、CMとはNAc−Calich DMHを指し、CMA−676およびCMD−193の両方の濃度がカリケアマイシン当量(nM)として表されており、そして選択性比の倍数は、CMAのED50対CMDのED50の比として表される。6.7μg/mL(試験した最高濃度)の非結合体化抗ルイスY抗体は、検査した腫瘍細胞株のいずれの増殖にも影響を有さなかった。
【0222】
(実施例5.ヒト癌腫細胞異種移植片のインビボ増殖に対する抗ルイスY抗体カリケアマイシン結合体の有効性)
抗ルイスY抗体に結合体化されたカリケアマイシンの抗腫瘍有効性を、ヌードマウスにおいて皮下(SC)で確立したヒト癌腫異種移植片に対して評価した。評価した異種移植片は、ルイスY抗原の高発現または低発現のいずれかを有する癌腫、ならびに乳房、結腸、肺および前立腺由来の癌腫を含んだ。150〜300mgという平均質量を有する固形腫瘍を有するマウスを、種々の処置群に無作為化した。
【0223】
(hu3S193−CM)
hu3S193−AcBut−CMのインビボでの有効性を、胃癌腫(N87、図3)、前立腺癌腫(LNCaP、図4)および結腸癌腫(LOVO、図5および6)由来の皮下の異種移植片で試験した。N87、LOVOおよびLNCaPの皮下腫瘍を、無胸腺ヌードマウス(Charles River,Wilmington,MA)で増殖させた。1.5〜3ヶ月齢の雌性マウスに、マウス1匹あたり5×10個のN87細胞または10個のLOVO細胞をそれぞれ注射した。LNCaP細胞を、3ヶ月齢の雄性ヌードマウスに注射した。腫瘍を増殖させるために、N87細胞およびLNCaP細胞を、注射の前に、MATRIGEL(登録商標)(Collaborative Biomedical Products,Belford,MA)と混合(1:1のvol/vol)しなければならなかった。腫瘍の2つの直行する直径を、ノギスを用いて週に少なくとも1回測定した。Attia & Weissの式:A×B×0.4に従って腫瘍容積を算出した。
【0224】
他に示さない限り、各々の結合体およびコントロールの3用量を、4日の間隔で腹腔内に与えた(Q4D×3)。インビボで、hu3S193−AcBut−CMは、これらの3つの別々のモデルにおいて腫瘍増殖を阻害した。hu3S193−AcBut−CMは、ルイスY抗原の高い発現を有する胃癌腫の異種移植片(N87)からマウスを治癒させた(図3)。前立腺癌腫異種移植片(LNCaP)は、hu3S193−AcBut−CMの投与後の増殖を停止させ、そして腫瘍増殖の阻害は、結腸癌腫異種移植片(LOVO)で得られた(それぞれ、図5および6)。LOVOモデルでは、hu3S193−AcBut−CMの有効性は、結合体の量を増大することによって改善された(図5)。
【0225】
(N87胃癌腫異種移植片)
100mmのN87(Ley+、CD33およびCD20)異種移植片を保有するマウスを、コントロールの結合体(CMA、RITUXAN−AcBut−CM)、PBS、hu3S193またはhu3S193−AcBut−CMで処置した。各々の群のマウスに、3回の用量をi.p.で投与した。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。図3Aは、コントロール結合体の有効性を示しており、そして図3Bは、hu3S193およびそのカリケアマイシン結合体の効果を図示する。誤差棒は、各々の時点での平均腫瘍容積の標準偏差を表す。腫瘍保有マウスの処置群における腫瘍サイズの相違は、両側検定のStudentsのt検定によって証明され、28日目のp値はCに示されており、そしてnは、1群あたりのマウスの数に相当する。1μg、2μgおよび4μgのカリケアマイシン当量/用量/マウスでは、hu3S193−AcBut−CMは、N87異種移植片の腫瘍増殖を有意に阻害した(図3)。100%、60%および10%の治癒率がまた、それぞれ、4μg、2μgおよび1μgのカリケアマイシン当量/用量/マウスで観察されており、このことは、異種移植片のサイズが減少して、処置後100日の間、最初の平均腫瘍容積を決して超えないことを示している。
【0226】
(LNCaP前立腺癌腫異種移植片)
LNCaP前立腺腫瘍保有マウスを、hu3S193−AcBut−CM、PBSまたはコントロールの結合体CMAで処置した。凡例におけるカッコ内の数は、1マウスあたりの1用量あたりのカリケアマイシンの量を示す。処置した群における腫瘍サイズの相違は、両側スチューデントt検定によって証明されている。30日目のp値が報告されており、nはマウスの数に相当する。図4に示されるように、コントロール結合体は、等用量以下の用量で、hu3S193−AcBut−CMよりも低い程度に腫瘍増殖を阻害した。さらに、コントロール結合体での処置後、0%の治癒率が観察された。hu3S193は、4μgカリケアマイシン当量のhu3S193−AcBut−CMとともに与えられるタンパク質量(120μg)に対して等価な用量およびレジメンで投与された場合、効果を有さなかった。以前の実験は、hu3S193−AcBut−CMに等価な用量のカリケアマイシンの投与は、いままで試験した腫瘍モデルのいずれも阻害しなかったことを示した。従って、カリケアマイシンの投与は本研究におけるコントロールとしては省略されている。
【0227】
(LOVO結腸癌腫異種移植片)
また、hu3S193−AcBut−CMが腫瘍増殖を阻害する能力を、結腸癌腫(LOVO)モデルで実証した。100mmのLOVO異種移植片を保有するマウスを、コントロール結合体(RITUXAN−AcBut−CM、図5A)、PBS(図5Aおよび図5B)、hu3S193(図5B)またはhu3S193−AcBut−CM(図5B)で処置した。hu3S193−AcBut−CMを4μg/用量で用いて処置した群を除いて、各々の群のマウスには3回の用量をi.p.で与えた。カリケアマイシン当量における各々の投薬の量を、凡例に特定する。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。この群は以下のように割り当てた:43日目に3用量のさらなるレジメンを投与されたhu3S193−AcBut−CM、47日目に3用量のさらなるレジメンを投与されたhu3S193−AcBut−CM、および51日目に3用量のさらなるレジメンを投与されたhu3S193−AcBut−CM。1群あたりのマウスの数(n)を、Cに報告する。30日の腫瘍サイズの相違を、両側スチューデントt検定によって統計学的有意性について証明した。
【0228】
Hu3S193は、N87異種移植片で観察されるよりも少ない程度までLOVO異種移植片の増殖を阻害した。コントロール結合体(RITUXAN−AcBut−CMまたはCMA)は、無視できる程度の腫瘍阻害しか生じなかった。hu3S193−AcBut−CMによって生じる阻害は、コントロール結合体の阻害よりも長かった。従って、一方でのマウスあたり4μgおよび2μgのカリケアマイシン当量の用量(Q4D×3)でのRITUXAN−AcBut−CMでの処置後の腫瘍サイズと、他方でのPBSでの処置後の腫瘍サイズとの間の相違は、16日目でのみ有意であった(p<0.05)。
【0229】
対照的に、マウス1匹あたり4μg、2μgおよび1μgのカリケアマイシン当量の用量のhu3S193−AcBut−CMでの処置(Q4D×3)によって、それぞれ43、22および16日間のPBS処置から統計上の相違が生じた。100mmのLOVO異種移植片を保有するマウスを、コントロールの結合体:RITUXAN−AcBut−CMおよびCMA(図6A)、PBSまたはhu3S193−AcBut−CM(図6B)で処置した。各々の群のマウスに、3用量または4用量のi.p.を投与した。カリケアマイシン等量における各々の用量は、凡例に特定される。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。この群を、hu3S193−AcBut−CMと命名し、13日目にさらなる用量を投与した。1群あたりのマウスの数はnに相当し、そして両側スチューデントt検定のp値を決定した。
【0230】
(HCT8S11結腸癌腫異種移植片)
HCT8S11結腸癌腫異種移植片を保有するマウスを試験して、hu3S193−AcBut−CMのインビボ活性を測定した。CD20−標的化カリケアマイシン結合体化リツキシマブを、非結合コントロールとして用いた。結合体を、IP Q4D×3で80または160mg/kgで投与した。図21によって、カリケアマイシン結合体化hu3S193は、小さい腫瘍および大きい腫瘍の両方でHCT8S11結腸癌腫異種移植片の増殖の強力な阻害を引き起こし得たことが示される。ルイスY標的化結合体の抗腫瘍活性は常に、CD20またはCD33のいずれかに標的化された非特異的な非結合結合体の活性よりも大きかった。
【0231】
(CMD−193)
CMD−193のインビボ有効性を胃癌腫(N87)、肺癌腫(L2987)、子宮頸部癌腫/類表皮癌腫(A431/Le)および結腸癌腫(LS174TおよびLOVO)由来の皮下の異種移植片で試験した。他に示さない限り、全ての結合体およびコントロールを、Q4D×3のスケジュールに従って腹腔内に注射した。免疫グロブリンのキャリア機能に起因する腫瘍標的化についてモニタリングするために、CMAを陰性のコントロールとして用いた。下に記載する研究に基づいて、15mg/kgというCMD−193の用量(562〜803mg/mという範囲で結合体化した抗体タンパク質の用量に等価)が、最小有効用量(MED)であるとみなした。
【0232】
(N87胃癌腫異種移植片)
150mmのN87異種移植片を保有するマウスを、コントロール結合体(CMA)、PBS、G193−AcBut−CM、hu3S193−AcBut−CM、G193またはhu3S193で処置した。各々の群のマウスには3用量をi.p.投与した。カリケアマイシン当量での量を、凡例に特定する。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。図10Aは、コントロール結合体の有効性を示す。図10Bは、CMD−193およびhu3S193−AcBut−CMの効果を図示するが、図10Cは、遊離の抗体の有効性がないことを実証する。誤差棒は、各々の時点での平均腫瘍容積の標準偏差を表す。
【0233】
CMAは、当量用量で、hu3S193−AcBut−CMまたはCMDのいずれよりも有意に増殖阻害が少なかった。マウス1匹あたり1用量あたり4μgのカリケアマイシン当量では、hu3S193−AcBut−CMおよびG193−AcBut−CM(CMD)は、N87異種移植片からマウスを治癒させた(図10)。具体的には、マウスのうち40%および60%が、それぞれ、hu3S193−AcBut−CMまたはCMDの4μgのカリケアマイシン当量の投与後にそれらの腫瘍から治癒した。この治癒という用語は、異種移植片のサイズが減少し、処置後100日の間最初の平均腫瘍容積を決して超えないことを示す。さらに、hu3S193−AcBut−CMまたはCMDによって生じる腫瘍増殖阻害はまた、2μgのカリケアマイシン当量/用量/マウスの用量の用量で等価であった(図10)。初期の実験によって、hu3S193−AcBut−CMに等価な用量でのCMの投与は、現在記載される腫瘍モデルのいずれも決して阻害しなかったことが示された(データ示さず)。従って、CMの投与はコントロールとしては省略されている。
【0234】
G193およびhu3S193は、N87異種移植片の増殖を阻害しなかった。
【0235】
(L2987肺癌腫異種移植片)
100mmのL2987異種移植片を保有するマウスを、コントロール結合体(CMA)、PBSまたはCMDで処置した。各々の群におけるマウスに、3用量をi.p.で与えた。各々の用量のカリケアマイシン当量での量を、凡例に特定する。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。図11Aは、コントロール結合体の有効性を示し、そして図11Bは、CMDの効果を図示する。誤差棒は、各々の時点の平均腫瘍容積の標準偏差を表す。各々の群の最初の腫瘍平均よりも小さい腫瘍サイズを有するマウスの数(パーセンテージで表す)を、図12において観察期間の関数としてプロットした。CMA(図12A)またはCMD(図12B)での処置を、ビヒクルコントロール(PBS)での処置と比較する。
【0236】
図12は、CMDが0.375〜3μg/用量/マウスの用量範囲でL2987増殖を阻害したことを示す。この阻害の選択性の解釈は、2つの要因によって妨げられた。まず第一に、CMAは、この腫瘍モデルにおいて有意な増殖阻害効果を発揮した(図12)。低用量では、この阻害は、CMDによって生じる阻害よりも小さかった。第二に、コントロール群の10匹のマウスのうち2匹で腫瘍の自然な緩解が生じた(図12)。それにもかかわらず、1群あたりの緩解した腫瘍の数は、CMAで処置された群においてよりもCMDで処置された群において際立って高かった。CMDはまた、樹立されたL2987異種移植片の増殖を阻害した。
【0237】
図13に示される実験について、10匹のマウスにL2987異種移植片を投与した。これらの腫瘍を、1.25cmという平均容積に達するまで増殖させた。0.5cmより大きい腫瘍容積を有する3匹のマウス(すなわち、0.66cm、1.97cmおよび1.11cm)を、3用量の4μgのカリケアマイシン当量のCMD(Q4D×3)で処置した。これらの腫瘍は、初回用量後に30日の期間の間退縮した。しかし、腫瘍の再増殖を可能にするのに十分な残留疾患が残っていた。2.31cmの腫瘍を有する1匹のマウスにも、4μgのカリケアマイシン当量のCMD(Q4D×3)を投与した。この大きい腫瘍は、治療に応答せず、マウスは、三回目の注射の前に倫理的な理由で殺傷しなければならなかった。従って、3回の用量の4μgのカリケアマイシン当量のCMD(Q4D×3)は、0.66〜1.97cmの容積を有するL2987腫瘍の腫瘍増殖を阻害するには十分であったが、治癒には不十分であった。誤差棒は、各々の時点での平均腫瘍容積の標準偏差を表す。
【0238】
(A431/LE類表皮癌腫異種移植片)
また、A431/Le類表皮癌腫のCMD−193増殖阻害を評価した。約300mmのA431/Le異種移植片を保有するマウスを、PBSまたはCMDのいずれかで処置した。各々の群のマウスに、3用量をi.p.で投与した。各々の用量のカリケアマイシン当量の量を、凡例に特定する。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。誤差棒は、各々の時点の平均腫瘍容積の標準偏差を表す。結果を図14に示す。約100mmのA431/Le異種移植片を保有するマウスをまた、コントロールの結合体(CMA)、PBSまたはCMDで処置した。各々の群のマウスに、3用量をi.p.で投与した。各々の用量のカリケアマイシン当量の量を、凡例に特定する。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。結果を図15に示す。図15Aは、コントロール結合体の有効性を示し、そして図15Bは、CMDの効果を図示する。誤差棒は、各々の時点の平均腫瘍容積の標準偏差を表す。
【0239】
図14および15に示されるように、A431/LeのCMD腫瘍阻害の特異性の解釈はまた、腫瘍の自然な退縮によって、およびCMAによって生じる増殖阻害によって複雑になった。等価な用量のCMDまたはCMAでの処置後に治癒したマウスの数の比較(図16)によって、CMD処置の選択的な利点が示された。
【0240】
(LS174T結腸癌腫異種移植片)
CMDでの処置後のLS174T異種移植片の増殖阻害は、前者の腫瘍ほど顕著ではなかった;それにもかかわらず、これは、コントロール結合体よりも有効であった(図17)。150mmのLS174T異種移植片を保有するマウスを、コントロール結合体(CMA)、PBSまたはCMDで処置した。各々の群のマウスに、3用量をi.p.で投与した。各々の用量のカリケアマイシン当量での量を、凡例に特定する。結合体およびコントロールを、1日目、5日目および9日目に注射した。LS174T腫瘍は、コントロール群では全てのマウスが、大きい腫瘍負荷(>2.5cm)のせいで51日の期間内に殺傷されなければならないほど、早く増殖した。4μgカリケアマイシン当量CMD(Q4D×3)で処置した群では、5匹のマウスのうち3匹が、大きい腫瘍負荷(1/3)のせいで、または腫瘍の壊死(2/3)のせいで、44日内に殺傷された。他の2匹のマウスのうち1匹は125日間腫瘍なしのままであったが、他の一匹は小さい腫瘍を発症した。2μgカリケアマイシン当量CMD(Q4D×3)または4μgカリケアマイシン当量CMA(Q4D×3)のいずれかで処置した群では治癒は観察されなかった。対照的に、2μgカリケアマイシン当量のCMA(Q4D×3)で処置した5匹のマウスのうち1匹が治癒した。図17Aは、コントロール結合体の有効性を示し、そして図17Bは、CMDの効果を図示する。誤差棒は、各々の時点の平均腫瘍容積の標準偏差を表す。
【0241】
(LOVO結腸癌腫異種移植片)
LOVO異種移植片を保有するマウスを試験して、4μgカリケアマイシン当量/用量/マウスでQ4D×3とは異なるレジメンの潜在的な利点を検討した。約100mmのLOVO異種移植片を保有するマウスをPBS、G193または種々のレジメンのコントロール結合体(CMAまたはCMD)で処置した。各々の用量のカリケアマイシン当量での量を、凡例に特定する。4μgのカリケアマイシン当量でQ4D×3でみられたわずかな有効性という理由でこの型の実験にはLOVO−モデルを選択した。
【0242】
図18Aは、CMAおよびG193の有効性がないことを示す。図18Bおよび18Cは、それぞれQ4D×3およびQ4D×4でのCMDの効果を図示する。図18Dおよび18Eは、種々の間隔で与えられた場合のCMDの有効性を示す。誤差棒は、各々の時点の平均腫瘍容積の標準偏差を表す。CMDでの処置後のLOVO異種移植片の増殖阻害は、前者の腫瘍ほど顕著ではなかった。しかし、4回目の用量の追加、注射の間隔を減少すること、および低用量をより高頻度に投与することは、CMDの有効性を増強したことが示唆された。
【0243】
(MX1 乳癌腫異種移植片)
ルイスY抗原の低い発現を有する癌腫の樹立された異種移植片の増殖に対するCMD−193の効果をまた、MX1乳癌腫で検査した。CMA−676を、非結合コントロール結合体として用いた。MX1乳癌腫を外植されたヌードマウスを種々の用量のCMD−193(40〜240mg/kg)またはCMA−676(陰性コントロール)で処置した。腫瘍増殖を少なくとも35日間記録した。CMD−193は80mg/kg程度の低用量で、図22に示されるように、MX1異種移植片の増殖の有意な増殖阻害を生じた。対照的に、CMA−676は、試験した最高用量(160mg/kg)でのみ有効であった。
【0244】
(CMD−193の最大非致死用量)
図19に例示される実験について、10匹のマウスの8つの群を用いた。各々の群は、0〜9.9μgカリケアマイシン当量(0〜396μg/kg)の範囲の漸増用量でCMDを4日ごとに全部で3回(Q4D×3)投与して、それらの生存を105日間にわたってモニタリングした。ビヒクルで処置したコントロール群は、観察期間全体にわたって1死亡率を有した。同様の致死率を生じた最高用量は5.7μgカリケアマイシン当量のCMDであった。この致死率はコントロール群においてよりも早期に生じたので、これは薬物関連の毒性に起因したことが主張できる。284μg/kg以上の用量によって、処置したマウスにおける有意に高い頻度の致死率が生じ、そして7.1μg、8.5μgおよび9.9μgカリケアマイシン当量での処置は、際立って高い頻度の致死率だけでなく、ビヒクルコントロールでの処置よりも早期の致死性の発生を生じた。228μg/kg以下の用量のCDM−193で処置したマウスの生存は、ビヒクルコントロールマウスでの生存と同様であった。これらのデータをまとめると、CMDの最大致死用量(MND)は、5.7μgのカリケアマイシン当量(228μg/kgであり、これは、8.5〜12.2mg/mの範囲では結合体化抗体タンパク質用量に等価である)Q4D×3であった。このMNDは、ほとんどの腫瘍モデルにおいて、有効な用量(MED)よりかなり高く、例えばL2987モデルでの15μg/kgというMEDを考えれば、CMD−193は、19という治療指数(MND/MED)を有する強力な抗腫瘍活性を示す。
【0245】
(実施例6.毒物学)
結合体CMD193の毒性を、マウスおよびラットにおける単回用量の静脈内(IV)毒性研究において、そしてラットおよびイヌにおける用量の範囲IV毒性研究および4サイクルの反復用量(1サイクルは1用量/2週)IV毒性研究において、評価した。毒物動態学および免疫原性の評価はまた、ラットおよびイヌでの4サイクルの毒性研究の一部として行なった。CMD−193の遺伝毒性潜在性を、細菌の復帰変異およびマウスの小核試験において評価した。
【0246】
ラットおよびイヌ(ルイスY抗癌の発現について選択した)におけるCMD−193の単回および反復の用量の投与によって、一般的に類似の生存効果(骨髄毒性およびリンパ系器官毒性の指標である体重および食物消費の減少および血液学の変化)および標的器官毒性が生じた。全体的に、CMD−193の毒性は、ラットおよびイヌで一致した。同程度の化合物関連の知見が、雄および雌で観察された。両方の種における毒性の標的器官は骨髄、胸腺および雄性の生殖器官であった。肝臓(ラットにおける)および消化管(GI)(イヌにおける)もまた標的器官であった。ラットおよびイヌにおける複数の標的器官におけるCMD−193関連の効果の観察は、CMD193における未結合のカリケアマイシン誘導体に起因し得る非特異的な細胞毒性と一致している;しかしCMD−193処置したイヌでのGIの変化はまた、組織の交差反応性研究において観察されるようなGI管上皮に対するG193抗体の結合、および細胞毒性の非結合体化カリケアマイシン誘導体の引き続く遊離を反映し得る。
【0247】
(単回用量のIV研究)
ラットにおける単回用量の静脈内(IV)安全性薬理学研究において、1.18mgタンパク質/m、3.54mgタンパク質/m、または10.69mgタンパク質/mの用量のCMD−193は、中枢神経系(CNS)にも呼吸器系にもなんら有害な影響を生じなかった。イヌでの単回用量の心血管系の安全性薬理学研究では、CMD193は、1.3mgタンパク質/mまたは6.7mgタンパク質/mのIV用量で、心拍にも動脈血圧にも有害な変化を生じなかった。形態学的な異常の証拠も、異常な心房性不整脈の証拠も心室性不整脈の証拠も、6.7mgのタンパク質/mで試験したいかなる心電図(ECG)における化合物関連のQTc延長の証拠も、存在しなかった(ECGは1.3mgタンパク質/mでは試験しなかった)。
【0248】
単回用量としてIV投与した場合、CMD−193の最高の非致死用量は、マウスでは15.30mgタンパク質/mであって、ラットでは30.09mgタンパク質/mであった;これらは、76mg/mLの最大濃度(カリケアマイシン当量)および5mL/kgの最大用量容量に基づく、最大の実行可能用量であった。有害効果を生じない用量は、マウスについては15.30mgタンパク質/mであって、ラットについては15.81mgタンパク質/mであった。
【0249】
(用量範囲の研究)
CMD−193での用量設定研究において、試験した最高単回用量12mgタンパク質/mで1匹のイヌが、安楽死を要する瀕死状態となった;瀕死性(moribunditiy)は、軽度から中程度の粘膜の変性および壊死というCMD 193に関連する胃腸の変化に起因した。試験したいずれの用量(最大30.09mgタンパク質/m)でもラットの死亡や選択的な安楽死はなかった。
【0250】
(4−サイクル研究)
4サイクルの毒性研究では、投与されたCMD−193の用量は、ラットでは0.55、1.98または5.55mgタンパク質/m/サイクルであって、イヌでは、0.36、1.2または3.59mgタンパク質/m/サイクルであった。これらの研究では、G193抗体単独を、ラットでは5.55mgタンパク質/m/サイクルで投与して、イヌでは3.59mgタンパク質/m/サイクルで投与した。CMD−193の最大耐容用量(MTD)は、ラットでは5.55mgタンパク質/m/サイクルであって、イヌでは3.59mgタンパク質/m/サイクル(投与された最高用量)であった;これらの用量は、用量を限定する毒性もまたは生命を脅かす毒性も誘発しなかった。ラットでの4サイクル研究では、0.55mg/タンパク質/m/サイクルで観察された顕微鏡的な知見(精巣管萎縮)に基づき、雄では、CMD−193の無毒性量(no−observed−adverse−effect level)(NOAEL)は確立されなかった。5.55mgのタンパク質/m/サイクルで雄性および雌性の両方における肝細胞の巨大核/巨大細胞に基づいて、ラットでの4サイクル研究の雌でのNOAELは、1.98mgタンパク質/m/サイクルであった。イヌの4サイクル研究では、0.36mg/タンパク質/m/サイクルでの顕微鏡的な知見(精巣管の変性であって、二次的な精巣上体の精液過少症およびわずかな精巣上体の上皮の変性を伴う)に基づき、雄では、CMD−193のNOAELは確立されなかった。3.59mgのタンパク質/m/サイクルで雄性および雌性の両方におけるGI管における粘膜上皮変性の顕微鏡的知見に基づいて、イヌにおける4サイクル研究では雌でのCMD−193のNOAELは、1.2mgタンパク質/m/サイクルであった。
【0251】
ラットでの4サイクルの毒性研究では、試験した5.55mgタンパク質/m/サイクルの用量のG193抗体単独では、なんらG193抗体に関する毒性を生じなかった。イヌでの4サイクル毒性研究では、試験した3.59mgタンパク質/m/サイクルの用量のG193抗体単独では、用量を制限する毒性も生命を脅かす毒性も生じなかった。イヌでのこの研究のG193関連毒性としては、わずかな精巣管の変性およびわずかな胃粘膜の変性が含まれた。
【0252】
G193抗体、非結合体化(遊離の)カリケアマイシン誘導体および総カリケアマイシン誘導体(ラットのみ)の毒物動態学的評価、ならびにラット血清におけるCMD−193に特異的な抗体の存在の決定そしてイヌ血清におけるG193抗体に特異的な抗体の存在の決定を、4サイクル反復用量IV毒性研究の一部として行なった。
【0253】
(遺伝毒性研究)
CMD−193は、細菌の復帰変異アッセイにおいて変異原性については陰性であったが、インビボのマウス小核アッセイでは染色体異常誘発性であった。このアッセイにおいては陽性の応答が予測され、そしてカリケアマイシンおよび他のエンジイン抗腫瘍性抗生物質によるDNA破壊(染色体異常誘発能)の誘導と一致している。
【0254】
(交差反応性研究)
交差反応性研究では、非結合体化G193抗体は、ラットおよびイヌの唾液腺およびGI管において、そしてイヌのみの膵臓および肝臓(胆管上皮)において、特異的な染色を示した。さらなる研究では、G193抗体により、最も強くかつ一貫した染色が、ラット、イヌおよびヒトのGI管(大腸および胃の上皮)、膀胱(上皮)、膣(上皮)および下垂体(下垂体前葉の内分泌細胞)にあった。CMD−193のG193の抗体成分は、ラット、イヌおよびヒトにおいてルイスY抗原の発現に関連する組織と交差反応したので、これらの結果によって、ラットおよびイヌがCMD193で行われた非臨床研究についての適切な種であることが示された。
【0255】
(実施例7.抗ルイスY抗体カリケアマイシン結合体の安定な処方物)
抗ルイスY抗体カリケアマイシン結合体(hu3S193−AcBut−CMおよびCMD−193)のインビボ投与のための安定な処方物を調製した。20mMのTRIS(pH8.0)および100mMの塩化ナトリウム中の約19mgのCMD−193を、表8または9に従って以下のように処方した。
【0256】
(表8)
【0257】
【表8】

(表9)
【0258】
【表9】

2つのバッチのCMD−193を凍結乾燥させた。処方物の相違はpHであって、一方はpH7.5に、そしてもう一方はpH8.0に緩衝化した。pH8.0の処方物の4つのバイアルを、注射用水で再構成して、ポリプロピレンチューブ中で合わせた。pHを測定し、次いでその溶液を4つの部分に分けて、25℃においた。同様に4つのバイアルを用いてpH7.5で同様の研究を設定した。溶液をあわせた場合、pHは、0.1Nの塩酸を用いて7.5に再調節しなければならなかった。4つのさらなるバイアルをまた用いて、溶液をpH7.0にした。この溶液を最初の分析のために与えて、その残りを安定なチャンバ中で25℃で保持した。次いでこの溶液を2日および7日後に分析した。結果を表10に示す(1週間にわたる25℃でのpH7.0、pH7.5、およびpH8.0でのCMD−193バルク溶液の安定性)。この溶液は、濁っていることが観察され、そして1週間後、透明な沈殿物がpH7.0およびpH7.5の溶液中で25℃で観察された。この結果に基づいて、pH8.0で緩衝化された溶液は、3つの場合のうち最高の安定性を生じた。そしてTRISを緩衝液として選択した。
【0259】
(表10)
【0260】
【表10】

別の実施例では、20mM TRIS(pH8.0)および100mMの塩化ナトリウム中約35mgのCMD−193を用いた。これから、CMD−193の2つのさらなる処方物を製造した。第一の処方物は、5%のスクロースを含み、そしてTRISを用いてpH8.0に緩衝化された。この最終処方物は、下の表11に記載される。
【0261】
(表11)
【0262】
【表11】

第二の処方物を製造するために、用いられるCMD−193の濃度(総タンパク質、2.23mg/mL)を、タンパク質の濃度が1mg/mLであるように注射用水で希釈した。次いでこの溶液を、30,000ダルトン未満の分子を透過可能なセントリコン・フィルター・ユニット(centricon filter unit)を用いて遠心分離した。溶液の容量を半分にした場合、これを5mMのKHPO、50mMのNaCl、10%スクロース溶液で希釈した。最終処方物を下の表12に記載する。
【0263】
(表12)
【0264】
【表12】

pH7.5およびpH8.0で製造したCMD−193のバイアルを、表13に列挙される種々の溶液で再構成した(第二の処方物)。表13は、種々の溶液で再構成されたCMD−193の可視検査を示し、そしてこのバイアルを可視の粒子について観察した。全ての場合に、pH8.0に緩衝化した溶液は、pH7.5の溶液よりも透明であった。界面活性物質の添加は全ての場合に有益であった。注射用水(wfi)で再構成したバイアル中の沈殿物を濾過して、顕微鏡検査のために収集した。
【0265】
(表13)
【0266】
【表13】

上記に基づいて、溶液への界面活性物質の添加は、溶解度を確保するために必須であることが見出された。選んだTween 80(0.01%)を用いて、1mg/mlの溶解度を維持した。最終処方物は5%スクロース、0.01%のTween 80、20mMのTRIS(pH8.0)、および50mM塩化ナトリウム)を含んだ。
【0267】
CMD−193の2つのさらなるバッチを用いた。最初のバッチをHIC、続いて限外濾過を用いて精製して、その第二のバッチを結合体化後に限外濾過プロセスを直接通した。この2つの処方物を、下の表13および14のように処方した。
【0268】
(表14)
【0269】
【表14】

5℃でのバルク溶液の安定性(表15)および25℃での凍結乾燥製品の安定性(表16)を、下にまとめる。
【0270】
(表15)
【0271】
【表15】

(表16)
【0272】
【表16】

(希釈および投与)
注射用のCMD−193を、無菌の白色の保存剤非含有の凍結乾燥された粉末として20mLの琥珀色のガラスバイアルとして供給する。各々の単回バイアルのパッケージは、5mgのCMD 193凍結乾燥粉末を含む。注射用のCMD−193は、凍結されて(2〜8℃/36〜46°F)、光から保護されてもよい。
【0273】
この薬物製品は、光感受性であって、調製および投与の両方の間に直接および間接の日光および未遮光の蛍光から保護され得る。全ての調製は好ましくは、生物学的に安全なフードの内側で行われる。凍結乾燥された薬物は、室温に対するバイアルの平衡なしで再構成されてもよい。無菌のシリンジを用いて、5mLのUSPの滅菌注射水で各々のバイアルの内容物を再構成する。ゆるやかな回旋を用いてこのプロセスを補助してもよい。再構成の後および投与の前に、各々のバイアルの薬物を粒子状物質および変色について視覚的に検査する。再構成溶液の最終濃度は1mg/mLである。
【0274】
ベンジルアルコールまたは任意の他の保存剤を含むUSPの滅菌注射水は、注射用のCMD−193の再構成には推奨されない。
【0275】
一旦再構成されれば、薬物溶液はさらに、USPの0.9%塩化ナトリウム注射水に希釈されて、バイアルの再構成後4時間内に投与される。注射のためのCMD−193の再構成されたバイアルは、決して凍結されてはならない。
【0276】
投与のための最終用量を生成するために、再構成された薬物の適切な量を、十分なUSPの0.9%の塩化ナトリウム注射液に注入して、50mLの最終容積にする。混合バッグまたは容器は、ポリオレフィンから構成されるか、またはポリエチレン裏層のある接触表面を備え、そして紫外UV光プロテクターを備える。
【0277】
注射用CMD−193は、IVプッシュ(push)またはボーラスとして投与されてはならない。
【0278】
患者は、プログラム可能な輸液ポンプを介して1時間(±15分)にわたって一定速度でIV輸液によって混合溶液(総用量)を投与される。輸液容器は光から保護されなければならないが、輸液の配管を光から保護する必要はない。輸液の配管は、ポリオレフィンであってもポリエチレンで裏打ちされていてもよい。インラインフィルターは、CMD−193投与に用いられるべきではない。
【0279】
上記の全ての引用文献および特許は、参照によって本明細書中に援用される。本発明の多数の改変および変更は、上記に特定された明細書に含まれており、そして当業者に明白であると考えられる。結合体化プロセス、このプロセスによって作製される結合体、および結合体を含む組成物/処方物に対するこのような改変および変更は、特許請求の範囲内に包含されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】図1は、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193)の構造を示す(hu3S193−AcBut−CM)。
【図2】図2Aおよび2Bは、ED50(ng/ml)に対する出現の頻度のグラフとしてLey+およびLey−細胞に対しての、カリケアマイシンに対して結合体化させた抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CM)の効果を示す;図2Aは、Ley+細胞株AGSを示し、そして図2Bは、Ley−細胞株PC3MM2を示す。図2Cは、細胞(すなわち、Ley+細胞株LOVO、N87、HCT8/S11−R1、AGS、LNCaP、NCI−H358およびLey−細胞株PC3−MM2、A431、およびPANC−1)の表面上でのルイスYの発現に対するCMAの倍数のグラフとしてLey+およびLey−細胞に対するhu3S193−AcBut−CMの効果を示しており、ここでnは独立したED50測定の回数である。
【図3】図3は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、N87胃の癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CM)のインビボ活性を示す;図3Aは、コントロールの結合体CMAおよびRITUXAN(登録商標)−AcBut−CMを示し、そして図3Bは、hu3S193およびhu3S193−AcBut−CMを示す。
【図4】図4は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、LNCaP前立腺癌腫に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CM)のインビボ活性を示す。
【図5】図5は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、LOVO結腸癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CM)のインビボ活性を示す;図5Aは、コントロールの結合体RITUXAN−AcBut−CMを示し、そして図5Bは、hu3S193およびhu3S193−AcBut−CMを示す。
【図6】図6は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、LOVO結腸癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CM)のインビボ活性を示す;図6Aは、コントロールの結合体CMAおよびRITUXAN−AcBut−CMを示し、そして図6Bは、4μgのQ4D×3またはQ4D×4で投与されたhu3S193およびhu3S193−AcBut−CMを示す。
【図7】図7は、成熟した分泌型抗ルイスY抗体hu3S193(wt)およびG193(mt)IgG1重鎖のアミノ酸配列の比較を示しており、ここでは変異部位を、太字でかつ強調しており、そしてCDRを太字でかつ影付きにしている。
【図8】図8は、IgG1重鎖のhu3S193(Wyeth wt)およびhu3S193(Ludwig Institute for Cancer Research、本明細書において以降ではLICR wtと呼ぶ)のアミノ酸配列の比較を示しており、ここではCDRを太字でかつ影付きにしており、そしてアロタイプの相違を強調してかつ太字にしている。
【図9】図9は、カリケアマイシンの濃度(計算上の当量、ng/ml)に対するコントロールの割合(CMA)のグラフとして、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)による、インビトロのA431(図9A)およびA431/Le(図9B)類表皮癌腫(epidermoid carcinoma)細胞の増殖阻害を示す。
【図10】図10は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、N87胃の癌腫異種移植片に対するカリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CMおよびCMD−193)のインビボ増殖阻害を示す;図10Aは、コントロールの結合体CMAを示し、図10Bは、CMD−193およびhu3S193−AcBut−CMを示し、そして図10Cは、遊離の抗体を示す。
【図11】図11は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、L2987肺癌腫異種移植片に対するカリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CMおよびCMD−193)のインビボの増殖阻害を示す;図11Aは、コントロールの結合体CMAを示し、そして図11Bは、CMD−193を示す。
【図12】図12は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する、各々の群の初期平均容積よりも少ない腫瘍容積を有するマウスの数(%)のグラフとして、L2987肺癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CMおよびCMD−193)のインビボの増殖阻害を示す;図12Aは、コントロールの結合体CMAを示し、そして図12Bは、CMD−193を示す。
【図13】図13は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、L2987肺癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)のインビボの増殖阻害を示す。
【図14】図14は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、A431/Le類表皮癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)のインビボの増殖阻害を示す。
【図15】図15は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、A431/Le類表皮癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)のインビボの増殖阻害を示す。図15Aは、コントロールの結合体CMAの有効性を示し、そして図15Bは、CMDの有効性を示す。
【図16】図16は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する、各々の群の初期平均容積よりも少ない腫瘍容積を有するマウスの数(%)のグラフとして、A431/Le類表皮癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)のインビボの増殖阻害を示す;図16Aは、コントロールの結合体CMAの有効性を示し、そして図16Bは、CMDの有効性を示す。
【図17】図17は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、LS174T結腸癌腫細胞異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)のインビボの増殖阻害を示す。図17Aは、コントロールの結合体CMAの有効性を示し、そして図17Bは、CMDの有効性を示す。
【図18】図18は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍容積(cm)のグラフとして、LOVO結腸癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193およびhu3S193−AcBut−CM)のインビボの増殖阻害を示す。図18Aは、コントロールの結合体CMAおよびG193の有効性を示し、図18Bおよび18Cは、それぞれCMDのZ4D×3およびQ4D×4での有効性を示し、そして図18Dおよび18Eは、CMDの有効性を種々の時間間隔で示す。
【図19】図19は、観察期間(日数)に対する生存パーセントのグラフとして、カリケアマイシンに結合体化した抗ルイスY抗体(CMD−193)の種々の用量での注射後のヌードマウスの生存を示す。
【図20】図20は、BIAcore共鳴単位に対するルイスY抗原および構造的に関連の抗原のグラフとして、ルイスY抗原に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)の結合特異性を示す。
【図21】図21は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍質量(g)のグラフとして、HCT8S11結腸癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(hu3S193−AcBut−CM)のインビボ活性を示す;図21Aは、小さい腫瘍を示し、そして図21Bは大きい腫瘍を示す。
【図22】図22は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する相対的な腫瘍増殖のグラフとして、MX1乳癌異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)のインビボ活性を示す。
【図23】図23は、腫瘍増殖の期間(日数)に対する腫瘍質量(g)のグラフとして、N87胃の癌腫異種移植片に対する、カリケアマイシンに結合体化された抗ルイスY抗体(CMD−193)の種々の薬物ローディングに基づくインビボ活性を示す。
【図24】図24は、抗体濃度(μg/ml)に対する細胞毒性パーセントのグラフとして、N87胃癌腫細胞に対する、抗ルイスY抗体(G193)およびそのカリケアマイシン結合体(CMD−193)のインビトロにおける補体依存性細胞毒性(CDC)活性を示す。
【図25】図25は、A431/Le類表皮癌腫細胞に対する、抗ルイスY抗体(G193)およびそのカリケアマイシン結合体(CMD−193)のインビトロにおける抗体依存性細胞毒性(ADCC)活性を示す;図25Aは、ルイスY+++A431癌腫細胞に対する活性を示し、そして図25Bは、ルイスY陰性A431癌細胞に対する活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリケアマイシン結合体を調製するためのプロセスであって、デオキシコール酸ファミリーのメンバーまたはその塩の存在下において、約7〜約9のpHにおいて、(i)活性化されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体と、(ii)IgG1抗体とを反応させる工程を包含する、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記デオキシコール酸ファミリーのメンバーが以下の構造:
【化1】

であって、ここで
〜Xのうちの2つがHまたはOHであり、そして他の3つが独立してOまたはHのいずれかであり;
が(CHであって、nが0〜4であり、そして
がOH、NH(CHCOOH、NH(CHSOH、またはNH(CHPOであって、mが1〜4である、(A)、
あるいは
【化2】

であって、ここで
〜Xのうちの1つがHまたはOHであり、そして他の3つが独立してOまたはHのいずれかであり;
が(CHであって、nが0〜2であり、そして
がOH、NH(CHCOOH、またはNH(CHSOHであって、mが2である、(B)、
あるいは、
【化3】

であって、ここで
〜Xのうちの1つがOHであり、そして他の3つがHであり;
が(CHであって、nが0〜2であり、そして
がOH、NH(CHSOHである、(C)、
のうち1つを有する、プロセス。
【請求項3】
前記デオキシコール酸ファミリーのメンバーが、ケノデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、またはタウロケノデオキシコール酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記デオキシコール酸ファミリーのメンバーが、約10mMの濃度のデオキシコール酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記カリケアマイシン誘導体が、IgG1抗体の約3〜約9重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記カリケアマイシン誘導体が、IgG1抗体の約7重量%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記IgG1抗体が、抗ルイスY抗体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記抗ルイスY抗体が、G193またはHu3S193である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記カリケアマイシン誘導体が、カリケアマイシンのN−アシル誘導体またはカリケアマイシンのジスルフィドアナログである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記カリケアマイシン誘導体が、N−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記加水分解性リンカーが、4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
pHが約8.2である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスがさらにカリケアマイシン結合体を精製する工程を包含する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記精製が、クロマトグラフィー分離および限外濾過/ダイアフォルトレーションを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記クロマトグラフィー分離が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記精製工程後、前記結合体の平均ローディングが、IgG1抗体1モルあたりカリケアマイシン約5〜約7モルである、請求項13〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記精製工程後、前記結合体の低結合体化画分(LCF)が、約10%未満である、請求項13〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のプロセスによって調製された、カリケアマイシン結合体。
【請求項19】
請求項13のプロセスによって調製された、カリケアマイシン結合体。
【請求項20】
請求項13のプロセスによって調製されたカリケアマイシン結合体であって、前記カリケアマイシン誘導体が、N−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)であり、前記加水分解性リンカーが、4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)であり、前記デオキシコール酸ファミリーのメンバーが、約10mMの濃度のデオキシコール酸であり、前記pHが約8.2であり、そして前記精製工程後、前記カリケアマイシン結合体の平均ローディングが、IgG1抗体1モルあたりカリケアマイシン約5〜約7モルであり、該結合体の低結合体化画分(LCF)が、約10%未満である、カリケアマイシン結合体。
【請求項21】
抗ルイスY抗体に対して共有結合されたカリケアマイシン−加水分解性リンカー誘導体の結合体を含む、組成物。
【請求項22】
前記カリケアマイシン誘導体が、カリケアマイシンのN−アシル誘導体またはカリケアマイシンのジスルフィドアナログである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記カリケアマイシン誘導体が、N−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記加水分解性リンカーが、4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗ルイスY抗体が、G193またはHu3S193である、請求項21〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記平均ローディングが、抗ルイスY抗体1モルあたりカリケアマイシン約5モル〜約7モルである、請求項21〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記結合体が、約1×10−7M〜約4×10−7MのKを有する、請求項21〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記結合体が、約3.4×10−7MのKを有する、請求項21〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記結合体が、前記ルイスY抗原に結合し、ルイスX抗原およびH−2血液型群抗原には結合しない、請求項21〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記結合体が細胞毒性活性を有する、請求項21〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記結合体が抗腫瘍活性を有する、請求項21〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記結合体が治療有効量で存在する、請求項21〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
G193に共有結合されたN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド−4−(4−アセチルフェノキシ))ブタン酸(N−アセチルカリケアマイシンDMH−AcBut)の結合体を含む組成物であって、前記平均ローディングが、1モルのG193あたり約5〜約7モルのN−アセチルカリケアマイシンDMHであり、かつ前記結合体の低結合体化画分(LCF)が約10%未満である、組成物。
【請求項34】
請求項21〜33のいずれか1項に記載の組成物の生物学的活性を保存するためのプロセスであって、
溶液中において該組成物と、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤、および電解質とを接触させる工程;ならびに
該溶液を凍結乾燥させる工程
を包含する、プロセス。
【請求項35】
前記結合体が、約0.5mg/mL〜約2mg/mLの濃度である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記結合体が、1mg/mLの濃度である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記凍結保護物質が、約1.5重量%〜約6重量%の濃度である、請求項34〜36のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記凍結保護物質が、糖アルコールまたは炭水化物である、請求項34〜37のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記凍結保護物質が、トレハロース、マンニトールまたはソルビトールである、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記凍結保護物質が、約5%の濃度のスクロースである、請求項38に記載のプロセス。
【請求項41】
前記界面活性物質が、約0.005%〜約0.05%の濃度である、請求項34〜40のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記界面活性物質が、0.01重量%の濃度のPolysorbate80または約0.01%の濃度のTween80である、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記緩衝化剤が、約5mM〜約50mMの濃度である、請求項34〜42のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項44】
前記緩衝化剤が、約20mMの濃度のTrisである、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記電解質が、約5mM〜約100mMの濃度である、請求項34〜44のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項46】
前記電解質が、ナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記電解質が、約10mMの濃度のNaClである、請求項45に記載のプロセス。
【請求項48】
凍結乾燥の前に、pHが約7.8〜約8.2である、請求項34〜47のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項49】
前記凍結乾燥の前のpHが、約8.0である、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
請求項34〜49のいずれか1項に記載のプロセスであって、凍結乾燥が、
約−35℃〜約−50℃の温度で溶液を凍結させる工程;
約20〜約80ミクロンの初期乾燥圧力で、約−10℃〜約−40℃の保管温度で、24〜78時間の間、該凍結した溶液を最初に乾燥させる工程;および
約20〜約80ミクロンの二次乾燥圧力で、約+10℃〜約+30℃の保管温度で、15〜30時間の間、該凍結乾燥した生成物を二次乾燥させる工程;
を包含する、プロセス。
【請求項51】
凍結が約−45℃で行われ;前記最初の凍結乾燥が、約60ミクロンの初期乾燥圧力で、かつ約−30℃の保管温度で、60時間の間であり;そして、前記第二の乾燥工程が、約60ミクロンの乾燥圧力で、かつ約+25℃の保管温度で、約24時間の間である、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記プロセスがさらに、凍結乾燥前に充填剤を添加する工程を包含する、請求項34〜51のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項53】
前記充填剤が、約0.5〜約1.5重量%の濃度である、請求項52に記載のプロセス。
【請求項54】
前記充填剤が、約0.9重量%の濃度のDextran 40または、約0.9重量%の濃度のヒドロキシエチルデンプン40である、請求項52に記載のプロセス。
【請求項55】
前記結合体が細胞毒性活性を有する、請求項34〜54のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項56】
前記結合体が抗腫瘍活性を有する、請求項34〜54のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項57】
前記結合体が、治療有効量で存在する、請求項34〜56のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項58】
前記結合体が、G193に共有結合されたN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド−4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(N−アセチルカリケアマイシンDMH−AcBut)であって、前記平均ローディングが、1モルのG193あたり約5〜約7モルのN−アセチルカリケアマイシンDMHであり、かつ前記結合体の低結合体化画分(LCF)が、約10%未満である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項59】
カリケアマイシン−抗ルイスY抗体結合体、凍結保護物質、界面活性物質、緩衝化剤、および電解質を含む、処方物。
【請求項60】
前記結合体が、約0.5mg/mL〜約2mg/mLの濃度である、請求項59に記載の処方物。
【請求項61】
前記結合体が、約1mg/mLの濃度である、請求項60に記載の処方物。
【請求項62】
前記凍結保護物質が、約1.5重量%〜約6重量%の濃度である、請求項59〜61のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項63】
前記凍結保護物質が、糖アルコールまたは炭水化物である、請求項62に記載の処方物。
【請求項64】
前記凍結保護物質が、トレハロース、マンニトールまたはソルビトールである、請求項63に記載の処方物。
【請求項65】
前記凍結保護物質が、約5%の濃度のスクロースである、請求項63に記載の処方物。
【請求項66】
前記界面活性物質が、約0.005%〜約0.05%の濃度である、請求項59〜65のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項67】
前記界面活性物質が、約0.01重量%の濃度のTween80である、請求項66に記載の処方物。
【請求項68】
前記緩衝化剤が、約5mM〜約50mMの濃度である、請求項59〜67のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項69】
前記緩衝化剤が、約20mMの濃度のTrisである、請求項59〜68のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項70】
前記電解質が、約5mM〜約100mMの濃度である、請求項59〜69のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項71】
前記電解質が、ナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項59〜70のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項72】
前記電解質が、約10mMの濃度のNaClである、請求項59〜71のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項73】
前記pHが約7.8〜約8.2である、請求項59〜72のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項74】
前記pHが約8.0である、請求項73に記載の処方物。
【請求項75】
前記カリケアマイシンが、カリケアマイシンのN−アシル誘導体またはカリケアマイシンのジスルフィドアナログである、請求項59〜74のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項76】
前記カリケアマイシンが、N−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド(N−アセチルカリケアマイシンDMH)である、請求項75に記載の処方物。
【請求項77】
前記加水分解性リンカーが、4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)である、請求項59〜76のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項78】
前記抗ルイスY抗体が、G193またはHu3S193である、請求項59〜77のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項79】
前記平均ローディングが、抗ルイスY抗体1モルあたりカリケアマイシン約5モル〜約7モルである、請求項59〜78のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項80】
前記結合体が、約1×10−7M〜約4×10−7MのKを有する、請求項59〜79のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項81】
前記結合体が、約3.4×10−7MのKを有する、請求項59〜79のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項82】
前記結合体が、ルイスY抗原に結合し、ルイスX抗原およびH−2血液型群抗原には結合しない、請求項59〜81のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項83】
前記結合体が細胞毒性活性を有する、請求項59〜82のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項84】
前記結合体が抗腫瘍活性を有する、請求項59〜82のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項85】
前記結合体が治療有効量で存在する、請求項59〜84のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項86】
前記結合体が、G193に共有結合されたN−アセチルγカリケアマイシンジメチルヒドラジド−4−(4−アセチルフェノキシ))ブタン酸(N−アセチルカリケアマイシンDMH−AcBut)であって、前記平均ローディングが、1モルのG193あたり約5〜約7モルのN−アセチルカリケアマイシンDMHであり、かつ該結合体の低結合体化画分(LCF)が、約10%未満である、請求項59に記載の処方物。
【請求項87】
前記結合体が、1mg/mLの濃度であり、前記凍結保護物質が約5%の濃度のスクロースであり、前記界面活性物質が、約0.01重量%の濃度のTween 80であり、前記緩衝化剤が約20mMの濃度のTrisであり、かつ前記電解質が、約10mMの濃度のNaClであり、前記pHが約8.0である、請求項86に記載の処方物。
【請求項88】
請求項21〜32のいずれか1項に記載の組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、癌を処置する方法。
【請求項89】
前記癌がルイスY抗原について陽性である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記癌が癌腫である、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記組成物が、セカンドラインの単独療法として投与される、請求項88〜90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記組成物が、ファーストラインの併用療法として投与される、請求項88〜90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)または乳癌である、請求項88〜92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記癌が前立腺癌または結腸直腸癌である、請求項88〜92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記組成物が、生物活性因子と組み合わせて投与される、請求項88〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記生物活性因子が抗癌剤である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
請求項21〜32のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、NSCLCを処置する方法。
【請求項98】
請求項21〜32のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、乳癌を処置する方法。
【請求項99】
請求項21〜32のいずれか1項に記載の組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、増殖性障害を有する患者を処置する方法。
【請求項100】
キットであって、以下:(i)請求項59〜86のいずれか1項に記載の処方物を保持する容器と;(ii)希釈剤を用いて該処方物を再構成し、該再構成された処方物中での結合体濃度を約0.5mg/mL〜約5mg/mLの範囲内とするための説明書、とを備える、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2007−529536(P2007−529536A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504018(P2007−504018)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/008508
【国際公開番号】WO2005/089808
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】