説明

抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物、該組成物を含む電子写真用部材及び電子写真装置

【課題】電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がなく、連続使用による変形や変動のない抵抗制御剤含有組成物を提供する。
【解決手段】抵抗制御剤及びポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルあるいはさらに結着剤を含有する事を特徴とする抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物である。結着剤はポリイミドもしくはポリアミドイミド又はそれらの前駆]体である。抵抗制御剤はカーボンンブラックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散媒あるいは、樹脂等の結着剤中に抵抗制御剤を微細に安定した状態で分散させた抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物に関するものである。更に詳細には抵抗制御剤により制御された電気抵抗を利用し、電界の発生、帯電、通電、静電気除去や、あるいはそれらを利用する事で現像剤や媒体を吸着、保持、脱着、移動させる為の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物に関するものである。
更に詳細には本発明は、コピー・プリンター等の電子写真装置に用いられる帯電部材、現像剤担持体、中間転写体、転写剤搬送部材などの電子写真用部材、及び電子写真用部材を有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂等の結着剤に抵抗制御剤を含有させたり、あるいは自身が抵抗制御能力を有する樹脂で構成された抵抗制御剤含有組成物は、電気抵抗を各利用目的に応じ設定する事で組成物表面を帯電させたり、電界を発生させたり、通電を制御したり、静電気を除去したりする事が可能である。例えばプロッターでは、抵抗制御剤含有組成物上に静電気を発生し静電気力により記録媒体を保持するのに用いられたりするし、塗料分野では導電性塗料として、対象物を塗布し導電性の膜を形成するのに使用される。
これらは組成物表面や内部でいかに電気抵抗を均一に出来るかがポイントになる。
【0003】
電子写真装置においても抵抗制御剤含有組成物は電子写真部材として多く用いられている。例えば電子写真装置の画像形成工程は概ね下記工程に分類され、
(1)帯電工程(感光体表面を均一帯電させる。)
(2)露光工程(露光により感光体表面に静電潜像を形成する)
(3)現像工程(静電潜像を現像剤にて現像を形成する。)
(4)転写工程(現像を転写材(中間転写体や被記録媒体(紙やフイルム等))に転写する。)
(5)定着工程(被記録媒体上に転写された現像を熱等で定着する。)
【0004】
(1)、(4)で使用される1次帯電ローラー/ブラシ/ブレードや転写帯電ローラー等の帯電部材、中間転写体、転写搬送部材(3)における現像ローラー等の現像体(5)における定着ローラー/ベルト等に抵抗制御剤含有組成物は使用される。また搬送ローラーでも摩擦帯電等を防ぐ目的で、抵抗制御剤含有組成物が使用される場合がある。
電子写真用途においては、より再現性のある画像を複製する為に感光体表面を非常に均一に帯電させたり、正確に現像を中間転写体や被記録媒体に転写する必要から、他の用途より特に精度の高い抵抗制御が必要となる。
また印加電圧や駆動による熱や加圧/加力(ひずみ等)での変形を防せぐ必要がありより耐熱性と高強度が要求されている。
【0005】
近年フルカラー電子写真装置が主流になりつつあり、上記要求は更に高まりつつある。フルカラー電子写真装置では像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合せて一次転写を行い、得られた一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する中間転写ベルト方式が用いられる場合が多く、特に中間転写ベルトはより高い電気抵抗精度と強度が要求される。
【0006】
フルカラー電子写真装置について説明する。
フルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を、一旦中間転写体上に色重ねし、その後一括して紙などの転写体に転写する中間転写方式が用いられている。
【0007】
このような中間転写方式は、1つの感光体に対して4色の現像器を用いるシステムで用いられていたが、プリント速度が遅いという欠点があった。このため、高速プリントにおいては、感光体を4色分並べ、各色を連続して紙に転写する4連タンデム方式が用いられている。
しかし、この方式の場合、転写媒体である紙が環境により変動することもあり、各色画像を重ねる際の位置を精度良く合せることが非常に困難であるため、色ずれ画像を引き起こしていた。そこで近年では、4連タンデム方式に中間転写方式を採用することが主流になってきている。
【0008】
このため中間転写体に対して、従来よりも高速なプリント、高い位置精度の維持などが要求され、これらの特性を満足することが必要となってきている。特に、位置精度に対しては、連続使用による転写体自体の伸び等に起因する変形による変動を抑えることが求められる。また、中間転写体は装置の広い領域に亘ってレイアウトされ、転写のために高電圧が印加されるため、難燃性も求められている。その為、最近では中間転写体の結着素材としては、スーパーエンプラに分類される樹脂が使用され、その中でも難燃性の高いポリイミドやポリアミドイミドが使用される。
【0009】
特にレイアウトの自由度の点から、ローラ状のものより中間転写体はベルト状の物が多く使用され、ローラー状のものよりも、引っ張りやよじれ等の負荷が大きくより強度が必要とされ、又継ぎ目等部分があると継ぎ目部分をさけて画像転写位置を制御する為に、現在ではシームレスベルトを使用する事が望ましくなっている。
【0010】
中間転写体はトナー像を転写する機能を有するため、電気抵抗値及びその均一性が重要となる。そのため、抵抗値は、例えば上記樹脂にカーボンブラックやその他導電性の添加物を含有させ、その含有量・製造条件等により調整して所望の値となるようにされているが、その抵抗値として106〜1012Ω・cm程度が求められ、バラツキもベルト全域において1オーダー以内が求められており、変動が少なく安定した値とするのは難しい。
抵抗値が不均一になると電圧依存性が大きくなり、電子写真装置に用いた場合に電圧依存性が大きくなると、装置の転写バイアス条件によっては転写ニップにおける異常放電を引き起こし、線画像の散り、逆転写による白抜けなどの異常画像が発生する。
仮に、抵抗制御剤によりバラツキを小さくしたとしても、環境変動などに対応すべくプロセスコントロールにより転写条件を変動した場合に、その転写条件変動に対応できる余裕度は十分でなく、印加バイアスが高い設定になると上記異常画像の発生を引き起こす問題がある。
【0011】
以上記載した様に電子写真装置に使用される抵抗制御剤含有組成物は、特に中間転写体において他の分野に使用されるより、バラツキも含めたより高度な抵抗値制御が必要とともに、組成物自体の強度が更に必要となる。
【0012】
これら高度な抵抗制御をする為には、抵抗制御剤を組成物の中でより均一に含有させる必要がある、これらを達成する上で特許文献1では熱可塑性樹脂に導電性フィラーの分散剤として脂肪酸エステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤を使用する事が提案されている。しかしながら、酸性カーボンブラック等の抵抗剤表面の親水性が強い導電性フィラーを使用した場合や、比較的極性の高い樹脂を使用した場合は抵抗制御剤と樹脂との相溶性が該記脂肪酸エステルでは補いきれず、抵抗の均一性が不十分だけでなく、組成物自体の強度も低下する問題があった。
【0013】
また、分散剤が含有された抵抗制御剤を樹脂中、ミキサーやロールミルで混練し分散する方法は、抵抗制御剤が小粒化しにくくまた均一に分散されにくい為、電子写真装置の近年の高速化印字・高画像化に対応できる抵抗制御が困難となっている。これらを改善する為に予め樹脂と相溶性の良い溶媒中に抵抗制御剤をサンドミル・ボールミル・ダイノーミル等の分散機で小粒径化して、抵抗制御剤分散液にした後、樹脂又は樹脂前駆体と混合し、加熱による乾燥又は溶融又は重合により組成物物を形成する方法が用いられる様になってきている。この方法は抵抗制御剤をより小粒径化出来る点では良いが抵抗制御剤及び溶媒及び樹脂と相溶性が良い必要があり、特に抵抗制御剤分散液を樹脂前駆体と混合し、重合反応させる方法では、前駆体と重合樹脂で親水性(極性)が変化する為、前駆体混合液までは抵抗制御剤が均一に分散されていたとしても、重合後で樹脂と相溶しなく抵抗制御剤が一部凝集し、抵抗が不均一になると言う問題がある。
【0014】
我々の検討では前記脂肪酸エステルは比較的樹脂には相溶性が良いが、その前駆体とは相溶性が悪く、混合時点でショック凝集を起こし、抵抗が不均一になる問題が生じた。特に難燃性の面で使用されるポリミイドやポリアミドイミドはほとんどが非熱軟化性である為に押し出し成型、インフレーション成型では組成物の作成は困難であり、通常Nメチルピロリドン等の極性溶媒に溶解された前駆体に抵抗制御分散液を混合し、乾燥等で溶剤を除去した後200℃〜500℃の熱により重合する方法をとっており、抵抗制御剤を均一に結着剤中に分散させる事が難しい。
【0015】
又、特許文献2では無機金属塩にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸等のポリオキシエチレン化合物を含有した中間転写部材が提案されているが、同様に抵抗や強度の面で不十分であった。
【0016】
【特許文献1】特開2005−182002号公報
【特許文献2】特開2003−005532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、制御された電気抵抗を利用し、電界の発生、帯電、通電や、それらを利用し現像剤や媒体を吸着、保持、脱着、移動させる為の抵抗制御剤含有組成物において電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がなく、連続使用による変形や変動のない抵抗制御剤含有組成物を提供する事を目的とし、更に詳細には電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がなく、連続使用による変形や変動のないコピー・プリンター等の電子写真装置に用いられる帯電部材、現像剤担持体、中間転写体、転写剤搬送部材などの電子写真用部材を提供するともに電子写真装置(以下、「装置」と略称することがある。)のバイアス条件変動によらず、線画像散りや逆転写による白抜け等の異常画像が発生することがなく安定した高品質な画像形成を維持することができる電子写真部材、及び該電子写真部材を用いた電子写真装置、特にフルカラー画像形成に好適な電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討した結果抵抗制御剤と、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、結着剤で、抵抗制御剤含有組成物を形成すれば、抵抗制御剤と耐熱結着樹脂の親和性が良好で相溶しやすく、しかも耐熱結着樹脂中での抵抗制御剤の分散粒径も小さく制御でき上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
【0019】
すなわち、上記課題は本発明の下記(1)〜(10)によって解決される。
(1) 抵抗制御剤及びポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルを含有する事を特徴とする抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
(2) 抵抗制御剤、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル及び結着剤を含有することを特徴とする前記(1)の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
(3)前記結着剤が、非熱可塑性樹脂又はその前駆体である事を特徴とする前記(1))又(2)記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
【0020】
(4)前記結着剤が、ポリイミドもしくはポリアミドイミド又はそれらの前駆体である事を特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抵抗制御剤含有組成物。
(5)抵抗制御剤がカーボンブラックである事を特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物を含有する事を特徴とする電子写真用部材。
(7)電子写真用部材が電子写真用中間転写体であることを特徴とする前記(6)記載の電子写真用部材。
【0021】
(8)像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合せて一次転写を行い、得られた一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置に用いられる中間転写体において、前記電子写真用中間転写体がシームレスベルトであることを特徴とする前記(7)記載の電子写真用部材。
(9)前記(6)〜(8)のいずれかに記載の電子写真部材を少なくとも一つ以上有する電子写真装置。
(10)前記電子写真装置が、フルカラー電子写真装置であって、各色の現像器を有する複数の潜像担持体を直列に配置してなることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真装置。
【0022】
前述のように本発明の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物は抵抗制御剤と、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルを含有する事を特徴と するものであり、更には抵抗制御剤と、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルと結着剤を含有する事を特徴とするものである。
【0023】
本発明で使用されるポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルを使用すれば;
(1)抵抗制御剤の溶媒又は結着剤中における粒子径を小さく、かつその分布巾を小さくすることができる。
(2)特に、該記した様に予め樹脂と相溶性の良い溶媒中に抵抗制御剤をサンドミル・ボールミル・ダイノーミル等の分散機で小粒径化して、抵抗制御剤分散液にした後、樹脂又は樹脂前駆体と混合し、加熱による乾燥又は溶融又は重合により組成物物を形成する方法の場合、抵抗制御剤の分散液における粒子径を小さく、かつその分布巾を小さくすることができるだけでなく、
(3)抵抗制御剤の分散液と、結着樹脂及び溶媒を含む溶液との混合分散溶液である塗布液とした状態でもほとんど抵抗制御剤の凝集を起さず、抵抗制御剤の分散液粒径を小さく、かつその分布巾を小さく維持することが可能であり、
(4)更には、従来知られている脂肪酸エステルや他のポリオキシエチレンソルビタンエステルとは異なり塗布液を乾燥や加熱をして組成物を形成した場合に、組成物内での抵抗制御剤の分散粒径が小さく、しかも分布の均一性が維持でき、電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がない抵抗制御剤含有組成物が作製できる。結着剤として、後述のポリイミドまたはポリアミドイミドもしくはそれらの前駆体を用いれば、連続使用に対しても耐久性があり変形や変動のない難燃性のある組成物が得られる。
【0024】
まず、本発明に使用されるポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルについて詳細に説明する。
本発明のポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルは、一般的にはソルビトールとエチレンオキサイドを付加重合した後脂肪酸とアルカリ存在化でエステル化反応にて合成されたものが挙げられ、(もちろん他の合成法でもよいが)下記一般式(1)で表されるものである。
一般式(1)
【化1】



(式中A1〜A6は(C=O)-R又はHを表し、RはCnH2n+1又はCnH2n 又はCnH2n-1(n=1〜31)の脂肪酸残基を表す、
EO付加モル数(m)=a+b+c+d+e+f=3〜100を表す。)
【0025】
上記脂肪酸残基の種類(n数)や数及びEO付加モル数は、抵抗制御剤や結着剤の種類によって適宜選択されるが、n数は好ましくは9〜21、より好ましくは11〜17、更に好ましくは15〜17である。
n数が9以上であると結着剤や抵抗制御剤との相溶性が良くなる傾向にあり、
組成物を成型した際に抵抗制御剤の樹脂内での凝集が発生しにくく抵抗の均一性が向上する傾向にある。
n数が21以下であると極性溶媒への溶解性が向上し、抵抗制御剤の粒子径を好ましい程度まで小さくすることが容易になる傾向がある。
n数が11〜17の場合は、抵抗制御剤を小粒径化する事が出来、かつ樹脂と混合した場合の抵抗制御剤の樹脂内での凝集が抑えられ、より良い抵抗の均一化ができる。
特にn数が15〜17にした場合は、抵抗制御剤を小粒径化する事はもちろん成形過程で重合し極性が変化する結着剤(例えばポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂など)にも相溶性が良く、抵抗制御剤の樹脂内での凝集が抑えられ、更に良好な抵抗の均一化ができる。
【0026】
EO付加モル数(m)は好ましくは3〜100、より好ましくは6〜60、更に好ましくは30〜40である。
EO付加モル数を3以上にすると、分散液中における抵抗制御剤の分散性が向上し、抵抗制御剤の粒子径を好ましい程度まで小さくすることが容易となる傾向がある。一方、100以下であると、耐熱結着樹脂(例えば、ポリイミドまたはポリアミドイミド)もしくはそれらの前駆体との相溶性が向上し、塗布液及びシームレスベルト成形体内における抵抗制御剤の分布の均一性が向上する傾向がある。また、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等の極性溶媒への溶解性が向上し、使用する際には加熱等による溶解作業が容易となり、生産性が著しく向上する。
EO付加モル数(m) 6〜60の場合、抵抗制御剤を小粒径化する事が出来、かつ樹脂と混合した場合の抵抗制御剤の樹脂内での凝集が抑えられ、より良い抵抗の均一化ができる。
特にEO付加モル数(m) 30〜40の場合抵抗制御剤を小粒径化する事はもちろん成形過程で重合し極性が変化する結着剤(例えばポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂など)にも相溶性が良く、抵抗制御剤の樹脂内での凝集が抑えられ、更に良好な抵抗の均一化が測れる。
【0027】
脂肪酸残基の数(エステル化数)は好ましくは2〜6、より好ましくは2〜5、更に好ましくは4〜5である。
特に結着剤にポリミイドやポリアミドイミドもしくはそれらの前駆体を使用する場合には、nが15〜17、脂肪酸残基数は4〜5、EO付加モル数は30〜40が好ましく中でも以下式(2)、(3)に示されるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット又はペンタオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが最も好ましい。
一般式(2) EO付加モル数は30又40
【化2】


一般式(3) EO付加モル数は30又40
【化3】

【0028】
本発明に使用するポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルは、上述した一般的な方法で合成しても得られるし、また市販品としても日本油脂製のユニオックスSTシリーズ(STO−6、ST−6E、ST−30E、ST−31s、ST−40E)
ユニオックスSPシリーズ(SP−40E等)や
日本エマルジョン社製 EMALEX TPM305、
花王社製 レオゾールシリーズ(430v、440v、460V)等が挙げられ、入手可能である。
【0029】
本発明における分散剤を使用した場合、他の分散剤(例えば構造が類似しているソルビット脂肪酸エステルやポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)を使用した場合よりも溶剤中や結着剤を含む塗布液及び結着剤中で抵抗制御剤の粒子径や分布が良好な状態が得られ、均一な抵抗や良好な強度を得られる。
特に従来技術で該記した様に予め樹脂と相溶性の良い溶媒中に抵抗制御剤をサンドミル・ボールミル・ダイノーミル等の分散機で小粒径化して、抵抗制御剤分散液にした後、樹脂又は樹脂前駆体と混合し、加熱による乾燥又は溶融又は重合により組成物を形成する方法の場合は、抵抗制御剤・溶剤・樹脂前駆体又は樹脂との全てにおいて相溶性が必要になってくるので従来の分散剤では対応できるものはなかった。特に結着剤としてポリイミドやポリアミドイミドを使用する場合、溶媒やその前駆体に相溶性が良い分散剤でも、加熱により樹脂を重合させていく過程でポリアミック酸など親水性の前駆体が疎水性の高いポリイミド体に変化するので本発明使用のような幅広い極性に対応した分散剤が必要である。
【0030】
本発明のポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル添加量についても重要である。添加量は抵抗制御剤の種類により適宜選択することが可能であるが、分散剤の含有量としては、抵抗制御剤100重量部に対し、0.1〜100重量部が好ましい。
【0031】
抵抗制御剤としてカーボンブラックを使用した場合には、抵抗制御剤100重量部に対し0.2重量部あるいは60重量部でも実用上問題のない均一な抵抗が得られるが、最も好ましいのは抵抗制御剤100重量部に対し0.5〜50重量部である。
0.2重量部以上では、抵抗制御剤の分散性が向上する傾向にあり、60重量部以下であると、耐熱結着樹脂(例えば、ポリイミドまたはポリアミドイミド)もしくはそれらの前駆体との相溶性が向上し、塗布液にした場合の抵抗制御剤の粒度変化が小さくなる傾向がある。その結果、形成された抵抗制御剤含有組成物の電気抵抗の均一性が向上する。
【0032】
また、前記分散液を調製する際に、少量の耐熱結着樹脂、例えば、ポリイミドまたはポリアミドイミドもしくはそれらの前駆体を添加すると、この分散液を用いて耐熱結着樹脂及び溶媒を含む溶液と混合し、塗布液にする場合に抵抗制御剤の粒度を均一とすることがさらに効果的に行える。
【0033】
このような手段は、一般的な分散剤を使用した抵抗制御剤分散液でも使用される方法であり、抵抗制御剤の粒子表面に塗布液の樹脂組成分として用いられものと同じ樹脂を予めコーティングすることにより、塗布液調製時において抵抗制御剤の凝集(軽程度の凝集)を防止するのが目的であるが、従来の分散剤を用いた場合には樹脂の添加量が少ないと、基本的に分散剤と樹脂との相溶性が悪いため、効果が現れにくい傾向があった。一方、凝集防止の効果が現れるまで樹脂の添加量を増やすと、分散液の粘度も上昇し、分散液における抵抗制御剤の粒子自体の粒度が小さく均一にならない場合が多い。
【0034】
これに対して、本発明に使用する前記分散剤は樹脂との親和性が良好で相溶しやすいので、少量の耐熱結着樹脂添加でも効果があり、耐熱結着樹脂及び溶媒を含む溶液と混合して塗布液とした際にも抵抗制御剤分散液の粒径をほとんど損ねることはなく、この塗布液を用いてシームレスベルトとした場合、さらに均一な電気抵抗を有するものが得られる。
前記分散液中に含まれる耐熱結着樹脂(含む前駆体)の含有量としては、、抵抗制御剤100重量部に対して20重量部以下であれば、抵抗制御剤分散液及び塗布液の粒子径を小さくかつ分布巾を小さくすることができ、電気抵抗にバラツキがなく良好な画像形成が可能であるが、特に好ましくは抵抗制御剤100重量部に対して耐熱結着樹脂の含有量が0.1〜10重量部である。耐熱結着樹脂の含有量が20以下であると分散液の粘度を低く抑えられ、分散性を向上でき、シームレスベルトにした場合の電気抵抗の均一性が向上する傾向がある。なお、0.1以上であると抵抗制御剤の凝集防止効果が向上する傾向がある。
【0035】
次に、本発明において使用される抵抗制御剤について説明する。
本発明で使用される抵抗制御剤としては、カーボンブラック、黒鉛、或いは銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等の金属酸化物微粉末などがあげられる。また、これらにイオン電導性抵抗制御剤として、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジル、アンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム、などを併用してもよい。
【0036】
本発明では上記抵抗制御剤のうち、カーボンブラック、スズをドーピングした酸化チタン、が好ましく利用できる。
特に抵抗の均一性の面からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、カーボンブラック表面を酸化処理やアルカリ処理したものや、各種の界面活性剤や樹脂で被覆したりグラフト処理やカプセル化処理したカーボンブラックも使用可能である。特に表面を酸性処理したカーボンブラック(酸性のカーボンブラック)は分散性がより好ましい。
なお、本発明で使用される抵抗制御剤は上記例示化合物に限定されるものではない。
【0037】
本発明に使用される結着剤は、抵抗制御剤を結着しあるいは固めるものではなんでも良く 例えば、ワックス類や粘土類、セラミック類や樹脂が挙げられる。特に加工のしやすさや 耐熱性から樹脂が望ましい。
樹脂またはその前駆体について説明する。
本発明に使用される樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイドなどの硫黄原子含有樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン−四フッ化エチレン共重合体などのフッ素原子含有樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、アイオノマー樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン樹脂、セルロースなどが挙げられるが耐熱性・難燃性が必要とされる用途、特に電子写真装置用部材においては特に結着剤としては、難燃性の観点からPVdF、ETFEなどのフッ素系樹脂、ポリイミドまたはポリアミドイミド等が挙げられる。
特に機械強度の面でポリイミドあるいはポリアミドイミドが好ましい。
【0038】
以下、特に耐熱性/強度の面で優れる結着剤として好ましいポリイミドとポリアミドイミドについて詳しく説明する。
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。
すなわち、ポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を持つため、芳香族多価カルボン酸無水物と芳香族ジアミンから、まず有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸、またはポリアミド酸)を合成し、この段階で様々な方法で成型加工が行われ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)してポリイミドとする。反応の概略を下記反応式(a)に示す。
【0039】
【化4】

式中、Ar1は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、Ar2は少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示す。
【0040】
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いられる。
【0041】
次に、芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
【0042】
上記芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。
特に芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分の組み合わせとしては、
重合後の機械強度面から、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンの組み合わせ、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み合わせ、もしくは2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み合わせが特に好ましい。
下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。
【0043】
なお、ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独あるいは混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0044】
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種あるいは、複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解、あるいはスラリー状に拡散させる。この溶液に前記した少なくとも1種以上の芳香族多価カルボン酸無水物或いはその誘導体を固体の状態または有機溶媒溶液の状態あるいは、スラリー状態で添加すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に重合溶液の粘度の増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、通常−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
【0045】
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
【0046】
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
【0047】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)は、上記のようにして合成したものを使用することができるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
このような例としては、例えば、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
【0048】
合成または入手したポリアミック酸溶液に、必要に応じて各種の特性を改善するための種々の添加剤を加えることができる。
補強剤として、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラスビーズ等を一種以上添加することもできる。また、滑り性を改良する目的で、固体潤滑剤、例えば二硫化モリブデン、グラファイド、窒化ホウ素、一酸化鉛、鉛粉などを一種以上添加することができる。
【0049】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤などの通常用いられる添加剤を一種以上添加することができる。
特に、電子写真用シームレスベルト部材として用いる場合、その用途に応じて様々な添加剤を含有することが必要となるが、特に機械強度の点から上述したような補強効果のある無機充填剤が必要である。また、例えば、定着ベルトとして使用する際には、熱伝導性の高い無機充填剤を含有する必要がある。
【0050】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、加熱する方法(1)、または化学的方法(2)によってイミド化することができる。加熱する方法(1)は、ポリアミック酸を例えば、200〜350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱する方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。
なお、ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが好ましい。
【0051】
イミド化の進行状況、すなわちイミド化の程度は、通常行われているイミド化率の測定手法により評価することができる。
このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと、6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)は最も一般的な方法として用いられる。
【0052】
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)では、イミド化率を、例えば、次のように定義する。
すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、次式により表される。
イミド化率(%)=[(A)/(B)]×100
【0053】
この定義におけるイミド基のモル数は、FT−IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,015cm-1との吸光度比。
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm-1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比。
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比。
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm-1とアミド基の特性吸収1,670cm-1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比。
また、3000〜3300cm-1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
【0054】
次に、ポリアミドイミドについて説明する。
ポリアミドイミドは分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂であり、本発明に用いられるポリアミドイミドは一般的なものを使用することが出来る。
ポリアミドイミド樹脂を合成する方法として一般的に、(1)イソシアネート法〜酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体と芳香族イソシアネートより溶媒中で製造する方法(例えば特公昭44ー19274)、(2)酸クロライド法〜酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には前記誘導体クロライドとジアミンから溶媒中で製造する方法(例えば特公昭42ー15637)が用いられる。各製造方法について説明する。
【0055】
<ポリアミドイミド>
次に、ポリアミドイミドについて説明する。
ポリアミドイミドは、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂であり、本発明に用いられるポリアミドイミドとしては一般的に知られている構造のものを使用することができる。
一般的にポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、イソシアネート法(1):酸無水物基とカルボン酸を含む3価の誘導体と芳香族イソシアネートとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭44−19274号公報)、あるいは、酸クロライド法(2):酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には当該誘導体のクロライド化合物とジアミンとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭42−15637号公報)等が知られており、いずれも使用することができる。各製造方法について以下に説明する。
【0056】
(1)イソシアネート法:
イソシアネート法の場合に用いる酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体としては、例えば、下記一般式(I)または一般式(II)に示す化合物を使用することができる。
【0057】
【化5】

上記式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示す。
【0058】
【化6】


上記式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−または−O−を示す。
【0059】
前記一般式(I)、(II)を有する誘導体はいずれも使用することができるが、最も代表的には無水トリメリット酸が挙げられる。また、これらの酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体は、目的に応じて単独または混合して用いることができる。
【0060】
次に、本発明のポリアミドイミドの合成に用いられる一方の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等が挙げられる。これらの芳香族ポリイソシアネートは単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。
【0061】
必要に応じてこの一部として 前記芳香族ポリイソシアネートは単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。必要に応じてこの一部としてヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式イソシアネートおよび3官能以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0062】
上記各酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体と、芳香族ポリイソシアネートとの反応によりポリアミドイミドへ転化する方法に於いては、ポリアミック酸を経由することなく、炭酸ガスを発生しながらポリアミドイミドが生成される。下記反応式(b)に無水トリメリット酸及び芳香族イソシアネートを用いた場合の反応例を示す。(式中Arは2価の芳香族基を示す。)
【0063】
【化7】

【0064】
(2)酸クロライド法:
酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド化合物としては、例えば、下記式(III)および式(IV)に示す化合物を使用することができる。
【化8】


上記式中、Xはハロゲン原子を示す。
【0065】
【化9】

上記式中、Xはハロゲン原子を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−または−O−を示す。
【0066】
上記ハロゲン原子としてはクロライドが好ましく、ハライド化合物の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4’ビフェニルジカルボン酸、4、4’ビフェニルエーテルジカルボン酸、4、4’ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3、3’、4、4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3、3、’4、4’ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3、3’、4、4’ビフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1、4シクロヘキサンジカルボン酸、1、2シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸の酸クロライドが挙げられる。
【0067】
ハライド化合物と反応させる一方のジアミンは、特に限定されないが、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、および脂環族ジアミンのいずれもが用いられるが、芳香族ジアミンが好ましく用いられる。
芳香族ジアミンとしては、 m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0068】
また、ジアミンとして両末端にアミノ基を有するシロキサン系化合物、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン、1,3,−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン等を用いればシリコーン変性ポリアミドイミドを得ることができる。
【0069】
酸クロライド法により本発明におけるポリアミドイミドを得るためには、ポリイミドの製造の場合と同様に、上記した酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライドとジアミンとを有機極性溶媒に溶解した後、低温(0〜30℃)で反応させ、ポリアミドイミド前駆体(ポリアミド−アミック酸)とする。
【0070】
上記使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独あるいは混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0071】
ポリアミド−アミック酸をイミド化してポリアミドイミドにする方法としては、前記ポリイミドと同様に加熱処理により脱水閉環させる方法、および脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法が挙げられる。
加熱処理により脱水閉環させる場合、例えば、反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃であり、加熱処理時間は30秒間〜10時間、好ましくは5分間〜5時間である。また、脱水閉環触媒を用いる場合、反応温度は0〜180℃、好ましくは10〜80℃であり、反応時間は数10分間〜数日間、好ましくは2時間〜12時間である。脱水閉環触媒の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0072】
ポリアミドイミドも前記ポリイミドと同様、必要に応じて同様の補強剤、抵抗調整剤などの無機充填剤を含有することができる。
以上のようにして得られた耐熱結着樹脂及び溶媒を含む溶液と、抵抗制御剤、前記一般式(1)で表される分散剤及び溶媒を含む分散液を混合して塗布液が調製される。
【0073】
次に、分散液における抵抗制御剤の分散方法について説明する。
使用される主な分散方法の例を下記に挙げるが、分散方法はこれらに限定されず適宜選択することができる。
(a)ニーディング型:ニーダー、プラネタリーミキサー等;原料の粘度が大きいほど大きなせん断応力が発生するので硬いペーストの練りに利用される。
(b)圧縮せん断型(3本ロールミル、2本ロールミル):ローラーの間隙に圧力をかけながら大きなせん断応力を加える分散機で、高粘度(1,000Pa・s位まで可能)で接着力の大きいものに適用される。
(c)攪拌混合型(コロイドミル、Kady Mill等):高い周速度(300〜1,200m/min)で回転するインペラーが高いせん断速度を与えることが可能。
(d)摩砕せん断型(ビーズミル、ボールミル等):ボールやビーズの衝撃とせん断応力によって分散を行なう分散機。ボールミルの場合、102〜103Pa、ビーズミルの場合、104〜105Pa程度のせん断応力が加えられる。ビーズミル、ボールミルともに揮発性低粘度体(数Pa・s位まで可能)の分散に使用される。
なお、抵抗制御剤を予めプレミキシングをする等の前処理を実施してもよい。
【0074】
次に、前記ポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体を含む溶液と、抵抗制御剤、前記一般式(1)で表される分散剤を含む分散液とにより調製した塗布液を用いてシームレスベルトを製造する方法について、最も好ましい方法の一つである遠心成形を例にとり説明する。
すなわち、本発明におけるシームレスベルトの最も好ましい製造方法は;
(a)抵抗制御剤と、前記一般式(1)で表される分散剤と、耐熱結着樹脂と、溶媒を含有する塗布液を、回転する円筒状支持体の内壁に塗布・流延する工程と、
(b)支持体に塗布・流延された塗膜中の溶媒を加熱により除去して成膜する工程と、
(c)形成された膜を支持体から離型し、シームレスベルトとする工程と、
を含むことを特徴とする。
【0075】
以下詳細を説明するが、条件などは一例でありこれに限定されるものではない。
遠心成形は円筒状の回転体から構成される支持体を用いて形成するものであり、この円筒状の回転体をゆっくりと回転させながら塗布液を円筒の内面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。
回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80℃〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が得られたところで常温に戻し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250℃〜450℃程度の高温加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体のイミド化またはポリアミドイミド化を行う。イミド化等が完了後、徐冷して薄膜を型から剥離する。このようにしてシームレスベルトが形成される。なお、型には、剥離しやすいように予め、離型剤または離型層を形成しておくことが好ましい。
【0076】
上記製造方法により成形されたベルトは、下記に記載する電子写真装置のベルト構成部として有用に用いられ、特に一次転写や二次転写などの動作において所定の電気的特性が要求される中間転写ベルト、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写ベルトとして有用である。
【0077】
次に、本発明のシームレスベルトをベルト構成部に用いた電子写真装置について、図を参照しながら以下に詳しく説明する。
図1の模式図に、ベルト部材等を装備した電子写真装置の要部概略構成を示す。なお、模式図は一例であってこの構成に限定されるものではない。
図1において、ベルト部材を含む中間転写ユニット500は、複数のローラに張架された中間転写体である中間転写ベルト501などにより構成されている。この中間転写ベルト501の周りには、2次転写ユニット600の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ605、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーニングブレード504、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ505などが対向するように配設されている。
【0078】
また、位置検知用マークが中間転写ベルト501の外周面または内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト501の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード504の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト501の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ514は、中間転写ベルト501が架け渡されている1次転写バイアスローラ507とベルト駆動ローラ508との間の位置に設けられる。
【0079】
この中間転写ベルト501は、1次転写電荷付与手段である1次転写バイアスローラ507、ベルト駆動ローラ508、ベルトテンションローラ509、2次転写対向ローラ510、クリーニング対向ローラ511、及びフィードバック電流検知ローラ512に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、1次転写バイアスローラ507以外の各ローラは接地されている。1次転写バイアスローラ507には、定電流または定電圧制御された1次転写電源801により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流または電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0080】
中間転写ベルト501は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ508により、矢印方向に駆動される。
このベルト部材である中間転写ベルト501は、通常、半導体、または絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明のシームレスベルトとすることにより、電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がなく、連続使用に対してもベルトの変形や変動がなく耐久性が向上して優れた画像形成が実現できる。また、中間転写ベルトは、感光体ドラム200上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0081】
2次転写手段である2次転写バイアスローラ605は、2次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。2次転写バイアスローラ605は、2次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501との間に被記録媒体である転写紙Pを挟持するように配設されており、定電流制御される2次転写電源802によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0082】
レジストローラ610は、2次転写バイアスローラ605と2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501との間に、所定のタイミングで転写材である転写紙Pを送り込む。また、2次転写バイアスローラ605には、クリーニング手段であるクリーニングブレード608が当接している。該クリーニングブレード608は、2次転写バイアスローラ605の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
【0083】
このような構成のカラー複写機において、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム200は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、該感光体ドラム200上に、Bk(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行われる。中間転写ベルト501はベルト駆動ローラ508によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト501の回転に伴って、1次転写バイアスローラ507に印加される電圧による転写バイアスにより、Bkトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の1次転写が行われ、最終的にBk、C、M、Yの順に中間転写ベルト501上に各トナー像が重ね合わせて形成される。
【0084】
例えば、上記Bkトナー像形成は次のように行われる。
図1において、帯電チャージャ203は、コロナ放電によって感光体ドラム200の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、Bkカラー画像信号に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行う。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム200の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、Bk静電潜像が形成される。このBk静電潜像に、Bk現像器231Kの現像ローラ上の負帯電されたBkトナーが接触することにより、感光体ドラム200の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBkトナー像が形成される。
【0085】
このようにして感光体ドラム200上に形成されたBkトナー像は、感光体ドラム200と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト501のベルト外周面に1次転写される。この1次転写後の感光体ドラム200の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム200の再使用に備えて、感光体クリーニング装置201で清掃される。この感光体ドラム200側では、Bk画像形成工程の次にY画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるY画像データの読み取りが始まり、そのY画像データによるレーザ光書き込みによって、感光体ドラム200の表面にY静電潜像を形成する。
【0086】
そして、先のBk静電潜像の後端部が通過した後で、且つY静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット230の回転動作が行われ、Y現像機231Yが現像位置にセットされ、Y静電潜像がYトナーで現像される。以後、Y静電潜像領域の現像を続けるが、Y静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBk現像機231Kの場合と同様にリボルバ現像ユニットの回転動作を行い、次のC現像機231Cを現像位置に移動させる。これもやはり次のC静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、C現像機231C及びM現像機231MによるC及びMの画像形成工程については、それぞれのカラー画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のBk、Yの工程と同様であるので説明は省略する。
【0087】
このようにして感光体ドラム200上に順次形成されたBk、Y、C、Mのトナー像は、中間転写ベルト501上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト501上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ610のニップで待機している。
そして、2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501と2次転写バイアスローラ605によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト501上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙Pの先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ610が駆動されて、転写紙ガイド板601に沿って転写紙Pが搬送され、転写紙Pとトナー像とのレジスト合わせが行われる。
【0088】
このようにして、転写紙Pが2次転写部を通過すると、2次転写電源802によって2次転写バイアスローラ605に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト501上の4色重ねトナー像が転写紙P上に一括転写(2次転写)される。この転写紙Pは、転写紙ガイド板601に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ606との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置210により定着装置270に向けて送られる(図1参照)。
そして、この転写紙Pは、定着装置270の定着ローラ271、272のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置270は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0089】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム200の表面は、感光体クリーニング装置201でクリーニングされ、上記除電ランプ202で均一に除電される。また、転写紙Pにトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされる。該ベルトクリーニングブレード504は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0090】
このベルトクリーニングブレード504の上記中間転写ベルト501の移動方向上流側には、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材503が設けられている。このトナーシール部材503は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード504から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙Pの搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材503は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード504とともに、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離される。
【0091】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト501のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ505により削り取られた潤滑剤506が塗布される。該潤滑剤506は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ505に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト501のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ505及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0092】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作及び感光体ドラム200への画像形成は、1枚目の4色目(M)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(Bk)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト501は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面の上記ベルトクリーニングブレード504でクリーニングされた領域に、2枚目のBkトナー像が1次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行うことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット230の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード504を中間転写ベルト501に接触させたままの状態にしてコピー動作を行う。
【0093】
上記実施形態では、感光体ドラム200を一つだけ備えた電子写真装置(複写機)について説明したが、本発明は、例えば、図2の要部模式図に示すような複数の感光体ドラムを一つの中間転写ベルトに沿って並設した電子写真装置にも適用できる。
図2の模式図は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム21BK、21Y、21M、21Cを備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
【0094】
図2において、プリンタ本体10は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部12、画像形成部13、給紙部14、から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部12に送信する。画像書込部12は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部13の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)21BK、21M、21Y、21Cに各色信号に応じた画像書込を行う。
【0095】
画像形成部13は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体21BK、21M、21Y、21Cを備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体21BK、21M、21Y、21Cの周囲には、帯電装置、上記書込部12からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置20BK、20M、20Y、20C、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23C、クリーニング装置(表示略)、及び図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置20BK、20M、20Y、20Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト22は、各感光体21BK、21M、21Y、21Cと、各1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23Cとの間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。図中、符号70は、除電ローラを示す。
【0096】
一方、転写紙Pは、給紙部14から給紙された後、レジストローラ16を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト50に担持される。そして、中間転写ベルト22と転写搬送ベルト50とが接触するところで、上記中間転写ベルト22上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ60により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙P上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙Pは、転写搬送ベルト50により定着装置15に搬送され、この定着装置15により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0097】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト22上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング装置25によって中間転写ベルト22から除去される。このベルトクリーニング装置25の下流側には、潤滑剤塗布装置(表示略)が配設されている。この潤滑剤塗布装置は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト22に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。該導電性ブラシは、中間転写ベルト22に常時接触して、中間転写ベルト22に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト22のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
【発明の効果】
【0098】
本発明の、抵抗制御剤、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、結着剤で構成された抵抗制御剤含有組成物によれば、抵抗制御剤が組成物内で分散粒径が小さく、しかも均一に分布されるので、電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がなく、連続使用に対しても耐久性があり変形や変動がない。
結着剤として非熱可塑性樹脂又はその前駆体、特にポリイミドまたはポリアミドイミドもしくはそれらの前駆体を使用した場合その効果が顕著であり、機械的な強度や耐熱性や難燃性などに優れる。
又本発明の抵抗制御剤含有組成物を電子写真用部材に使用すれば、電気抵抗値のバラツキや電気特性の電圧依存性がない非常に均一な抵抗と強度を所有した部材であるので、それを装置に用いると高品質の画像が得られる。
特にベルト状の中間転写ベルトに使用されると 装置のバイアス条件変動に よらず、線画像散りや逆転写による白抜け等の異常画像が発生することがな く安定した高品質な画像形成を行うことができ、中間転写ベルトとして最適 な構成を実現することが可能である。
すなわち、本発明の抵抗制御剤含有組成物を用いた電子写真装置は、長期に亘り異常画像が発生しない高品質の画像を提供することができる。特に、本発明のシームレスベルトをフルカラー電子写真装置に用いれば、高品質を維持したまま、より高速化に適応したフルカラー画像形成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0099】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。又実施例/比較例に使用した分散剤は上述した合成方法で作成するか、又は市販品を利用した。
【0100】
実施例1
以下の手順で抵抗制御剤分散液1の調製、及びこの分散液とポリイミドワニスを用いて塗布液を調製し、分散液と塗布液それぞれの粒度評価を実施した。また、調製した塗布液を用いてシームレスベルトを作製し、電気抵抗のバラツキ評価及び画像評価を行った。
【0101】
[抵抗制御剤分散液1の調製]
下記処方の抵抗制御剤分散液組成分を、ボールミル(2mmφのジルコニアボール使用)を用いて回転速度200rpmの条件で15時間(H)分散し、抵抗制御剤分散液1を得た。
【0102】
<抵抗制御剤分散液1の処方>
抵抗制御剤;カーボンブラック(Special Black4:デグサ社製) :10重量部
分散剤;トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)3、n=17
(一般式(4))の化合物(*) : 5重量部
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
溶媒;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(関東化学社製:特級)
:85重量部
【0103】
一般式(4)
【化10】


【0104】
[塗布液の調製]
下記処方の塗布液組成分を均一に混合分散して塗布液を調製した。
<塗布液の処方>
抵抗制御剤分散液1 :13重量部
ポリイミドワニス〔(UワニスA:宇部興産社製(固形分18%)〕 :
33重量部
NMP : 4重量部
【0105】
[シームレスベルトの作製]
内半径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げし離型剤処理を施した金属製円筒を支持体(型)として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗布液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜が万遍なく広がった時点で回転数を100rpmに上げて熱風循環乾燥機に投入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。その後さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して取り出し、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、段階的に300℃まで昇温して30分加熱処(焼成)した。所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚85μmのシームレスベルトを得た。
【0106】
(実施例2)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕にかえてテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=6、n=17)
(下記構造式(2))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
【0107】
(実施例3)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4)の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕にかえて
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=30、n=17)
(一般式(2))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%))
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
【0108】
(実施例4)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=40、n=17)
(一般式(2))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%))
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
【0109】
(実施例5)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=60、n=17)
(一般式(2))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
【0110】
(実施例6)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
ペンタオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=40、n=17)
(一般式(3))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した
【0111】
(実施例7)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
テトラパルメチン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=30、n=15)
(一般式(5))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%))
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
一般式(5)
【化11】

【0112】
(実施例8)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
テトララウリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=30、n=11)
(一般式(6))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
一般式(6)
【化12】


【0113】
(実施例9)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
テトラカプリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=30、n=9)
(一般式(7))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%))
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
(一般式(7)
【化13】

【0114】
(実施例10)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c+d+e+f)=30、n=17)
(一般式(2))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、シームレスベルトの膜厚を100μmにした以外は実施例1と同じにしシームレスベルトを得た。
【0115】
(比較例1)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
ソルビットオレイン酸モノエステル
((一般式(8))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
(一般式8)
【化14】


【0116】
(比較例2)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
縮合リシノレイン酸ポリグリセリル
(チラバゾールH-818 太陽化学)(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
【0117】
(比較例3)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン
(EO付加数20、n=17 日本油脂社製 ノニオンOT-521)
(一般式(9))(*)
(*)〔N−メチル−2‐ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
一般式(9)
【化15】

【0118】
(比較例4)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17 (一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N‐メチル−2‐ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン
(EO付加数(a+b+c)=20、n=17 日本油脂社製 ノニオンOT-221)
(一般式(10))(*)
(*)〔N‐メチル−2‐ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
一般式(10)
【化16】

【0119】
(比較例5)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、 n=17)
(一般式(4)))の化合物(*)
(*)〔N‐メチル−2‐ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(日本油脂社製 ノニオンE205-S)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、この塗布液を用いてシームレスベルトを作製した。
【0120】
(比較例6)
実施例1の抵抗制御剤分散液1の処方において用いた分散剤
トリスイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(EO付加数(a+b+c)=3、n=17)
(一般式(4))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
にかえて
ソルビットオレイン酸モノエステル
((一般式(8))の化合物(*)
(*)〔N-メチル-2-ピロリドン溶液(固形分10%)〕
とした以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、シームレスベルトの膜厚を100μmにした以外は実施例1と同じにしシームレスベルトを得た。
【0121】
[評価]
実施例1〜10及び比較例1〜6で調製した抵抗制御剤分散液と塗布液それぞれの粒度評価、ならびにシームレスベルトの電気抵抗のバラツキ評価と画像評価を下記の条件で実施した。結果を下記表1に示す。
【0122】
<粒度評価>
抵抗制御剤分散液及び塗布液の下記粒度分布特性(下記、1、2)を粒度分布測定装置(日機装社製ナノトラックUPA−EX150)にて測定した。数値が小さい程、分散性が良好である。
(1)D50:メジアン径(μm)
(2)SD:粒度分布幅の標準偏差
【0123】
<電気抵抗のバラツキ評価>
作製した各シームレスベルトの10箇所を、ハイレスタUP MCP−HT450(三菱化学社製:プローブURS)にて体積抵抗率を測定し、その最大値と最小値をそれぞれ常用対数にて示し、下記式により求められる変動幅からバラツキを評価した。
電気抵抗のバラツキ=log(MAX抵抗率)−log(MIN抵抗率)
電気抵抗のバラツキの許容範囲としては、0.5以下が最も好ましい。
【0124】
<画像評価>
作製した各シームレスベルトを前記図2に示した構成のフルカラー電子写真装置において、実施例1〜9及び比較例1〜5に関しては中間転写ベルトとして使用し、又実施例10及び比較例6に関しては転写搬送ベルトとして使用し、1万枚連続プリントした後形成するハーフトーン画像濃度がほぼ0.8になるように調整した。
得られたハーフトーン画像について、斑点状の濃度ムラであるボソツキ画像の発生の度合いを評価した。画像評価の基準は下記による。
◎:非常に良好 、○:良好、△:実使用上問題なし、×:非常に悪い
【0125】
【表1】








【0126】
表1に示す結果から、前記一般式(1)で表される分散剤を用いることにより、抵抗制御剤分散液の粒子径を小さくかつ分布巾を小さくすることができるだけでなく、抵抗制御剤分散液と耐熱結着樹脂(前駆体)溶液を混合分散して塗布液とした状態でもほとんど凝集を起さず粒子径と分布巾を小さく維持することが可能である。したがって、本発明における塗布液を用いてシームレスベルトを形成して電子写真装置の中間転写ベルトとして用いた場合に、電気抵抗が非常に均一でバラツキがなく、耐熱性や機械的特性等の耐久性に優れ、高品質の画像が形成される。これに対して、他の分散剤を用いた比較例の場合には、、電気抵抗のバラツキが大きく、画像も非常に悪いものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係るベルト部材等を装備した電子写真装置の要部概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置に配備される中間転写ベルトに沿って複数の感光体ドラムが並設されている電子写真装置の一構成例を示す要部模式図である。
【符号の説明】
【0128】
P 転写紙
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20BK、20M、20Y、20C 現像装置
21BK、21M、21Y、21C 感光体
22 中間転写ベルト
23BK、23M、23Y、23C 1次転写バイアスローラ
25 ベルトクリーニング装置
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイアスローラ
70 除電ローラ
80 アースローラ
200 感光体ドラム
201 感光体クリーニング装置
202 除電ランプ
203 帯電チャージャ
210 ベルト搬送装置
230 リボルバ現像ユニット
231Y Y現像機
231K Bk現像機
231C C現像機
231M M現像機
270 定着装置
271、272 定着ローラ
500 中間転写ユニット
501 中間転写ベルト
503 トナーシール部材
504 ベルトクリーニングブレード
505 潤滑剤塗布ブラシ
506 潤滑剤
507 1次転写バイアスローラ
508 ベルト駆動ローラ
509 ベルトテンションコントローラ
510 2次転写対向ローラ
511 クリーニング対向ローラ
512 フィードバッグ電流検知ローラ
514 光学センサ
600 2次転写ユニット
601 転写紙ガイド板
605 2次転写バイアスローラ
606 転写紙除電チャージャ
608 クリーニングブレード
610 レジストローラ
801 1次転写電源
802 2次転写電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗制御剤及びポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルを含有する事を特徴とする抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
【請求項2】
抵抗制御剤、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル及び結着剤を含有することを特徴とする請求項1の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
【請求項3】
前記結着剤が、非熱可塑性樹脂又はその前駆体である事を特徴とする請求項2記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
【請求項4】
前記結着剤が、ポリイミドもしくはポリアミドイミド又はそれらの前駆体である事を特徴とする請求2又は3記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
【請求項5】
抵抗制御剤がカーボンブラックである事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の抵抗制御剤含有ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸系組成物を含有する事を特徴とする電子写真用部材。
【請求項7】
電子写真用部材が電子写真用中間転写体であることを特徴とする6項記載の電子写真用部材
【請求項8】
像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合せて一次転写を行い、得られた一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置に用いられる中間転写体において、前記電子写真用中間転写体がシームレスベルトであることを特徴とする請求項7記載の電子写真用部材。
【請求項9】
請求項6〜8記載の電子写真部材を少なくとも一つ以上有する電子写真装置。
【請求項10】
前記電子写真装置が、フルカラー電子写真装置であって、各色の現像器を有する複数の潜像担持体を直列に配置してなることを特徴とする請求項9に記載の電子写真装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−56713(P2008−56713A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231474(P2006−231474)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】