説明

抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤、並びに皮膚化粧料

【課題】ツユクサの抽出物を含有する抗老化剤、スリミング剤、保湿剤、及び皮膚化粧料の提供。
【解決手段】ツユクサの抽出物を含有し、抗老化作用を有する抗老化剤、スリミング作用を有するスリミング剤、保湿作用を有する保湿剤である。該抗老化作用が、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用から選択される少なくともいずれかである態様、該スリミング作用が、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用である態様などが好ましい。前記ツユクサ抽出物を有効成分として含有する皮膚化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツユクサの抽出物を含有する抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤、並びに皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の真皮及び表皮は、表皮細胞、線維芽細胞、及びこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン等の細胞外マトリックスによって構成されている。若い皮膚では、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことによって、水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があって、みずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線、著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響を受けたり、加齢が進むと、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンの産生量が減少すると共に、架橋による弾性低下を引き起こす。また、エラスチンは、分解乃至変質を起こす。更に、外的因子の影響や加齢に伴う線維芽細胞の増殖率低下も、コラーゲンの産生量の減少、天然保湿因子であるヒアルロン酸の産生量の低下を引き起こす。その結果、皮膚の弾力性や保湿機能は低下し、角質は異常剥離を引き起こし、肌は張りや艶を失い、荒れ、しわ、くすみ等の老化症状を呈するようになる。
【0003】
このような皮膚の老化に伴う変化、即ち、しわ、くすみ、きめの消失、及び弾力性の低下等には、コラーゲンやヒアルロン酸の減少、変性が関与している。近年、紫外線等がこの変化を誘導する因子とされており、皮膚のしわ形成等の大きな要因となると考えられる。したがって、コラーゲン産生やヒアルロン酸産生の促進は、皮膚の老化を防止及び改善する上で重要である。そこで、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及び線維芽細胞増殖促進作用を有する物質を天然物から抽出することが試みられている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び非特許文献1参照)。
【0004】
また、肥満の防止には、脂肪の代謝促進に関与しているサイクリックAMPを分解する酵素であるサイクリックAMPホスホジエステラーゼの作用を抑制するのが有効であると考えられる。実際、サイクリックAMPホスホジエステラーゼの作用を抑えると、細胞内サイクリックAMPの濃度が上昇して脂質代謝が活発になり、肥満が解消されることが知られている。
そこで、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する物質を天然物から抽出することが試みられており、例えば、藤茶抽出物(特許文献3参照)、カエデ属植物の抽出物(特許文献4参照)、などが報告されている。
【0005】
しかしながら、安全性及び生産性に優れ、日常的に使用可能であり、かつ安価でありながら、優れたコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用、角化細胞増殖作用、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、及び保湿作用を有する天然系の各種製剤に対する需要者の要望は極めて強く、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−226323号公報
【特許文献2】特開2003−137801号公報
【特許文献3】特開2003−12532号公報
【特許文献4】特開2003−113068号公報
【非特許文献1】「フレグランスジャーナル」 1992年、No.11,p43
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第1に、優れたコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用の少なくともいずれかを有し、皮膚の老化を予防及び改善し得る抗老化剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有し、肥満を防止できるスリミング剤、及び優れた保湿作用を有する保湿剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第2に、本発明の前記抗老化剤、前記スリミング剤、及び前記保湿剤の少なくともいずれかを有効成分として配合してなり、皮膚のシワや弾力の低下の防止及び改善、皮膚の乾燥による肌荒れの防止、更には肥満の防止を図れる皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ツユクサの抽出物が、優れたコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用の少なくともいずれかを有し、皮膚の老化を予防及び改善し得る抗老化剤として有用であり、また、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有し、肥満を防止できるスリミング剤としても有用であり、優れた保湿作用を有する保湿剤としても有用であることを、それぞれ知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ツユクサの抽出物を含有することを特徴とする抗老化剤である。
<2> コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用から選択される少なくともいずれかを有する前記<1>に記載の抗老化剤である。
<3> ツユクサの抽出物を含有することを特徴とするスリミング剤である。
<4> サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する前記<3>に記載のスリミング剤である。
<5> ツユクサの抽出物を含有することを特徴とする保湿剤である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のツユクサ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚化粧料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗老化剤によると、優れたコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用の少なくともいずれかを通じて、皮膚のシワや弾力の低下の防止及び改善することができる。
本発明のスリミング剤によると、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を通じて、脂質代謝が活発になり、肥満を防止することができる。
本発明の保湿剤によると、優れた保湿作用通じて、肌荒れ、皮膚の老化及びこれらに伴って生じる各種皮膚疾患を予防及び改善することができる。
また、本発明の抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤は、使用感と安全性に優れているので皮膚化粧料に配合するのに好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤)
本発明の抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤は、ツユクサの抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記抗老化剤は、抗老化作用として、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用から選択される少なくともいずれかを有していることが好ましい。
前記スリミング剤は、スリミング作用として、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有していることが好ましい。
【0012】
前記ツユクサ(学名:Commelina communis)は、ツユクサ科ツユクサ属に属する1年草である。このツユクサは、アオバナ、ボウシバナ、ツキクサ、カマッカとも呼ばれ、北海道から九州、沖縄に広く分布し、これらの地域から容易に入手可能である。
前記ツユクサは、民間的に、流行性感冒、咽頭炎、浮腫、腸炎、尿路感染症、細菌性下痢に用いられており、化膿した腫れ物等の外用などに使われることはあるが、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用、角化細胞増殖作用、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、及び保湿作用を有し、抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤として有効であることは、これまで全く知られておらず、これらのことは、本発明者らによる新知見である。
【0013】
前記ツユクサの抽出物の抗老化作用、スリミング作用、及び保湿作用を有する物質の詳細については不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている方法により容易に得ることができる。なお、前記ツユクサの抽出物には、ツユクサの抽出液、該抽出液の希釈液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0014】
前記ツユクサの抽出原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、根部、花部などの構成部位を用いることができ、これらの中でも、地上部(葉部、茎部、花部)が特に好ましい。
【0015】
前記抽出原料であるツユクサは、乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。なお、前記ツユクサは、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。なお、脱脂等の前処理を行うことにより、ツユクサの極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0016】
前記抽出に用いる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0017】
前記親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。
なお、前記水と親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1〜40質量部添加することが好ましい。多価アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部添加することが好ましい。
【0018】
本発明において、抽出原料であるツユクサから抗老化作用、スリミング作用、及び保湿作用を有する物質を抽出するにあたって特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
【0019】
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、抽出原料としてのツユクサの地上部を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分間〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物が得られる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明の抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤として用いることができる。
【0020】
得られるツユクサの抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0021】
なお、得られたツユクサの抽出液はそのままでも抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、前記ツユクサは特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0022】
本発明の抗老化剤は、優れたコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用の少なくともいずれかを通じて、皮膚のシワや弾力の低下の防止及び改善に有用であると共に、高い安全性を有している。
本発明のスリミング剤は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を通じて、脂質代謝が活発になり、肥満を防止することができる。
本発明の保湿剤は、優れた保湿作用を通じて、肌荒れ、皮膚の老化及びこれらに伴って生じる各種皮膚疾患を予防及び改善することができる。
したがって、本発明の抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤は、上述した抗老化作用、スリミング作用、及び保湿作用を有し、使用感と安全性に優れているので、特に以下の本発明の皮膚化粧料に配合するのに好適なものである。
【0023】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、本発明の前記抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤の少なくともいずれかを有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
【0024】
ここで、前記皮膚化粧料の用途としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼント、などが挙げられる。
【0025】
前記抗老化剤、スリミング剤、又は保湿剤の前記皮膚化粧料全体に対する配合量は、皮膚化粧料の種類や抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、前記ツユクサの抽出物に換算して0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。
【0026】
前記皮膚化粧料は、更に必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、その皮膚化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他成分を使用することができる。
前記その他の成分としては、抗老化作用、スリミング作用及び保湿作用の妨げにならない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した成分が挙げられ、例えば、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、抗酸化剤、活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、などが挙げられる。これらの成分は、前記ツユクサ抽出物と共に併用した場合、相乗的に作用して、通常期待される以上の優れた作用効果をもたらすことがある。
【0027】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚に使用した場合に高い安全性を有し、優れたコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用、角化細胞増殖作用、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用、及び保湿作用の少なくともいずれかを効果的に達成することができ、皮膚のシワや弾力の低下の防止及び改善、乾燥による肌荒れ防止、肥満の防止に有用である。
【0028】
なお、本発明の抗老化剤、スリミング剤、保湿剤、及び皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
(製造例1)
−ツユクサの水抽出物の調製−
ツユクサの地上部の乾燥物を細切りしたもの200gに水2Lを加え、還流抽出器で80℃、2時間加熱抽出し、熱時濾過した。残渣について、更に同様の抽出処理を行った。得られた2つの抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、乾燥してツユクサの水抽出物を得た。抽出物の収率は表1に示すとおりであった。
【0031】
(製造例2)
−ツユクサの50%エタノール抽出物の調製−
ツユクサの地上部の乾燥物を細切りしたもの200gに50%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)2Lを加え、還流抽出器で80℃、2時間加熱抽出し、熱時濾過した。残渣について、更に同様の抽出処理を行った。得られた2つの抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、乾燥して、ツユクサの50%エタノール抽出物を得た。抽出物の収率は表1に示すとおりであった。
【0032】
(製造例3)
−ツユクサの80%エタノール抽出物の調製−
ツユクサの地上部の乾燥物を細切りしたもの200gに80%エタノール(水とエタノールとの質量比1:4)2Lを加え、還流抽出器で80℃、2時間加熱抽出し、熱時濾過した。残渣について、更に同様の抽出処理を行った。得られた2つの抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、乾燥して、ツユクサの80%エタノール抽出物を得た。抽出物の収率は表1に示すとおりであった。
【0033】
【表1】

【0034】
(実施例1)
−コラーゲン産生促進作用試験−
被験試料として、製造例1〜3のツユクサの抽出物を用い、以下のようにして、コラーゲン産生促進作用を試験した。
ヒト正常線維芽細胞(Detroit 551)を、10質量%FBS、1質量%NEAA(non−essential amino acid)、及び1mMピルビン酸ナトリウム含有MEM(minimam essential medium)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2×10cells/mlの濃度に上記培地で希釈した後、96wellマイクロプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.5質量%FBS含有MEMに溶解した各被験試料を各wellに100μL添加し、3日間培養した。培養後、各wellの培地中のコラーゲン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記数式1によりコラーゲン産生促進率(%)を求めた。試料濃度が100μg/mLのときの結果を表2に示す。
【0035】
<数式1>
コラーゲン産生促進率(%)=(A/B)×100
ただし、前記数式1中、Aは被験試料添加時のコラーゲン量を表す。Bは被験試料無添加時のコラーゲン量を表す。
【0036】
【表2】

表2の結果から、製造例1〜3のツユクサ抽出物がコラーゲン産生促進作用を有することが確認できた。
【0037】
(実施例2)
−ヒアルロン酸産生促進作用試験−
被験試料として、製造例1〜3のツユクサ抽出物を用い、以下のようにして、ヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10質量%FBS含有α−MEM(minimam essential medium)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.2×10cells/mLの濃度に5%FBS含有α−MEMで希釈した後、96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、0.5%FBS含有α−MEMに溶解した各被験試料を各wellに100μL添加し、3日間培養した。培養後、各wellの培地中のヒアルロン酸量を間接的ELISA法により測定した。測定結果から、下記数式2によりヒアルロン酸産生促進作用(%)を求めた。試料濃度が25μg/mLのときの結果を表3に示す。
<数式2>
ヒアルロン酸合成促進率(%)=(A/B)×100
ただし、前記数式2中、Aは、被験試料添加時のヒアルロン酸量を表す。Bは、被験試料無添加時のヒアルロン酸量を表す。
【0038】
【表3】

表2の結果から、製造例1〜3のツユクサ抽出物がヒアルロン酸合成促進作用を有することが確認できた。
【0039】
(実施例3)
−線維芽細胞増殖促進作用試験−
被験試料として、製造例1〜3のツユクサ抽出物を用い、以下のようにして、線維芽細胞増殖促進作用を試験した。
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10質量%FBS含有α−MEM(minimam essential medium)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を7.0×10cells/mLの濃度に5質量%FBS含有α−MEMで希釈した後、96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、5質量%FBS含有α−MEMで溶解した各被験試料を各wellに100μL添加し、3日間培養した。
線維芽細胞増殖作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。即ち、培養終了後、各wellから100μLずつ培地を抜き、終濃度5mg/mLでPBS(−)に溶解したMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium Bromide)を各wellに20μLずつ添加した。4.5時間培養した後に、10質量%SDSを溶解した0.01mol/L塩酸溶液を各wellに100μLずつ添加し、一晩培養した後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様の方法で空試験を行い補正した。
これらの結果から、下記数式3により、線維芽細胞増殖促進率を求めた。試料濃度が400μg/mLのときの結果を表4に示す。
【0040】
<数式3>
線維芽細胞増殖促進率(%)=〔(St−Sb)/(Ct−Cb)〕×100
ただし、前記数式3中、Stは被験試料を添加した細胞での吸光度を表す。Sbは被験試料を添加した空試験の吸光度を表す。Ctは被験試料を添加しない細胞での吸光度を表す。Cbは被験試料を添加しない空試験の吸光度を表す。
【0041】
【表4】

表4の結果から、製造例1〜3のツユクサ抽出物が線維芽細胞増殖促進作用を有することが確認できた。
【0042】
(実施例4)
−角化細胞増殖促進作用試験−
被験試料として、製造例1〜3のツユクサ抽出物を用い、以下のようにして、角化細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト新生児包皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.5×10cells/mlの濃度にEpiLife−KG2で希釈した後、コラーゲンコートした96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、EpiLife−KG2で溶解した各被験試料を各wellに100μL添加し、3日間培養した。
角化細胞増殖作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。即ち、培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLでPBS(−)に溶解したMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium Bromide)を各wellに100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様の方法で空試験を行い補正した。
これらの結果から、下記数式4により、角化細胞増殖促進率を求めた。試料溶液が濃度3.125μg/mLのときの結果を表5に示す。
【0043】
<数式4>
角化細胞増殖促進率(%)=(St/Ct)×100
ただし、前記数式4中、Stは被験試料を添加した細胞での吸光度を表す。Ctは被験試料を添加しない細胞での吸光度を表す。
【0044】
【表5】

表5の結果から、製造例1〜3のツユクサ抽出物が角化細胞増殖促進作用を有することが確認できた。
【0045】
(実施例5)
−サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用試験−
被験試料として、製造例1〜3のツユクサ抽出物を用い、以下のようにして、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を試験した。
5mmol/L塩化マグネシウム含有50mmol/LのTris−HCl緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLウシ血清アルブミン溶液0.1mL、及び0.1mg/mLのホスホジエステラーゼ溶液0.1mL、各被験試料溶液0.05mLを加え、37℃で5分間予備反応した。これに0.5mg/mLのcAMP溶液0.05mLを加え、37℃で30分間反応した。3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止した。これを遠心(2260×g、10分間、4℃)し、上清を被験試料反応液として、下記の条件でHPLC分析した。同様の方法で空試験を行い補正した。
〔HPLC条件〕
・Colimn:Wakosil C18−ODS 5μm
・Mobilphase:1mM TBAP in 25mM KHPO:CHCN=90:10
・Flow rate:1.0mL/min
・Detector:260nm
・Atten:32〜64
【0046】
次に、得られたcAMPのピーク面積から、下記数式5に基づいて、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)算出した。
<数式5>
ホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)=(1−A/B)×100
ただし、前記数式5中、Aは被験試料添加でのcAMPのピーク面積を表す。BはコントロールでのcAMPのピーク面積を表す。
【0047】
次いで、被験試料の試料濃度を段階的に減少させて上記サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率の測定を行い、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性の活性を50%阻害する試料濃度(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表6に示す。
【0048】
【表6】

表6の結果から、ツユクサ抽出物がサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有することが確認された。
【0049】
(実施例6)
−保湿作用試験−
まず、0.05質量%ツユクサ水抽出物溶液(1)、0.05質量%ツユクサ50%エタノール抽出物溶液(2)、1質量%グリセリン溶液(3)、及び精製水(4)を、用意した。
次に、前記(1)〜(4)の試料溶液を、それぞれ直径8ミリメートルのペーパーディスク(東洋製作所製、質量0.017g)に各10μLを滴下した。これを試験室内(温度25℃、65%RH)に放置し、1分ごとに0〜8分後の質量を測定した。0分の質量を100%として各試料溶液の水分残存率を求めた。結果を表7に示す。なお、製造例3のツユクサの80%エタノール抽出物についても同様の結果が得られた。
【0050】
【表7】

表7の結果から、ツユクサ抽出物が保湿作用を有することが確認できた。
【0051】
(配合実施例1)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・ツユクサ80%エタノール抽出物(製造例3)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0052】
(配合実施例2)
−クリーム−
下記組成のクリームを、常法により製造した。
・流動パラフィン・・・5.0g
・サラシミツロウ・・・4.0g
・セタノール・・・3.0g
・スクワラン・・・10.0g
・ラノリン・・・2.0g
・ステアリン酸・・・1.0g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・1.5g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.0g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.5g
・香料・・・0.1g
・ツユクサ50%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.1g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0053】
(配合実施例3)
−パック−
下記組成のパックを、常法により製造した。
・ポリビニルアルコール・・・15g
・ポリエチレングリコール・・・3g
・プロピレングリコール・・・7g
・エタノール・・・10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・ツユクサ水抽出物(製造例1)・・・0.05g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の抗老化剤、スリミング剤、及び保湿剤の少なくともいずれかを配合した皮膚化粧料は、皮膚のシワや弾力の低下の防止及び改善、肌荒れの予防、肌荒れの防止、肥満防止に有用であり、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼント、などに幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツユクサの抽出物を含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項2】
コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞増殖作用及び角化細胞増殖作用から選択される少なくともいずれかを有する請求項1に記載の抗老化剤。
【請求項3】
ツユクサの抽出物を含有することを特徴とするスリミング剤。
【請求項4】
サイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を有する請求項3に記載のスリミング剤。
【請求項5】
ツユクサの抽出物を含有することを特徴とする保湿剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のツユクサ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚化粧料。

【公開番号】特開2007−145751(P2007−145751A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341428(P2005−341428)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】