説明

抗炎症性剤としてのプロピオンアミド化合物

本発明は、R、R及びRが、本明細書で定義のとおりである式(I)の化合物ならびに薬学的に許容されるその塩に関する。本発明はまた、式(I)の化合物を使用する方法及び式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピオンアミド化合物、および関連する組成物および治療薬としての使用方法に関するものである。
【0002】
グルココルチコイドは、喘息及びリウマチ関節炎などの炎症性疾患のために有効な処置である。しかしながら、重篤な全身性副作用は、与えることができる投与量及びその長期にわたる有用性を制限している。副作用は、視床下部−下垂体−腎系(HPA)軸の抑制、骨粗鬆症、若年時骨成長の減少、行動変更ならびに脂質及びグルコース代謝における障害を含む。
【0003】
グルココルチコイドレセプター(GR)は、核内ホルモンレセプターとして公知の遺伝子ファミリーのメンバーである。同族のリガンドに結合した後、これらのレセプターは活性化され、転写を正におよび負にの両方に制御することができる。この制御の詳細な機構は、完全には解明されていないが、次第に明らかになってきている。グルココルチコイドは、細胞へのプラズマ膜をこえて自由に拡散することができ、そこで、グルココルチコイドはサイトプラズマ内に存在するGRと結合する。一旦結合すると、レセプターの構造変化は、いくつかのシャペロンタンパク質の放出を引き起こして、GR/リガンド錯体が、核を転位置させ、二量体化し、そして制御された遺伝子のプロモータにおける回帰性DNA配列へ特異的にかつ堅固に結合することができる。次に、ホルモン結合レセプターは、コアクチベーター複合体として公知のタンパク質の群を補充する。この複合体は、転写を開始することを要求され、プロモーターの近くのクロマチンを開放することに関与する細胞の転写装置及びヒストンアセチルトランスフェラーゼの両方を補充することによって作用する。プロモーター中にGRE(グルココルチコイド応答因子)を含有する多くの遺伝子の転写は、GRによって活性化される。これらは、糖新生作用、中間代謝及びストレス応答に関与する遺伝子を含む。
【0004】
GREでのGRによって発揮される転写コントロールに加えて、多数の遺伝子、特に、炎症応答に関与する遺伝子は、GREがこれらの遺伝子のプロモーターに現れないので、代替機構を通じてコントロールされなければならない。多数のプロ−炎症性遺伝子のプロモーターは、転写因子NF−kB及びAP−1のための結合部位をまさに含有する。GR/リガンド錯体は、NF−kB又はAP−1と直接相互作用することにより、かつ転写因子により転写性アップレギュレーションを妨げることにより、プロ−炎症性遺伝子の転写を抑圧していることが示されてきた。DNA結合ができないGR変異体のインビトロでの作用は、GR媒介転写抑制がトランス活性化から遺伝的に解離することができることを実証した。この解離は、野生型GRが類似のDNA結合ドメイン変異体で置換される「ノックイン」遺伝子導入マウスが産生された研究によってさらに支持されている。これらのマウスは、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)などの、GRE依存GR標的遺伝子を、又はプロ−オピオメラノコルチン(POMC)などの、負のGREでの相互作用を通じて負に制御される遺伝子を制御することができなかった。対照的に、これらのマウスは、NF−kB又はAP−1によって活性化される遺伝子を転写抑制することができる。したがって、炎症のコルチコステロイドコントロールの現在認められているモデルは、錯体制御ネットワークで、GR、NFkB及びAP−1が相互作用して、サイトカイン発現の抑制を導くと予想している。
【0005】
このモデルによると、転写抑制活性を保持し、トランス活性化活性を失うグルココルチコイドモジュレータは、副腎抑制、行動の変更及び糖新生に伴う副作用が少ない。抗炎症性作用は保持される。
【0006】
本発明は、式I:
【0007】
【化2】

【0008】
[式中、
は、H又はC−Cアルキルであり;
及びRは、各々独立して、H、CF、NO、場合により置換されている5員ヘテロアリール環であるか、又は−CH−(OH)−C(=O)−O−R、−C(=O)−O−R及び−C−(R)=N−O−Rからなる群より選択され、ここで、R、R、R及びRは、各々独立して、C−Cアルキルである)]
で示される化合物;
ならびに薬学的に許容されるその塩に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、上記定義の式I化合物及び薬学的に許容されるその塩を、それを必要としている対象に投与することを含む、グルココルチコイドレセプターの調節を通じて炎症性疾患を処置する方法に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、上記定義の式I化合物及び薬学的に許容されるその塩の有効量ならびに薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物である。
【0011】
本開示に記載のすべての刊行物は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0012】
特記のない限り、明細書及び請求の範囲を含むこの出願に使用される下記の用語は、下記に示す定義を有する。明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形"a"、"an"及び"the"は、文脈から明白に示される場合を除いて、複数の言及を含むことに注意しなければならない
【0013】
「アルキル」は、炭素原子と水素原子のみからなり、1〜12個の炭素原子を有する、一価直鎖状又は分岐鎖状飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、炭素原子1〜6個のアルキル基、つまり、C−Cアルキルを指す。アルキル基の例は、非限定的に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシル等を含む。
【0014】
「アリール」は、単環式、二環式又は三環式芳香族環からなる、一価環式芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、場合により、本明細書で定義されたように置換されていることができる。アリール部分の例は、非限定的に、場合により置換されている、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル等(部分的に水素化されているそれらの誘導体も含む)を含む。
【0015】
用語「ハロ」、「ハロゲン」及び「ハライド」は、互換的に使用されてもよく、置換フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0016】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が、同一又は異なるハロゲンで置き換えられている、本明細書で定義されたアルキルを意味する。例示的なハロアルキルは、−CH2Cl、−CHCF、−CHCCl、ペルフルオロアルキル(例えば、−CF)等を含む。
【0017】
「ヘテロアリール」は、N、O又はSから選択される、1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香族環を有する環原子5〜12個の、単環式又は二環式基を意味し、ここで、ヘテロアリール基の結合点が芳香族環上にあることが理解される。ヘテロアリール環は、場合により、本明細書で定義されたように置換されていてもよい。ヘテロアリール部分の例は、非限定的に、場合により置換されている、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、ベンゾチエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキアリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニル等(部分的に水素化されているそれらの誘導体も含む)を含む。
【0018】
「ヘテロシクリル」は、1、2又は3個、又は4個のヘテロ原子(窒素、酸素又は硫黄から選択される)を含む、1〜3個の環からなる一価飽和部分を意味する。ヘテロシクリル環は、場合により、本明細書で定義されたように置換されていてもよい。ヘテロシクリル部分の例は、非限定的に、場合により置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリルイジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリルイジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル等を含む。
【0019】
「場合により置換されている」は、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」、「シクロヘキシル」又は「ヘテロシクリル」と関連して使用されるとき、場合により、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(ここで、Rは、水素、アルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、−(CR′R″)−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R′及びR″は、独立して、水素又はアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、又は−(CR′R″)−CONR(ここで、nは0〜5の整数であり、R′及びR″は、独立して、水素又はアルキルであり、R及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)から選択される1〜4つの置換基、好ましくは、1又は2つの置換基で独立して置換されている、アリール、フェニル、ヘテロアリール、シクロヘキシル又はヘテロシクリルを意味する。
【0020】
「薬学的に許容されうる」は、一般的に、安全で、非毒性であり、生物学的にも、それ以外にも望ましくないものでない、医薬組成物を製造するのに有用であることを意味し、ヒトの薬学的使用と同様に獣医学の薬学的使用に許容されうることを含む。
【0021】
化合物の「薬学的に許容されうる塩」は、本明細書で定義されたように薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩は、下記を含む:
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等などの無機酸により形成される酸付加塩;又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸,フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸等などの有機酸により形成される酸付加塩;あるいは
親化合物に、酸性プロトンが存在するときに、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンで置き換えられているか;又は有機塩基若しくは無機塩基と配位するかのいずれかの場合に形成される塩。許容されうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等を含む。許容されうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む。
【0022】
好ましい薬学的に許容されうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムより形成される塩である。
【0023】
薬学的に許容されうる塩に参照される全てのものは、同じ酸付加塩の、本明細書で定義される溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)を含むことを理解するべきである。
【0024】
用語「調節する」は、例えば、標的分子の機能応答に結合しかつ刺激するか、又は標的分子の機能応答を阻害することによって、標的分子の機能を変更する分子の能力を意味する。「モジュレーター」は、標的分子と相互作用しかつ調節する分子を意味する。相互作用は、非限定的に、本明細書で定義したアゴニスト、アンタゴニスト等を含む。
【0025】
「アゴニスト」は、標的分子の機能と相互作用しかつ該機能を強化するか又は標的分子の機能を増す分子を意味する。したがって、アゴニストは、部分アゴニスト及び完全アゴニストを含む。
【0026】
「アンタゴニスト」は、標的分子の機能を直接的に又は間接的に阻害するか又は抑制する分子を意味する。したがって、アンタゴニストは、部分アンタゴニスト及び完全アンタゴニストを含む。
【0027】
「疾患」及び「疾患状態」は、いかなる、疾患、状態、症状、障害又は徴候を意味する。
【0028】
「炎症性疾患」は、炎症性、アレルギー性、及び/又は、増殖性の過程を伴う、疾患状態又は徴候を意味し、下記を含み得る:
(i)肺疾患:いかなる起源の、慢性、閉塞性肺疾患、特に、気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD);成人呼吸困窮症候群(ARDS);気管支拡張症(bronchiectasis);さまざまな起源の気管支炎;すべての形態の制限的(restrictive)肺疾患、特に、中アレルギー性肺胞炎;すべての形態の肺浮腫、特に、毒性的肺浮腫;いかなる起源の間質性肺疾患のすべての形態、例えば、放射線肺炎;及びサルコイドーシス及び肉芽腫症(特に、ベック(Boeck)疾患)。
(ii)リウマチ性疾患又は自己免疫性疾患又は関節疾患:すべての形態のリウマチ性疾患、特に、リウマチ性関節炎、急性リウマチ熱、及びリウマチ性多発筋痛症;反応性関節炎;リウマチ性軟組織疾患;他の起源の炎症性軟組織疾患;退行性関節疾患(関節症)の関節炎症状;外傷性関節炎;あらゆる起源のコラゲナーゼ、例えば、全身性ろうそうエリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、スチル疾患及びフェルティー症候群;
(iii)アレルギー疾患:すべての形態のアレルギー反応、例えば、血管神経性浮腫、花粉症(hay fever)、昆虫咬合、薬によるアレルギー反応、血液誘導体、コントラスト剤等、アナフィラキシーショック(アナフィラキシー)、蕁麻疹、血管神経性浮腫及び接触皮膚炎;
(iv) 脈管炎疾患:汎結節性動脈炎(nodosa)、結節性多発動脈炎、側頭動脈炎、ウェーグナー肉芽腫症、巨細胞関節炎及び結節性紅斑;
(v)皮膚病学的な疾患:アトピー性皮膚炎、特に、児童において;乾癬;毛孔性(pilaris)紅色粃糠疹;さまざまな病毒によって発症した紅斑性疾患、例えば、光線、化学製品、火傷等;水疱性皮膚病;複雑性苔癬様の疾患;掻痒症(例えば、アレルギーの起源の);脂漏性皮膚炎;酒さ;尋常性天疱瘡;多形滲出性(exudativum)紅斑;亀頭炎;外陰炎;例えば、円形脱毛症で起こる脱毛;及び皮膚T細胞リンパ腫;
(vi)腎疾患:ネフローゼ症候群;及び全種類の腎炎、例えば、糸球体腎炎;
(vii)肝臓疾患:急性肝細胞崩壊;さまざまな起源の急性肝炎、例えば、ウイルス性、中毒性、薬剤性誘発;ならびに慢性的侵攻型及び/又は慢性的間欠性肝炎;
(viii)胃腸疾患:炎症性腸疾患、例えば、限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎;胃炎;消化性食道炎(逆流性食道炎(refluxoesophagitis));及び他の起源の胃腸炎、例えば、非熱帯性スプルー
(ix)肛門学的疾患:肛門の湿疹;亀裂;痔核;及び特発性直腸炎;
(x)眼病:アレルギの角膜炎、ブドウ膜炎又は虹彩炎;結膜炎;眼瞼炎;視神経神経炎;脈絡膜炎;及び交感性眼炎;
(xi)耳、鼻及び喉(ENT)部分の疾患:アレルギー性鼻炎又は花粉症;例えば、接触性湿疹、感染等に起因する外耳炎;及び中耳炎;
(xii)神経病学的疾患:脳浮腫、特に、腫瘍関連の脳浮腫;多発性硬化症;急性脳脊髄炎;髄膜炎;急性脊髄損傷;発作;及びさまざまな形態の発作、例えば点頭(nodding)痙攣;
(xiii)血液疾患:後天性溶血性貧血;及び特発性血小板減少症;
(xiv)腫瘍疾患:急性リンパ性白血病;悪性リンパ腫;リンパ肉芽腫(lymphogranulomatoses);リンパ肉腫;広範囲な転移(特に乳房で、気管支で、前立腺癌で);
(xv)内分泌疾患: 内分泌の眼障害; 内分泌眼窩前頭障害(orbitopathia);甲状腺中毒危機;甲状腺炎デ・ケルヴァン;橋本甲状腺炎;病気バセドウ;肉芽腫甲状腺炎;橋本病(struma lymphomatosa);及びグレーブス病;
(xvi)器官及び組織移植及び移植片対宿主病;
(xvii)ショックの重篤な状態、例えば、敗血性ショック、アナフィラキシーショック及び全身性炎症反応症候群(SIRS);
(xviii)補充療法:先天的な一次性副腎不全、例えば、副腎性器症候群;後天性一次性副腎不全、例えば、アジソン病、自己免疫副腎炎、ポスト感染症、腫瘍、転移等;先天的二次性副腎機能低下症、例えば、先天性下垂体前葉機能低下症;及び後天性二次性副腎機能低下症、例えば、ポスト感染症、腫瘍、転移等;
(xix)炎症性起源の疼痛、例えば、腰痛;ならびに
(xx)さまざまな他の疾患容態又は状態、I型糖尿病(インシュリン依存性糖尿病)、骨関節炎、ギラン−バレー症候群、経皮経管(transluminal)冠動脈形成後の再狭窄、アルツハイマー病、急性及び慢性的な疼痛、アテローム性動脈硬化症、再灌流損傷、骨吸収疾患、鬱血性心不全、心筋梗塞、熱障害、外傷の二次的多器官損傷、急性化膿性髄膜炎、壊死性全腸炎及び血液透析に関連する症候群、白血球フェレーシス及び顆粒球注入を含む。
【0029】
「対象」は哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、非限定的に、ヒト;チンパンジー及び他の類人猿及びサル類のような人類以外の霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタのような家畜;ウサギ、イヌ及びネコのような家庭動物;ラット、マウス及びモルモットのような齧歯類を含む実験動物などを含む、哺乳類のいかなるものを意味する。非哺乳類の例は、非限定的に、鳥等を含む。用語「対象」は特定の年齢又は性別を意味しない。
【0030】
疾患状態を「処置する」又は疾患状態の「処置」は下記を含む:
(i)疾患状態の予防、すなわち、疾患状態にさらされる又はかかりやすくなっているが、まだ、疾患状態の症状を経験又は表していない対象において、疾患状態の臨床症状を進展させないこと、
(ii)疾患状態の阻害、すなわち、疾患状態又はその臨床症状の進展を制止すること、あるいは、
(iii)疾患状態の緩和、すなわち、疾患状態又はその臨床症状を一時的又は永久的に後退させること。
【0031】
化学反応に言及する場合、用語「処理する」、「接触させる」及び「反応させる」は、2つ以上の試薬を、適切な条件下で加えるか又は混合して、表示される及び/又は所望の生成物を製造することを意味する。表示される及び/又は所望の生成物を製造する反応が、最初に加えられた2つの試薬の組み合わせから、直接的に結果として生じる必要はないこと、すなわち、混合物中に製造された1つ以上の中間体が存在してよく、最終的にそれが表示される及び/又は所望の生成物の形成につながることを理解すべきである。
【0032】
一つの実施態様では、本発明は、RがHである、式Iの化合物を提供する。別の実施態様では、本発明は、RがC−Cアルキルである、式Iの化合物を提供する。
【0033】
一つの実施態様では、本発明は、RがHである、式Iの化合物を提供する。
【0034】
一つの実施態様では、本発明は、Rが、CF、NO、場合により置換されている5員ヘテロアリール環、−CH−(OH)−C(=O)−O−R、−C(=O)−O−R又は−C−(R)=N−O−Rである(ここで、R、R、R及びRは、各々独立して、C−Cアルキルである)、式Iの化合物を提供する。別の実施態様では、本発明は、Rが、場合により置換されている5員ヘテロアリール環である、式Iの化合物を提供する。
【0035】
式Iの化合物は、下記スキームIの方法により製造することができる:
【0036】
【化3】

【0037】
2−トリフルオロメチル−フェニルアセトニトリルを、1,2−ジブロモプロパンと混合して、シクロブタンカルボニトリル化合物を生成し、次に、これをトルエン中の水素化ジイソブチルアルミニウムと反応させて、結果として、式(II)のシクロブタンカルバルデヒド中間体を得た。次に、この中間体をジエトキシ−ホスホリル−エトキシ−酢酸エチルエステルと混合し、続いて、2つの加水分解工程を経て、式(III)の2−オキソ−3−[1−2(トリフルオロメチル−フェニル)−シクロ−ブチル−プロピオン酸を生成した。塩化チオニル及びジメチルアセトアミド存在下で、式(IV)のフェニルアミンと反応させて、結果として、式(V)のプロピオンアミドの中間体を得た。トリメチルシラン−トリフルオロメタンと更に反応させて、本発明の式(I)の化合物を得る。
【0038】
一般的に、本出願書に使用される命名法は、IUPAC系統的命名法の創出に関するBeilstein InstituteコンピュータシステムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づく。
【0039】
本明細書中に示される化学構造は、ISIS(登録商標)v.2.2を使用して作成された。本明細書中の構造における、炭素、酸素又は窒素原子に現れるいかなる空原子価(open valency)は、水素の存在を示す。
【0040】
本発明は、少なくとも1個の本発明の化合物、あるいはその個別の異性体、異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物又は薬学的に許容されうるその塩若しくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容されうる担体および場合により、他の治療的及び/又は予防的成分と一緒に含む医薬組成物を含む。
【0041】
一般的に、本発明の化合物は、同様の効用をもつ薬剤の許容されている、いかなる投与方法によって、治療上有効な量で、投与される。適切な用量範囲は、処置される疾患の重篤度、対象の年齢及び相対的な健康状態、使用する化合物の効力、投与経路及び形態、投与が向けられている適応症並びに担当する医師の選択及び経験のような数多くの要因に依存し、一般的には、1日当たり1〜500mg、1日当たり1〜100mg、1日当たり1〜30mg等である。そのような疾患を処置する当該技術における通常の知識を有する者は、必要以上に試験を行うことなく、公知の用量範囲法及び本出願の開示により、ある特定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を確定することが可能となる。
【0042】
一般的に、本発明の化合物は、経口(口腔及び舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所、経肺、経膣若しくは非経口(筋肉内、動脈内、脊髄内、皮下及び静脈内を含む)投与に適切なものを含む医薬製剤として又は吸入若しくは通気による投与に適切な形態で投与することができる。好ましい投与方法は、一般的に、苦痛の程度に従って調整できる、都合のよい1日用量レジメンを使用する経口である。
【0043】
本発明の化合物の1個又は複数を、従来の佐薬、担体又は希釈剤の1種以上と一緒に、医薬組成物及び単位投薬の形態にすることができる。医薬組成物及び単位投薬形態は、従来の割合の従来の成分を、追加の活性化合物若しくは有効成分と共に又はなしで、含むことができ、単位投薬形態は、使用される1日用量の意図される範囲に相応する、有効成分のいかなる適切な有効量を含むことができる。医薬組成物は、経口的使用のため、錠剤若しくは充填カプセル剤、半固形剤、粉末剤、持続性放出製剤のような固体として、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤若しくは充填カプセル剤のような液体として;又は直腸内若しくは膣内投与のため、坐剤の形態で;又は非経口的使用のため、注射用滅菌液剤の形態で使用することができる。したがって、活性成分を1錠当たり約1mg、より広くは約0.01〜約100mg含有する製剤が、適切で代表的な単位投薬形態である。
【0044】
本発明の化合物を、多種多様の経口投与投薬形態で配合することができる。医薬組成物及び投薬形態は、活性成分として、1個若しくは複数の本発明の化合物、又は薬学的に許容されうるその塩を含むことができる。薬学的に許容されうる担体は、固体又は液体のいずれかであってよい。固体形態の製剤は、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、風味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩解剤又はカプセル化材料としても作用することができる1種以上の物質であってよい。粉末剤では、担体は、一般に、微粉化した活性成分との混合物である、微粉化した固体である。錠剤では、活性成分は、一般的に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及び大きさに成形される。粉末剤及び錠剤は、好ましくは、活性化合物を約1〜約70%含有する。適切な担体は、非限定的に、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点蝋、ココアバター等を含む。用語「製剤」は、担体を有するか又は有しない活性成分が、それと関連する担体により周囲を囲まれているカプセル剤を提供する、担体としてのカプセル化物質を有する活性化合物の配合物を含むことを意図される。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、粉末剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与に適切な固体形態であってよい。
【0045】
経口投与に適切な他の形態は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤のような液体形態の製剤、又は使用の直前に液体形態の製剤に変換されることが意図されている固体形態の製剤を含む。乳剤は、溶液、例えば、プロピレングリコール水溶液で製造されることができるか、又は、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレアート若しくはアカシアのような乳化剤を含有することができる。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な、着色剤、風味剤、安定剤及び増粘剤を加えることにより製造できる。水性懸濁剤は、微粉化した活性成分を、天然又は合成ガム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び他の周知の懸濁剤のような、粘性物質と共に水に分散することにより製造できる。固体形態の製剤は、液剤、懸濁剤及び乳剤を含み、活性成分に加えて、着色剤、風味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有することができる。
【0046】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射(bolus injection)又は連続注入による)のために配合することができ、アンプル剤、プレ充填注射器(pre-filled syringes)、小型注入容器又添加される防腐剤有する多用量容器に、単位用量形態で存在できる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の、懸濁剤、液剤又は乳剤、例えば、ポリエチレングリコール水溶液における液剤のような形態をとることができる。油性又は非水性の、担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)及び注射用有機エステル類(例えば、エチルオレアート)を含み、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤及び/又は分散助剤のような配合剤を含有してよい。あるいは、活性成分は、滅菌固体の無菌分離によるか、又は適切なビヒクル、例えば、滅菌し、発熱物質を含まない水を用いて、使用前の構成のための溶液から凍結乾燥することにより得られる粉末形態であってよい。
【0047】
本発明の化合物を、軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として、又は経皮パッチ剤として表皮に局所投与するために製剤化することができる。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加え、水性又は油性基剤を用いて製剤化することができる。ローション剤は、水性又は油性基剤を用いて製剤化することができ、また一般的に、1種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤又は着色剤を含有する。口腔内の局所投与に適切な製剤は、風味付けした基剤、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性剤を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤中に活性成分を含むパステル剤;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤を含む。
【0048】
本発明の化合物は坐剤として投与するために製剤化することができる。脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物のような低融点ロウを、最初に溶融して、活性成分を、例えば撹拌により均質に分散する。次に、均質溶融混合物を、都合のよい大きさの成形型に注ぎ、冷却させ、凝固させる。
【0049】
本発明の化合物は膣内投与用に製剤化することができる。ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーは、活性成分に加えて、当該技術で、適切であることが既知である担体を含有する。
【0050】
本発明の化合物は鼻腔内投与用に製剤化することができる。液剤又は懸濁剤を、従来の方法、例えば、滴瓶、ピペット又はスプレーを用いて、直接鼻腔に適用する。製剤は単回投与又は多回投与形態で提供されうる。後者の滴瓶又はピペットの場合、液剤又は懸濁剤の適切で所定の容量を患者が投与することで、それを達成することができる。スプレーの場合、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いて達成することができる。
【0051】
本発明の化合物は、特に、鼻内投与を含む、エアゾール投与、特に、気道へのものに製剤化することができる。化合物は、一般的に、例えばほぼ5μ以下のオーダーの小さい粒径を有する。そのような粒径は、当該技術で既知の方法、例えば、微粉砕により得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素または他の適切なガスのような適切な噴射剤を用いる加圧パックで提供される。エアゾールは、また、レシチンのような界面活性剤を都合よく含有することができる。薬剤の用量は、計量弁により制御されうる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末の形態で、例えば、乳糖、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリジン(PVP)のような適切な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供されうる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又はブリスターパックのような単位用量形態で存在してよく、これから、粉末剤が吸入器により投与されうる。
【0052】
所望であれば、製剤は、活性成分の、持続的又は制御的放出投与に適用される、腸溶コーティング用いて製造できる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬剤送達装置に配合できる。これらの送達系は、化合物の持続放出が必要であり、患者の処置レジメンに対するコンプライアンスが重要である場合に有利である。経皮送達系における化合物は、多くの場合、皮膚付着固体支持体に結合されている。興味の化合物は、また、浸透向上剤、例えば、アゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることができる。持続的放出送達系は、手術又は注入により皮下層に皮下的に挿入される。皮下インプラントは、脂質可溶膜、例えば、シリコーンゴム又は生物分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸で化合物を包み込む(encapsulate)。
【0053】
医薬製剤は、好ましくは、単位投薬形態である。そのような形態では、製剤は、活性成分の適切な量を含有する、単位用量に細分化されている。単位投薬形態は、パッケージ製剤であることができ、そのパッケージは、パケット錠剤、カプセル剤及びバイアル又はアンプル中の粉末剤のような製剤の別個の分量を含有する。また、単位投薬形態は、それ自体、カプセル剤、錠剤、カシェ剤又はトローチ剤であることができるか、又はパッケージ形態において、これらのうちのいずれかの適切な数であることができる。
【0054】
他の適切な医薬担体及びその製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬製剤は、実施例6〜12に記載されている。
【実施例】
【0055】
下記の製造例及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるために与えられる。これらは、本発明の範囲を制限すると考えられるべきではなく、単に、本発明の例示及び代表例として考えられるべきである。実施例中、略語RTは室温を意味している。
【0056】
実施例1:3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロ−メチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド
前駆物質
1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルボニトリル
エーテル36ml中の、(2−トリフルオロメチル−フェニル)−アセトニトリル12.6g及び1,2−ジブロモ−プロパン7.6mlの溶液を、DMSO 85ml中の水素化ナトリウム3.62gの懸濁液に、0℃で滴下漏斗を通じて、ゆっくり加えた。添加後、氷−水浴をゆっくりと室温になるまで温ため、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応物をイソプロピル及びHOで注意深くクエンチした。懸濁液は明澄になった。有機層を分離し、水層をエーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を合わせ、乾燥し、真空中で蒸発することにより濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン 2%〜4%)により精製して、生成物8.5gを白色の固体として得た。
【0057】
【表1】

【0058】
1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルバルデヒド
水素化ジイソブチルアルミニウム50.7mlを、トルエン85ml中の1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルボニトリル8.5gの溶液に2時間かけて0℃で滴下した。添加後、氷−水浴をゆっくりと室温になるまで温ため、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を氷−水中の5%硫酸200mlに注ぎ、10分間撹拌した。混合物をエーテルで4回抽出した。合わせたエーテル抽出物を乾燥し、真空中で蒸発することにより濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン 5%)により精製して、生成物6.2gを得た。
【0059】
【表2】

【0060】
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸エチルエステル
n−ブチルリチウム4.4ml(11mmol)を、テトラヒドロフラン25ml中のジイソプロピルアミン1.28ml(9.2mmol)の溶液に0℃で滴下し、0℃で更に30分撹拌した。次に、ホスホナート1.97g(7.4mmol)、(ジエトキシ−ホスホリル)−エトキシ−酢酸エチルエステルを滴下し、0℃で更に20分間撹拌した。テトラヒドロフラン5ml中の1−(2−トリ−フルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルバルデヒド1.4g(6.1mmol)を0℃で滴下した。氷−水浴をゆっくりと室温になるまで温ため、反応混合物を室温で週末にかけて撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し、真空で蒸発することにより濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン 3%)により精製して、生成物0.61gを得た。
【0061】
【表3】


* シンとアンチの混合物、比率は約2:1である。
【0062】
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸エチルエステル4.6g、水酸化ナトリウム4.3g、エタノール100ml及び水50ml(エタノール:水 2:1)を混合し、室温で2時間撹拌した。溶媒を真空中で蒸発し、残留物を水と酢酸エチルに分配し、水溶液を1N 塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し、真空で蒸発することにより濃縮した。生成物4.3gを得て、更に精製しないで、次の反応に使用した。
【0063】
【表4】

【0064】
2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸4.6gを、1M 硫酸100ml及び濃酢酸15ml中で、100℃で一晩撹拌した。水を加え、混合物を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル溶液を分離し、乾燥し、真空で蒸発することにより濃縮した。生成物4.1gを褐色の油状物として得た。
【0065】
【表5】

【0066】
4−オキサゾール−2−イル−フェニルアミン
エタノール100ml及び酢酸エチル50ml中の1−(2−オキサゾール)−4−ニトロ−ベンゼン1.268gを、水素で充填したバルーンで、パラジウム/炭素(10%)存在下、常圧で還元した。TLCが示すように、水素化を一晩実施した後、出発物質は残らなかった。触媒を濾別し、濾液を真空で蒸発することにより濃縮して、生成物1.017gをオフホワイトの粉末として得た。
【0067】
【表6】

【0068】
N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン−アミド
塩化チオニル0.052mlを、ジメチルアセトアミド2ml中の2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロ−メチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸0.1gの溶液に−5℃で加え、−5℃で30分間撹拌した。次に、4−オキサゾール−2−イル−フェニルアミン56mgを、固体の状態で加え、室温で1時間撹拌した。炭酸カリウムを加え、室温で一晩撹拌した。反応物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた酢酸エチル抽出液を水で2回洗浄し、乾燥し、蒸発により濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン 10%〜20%)により精製して、生成物63mgを得た。
【0069】
【表7】

【0070】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド
【0071】
【化4】

【0072】
ジメチルホルムアミド2ml中のN−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド63mg(0.15mmol)を、炭酸セシウム48.7mg(0.15mmol)及びトリメチルシラン−トリフルオロ−メタン(CF・TMS)0.14ml(0.88mmol)と0℃で混合した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。テトラヒドロフラン中の1M テトラブチルアンモニウムフルオリド0.1mlを加え、室温で週末にかけて撹拌した。反応物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた酢酸エチル抽出液を水で2回洗浄し、乾燥し、蒸発により濃縮した。残留物を分取TLC(EtOAc−ヘキサン 30%)により精製して、生成物3.3mgを得た。
MS(ei):M(+)+H=499、M−H=497
【0073】
実施例2:3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(3−オキサゾール−5−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロ−メチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド
【0074】
【化5】


これを、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミドと同様にして、2−オキソ−3−[1−(2−トリ−フルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸及び3−オキサゾール−5−イル−フェニルアミンの使用により得た。
MS(ei):M(+)+1=429、M(+)−1=427
【0075】
実施例3:3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−[4−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル−)−フェニル]−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド
【0076】
【化6】


これを、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミドと同様にして、2−オキソ−3−[1−(2−トリ−フルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸及び4−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−フェニルアミンを使用して得た。
MS(ei):M(+)+H=514、M−1=512
【0077】
実施例4:ヒドロキシ−(4−{3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオニルアミノ}−フェニル)−酢酸エチルエステル
【0078】
【化7】


これを、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミドと同様にして、2−オキソ−3−[1−(2−トリ−フルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸及び(4−アミノ−フェニル)−ヒドロキシ−酢酸エチルエステルを使用して得た。
MS(ei):M(+)+H=534
【0079】
実施例5:処方
種々の経路で送達される医薬製剤が下記の表で示されるように配合される。表中で使用される「活性成分」又は「活性化合物」は、1つ以上の式Iの化合物を意味する。
【0080】
【表8】

【0081】
成分を混合し、それぞれ約100mgを含有するカプセルに調剤する。1カプセルが1日用量のほぼ全てとなる。
【0082】
【表9】

【0083】
成分を合わせ、メタノールのような溶媒を使用して粒状にする。次に、配合物を乾燥させ、適切な錠剤成形機を用いて、錠剤(活性化合物約20mg含有)を形成する。
【0084】
【表10】

【0085】
成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【0086】
【表11】

【0087】
活性成分を注射用の水の一部に溶解する。次に、塩化ナトリウムの十分な量を撹拌しながら加えて、溶液を等張にする。注射用の水の残りで溶液の重量にして、0.2μ膜フィルタを通して濾過し、滅菌条件下で包装する。
【0088】
【表12】

【0089】
成分を一緒に溶融し、蒸気浴で混合し、全重量2.5gを含有する型に注ぐ。
【0090】
【表13】

【0091】
水以外の全ての成分を合わせ、撹拌しながら、約60℃に加熱する。次に、十分な量の水を激しく撹拌しながら、約60℃で加え、成分を乳化し、次に、約100gにするのに十分な量の水を加える。
【0092】
鼻腔スプレー用処方
活性化合物を約0.025〜0.5%含有する、いくつかの水性懸濁液を、鼻腔スプレー用処方として製造する。配合物は、場合により、例えば、微晶質セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、デキストロース等のような不活性成分を含む。塩酸または水酸化ナトリウムを加えてpHを調整してよい。鼻腔スプレー配合物は、典型的には、1回の作動で配合物を約50〜1000μl送達する鼻腔スプレー計量ポンプを介して、送達されうる。一般的な投与スケジュールは、4〜12時間毎に、2〜4回のスプレーである。
【0093】
実施例6: グルココルチコイドレセプター結合アッセイ
グルココルチコイドレセプターについてのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの親和性を、トリチウム標識デキサメタゾンと競合するアンタゴニストの能力によって、競合的結合において決定した。
【0094】
すべてのアッセイ工程は、96ウエルプレートの氷上で実施された。結合緩衝液は、10mM リン酸カリウム(pH7.4)、20mM NaMo、100μM EDTA、2%DMSO、5mM DTTを含有した。ヒト組換え精製グルココルチコイドレセプターを1nMで用いた。試験した化合物は、2%DMSO終濃度まで行った。非特異的結合条件は、1μMデキサメタゾンであった。競合アッセイに用いるラジオリガンドは、2nM H−デキサメタゾン(83 Ci/mmol ストック液)であった。緩衝液、化合物又はビーヒクル、GR及びラジオリガンドを、4℃で一晩インキュベートした。イキュベーションの後、Unifilter GF/B 96−ウエルフィルタープレートを0.5%PEIで処理した。サンプルをフィルタープレートに細胞採取機で移した。フィルタープレートを、50mM Tris(pH7.5)及び5mM EDTA洗浄緩衝液で5回洗浄した。サンプルを65℃で約1時間乾燥した。シンチレーション液をフィルタープレートに50μL/ウエルで加え、H cpmをTopCountシンチレーション計数計で測定した。本発明からのいくつかの化合物の結合アッセイの結果を、表1に示す。
【0095】
【表14】

【0096】
実施例7: 転写抑制活性:LPS刺激ヒト末梢血単核細胞におけるサイトカイン産生の阻害
【0097】
血液を、ヘパリンで凝血防止された管に静脈穿刺によって、健常なヒトボランティアから採集した。血液をダルベッコー・リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1:1に希釈し、遠心分離管50ml中で、Histopaque−1.077に重層した。管を800x gで25分間、室温にて遠心分離した。血漿/Histopaque界面の単核細胞を収集し、PBSで3回洗浄し、10%ウシ胎仔血清(FBS)および100単位/ml ペニシリン/100μg/ml ストレプトマイシンを補充した、RPMI 1640培地中の1×10細胞/mL中で再懸濁した。この細胞懸濁液のアリコート(250μl)を、滅菌ポリプロピレンプレート中で、種々の希釈度の化合物(最終DMSO濃度は0.5%である)で37℃にて、30分間、5%COでプリインキュベートした。LPSを1ng/mlまで加え、プレートを更に3時間インキュベーターに戻した。培地のアリコートを除去し、−80℃で凍結させた。これらのサンプル中のサイトカインレベル(TNFα、IL6及びIL8)を、製造業者の指示書に従って、BD-Pharmingen OptEIAキットを使用して測定した。IC50は、LPS 1ng/mlに応答して、サイトカイン生産を、本発明の化合物なしの対照ウエルのそれの50%まで減少させる化合物の濃度として定義される。
【0098】
実施例8: トランス活性化活性:ラット肝細胞におけるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性
H4IIEラットヘパトーマ細胞を、10%FBSで補充したcDMEM中にプレートし(24ウエルプレート中4×10細胞/ml)、37℃、5%COで24時間インキュベートした。種々の希釈度(最終DMSO濃度は0.5%)の化合物を加え、プレートを更に24時間インキュベートした。培地を除去し、細胞単層をPBSで1回注意深く洗浄し、細胞溶解緩衝液0.2ml(10mM Tris(pH7.5)、10mM EDTA、025M ショ糖)を加えた。プレートを−70℃で保存した。細胞を3回の凍結及び解凍により溶解した;可溶化液を5分間遠心分離することにより清澄化した。p−ヒドロキシベンズアルデヒド 40μl/ウエルを標準として、緩衝制御又は可溶化液のアリコートを、清澄な96ウエルプレートに加えた。TAT緩衝液 20μl/ウエル(50mM KHPO(pH7.6)、5mg/ml BSA、1mM EDTA、0.1mM DTT)を加え、続いて、アッセイ混合物 140μl/ウエル(8.2mM チロシン溶液、0.125M KHPO、20mM α−ケトグルタル酸、0.3mM ピリドキサール−5−リン酸)を加えた。反応物を37℃で15分間インキュベートし、7N KOH 20μl/ウエルを加えて、反応を終了させ、続いて、37℃にて、暗所で30分間インキュベートした。生成物の形成を340nmでの吸光度でモニターし、p-ヒドロキシベンズアルデヒド標準曲線から算出して、nmoles/分/mgタンパク質として表した。各々の化合物に関するEC50は、その化合物に関する最大TAT誘導の50%をもたらす化合物の濃度として定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、
は、H又はC−Cアルキルであり、
及びRは、各々独立して、H、CF、NO、場合により置換される5員ヘテロアリール環であるか、又は−CH−(OH)−C(=O)−O−R、−C(=O)−O−R及び−C−(R)=N−O−R(これらの式中、R、R、R及びRは、各々独立して、C−Cアルキルである)からなる群より選択される]
で示される化合物;ならびに薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
がHであり、Rが、場合により置換される、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル及びテトラゾリルからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(3−オキサゾール−5−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド;
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−[4−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−フェニル]−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド;
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−イソオキサゾール−5−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド;
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−(4−オキサゾール−2−イル−フェニル)−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド;
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−[3−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−フェニル]−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド;
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−[4−(エトキシカルボニル−ヒドロキシ−メチル)−フェニル]−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド;及び
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−N−メチル−N−[3−(1−メトキシイミノ−エチル)−4−メトキシカルボニル−フェニル]−2−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチルメチル]−プロピオンアミド
からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
請求項1記載の式Iの化合物及び薬学的に許容されるその塩を、それを必要としている対象に投与することを含む、グルココルチコイドレセプターの調節を介して、炎症性疾患を処置する方法。
【請求項5】
請求項1記載の式Iの化合物及び薬学的に許容されるその塩の有効量、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
グルココルチコイドレセプターの調節を介して、炎症性疾患を処置するための医薬の製造のための、請求項1記載の式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項7】
本明細書に記載するとおりの発明。

【公表番号】特表2009−518352(P2009−518352A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543777(P2008−543777)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069041
【国際公開番号】WO2007/065821
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】