説明

抗菌性潤滑剤組成物

抗菌性潤滑剤組成物を開示する。抗菌性潤滑剤組成物は、抗菌機能を広範な医療デバイスに付与するのに特に有用である。それらの組成物は油性潤滑剤を含む。代表的な潤滑剤は、ポリジメチルシロキサン、トリフルオロプロピルコポリマーポリシロキサン、およびジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーを含むことができる。それらの組成物は、必要に応じて流動改質剤を含む。それらの組成物は、広範な薬剤から選択することができる抗菌剤をも含む。代表的な抗菌剤は、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、ビスフェノール、第四級アンモニウム化合物、塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物および様々な医学的用途においてそれらの組成物を使用するための方法に関する。近代の医学的治療の主な課題の1つは、微生物の感染および蔓延の抑制である。
【背景技術】
【0002】
この課題が常に提起される1つの分野は、様々な種類の点滴治療にある。点滴治療は、最も一般的な医療処置の1つである。入院患者、自宅看護患者および他の患者は、血管系に挿入された血管アクセスデバイスを介して液体、医薬および血液製剤を受ける。感染を治療し、麻酔もしくは鎮痛を提供し、栄養補助を提供し、癌成長を治療し、血圧および心臓律動性を維持するために、または多くの他の臨床的に有意な用途のために点滴治療を使用することができる。
【0003】
点滴治療は、血管アクセスデバイスによって促進される。血管アクセスデバイスは、患者の末梢または中枢血管系にアクセスすることができる。血管アクセスデバイスは、短期間(数日間)、中期間(数週間)または長期間(数カ月間から数年間)にわたって留置することができる。血管アクセスデバイスを連続的点滴治療または断続的治療のために使用することもできる。
【0004】
一般的な血管アクセスデバイスは、患者の静脈に挿入されるプラスチックカテーテルである。カテーテルの長さは、末梢アクセスのための数センチメートルから中枢アクセスのための多センチメートルの範囲であってよく、末梢挿入中枢カテーテル(PICC)などのデバイスを含むことができる。カテーテルは経皮的に挿入することができ、または患者の皮膚の下に外科移植することができる。カテーテル、またはそれに装着された任意の他の血管アクセスデバイスは、単一の管腔、または多くの液体を同時に注入するための複数の管腔を有することができる。
【0005】
血管アクセスデバイスは、一般には、他の医療デバイスを装着できるルアーアダプタを含む。例えば、投与セットを血管アクセスデバイスの一端に装着し、静脈(IV)袋を他端に装着することができる。投与セットは、液体および医薬の連続注入のための液体導管である。一般に、IVアクセスデバイスは、別の血管アクセスデバイスに装着することができ、血管アクセスデバイスを閉鎖し、液体および医薬の断続的注入または注射を可能にする血管アクセスデバイスである。IVアクセスデバイスは、筐体および系を閉鎖するための隔膜を含むことができる。隔膜をブラントカニューレまたは医療デバイスの雄型ルアーで開放することができる。
【0006】
血管アクセスデバイスの隔膜が適正に動作できないか、または不十分な設計特徴を有する場合は、特定の併発症が起こり得る。点滴治療に伴う併発症は、重大な罹患およびさらには死亡を引き起こし得る。1つの重大な併発症は、カテーテル関連血流感染(CRBSI)である。米国の病院では推定で年間250000〜400000件の中枢静脈カテーテル(CVC)関連BSIが発生している。
【0007】
血管アクセスデバイスは、汎発性BSI(血流感染)をもたらす感染の核として作用し得る。これは、定期的にデバイスを洗浄することを怠ること、非無菌挿入技術、またはカテーテル挿入後に流路のいずれかの端部を介して液体流路に入る病原体によって引き起こされ得る。血管アクセスデバイスが汚染されると、病原体は、血管アクセスデバイスに接着し、コロニー形成し、生物膜を形成する。生物膜は、大抵の殺生剤に対して抵抗性を有し、患者の血流に入ってBSIを引き起こす病原体の補給源を提供する。したがって、抗菌性を有するデバイスが必要とされる。
【0008】
生物膜形成および患者感染を防止する1つの手法は、抗菌性コーティングを様々な医療デバイスおよび構成要素に設けることである。多くの医療デバイスは、金属材料またはポリマー材料で構成されている。これらの材料は、通常、高摩擦係数を有する。通常、低摩擦係数を有する低分子量材料または液体を材料のバルクに混入させるか、または基板の表面上に塗布して、デバイスの機能を助ける。
【0009】
過去35年間にわたって、熱可塑性ポリウレタン溶液を抗菌性コーティングの担体として使用することが慣例であった。溶媒は、通常、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、または両者のブレンドである。THFは、非常に迅速に酸化することができ、非常に強い爆発性を有する傾向があるため、高価な防爆のコーティング設備が必要である。これらの強過ぎる溶媒は、また、ポリウレタン、シリコーン、ポリイソプレン、ブチルゴムポリカーボネート、硬質ポリウレタン、硬質ポリ塩化ビニル、アクリルおよびスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含む、広く使用されているポリマー材料の多くを攻撃する。したがって、これらの材料で構成された医療デバイスは、経時的に変形し、かつ/またはそれらの表面に微小亀裂を形成し得る。この種のコーティングについての別の問題は、溶媒が完全に熱蒸発するのにほぼ24時間かかることである。よって、従来の技術は、処理、性能およびコストに関して根強い問題がある。
【0010】
当該デバイスの使用に対する別の制限は、微生物成長を抑制するのに使用される好適な抗菌剤の一般的な入手可能性である。医療デバイスに最も広く使用される抗菌剤の1つが銀である。銀塩および銀元素は、医療外科業界および全般的な産業の両方において周知の抗菌剤である。それらは、通常、ポリマーバルク材料に含められるか、またはプラズマ、熱蒸着、電気メッキ、もしくは従来の溶媒コーティング技術によって医療デバイスの表面に塗布される。これらの技術は、単調で、高価で、環境的に優しくない。
【0011】
加えて、銀コーティング医療デバイスの性能は、せいぜい月並みである。例えば、銀塩または銀元素から電離した銀イオンが抗菌剤として一定の効果を達成するまで8時間までの時間を要し得る。その結果、銀コーティングが一様に効果的になる前に実質的な微生物活性が生じ得る。また、銀化合物または銀元素は、濃琥珀色から黒色の不快な色を有する。
【0012】
この種の血管アクセスデバイスは、潤滑剤を必要とするか、またはその使用の恩恵を受け得る。隔膜の作動を容易にするために潤滑剤をデバイスの可動部分に塗布することができる。しかし、従来の潤滑剤を用いると、細菌および他の微生物も潤滑剤に滞留し得る。従来の潤滑剤は、微生物の成長および増殖を防止または有意に阻害することを目的としない。実際、従来の潤滑剤は、微生物の拡散に一役を担い得る。
【0013】
よって、当該技術分野において、様々な種類の医療デバイス、および特に点滴治療に関連するデバイスに抗菌機能を付与するための改良された方法が必要である。具体的には、様々な種類の医療デバイスと併用することができる効果的な抗菌性潤滑剤が必要である。微生物の増殖を防止するのに役立つとともに、接触する微生物を撲滅するのに有用かつ有効であり得る潤滑剤が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、現在利用可能な抗菌性組成物および方法によってまだ十分に解決されていない当該技術分野での問題および必要性に対応して開発された。したがって、これらの組成物および方法は、医療デバイスと併用される改良された抗菌性組成物および方法を提供することによって、CRBSIのリスクおよび発生などの問題を軽減するために開発された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上に言及したように、特定の種類の医療デバイスは、円滑かつ効果的に動作するために潤滑剤を必要とする。デバイスが1つの位置から別の位置に反復的に移動される場合は、潤滑剤がしばしば採用される。この種のデバイスの1つの例は、上記の種類のIVアクセスデバイスである。これらのデバイスは、例えば、反復的に作動される内部隔膜を有することができる。例えば、隔膜をブラントカニューレまたは医療デバイスの雄型ルアーで開放することができる。カニューレまたはルアーが除去されると、隔膜は、その本来の閉鎖構造に戻らなければならない。したがって、デバイスの円滑かつ確実な作動を容易にするために潤滑剤を採用することができる。
【0016】
その結果、一態様において、本発明は、抗菌性を有し、医療デバイスに使用することを目的とする潤滑剤を含む。本発明の潤滑剤は、上記の種類のニードルレス弁のような静脈内アクセスデバイスに対して特に有用である。医療デバイスは、それ自体がポリマー基板、特にエラストマー基板(例えば、ポリウレタン、シリコーン、ポリイソプレン、ブチルゴム)で構成される。それらの表面は、そのマトリックス全体に均一に分散された抗菌剤を含む潤滑剤で被覆される。抗菌剤は、マトリックスを拡散し、潤滑剤表面と接触する微生物を撲滅することが可能である。
【0017】
本発明における潤滑剤の配合物は、1つまたは複数の油性潤滑剤、場合による流動改質剤および抗菌剤の混合物または組合せで構成される。混合物において、抗菌剤のナノまたはミクロサイズの粒子は、潤滑剤マトリックス全体に均一かつ恒久的に分散される。得られた混合物の特性を制御するために、必要に応じて流動改質剤が使用される。潤滑剤配合物は無溶媒である。したがって、THFおよびDMFなどの強過ぎる溶媒を使用した場合の上記問題が回避される。
【0018】
油性潤滑剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、またはジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーであり得る。これらの材料は50000cps未満の粘度を有することが好ましい。
【0019】
以上に言及したように、いくつかの実施形態において、以上に挙げた材料に流動改質剤を添加することが好ましい。当該流動改質剤の例としては、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカが挙げられる。潤滑剤および抗菌剤と相溶性がある任意の流動改質剤が、組成物における使用に許容可能である。
【0020】
抗菌剤は、また、潤滑剤組成物に添加される。抗菌剤は、潤滑剤配合物の他の成分と相溶性がある任意の薬剤であってよい。加えて、抗菌剤は、先行技術の一定の制限を克服することが好ましい。いくつかの実施形態において、抗菌剤をアルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀元素もしくはその化合物、ビスフェノール、第四級アンモニウム化合物、塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドからなる群から選択することができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、発明の抗菌性潤滑剤を製造するために、これらの成分を均一に混合する。したがって、製造および処理は、比較的容易かつ安価である。また、抗菌剤は、潤滑剤マトリックスに均一に分散されるため、マトリックスから徐々に拡散する。これにより、微生物が抑制され、特に、潤滑剤表面と接触する微生物が撲滅される。
【0022】
したがって、本発明は、医療デバイスと併用すると効果的である抗菌性潤滑剤を提供する。潤滑剤は、医療デバイスの効果的な潤滑性を提供すると同時に、有意な抗菌性を提供する。潤滑剤は、処理および配合を複雑にする強過ぎる溶媒または他の化学薬品を用いずに配合される。加えて、抗菌剤が、潤滑剤を介して拡散し、微生物活性の部位に達するように容易に利用可能であるため、配合物は、抗菌剤として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の上記特徴および他の特徴ならびに利点を取得する方法を容易に理解するために、添付の図面に示されるその具体的な実施形態を参照することによって、以上に簡単に記載した本発明のより具体的な説明を提示する。この図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すため、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきでない。
【0024】
【図1】本発明によるカテーテル組立品の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、血管アクセスデバイス(血管外デバイス、静脈内アクセスデバイス、アクセスポート、および/または血管外システムに装着されるか、それとともに機能する任意のデバイスとも称する)10を使用して、物質を、カテーテル12を介して皮膚14に通して、患者18の血管16に導入する。血管アクセスデバイス10は、管腔を有する本体20および管腔内に配置された隔膜22を含む。隔膜22は、それを介してシリンジなどの分離血管外デバイス26が物質を血管アクセスデバイス10に導入できるスリット24を有する。
【0026】
デバイス10は、また、デバイスの動作を容易にするとともに、微生物の成長および増殖を阻害するために、隔膜22に塗布された抗菌性潤滑剤40を含む。潤滑剤は、カテーテル12およびカテーテル12の端部32を含む血管アクセスデバイス10、および/または血管アクセスデバイス10が接続される血管外システム28内の微生物病原体を防ぐのに役立つ。
【0027】
病原体は、いくつかの方法のいずれかでデバイス10またはシステム28に進入し得る。例えば、病原体は、最初の使用前にデバイス10またはシステム28内に滞留し得る。病原体は、また、分離デバイス26の先端30などの構造体が隔膜22のスリット24を介してデバイス10に挿入されると、デバイスの外面、分離デバイス26の外面および/または周囲環境からデバイス10に導入され得る。病原体は、分離デバイス26からシステムに注入される液体内に導入され得る。最終的に、病原体は、デバイス10の使用時に血液採取または血液還流中にカテーテル12の端部32を介して進入することによって血管16からシステム28に導入され得る。微生物病原体は、病原体、細菌、寄生虫、病原菌、生物膜、真菌、ウィルス、病原体、原虫および/または他の有害な微生物を飼養するタンパク質、および/またはそれらの媒介物および生成物を含めて、患者の血管系に受容されると疾患を引き起こすか、またはそれとは別な形で患者に害を及ぼすか、もしくは害を及ぼす可能性を有する任意の物質を含む。
【0028】
上述のように、本発明の抗菌性潤滑剤を油性潤滑剤;流動改質剤;および抗菌剤で構成することができる。油性潤滑剤は、それが塗布される選定された医療デバイスを潤滑することが可能な任意の材料である。本明細書に記載の種類のデバイスの多くについては、油性潤滑剤は、一般に、ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、およびジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーからなる群から選択される。いくつかの好適な実施形態において、油性潤滑剤は、ジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーである。いくつかの実施形態において、油性潤滑剤は、50000cps以下、好ましくは1000cps以下の粘度を有する。
【0029】
抗菌性潤滑剤組成物は、1つまたは複数の流動改質剤を含むこともできる。一部の好適な実施形態において、流動改質剤は、100重量部の油性潤滑剤において約0.2から約30重量部の量で添加される。他の好適な実施形態において、潤滑剤組成物は、100重量部の油性潤滑剤において約0.2から約20重量部の量の流動改質剤を含むことができる。他の好適な実施形態において、潤滑剤組成物は、100重量部の油性潤滑剤において約0.2から約10重量部の量の流動改質剤を含むことができる。
【0030】
上述のように、一部の実施形態において、流動改質剤は、有機粘土剤、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択される。場合によっては、ヒュームドシリカが好適であり得る。しかし、要望に応じて他の流動改質剤を使用することができる。
【0031】
組成物は、1つまたは複数の抗菌剤を含むこともできる。抗菌剤は、抗菌性潤滑剤組成物の他の成分と相溶性を有するように選択される。また、抗菌剤は、抗菌性潤滑剤組成物が塗布される医療デバイスと相溶性がある。
【0032】
一般に、抗菌剤は、100重量部の油性潤滑剤において約0.5から約50重量部の量で抗菌性潤滑剤組成物に存在する。一部の他の実施形態において、抗菌剤は、100重量部の油性潤滑剤において約0.5から約30重量部の量で存在することができる。一部の他の実施形態において、抗菌剤は、100重量部の油性潤滑剤において約0.5から約20重量部の量で存在することができる。
【0033】
許容可能な抗菌剤としては、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物が挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、抗菌剤を塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドからなる群から選択することができる。
【0034】
要約すると、一部の実施形態において、抗菌性潤滑剤組成物を、ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、およびジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーからなる群から選択される潤滑剤;有機粘土剤、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択される流動改質剤;塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドからなる群から選択される抗菌剤から配合することができる。
【0035】
実施例
【実施例1】
【0036】
表1は、異なる潤滑剤配合物の接触撲滅率および阻害域を示す。表1に示されるように、銀元素(10)および銀化合物(3、4および5)は、いずれも8時間後まで比較的低い接触撲滅率を有する。塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび塩化ベンズアルコニウムは、いずれも1分以内に有意な接触撲滅率を有する。
【0037】
【表1】

【0038】
注1.潤滑剤配合物:
Med.−460(350cps)
流動改質剤:M−5
(1種または複数の)抗菌剤
【0039】
注2.(1種または複数の)抗菌剤
サンプル#
1.二酢酸クロルヘキシジン
2.アレキシジン
3.銀スルファジアジン
4.酢酸銀
5.クエン酸銀水和物
6.セトリミド
7.塩化セチルピリジウム
8.塩化ベンズアルコニウム
9.o−フタルアルデヒド
10.銀元素
【0040】
注3.病原菌
S.epider:表皮ブドウ球菌
P.aerug:緑膿菌
C.albicans:カンジダアルビカンス
【0041】
注4.ND=データなし、すべての病原菌が撲滅された
【実施例2】
【0042】
最初の試験データに基づいて、潤滑剤の発明の1つの好適な実施形態を以下のように調製することができる。
1.(1種または複数の)潤滑剤−Nusil Silicone Technology(カリフォルニア州Carpinteria)のMed−460、350cps
2.(1種または複数の)流動改質剤−Cabot Corporation(イリノイ州Tuscola)のヒュームドシリカ
3.(1種または複数の)抗菌剤−塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジンまたは塩化ベンズアルコニウム。
【実施例3】
【0043】
表2は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル1〜5は、350cpsの粘度を有するポリジメチルシロキサンで構成される潤滑剤Med.−360を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
1.二酢酸クロルヘキシジン
2.セトリミド
3.塩化セチルピリジウム
4.塩化ベンズアルコニウム
5.o−フタルアルデヒド
【0044】
【表2】

【実施例4】
【0045】
表3は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル6〜10は、1000cpsの粘度を有するポリジメチルシロキサンで構成される潤滑剤Med.−360を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
6.二酢酸クロルヘキシジン
7.セトリミド
8.塩化セチルピリジウム
9.塩化ベンズアルコニウム
10.o−フタルアルデヒド
【0046】
【表3】

【実施例5】
【0047】
表4は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル11〜15は、350cpsの粘度を有するポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンで構成される潤滑剤Med.−400を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
11.二酢酸クロルヘキシジン
12.セトリミド
13.塩化セチルピリジウム
14.塩化ベンズアルコニウム
15.o−フタルアルデヒド
【0048】
【表4】

【実施例6】
【0049】
表5は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル16〜20は、1000cpsの粘度を有するポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンで構成される潤滑剤Med.−400を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
16.二酢酸クロルヘキシジン
17.セトリミド
18.塩化セチルピリジウム
19.塩化ベンズアルコニウム
20.o−フタルアルデヒド
【0050】
【表5】

【実施例7】
【0051】
表6は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル21〜25は、350cpsの粘度を有するジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーで構成される潤滑剤Med.−420を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
21.二酢酸クロルヘキシジン
22.セトリミド
23.塩化セチルピリジウム
24.塩化ベンズアルコニウム
25.o−フタルアルデヒド
【0052】
【表6】

【実施例8】
【0053】
表7は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル26〜30は、1000cpsの粘度を有するジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーで構成される潤滑剤Med.−420を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
26.二酢酸クロルヘキシジン
27.セトリミド
28.塩化セチルピリジウム
29.塩化ベンズアルコニウム
30.o−フタルアルデヒド
【0054】
【表7】

【実施例9】
【0055】
表8は、異なる潤滑剤組成物の接触撲滅率および阻害域を示す。サンプル31〜35は、1000cpsの粘度を有するジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーで構成される潤滑剤Med.−460を含んでいた。抗菌剤を以下のように変更した。
31.二酢酸クロルヘキシジン
32.セトリミド
33.塩化セチルピリジウム
34.塩化ベンズアルコニウム
35.o−フタルアルデヒド
【0056】
【表8】

【0057】
50000cps未満の粘度を有する潤滑剤が一般に好適であることも理解されるであろう。当該潤滑剤は、以下の通りであってよい。50000cps未満の粘度を有するポリジメチルシロキサン;50000cps未満の粘度を有するトリフルオロプロピルコポリマーポリシロキサン;および50000cps未満の粘度を有するジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマー。
【0058】
以上に言及したように、流動改質剤は、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタン、ヒュームドシリカ等であり得る。改質剤の量は、100重量部の潤滑剤において30重量部未満、好ましくは20重量部未満、最も好ましくは100重量部の潤滑剤において0.2から10重量部であるべきである。
【0059】
抗菌剤は、それらの配合物に対して、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀元素もしくはその化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物であり得る。いくつかの好適な実施形態において、抗菌剤は、塩化セチルピリジウム、セトリミド、および塩化ベンズアルコニウム、アレキシジンまたは二酢酸クロルヘキシジンであり得る。抗菌剤の量は、100重量部の潤滑剤において50重量部未満、好ましくは30重量部未満、最も好ましくは100重量部の潤滑剤において0.5から20重量部であるべきである。
【0060】
本発明を、本明細書および以降の特許請求の範囲に広く記載されるその構造、方法または他の実質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形で具現化することができる。記載の実施形態は、あらゆる点において、単なる例示であり、限定的でないものと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、先述の説明でなく、添付の請求項によって示される。特許請求の範囲と同等の意味および範囲内にあるすべての変更が、それらの範囲内に包含されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性潤滑剤と、
流動改質剤と、
アルデヒド、アニリド、ビグアニド、ビスフェノール、第四級アンモニウム化合物、塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドからなる群から選択される抗菌剤と、
を含むことを特徴とする抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記抗菌剤は、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀、銀化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記抗菌剤は、塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記潤滑剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、およびジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記潤滑剤は、ジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記潤滑剤は、50000cps以下の粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記流動改質剤は、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項8】
100重量部の前記油性潤滑剤において約0.2重量部から約30重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項9】
100重量部の前記油性潤滑剤において約0.2重量部から約20重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項10】
100重量部の前記油性潤滑剤において約0.2重量部から約10重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項11】
前記流動改質剤は、ヒュームドシリカであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項12】
100重量部の前記油性潤滑剤において約0.5重量部から約50重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項13】
100重量部の前記油性潤滑剤において約0.5重量部から約30重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項14】
100重量部の前記油性潤滑剤において約0.5重量部から約20重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項15】
ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、およびジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーからなる群から選択される油性潤滑剤と、
有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択される流動改質剤と、
塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドからなる群から選択される抗菌剤と、
を含むことを特徴とする抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項16】
前記組成物は、100重量部の油性潤滑剤において約0.2重量部から約30重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項15に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項17】
前記組成物は、100重量部の油性潤滑剤において約0.5重量部から約50重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項15に記載の抗菌性潤滑剤組成物。
【請求項18】
ジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとのコポリマーを含む油性潤滑剤と、
ヒュームドシリカを含む流動改質剤と、
塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシデンおよび塩化ベンズアルコニウムからなる群から選択される抗菌剤と、
を含むことを特徴とする抗菌性潤滑剤組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−510339(P2012−510339A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539605(P2011−539605)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065942
【国際公開番号】WO2010/065422
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】