説明

抗血管新生ペプチドおよびその使用方法

内皮細胞のVEGF媒介性活性化または増殖を阻害する抗血管新生ペプチドが開示される。かかるペプチドを用いて、VEGFR2受容体(キナーゼドメイン受容体またはKDRとしても知られる)へのVEGFの結合を阻害し得る。かかるペプチドを用いて、癌、炎症性疾患、眼疾患および皮膚障害等の血管新生関連疾患における、内皮細胞のVEGF媒介性活性化も阻害し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願は、血管新生関連疾患の治療および特徴付けのための治療用ペプチド、特に血管内皮増殖因子(VEGF)が、その受容体であるキナーゼドメイン受容体またはキナーゼインサートドメイン含有受容体(KDR)としても知られるVEGFR2に結合することをブロックする抗血管新生ペプチドの、同定および設計に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血管新生は、既存の血管から発生することによって新しい血管が形成される過程である。この多段階過程は内皮細胞へのシグナル伝達を伴い、結果として(1)起源となる血管の膜の溶解、(2)内皮細胞の遊走および増殖、ならびに(3)遊走細胞による新しい血管の形成を生じる(アルバーツ(Alberts)ら、1994年、モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(Molecular Biology of the Cell)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York、N.Y.)のガーランド・パブリッシング・インク(Garland Publishing,Inc.,)、1294頁)。この過程は、創傷治癒および心筋梗塞修復等の有益な生理学的事象において身体に利用されているが、腫瘍細胞等の望まれない細胞によっても利用され、アテローム硬化症、皮膚炎、乾癬および関節リウマチ等の炎症状態、ならびに糖尿病性網膜症および黄斑変性等の眼疾患等の望ましくない状態においても利用される。
【0003】
血管新生は、固形腫瘍の増殖および転移に必要である。研究によって、血管新生がない場合、腫瘍が直径数ミリメートルを超えて発達する能力を有することはまれであることが確認されている(イサアエヴァ(Isayava)ら、2004年、インターナショナル・ジャーナル・オブ・オンコロジー(Int.J.Oncol.)25(2)、335−43頁)。血管新生はまた、血液循環への腫瘍細胞の侵入を容易にし、転移部位での腫瘍増殖のための栄養分および酸素を供給する新しい血管を提供することによる、転移形成にも必要である(タケダ(Takeda)ら、2002年、アナルズ・オブ・サージカル・オンコロジー(Ann Surg.Oncol.)9(7)、610−16頁)。
【0004】
内皮細胞はまた、慢性炎症性疾患に活発に関与し、血管新生、増殖および組織変性に関与する種々のサイトカイン、サイトカイン受容体およびプロテアーゼを発現する。例えば、関節リウマチの際、内皮細胞は活性化され、接着分子およびケモカインを発現し、血液から組織への白血球遊走につながる。内皮細胞透過性が増大し、水腫形成および関節の膨張につながる(ミドルトン(Middleton)ら、2004年、アースリティス・リサーチ・アンド・セラピー(Arthritis Res.Ther.)6(2),60−72頁)。
【0005】
異常な新血管形成はまた、種々の眼疾患においても見られ、眼の出血および機能障害につながり、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞および加齢黄斑変性等の疾患に関連する視力の喪失の一因となる(ヨシダ(Yoshida)ら、1999年、ヒストロジカル・ヒストパソロジー(Histol Histopathol.)14(4)、1287−94頁)。これらの状態は、乳児、労働年齢および高齢の者たちの間の失明の主要な原因である(アイエロ(Aiello)、1997年、オフサルミック・リサーチ(Ophthalmic Res.)29(5),354−62頁)。
【0006】
血管新生を理解することはまた、乾癬、いぼ、皮膚悪性腫瘍、褥瘡性潰瘍、うっ血性潰瘍、化膿性肉芽腫、血管腫、カポジ肉腫、ならびに恐らくはスピッツ母斑、過形成性瘢痕およびケロイド等の病的皮膚科学的過程の重要な一因であるので、皮膚疾患の治療に非常に重要である(アービサー(Arbiser)、1996年、ジャーナル・オブ・アメリカン・アカデミー・オブ・ダーマトロジー(J.Am.Acad.Dermatol.)34(3)、486−97頁)。このように、血管新生の理解における最近の発展は、皮膚癌、乾癬および他の皮膚疾患の治療の進歩、ならびにより迅速な創傷の治癒につながるであろう。
【0007】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管新生の間に内皮細胞特異的マイトジェンとして作用する、特に有効な血管新生因子である(ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tourniere)ら、2000年、EMBOジャーナル(EMBO J.)19(7)、1525−33頁)。VEGFは、腫瘍関連血管新生の刺激による固形腫瘍増殖および転移の促進への関与が示唆されている(ルー(Lu)ら、2003年、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)278(44)、43496−43507)。VEGFは、関節リウマチ(RA)の患者の滑液および血清で見られており、その発現は疾患の重症度と相関性がある(クラベル(Clavel)ら、ジョイント・ボーン・スパイン(Joint Bone Spine)2003年 70(5)、321−6頁)。VEGFはまた、眼内新血管形成および透過性の主要なメディエーターに関係があると示唆されている。VEGFを過剰発現するトランスジェニックマウスは、臨床的な網膜内および網膜下新血管形成を示し、血管造影によって検出可能な漏出性の眼内血管を形成し、ヒト疾患へのそれらの類似性を示す(ミラー(Miller)、1997年、アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Am.J.Pathol.)151(1)、13−23頁)。
【0008】
そのように広範な障害および疾患への病的血管新生の関与を考慮すれば、血管新生、特にVEGFシグナル伝達の阻害は、望ましい治療上の目的である。VEGFは、2つの高親和性チロシンキナーゼ受容体、VEGFR1(またはfms様チロシンキナーゼ、Flt−1)およびVEGFR2(キナーゼドメイン受容体またはキナーゼインサートドメイン含有受容体、KDRとしても公知)を介して作用する。VEGFR1はKDRより50倍高い親和性でVEGFに結合するが、KDRは、VEGF血管新生効果、すなわち分裂促進性、走化性および管形成の誘導の、主要なトランスデューサーと思われる(ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tourniere)ら、上掲)。したがって、VEGFによるKDR媒介性シグナルトランスダクションの阻害は、抗血管新生干渉のための優れたアプローチを意味する。
【0009】
これに関して、血管新生の阻害および腫瘍阻害は、VEGFに対する抗体(キム(Kim)ら、1993年、ネイチャー(Nature)362、841−844頁、カナイ(Kanai)ら、1998年、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(J.Cancer)77、933−936頁、マーゴリン(Margolin)ら、2001年、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J.Clin.Oncol.)19、851−856頁)、KDRに対する抗体(ルー(Lu)ら、上掲、チュー(Zhu)ら、1998年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)58、3209−3214頁、チュー(Zhu)ら、2003年、リューキミア(Leukemia)17、604−611、プルウェット(Prewett)ら、1999年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)59、5209−5218頁)、抗VEGF免疫毒素(オルソン(Olson)ら、1997年、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Cancer)73、865−870頁)、リボザイム(パヴコ(Pavco)ら、2000年、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin.CancerRes.)6、2094−2103頁)、可溶性受容体(ホラッシュ(Holash)ら、2002年、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)99、11393−11398頁、クラベル(Clavel)ら、上掲)、チロシンキナーゼ阻害剤(フォング(Fong)ら、1999年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)59、99−106頁、ウッド(Wood)ら、2000年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)60、2178−2189頁、グロシオス(Grosios)ら、2004年、インフラメーション・リサーチ(Inflamm Res.)53(4)133−42頁)、アンチセンス媒介性VEGF抑制(フォースター(Forster)ら、2004年、キャンサー・レターズ(Cancer Lett.)20,212(1)、95−103頁)、およびRNA干渉(タケイ(Takei)ら、2004年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)64(10)、3365−70頁、ライヒ(Reich)ら、2003年、モレキュラー・ビジョン(Mol Vis.)9、210−6頁)を含む、VEGF/KDR相互作用の中断および/またはKDRシグナルトランスダクション経路のブロックのいずれかをする薬剤を使用することによって、達成されている。KDRへのVEGFの結合をブロックするペプチドもまた記載されており、ウサギ角膜モデルにおいてVEGF誘導血管新生を阻害することが示された(ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tourniere)ら、2000年、EMBOジャーナル(EMBO J.)19(7)、1525−33頁)。さらに、効果的な抗血管新生治療の開発からの恩恵を受ける立場である様々な患者を考慮すれば、新規の抗血管新生薬剤化合物のさらなる同定および特徴付けの必要性が残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
最近、ジェネンテック(Genenech)が、組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体、アバスチン(Avastin)(ベバシズマブ)を市場に導入した。この抗体は、結腸癌の治療において有効性を示し、他の腫瘍細胞型でも試験されている。コスト分析から、この抗体を用いた治療は、進行した結腸癌のケアのコストに患者一人あたり42,800ドルから55,000ドル、または米国で年間15億ドルを加算し得ることが示唆される。従って、製造がより安価で、著しく低いコストで治療に用い得る、小ペプチド等の代替薬物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ミニペプチドディスプレイ技術を用いて、内皮細胞活性化または増殖のVEGF誘導刺激をブロックまたは減少させる新規の抗血管新生ペプチドを同定した。本発明のペプチドによって、従来技術に対する改良が提供され、ここで、本発明のペプチドの少なくともいくつかは、これまでに既知のペプチドと比較して相当に低いIC50を示す。したがって、本発明のペプチドは、腫瘍ならびに新形成、関節リウマチおよび乾癬等の炎症性疾患、アテローム硬化症、血管再狭窄、動静脈奇形および血管癒着病変を含む血管障害、ならびに糖尿病性網膜症および黄斑変性を含む眼疾患の治療を含む、血管新生関連疾患の治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
ペプチド
本発明者らは、新規の抗血管新生ペプチドを同定した。用語「抗血管新生」は、本発明のペプチドが、血管新生の過程、または既存の血管から発生することによって新しい血管の形成プロセスを、ブロック、阻害または減少させることを意味する。かかるペプチドは、(1)起源となる血管の膜の溶解の段階、(2)内皮細胞の遊走および増殖の段階、ならびに(3)遊走細胞による新しい血管の形成の段階を含む、血管新生に関与する任意の段階をブロックまたは減少させることによって、血管新生をブロックし得る。
【0013】
具体的には、本発明のペプチドは、本明細書中または利用可能な文献に記載される任意の1つ以上のアッセイを用いて検出または測定され得るように、内皮細胞活性化または増殖のVEGF誘導刺激をブロック、阻害または減少させる。例えば、開示されるペプチドがVEGF誘導刺激を阻害または減少させる能力は、本明細書中に記載されるように、開示されるペプチドをVEGF存在下でインキュベートし、ウシ網膜内皮細胞(BRE)またはヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖または生存における任意の減少をモニタリングすることによって測定され得る。Bcl−2またはA1等の1つ以上の抗アポトーシスタンパク質の発現に対するペプチドの効果(ガーバー(Gerber)ら、1998、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)273(21)、133313−16参照)、またはAkt等のVEGFシグナル伝達タンパク質のリン酸化もしくは脱リン酸化に対するペプチドの効果(ガーバー(Gerber)ら、1998、273(46)、3033−43参照)を検出することを含む内皮細胞刺激の他の測定もまた用いられ得る。
【0014】
本発明のペプチドはまた、開示されるミニペプチドディスプレイ技術または任意の公知の競合的もしくは非競合的KDR結合アッセイを用いて検出または測定されるように、KDRへのVEGFの結合を、ブロック、阻害または減少させる。これに関して、本発明のペプチドを発現する、標識されたミニセルまたは任意の他の細胞を用いて、開示されるペプチドの、KDRへの結合を検出または測定し得る。本発明はまた、本明細書中に開示される任意のペプチドの標識されたペプチド誘導体を包含し、ここでペプチドは、放射性、蛍光、発光、タンパク新生、免疫原性または任意の他の適した分子等の検出可能な標識に、結合または複合体化される。
【0015】
用語「ペプチド」は、本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」と同等であり、少なくとも6個のアミノ酸の配列を含む分子をいうが、全体、天然または自然のタンパク質のポリペプチド配列をいわない。このように、本発明のペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは100、75、50、40、30、25、20または15個までのアミノ酸を有する。本発明の最も好ましいペプチドは、少なくとも約6個で約12個以下のアミノ酸を有するであろう。
【0016】
従来技術のKDRブロッキングペプチドでのミニペプチドディスプレイ技術を用いて同定されたペプチドの相同性アラインメントに基づいて、本発明者らは、実質的に改良された抗血管新生特性を有するペプチドの新規のファミリーにコア配列を提供するLPPHSS(配列番号1)のコンセンサセス配列を同定した。このコアコンセンサセス配列は、相同性アラインメントによって、N末端アミノ酸ATSの少なくとも1つ以上および/またはC末端アミノ酸QSPの少なくとも1つ以上を含むようにさらに拡張され、ATSLPPHSS(配列番号10)、LPPHSSQSP(配列番号13)およびATSLPPHSSQSP(配列番号16)の、拡張されたコンセンサセス配列を生じた。
【0017】
配列番号16のアミノ酸配列を含むペプチドは、具体的に、これまでに既知のペプチドと比較して約40ミクロモル対約200ミクロモルの、有意に低いIC50を示すことが証明されている。したがって、本発明のペプチドは、抗血管新生活性の機能的特質を示し、約200ミクロモル未満の濃度、より好ましくは約175、150、125、100または75ミクロモル未満の濃度、最も好ましくは約50ミクロモル未満の濃度で、KDRへのVEGFの結合をさらにブロックまたは減少させ得る。
【0018】
本発明の好ましいペプチドとしては、以下のペプチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。
LPPHSS(配列番号1)
SLPPHSS(配列番号2)
LPPHSSQ(配列番号3)
SLPPHSSQ(配列番号4)
TSLPPHSS(配列番号5)
LPPHSSQS(配列番号6)
TSLPPHSSQ(配列番号7)
SLPPHSSQS(配列番号8)
TSLPPHSSQS(配列番号9)
ATSLPPHSS(配列番号10)
ATSLPPHSSQ(配列番号11)
ATSLPPHSSQS(配列番号12)
LPPHSSQSP(配列番号13)
SLPPHSSQSP(配列番号14)
TSLPPHSSQSP(配列番号15)
ATSLPPHSSQSP(配列番号16)
ATSLPPHSSLQT(配列番号17)
ATSLPPHSSQSPL(配列番号18)
ATSLPPHSSQSPRAL(配列番号19)
SLPPRALQ(配列番号20)
TSLPPRAL(配列番号21)
LPPRALQS(配列番号22)
TSLPPRALQ(配列番号23)
SLPPRALQS(配列番号24)
TSLPPRALQS(配列番号25)
ATSLPPRAL(配列番号26)
ATSLPPRALQ(配列番号27)
ATSLPPRALQS(配列番号28)
LPPRALQSP(配列番号29)
SLPPRALQSP(配列番号30)
TSLPPRALQSP(配列番号31)
ATSLPPRALQSP(配列番号32)
WLPPHSS(配列番号33)
ATWLPPHSSQSP(配列番号34)
WLPPRAL(配列番号35)
ATWLPPRALQSP(配列番号36)
PSQSSHPPLSTA(配列番号37)
【0019】
本発明のペプチドは、開示される配列を「含み」得、すなわち、開示される配列は、開示されるペプチドに、促進された溶解性および/または安定性、ペプチド活性または結合をモニタリングまたは測定するためのマーカータンパク質、免疫原性または抗原性ペプチド等を含むより大きいペプチド等への融合等のさらなる機能的特質を提供し得るまたはし得ない、より大きいペプチド配列の一部である。本発明の好ましいペプチドは、ペプチドの抗血管新生活性および機能的結合特性に影響しない無関係な配列に加えて、開示される配列から「本質的になる」配列を含むとして記載され得る。あるいは、本発明のペプチドは、開示されるペプチド配列のみからなり得る。
【0020】
コアペプチドの配列は、抗血管新生活性およびKDRへの結合を維持する一方で、可溶性、血清中または血漿中安定性等のパラメータを促進するために、保存的置換および/または化学的修飾もしくは他の分子への結合によって修飾され得る。具体的には、本発明のペプチドは、N末端でアセチル化および/またはC末端でアミド化、または、アルブミン、免疫グロブリンおよびそれらの断片、トランスフェリン、リポタンパク質、リポソーム、α−2−マクログロブリンおよびα−1−糖タンパク質、ポリエチレングリコールおよびデキストランを含むがこれらに限定されない血清中安定性を促進する分子に結合、複合体化もしくは融合され得る。かかる分子は、その全体が参照によって本明細書中に援用される米国特許第6,762,169号明細書に詳細に記載されている。L−アミノ酸またはD−アミノ酸のいずれかを有するペプチドおよび機能的な保存的バリアント、特に、前掲のアミノ酸配列番号37を有するペプチド等の、逆転したコア配列を有するD−アミノ酸ペプチド(レトロインベルソペプチド(retro inverso peptide
))が含まれる。レトロインベルソペプチドは、生物学的in vitro活性を保持しており、血清プロテアーゼ耐性でもあるが、医薬開発により適しており、結果として、促進されたin vivoでの生物学的活性を生じることが示されている。また、このペプチドは、ペプチド結合の1つ以上を減少させることによって修飾されて安定性を促進し得る(M.W.ペニントン(Pennington)およびB.M.ダン(Dunn)編、モレキュラー・バイオロジー(Molecular Biology)35(1994年)、ニュージャージー州トトワ(Totowa,NJ)のヒューマナ・プレス(Hummana Press Inc.,)241−247頁中のペニントン(Pennington)「CHNHで減少した結合代用物を含むペプチドの固相合成(solid-phase synthesis of peptides containing the CHNH reduced band surrogate)」)。
【0021】
保存的アミノ酸置換は、天然または非天然のアミノ酸のいずれかを用いて生じ得る。適切な保存的置換は、任意の公知のスコアマトリックスまたは標準的相同性比較を用いて決定され得、以下に記載される置換を含むが、これらに限定されない。ボルド(Bordo)およびアルゴス(Argos)、「部位特異的変異誘発における「安全な」残基置換の提案(Suggestions for ’Safe’ Residue Substitutions in Site−Directed Mutaegnsis)」、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)217(1991年)721−729頁、テーラー(Taylor)、「アミノ酸保存の分類(The Classification of Amino Acid Conservation)」、ジャーナル・オブ・セオレティカル・バイオロジー(J.Theor.Biol.)119(1986年)205−218頁、フレンチ(French)およびロブソン(Robson)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・エボリューション(J.Mol. Evol. 19(1983年)171、R.ドゥーリトル(Doolittel)編、「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」(ISBN 0−12−182084−X、サンディエゴのアカデミック・プレス(Academic Press,San Diego)183(1990)、63−98頁中のピアソン(Pearson)、「FASTPおよびFASTAを用いた迅速かつ高感度な配列比較(Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA)」、ならびにジョンソン(Johnson)およびオーバリントン(Overington)「配列比較の構造的基盤:スコアリング方法の評価(A Structural Basis for Sequence Comparisons:An Evaluation of Scoring Methodologies)」、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)(1993年)233、16−738頁、ならびに米国特許第5,994,125号明細書、これらの各々は、その全体が参照によって本明細書中に援用される。化学的特性に基づくいくつかの例示的な保存的置換が、下の表1に含まれる。
【0022】
【表1】

【0023】
本発明はまた、本明細書中に開示されるペプチドに特異的に結合する抗体を包含する。例示的な抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、完全ヒト、キメラ、二重特異性およびヘテロ結合抗体が挙げられる。モノクローナル抗体は、参照によって本明細書中に援用されるケーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、ネイチャー(Nature)256、495(1975年)によって記載されるもの等のハイブリドーマ法を用いて調製され得る。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化し得る。免疫化剤は、典型的には、ペプチド、またはその融合タンパク質を含み、さらに担体またはアジュバントタンパク質をさらに含む。
【0024】
抗イディオタイプ抗体もまた、本明細書中に記載されるようなペプチドと実質的に同様な特性を示す、標準的手順を用いて調製され得る。したがって、かかる抗体を用いて、開示されるペプチドと同様に、内皮細胞のVEGF媒介性刺激を阻害または減少させ得る。開示されるペプチドに特異的な抗体は、標識され得、例えば本明細書中に記載される受容体結合アッセイのいずれかにおいて、ペプチドを検出するよう用いられ得る。あるいは、かかる抗体を用いて、組み換えによって合成されたペプチドを精製し得る。
【0025】
核酸
本発明はまた、本明細書中に記載されるペプチドをコードする単離された核酸、ならびにかかる核酸を含む、クローニング(DNAの増幅)または発現のためのベクターを包含する。種々のベクターが、公的に入手可能である。例えば、ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、またはファージの形態であり得る。かかる核酸を用いて、例えば宿主細胞において核酸を発現させることによって、ペプチド基質を生成し得る。トリプレットコードの縮重のために種々の核酸配列が同じアミノ酸配列をコードし得ること、および本発明が本明細書中に記載されるペプチドをコードする全ての可能性のある核酸配列を包含することは、当業者に理解されよう。かかる核酸は、当該分野で周知の方法を用いて、合成によって調製され得、任意の適したベクターにクローニングされ得る。
【0026】
周知のクローニング技術を用いて、ペプチドをコードする配列をシグナル配列にインフレームで融合させて、宿主細胞による分泌を可能にし得る。あるいは、かかるペプチドを、別のタンパク質への融合として生成し得、その後部位特異的プロテアーゼの使用によって分離および単離し得る。ペプチドおよびタンパク質を生成するかかるシステムは、市販されている。被験細胞によるKDRの発現を検出する方法において、または試料中のVEGF活性を検出する方法において、例えば被験細胞または試料を本発明のペプチドを発現する宿主細胞と混合し、該宿主細胞または該ペプチドの結合を検出することによって、またはVEGFの阻害を検出することによって、かかる宿主細胞を使用することも実行できよう。適した宿主細胞としては、真核細胞および原核細胞が挙げられる。目的の特定の宿主細胞においてタンパク質発現のためのプロモーターを含むベクターは、公知であり、公的に入手可能である。
【0027】
本発明のペプチドをコードする核酸および発現ベクターを、本明細書中に記載される治療方法に、例えば遺伝子療法のビヒクルとして用いて、発現されるペプチドを疾患部位に送達することもできる。適したベクターは、典型的には、DNAウイルス、RNAウイルスおよびレトロウイルスを含むウイルスベクターである(最近の評論については、その全体が本明細書中に参照によって援用される、スキャンロン(Scanlon)、2004年、アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Res.)24(2A)、501−4頁参照)。天然および合成のポリマーから組み立てられた放出制御系もまた、ベクターの局所的送達に利用可能であり、これは離れた組織への分布を避け、非標的細胞に対する毒性を減少させ、ベクターに対する免疫応答を低下させる(パニエ(Pannier)およびシェイ(Shea)、2004年、モレキュラー・セラピー(Mol.Ther.)10(1)、19−26頁)。
【0028】
使用方法
本発明のペプチドは、KDR発現を検出する方法ならびにVEGF/受容体相互作用を検出および/または阻害する方法を含むがこれらに限定されない色々な方法に用い得る。例えば、本発明のペプチドは、in vivoでのKDR発現細胞の検出のために、放射性または蛍光画像化マーカーに結合させ得る。異常な、または増加したKDR発現の検出は、進行中の疾患の指標であり得、悪性腫瘍の位置決定または過剰な眼内新血管形成に関連する眼疾患の診断に用いられ得る。
【0029】
本発明はまた、本明細書中に開示されるペプチドを用いて、開示されるペプチドを模倣する化合物(アゴニスト)をスクリーニングするか、またはこのペプチド(アンタゴニスト)の効果を防ぐ方法を包含する。アンタゴニスト薬候補のスクリーニングアッセイは、KDRに結合する化合物を同定するよう設計されるか、またはそうでなければ、開示されるペプチドとKDRとの相互作用を妨げるように設計される。かかるスクリーニングアッセイは、小分子薬候補の同定に特に適するようになる、化学ライブラリーの高スループットスクリーニングに基づいて分析できるアッセイを含むであろう。このアッセイは、当該分野で十分特徴付けられている、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、および細胞ベースのアッセイを含む、色々な形式で行われ得る。
【0030】
具体的には、アンタゴニストは、本発明のペプチドと、膜結合もしくは表面結合KDRまたは組み換え受容体を有する可能性のあるアンタゴニストとを、競合的阻害アッセイに適切な条件下で組み合わせることによって検出され得る。本発明のペプチドは、放射活性または蛍光等によって、受容体に結合したペプチド分子の数を用いて可能性のあるアンタゴニストの有効性を測定し得るように、標識され得る。
【0031】
本発明はまた、VEGF媒介性血管新生またはVEGFの結合のそれぞれが減少するように、キナーゼドメイン受容体(KDR)を発現する細胞を本明細書中に記載されるペプチドに接触させる工程を含む、VEGF媒介性血管新生を減少させ、KDRまたはKDRペプチドへのVEGFの結合をブロックする方法を包含する。かかる方法において、KDRまたは受容体ペプチドを、VEGFに供する前にまたはVEGF存在下で本発明のペプチドと接触させ得る。KDRまたは本発明のペプチドのいずれかを、タンパク質またはペプチドアレイ等の合成表面上に提示し得る。あるいは、KDRまたはKDRペプチドを、細胞の表面上で発現させ得る。本発明の方法によって標的化されるKDR発現細胞としては、原核細胞および真核細胞のいずれかまたは両方を挙げることができる。かかる細胞は、in vitroで維持し得るか、またはin vivoで、例えば癌または別の血管新生関連疾患と診断された患者または被験体において、存在し得る。
【0032】
本発明はまた、治療有効量の本明細書中に記載されるいずれかのペプチドで、血管新生関連疾患と診断された患者を治療する方法であって、該血管新生関連疾患が減少または阻害されるように該ペプチドを該患者に投与する工程を含む、方法を含む。例示的な血管新生関連疾患は、本出願のいたるところに記載されており、腫瘍および新形成、血管腫、関節リウマチ、アテローム硬化症、突発性肺線維症、血管再狭窄、動静脈奇形、髄膜腫、血管新生緑内障、乾癬、血管線維腫、血友病性関節、過形成性瘢痕、オースラー−ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管癒着病変、滑膜炎、皮膚炎、子宮内膜症、翼状片、糖尿病性網膜症、角膜損傷または移植、創傷、びらんおよび潰瘍(皮膚、胃および十二指腸)に関連する新血管形成からなる群より選択される疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
具体的には、本発明は、治療有効量の本明細書中に記載されるいずれかのペプチドで、癌と診断された患者を治療する方法であって、該癌の拡散が減少または阻害されるように該ペプチドを該患者に投与する工程を含む、方法を含む。本発明の方法によって治療可能な癌としては、腎臓、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、肺、脳および皮膚癌からなる群より選択されるものを含むがこれらに限定されない、全ての固形腫瘍および転移癌が挙げられる。
【0034】
本発明はまた、治療有効量の本明細書中に記載されるいずれかのペプチドで、血管新生関連眼疾患と診断された患者を治療する方法であって、該眼疾患が減少または阻害されるように該ペプチドを該患者に投与する工程を含む、方法を含む。かかる眼疾患としては、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞および黄斑変性を含むがこれらに限定されない、異常な眼内新血管形成に関連する任意の眼疾患が挙げられる。
【0035】
本発明はまた、治療有効量の本明細書中に記載されるいずれかのペプチドで、血管新生関連炎症状態と診断された患者を治療し、該炎症状態が減少または阻害されるように該ペプチドを該患者に投与する工程を含む、方法を含む。かかる炎症状態または疾患としては、全ての型の関節炎ならびに特に関節リウマチおよび変形性関節症、喘息、肺線維症および皮膚炎を含むがこれらに限定されない、VEGFの発現およびVEGFによる細胞の活性化に関連する任意の炎症性障害が挙げられる。
【0036】
医薬製剤
医薬用途のために、本発明の化合物は、薬学的に許容され得る担体と組み合わせて使用され得、任意に薬学的に許容され得る希釈剤または賦形剤を含み得る。そのため、本発明はまた、被験体への投与に適した医薬組成物を提供する。担体は、組成物が非経口投与に適応するように液体であり得、または経口投与のために製剤化された固体、すなわち錠剤または丸剤であり得る。さらに、担体は、組成物が吸入に適応するように、噴霧化可能な液体または固体の形態であり得る。非経口投与される場合、組成物は、発熱物質を含まないべきであり、許容され得る非経口担体中にあるべきである。あるいは、活性のある化合物は、公知の方法を用いて、リポソーム中に製剤化またはカプセル化され得る。
【0037】
本発明の医薬組成物は、有効量の1つ以上の本発明のペプチドを、薬学的に許容され得る担体と組み合わせて含有する。この組成物は、標的である特定の疾患の治療に適した他の公知の薬物をさらに含有し得る。本発明の化合物の有効量は、化合物がない場合に起こるものと比較して内皮細胞のVEGF刺激をブロック、阻害または減少させる量である。言い換えれば、化合物がない場合に起こるものと比較して内皮の血管新生活性を減少させる量である。有効量(および投与の様式)は、個別の基準に基づいて決定され、使用される特定の治療用分子および被験体の考慮(大きさ、年齢、全般的な健康)、治療される状態(癌、関節炎、眼疾患等)、治療される症状の重症度、求められる結果、使用される特定の担体または医薬製剤、投与の経路、および当業者に理解されるであろう他の要因に基づくであろう。有効量は、当該分野で公知の技術を用いて、当業者によって決定され得る。本明細書中に記載される化合物の治療有効量は、当該分野で公知のように、in vitro試験、動物モデルまたは他の用量反応の研究を用いて決定され得る。
【0038】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、口腔内、眼、鞘内、または別の投与の経路に適した製剤に調製、包装、または販売され得る。他の考えられる製剤としては、放出されたナノ粒子、リポソーム調製物および免疫学に基づいた製剤が挙げられる。
【0039】
リポソームは、閉じ込められた水性の容積を含む、完全に閉鎖した脂質二分子層膜である。リポソームは、単層(単一の膜)または多層(各々が隣りのものと水性の層によって分離された多重の膜二分子層によって特徴付けられる、タマネギ様構造)であり得るベシクルである。二分子層は、疎水性「尾」領域および親水性「頭」領域を有する2つの脂質単分子層で構成される。膜二分子層において、脂質単分子層の疎水性(非極性)「尾」は二分子層の中心に向いているが、親水性(極性)「頭」は水相に向いている。
【0040】
本発明のリポソームは、当該分野で公知の任意の方法によって形成され得る。いくつかの方法を用いて、本発明のリポソームを形成し得る。例えば、多層ベシクル(MLV)、安定性多層ベシクル(SPLV)、小型単層ベシクル(SUV)、または逆相蒸発ベシクル(REV)を用い得る。しかしながら、好ましくは、MLVがフィルターを通って押し出され、利用されるフィルターサイズに依存した大きさの大型単層ベシクル(LUV)を形成する。一般に、30、50、60、100、200または800nmの孔のポリカーボネートフィルターが用いられ得る。関連性のある部分が参照によって本明細書中に援用されるカリス(Cullis)ら、米国特許第5,008,050号明細書に開示されているこの方法において、リポソーム懸濁液が押出装置に繰り返し通され、結果として均一なサイズ分布のリポソームの集団が生じる。
【0041】
例えば、このろ過は、直線状の膜フィルター(ヌクレオポア(Nucleopore)ポリカーボネートフィルター)もしくは蛇行した経路のフィルター(例えば、0.1μmサイズのヌクレオポア(Nucleopore)メンブラフィル(Membrafil)フィルター(混合セルロースエステル))を介して、またはホモジナイゼーション等の代替的サイズリダクション技術によって、行われ得る。リポソームの大きさは、直径約0.03から約2ミクロン、好ましくは約0.05から0.3ミクロン、最も好ましくは約0.1から約0.2ミクロンで異なり得る。大きさの範囲は、MLV、SPLVまたはLUVであるリポソームを含む。
【0042】
本発明のリポソーム製剤に使用され得る脂質としては、合成または天然のリン脂質が挙げられ、中でも、単独または組み合わせのいずれかで、およびコレステロールと組み合わせて、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリン(SPM)およびカルジオリピンを挙げることができる。本発明において有用なリン脂質としては、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)およびジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)を挙げることができる。他の実施形態において、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、または水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)もまた、使用し得る。ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)およびジアラキドノイルホスファチジルコリン(DACP)もまた、同様に用いられ得る。
【0043】
リポソームの調製の間、有機溶媒を用いて脂質を懸濁することもできる。本発明での使用に適した有機溶媒としては、脂質を溶解させる、色々な極性および誘電特性を有するもの、例えば、中でもクロロホルム、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化メチレン、およびベンゼン:メタノール(70:30)等の溶媒混合物が挙げられる。その結果、脂質を含有する溶液(脂質および他の成分が全体に均一に分布している混合物)が形成される。溶媒は、一般に、その生物適合性、低毒性、および可溶化能に基づいて選択される。
【0044】
本発明のペプチドをリポソーム中にカプセル化するために、関連のある部分が参照によって本明細書中に援用されるチャクラバルティ(Chakrabari)ら、米国特許第5,380,531号明細書に記載される方法を、本発明のペプチドを用いた使用のために改変し得る。
【0045】
本発明のアミノ酸およびペプチド製剤を含有するリポソームを、哺乳動物、特にヒトにおいて、徐放性製剤ならびに反復投与を必要とする多くの病態または薬理学的状態の治療に治療的に用い得る。本発明の薬剤を含有するリポソームの投与の様式は、ペプチドが送達され得る生物の部位および細胞を決定し得る。
【0046】
本発明のリポソームは、単独で投与され得るが、一般に、意図される投与の経路および標準的医薬的実務に関して選択される医薬担体と混合して投与されるであろう。調製物は、非経口的に、例えば静脈内に注射され得る。非経口投与のために、それらは例えば、他の溶質、例えば、等張性が必要または所望される場合、溶液を等張にするのに十分な塩またはグルコースを含有し得る無菌水溶液の形態で用いられ得る。本発明のリポソームはまた、皮下または筋肉内に使用され得る。他の使用は、調製物の特定の特性に依存して、当業者によって想定され得る。
【0047】
経口の投与の様式のために、本発明のリポソーム製剤は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、散剤、シロップ、エリキシル、水溶液および懸濁液等の形態で用いられ得る。錠剤の場合、使用され得る担体としては、ラクトース、クエン酸ナトリウムおよびリン酸の塩が挙げられる。デンプン、潤滑剤および滑石等の種々の崩壊剤が、錠剤において一般に使用される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤は、ラクトースおよび高分子量ポリエチレングリコールである。水性懸濁液が経口使用のために必要な場合、有効成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。必要に応じて、ある種の甘味および/または矯味矯臭剤が添加され得る。
【0048】
局所的な投与の様式のために、本発明のリポソーム製剤は、ゲル、油、エマルジョン等の投薬形態に組み込まれ得る。これらの製剤は、クリーム、ペースト、軟膏、ゲル、ローション等の直接の塗布によって投与され得る。病態または薬理学的状態の治療におけるヒトへの投与のために、処方する医師は、所定のヒト被験体に適切な薬剤の投薬を最終的に決定し、これは個体の年齢、体重および反応ならびに使用される薬剤の薬物動態によって異なると予想され得る。
【0049】
また、患者の病態または状態の性質および重症度は、投薬計画に影響を及ぼすであろう。一般にリポソーム形態での薬物の投薬は遊離した薬物に使用されるものと殆ど同じであると予想されるが、いくつかの場合では、これらの制限の範囲外の用量を投与する必要があり得る。
【0050】
本発明の医薬組成物は、生分解性ミクロスフェア等のバイオポリマーの貯蔵製剤をさらに含む。生分解性ミクロスフェアを用いて、薬物放出速度が制御され、薬物が体内の特定の部位に標的化され、それによって、それらの治療効果が最適化され、毒性副作用が減少し、反復投与の不都合が排除される。生分解性ミクロスフェアは、移植および除去のための外科的手順を必要としない点で、大きいポリマーインプラントよりも有利である。
【0051】
本発明との関連で使用される生分解性ミクロスフェアは、ペプチドの放出を遅らせ、長期間にわたって治療有効濃度を作用の部位で維持するポリマーで形成される。
【0052】
ポリマーは、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)から選択され得る。PLGA共重合体は、再現性および緩効性の特徴を有する合成生分解性および生物適合性ポリマーの1つである。PLGA共重合体の利点は、それらの分解速度が数ヶ月から数年の範囲で、ポリマー分子量とポリ乳酸のポリグリコール酸残基に対する比の関数である点である。非経口用途のための、PLGAを使用したいくつかの製品が現在販売されており、米国のルプロン・デポ(Lupron Depot)およびゾラデックス(Zoladex)ならびに欧州のエナントン・デポ(Enantone Depot)、デカペプチル(Decapeptil)およびパーロデル(Pariodel)LAが含まれる(評論についてはヨンセイ(Yonsei)、メディカル・ジャーナル(Med J.)2000年12月、41(6)、720−34頁参照)。
【0053】
鼻上皮の接着結合を介して透過性の増大が証明されているので(ピエトロ(Pietro)およびウリー(Woolley)、「ナステック(Nastech)の鼻腔内薬物送達技術の背後にある科学(The Science behind Nastech’s intranasal drug delivery technology.)」マニュファクチャリング・ケミスト(Manufacturing Chemist)、2003年8月)、本発明の医薬組成物はさらに、経鼻投与に適した製剤で調製、包装および販売され得る。かかる製剤は、有効成分を含み約0.5から約7ナノメートル、好ましくは約1から6ナノメートルの範囲の直径を有する、乾燥粒子を含有し得る。かかる組成物は、粉末を分散させるよう噴霧剤流が向けられ得る乾燥粉末レザバーを含む装置を用いた投与または密閉容器中の低沸点噴霧剤に溶解もしくは懸濁された有効成分を含む装置等の自己噴霧性溶媒/粉末分取容器を用いた投与のために、簡便に乾燥粉末の形態である。好ましくは、かかる粉末は、少なくとも98重量%の粒子が0.5ナノメートルより大きい直径を有し、少なくとも95数量%の粒子が7ナノメートル未満の直径を有する、粒子を含む。より好ましくは、少なくとも95重量%の粒子が1ナノメートルより大きい直径を有し、少なくとも90数量%の粒子が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、好ましくは、ショ糖等の固体微小粉末希釈剤を含み、単位用量の形態で簡便に提供される。
【0054】
低沸点噴霧剤は、一般に、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体噴霧剤を含む。一般に、噴霧剤は、組成物の50から99.9%(w/w)を構成し得、有効成分は、組成物の0.1から20%(w/w)を構成し得る。噴霧剤はさらに、液体非イオン性または固体陰イオン性界面活性剤または固体希釈剤(好ましくは有効成分を含む粒子と同位の粒子径を有する)等のさらなる成分を含み得る。
【0055】
経鼻送達のために製剤化された本発明の医薬組成物はまた、溶液または懸濁液の小滴の形態で有効成分を提供し得る。かかる製剤は、任意に無菌の、有効成分を含む水溶液または希アルコール溶液または懸濁液として、調製、包装または販売され得、任意の噴霧化または微粒化装置を用いて、簡便に投与され得る。かかる製剤は、サッカリンナトリウム等の矯味矯臭剤、揮発油、緩衝剤、界面活性剤またはヒドロキシ安息香酸メチル等の防腐剤を含むがこれらに限定されない1つ以上のさらなる成分をさらに含み得る。この投与の経路によって提供される小滴は、好ましくは、約0.1から約200ナノメートルの範囲の平均直径を有する。
【0056】
鼻腔内投与に適した別の製剤は、有効成分を含み約0.2から500マイクロメートルの平均粒子を有する粗粉末である。かかる製剤は、鼻から吸引される様式で、すなわち鼻腔の近くに保持された粉末を含む容器からの、鼻の通過を介した迅速な吸引によって、投与される。
【0057】
経鼻投与に適した製剤は、例えば、わずか0.1%(w/w)から100%(w/w)もの有効成分を含み得、本明細書中に記載される1つ以上のさらなる成分をさらに含み得る。
【0058】
本発明の化合物は、急性に(すなわち、開始の間または炎症につながる事象の直後)投与されるか、または変性疾患の過程において投与されて、そうしなければ起こるであろう症状の進行を減少または改善し得る。投与のタイミングおよび間隔は被験体の症状によって異なり、当業者によって決定されるように、数時間、数日、数週間またはそれ以上の時間経過にわたって、数時間から数日の間隔で投与され得る。典型的な毎日の投与計画は、1日あたり約0.01μg/kg体重から、1日あたり約1mg/kg体重から、1日あたり約10mg/kg体重から、1日あたり約100mg/kg体重からであり得る。
【0059】
本発明の化合物は、静脈内、経口、鼻腔内、眼内、筋肉内、鞘内に投与されるか、またはペプチド、ペプチド製剤および治療される疾患に関して任意の適した経路で投与され得る。炎症性関節炎の治療のためのペプチドを、滑液に直接注射し得る。固形腫瘍の治療のためのペプチドを、腫瘍に直接注射し得る。皮膚疾患の治療のためのペプチドを、局所的に、例えばローションまたはスプレーの形態で塗布し得る。鞘内投与は、すなわち脳腫瘍の治療のために、脳への直接の注射を含み得る。あるいは、ペプチドを、血液脳関門へ侵入して血液脳関門を横切って有効成分を輸送する能力に関して選択されたペプチドまたは非タンパク質性部分である第二の分子([担体」)に共役または結合させ得る。適した担体の例は、その全体が参照によって本明細書中に援用される米国特許第4,902,505号明細書、米国特許第5,604,198号明細書および米国特許第5,017,566号明細書に開示されている。
【0060】
本発明のペプチドを投与する代替的方法は、ベクターがペプチドの発現および分泌を指示できる場合、ペプチドをコードする核酸配列を担持するベクターを被験体に投与することによって行われる。適したベクターは、典型的には、DNAウイルス、RNAウイルスおよびレトロウイルスを含む、ウイルスベクターである。ベクター送達系を利用し、遺伝子療法を行う技術は、当該分野で公知である(最近の評論については、ランドストローム(Lundstrom)、2003年、トレンズ・イン・バイオテクノロジー(Trends Biotechnol.)21(3)、117−22頁参照)。
【0061】
以下の実施例は、本発明を説明および例示するために提供される。このように、これらは本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。当業者は、多くの他の実施形態もまた、本明細書中の上記および特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に包含されることを、十分理解するであろう。
【実施例】
【0062】
実施例1.ミニセルの選択による、新規のヒトVEGF受容体KDR結合ペプチドの同定
方法
ベクターpBS(ブルースクリプト(Bluescript))におけるリケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)の17K抗原をコードする遺伝子に遺伝学的に融合されたランダム30マーオリゴヌクレオチドを含むミニセルディスプレイライブラリーを、本質的に、その全体が参照によって本明細書中に援用される米国特許出願公開第20030105310号明細書に記載されるように、構築した。このライブラリーを大腸菌DS410に形質転換し、形質転換した細胞を、富栄養培養液(テリフィック・ブロス(Terrific Broth))中、250mL培養で一晩増殖させた。9.3Krpmの勾配遠心分離によって、ミニセルを精製した。
【0063】
ミニセルのスクリーニングのためのELISAベースの結合アッセイを、以下のように行った。
1.コスター(Costar)高結合プレート3361を、100mM重炭酸ナトリウム30mM炭酸ナトリウムpH9.5コーティングバッファーで希釈した5μg/mlのKDR(R&Dシステムズ(R&D systems)、357−KD)で、50μl/ウェルで被覆した。陰性対照として、コーティングバッファーのみを2つのウェルに加えた。
2.プレートを、わずかに回転させながら4℃で週末にわたってインキュベートした。
3.翌朝、ミニセルランダムライブラリーのアリコート(ペレットの10%)を、1mlのPBSに再懸濁した。1μlのボデピー(Bodipy)を加え、ミニセルを、室温で回転させながら10分間染色した。試料を13000rpmで1分間回転させ、ペレットを、900μlのPBSで5分間、室温で回転させて、3回洗浄した。試料を13000rpmで1分間回転させ、アッセイのためにペレットを560μlのPBSに再懸濁した。
4.高結合プレートから新しいプレートへ未結合KDRを移し、物質を保存した。
5.プレートを、200μlのPBSで1回、簡単に洗浄した。
6.標識したミニセルを添加した。ミニセルを、最終的な洗浄条件の濃度の2倍(すなわち、PBS、500mMのNaClを含むPBS、1MのNaClを含むPBS、PBS+0.2%NP−40、PBS+0.02%SDS)で調製した適切なPBSバッファーで1:1希釈し、0.1%BSAおよび25μg/mlカナマイシンとともに、50μl/ウェルで添加した。
7.プレートを密閉し、上述のように4℃で一晩インキュベートした(総インキュベーション=18時間)。
8.未結合ミニセルを新しいプレートに移し、取っておいた。
9.プレートを、200μlの適切なバッファー(PBS、250mMのNaClを含むPBS、500mMのNaClを含むPBS、PBS+0.1%NP−40、PBS+0.01%SDS)で1分間、3回洗浄した。50μlのPBS/ウェルを加え、プレートを4℃で3時間インキュベートした。
10.プレートを、20×および40×の倍率で、標識されたミニセルに関して顕微鏡下で調べた。
11.フェノール−クロロホルムによってミニセルDNAを陽性のウェルから抽出し、コンピテントDH5α細胞に形質転換した。
12.コロニーを単離し、5mLのLB+100μg/mlアンピシリン中で一晩、37℃で培養した。
13.キアジェン(Qiagen)法によって1.5mLの培養物からDNAをミニプレップし、配列決定のために処理した。
14.有意な相同性を有する配列に関して、配列を文献と比較した。
【0064】
相同性解析
6つのクローンを得て、それらの配列を、以下の論文に開示されている配列と比較した。
ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)R、デマンジェル(Demangel)C、マラヴォー(Malavaud)B、ヴァッシー(Vassy)R、ロイエ(Rouyre)S、クレーマー(Kraemer)M,、プルエー(Plouet)J、ダービン(Derbin)C、ペレ(Perret)G、メイジー(Mazie)JC.、2000年、「血管内皮増殖因子(VEGF)媒介性血管新生をブロックするペプチドの同定(Identification of a peptide blocking vascular endothelial growth factor (VEGF)−mediated angiogenesis)」、ザ・EMBOジャーナル(EMBO J.)19(7)、1525−33頁。ルー(Lu)D、シェン(Shen)J、ヴィル(Vil)MD、チャン(Zhang)H、ヒメネス(Jimenez)X、ボーレン(Bohlen)P、ヴィッテ(Witte)L、チュー(Zhu)Z.、2003年、「中和活性の促進のための、血管内皮増殖因子受容体2に対して惹起したピコモル親和性ヒト抗体のin vitro選択の調整(Tailoring in vitro selection for a picomolar afinity human antibody directed against vascular endothelial growth factor receptor 2 for enhanced neutralizing activity)」、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)278(44)、43496−507頁。
【0065】
ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)らは、固定したKDRを用いて、ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした。ルー(Lu)らは、ファージディスプレイライブラリーを用いて、2つの完全ヒト中和KDR特異的抗体の細かい結合特異性をさらに定義した。図1に示されるように、ミニセルディスプレイスクリーニングによって同定されたクローンを上で参照した2つの論文に開示されるペプチドと比較することによって、一連のサブグループが同定された(図1、ベクターNTI(Vector NTI)を用いたクラスタルW(custalW)によって生じた系統樹参照)。ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)らの論文からのEmboK4(配列番号38)、EmboK5(配列番号39)およびEmboV4(配列番号40)のペプチド、ルー(Lu)らの論文からの2つのペプチド1A11および2D5(同じ配列(配列番号41)を有し、そのため1つのものと見なす)、ならびにミニセルディスプレイ技術によって得られたクローンK3(配列番号42)を含む、アラインメントツリーの頂点にあるサブグループが特に興味深い。これらのペプチドのアラインメントを、図2に示す。
【0066】
図2におけるペプチド配列の間の高レベルの配列相同性から、K3ペプチドまたはこのペプチドの部分断片が抗血管新生特性を有するであろうことが示唆される。このペプチドの配列を用いたさらなる相同性検索によって、K3と、ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)らによって開示された2つのペプチドEmboV1(配列番号43)およびEmboK3(配列番号44)との間の、別のまとまりの相同性が明らかになった。これらのペプチドの全ての最終的なアラインメントを、図3に示す。このアラインメントによって、ペプチドの全ての間で高度に保存されたコンセンサス配列、LPPHSSの存在が明らかになった。ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)らは生物学的活性へのLPP配列の関連性を論じ、単離されたペプチドのうち2つにおけるHSS配列の存在について触れたが、単一のペプチドにおけるこれらの部分配列両方の組み合わせは開示されなかった。それにもかかわらず、配列のアラインメント、およびミニセルディスプレイ技術を用いて同定されたK3ペプチドとの比較を考慮して、本発明者らは、配列LPPHSS(配列番号1)を有するペプチドは、2つの単離された配列そのもののどちらとも実質的に異りより有用な抗血管新生特性を有するであろうと予想した。
【0067】
また、相同性アラインメントによって、コンセンサスの2つのさらなる領域が明らかになった。ペプチド1A11のアミノ末端部分に存在する領域ATSは、EmboV1において部分的に保存されている(図2参照)。さらに、EmboK4のアラインメントにセリン残基が存在する。したがって、本発明者らはまた、この領域が、抗血管新生特性に寄与するであろうこと、および配列ATSLPPHSS(配列番号10)を有するペプチドが、3つの単離された配列のみのいずれとも実質的に異なりより有用な抗血管新生特性を有するであろうことを予想した。相同な他の領域は、ペプチド1A11のC末端領域およびペプチドK3に存在する部分配列QSPを包含する。また、セリンは、ペプチドEmboK3において保存されている。したがって、本発明者らはまた、この領域が抗血管新生特性に寄与するであろうこと、および配列ATSLPPHSSQSP(配列番号16)を有するペプチドが、4つの単離された配列のみのいずれとも実質的に異なりより有用な抗血管新生特性を有するであろうことを予想した。
【0068】
実施例2.in vitroでのKDR結合ペプチドの抗血管新生活性の特徴付け
方法
以下のペプチドを合成し、in vitroおよびin vivoでの抗血管新生活性に関して試験した。
ST100,037 LPPHSS(配列番号1)
ST100,038 ATSLPPHSSQSP(配列番号16)
ST100,039 LPPHSSQSP(配列番号13)
ST100,040 ビオチン−LPPHSSQSP(配列番号13)
【0069】
また、ST100,038の以下のバリアントを、L−アミノ酸とは異なってD−アミノ酸を用いて合成し、活性および血清中安定性に対する修飾の効果を試験した。
ST100,045 ATSLPPHSSQSP(配列番号16)
ST100,059 PSQSSHPPLSTA(レトロインベルソペプチド)(配列番号37)
【0070】
抗血管新生化合物を試験するのに用いられる標準的細胞株であるウシ網膜内皮細胞(BRE)のVEGF媒介性生存/増殖の阻害のレベルを測定することによって、ペプチドの抗血管新生活性を試験した。細胞をキャンブレックス(Cambrex)EGM−2MV培地中で維持した。1日目に、細胞を6時間または一晩のいずれかの間飢餓状態にし、その後トリプシン処理し、100μlのin vitroジェン(Invitrogen)オプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清中で96ウェルプレートに平板培養した。次いで、適切な場合には、終濃度25ng/mlのVEGFならびに終濃度12.5、25、50および100μg/mlの種々のペプチドに加えて、in vitroジェン(Invitrogen)オプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清の100μlのアリコートをさらにウェルに加えた。72時間のインキュベーションの後、各ウェルの生細胞の数を、WST−1アッセイ(ロシュ(Roche))を用いて測定した。
【0071】
表2は、440nmで測定した、WST−1誘導比色変化の量を報告する。各処理のデータポイントを平均し、ペプチド名の下に示す。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均の隣の縦列で計算する。
【0072】
各データポイントの3つのウェルの平均を図4にグラフで示し、ペプチドの濃度の増大によってどのようにWST−1の量、ひいては生細胞の数が減少するかを示す。データのスチューデントt検定解析から、これらの減少が、ST100,038の2つの最も高い濃度で統計的に有意であることが明らかであり、仮定されたように最も活性のあるペプチドと思われる。25μg/mlより高い濃度は、WST−1値における統計的に有意なVEGF誘導の増加を完全に廃し、実際に、結果としてVEGF刺激のない細胞で見られるよりもさらに低い値を生じた。最も可能性のある説明は、培地中に存在する増殖因子(VEGF)による細胞の刺激をペプチドが阻害するというものである。
【0073】
図5は、種々の処理に供された数および形態の例を示す顕微鏡写真を表す。非常に少数の細胞しか含まない、100μg/mlのST100,038で処理したウェルを、特に注目すべきである。存在する、数少ない細胞は、アポトーシス(細胞死)の兆候を示す。これは、陽性対照(VEGFで処理した細胞)と対照的であり、VEGFを施していない細胞と同様である。
【0074】
【表2】

【0075】
最大濃度200μg/mlまで、より高い濃度のペプチドを用いて実験を繰り返した。これは、相当量の水の添加を必要とした(ペプチドは水に可溶性であり、2mg/mlのストック溶液として維持される)。したがって、水の添加自体が何らかの阻害効果を有するかどうかを試験した。前述同様に、キャンブレックス(Cambrex)EGM−2MV培地中でBREを維持した。1日目に、6時間または一晩のいずれかの間細胞を飢餓状態にし、その後トリプシン処理し、100μlのオプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清中で96ウェルプレートに平板培養した。次いで、適切な場合には、終濃度25ng/mlのVEGFならびに終濃度25、50、100および200μg/mlの種々のペプチドをさらに含むウェルに、オプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清の100μlのアリコートを加えた。72時間のインキュベーションの後、各ウェルの生細胞の数を、WST−1アッセイ(ロシュ(Roche))を用いて測定した。
【0076】
表3は、440nmで測定した、WST−1誘導比色変化の量を報告する。各処理のデータポイントを平均し、ペプチド名の下に示す。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均の隣の縦列で計算する。
【0077】
各データポイントの3つのウェルの平均を図6にグラフで示す。データのスチューデントt検定解析から、WST−1の減少が、これまでに示されているように最も活性の高いペプチドであるST100,038の全ての濃度で統計的に有意であることが明らかである。25μg/mlより高い濃度は、ここでも結果として、VEGF刺激なしで見られるよりも低い値を生じた。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例3.1%または10%血清中でのペプチドの安定性研究
試料調製
水に溶解した1mMペプチドのストック溶液を作製した。次いでストックを、オプティMem(OptiMem)培地+100単位/mlのペニシリンおよび100μg/ml硫酸ストレプトマイシン+1%ウシ胎仔血清中またはオプティMem(OptiMem)+ペニシリン/ストレプトマイシン+10%ウシ胎仔血清中のいずれかに、100μMに希釈した。希釈した試料を、37度のインキュベーター中の24ウェル組織培養プレートに入れた。4、6、18、24、48および72時間目に50〜100μlのアリコートを取り除き、分析まで−70℃で凍結した。
【0080】
VC/MSによる分析
20μlの試料を、C18逆相カラム(4.8×250mm)上で、アセトニトリル/水0.1%TFAのグラジエントで分離し、シングルクワッド質量分析計を用いて分析した。ペプチドの質量に依存して、一価または多価のピークを検出した。質量分析計を検出器として用いて生じたクロマトグラムにおけるピーク領域の消失、およびピークの同時の出現による、破壊産物からの質量分析における主要ピークの消失の2つの方法で、ペプチドの分解を測定した。
【0081】
結果
1%血清において、ST100,038の25%が18時間目で、33%が24時間目で、60%が48時間目で、および85%が72時間目で失われていた。10%血清において、ペプチドの50%が4時間目で、65%が6時間目で分解され、18時間目では残っているものがなかった。全ての切断は、セリンのN末端のようであった。1%血清において、ペプチドは、72時間の時点を通して存続し続ける、より小さいペプチドに分解した。10%血清においては、より小さいこれらのペプチドであっても、48時間目までには殆ど検出されなくなっていた。
【0082】
ST100,03の、血清中での比較的限定された安定性を考慮して、ST100,045およびST100,059を合成した。ST100,045は、ST100,038の同じ配列を有するが、D−アミノ酸でできている。ST100,059は、逆転した配列を有するD−アミノ酸ペプチド(レトロインベルソペプチド)である。これらを、上述のプロトコールを用いて血清中での安定性に関して試験すると、試験したいずれの条件下でも分解しなかった。
【0083】
D−アミノ酸ペプチドは血清中でより安定性が高いと当該分野で一般に理解されているが、D−アミノ酸ペプチドでのL−アミノ酸ペプチドの置換は、活性があって安定なペプチドを、自動的には生じない。ST100,038、ST100,045およびST100,059系列での下記の独自のデータによって、D−アミノ酸を含むST100,038と同じ配列であるST100,045はL−アミノ酸の相当物よりも生物学的活性がいくらか低いが、レトロインベルソST100,059のみが依然として生物学的に活性があり、血清中安定性があることが明らかになった。
【0084】
実施例4.D−アミノ酸ペプチド誘導体の抗血管新生活性の特徴付け
次いで、ST100,045の活性を、ST100,038のものと比較した。前述同様に、BREをキャンブレックス(Cambrex)EGM−2MV培地中で維持した。1日目に、細胞を6時間または一晩のいずれかの間飢餓状態にし、その後トリプシン処理し、100μlのオプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清中で96ウェルプレートに平板培養した。次いで、適切な場合には、終濃度25ng/mlのVEGFならびに終濃度5、12.5、25および50μg/mlの種々のペプチドに加えて、100μlのオプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清をさらにウェルに加えた。72時間のインキュベーションの後、各ウェルの生細胞の数を、WST−1アッセイ(ロシュ(Roche))を用いて測定した。
【0085】
表4は、440nmで測定した、WST−1誘導比色変化の量を報告する。各処理(それぞれ50、25、12.5および5マイクログラム/ml)のデータポイントを平均し、ペプチド名の下に示す。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均の隣の縦列で計算する。
【0086】
各データポイントの3つのウェルの平均を図7にグラフで示す。データのスチューデントt検定解析から、WST−1の減少が、ST100,038およびST100,045の最も高い濃度で統計的に有意であることが明らかである。25μg/mlより高い濃度は、ここでも、結果としてVEGF刺激なしよりも低い値を生じた。
【0087】
図8の写真は、種々の処理に供された数および形態の例を示す。非常に少数の細胞しか含まない、50μg/mlのST100,038またはST100,045のいずれかで処理したウェルが、特に注目に値する。さらに、存在する、少ししかない細胞は、アポトーシス(細胞死)の兆候を示す。これは、陽性対照(VEGFで処理した細胞)と対照的であり、VEGFを施していない細胞と同様である。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例5.接着細胞に対するペプチドの抗血管新生活性の特徴付け
この実験において、細胞が一晩接着した後、ペプチドをウェルに加えた。1日目に、細胞を6時間飢餓状態にし、次いでトリプシン処理し、100μlのオプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清中で96ウェルプレートに平板培養した。翌朝、細胞はすでに接着しており、適切な場合には、終濃度25ng/mlのVEGFならびに終濃度10、30、50および75μg/mlの種々のペプチドに加えて、100μlのオプティMem(OptiMem)+1%ウシ胎仔血清をウェルに加えた。72時間のインキュベーションの後、各ウェルの生細胞の量を、WST−1アッセイ(ロシュ(Roche))を用いて測定した。
【0090】
表5は、440nmで測定した、WST−1誘導比色変化の量を報告する。各処理のデータポイント(それぞれ75、50、30または10μg/ml)を平均し、ペプチド名の下に示す。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均の隣の縦列で計算する。
【0091】
各データポイントの3つのウェルの平均を図9にグラフで示す。データのスチューデントt検定解析から、WST−1の減少が、ST100,038の2つの最も高い濃度で統計的に有意であることが明らかである。25μg/mlより高い濃度は、ここでも結果として、VEGF刺激なしで見られるよりも低い値を生じた。しかしながら、ST100,045では効果が見られなかった。これは、ST100,038のみが、プレートに接着した後にBREの増殖を阻害できる、ST100,038とST100,045との活性における興味深い違いを表す。以下の実験によって、この違いが確認された。
【0092】
表6は、BREへの、接着前および後のST100,038およびST100,045の添加の繰り返しを報告する。各処理のデータポイントを平均し、ペプチド名の下に示す。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均の隣の縦列で計算する。
【0093】
これまでに見られたように、両方のペプチドはBRE増殖および生存を阻害した(図10参照)。また、オプティMem(OptiMem)+10%ウシ胎仔血清中で増殖させた細胞の処理においてST100,038を試験したところ、これらの条件下でも、BRE増殖および生存が阻害された(表6、縦列8〜11、横行B−C−D−E)(図11)。
【0094】
表7は、BREへの、接着した後のST100,038およびST100,045の添加の反復実験を報告する。希釈剤に調節するために、示される対照ウェルに、10%水もしくは5%水を添加するか、または水を添加しなかった。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均したものの隣の縦列で計算する。これまでに見られたように、ST100,038のみが、細胞が接着した後に加えた場合に、実質的にBRE増殖および生存を阻害した(図12参照)。
【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
【表7】

【0098】
実施例6.レトロインベルソペプチド誘導体の抗血管新生活性の特徴付け
上記の結果から、ST100,038およびST100,045の両方がVEGF媒介性BRE増殖および生存を阻害し得、ST100,038はより広範な条件で効果的であることが示された。したがって、ST100,038の逆転した配列を有するD−アミノ酸ペプチドであるST100,059を作製することにした。このペプチドは、038の「レトロインベルソ」バージョンを表す。かかるペプチドが、より安定である一方で、受容体における同じ結合部位に正確に適合する証拠が、文献の中にある。
【0099】
この実験において、ST100,059の活性を、ST100,038のものと比較して試験した。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、キャンブレックス(Cambrex)EGM−2MV培地中で維持した。1日目に細胞をトリプシン処理し、100μlのオプティMem(OptiMem)+2%ウシ胎仔血清中、96ウェルプレートに平板培養した。あるいは、次いで、適切な場合には、終濃度10ng/mlのVEGFならびに終濃度10、30または100μg/mlの種々のペプチドに加えて、100μlのオプティMem(OptiMem)をウェルに加えた。72時間のインキュベーションの後、各ウェルの生細胞の数を、WST−1アッセイ(ロシュ(Roche))を用いて測定した。
【0100】
表8は、440nmで測定した、WST−1誘導比色変化の量を報告する。VEGF+/−ウェルを平均し、対応する定義の隣に示す。ペプチド処理したウェルとVEGFのみのウェルとの間のスチューデントt検定値を、平均の隣の縦列で計算する。標準偏差(STD)を、スチューデントt検定の隣の縦列で計算する。
【0101】
各データポイントの4つのウェルの平均をグラフで示す(図13)。データのスチューデントt検定解析から、WST−1の減少が、ST100,038の2つの最も高い濃度およびST100,059の最も高い濃度で統計的に有意であることが明らかである。したがって、ST100,059は、ST100,038と同様の阻害活性を有する。
【0102】
【表8】

【0103】
実施例7.in vivoでのKDR結合ペプチドの抗血管新生活性の特徴付け
本発明のペプチドを、抗血管新生活性のin vivoモデルにおいても試験した。このモデルは、VEGF誘導血管新生を、野生型FVB/Nマウスにおいてマトリゲル(Matrigel)を充填したアンジオリアクターで起こるとして、解析する(ゲデズ(Guedez)ら、2003年、アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Am.J.Pathol.)162、1431−1439頁)
【0104】
方法
1.アンジオリアクターの調製
プレキシグラス鋳型および片刃かみそりを用いて、無菌のポリエチレンチューブ(内径0.14cm)を標準的な1cmの長さに切断する。これらのチューブの一端をマニキュア液で密閉する。チューブの中に、示されるペプチドありまたはなしで、500ng/mlのVEGFを含有する20μlのマトリゲル(Matrigel)(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)から入手し、増殖因子を含まない)を注入する。マトリゲル(Matrigel)を室温で1時間重合させた後、野生型FVB/N雌マウス(8〜10週齢)の両側腹にアンジオリアクターを皮下移植する。
2.血管新生の測定
10日後、アンジオリアクターにおける血管新生を測定する。アンジオリアクターの回収の20分前に、マウスに、100μlの、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中25mg/mlのFITC−デキストランの、尾静脈を介した注射を施す。血管機能の定量化を、アンジオリアクターからのマトリゲル(Matrigel)の除去によって行い、フルオスターギャラクシー(FLUOstar Galaxy)マイクロプレートリーダー(励起485nm、放出520nm、ドイツ連邦共和国のBMGラブテクノロジーズ・ゲーエムベーハー(BMG Labtechnologies GmbH、Germany))を用いて、蛍光を測定する。10個のアンジオリアクターの平均相対蛍光±標準偏差を測定し、統計解析を行う。
3.実験1の概略説明
研究の結果の統計解析が可能であるためには、異なる群の実験が、5匹のマウスに10個のアンジオリアクターを含まなければならない。動物の種々の群を、以下で表9に列挙する。
【0105】
【表9】

【0106】
VEGF濃度:500ng/mlマトリゲル(30μl/アンジオリアクター)
トロンボスポンジンペプチド616:SPWSSCSVTCGDGVITRIR(配列番号45)(イルエラ−アリスペ(Iruela−Arispe)ら、1999年、サーキュレーション(Circ.)100、1423−1431頁)。
【0107】
実験の定量的結果を表10に表す。図14の写真は、マウスからの除去の後のアンジオリアクターを示し、血管新生のレベルの定性的評価を表す。陽性対照群の10個のアンジオリアクター(VEGFのみで処理したもの)のうち、6個のみが解析できた。これらの6個のうち、3個だけがVEGFの応答していることがわかった(以前の実験および上記の非刺激PBS対照と同程度の値)。これらの3個のみが解析に用いられた場合、より低い用量、すなわち50マイクログラム/mlに相当する40ミクロモルのST100,038およびST100,045がVEGF媒介性血管新生を明らかに阻害し、ST100,038がST100,045より活性が高く、非刺激PBS対照までおよびTSP616ペプチドを用いて得られたレベルと同様までレベルを下げることは明らかである(図15)。これらの結果がBRE細胞を用いてin vitroで見られたものを反映することは注目に値する。このように、50μg/mlのST100,038は、VEGF刺激生存/増殖を完全に阻害することができた。
【0108】
【表10】

【0109】
【表11】

【0110】
4.実験2の概略説明
試験した動物の種々の群を以下で表11に列挙する。
【0111】
【表12】

【0112】
VEGF濃度:500ng/mlマトリゲル(30μl/アンジオリアクター)
トロンボスポンジンペプチド616:SPWSSCSVTCGDGVITRIR(配列番号45)(イルエラ−アリスペ(Iruela−Arispe)ら、1999年、サーキュレーション(Circ.)100、1423−1431頁)。
【0113】
実験の定量的結果を表12に示す。
【0114】
【表13】

【0115】
以下は、種々の群のボンフェローニ多重複数比較統計検定を含む。
【0116】
【表14】

【0117】
図16のグラフは、値の中央値を報告することによって結果を要約しており、ST100,038およびST100,059ペプチドがVEGF媒介性血管新生を明らかに阻害することを示す。ST100,059はST100,038より活性が高く、血管新生のレベルを非刺激PBS対照までおよびTSP616ペプチドを用いて得られたレベルと同様まで下げる。これらの結果がBRE細胞を用いてin vitroで見られたものを反映することは注目に値する。また、実験1と2との比較から、レトロインベルソペプチドST100,059は、L−アミノ酸をD−アミノ酸と単に置換することによって生じるペプチドであるST100,045より活性が高いことが明らかである。
【0118】
実施例8.in vivoでのKDR結合ペプチドの抗腫瘍活性の特徴付け
本発明のペプチドを、抗腫瘍活性のin vivoモデルにおいて試験した。このモデルは、未処理、または毎日腹腔内に20mg/kg、40mg/kg、100mg/kg用量のいずれかのST100,059で処理した皮下B16黒色腫腫瘍の増殖を比較する。
【0119】
方法
雄C57BL/6マウスを、20±2gの平均体重で得た。マウスB16−F1黒色腫細胞を皮下移植した(動物1匹あたり5×10細胞)。細胞の注射の翌日から開始して、ペプチド(水中に製剤化した)を毎日腹腔内投与した。腫瘍は、細胞の注射の9日後頃に蝕知可能になった。次いで、腫瘍を2日ごとに測定した。
【0120】
実験の定量的結果を、表14に示す。
【0121】
【表15】

【0122】
【表16】

【0123】
図17は、毎日腹腔内に20mg/kg、40mg/kgまたは100mg/kgのST100,059で処理したin vivoでの皮下B16黒色腫腫瘍の増殖の阻害を、未処理対照と比べて比較するグラフである。ST100,059は、皮下B16黒色腫腫瘍の増殖を、統計的に有意に、用量反応的に阻害することができる。このモデルでのST100,059の試験を2回繰り返すと、同様の結果になった。
【0124】
実施例9.in vivoでのKDR結合ペプチドの抗転移活性の特徴付け
本発明のペプチドを、in vivoの黒色腫肺転移モデルにおいても試験した。このモデルは、未処理または毎日腹腔内に100mg/kgのST100,059で処理したかのいずれかのマウスB16黒色腫腫瘍肺転移の数および大きさを比較する。
【0125】
方法
雄C57BL/6マウスを、平均体重20±2gで得た。マウスB16−F1黒色腫細胞を培養物中で増殖させ、85%のコンフルエンスで採取し、外側尾静脈を介して100μlの生理食塩水に接種した(5×10細胞/マウス)。
【0126】
14日目にマウスを麻酔下で屠殺し、ブワン固定液中で肺を一晩固定した。肺の全ての葉で、肺転移を同定し、数えた。
【0127】
実験の概略説明
動物の種々の群を、以下で表15に列挙する。
【0128】
【表17】

【0129】
実験の定量的結果を表16に示す。
【0130】
【表18】

【0131】
結果を要約した図18のグラフは、ST100,059が肺転移の数を明らかに減少させ、値が30の単一の異常値が検定値に含まれない場合に多重比較にダネット検定を用いたANOVA解析P<0.05で、毎日腹腔内に100mg/kg/マウスのST100,059が統計的に有意であることを示す。このモデルでST100,059の試験を繰り返すと、同様の結果になった。
【0132】
実施例10.in vivoでのKDR結合ペプチドの抗腫瘍活性の特徴付け
本発明のペプチドを、抗腫瘍活性のin vivoモデルにおいて試験した。このモデルは、毎日腹腔内に10mg/kgまたは20mg/kgのST100,059、ドセタキセルまたは生理食塩水で処理したヌードマウスにおけるヒト乳癌MDA−MB231腫瘍異種移植の増殖を比較する。
【0133】
方法
5から6週齢の間の、体重およそ20gの雌ヌードマウス(nu/nu)を、ハーラム・インク(Harlam, Inc.)から得た。トロカールによって、動物に、ヌードマウスホストにおいて皮下で増殖した腫瘍から採取したヒト腫瘍の断片を皮下(s.c.)移植した。腫瘍の大きさがおよそ60〜75mgのとき(移植後約10〜15日)に、処理群および対照群に、動物を対にした。各群は8〜10匹のマウスを含み、そのぞれぞれの耳にタグを付け、実験を通して個別に追跡した。
【0134】
薬物または対照の投与は、約70mgの腫瘍サイズで動物を対にした日に開始した(1日目)。1日目から始めて週2回、マウスを計量し、カリパスを用いて腫瘍の寸法を得た。標準式(W×L)/2によって、これらの腫瘍寸法を腫瘍重量(mg)に換算した。実験終了時に、マウスを計量し、屠殺し、その腫瘍を摘出した。腫瘍を計量し、群あたりの平均および中央値の腫瘍重量を計算した。
【0135】
動物の種々の群を、以下で表17に示す。
【0136】
【表19】

【0137】
実験の定量的結果を表19に示す。各群について、表は、上述のように得たカリパス測定および実際の腫瘍重量を報告する。また、表は、表18に示される以下の指数に基づいて計算した壊死スコアを報告する。
【0138】
【表20】

【0139】
腫瘍重量に関する図19ならびに壊死スコアおよび壊死のあった動物の数に関する図20のグラフによって、2組のデータを要約する。処理した腫瘍が、カリパス評価した重量対実際の測定した重量で大きな違いを有することが明らかに観察できる。また、処理した腫瘍における中間の実際の重量は、20mg/kg<10mg/kg<対照で用量依存的に、対照におけるよりも小さい。最後に、壊死のあった動物の数および壊死の全体のレベルの両方とも、用量依存的に、処理した動物でより高い。
【0140】
重量の違いの理由は、壊死スコア、および壊死のあった動物の数の両方によって測定される、処理した腫瘍に存在する壊死の量が、かなり多いことよる。抗血管新生剤による腫瘍壊死の誘導は、文献において十分特徴付けられており、その抗腫瘍作用機序の一部である。したがって、ST100,059は、免疫無防備状態マウスで増殖したヒト乳癌腫瘍の増殖および血管新生を阻害し得ると結論付ける。
【0141】
【表21】

【0142】
実施例11.VEGF誘導細胞内シグナル伝達のST100,059阻害
抗血管新生化合物を試験するのに用いられる標準的細胞株であるヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるVEGF誘導細胞内シグナル伝達の阻害のレベルを測定することによって、ペプチドの抗血管新生活性を試験した。内皮細胞におけるKDRのVEGF刺激は、結果として、リン酸化MAPKに特異的だが全MAPKに特異的でない抗体を用いて検出されるMAPKのリン酸化を生じる。
【0143】
キャンブレックス(Cambrex)EGM−2MV培地中で細胞を維持した。1日目に、M200培地(カスケード・バイオロジカルス(Cascade Biologicals))中の1%FBS中で細胞を一晩飢餓状態にした。その後、培地を血清不含培地±ペプチドと交換し、2時間インキュベートした。
【0144】
次いで、培地を、25ng/mlのヒトVEGF165を含有する血清不含培地と交換し、10分間インキュベートした。次いで、PBS中2mMのオルトバナジウム酸ナトリウムで細胞を洗浄し、2mMのオルトバナジウム酸ナトリウムおよび1mMのPMSFを含むNP40溶解バッファー中に採取し、次いでウエスタンブロットによって解析した。
【0145】
図21のグラフは、VEGFの結合ひいてはその受容体であるKDRの活性化をブロックする化合物に期待されるように、ST100,059の濃度の増大によってどのようにMPKリン酸化のレベルが減少したかを示す。
【0146】
実施例12.VEGF誘導遺伝子発現変化のST100,059阻害
HUVECにおけるVEGF誘導遺伝子発現変化の阻害のレベルを測定することによって、ペプチドの抗血管新生活性を試験した。内皮細胞におけるKDRのVEGF刺激は、結果として、これまでに特徴付けられている遺伝子発現の実質的な変化を生じる(特許出願第20020132978号明細書、ガーバー(Gerber)ら参照)。
【0147】
細胞をM200培地(カスケード・バイオロジカルス(Cascade Biologicals))中で維持した。1日目に、M200培地(カスケード・バイオロジカルス(Cascade Biologicals))中1%のFBS中で一晩細胞を飢餓状態にした。翌朝、培地を血清不含培地(対照)または25ng/mlのヒトVEGF165+/−200マイクログラム/mlのST100,059ペプチドを含有する培地と交換し、24時間インキュベートした。
【0148】
次いで培地を吸引し、製造業者によって記載されているように、トリゾール(Trizol)(ギブコ(Gibco))で細胞を溶解し、全RNAを生じるよう処理した。
【0149】
次いで、全RNAの10マイクログラムのアリコートを処理し、製造業者によって記載されているように、アフィメトリックス・ヒューマンU133プラス2.0(Affymetrix Human U133 Plus 2.0)アレイ上で加水分解した。アフィメトリックス(Affymetrix)GCOSソフトウエアを用いて、得られたデータを解析した。これは、アレイ上の各転写産物に関して、統計的アルゴリズムを使用して定量的値(シグナル強度)および定性的値(有無)を計算する。次いで、3つの試料からのデータを比較し、対照と比較したVEGFによって、修飾、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかをされた遺伝子を同定し、次いでそのレベルを、ST100,059での処理の後に対照と同様のレベルに戻した。
【0150】
図22および23は、結果を図表で表している。これらの結果から、ST100,059が、これまでに文献に記載されている多くの遺伝子に関してVEGF誘導遺伝子発現変化を阻害できることが示される。059がKDRへのVEGFの結合をブロックするだけで、もう一方の受容体であるFLT−1への結合を阻害しないと考えれば、VEGFのKDR選択性変異体によって特異的にアップレギュレーションされている、ヤン(Yang)らに記載されている遺伝子が興味深い。これらの遺伝子のうち、いくつかはまた、本実験においてアップレギュレーションされており、次いで、ヒドロキシステロイド(17−β)デヒドロゲナーゼ7x上昇、スタニオカルシン1、2.4x上昇、インスリン様増殖因子結合タンパク質5、4.5x上昇、γシヌクレイン2x上昇およびets2、2,5倍上昇を含む、059によって完全に阻害される。遺伝子ダウン症候群重要領域遺伝子1および遺伝子ペプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ1を、例として用いる。
【0151】
本明細書中で論じられる全ての出版物、特許および特許出願は、参照によって本明細書中に援用される。前述の詳述において、本発明を、その特定の好ましい実施形態に関して説明し、多くの詳細を実例の目的で述べてきたが、本発明がさらなる実施形態を許容することおよび本明細書中に記載される特定の詳細が本発明の基本的原理を逸脱することなく相当に変化し得ることは、当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0152】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、ベクターNTI(Vector NTI)を用いたクラスタルW(custalW)多重配列アラインメントアルゴリズムによって生じた系統樹を示し、ミニペプチドディスプレイ技術を用いて同定されたペプチドと、ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)R、デマンジェル(Demangel)C、マラヴォー(Malavaud)B、ヴァッシー(Vassy)R、ロイエ(Rouyre)S、クレーマー(Kraemer)M、プルエー(Plouet)J、ダービン(Derbin)C、ペレ(Perret)G、メイジー(Mazie)JC、ザ・EMBOジャーナル(EMBO J.)2000年4月3日、19(7)、1525−33およびルー(Lu)D、シェン(Shen)J、ヴィル(Vil)MD、チャン(Zhang)H、ヒメネス(Jimenez)X、ボーレン(Bohlen)P、ヴィッテ(Witte)L、チュー(Zhu)Z.ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J Biol Chem.)2003年10月31日、278(44)、43496−507に開示されたペプチドとの間の関係を比較する。
【図2】図2は、以下のペプチドの間の相同性アラインメントを示す。ビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)らの論文よりEmboK4(配列番号38)、EmboK5(配列番号39)およびEmboV4(配列番号40)、ルー(Lu)らの論文より2つのペプチド、1A11および2D5(同じ配列(配列番号41)を有し、そのため1つと見なす)、ならびにミニペプチドディスプレイ技術によって得られたクローンK3(配列番号42)。
【図3】図3は、K3、ならびにビネトゥリー−トゥールネール(Binetruy−Tournaire)らによって開示されたペプチドのうちの2つ、EmboV1(配列番号43)およびEmboK3(配列番号44)を含む、さらなる相同性アラインメントを示す。
【図4】図4は、種々のペプチド存在下でのウシ網膜内皮細胞(BRE細胞)のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフである。
【図5】図5は、(A)VEGFなし、(B)VEGF、(C)VEGFに100マイクログラム/mlのST100,038を追加、(D)VEGFに50マイクログラム/mlのST100,038を追加、および(E)VEGFに100マイクログラム/mlのST100,039を追加、を含む種々の処理に供されたBRE細胞の数および形態の顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、種々のペプチド存在下でのBRE細胞のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフであり、ここでペプチドの最大濃度は200マイクログラム/mlまで増加させた。
【図7】図7は、Dアミノ酸を含む同じ配列(ペプチドST100,045)に対する、Lアミノ酸を含むST100,038ペプチド存在下でのBRE細胞のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフである。
【図8】図8は、(A)VEGFなし、(B)VEGF、(C)VEGFに50マイクログラム/mlのST100,038を追加、(D)VEGFに50マイクログラム/mlのST100,045を追加、を含む種々の処理に供されたBRE細胞の数および形態の顕微鏡写真を示す。
【図9】図9は、細胞が接着した後の、ペプチドST100,038およびST100,045存在下でのBRE細胞のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフである。
【図10】図10は、細胞が接着する前の、ペプチドST100,038およびST100,045存在下でのBRE細胞のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフである。
【図11】図11は、ペプチドST100,038および10%ウシ胎仔血清存在下でのBRE細胞のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフである。
【図12】図12は、細胞が接着した後の、ペプチドST100,038およびST100,045存在下でのBRE細胞のVEGF媒介性生存/増殖を示すグラフである。
【図13】図13は、VEGF媒介性HUVEC生存に対するペプチドST100,038およびレトロインベルソペプチドST100,059の効果を示すグラフである。
【図14】図14は、種々のペプチドで処理したマウスから除去した後のアンジオリアクターの写真を示し、血管新生のレベルの定性的評価を表す。写真(A)は、VEGFに160μMのペプチドST100,038を追加で処理したマウス由来のアンジオリアクターを示す。写真(B)は、VEGFに40μMのペプチドST100,038を追加で処理したマウス由来のアンジオリアクターを示す。写真(C)は、VEGFに160μMのペプチドST100,045を追加で処理したマウス由来のアンジオリアクターを示す。写真(D)は、VEGFに40μMのペプチドST100,045を追加で処理したマウス由来のアンジリアクターを示す。写真(E)は、PBSのみで処理したマウス由来のアンジオリアクターを示す。写真(F)は、VEGFのみで処理したマウス由来のアンジオリアクターを示す。写真(G)は、VEGFにペプチドTSP616を追加で処理したマウス由来のアンジオリアクターを示す。
【図15】図15は、ST100,038およびST100,045を用いたin vivoでのVEGF媒介性血管新生の阻害を、非刺激PBSおよびTSP616対照と比べて比較する棒グラフである。
【図16】図16は、ST100,038およびST100,059を用いたin vivoでのVEGF媒介性血管新生の阻害を、非刺激PBSおよびTSP616対照と比べて比較するグラフである。また、各群の下に、種々のペプチドで処理したマウスから除去した後のアンジオリアクターの写真があり、血管新生のレベルの定性的評価を表す。
【図17】図17は、毎日腹腔内に20mg/kg、40mg/kg、100mg/kgのST100,059で処理したC57BL/6マウスにおける皮下B16黒色腫腫瘍の増殖の阻害を、未処理対照と比較するグラフである。
【図18】図18は、腹腔内に毎日100mg/kgまたは2日毎に100mg/kgのいずれかで投与したST100,059で処理したマウスにおけるB16黒色腫肺転移の数を、未処理対照と比較するグラフである。
【図19】図19は、ベシクル、ドセタキセル、毎日10mg/kgまたは毎日20mg/kgのST100,059で処理したマウスにおけるヒト乳癌腫瘍株MDA−MB231のカリパス測定および実際の腫瘍重量を比較するグラフである。
【図20】図20は、ベシクル、毎日10mg/kgまたは毎日20mg/kgのST100,059で処理したマウスにおける各MDA−MB231ヒト乳癌腫瘍の、腫瘍壊死のあった動物の数および壊死の程度を比較するグラフである。
【図21】図21は、ペプチドST100,059の濃度の増大によってHUVECにおけるタンパク質キナーゼMPKリン酸化のレベルが低下することを示すグラフである。
【図22】図22は、ダウン症候群重要領域遺伝子1を例として用いた、ペプチドST100,059がVEGF誘導遺伝子発現変化を制御することを示す像である。
【図23】図23は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ1遺伝子を例として用いた、ペプチドST100,059がVEGF誘導遺伝子発現変化を制御することを示す像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列LPPHSSまたはその保存的置換を含む、抗血管新生ペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列SLPPHSSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
アミノ酸配列LPPHSSQまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
アミノ酸配列SLPPHSSQまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
アミノ酸配列TSLPPHSSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
アミノ酸配列LPPHSSQSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
アミノ酸配列TSLPPHSSQまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
アミノ酸配列SLPPHSSQSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
アミノ酸配列TSLPPHSSQSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
アミノ酸配列ATSLPPHSSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項11】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQSまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
アミノ酸配列LPPHSSQSPまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項14】
アミノ酸配列SLPPHSSQSPまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項15】
アミノ酸配列TSLPPHSSQSPまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項16】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQSPまたはその保存的置換を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
アミノ酸配列SLPPHSSQを含む、単離されたペプチド。
【請求項18】
アミノ酸配列TSLPPHSSを含む、単離されたペプチド。
【請求項19】
アミノ酸配列LPPHSSQSを含む、単離されたペプチド。
【請求項20】
アミノ酸配列TSLPPHSSQを含む、請求項17に記載のペプチド。
【請求項21】
アミノ酸配列SLPPHSSQSを含む、請求項19に記載のペプチド。
【請求項22】
アミノ酸配列TSLPPHSSQSを含む、請求項21に記載のペプチド。
【請求項23】
アミノ酸配列ATSLPPHSSを含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項24】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQを含む、請求項23に記載のペプチド。
【請求項25】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQSを含む、請求項24に記載のペプチド。
【請求項26】
アミノ酸配列LPPHSSQSPを含む、請求項19に記載のペプチド。
【請求項27】
アミノ酸配列SLPPHSSQSPを含む、請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
アミノ酸配列TSLPPHSSQSPを含む、請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQSPを含む、請求項28に記載のペプチド。
【請求項30】
アミノ酸配列ATSLPPHSSLQTを含む、請求項23に記載のペプチド。
【請求項31】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQSPLを含む、請求項29に記載のペプチド。
【請求項32】
アミノ酸配列ATSLPPHSSQSPRALを含む、請求項29に記載のペプチド。
【請求項33】
アミノ酸配列SLPPRALQを含む、単離されたペプチド。
【請求項34】
アミノ酸配列TSLPPRALを含む、単離されたペプチド。
【請求項35】
アミノ酸配列LPPRALQSを含む、単離されたペプチド。
【請求項36】
アミノ酸配列TSLPPRALQを含む、請求項30に記載のペプチド。
【請求項37】
アミノ酸配列SLPPRALQSを含む、請求項32に記載のペプチド。
【請求項38】
アミノ酸配列TSLPPRALQSを含む、請求項34に記載のペプチド。
【請求項39】
アミノ酸配列ATSLPPRALを含む、請求項31に記載のペプチド。
【請求項40】
アミノ酸配列ATSLPPRALQを含む、請求項36に記載のペプチド。
【請求項41】
アミノ酸配列ATSLPPRALQSを含む、請求項37に記載のペプチド。
【請求項42】
アミノ酸配列LPPRALQSPを含む、請求項32に記載のペプチド。
【請求項43】
アミノ酸配列SLPPRALQSPを含む、請求項39に記載のペプチド。
【請求項44】
アミノ酸配列TSLPPRALQSPを含む、請求項39に記載のペプチド。
【請求項45】
アミノ酸配列ATSLPPRALQSPを含む、請求項41に記載のペプチド。
【請求項46】
アミノ酸配列WLPPHSSを含む、単離されたペプチド。
【請求項47】
アミノ酸配列ATWLPPHSSQSPを含む、請求項43に記載のペプチド。
【請求項48】
アミノ酸配列WLPPRALを含む、単離されたペプチド。
【請求項49】
アミノ酸配列ATWLPPRALQSPを含む、請求項45に記載のペプチド。
【請求項50】
前記ペプチドが、L−アミノ酸を含む、請求項1〜49いずれか一項に記載のペプチド。
【請求項51】
前記ペプチドが、D−アミノ酸を含む、請求項1〜49いずれか一項に記載のペプチド。
【請求項52】
1つ以上のペプチド結合が減少した、請求項1〜49いずれか一項に記載のペプチド。
【請求項53】
請求項51に記載のペプチドの逆転したアミノ酸配列を含む、レトロインベルソペプチド。
【請求項54】
アミノ酸配列PSQSSHPPLSTAを含む、単離されたペプチド。
【請求項55】
前記ペプチドが、アセチル化アミノ末端を含む、請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項56】
前記ペプチドが、アミド化したカルボキシ末端を含む、請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項57】
前記ペプチドが、血清中安定性を促進する部分に結合した、請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項58】
前記部分が、アルブミン、免疫グロブリンおよびその断片、トランスフェリン、リポタンパク質、リポソーム、α−2−マクログロブリンおよびα−1−糖タンパク質、ポリエチレングリコールおよびデキストランからなる群より選択される、請求項57に記載のペプチド。
【請求項59】
請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項60】
薬学的に許容され得る担体をさらに含む、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記担体がリポソーム形成脂質である、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記組成物がリポソーム送達ビヒクル中で投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記ペプチドの放出制御を可能にするポリマー担体をさらに含み、前記ポリマー担体が放出制御ナノ粒子および微粒子からなる群より選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項64】
前記微粒子がマイクロビーズまたは生分解性ミクロスフェアである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記生分解性ミクロスフェアがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)共重合体を含む、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
前記組成物が、エアロゾル送達用に製剤化された、請求項60に記載の組成物。
【請求項67】
前記組成物が、経鼻スプレーとして製剤化された、請求項60に記載の組成物。
【請求項68】
前記組成物が、経口投与用に製剤化された、請求項60に記載の組成物。
【請求項69】
前記組成物が、錠剤、丸剤またはカプセルとして製剤化された、請求項60に記載の組成物。
【請求項70】
前記組成物が、持続性薬剤または座薬として製剤化された、請求項60に記載の組成物。
【請求項71】
さらに、1つ以上のさらなる抗血管新生化合物または抗癌化合物を含む、請求項59に記載の組成物。
【請求項72】
血管内皮増殖因子(VEGF)媒介性血管新生を減少させる方法であって、
キナーゼドメイン受容体(KDR)を発現する細胞を、VEGF媒介性血管新生が減少するように請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチドに接触させる工程を含む、方法。
【請求項73】
KDRまたはKDRペプチドへのVEGFの結合をブロックする方法であって、
前記KDRまたは前記KDRペプチドを、VEGFの結合がブロックされるように請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチドに接触させる工程を含む、方法。
【請求項74】
前記KDRまたはKDRペプチドが細胞の表面に発現されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記細胞がin vitroで維持される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記細胞が、原核細胞および真核細胞の群より選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞がin vivoである、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞が、癌と診断された被験体中にある、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記KDRまたはKDRペプチドが表面に提示される、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
前記KDRまたはKDRペプチドが表面上のペプチドアレイに提示される、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
癌と診断された患者を、治療有効量の、請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチドで治療する方法であって、前記癌の拡散が減少または阻害されるように前記ペプチドを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項82】
前記癌が、腎臓、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、肺、脳、胸部および皮膚からなる群より選択される固形腫瘍である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
血管新生関連眼疾患と診断された患者を、治療有効量の、請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチドで治療する方法であって、前記眼疾患が減少または阻害されるように前記ペプチドを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項84】
前記眼疾患が、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜血管閉塞、黄斑変性、および角膜損傷または移植に関連する新血管形成からなる群より選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
血管新生関連疾患と診断された患者を、治療有効量の、請求項1〜49および54のいずれか一項に記載のペプチドで治療する方法であって、前記血管新生関連疾患が減少または阻害されるように前記ペプチドを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項86】
前記血管新生関連疾患が、血管腫、関節リウマチ、アテローム硬化症、突発性肺線維症、血管再狭窄、動静脈奇形、髄膜腫、血管新生緑内障、乾癬、血管線維症、血友病関節、過形成瘢痕、オースラー−ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管癒着病変、滑膜炎、皮膚炎、子宮内膜症、翼状片、創傷、びらんおよび潰瘍(皮膚、胃および十二指腸)からなる群より選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記KDRがVEGF存在下で前記ペプチドに接触させられる、請求項73に記載の方法。
【請求項88】
前記KDRが、VEGFに暴露される前に前記ペプチドに接触させられる、請求項73に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公表番号】特表2008−509157(P2008−509157A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525027(P2007−525027)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/027883
【国際公開番号】WO2006/015385
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507038526)ソフェリオン セラピューティクス,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】