説明

抵抗層付き導電性基材及び抵抗層付き回路基板材料

【課題】 粗化された導電性基材の表面に均一な厚さ分布で抵抗層が形成された抵抗層付き導電性基材及びそれを用いた抵抗回路基板材料を提供すること。
【解決手段】 本発明は、粒状晶を持つ電解銅箔の少なくとも片面にRzで2.5μm以下となる租化処理が施されており、その上に少なくともPを8〜18wt%含有するNi合金層が形成されている薄膜抵抗層を有する抵抗層付き導電性基材及び該抵抗層付き導電性基材を用いた抵抗回路基板材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント抵抗回路板の作成に有用な抵抗層付き導電性基板に関するものであり、特に、抵抗値の安定性に優れ、銅箔のエッチング除去などの加工に際して抵抗変化が小さい抵抗層付き導電性基材、および該抵抗層付き導電性基材を用いた抵抗層付き回路基板材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗体を内蔵するプリント回路基板材料(以下抵抗回路基板材料と言う)は、一般に絶縁基板と、該基板上に接合された抵抗層及び該抵抗層に接合された銅箔等の高導電性基材からなる抵抗層付き導電性基材との積層体の形態で提供される。
【0003】
抵抗回路基板材料を使用したプリント抵抗回路の作成は、目的とする回路のパタ−ンに従って絶縁領域(絶縁基板上の全ての抵抗層及び導電性基材が除去される)、抵抗領域(高導電性基材が除去される)、並びに導体領域(全て残す)が、サブトラクティブ法(マスクエッチング法)により形成される。
【0004】
従来、抵抗層を形成する材料としてはカ−ボン系の抵抗材料が一般的であるが、その他に金属薄膜を利用したものとして、リンを含む電気Niめっき(例えば特許文献1、2参照)、Snを含む電気Niめっき(例えば特許文献3参照)等が提案されている。しかし、この種の金属薄膜抵抗層では、膜厚を薄くすることでシ−ト抵抗の高い膜を得ることは可能であるが、一般に膜厚を薄くすると金属膜の均一性が失われ、一定のシ−ト抵抗が得られないため、その薄さには限界があった。
特に、表面粗度の大きな柱状晶を有する電解銅箔の粗化材を用いてこれに抵抗層をめっきすると、銅箔表面の粗さが粗いため、実表面積が見かけの表面積より大幅に大きく、そのばらつきも大きい。このため部分的に抵抗値がバラツキ、抵抗層のめっき厚が安定せず、シ−ト抵抗が一定した抵抗層付き基板材料(抵抗層付き銅箔)を製造することができなかった。
【0005】
また一方で、抵抗層付き銅箔による回路形成におけるエッチング処理により、銅箔層を溶解する場合(抵抗領域形成)にエッチングファクタ−が悪いと、台形状の銅箔断面になるため、抵抗層として用いるべき部分の一部に銅箔層が残る結果となることがあった。
さらに、抵抗層付き導電性基材としては、同一基板内で抵抗値の異なる抵抗回路を作成することが必要となる場合も多く、この時には、抵抗の巾や長さをエッチングにより調整する。よって、抵抗値の高い皮膜を薄く被覆した方が、エッチングでの影響を小さくできて良好であるが、このような薄い皮膜を柱状晶を有する銅箔表面に形成すると、銅箔表面の凹凸により、真の表面積が大きくなるため実際のめっき膜厚はさらに薄いものとなってしまう。しかしながら抵抗層の膜厚を薄く形成すると不連続な皮膜となることがあり、また、抵抗値の部分差も大きなものとなってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開昭48−73762号公報
【特許文献2】特公表昭63−500133号公報
【特許文献3】特開昭54−72468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、抵抗層付き導電性基材、特に抵抗層付き銅箔の製造は、電解銅箔表面に薄膜抵抗層を電解めっきで形成しているが、抵抗層付き導電性基材の絶縁基板との密着強度を上げるため表面の凹凸の大きな柱状晶表面を持つ電解銅箔を用いて、かかる電解銅箔表面を粗化した後に抵抗層となるNi−P等をめっきして密着強度を上げている。しかし、このような方法では柱状晶表面を有する電解銅箔表面の凹凸と、まばらな粗化粒子の凹凸の凸部分に抵抗層が厚く形成されるため、抵抗層の厚さ分布が悪くなる。この厚さ分布の悪さは抵抗層の厚さが薄いほど影響力が大きく、シ−ト抵抗の均一性に欠ける結果となる。
【0008】
さらに、抵抗回路基板材料としての使用時において、導電性基材の層をエッチング除去する際、一部抵抗層の溶解が避けられず、特にNi−Pめっき抵抗層に厚さ分布があると、抵抗層の一部溶解に伴い抵抗回路の一部に欠落部分が発生する恐れがあり、抵抗回路(素子)を安定に残してプリント抵抗回路板を製造することは極めて困難であった。
また、多層に積層したプリント抵抗回路板を製造する際に、プリント抵抗回路板を加熱プレスするが、この時に基板と抵抗層との熱膨張係数の相違から基板の伸びに該基板に食い込んだ抵抗層の伸びが追随できず、割れが発生し、抵抗の増大や回路オ−プンとなる欠陥が発生する原因となっていた。
【0009】
抵抗層としてNi−Sn合金を用いる場合は、絶縁領域形成での抵抗層エッチング(Ni−Sn溶解)において、絶縁基板に錫の酸化物又は水酸化物が残存し、絶縁不良を発生させる問題がある。
また、蒸着法によるNi−CrやNi−Cr−AI−Si等の抵抗層形成合金が同目的で開発されているが、コスト、生産性の問題の他、絶縁材料との密着強度が低いという問題が指摘されている。
【0010】
本発明は、上記した従来の課題に鑑み、絶縁材料との密着力を保持しつつ、エッチングによる回路形成後の抵抗の安定した薄膜抵抗層を有する抵抗層付き導電性基材及びそれを用いた抵抗回路基板材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の抵抗層付き導電性基材は、粒状晶を持つ電解銅箔の少なくとも片面にRzで2.5μm以下となる粗化処理が施されており、該粗化処理層上に少なくともPを8〜18wt%含有するNi合金からなる抵抗層が形成されているものである。
【0012】
本発明によれば、粒状晶を持つ電解銅箔の少なくとも片面にRzが2.5μm以下となる粗化処理が施され、該粗化処理層上に少なくともPを8〜18wt%含有するNi合金の抵抗層が形成されている。
電解銅箔はS面(ドラム接触面)では、電解ドラムでのバフ筋などがあるため、粗化処理を施してもまばらな粗化形状となりやすい。従って、まばらな粗化形状のS面に抵抗層をめっきしても、均一な厚さで、抵抗値の一定したシ−ト抵抗を有する抵抗層を形成することは難しい。そのため、S面への粗化処理を行う場合は、粗化前の電解銅箔のRzを1μm程度に管理するか、化学研磨や電解研磨などの手法によって平滑化処理をすることが望ましい。
【0013】
一方、粒状晶をもつ電解銅箔では柱状晶の場合と異なり、S面と反対面のM面(ドラム接触面の反対側)ではその表面が滑らかであり均一であるため粗化を均一に行なうことができ、均一な厚さで、抵抗値の一定したシ−ト抵抗を有する抵抗層を形成することができ、従ってM面に抵抗層を形成することが好ましい。
前記電解銅箔の少なくとも抵抗層が形成された面がRzで2.0μm以下であることがより望ましい。
Ni合金としては、Pの他の合金成分として例えば、Co、Cuなどを含むものも好適に使用しうる。
また、抵抗層を形成するNi合金層の厚さは、重量換算で、0.1〜20mg/dm2であることがより望ましい。
【0014】
本発明の抵抗層付き回路基板材料は、絶縁基板の少なくとも片面に前記抵抗層付き導電性基材を、該基材の抵抗層を内側にして接合したものである。
なお、両面に抵抗層付き導電性基材を配置してもよいことは勿論である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、抵抗値のばらつきが小さく、外観が均一な抵抗層付き導電性基材を提供することができ、該抵抗層付き導電性基材を使用し、抵抗回路を設計値に合わせて構成し得る抵抗層付き回路基板材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の回路基板材料によれば、従来の柱状晶表面を有する電解銅箔を使用した抵抗層付き導電性基板材に比べて、抵抗値のばらつきが少なく、加工時に抵抗層の破断などがない、良好な抵抗回路を形成することができる。
即ち、柱状晶である電解銅箔の表面は柱状に凹凸が形成されるため表面粗度が粗く、粗い表面を粗化処理してもその粗化処理は銅箔表面の凸部にのみなされ、そのような粗化処理表面に抵抗層をめっき形成しても均一にめっきが付き難く、しかも銅箔表面の粗さが粗いため、前述したように実表面積が見かけの表面積より大幅に大きく、そのばらつきも大きいために部分的に抵抗値がバラツキ、抵抗層のめっき厚が安定せず、シ−ト抵抗が一定した抵抗層付き回路基板材料を製造することが極めて困難であった。
一方、粒状晶である電解銅箔の表面は平滑であり、その上に施す粗化処理は銅箔表面に均一になされ、粗化処理面への抵抗層のめっきも均一な厚さに形成でき、実表面積と見かけの表面積とが略一致するため、抵抗値のバラツキ、抵抗層のめっき厚さの安定性に優れ、シ−ト抵抗が一定した抵抗層付き回路基板材料を製造することができる。
【0017】
本発明の粒状晶である電解銅箔(導電性基材)の表面に抵抗層をめっきするめっき浴としては、硫酸浴、スルファミン酸浴、ピロリン酸浴などであり、フリ−の酸とNiなどの金属成分およびPを添加した浴である。これらの浴に更にCo、Cuなどを添加してもよい。
Pとしては、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸やこれらの塩類として添加する。
なお、めっき条件、P以外の添加物は上記に限定されるものではなく、その他の公知の浴でもよいことは勿論である。
【0018】
本発明の抵抗層付き導電性基材の製造方法をスルファミン酸浴を例にして示すと、Ni濃度及びスルファミン酸濃度は、通常のスルファミン酸めっき浴として用いられる範囲でよく、スルファミン酸ニッケルとして、300〜600g/Lの範囲が好適である。
前記めっき浴に添加するリン酸、亜リン酸、次亜リン酸はそのままでもよいが、これらに替えてPのNa塩等を使用してもよい。この時のP濃度としては、20〜150g/Lの範囲が好ましい。しかし、設備の不稼動時等液温低下時での結晶化防止等を考慮すると、20〜100g/Lの範囲が望ましい。
【0019】
該めっき浴はNa等との塩を用いることにより、pHの調整をなしうる。また、NaOH等のアルカリやスルファミン酸を添加してpHを調整してもよい。pHは高いほどめっき膜の均一性が劣化するため6以下とすることが望ましく、さらに4以下ではpH変動が少なくなるためpH4以下とすることがより好ましい。
また、めっき浴に、ホウ酸等のpH緩衝剤を含ませることによりpH安定性が増し、より皮膜組成、電流効率の安定化を図ることができる。
【0020】
浴温度は、30〜80℃が良好な電流効率、P含有量(以下P%と記載することもある)の安定性を示すために好ましい。
電流密度は、1〜30A/dm2が良好であり、これを超えると電流効率の低下や平滑性の劣化が起き易い。
【0021】
アノ−ドとしては、NiやNi−P合金等の溶解性アノ−ドを用いることも可能である。しかし、溶解性アノ−ドは長時間のめっき時に溶解消耗されてカソ−ド(導電性基材)との距離の変化が生じてマクロなめっき厚分布が乱され、膜厚の均一性が劣化するため、また、電流効率のアノ−ドとカソ−ドとの差から浴中のNi濃度が増加するために液抜きの必要が生じてコスト高となる等の理由により、不溶解性アノ−ドを使用することが望ましい。なお、不溶解性アノ−ドを使用すると、めっき浴中のNi濃度が減少するため、Niを補給する必要があり、この補給には炭酸Ni等のNi塩で添加することが望ましい。
【0022】
形成される抵抗層の皮膜としては、Pが8〜18wt%のNi−P合金にて高抵抗が得られ、かつエッチング性もよい。特には、Pが10〜15wt%のNi−P合金であると、さらに抵抗値の分布、エッチング性が安定して、導電性基材(銅箔)エッチング処理後の溶解による抵抗バラツキも少なく優れた基材となる。得られる皮膜のP%は浴条件、めっき条件により決定される。特に影響が大きいのは、pHとP原料の種類、濃度と浴温度、電流密度であり、これらの条件をそれぞれ用いる浴種により予め選定しておくことにより所望のNi−P組成の抵抗層を形成することができる。
抵抗層の厚みは、重量換算で、0.1〜20mg/dm2の範囲がよく、P含有量と抵抗層の厚みにより、所望の抵抗値を得るように調整することができる。抵抗の安定性をさらに確保するためには、1mg/dm2以上がより望ましい。また、20mg/dm2を超えると抵抗値が低くなるため、所望の抵抗値を得るのに回路の巾を非常に狭くしなければならず好ましくない。
また、Niに添加するP以外の合金成分として、Cu、Co等の他の元素を含有させても良い。
なお、抵抗層形成後にて、Zn、クロメ−ト、シラン処理等の表面処理を適宜行っても良い。
【0023】
また、めっき前の銅箔の表面粗度が粗すぎると、その上に形成される抵抗層の表面粗度も粗くなり、Ni合金層を均一につけ難く、めっき厚にバラツキが生じやすくなる。また、抵抗層付き回路基板材料として使用した時に、該基板材料をエッチングした後の加熱プレス加工時等において、抵抗層表面の凹凸部分に熱膨張差に基づく応力集中が生じ易く、割れが発生し易くなるため、めっき前の銅箔としては粒状晶で表面粗度はRzで2.5μm以下が好ましく、特には加工性から2.0μm以下がより好ましい。絶縁基板との接着力を確保するためには、粗さは大きい方が有利となるが、抵抗層の厚さ分布やエッチングムラなどを考察するとこの範囲が良好であり、更に好ましくは、粗化前の電解銅箔としてRzが1.5μm以下の箔を使用することが望ましい。
また、本発明で用いる粒状晶表面を有するの電解銅箔は、例えば、硫酸銅五水和物280g/L、硫酸100g/L、Clイオン35ppmを含む硫酸酸性硫酸銅電解液に平均分子量3000の低分子量ゼラチン7ppm、ヒドロキシエチルセルロース3ppm、3―メルカプト−1―プロパンスルホン酸ナトリウム1ppmを添加し、電解液温度55℃、流速0.3m/分、電流密度50A/dmの条件で電解製箔することにより製造される。
一方、柱状晶の銅箔は、例えば、硫酸銅五水和物280g/L、硫酸130g/L、Clイオン50ppmを含む硫酸酸性硫酸銅電解液にヒドロキシエチルセルロース10ppm、3―メルカプト−1―プロパンスルホン酸ナトリウム1ppmを添加し、電解液温度60℃、流速0.8m/分、電流密度45A/dmの条件で電解製箔することにより製造される。
ただし、製箔条件はこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の抵抗層付き導電性基材の製造方法の一実施形態は次のとおりである。
まず、上記製法で製造した粒状晶を持つ電解銅箔のM面(ドラム接触面の反対側)に粗化処理を施す。粗化処理は、銅箔表面にやけめっき処理により粗化した後、該やけめっき粗化処理面にカプセルめっき処理を施す。ただし、粗化処理はこれらに限定されるものではない。
粗化処理工程は、先ず粗化処理に先立ち、S面全面をマスキング用接着シ−トあるいはインク等により被覆する。次いでやけめっきを施す。
〇 やけめっき液組成
銅 :20〜35g/L
硫酸 :110〜160g/L
なお、やけめっき液にMo,Ni,Fe,W,Co,Asなどの無機金属のうち少な1種を加えても良い
〇 やけめっき条件
電流密度 :10〜50A/dm
処理時間 :2〜15秒
次ぎにカプセルめっきを施す。
〇 カプセルめっき液組成
銅 :50〜80g/L
硫酸 :90〜130g/L
〇 カプセルめっき条件
電流密度 :10〜30A/dm
処理時間 :2〜15秒
【0025】
粗化処理後、M面に抵抗層としてPを含有するNi合金めっき層を形成する。この後、マスキング用接着シ−ト等による被覆を剥離し、抵抗層側に絶縁基板を熱圧着、接着剤等で接合し、抵抗層付き回路基板材料とする。
抵抗層付き回路基板材料から抵抗回路基板材料を作成するには、例えば、絶縁領域(絶縁基板上の全ての抵抗層及び導電性基材が溶解除去される)、抵抗領域(高導電性基材が溶解除去される)、ならびに導体領域(すべて残す)を溶解法(エッチング)により処理し、回路を形成する。回路形成後必要により抵抗領域、導体領域の表面を液状、或いはフィルム状のカバ−コ−トにより保護層を形成する。
【0026】
上記溶解法において、エッチング液としては、公知のものを使用することができる。銅箔の場合では、塩化第2鉄、塩化第2銅、過硫酸アンモニウム、クロム酸−硫酸混合液、およびアンモニアキレ−ト系のエッチング液等が使用される。
P含有Ni合金抵抗層のエッチング液としては、硫酸銅−硫酸液や硫酸第2鉄−硫酸液、過硫酸アンモニウム−硫酸液等公知の液でよい。
【0027】
絶縁基板としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびこれらとガラスクロス複合材や、フェノ−ル樹脂−紙およびエポキシ樹脂−紙等の積層板等いずれを用いても良い。また、さらにヒ−トシンクとしてアルミニウムや鉄板を接合した(抵抗層を設ける面とは反対面に接合される)上記の各種絶縁性の積層板、シ−ト又はフィルム類が用いられる。
また、絶縁基板として、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミドおよびゴム等の樹脂やゴム類を接着剤層として用いたセラミックス板、ガラス板等の無機質の材料も使用することができる。
【0028】
以上の抵抗層付き回路基板材料の説明では簡略化のため、絶縁基板の片面に抵抗層および導電性基材が接合されている構造につき述べたが、本発明に係る抵抗層付き回路基板材料は、構造的改良・変更が可能であって、例えば絶縁基板の両面に抵抗層および導電性基材がそれぞれ接合された構造、絶縁基板の片面に抵抗層および導電性基材が接合され、他面に高導電層(エッチングにより導体および/又は電極を形成するため)を接合した構造のものをも含む。
また、本発明は、抵抗層付き導電性基材および該抵抗層付き導電性基材を絶縁基板に貼り付けた抵抗層付き回路基板材料に関するものである。一般にプリント配線基板等に適用する抵抗層付き回路基板材料は、絶縁基板、電気抵抗層、導電層の3層を具備しているが、3層以上のものも本発明に含まれる。また、これらを多層に積層した抵抗層付き回路基板材料も含まれることは勿論である。
【0029】
以上の説明は、本発明の一般的な説明をする目的でなされたものであり、何ら限定的意味を持つものではない。本発明の範囲は、クレ−ムを参照することにより最もよく判定される。
【0030】
以下、本発明を実施例により、より具体的に説明する。
[実施例1]
【0031】
前処理:
厚さ18μm、M面のRz:1.1μmの粒状晶からなる電解銅箔を1:1塩酸(35%)水に常温で3分間浸漬した。
粗化処理:
粗化処理として、先ずやけめっき処理、次いでカプセルめっき処理を施した。
〇 やけめっき液組成
銅 :25g/L
硫酸 :130g/L
その他含有物 :Mo
〇 やけめっき条件
電流密度 :30A/dm
処理時間 :10秒
〇 カプセルめっき液組成
銅 :70g/L
硫酸 :100g/L
〇 カプセルめっき条件
電流密度 :15A/dm
処理時間 :10秒
粗化処理後のM面のRzは1.9μmであった。
次いでS面を全面、M面を10*10cmを残してマスキングし、下記条件で抵抗層を製膜した。なお、対極(アノ−ド)には、1.5dm2の表面積を持つ白金めっきチタン板を用いた。
NiSO4・6H2O :150g/L
NiCl2・6H2O : 45g/L
NiCO3 : 15g/L
3PO4 : 50g/L
3PO3 : 40g/L
浴温度 :65℃
電流密度 :15A/dm
時間 :30秒
pH :1.0
【0032】
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定した。
結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
実施例1と同じ電解銅箔を実施例1と同様の粗化処理を施し、抵抗層を下記浴にてめっきし製膜した。
スルファミン酸Ni :350g/L
3BO3 :35g/L
3PO4 :50g/L
3PO3 :40g/L
浴温度 :75℃
電流密度 :5A/dm
時間 :18秒
pH :1.1
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0034】
実施例3
厚さ12μmの粒状晶からなる電解銅箔(M面のRz=1.5μm)を用い、実施例1と同様にM面に粗化処理を施し、Rzが2.4μmの電解銅箔に、抵抗層を下記浴にてめっきし製膜した。
NiSO4・6H2O :150g/L
NiCl2・6H2O : 45g/L
SO : 5g/L
PO : 50g/L
PO : 40g/L
浴温度 :65℃
電流密度 :25A/dm
時間 :20秒
pH :1.1
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0035】
実施例4
実施例2と同様の条件で、電流密度とめっき時間を変えて抵抗層を製膜した
電流密度 :15A/dm
時間 :32秒
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0036】
実施例5
実施例1と同様の条件で、電流密度とめっき時間を変えて抵抗層を製膜した
電流密度 :5A/dm
時間 :8秒
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0037】
実施例6
実施例2と同様の条件で、電流密度とめっき時間を変えて抵抗層を製膜した。
電流密度 :15A/dm
時間 :45秒
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0038】
実施例7
実施例1と同様の条件で、電流密度とめっき時間を変えて抵抗層を製膜した
電流密度 :5A/dm
時間 :3秒
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0039】
比較例1
厚さ18μm、M面のRz:5.1μmの柱状晶からなる電解銅箔に実施例1と同様の前処理、粗化処理を行ない、M面のRzが6.5μmとなった電解銅箔に、S面を全面、M面を10*10cmを残してマスキングしM面に抵抗層を製膜した。なお、対極(アノ−ド)としては、1.5dm2の表面積を持つ白金めっきチタン板を用いた。
NiSO4・6H2O : 150g/L
NiCl2・6H2O : 45g/L
NiCO3 : 15g/L
3PO4 : 50g/L
3PO3 : 40g/L
浴温度 : 65℃
電流密度 : 15A/dm
時間 : 30秒
pH : 1.0
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0040】
比較例2
厚さ12μm、M面のRz:2.3μmの柱状晶からなる電解銅箔のM面に実施例1と同様に粗化処理を施してRzが2.5μmとした電解銅箔のS面を全面、M面を10*10cmを残してマスキングし抵抗層を製膜した。なお、対極(アノ−ド)としては、1.5dm2の表面積を持つ白金めっきチタン板を用い、実施例2と同様の浴で電流密度とめっき時間を変えてM面に抵抗層を製膜した。
電流密度 :6A/dm2
時間 :90秒
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0041】
比較例3
比較例1と同様の条件で、電流密度とめっき時間を変えて抵抗層を製膜した。
電流密度 :35A/dm2
時間 :15秒
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0042】
比較例4
厚さ18μm、M面のRz:1.1μmの粒状晶からなる電解銅箔のM面に粗化処理を施してRzが3.0μmの電解銅箔とし、S面を全面、M面を10*10cmを残してマスキングし抵抗層を製膜した。なお、対極(アノ−ド)としては、1.5dm2の表面積を持つ白金めっきチタン板を用い、実施例1と同様の条件でM面にめっきし、抵抗層を製膜した。
製膜後、抵抗層のめっき外観ムラ、めっき厚としてのNi電着量(mg/dm2)、Pの含有量(%)、および回路形成後1mm□での抵抗を測定し、その結果を表1に併記した。
【0043】
表1において、平均厚さはNiの電着量(mg/dm)で示している。なお、Niは、89mg/dmが概略1μmに対応する。
めっき厚については、表面を溶解して、NiおよびPの付着量を出し、これをもとに蛍光X線での検量線を作成して測定している。よって、見た目の表面積に対する値である。
「エッチング後の抵抗値のバラツキ」(3σ)は、各条件下における10枚のめっき板につき、N=2測定(計N=20)した時の平均値との差(バラツキ:%)を示している。
【0044】
銅箔のエッチングは、実施例、比較例で作成した抵抗層付き導電性基材のめっき処理による製膜した抵抗層面側にエポキシ樹脂含浸ガラスクロスを重ね合わせ、ラミネ−ション用プレスにより加熱加圧して接合することにより、抵抗層つきプリント基板を作成し、シップレイ社製ニュ−トラエッチV−1で52℃で銅色が見えなくなるまでエッチング(約1〜2分)を行い、また、抵抗層のエッチング除去は、硫酸銅250g/L、硫酸5mL/Lで90℃で行った。抵抗値の単位は、Ω/□である。
【0045】
[表1]

【0046】
表1より明らかなように、外観ムラは実施例においては均一であったが、比較例1、2および4は、めっき液の流れ方向に沿って縞状の外観となっており、めっき厚にバラツキが生じ、抵抗値のバラツキの一因となっている。
【0047】
エッチング後の抵抗値とバラツキについては、実施例においてはバラツキが少なく±25%以下に抑えられているが、比較例1、2、および4については粗化後Rzが2.5以上であるためバラツキが大きく、また比較例3に関してはP含有率が低いため、Cuのエッチング時にNi−P層が溶解し易く、抵抗値のばらつきが大きいことが分かる。さらに、比較例2は結晶が粒状晶で粗化後Rzが低いため、ピ−ル強度が不満足であった。
上述したように、実施例1〜7は抵抗値のバラツキも小さく、優れた均一性を示している。
【0048】
以上の結果のように、本発明では、外観のばらつきを低減でき、抵抗値のばらつきが小さく、ピ−ル強度にも優れた抵抗層付き導電性基材を作成し、提供することができ、同時に抵抗層付き回路基板材料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状晶を持つ電解銅箔の少なくとも片面にRzで2.5μm以下となる粗化処理が施されており、その上に少なくともPを8〜18wt%含有するNi合金からなる抵抗層が形成されていることを特徴とする抵抗層付き導電性基材。
【請求項2】
前記Ni合金からなる抵抗層の厚さが重量換算で、0.1〜20mg/dm2であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗層付き導電性基材。
【請求項3】
粒状晶を持つ電解銅箔の少なくとも片面を粗化処理してRzで2.5μm以下とし、該粗化処理面上に少なくともPを8〜18wt%含有するNi合金からなる抵抗層を形成してなる抵抗層付き導電性基材を、該基材の抵抗層を内側にして絶縁基板の片面または両面に接合してなることを特徴とする抵抗層付き回路基板材料。
【請求項4】
前記Ni合金からなる抵抗層の厚さが重量換算で、0.1〜20mg/dm2であることを特徴とする請求項3に記載の抵抗層付き回路基板材料。

【公開番号】特開2006−5149(P2006−5149A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179797(P2004−179797)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(591056710)古河サーキットフォイル株式会社 (43)
【Fターム(参考)】