説明

抗菌性組成物、抗菌性樹脂成形体、抗菌性組成物含有溶液、洗浄剤、畳表および畳

【課題】初期抗菌性能や抗菌性能の持続性に優れるとともに、対応できる菌類の種類も多く、かつ、安全性からも問題のない抗菌性組成物および抗菌性組成物を備えた抗菌性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】有機系抗菌剤と無機系抗菌剤を含有する抗菌性組成物であり、無機系抗菌剤として銀または銅を担持したリン酸ジルコニウムまたはその塩を、有機系抗菌剤として2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム、カルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)、チアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)を使用でき、これらの成分はハロゲンを含まないので、抗菌性組成物をハロゲンレスとすることができる。この抗菌性組成物は、樹脂材料と共に成形したり、塗布剤と共に樹脂成形体に塗布するなどにより抗菌性樹脂成形体として適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系抗菌剤および無機系抗菌剤を含有する抗菌性組成物、当該抗菌性組成物を備えた抗菌性樹脂成形体、抗菌性組成物含有溶液、洗浄剤、畳表および畳に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の生活環境中には多くの微生物が存在しており、特に高温多湿の日本では細菌などの原核生物、カビ、酵母などの真核生物、さらにはコケや藻類が多く繁殖しやすい環境にある。また、近年のアルミサッシなどの普及による室内の密閉化や、エアコンディショナの普及による屋内温度ないし屋内湿度の維持といった住環境の変化は、結果として微生物に対して繁殖に適した環境を与えることとなっている。さらには、浴室や台所といった水分の多い場所にあっては、樹脂および樹脂表面を覆う有機物がカビの温床となることが多いため、かかる環境においては、これまでも様々な微生物対策がとられており、一般には、当該浴室などを構成する樹脂に対して種々の抗菌剤を配合することにより対処していた。
【0003】
ここで、樹脂に配合される有機系抗菌剤としては、ジヨードメチル−p−トリスルフォン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタルニトリル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾールなどが知られている。また、無機系抗菌剤としては、亜酸化銅、銅分、硫酸亜鉛、銅−ニッケル合金などの無機系化合物や、金属をリン酸カルシウムやゼオライトなどの無機物質に担持させたものや、酸化チタンなどの光触媒機能を利用したものが挙げられる。
【0004】
しかしながら、従来の抗菌剤にあっては、有機系抗菌剤をはじめとして抗菌効果の発現が遅いものが多く、また、対応できる抗菌の種類にも限界があった。さらには、構成成分としては水溶性のものもあり、この場合にあっては効果の持続性が問題となっていた。一方、このような有機系抗菌剤の問題点を解決するため、複数の有機性抗菌剤を構成成分とした複合型の有機系抗菌組成物が検討されており、例えば、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤、ベンゾイミダゾール系抗菌剤を有効成分として含有する抗菌組成物が提供されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−92012号公報([請求項2],[0030])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した特許文献1に開示されるような複合型の有機系抗菌組成物は、従来の抗菌剤と比較して対応できる菌類の種類は拡大したものの、未だ十分とはいえるものではなく、また、有機系抗菌剤特有の問題である抗菌性能の発現が遅いといった点も依然として残されていた。加えて、有機系抗菌剤としては、その構成成分中に塩素やフッ素といったハロゲン成分を含んだ抗菌剤が広く使用されているが、ハロゲン成分を含んだ抗菌剤は焼却時にダイオキシンを生成してしまい安全面から問題があり、さらには、樹脂に混練して成形体を成形する場合における金型などの金属部品を腐食してしまうという問題もあった。また、多くが皮膚刺激性であるという問題もある。
【0007】
一方、無機系抗菌剤についても、銀と銅といった金属を担持して溶出を抑制しつつ抗菌効果を備えるようにしたものもあり、これらは安全性の点からは問題はないのであるが、金属原子が担持されているために抗菌効果には菌と抗菌剤との直接接触が必要となっていた。また、一部の金属は活性酸素の発生による抗菌活性を示すこともあるが、活性酸素の発生に光エネルギが必要であったり、発生した活性酸素が菌以外の有機物で容易に消去されることから、抗菌効果としては十分なものではなかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、初期抗菌性能や抗菌性能の持続性に優れるとともに、対応できる菌類の種類も多く、かつ、安全性からも問題のない抗菌性組成物、当該抗菌性組成物を備えた抗菌性樹脂成形体、抗菌性組成物含有溶液、洗浄剤、畳表および畳を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達するために、本発明の抗菌性組成物は、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤とを含有することを特徴とする。
【0010】
この本発明の抗菌性組成物は、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤とを含有する構成を採用している。従って、抗菌スペクトルも広く、対応可能な菌類の種類も飛躍的に多くなり、抗菌効果が優れたものとなる。また、無機系抗菌剤を配合することにより、初期抗菌性能や抗菌効果の持続性も向上することとなり、また、溶出分も少なくなるため、環境汚染を好適に抑制することができ、安全性にも優れることとなる。そして、本発明の抗菌性組成物は、樹脂への配合に適するため、樹脂成形性も良好となる。
なお、本発明において、「抗菌性(抗菌効果)」とは、真菌や細菌などの菌類の生育や繁殖を阻止するといった抗菌効果そのものに加えて、防カビ・抗カビ効果や、防藻効果といったものも含むものである。
【0011】
本発明の抗菌性組成物は、前記した無機系抗菌剤が金属を担持したジルコニウムまたはその塩あるいはゼオライトであることが好ましく、銀または銅を担持したリン酸ジルコニウムまたはその塩であることが特に好ましい。
かかる本発明によれば、無機系抗菌剤として金属を担持したジルコニウムまたはその塩あるいはゼオライト、特に、銀または銅を担持したリン酸ジルコニウムまたはその塩あるいはゼオライトを採用することにより、人体への安全性に優れ、抗菌速度も速く、また抗菌性能の持続性にも優れる抗菌性組成物となる。
【0012】
本発明の抗菌性組成物は、前記した有機系抗菌剤がピリジン系抗菌剤およびベンゾイミダゾール系抗菌剤であることが好ましく、当該ピリジン系抗菌剤が2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムであり、ベンゾイミダゾール系抗菌剤がカルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)およびチアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)のうちの少なくともいずれか一方であることが特に好ましい。
かかる本発明によれば、有機系抗菌剤としてピリジン系抗菌剤とベンゾイミダゾール系抗菌剤を組み合わせて使用すれば、相乗効果により各成分個々では効果のない微生物に対しても抗菌性を発揮することができる。そして、かかる抗菌性は、ピリジン系抗菌剤として2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムを、ベンゾイミダゾール系抗菌剤としてカルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)およびチアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)のうちの少なくともいずれか一方を採用した場合により好適に発揮されることとなる。
【0013】
本発明の抗菌性組成物は、前記した有機系抗菌剤がベンゾイミダゾール系抗菌剤から選ばれた2種であることが好ましく、当該ベンゾイミダゾール系抗菌剤がベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するものと、ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するものとであることがより好ましく、ベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するものとして2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するものとして2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルであることが特に好ましい。
かかる発明によれば、相乗効果により各成分個々では効果のない微生物に対しても抗菌性を発揮することができる。そして、かかる抗菌性は、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾールおよび2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルを採用した場合により好適に発揮されることとなる。
【0014】
本発明の抗菌性組成物は、前記した有機系抗菌剤および無機系抗菌剤が実質的にハロゲンを含まないことが好ましい。
かかる本発明によれば、構成成分である有機系抗菌剤および無機系抗菌剤が実質的にハロゲンを含まないため、抗菌性組成物をハロゲンレス(ノンハロゲン)とすることができ、抗菌性組成物を焼却処理した場合であってもダイオキシンが生成することもなく、また、抗菌性組成物を樹脂に含有させて成形体を成形する際に、成形金型を腐食することを防止することができる。
ここで、本発明において「実質的に」とは、本発明の効果に影響ない範囲で、意図的に、ごく微量のハロゲン成分(ハロゲン原子)を抗菌性組成物の構成成分中に存在させたものも含む概念である。
【0015】
本発明の抗菌性組成物は、前記した無機系抗菌剤の含有率が組成物全体に対して0.1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
この本発明によれば、抗菌性組成物全体に対する無機系抗菌剤の含有率を特定範囲としているので、初期抗菌特性や抗菌特性の持続性の向上などといった無機系抗菌剤を含有させる効果を最大限に発揮させることができ、前記した本発明の効果をより好適に発揮することができる。
【0016】
本発明の抗菌性樹脂成形体は、前記した本発明の抗菌性組成物を備えたことを特徴とし、この抗菌性樹脂成形体は、抗菌性組成物を成形体に対して0.01質量%以上10.0質量%以下で含有していることが好ましい。
この本発明の抗菌性樹脂成形体は、本発明の抗菌性組成物を備えているので、前記した本発明の効果を効果的に発揮できる抗菌性樹脂成形体を提供することができ、かかる効果は、抗菌性組成物を成形体に対して0.01質量%以上10.0質量%以下で含有するようにすれば、さらに好適に発揮される。
また、本発明の抗菌性樹脂成形体をフィルム状またはシート状あるいはこれらの積層体に形成することにより、各種用途に利用でき、使い勝手がよい。
【0017】
また、本発明の抗菌性成形体では、成形体全質量に対して無機系抗菌剤が0.5質量%未満の割合で含有される状態に抗菌性組成物を含有し、社団法人繊維評価技術協議会で規定された殺菌活性値(一般用途)を、以下の条件としていることが好ましい。
log(A/C)≧0
A:接種直後の標準布の菌数
C:18時間培養後の加工布の生菌数
菌種:黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌
本発明では、成形体中に本発明の抗菌性組成物を配合したときに、その成形体中に含まれる無機系抗菌剤が0.5質量%未満であっても、社団法人繊維評価技術協議会で規定された殺菌活性値がlog(A/C)≧0を満たし、広い抗菌スペクトルを示し低いMIC値の抗菌効果を発揮する。
特に、無機系抗菌剤が0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上0.4質量%以下でも、この抗菌効果が良好に発揮される。このような抗菌性組成物が低濃度でも、本発明の抗菌性組成物は、従来の抗菌性組成物では到底得られない広い抗菌スペクトルを示し低いMIC値の優れた抗菌効果を示す。
【0018】
本発明の抗菌性樹脂成形体は、成形体が多層シートであり、抗菌性組成物を含有する層が外層に表れていないようにしてもよい。
本発明の抗菌性組成物は、菌類の忌避効果を備えているため、菌類などと直接接触しなくとも抗菌効果を奏することができるので、成形体を多層シートとした場合にあっては、抗菌性組成物を含有する層が、多層シートの中間層等の外層に表れていないようにしても、シートに対して抗菌性組成物の奏する効果を好適に付与することができる。
【0019】
本発明に記載の抗菌性組成物含有溶液は、上述した本発明の抗菌性組成物が溶液中に分散されたことを特徴とする。
この発明では、上述した抗菌性組成物を溶液中に分散せしめたので、溶液中の菌類との接触効果が向上し、抗菌性組成物が低濃度でも十分な抗菌効果を発揮できる。すなわち、低濃度、例えば使用時の抗菌性組成物の濃度が10ppm以上1000ppm以下の溶液でも、実用上問題なく使用できる。このような特性を生かして、塗料や溶媒などと配合して塗布材料や散布材料として好適に利用できる。
【0020】
ここで、抗菌性組成物の濃度が10ppmより低くなると、少ないMIC値での抗菌スペクトルの拡大が得られにくくなり十分な抗菌性を発揮できなくなるおそれがある。一方、抗菌性組成物の濃度が1000ppmより高くなると、抗菌性組成物の配合量の増大によるコストの増大に対して抗菌効果の増大が大きくなく、経済効果が低減するので好ましくない。また、均一分散が難しくなるおそれもある。好ましくは、抗菌性組成物の濃度を10ppm以上1000ppm以下とする。
【0021】
また、本発明の抗菌性組成物含有溶液では、本発明の抗菌性組成物の濃度が0.1質量%以上50質量%以下の溶液で、製造、輸送、保管することが経済的、手間を省くうえで好ましい。
この濃度の溶液は、前記した濃度に希釈して用いる所謂マスターバッチとして用いることが通常である。
ここで、0.1質量%未満では、マスターバッチとしての効果があまり無く、50質量%を超えると、溶液中で抗菌性組成物が均一に分散し難くなる。したがって、抗菌性組成物の濃度を0.1質量%以上50質量%以下とする。
【0022】
本発明に記載の洗浄剤は、上述した本発明の抗菌性組成物含有溶液を含有していることを特徴とする。
本発明では、上述した抗菌性組成物含有溶液を含有したので、低いMIC値でも格段に広い抗菌スペクトルが得られるという効果を奏する洗浄剤を提供できる。ここで、洗浄剤としては、洗浄を主体とするものに限らず、例えば床用ワックスなどのワックスも含むものである。さらに、洗浄または塗布の際に上述した抗菌効果が得られるとともに洗浄後に菌類の発生も抑制でき、使い勝手が向上する。そして、例えば主に床面に散布するクリーナやワックス、または両者の機能を持つ塗布剤として利用できる。
なお、本発明の抗菌性組成物を配合する溶媒は、水や有機溶媒、油、塗料などの液状有機化合物、および、これらの混合物のいずれでも構わないが、特に床や壁に塗るクリーナやワックスなどのように、人が触れる可能性がある製品に使用する場合は、安全面や環境負荷を低くすることを考慮して、水または水を主成分とする溶液にすることが好ましい。
【0023】
本発明に記載の畳表は、上述した本発明の抗菌性組成物を含有するフィルムにより形成することを特徴とする。
本発明の畳表では、上述した抗菌性組成物を含有したフィルムにより形成しているので、本発明における人体や環境に影響がなく、かつ、相乗効果による低いMIC値でも格段に広い抗菌スペクトルが得られ、効率よく高い抗菌作用が容易に得られるという効果を奏する畳表を提供できる。さらに、凹凸があり菌類が発生しやすく人体が直接接触する畳表でも良好な抗菌効果が得られる。
【0024】
本発明に記載の畳は、上述した発明の抗菌性組成物を含有するフィルムを備えたことを特徴とする。
本発明の畳では、上述した抗菌性組成物を含有したフィルムを備えているので、本発明における人体や環境に影響がなく、かつ、相乗効果による低いMIC値でも格段に広い抗菌スペクトルが得られ、効率よく高い抗菌作用が容易に得られるという効果を奏する畳を提供できる。さらに、畳表の裏面側などの通常は視認できない部位でも、良好に菌類の発生が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の抗菌性組成物は、有機系抗菌成分と無機系抗菌剤を組み合わせて使用し、これらを抗菌性組成物中に含有するようにしている。
ここで、抗菌性組成物を構成する有機系抗菌剤としては、ピリジン系抗菌剤やベンゾイミダゾール系抗菌剤を使用することが好ましく、この両者を組み合わせて使用することが特に好ましい。ピリジン系抗菌剤とベンゾイミダゾール系抗菌剤とを組み合わせて使用すれば、相乗効果により各成分個々では効果のない微生物に対しても抗菌性を発揮することができるため好ましい。
【0026】
ピリジン系抗菌剤としては、ピリジン誘導体を使用することが好ましく、例えば、2−クロロ−6−トリクロロメチルピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−メトキシピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−(2−フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4−クロロフェニル)ピリジルメタノールや、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルホニルピリジン、2−クロロ−6−トリクロロメチルピリジン、スルフォニルハロピリジン化合物に分類される、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、2,3,5−トリクロロ−4−(n−プロピルスルフォニル)ピリジンなどが挙げられ、また、2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムなども使用することができる。この中では、ハロゲン原子を含まないピリジン誘導体を使用することが好ましく、2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムを使用することが特に好ましい。ピリジン誘導体中にハロゲン原子を含むと、抗菌性組成物を焼却処理した場合にダイオキシンを生成してしまったり、また、抗菌性組成物を樹脂に含有させて成形体を成形する際に、成形金型を腐食してしまう場合があるため、ハロゲン原子を実質的に含有しないピリジン誘導体を使用することが好ましい。
【0027】
ベンゾイミダゾール系抗菌剤としては、ベンゾイミダゾールカルバミン酸化合物、イオウ原子含有ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾールの環式化合物誘導体などを挙げることができる。また、カルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)やチアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)を使用することもでき、本発明にあっては、かかるカルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)やチアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)を使用することが好ましく、これらはハロゲンを含まないため、抗菌性組成物を焼却処理した場合であってもダイオキシンが生成せず、また、抗菌性組成物を樹脂に含有させて成形体を成形する場合であっても、成形金型などの金属部品を腐食することもない。
【0028】
ベンゾイミダゾールカルバミン酸化合物としては、1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、1−ブチルカルバモイル−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、6−ベンゾイル−1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、6−(2−チオフェンカルボニル)−1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルなどが挙げられる。
【0029】
また、イオウ原子含有ベンゾイミダゾール化合物としては、1H−2−チオシアノメチルチオベンゾイミダゾール、1−ジメチルアミノスルフォニル−2−シアノ−4−ブロモ−6−トリフロロメチルベンゾイミダゾールなどを挙げることができる。
【0030】
ベンゾイミダゾールの環式化合物誘導体としては、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール、2−(2−クロロフェニル)−1H−ベンゾイミダゾール、2−(1−(3,5−ジメチルピラゾリル))−1H−ベンゾイミダゾール、2−(2−フリル)−1H−ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0031】
本発明の抗菌性組成物は、前記した有機系抗菌剤と無機系抗菌剤を組み合わせて使用する。有機系抗菌剤だけでは抗菌性を発揮するのに時間がかかる場合がある一方、抗菌性組成物中に無機系抗菌剤を含有させることにより、繊維用途など短時間で抗菌効果を発揮することが必要される場合にも、好適に対応することができる。すなわち、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤とを併用することにより、抗菌性組成物の初期抗菌性能が向上し、また、抗菌性能が効率的に持続することになる。
【0032】
無機系抗菌剤としては、亜酸化銅、銅粉、チオシアン酸銅、炭酸銅、塩化銅、硫酸銅、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸ニッケル、銅−ニッケル合金などの無機金属化合物や、リン酸ジルコニウム、金属を担持したリン酸ジルコニウムを使用することができ、特に、金属として銀または銅を担持したリン酸ジルコニウムやゼオライトを使用することが好ましい。銀や銅といった金属を担持したリン酸ジルコニウムやゼオライトは、人体への安全性に優れ、抗菌速度も速く抗菌性能に優れているため好ましい。
【0033】
なお、以上に挙げた有機系抗菌剤および無機系抗菌剤は、いずれも公知の化合物であるので、常法により簡便に得ることができる。また、これらは市販されているものも多いので、かかる市販品を用いてもよい。
【0034】
また、本発明の抗菌性組成物には、必須成分である前記した有機系抗菌剤および無機系抗菌剤のほか、本発明の効果を妨げない範囲において、抗菌剤に使用される従来公知の成分(任意成分)を添加してもよい。
【0035】
抗菌性組成物に対する有機系抗菌剤と無機系抗菌剤との含有率としては、抗菌性組成物全体に対して、無機系抗菌剤を0.1〜70質量%とすることが好ましく、0.4〜60質量%とすることが特に好ましい。抗菌性組成物全体に対する無機系抗菌剤の含有率が0.1質量%より小さいと、初期抗菌性能の向上などの無機系抗菌剤を含有させることによる効果を発揮できない場合がある。一方、無機系抗菌剤の含有率が70質量%を超えると、総合的な抗菌性能が低下する場合がある。
【0036】
また、本発明の抗菌剤組成物に含有される有機系抗菌剤や無機系抗菌剤は、実質的にハロゲンを含まないようにすることが好ましく、これらがハロゲンを含まないことにより抗菌剤組成物自体もハロゲンレス(ノンハロゲン)となり、抗菌性組成物を焼却処理しても有害物質であるダイオキシンが生成されることもなく、また、抗菌性組成物を樹脂に含有させて成形体を成形しても、成形金型や金属部品等の腐食の発生を好適に防止することができる。
【0037】
また、本発明の抗菌剤組成物に含有される有機系抗菌剤や無機系抗菌剤は、実質的にハロゲンを含まないようにすることが好ましく、これらがハロゲンを含まないことにより抗菌剤組成物自体もハロゲンレス(ノンハロゲン)となり、抗菌性組成物を焼却処理しても有害物質であるダイオキシンが生成されることもなく、また、抗菌性組成物を樹脂に含有させて成形体を成形しても、成形金型や金属部品などの腐食の発生を好適に防止することができる。
【0038】
本発明の抗菌性組成物を得るには、前記の有機系抗菌剤および無機系抗菌剤などを、常法を用いて混合することにより簡便に調製することができる。また、得られた抗菌性組成物の剤型も特に制限はなく、水状、粉体状、溶剤状などの各種剤型として適用することができる。
【0039】
このような本発明の抗菌性組成物によれば、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤を組み合わせて含有するようにしているので、抗菌スペクトルも広く、対応可能な菌類の種類も飛躍的に多くなるなど、抗菌効果が優れたものとなる。また、無機系抗菌剤を配合することにより、初期抗菌性能や抗菌効果の持続性も向上することとなり、また、溶出分も少なくなるため、環境汚染を好適に抑制することができ、安全性にも優れることとなる。そして、本発明の抗菌性組成物は、樹脂への配合に適するため、樹脂成形性も良好となる。
【0040】
このように、本発明の抗菌性組成物は、抗菌スペクトルが広く、対応可能な菌類の種類も多いといった優れた抗菌効果を発揮できるものであるが、本発明の抗菌性組成物が抗菌効果を有する菌類(真菌類、細菌類、藻類など)としては、後記する表2〜表7に示した菌類(真菌類209種、細菌類148種、藻類27種)などを挙げることができる。
【0041】
また、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤の個々では繁殖を阻止することができなかった菌類についても、両抗菌剤を使用することによる相乗効果により、各成分個々では効果のない菌類(藻類含む)に対しても抗菌性を発揮することができる。同様に、有機系抗菌剤としてピリジン系抗菌剤とベンゾイミダゾール系抗菌剤を組み合わせて使用すれば、相乗効果により各成分個々では効果のない菌類(藻類含む)に対しても抗菌性を発揮することができ、特に、ピリジン系抗菌剤として2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムを、ベンゾイミダゾール系抗菌剤として、カルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)と、チアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)とのうちの少なくともいずれか一方を採用すればより効率的に発揮される。
【0042】
そして、本発明の抗菌性組成物にあっては、有機系抗菌剤および無機系抗菌剤に実質的にハロゲンを含まないようにすれば、抗菌性組成物をハロゲンレス(ノンハロゲン)とすることができ、抗菌性組成物を焼却処理した場合であってもダイオキシンが生成することもなく、また、抗菌性組成物を樹脂に含有させて成形体を成形する際に、成形金型を腐食することを防止することができる。
【0043】
なお、本発明の抗菌性組成物は、菌類の忌避効果を備えており、菌類などと直接接触しなくとも抗菌効果を奏することができる。
【0044】
本発明の抗菌性組成物の適用方法としては、特に制限はないが、例えば、塗料に配合して塗布材料としたり、樹脂材料に配合して成形したり、あらかじめ形成した成形体に塗料などの塗布材料とともに塗布するなどして、樹脂成形体に備えるようにした抗菌性樹脂成形体とするなど、任意の方法により適用することができる。このような抗菌性を備えた樹脂成形体や塗布材料は、微生物が繁殖しやすい環境に使われる部品、具体的にはエアコン、カーエアコンの部品といった樹脂部品(特に水がたまり易いドレン部等が好ましい)、洗濯機や冷蔵庫や食器乾燥機などの内部樹脂部分、便座、浄水器、トイレケース付きブラシなどの住宅設備機器、繊維製品(エプロン、布巾、病院制服、家具張地、カーテンなど)、まな板、水切り袋などの水廻り製品、接着剤・木材防腐剤などの化学薬品、建築クレーナ、内外装塗料・木材表面処理剤、ゲルコート剤などのコーティング剤、車両内装材、カーペット、目地材、シーリング材、クーリングタワー用防藻剤、風呂・台所など向けのポリウレタンスポンジ(例えば、風呂マットや洗浄用スポンジなど)、化学畳や畳表、ワックス、クリーナなどに広く適用することができる。
【0045】
このように、本発明の抗菌性組成物は、樹脂材料に配合して成形したり、あらかじめ形成した成形体に塗料などの塗布材料とともに塗布するなどして、樹脂成形体に備えるようにした抗菌性樹脂成形体とすることにより、前記した効果を好適に奏することができる抗菌性樹脂成形体を提供することができる。
ここで、抗菌性樹脂成形体を構成する樹脂材料としては、特に制限はないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの樹脂材料の一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。また、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic:FRP)に添加してもよい。
【0046】
抗菌性樹脂成形体を得るには、例えば、前記した樹脂材料に本発明の抗菌性組成物を配合して、両者を混合した後、混練などにより両者を一体化して、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法などの公知の成形方法を用いて、所定の形状に成形すればよい。
ここで、抗菌性樹脂成形体に対する抗菌性組成物の含有率は、成形体に対して抗菌性組成物を0.01〜10.0質量%含有させることが好ましく、0.05〜2.0質量%含有させることが特に好ましい。抗菌性樹脂成形体に対する抗菌性組成物の含有率が0.01質量%より小さいと、当該組成物の奏する効果を成形体に付与することができない場合がある。一方、抗菌性組成物の含有率が10.0質量%を超えると、それ以上添加しても抗菌性能はほとんど変化がない。さらには、成形体の成形性に影響を与える場合がある。また、抗菌性組成物を構成する成分は一般に高価なため、コストの点からも問題となる。
なお、本発明において、抗菌性組成物の含有率とは、抗菌性樹脂成形体が積層体であって、その一部の層に抗菌性組成物が存在するようにする場合にあっては、かかる層における含有率を示す。
【0047】
また、抗菌性樹脂成形体をシートとする場合にあっては、単層シートに対して本発明の抗菌性組成物を含有させることにより、当該シートに対して抗菌性組成物の奏する効果を付与することができる。そして、本発明にあっては、シートを多層シートとして、抗菌性組成物を外面に表れる層(外層)に含有させるようにしてもよいが、抗菌性組成物を含有する層が外層に表れていないようにしても、シート表面に対して抗菌性組成物の奏する効果を好適に付与することができる。
そして、本発明の抗菌性組成物は、結晶化度が比較的に低い樹脂材料を用いることが好ましい。すなわち、結晶化度が低い樹脂材料の方が、樹脂材料中に存在する抗菌性組成物による抗菌作用が発揮されやすくなるためである。
【0048】
図1に、本発明の抗菌性樹脂成形体の一態様である3層の多層シート1の断面図を示したが、かかる3層の多層シート1に対しては、外層3に対して抗菌性組成物を添加した場合には、当該外層3における菌類の繁殖を阻止することができるのは勿論であるが、本発明の抗菌剤組成物の有する菌類への忌避効果を利用して、外層3でなく、中間層2に対して抗菌性組成物を含有させるようにしても、当該外層3における菌類の繁殖を阻止することができる。
なお、このように中間層2に対して抗菌性組成物を含有させる場合にあっては、外層3の厚みは1mm以下、好ましくは300μm以下とすればよい。
【0049】
同様に、本発明の抗菌性樹脂成形体が積層構造をとる場合にあっては、当該成形体の外層にあたる部分に抗菌性組成物を含有させることにより、当該外層における菌類の発育を阻止できるとともに、当該成形体の外層でない部分(中間層)に抗菌性組成物を含有させても、外層における菌類の発育を阻止することができる。
【0050】
また、抗菌性樹脂成形体は、前記した樹脂材料からなる成形体の表面に対して、抗菌性組成物を含有する塗膜を形成するようにしてもよい。塗膜を形成する樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂などの公知の溶剤系、水系、UV硬化型の種々の材料を使用することができる。また、抗菌性組成物を含有させたこれらの材料を成形体に対して塗工するには、スプレーコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、フローコーティング、ダイコーティング、コンマコーティングなどの各種コーティング手段や、スクリーン印刷、パッド印刷、オフセット印刷などの各種印刷手段を、使用する材料の種類や目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
また、本発明の抗菌性組成物を、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂などの水系樹脂溶液やエマルジョンに含有させて、コーティング剤などの塗布材料として使用してもよい。
【0052】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0053】
例えば、前記した図1では、抗菌性樹脂成形体の例として、3層構成の多層シート1を示したが、多層シートは3層には限定されず、2層あるいは4層以上のシートとしてもよく、また、前記したように、抗菌性樹脂成形体をシートとする場合にあっても、多層シートにする必要はなく、単層シートとしても問題はない。
【0054】
また、有機系抗菌剤として、ピリジン系抗菌剤とベンゾイミダゾール系抗菌剤とを組み合わせて使用することを例示したが、ベンゾイミダゾール系抗菌剤のみとしてもよい。具体的には、ベンゾイミダゾール系抗菌剤のうち2種以上、特にベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するもの、例えば2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール、および、ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するもの、例えば2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルを併用することがより好ましい。ベンゾイミダゾール系抗菌剤のみでも、ベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するものと、ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するものとの2種以上を併用することで、相乗効果により各成分個々では効果がないあるいは効果が低い菌類(藻類含む)に対しても抗菌性を発揮することができ、特に、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾールおよび2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルの2種を併用することで、より効率的に発揮される。
なお、ベンゾイミダゾール系抗菌剤として、例えば、メチル−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、エチル−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルなど、他のいずれのベンゾイミダゾール系でもよい。
【0055】
そして、適用方法としては、上述したように各種用途に粉体や液体などの各種形態で利用でき、例えば衣類用洗剤や食器洗剤などの洗浄剤への添加剤、衣類や家具などへのスプレー剤、旋盤などの切削機械の潤滑油への添加剤、洗浄剤であるクリーナや床用ワックスなどとして利用することもできる。
【0056】
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例などを挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例などの内容に何ら限定されるものではない。
【0058】
〔実施例1,2および比較例1〕
表1に記載される処方の各成分を混合して、実施例1,2および比較例1の抗菌性組成物を調製した。
なお、比較例1の構成は、実施例1において無機系抗菌剤を配合せず、各成分を等量(1/3)ずつ混合したものである(表1では、含有率は、便宜的に33.3質量%と記載している)。
【0059】
(抗菌性組成物の処方)
【表1】

【0060】
[試験例1]
抗菌性組成物の抗菌性能試験:
実施例1で得られた抗菌性組成物について、下記の試験方法に従って最小生育阻止濃度(MIC値:Minimum Inhibitory Concentrationの略)(ppm)を測定し、抗菌性能を評価した。
【0061】
(試験方法)
(i) 抗菌性組成物を所定の濃度(1000ppm、100ppm、50ppmなど)となるように、ジメチルスルホキシドで希釈して抗菌剤懸濁液を調製した。
【0062】
(ii)9cmシャーレに、121℃で20分オートクレーブ殺菌した寒天培地を9ml流し込み、(i)で調製した抗菌剤懸濁液を1ml添加して攪拌した。そして、シャーレを室温で放置して、寒天培地を固化させた。
【0063】
(iii) また、別途、1×106CFU/mlとなるように試験菌株を希釈して、この試験菌株と40℃で保温した減菌済0.9%寒天培地5mlとを混合して、試験菌株含有寒天溶液を調製した。
【0064】
(iv)(ii)の寒天培地上に(iii)で調製した試験菌株含有寒天溶液を重層して、固化させた。インキュベータ内にて、真菌は27℃、72時間培養後、また、細菌は30℃、24時間培養後それぞれ生育を確認した。このうち、試験菌が生育しない培地の中でもっとも抗菌性組成物の濃度の低いものを最低生育阻止濃度(MIC値:ppm)とした。結果を表2〜表7に示す。
【0065】
(結果:真菌類(1))
【表2】

【0066】
(結果:真菌類(2))
【表3】

【0067】
(結果:真菌類(3))
【表4】

【0068】
(結果:細菌類(1))
【表5】

【0069】
(結果:細菌類(2))
【表6】

【0070】
(結果:藻類)
【表7】

【0071】
表2〜表7の結果からわかるように、実施例1の抗菌性組成物はいずれの試験菌類(真菌類、細菌類、藻類)に対しても、MIC値が10〜120ppmの範囲内であり、極めて低い濃度で各種試験菌類の増殖を阻止することができた。このように、実施例1の抗菌性組成物が幅広い抗菌スペクトルを有し、幅広い菌類に対しても効果的に対応することが可能であることが確認できた。
【0072】
[試験例2]
テキスタイル試験:
実施例1および比較例1で得られた抗菌性組成物について、下記の試験方法に従ってテキスタイル試験を行い、一般繊維製品に対する抗菌性能を比較・評価した。結果を表8に示す。
【0073】
(試験方法)
試験方法はJIS L1902(1998)に従い、下記の(i)〜(iii)により行った。試験菌種としては、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)を用いた。
(i) テキスタイルサンプルの調製:
一液タイプのポリウレタン樹脂(大日精化工業(株)製)に対して、実施例1または比較例1の抗菌剤組成物を、乾燥重量で0.5質量%となるように添加、分散させた。
次に、このポリウレタン樹脂を離型紙上にバーコータまたはナイフコータでコーティングした後、80℃で乾燥して、抗菌剤組成物が0.5質量%含有された、厚みが10μmのポリウレタンフィルムを調製した。このウレタンフィルムをポリエステル生地に2液タイプの反応硬化型ポリウレタン接着剤を用いて貼り合わせて、サイズが100mm×100mmのテキスタイルサンプルを得た。
なお、ブランクとして、抗菌性組成物を含有しないテキスタイルサンプルも併せて調製した。
【0074】
(ii)次に、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)が含まれる液体培地に(i)で調製した実施例1、比較例1の抗菌性組成物を含んだテキスタイルサンプル(以下、便宜的に「実施例1(または比較例1)のテキスタイルサンプル」ということがある)、およびブランクのテキスタイルサンプルをそれぞれ入れた後、インキュベータ内で18時間培養させ、培養後の菌数を測定した。
【0075】
(iii) ここで、抗菌性能は、下記(I)式により抗菌活性値aを算出することにより評価した。なお、抗菌活性値aは0より大きければ抗菌効果があるものと考えられる。算出した実施例1および比較例1のテキスタイルサンプルの抗菌活性値を表8に示した。
【0076】
(数1)
抗菌活性値a = log10A−log10C …… (I)
A:ブランクのテキスタイルサンプルの培養前の菌数(個)
C:実施例1または比較例1のテキスタイルサンプルの培養後の菌数(個)
【0077】
(抗菌活性値)
【表8】

【0078】
表8の結果より、無機系抗菌剤であるリン酸ジルコニウムを含む実施例1の抗菌性組成物を備えたテキスタイルサンプル(実施例1のテキスタイルサンプル)は、明確な抗菌活性(3.20)を示し、実施例1の抗菌性組成物が通常の繊維製品においても、短時間(18時間以内に)抗菌性能を発揮できることが確認できた。
一方、無機系抗菌剤を含まない比較例1の抗菌性組成物を備えたテキスタイルサンプル(比較例1のテキスタイルサンプル)は、抗菌活性値が0より小さく(−0.65)、抗菌活性を示さなかった。
【0079】
[試験例3]
成形体(シート)の抗菌性能試験:
実施例1の抗菌性組成物を含有した成形体として、下記の構成のシートを調製した。そして、かかるシートの抗菌性能を表10に示した試験菌類を用いて、下記の試験方法および判定基準に従って確認した。結果を表11に示す。
(シートの構成)
図1に示した多層シート1において、中間層2に対して実施例1の抗菌性組成物を、中間層2のポリプロピレン樹脂(F744NP:出光石油化学(株)製)に対して0.05質量%含有させた材料を、また、両面の外層3には前記のポリプロピレン樹脂をそのまま用いた材料をTダイ押出して、ポリプロピレン樹脂からなる3層シートを調製した。
なお、中間層2の厚みは100μm、両面の外層3の厚みは、それぞれ20μmとなるようにした(これを、「実施例1−aのシート」という)。
【0080】
また、実施例1−aのシートにおいて、中間層2における抗菌性組成物の含有率を0.1質量%としたものを実施例1−bのシート、同様に中間層2における抗菌性組成物の含有率を0.5質量%としたものを実施例1−cのシートとしてそれぞれ調製した。
【0081】
そして、ポリエチレン樹脂(モアテック0138:出光石油化学(株)製)に対して実施例1の抗菌性組成物を0.5質量%含有させた材料を押出成形して、厚みが100μmの単層シートを調製した(これを「実施例1−dのシート」という)。
なお、ブランクとして、前記したポリプロピレン樹脂からなり、抗菌性組成物を含有しない、厚みが100μmの単層シートも併せて調製した(これを「参考例のシート」という)。
【0082】
(試験方法)
(i) 無機塩培地の調製:
表9に示した構成からなる無機塩培地を調製し、これを121℃で20分間オートクレーブ殺菌後、苛性ソーダ水溶液(NaOH水溶液)によりpHが6.0〜6.5となるように調整した。
【0083】
(無機塩培地)
【表9】

【0084】
(ii)混合胞子液の調製:
下記の表10に示した菌株からなるカビの胞子を減菌水に懸濁させ、ろ過して濃度が約1×106cell/mlの混合胞子液を調製した。なお、胞子の懸濁には、ラウリル硫酸ナトリウムを用いて分散を行うようにした。
【0085】
(菌株の種類)
【表10】

【0086】
(iii)(i)で調製した無機塩培地に(ii)で調製した混合胞子液をまいた後、上から実施例1−a,1−b,1−c,1−dおよび参考例のシートをサイズ50mm×50mmに切断した試験片のそれぞれを載せた後、温度を28℃、湿度を85%RH以上とした状態で28日間カビを培養させた。そして、7日ごとに(培養開始後7日、14日、21日、28日目に確認)カビの生育状況を目視で確認し、下記の判定基準を用いて評価した。結果を表11に示した。
【0087】
(判定基準)
判 定 内 容
1 試験片表面にカビが全く発育しない
2 カビの発育が試験片全面の10%未満である
3 カビの発育が試験片全面の10%以上30%未満である
4 カビの発育が試験片全面の30%以上60%未満である
5 カビの発育が試験片全面の60%以上である
【0088】
(結 果)
【表11】

【0089】
表11の結果からわかるように、実施例1の抗菌性組成物を備えたシートは、単層シートとして抗菌性組成物が外層(表面)に表れる実施例1−dのシートに加えて、当該抗菌性組成物をシートの中間層とした多層シートである実施例1−a,実施例1−bおよび実施例1−cのシートも抗菌性能を示すことが確認され、この結果により、抗菌性組成物を含む層を成形体の中間層に備えた場合であっても、シート表面におけるカビなどの生育を阻止することができると考えられる。
【0090】
[試験例4]
抗菌性組成物の金属腐食試験:
サイズ50mm×50mm×3mm厚の鉄試験片に対して、実施例1および実施例2の抗菌性組成物50gをそれぞれ直接接触させ、温度を190℃とした状態で90時間放置した後、鉄試験片の表面状態の変化を観察した。
【0091】
その結果、実施例1の抗菌性組成物を接触させた鉄試験片は、表面に固着物の生成もなく、表面状態に変化は見られなかった。一方、実施例2の抗菌性組成物を接触させた鉄試験片は、表面に固着物が生成し、この固着物は水やヘプタンなどの一般的な溶剤での拭き取りでは除去できないものであり、鉄などの金属を汚染するものである。従って、実施例2のようなハロゲンを含有する抗菌性組成物は、樹脂材料に混練して成形体を得る際に、金属製の成形金型などの金属部品の劣化を引き起こすことが予想される。
【0092】
[試験例5]
抗菌性組成物を含有したレザーシートの評価:
実施例1の抗菌性組成物を含有した成形体として、下記の製造方法を用いて、実施例1の抗菌剤組成物を含有した表12の構成の塩化ビニル製レザーシートを調製して、抗菌性能を確認した。結果を表13に示す。
【0093】
(レザーシートの製造方法)
(i) 実施例1の抗菌性組成物と、発泡剤(アゾジカルボン酸アミド)と塩化ビニル樹脂(重合度1300の塩化ビニル樹脂に可塑剤として等量のフタル酸ジイソデシルを添加)を、発泡層を構成する発泡剤と塩化ビニル樹脂との合計に対して抗菌剤組成物を0.2質量%含有させて、カレンダー成形法により厚みが250μmのシート(発泡層)を成形した(発泡層は後記する発泡処理により厚みが500μmとなる)。なお、発泡剤は塩化ビニル樹脂に対して3.5質量%配合した。
この発泡層を、あらかじめ接着剤を厚みが10μmとなるように接着層として塗布したポリエステル−レーヨン生地(厚み 600μm)と貼り合わせた。
【0094】
(ii)塩化ビニル樹脂(重合度1300の塩化ビニル樹脂に可塑剤として等量のフタル酸ジイソデシルを添加)を厚みが200μmとなるようにカレンダー成形法によりシート化して、これを、(i)で得られた発泡層/接着層/ポリエステル−レーヨン生地に対して、発泡層の上面に積層させて貼り合わせて、表面層を形成した。
【0095】
(iii) (ii)で得られたシートの表面層に表面処理剤(塩化ビニルとアクリル系樹脂からなる溶剤系表面処理剤)を乾燥後の厚みが5μmとなるようにしてコーティングした後、110℃で乾燥し、その後、雰囲気温度が230℃の発泡炉で発泡層が500μmとなるように発泡処理して、塩化ビニル樹脂製のレザーシートを得た(これを「実施例1のレザーシート」という)。
なお、ブランクとして、抗菌性組成物を含有しない、塩化ビニル樹脂製のレザーシートも併せて調製した(これを「参考例のレザーシート」という)。
【0096】
(塩化ビニル製レザーシートの構成)
【表12】

【0097】
このようにして得られた塩化ビニル製の実施例1のレザーシートと比較例のレザーシートとの抗菌性能を、試験例3に示した試験方法および判定基準に準拠して、表10の試験菌類を用いて、確認した(なお、試験は21日経過までとした)。結果を表13に示す。
【0098】
(結 果)
【表13】

【0099】
表13の結果から、抗菌剤組成物を含有しない比較例のレザーシートでは、菌類の培養期間が進むに従って菌類が繁殖し、カビが生育していったが、実施例1の抗菌性組成物を備えたレザーシートは、菌類の繁殖を防止して、カビが全く生育せず、優れた抗菌性能を示すことが確認できた。
また、発泡層のみに添加しているため、菌類との接触効率は低いが、忌避効果のあることが証明された。
【0100】
〔実施例3および比較例2,3〕
表14に記載される処方の各成分を混合して、実施例3および比較例2,3の抗菌性組成物を調製した。
実施例3は、有機系抗菌剤として、ベンゾイミダゾール系から選ばれる2種である、チアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)およびカルベンダジム(メチル−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)である。そして、これら各成分は等量(1:1)で配合されたものを有機系抗菌剤とした。さらに、無機系抗菌剤としては、銀担持リン酸ジルコニウムおよび酸化亜鉛を併用し、銀担持リン酸ジルコニウム6質量%、酸化亜鉛28質量%とした。
なお、比較例2の構成は、実施例3において無機系抗菌剤を配合せず、各成分を等量(1/2)ずつ混合したものである。また、比較例3の構成は、実施例3において有機系抗菌剤を配合せず、実施例3における無機系抗菌剤の各成分と同一の成分にて適宜配合したものである(銀担持リン酸ジルコニウム33質量%、酸化亜鉛67質量%)。
【0101】
(抗菌性組成物の処方)
【表14】

【0102】
そして、試験方法としては、上述した実施例1,2および比較例1における試験方法と同一の抗菌性能試験を実施した。その結果を表15ないし表20に示す。
【0103】
(結果:真菌類(1))
【表15】

【0104】
(結果:真菌類(2))
【表16】

【0105】
(結果:真菌類(3))
【表17】

【0106】
(結果:細菌類(1))
【表18】

【0107】
(結果:細菌類(2))
【表19】

【0108】
(結果:藻類)
【表20】

【0109】
通常、固形分への添加濃度は、MIC値の100倍以上であることから、経済性、安全性を考慮すると、本発明ではMIC値が50ppm以下を実施例レベルとした。
すなわち、社団法人繊維評価技術協議会の定義(規格値)は800ppm以下ならば抗菌剤として合格レベルであるが、800ppmの100倍では8質量%配合することとなり、経済性や抗菌性成形物あるいは抗菌性溶液としての物性的にも影響が生じるおそれがある。
上述したように、表15ないし表20に示す結果からわかるように、実施例3の抗菌性組成物はいずれの試験菌類(真菌類、細菌類、藻類)に対しても、MIC値が50ppm以下であり、極めて低い濃度で多くの各種試験菌類の増殖を阻止することができた。このように、実施例3の抗菌性組成物が幅広い抗菌スペクトルを有し、幅広い菌類に対しても効果的に対応することが可能であることが確認できた。
【0110】
〔実施例4および比較例4〜7〕
(試料)
本発明の抗菌性成形体として、畳表を作製し、抗菌性について比較評価した。
実施例4として、実施例3の抗菌性組成物を0.2質量%でポリオレフィン樹脂に混合・混練し、インフレーション成形により歩オレフィンフィルムを作製し、繊維状に成形した後、畳表に織り上げたものとした。
比較例4として、市販抗菌剤であるチアベダゾールを0.2質量%の配合割合で、実施例4と同様にしてポリオレフィンの畳表を作製したものとした。比較例5として、銀担持ゼオライト(シナネンセオミック(商品名))を0.2質量%の配合割合、比較例6として、銀担持ゼオライト(シナネンセオミック(商品名))を1.0質量%の配合割合で、実施例4と同様にしてポリオレフィンの畳表を作製したものとした。比較例7としては、抗菌剤を配合せずに、実施例4と同様にしてポリオレフィンの畳表を作製したものとした。
【0111】
(評価方法)
(1)無機塩培地の調製
上記試験例3における表9に示す無機塩培地に表10に示す混合胞子液をまいた後、上から実施例4、比較例4〜7をサイズ50mm×50mmに切断した試験片のそれぞれを載せ、温度を28℃、湿度を85%RH以上とした状態で28日間カビを培養させた。そして、カビの生育状況を目視で確認し、試験例3の判定基準を用いて評価した。その結果を表21に示す。
また、実施例4および比較例4〜7について、社団法人繊維評価技術協議会で規定され菌種として黄色ブドウ球菌における殺菌活性値(一般用途)についても比較評価した。その結果を表21に合わせて示す。
【0112】
(評価結果)
【表21】

【0113】
この表21に示すように、本発明の抗菌性組成物を含有する畳表は、従来の防かび剤であるチアベンダゾール配合品の畳表よりも明確に強い防かび性を発揮することが認められた。また、実施例4については、社団法人繊維評価技術協議会で規定された殺菌活性値(一般用途)についても、log(A/C)≧0(A:接種直後の標準布の菌数、C:18時間培養後の加工布の生菌数)を満たし、抗菌評価(殺菌活性値)も良好であった。
【0114】
〔実施例5〕
(試料)
本発明の抗菌性組成物含有溶液として、洗浄剤である床面処理剤としての床用ワックスを調製し、抗菌性について比較評価した。
試料としては、プロペラ式攪拌機により、エチルアルコール、下記の界面活性剤、および実施例3の抗菌性組成物を投入して十分に攪拌し、抗菌性組成物含有溶液を調製した。配合比は、エチルアルコール68質量%、実施例1の抗菌性組成物30質量%、上述の界面活性剤2質量%とした。
なお、界面活性剤は、脂肪族高級アルコールエチレンオキサイド付加物を1質量%、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸1質量%の混合物である。
【0115】
(試験方法)
(1)上述した方法で調製した抗菌性組成物含有溶液と、市販の床用ワックス(横浜油脂工業製 商品名:LINDA スーパーハードコート)とを、プロペラ式攪拌機を用いて適宜攪拌混合し、クリーナワックスを調製した。このクリーナワックスは、抗菌性組成物の配合量が、このクリーンワックスの乾燥後の含有率として、0質量%、0.05質量%および0.2質量%となる状態に調製した。
(2)ポリエチレンシートに(1)で調製したクリーナワックスを70g/m2となる状態に均一塗布し、自然乾燥し、試験片とした。なお、乾燥後の目付は、約18g/m2であった。そして、各試験片の社団法人繊維評価技術協議会で規定され菌種として黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌およびメチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウス(MRSA)における殺菌活性値(一般用途)についても比較評価した。その結果を表22に示す。
【0116】
(評価方法)
評価方法は、上述した〔実施例4および比較例4〜7〕の実験の評価方法と同様に実施した。すなわち、上記試験例3における表9に示す無機塩培地に表10に示す混合胞子液をまいた後、作製した試験片を載せ、温度を28℃、湿度を85%RH以上とした状態で28日間カビを培養させた。そして、カビの生育状況を目視で確認し、上述した試験例3の判定基準を用いて評価した。その結果を、表23に示す。
【0117】
(殺菌活性性値)
【表22】

【0118】
(評価結果)
【表23】

【0119】
これら表22および表23に示すように、抗菌性組成物を0.05質量%の低濃度でも殺菌効果が認められ、0.2質量%配合した塗板では、抗菌性および抗カビ性とも、非常に優れていることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の抗菌性組成物や当該抗菌性組成物を備えた抗菌性樹脂成形体は、例えば、微生物が繁殖しやすい環境に使われる樹脂製部品や塗料材料などとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の抗菌性樹脂成形体の一態様である3層の多層シートの断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1…多層シート
2…中間層
3…外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系抗菌剤と無機系抗菌剤とを含有する
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌性組成物において、
前記無機系抗菌剤は、金属を担持したジルコニウムまたはその塩あるいはゼオライトである
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の抗菌性組成物において、
前記無機系抗菌剤は、銀または銅を担持したリン酸ジルコニウムまたはその塩あるいはゼオライトである
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の抗菌性組成物において、
前記有機系抗菌剤は、ピリジン系抗菌剤およびベンゾイミダゾール系抗菌剤である
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の抗菌性組成物において、
前記ピリジン系抗菌剤は、2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムであり、
前記ベンゾイミダゾール系抗菌剤は、カルベンダジム(1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル)およびチアベンダゾール(2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール)のうちの少なくともいずれか一方である
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の抗菌性組成物において、
前記有機系抗菌剤は、ベンゾイミダゾール系抗菌剤から選ばれた2種である
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の抗菌性組成物であって、
前記ベンゾイミダゾール系の有機系抗菌剤から選ばれた2種は、ベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するものと、ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するものとである
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の抗菌性組成物であって、
前記ベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するものは、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾールであり、
前記ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するものは、2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルである
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の抗菌性組成物において、
前記有機系抗菌剤および無機系抗菌剤は、実質的にハロゲンを含まない
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の抗菌性組成物において、
前記無機系抗菌剤は、含有率が組成物全体に対して0.1質量%以上70質量%以下である
ことを特徴とした抗菌性組成物。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の抗菌性組成物を備えた
ことを特徴とした抗菌性樹脂成形体。
【請求項12】
請求項11に記載の抗菌性樹脂成形体において、
前記抗菌剤組成物を成形体に対して0.01質量%以上10.0質量%以下で含有する
ことを特徴とした抗菌性樹脂成形体。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の抗菌性樹脂成形体であって、
前記無機系抗菌剤が全体質量に対して0.5質量%未満の割合で含有される状態に前記抗菌性組成物が含有され、
社団法人繊維評価技術協議会で規定された殺菌活性値(一般用途)が、以下の条件である
log(A/C)≧0
A:接種直後の標準布の菌数
C:18時間培養後の加工布の生菌数
菌種:黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌
ことを特徴とした抗菌性樹脂成形体。
【請求項14】
請求項11または請求項12に記載の抗菌性樹脂成形体であって、
フィルム状またはシート状あるいはこれらの積層体に形成された
ことを特徴とした抗菌性樹脂成形体。
【請求項15】
請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体において、
成形体は、多層シートであり、
抗菌性組成物を含有する層が外層に表れていない
ことを特徴とした抗菌性樹脂成形体。
【請求項16】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の抗菌性組成物が溶液中に分散された
ことを特徴とした抗菌性組成物含有溶液。
【請求項17】
請求項16に記載の抗菌性組成物含有溶液であって、
前記抗菌性組成物は、濃度が0.1質量%以上50質量%以下で分散された
ことを特徴とした抗菌性組成物含有溶液。
【請求項18】
請求項16に記載の抗菌性組成物含有溶液であって、
使用時における前記抗菌性組成物の濃度が10ppm以上1000ppm以下に希釈可能に分散された
ことを特徴とした抗菌性組成物含有溶液。
【請求項19】
請求項16ないし請求項18のいずれかに記載の抗菌性組成物含有溶液を含有した
ことを特徴とした洗浄剤。
【請求項20】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の抗菌性組成物を含有するフィルムにより形成された
ことを特徴とした畳表。
【請求項21】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の抗菌性組成物を含有するフィルムを備えた
ことを特徴とした畳。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−52205(P2006−52205A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136708(P2005−136708)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】