説明

抗酸化剤、香料組成物及び化粧料組成物

【課題】活性酸素を消去し皮膚での過酸化脂質の生成を抑制する優れた抗酸化能を有する天然物由来の抗酸化剤または抗酸化性香料、または、それらを含有することを特徴とする香料組成物を提供する。また、前記抗酸化剤または抗酸化性香料、香料組成物を配合した、安全性の高い化粧料を提供する。
【解決手段】ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分からなることを特徴とする抗酸化剤または抗酸化性香料、または、それらを含有することを特徴とする香料組成物。また、抗酸化成分として、前記抗酸化剤または抗酸化性香料、香料組成物を配合したことを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた活性酸素消去能を有し、かつ過酸化脂質生成を抑制する天然物由来の抗酸化剤または抗酸化性香料、または、それらを含有することを特徴とする香料組成物および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
老化した皮膚では過酸化脂質が増大し、柔軟性、弾力性を失い、皮膚のしわが増大し、乾燥して滑らかさのない荒れ肌症状が認められている。これらの皮膚症状が現れる原因物質の一つとして、大気中の酸素が紫外線や酵素等の影響を受けて生成するいわゆる活性酸素が考えられている。このような活性酸素には、フリーラジカルであるスーパーオキシドやヒドロキシラジカルといったものと、非ラジカルである一重項酸素や過酸化水素といったものがある。これら活性酸素は脂肪酸を酸化し、過酸化物を生成させる。その上、生成した過酸化物と活性酸素は、生体に対してコラーゲン線維の架橋、ヒアルロン酸の断片化、DNA螺旋の部分開裂、連鎖的ラジカルの発生による組織の損傷等の悪影響を及ぼし、その結果として、皮膚のしわや弾力消失、脱毛といった生体の老化を促進するといわれている。
【0003】
したがって、活性酸素の生成を抑制することは、皮膚の老化を改善あるいは予防する点で皮膚にとって非常に重要なことであり、老化防止皮膚化粧料に求められる重要な要素である。そのため、従来、生体内に発生した活性酸素を消去する作用のある物質の探索が広く行われてきた。この様な作用を有する物質として、従来用いられてきたものとしては、天然由来のものでは、脂溶性のトコフェロール(ビタミンE)、水溶性のアスコルビン酸(ビタミンC)、合成化合物では、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)等が挙げられる。また、植物抽出物の中にも抗酸化効果を有するものがあり、化粧料中に配合して、皮膚の老化を防止しようとする試みがなされてきた(例えば、特許文献1〜8参照)。
【特許文献1】特開2003−128569号公報
【特許文献2】特開2002−97151号公報
【特許文献3】特開2002−205933号公報
【特許文献4】特開2003−321337号公報
【特許文献5】特開2001−207188号公報
【特許文献6】特許第3389580号公報
【特許文献7】特許第2514860号公報
【特許文献8】特許第3543306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各種の植物抽出物は安全性の面において懸念されるものもあり、また活
性酸素消去能が十分ではなかったり、化粧品等の皮膚外用剤の基剤中に配合した場合、有効な効果を得るにはかなりの高濃度を配合しなければならず、製剤に好ましくない臭いを付与してしまったりする場合があるなど、作用効果や安定性の面ですべてを満足できるものが少ないのが現状であった。
【0005】
上記事情において、安全性が高く、生体内に発生する活性酸素および過酸化脂質を消去する作用を十分に有し、皮膚等への適用性の良好な抗酸化剤及び化粧品が求められていた。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、優れた香気を有し、且つ優れた抗酸化効果を有する価値の高い抗酸化剤または抗酸化性香料、または、それらを含有することを特徴とする香料組成物および化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記事情に鑑み鋭意研究した結果、ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分が優れた抗酸化性を有することを見出し、本発明を完成したものである。即ち、本発明は、ヘリクリサム属植物の抽出物から酸・フェノール性画分およびアルカリ性画分を除去した残りの中性画分からなることを特徴とする抗酸化剤または抗酸化性香料、またはそれらを配合することを特徴とする香料組成物および化粧料とする発明にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗酸化剤は、植物抽出物であり安全性が高く、非常に優れた抗酸化効果を発揮する。また本発明の抗酸化性香料は、非常に優れた抗酸化効果を発揮すると共に、特有の優れた香気を有する価値の高いものである。また、抗酸化成分として前記抗酸化剤または抗酸化性香料を配合した抗酸化性香料組成物は安全性や抗酸化効果に加え、バラエティの広い魅力的な香りを発現するような優れたものである。更に、抗酸化成分として前記抗酸化性香料組成物およびヘリクリサム属植物の抽出物から酸・フェノール性画分およびアルカリ性画分を除去した残りの中性画分を配合してなることを特徴とする化粧料は、従来の抗酸化剤の使用を大幅に削減することが出来る。また本発明の抗酸化剤、抗酸化性香料、抗酸化性香料組成物、化粧料、皮膚外用剤は、優れた活性酸素消去効果を有し、肌に適用した場合には、肌荒れを防止し、肌のつや、はり、明るさを保ち、しわを改善する等、皮膚老化防止効果に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いるヘリクリサム(Helichrysum)属植物は、キク科で南ヨーロッパ、南アフリカ、熱帯アジアからオーストラリアにかけて約500種が分布し、一年草または多年草で低木状になる種もある。ヘリクリサム属植物としては特に限定されないが、Helichrysum(H.と略記する)ambignum、H.amorginum、H.arenarium、H.argenteum、H.armenium、H.aurantiacum、H.aureonitens、H.bellidioides、H.bracteatum、H.caespititium、H.crispum、H.decumbens、H.frigidum、H.graveolens、H.italicum(異名;H.rupestre)、H.leucopsideum、H.maritimum、H.milfordiae、H.nitens、H.petiolare、H.odoratissimum、H.petiolatum、H.picardii、H.plicatum、H.plinthocalyx、H.polyphyllum、H.pumilum、H.rubicundum、H.selago、H.serotinum(異名;H.angustifolium)、H.sexatile、H.sibthorpii(異名;H.virgineum)、H.splendidum、H.stoechas、H.taenari、H.thianschanicum等が挙げられる。これらのなかでもセロチヌム(H.serotinum)、イタリクム(H.italicum)またはストエカス(H.stoechas)種が好ましく、特にストエカス(H.stoechas)種が好ましい。
【0010】
ヘリクリサム属植物の抽出物には、ヘリクリサム属植物の全草、葉、枝、花、根、茎などいずれの部位を用いても良いが、抗酸化性および香料としての利用の点からは花が特に好ましい。
【0011】
本発明に用いる抽出物は、ヘリクリサム属植物を溶媒、例えば液化ガス(液体炭酸、液化プロパン、液化ブタン等)、水、炭素数1〜5の低級アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等)、含水低級アルコール類、炭素数1〜5の低級アルコールと炭素数1〜5の脂肪酸とのエステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、前記エステル類およびケトン類の含水物、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、エーテル類(メチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、炭化水素類(石油エーテル、ヘキサン等)あるいは前記溶媒の混合物で抽出して得た抽出液をそのまま、或いは濃縮することにより得ることが出来る。前記抽出溶媒の中でも炭化水素類が好ましく、更に炭化水素類で抽出後炭素数1〜5の低級アルコール類、特にエチルアルコールで抽出することが好ましい。抽出方法としては特に限定されず、例えば溶媒中に原料植物を室温で1〜100時間程度浸漬する方法、或いは溶媒の沸点以下の温度で加温、攪拌しながら抽出する方法などがあるが、抽出温度は、抽出時の変性がより少ない点から室温が好ましい。溶媒の使用量も特に限定されず、例えば原料植物に対して質量比で1〜100倍量、より好ましくは5〜50倍量が挙げられる。
【0012】
以上に述べたように、本発明に用いる抽出物は、特にセロチヌム(H.serotinum)、イタリクム(H.italicum)またはストエカス(H.stoechas)種の花抽出物が好ましく、その中でも特にストエカス(H.stoechas)種の花の抽出物が好ましい。
【0013】
また、本発明に用いる抽出物としては、香料業界で汎用されるコンクリートまたはアブソリュートが、得られる抗酸化性、香気及び入手の面から好ましい。特にアブソリュートが好ましい。コンクリートとは、例えば花と精製された溶媒(石油エーテル、ヘキサン等)を抽出器に仕込み、室温で浸漬させて花香を移行させた後、処理済の花を除き、減圧下で溶媒を除いて得られたものである。アブソリュートは、例えばコンクリートを高純度のエチルアルコールに加温溶解して再抽出し、溶液を例えば−15℃〜−25℃に冷却してワックスなどの不溶解物を除いた後、減圧下でエチルアルコールを留去して得られたものである。
【0014】
本発明に用いる抽出物を得る方法としては、上記以外に香料業界では特殊な技術であるマセラション(動物脂温浸抽出法)を挙げることが出来る。尚、水蒸気蒸留により得られる精油は、本発明における抽出物には含まれない。
【0015】
また、ヘリクリサム属植物の抽出物から酸・フェノール性画分およびアルカリ性画分を除去した中性画分は、次のようにしてを得ることができる。
【0016】
すなわち、ヘリクリサム属植物の抽出物を有機溶媒、例えば酢酸エチル、メチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、石油エーテル、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、液化ブタン等に一定量を溶解させる。次に、1mol/L塩酸を加え良く攪拌した後、静止させ2層に分離したら、水層部分を除く。この操作を5回以上行う。この操作の最後に、水を加え、同じ操作を行い、有機層を残す。次に、有機層に1mol/L水酸化ナトリウムを加え良く攪拌した後、静止させ2層に分離したら、水層部分を除く。この操作を5回以上行う。この操作の最後に、水を加え、同じ操作を行い、有機層を残す。pH試験紙でpH7になっていることを確認した後、乾燥硫酸マグネシウム又は乾燥塩化カルシウムを加え、数時間攪拌、放置する。その後、濾紙等を用いて有機層を濾過し、溶媒を除去して、目的物を得る。
【0017】
ここに示したのは、1例であり、中性画分は、ヘリクリサム属植物の抽出物に対し、pH1〜3にてアルカリ性画分を、pH10〜14にて酸・フェノール性画分を除去することによって得られるので、特にこれに拘る事はない。
【0018】
本発明の抗酸化剤であるヘリクリサム属植物の抽出物から酸・フェノール性画分およびアルカリ性画分を除去した中性画分は、バルサミックな香りとフルーティな甘さを併せ持つワイン様な香りを有している。これは、強い香りのためにフレグランス香料やフルーツフレーバーの変調剤としても有用である。従って、本発明の抗酸化剤は同時に優れた抗酸化性香料でもある。
【0019】
前記ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分からなる抗酸化剤または抗酸化性香料は、抗酸化成分として香料組成物に配合することにより抗酸化性香料組成物を得ることができる。香料組成物は、天然香料および合成香料をブレンドすることにより新たに創られた香料で、例えば香粧品用香料組成物としては、フローラル、ウッディ、シプレ、シトラス、グリーン、フゼア、オリエンタル、フルーティ、スパイシー等の香調があるが、本発明では特に限定されない。
【0020】
本発明の抗酸化剤または抗酸化性香料の香料組成物への配合量は、香料組成物が用いられる化粧品の種類および香料組成物に求められる香調等により、適宜調整される。この抗酸化性香料組成物は抗酸化性が高いので、これを化粧品に配合すると、従来の化粧品に添加されていた抗酸化剤の添加を削減することが出来る。更に、本発明の抗酸化性香料は前記の匂いを有するが、用いられる最終商品によっては別の匂いを要求される時がある。このような場合に抗酸化性香料の匂いを要求されている匂いに創り変え、消費者の多様な好みにあった商品開発を進める上でも、この抗酸化性香料は有用である。
【0021】
本発明の抗酸化剤または抗酸化性香料、または、それらを含有することを特徴とする香料組成物の化粧品への配合量は、溶媒を除いた純分として0.0001〜20%質量(以下、%と記す)、更には0.001〜5%が特に好ましい。本発明の化粧品には、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、その他の油性原料、グリセリン等の多価アルコール、界面活性剤、増粘剤等の通常用いられている成分が使用される。またその剤型も任意であり、例えば溶液系、可溶化系、乳化系、エアゾール等がある。更に、化粧品の用途も任意であり、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェイシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料、芳香化粧料、シャンプー等の洗髪用化粧料、毛髪仕上げ用化粧料、ボディー化粧料、口腔用化粧料、入浴化粧料等がある。本発明の化粧品は抗酸化性が高いので、従来の化粧品に添加されていた抗酸化剤の添加を大幅に削減することが出来る。従って、敏感肌の一部の化粧品使用者における合成抗酸化剤の配合に起因する刺激感の低減も可能である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例等に基づいて説明する。尚、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0023】
・製造例1 ヘリクリサム属植物の抽出物の調製
H.stoechasの乾燥した花1キログラムをヘキサン10リットルに室温で浸漬して花香成分および抗酸化成分を移行させた後、花を除いた。次に、溶媒を留去してコンクリート250グラムを得た。次にコンクリート250グラムをエチルアルコール2.5リットルに加温溶解して再抽出し、溶液を−15℃〜−25℃に冷却してワックスなどの不溶解物を除いた後、減圧下でエチルアルコールを留去し赤褐色、粘着状のアブソリュート190グラムを得た。
・製造例2 ヘリクリサム属植物の抽出物から酸・フェノール性画分およびアルカリ性画分を除去した中性画分の調製
製造例1で得たアブソリュート100gをヘキサン1000mLに溶解させた。次に、1mol/L塩酸を500mL加え良く攪拌した後、静止させ2層に分離したら水層部分を除き、この操作を5回行った。この操作の最後に、水500mLを加え、同じ操作を行い、有機層を残した。次に、有機層に1mol/L水酸化ナトリウムを500mL加え良く攪拌した後、静止させ2層に分離したら、水層部分を除き、この操作を5回行った。この操作の最後に、水500mLを加え、同じ操作を行い、有機層を残した。pH試験紙でpH7になっていることを確認した後、乾燥硫酸マグネシウム50gを加え、数時間攪拌、放置した。その後、濾紙等を用いて有機層を濾過し、溶媒を除去して、ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を得た。
【0024】
・製造例3 ヘリクリサム属植物の抽出物のアルカリ性画分の調製
製造例1で得たアブソリュート100gをヘキサン1000mLに溶解させた。次に、1mol/L塩酸500mLを加え良く攪拌した後、静止させ2層に分離したら有機層部分を除き、この操作を5回行った。この操作の最後に、1mol/L水酸化ナトリウム500mLを用いpH14に水層部を調製した後、上記有機溶媒にて水層を抽出した後、常法に従い乾燥、溶媒除去により得られた。
【0025】
・製造例4 ヘリクリサム属植物の抽出物の酸・フェノール性画分の調製
製造例1で得たアブソリュート100gをヘキサン1000mLに溶解させた。次に、1mol/L水酸化ナトリウム500mLを加え良く攪拌した後、静止させ2層に分離したら、有機層部分を除き、この操作を5回行った。この操作の最後に、1mol/L塩酸500mLを用いpH1に水層部を調製した後、上記有機溶媒にて水層を抽出した後、常法に従い乾燥、溶媒除去により得られた。
【0026】
試験例1:活性酸素消去効果試験(NBT法)
活性酸素を消去する効果を測定する方法は各種あるが、今回は活性酸素の一つであるスーパーオキシド(O)の消去効果を測定した。方法は以下に示す通りである。すなわち、キサンチン−キサンチンオキシダーゼ系により活性酸素の一つであるスーパーオキシド(O)を発生させ、試料溶液による消去率を求めた。スーパーオキシド(O)はニトロブルーテトラゾリウムと反応させて、ジホルマゾンとし、560nmの吸光度により測定した(NBT法)。
【0027】
0.05mol/L炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.2)2.4mL、3.0mmol/Lキサンチン0.1mL、3.0mmol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.1mL、0.15%牛血清アルブミン0.1mL、及び0.75mmol/Lニトロブルーテトラゾリウム0.1mLを含む発色試液2.9mLに対し、試料溶液0.1mLを加え、25℃、10分加温する。そこにバターミルク由来の250倍希釈キサンチンオキシダーゼ0.1mLを加えて攪拌した後、25℃にて20分間放置した。6.0mmol/L塩化第二銅を含む反応停止液0.1mLを加えて分光光度計にて560nmの吸光度を測定し、その値をSとした。試薬ブランクは酵素液の代わりにリン酸緩衝液0.1mLを加え、コントロールは試料溶液の代わりに希釈溶液0.1mLを加え、コントロールの試薬ブランクは試料溶液の代わりに希釈溶液0.1mLを用い、酵素液の代わりに炭酸
ナトリウム緩衝液0.1mLを加えて同様に測定した。尚、これらの値をそれぞれS'、C、C'とした。各試料溶液濃度におけるスーパーオキシド消去率を下記式により計算して求めた。
【0028】
スーパーオキシド消去率(%)=100×[1−(S−S')/(C−C')]
【0029】
得られた結果を下記に示す。
試料 最終濃度 スーパーオキシド
(%) 抑制率(%) ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分 0.005 76.9 ヘリクリサム属植物の抽出物 0.005 72.0 ヘリクリサム属植物の抽出物の酸・フェノール性画分 0.005 48.3 ヘリクリサム属植物の抽出物のアルカリ性画分 0.005 6.5 ローズマリーオイル 0.005 20.3 オイゲノール 0.005 38.6 BHT 0.005 60.3 α−トコフェロール 0.005 72.3
【0030】
試験例2:過酸化脂質生成抑制試験(TBA法)
試料溶液0.4mLに、リノール酸メチル0.3mL、1.0mmol/Lヒポキサンチン(0.2% Triton(登録商標) X−100含む)3.0mL、蒸留水0.15mL、バターミルク由来の10倍希釈キサンチンオキシダーゼ0.15mLの混合溶液を24時間攪拌する。上記組成物0.3mLに10%リンタングステン酸0.5mL、0.67%チオバルビツール酸1.0mLを加え攪拌する。95〜100℃、30分間加熱後、急冷してn−ブタノールを加え振盪攪拌後、遠心(3000rpm、10分)を行い、上清を分光光度計を用いて波長535nmにて吸光度を測定し、その値をAとした。コントロールは試料の代わりに希釈溶液を加え同様に測定し、その値をA'とした。各試料溶液濃度における過酸化抑制率を下記式により求めた。
【0031】
過酸化抑制率(%)=100×[1−A/A']
【0032】
得られた結果を下記に示す。
試料 最終濃度(%) 過酸化
抑制率(%)
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分 0.005 70.9
ヘリクリサム属植物の抽出物 0.005 70.2
ヘリクリサム属植物の抽出物の酸・フェノール性画分 0.005 51.1
ヘリクリサム属植物の抽出物のアルカリ性画分 0.005 51.8
ローズマリーオイル 0.005 15.9
オイゲノール 0.005 83.7
BHT 0.005 97.8
α−トコフェロール 0.005 97.9
【0033】
上記の結果から、本発明の抗酸化剤は、汎用されている天然系抗酸化剤であるα−トコフェロールや合成抗酸化剤であるBHTよりも高いかまたは同等の抗酸化性、特に活性酸素消去能を有し、また香料の中でも高い抗酸化性を有すると言われているローズマリーオイルやオイゲノールよりも、はるかに優れた抗酸化能を有することがわかる。
【0034】
試験例3:匂いの官能評価
匂いの官能評価専門の調香師5名によるヘリクリサム属植物の抽出物とその各画分につ
いて匂いの官能評価を行った。
【0035】
得られた結果を下記に示す。
匂い評価
・ヘリクリサム属植物の抽出物
△;ハネー様で香りは良いが個性的な香りであるため配合量と香調が制限される
・ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分
○;ワイン様で香りが良い上に扱いやすく、香料としての価値が非常に高い
・ヘリクリサム属植物の抽出物の酸・フェノール性画分
×;氷酢酸様の香りを有し、香料としての価値が低い
・ヘリクリサム属植物の抽出物のアルカリ性画分
×;土臭さを有し、香料としての価値が低い
【0036】
上記より明らかなように、香調の制限および配合量の制限が少ないという点からヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分は香料としての価値が非常に高いことがわかった。よって、ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を配合した香料組成物は、バラエティの広い魅力的な香りを発現することが可能であり、また有効な抗酸化効果を得るのに高濃度を配合しても好ましくない臭いを付与してしまうことはないと言える。
【0037】
香料処方例1、香料比較例1
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を用いて下記処方のハーブ系調合香料を作製した。
成分 香料処方例1 香料比較例1
カンファー 40 40
ペパーミント油 30 30
ユーカリプタス油 4 4
ローズマリー油 2 2
レモン油 1 1
メチルジヒドロジャスモネート 1 1
ガラクソリド 50%ベンジールベンゾエート 12 12
ジプロピレングリコール 0 10
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分 10 0
計 100 100
【0038】
香料処方例2、香料比較例2
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を用いて下記処方のフローラル系調合香料を作製した。
成分 香料処方例2 香料比較例2
ベルガモットオイル 2.0 2.0
リナロール 1.5 1.5
リナリールアセテート 1.5 1.5
メチルアンスラニレート 0.2 0.2
ペチグレインオイル 0.5 0.5
オーランチオール 10%DPG 1.0 1.0
アミルアリルグリコレート 1%DPG 0.5 0.5
ガルバナムオイル 1%DPG 0.1 0.1
シス3ヘキセニルアセテート 10%DPG 0.4 0.4
ブラックカラントバズアブソリュート 10%DPG 1.5 1.5
タジェットオイル 10%DPG 0.8 0.8
イランイランオイルエキストラ 2.0 2.0
ベンジールアセテート 5.0 5.0
メチルジヒドロジャスモネート 13.0 13.0
シスジャスモン 10%DPG 1.0 1.0
ジャスミンアブソリュート 0.5 0.5
インドール 5%DPG 0.5 0.5
アルファヘキシルシンナミックアルデヒド 1.5 1.5
フェニルエチルアルコール 4.0 4.0
L−シトロネロール 0.5 0.5
ローズオイル 0.5 0.5
ローズアブソリュート 0.5 0.5
ダマセノン 1%DPG 0.5 0.5
L−ローズオキサイド 1%DPG 0.5 0.5
ジメチルベンジルカーボニルアセテート 1.0 1.0
ヒドロキシシトロネラール 3.0 3.0
リラール 3.5 3.5
シクラメンアルデヒド 0.5 0.5
シス3ヘキセニルサリシレート 1.5 1.5
アルファイソメチルヨノン 4.0 4.0
オリスコンクリート 10%DPG 0.8 0.8
オイゲノール 0.5 0.5
メチルオイゲノール 0.5 0.5
イソEスーパー 2.5 2.5
ベルトフィックスクール 4.0 4.0
ベチバーアセテート 2.0 2.0
サンダルウッドオイル 1.5 1.5
バグダノール 10%DPG 1.0 1.0
パチュリーオイル 10%DPG 0.2 0.2
エベルニール 10%DPG 1.5 1.5
ガラクソリッド 50%ベンジールベンゾエート 10.0 10.0
シクロペンタデカノリッド 4.0 4.0
ヘリオトロピン 0.5 0.5
クマリン 0.5 0.5
バニリン 10% 0.5 0.5
エチルバニリン 10% 2.5 2.5
ラズベリーケトン 10% 0.5 0.5
ガンマウンデカラクトン 10% 1.5 1.5
ガンマデカラクトン 10% 1.5 1.5
ラブダナム アブソリュート 10% 0.5 0.5
ジプロピレングリコール 0 10.0
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分 10.0 0
計 100.0 100.0
【0039】
ここに示したのは1例であり、この香調に限定されずバラエティに富んだ魅力的な香りを発現できる。
【0040】
下記記載の組成のスキンローション及び入浴剤を、それぞれの調製法に従い調製した。
【0041】
・実施例1〜5及び比較例1〜3:スキンローション
【表1】

【0042】
・スキンローションの調製法
水相、アルコール相を各々均一に溶解し、そして水相とアルコール相とを混合攪拌分散し可溶化を行い、次いで容器に充填する。使用時には内容物を均一に振盪分散して使用する。
【0043】
上記で調製したスキンローションを用いて使用試験を行った。試験方法は下記に示す通りである。
【0044】
・試験方法
100名の女性被験者の顔面を左右に分け、一方に上記の実施例1〜5、他方には実施例1〜3に対しては比較例1のスキンローションを、実施例4に対しては比較例2のスキンローションを、そして実施例5に対しては比較例3のスキンローションを毎日2回以上塗布してもらい、2ヵ月後それぞれの比較例を基準として下記の判定基準により各評価項目について評点を出してもらった。被験者を1群20名にわけて5群とし、各群の合計値の平均をとり評価結果とした。
【0045】
(判定基準)
+3:比較例1〜3よりも非常によい
+2:比較例1〜3よりもかなりよい
+1:比較例1〜3よりもややよい
0:差がない
−1:比較例1〜3の方がややよい
−2:比較例1〜3の方がかなりよい
−3:比較例1〜3の方が非常によい
【0046】
評価項目 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
肌荒れ防止 22 25 41 21 20
肌のつや 23 27 43 22 21
肌のはり 28 30 49 26 25
肌の明るさ 23 29 38 22 21
しわ改善 29 25 51 22 22
【0047】
上記より明らかなように、本発明に係るヘリクリサム属植物の抽出物を有効成分として含有するスキンローションは、肌荒れを防止し、肌のつや、はり、明るさを保ち、しわを改善する効果に優れ、皮膚老化防止用として用いることができる。
【0048】
・実施例6〜8:入浴剤
配合成分 実施例6 実施例7 実施例8 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
硫酸ナトリウム 85.0 85.0 85.0
界面活性剤 適量 適量 適量
有機色素 適量 適量 適量
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分 10.0 − −
香料処方例1 − 10.0 −
香料処方例2 − − 10.0
炭酸水素ナトリウム 残量 残量 残量
計 100.0 100.0 100.0
【0049】
・入浴剤の調製法
各成分を混合し入浴剤を調製した。尚、この入浴剤は使用時に約3000倍に希釈される。
【0050】
上記入浴剤を60名の被験者を1群20名にわけて3群とし、三週間毎日の入浴時に実施例6〜8の各入浴剤を使用させた。結果、肌荒れ防止、肌のつや、はり、明るさの保持、しわの改善において効果が認められた。
【0051】
尚、本発明に係るスキンローション及び入浴剤による発赤や乾燥等の異常は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の抗酸化剤は、植物抽出物であり安全性が高く、非常に優れた抗酸化効果を発揮する。また本発明の抗酸化性香料は、植物抽出物であり安全性が高く、非常に優れた抗酸化効果を発揮すると共に、特有の優れた香気を有する価値の高いものである。また、抗酸化成分として前記抗酸化剤または抗酸化性香料を配合した抗酸化性香料組成物は安全性や抗酸化効果に加え、バラエティの広い魅力的な香りを発現するような優れたものである。更に、抗酸化成分として前記抗酸化性香料組成物およびヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を配合してなることを特徴とする化粧品は、従来の抗酸化剤の使用を大幅に削減することが出来る。また本発明の抗酸化剤、抗酸化性香料、香料組成物、化粧品、皮膚外用剤は、優れた活性酸素消去効果を有し、かつ過酸化脂質生成を抑制する。また肌に適用した場合には、肌荒れを防止し、肌のつや、はり、明るさを保ち、しわを改善する等、皮膚老化防止効果に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分からなることを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
ヘリクリサム属植物がセロチヌム(H.serotinum)、イタリクム(H.italicum)またはストエカス(H.stoechas)種である植物群から選ばれる少なくとも1種以上からなる抽出物の中性画分からなることを特徴とする請求項1記載の抗酸化剤。
【請求項3】
ヘリクリサム属植物ストエカス(H.stoechas)種の抽出物の中性画分からなることを特徴とする抗酸化剤。
【請求項4】
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を含有することを特徴とする香料組成物(但し、ヘリクリサム属植物の抽出物由来の他の成分を含有しない)。
【請求項5】
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を含有することを特徴とする化粧料組成物(但し、ヘリクリサム属植物の抽出物由来の他の成分を含有しない)。
【請求項6】
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を添加したことを特徴とする香料組成物。
【請求項7】
ヘリクリサム属植物の抽出物の中性画分を添加したことを特徴とする化粧料組成物。

【公開番号】特開2007−16077(P2007−16077A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196839(P2005−196839)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】