押し釦スイッチおよびその製造方法
【課題】金属調のデザインによる高級感を演出でき、デザインの自由度が高く、かつキートップの色むらの発生を防止できる押し釦スイッチおよびその製造方法を得る。
【解決手段】樹脂成形部3の表面上に、金属色を呈する蒸着層2が位置している。この蒸着層2の表面上に、蒸着層2とともに樹脂成形部3の表面に沿って樹脂成形部3を覆うように成形され、かつ蒸着層2の金属色を透過するフィルム1aが位置している。蒸着層2はフィルム1aの裏面側に金属を蒸着して形成された層である。
【解決手段】樹脂成形部3の表面上に、金属色を呈する蒸着層2が位置している。この蒸着層2の表面上に、蒸着層2とともに樹脂成形部3の表面に沿って樹脂成形部3を覆うように成形され、かつ蒸着層2の金属色を透過するフィルム1aが位置している。蒸着層2はフィルム1aの裏面側に金属を蒸着して形成された層である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し釦スイッチおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などに用いられる押し釦スイッチのキートップ(筐体から露出した部分)には高級感のあるデザインとして金属調のものが用いられている。以下、金属調デザインのキートップを備えた従来の押し釦スイッチについて説明する。
【0003】
図15は、従来の押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。図15を参照して、従来の押し釦スイッチは、めっき層101と、樹脂成形部103と、ベースラバー104とを主に有している。めっき層101は、押し釦の基体となる樹脂成形部103の表面に形成されている。樹脂成形部103は、接着層106によりベースラバー104に接着されている。ベースラバー104には、アクチュエーター部105が一体的に形成されている。アクチュエーター部105はドーム状の金属板108を押圧することでスイッチングを行なわしめる部分である。
【0004】
なお、このような押し釦スイッチは基板107上に配置されており、また筐体110からキートップが露出するように配置されている。
【0005】
めっき層101は、たとえば化学ニッケルめっき層、電解銅めっき層、電解ニッケルめっき層または電解クロムめっき層よりなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上述したように、キートップを金属調のデザインにすべく、樹脂成形部103の表面にめっきが施されていた。しかしこのようなめっきによる手法では、キートップのデザインとして金属そのものの色しか選択することができないため、自由なデザインができないという問題があった。
【0007】
また、金属そのものでは実現できない色をデザインする方法として、めっき層101の上面に有色塗装を行なう手法がある。しかしながら、有色塗装は耐摩耗性に劣るため、剥がれやすい。このため、スイッチング操作を繰返すと、有色塗装が剥がれ、めっき層101が露出し、色むらが発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、金属調のデザインにより高級感を演出でき、デザインの自由度が高く、かつキートップの色むらの発生を防止できる押し釦スイッチおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の押し釦スイッチは、釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチであって、釦の基体と、基体表面上に形成されかつ少なくとも表面が金属色を呈する下地層と、下地層の表面に沿って下地層を覆うように成形されておりかつ下地層の金属色を透過するシート状のフィルムとを備えている。
【0010】
本発明の押し釦スイッチによれば、成形されたフィルムが用いられており、塗膜よりも耐摩耗性に優れた材質よりなる。このため、使用時のフィルムの剥がれを防止でき、下地層の露出による色むらの発生を防止することができる。
【0011】
また、フィルムは下地層の金属色を透過する材質よりなるため、金属調のデザインを実現でき高級感を演出することができる。
【0012】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、フィルムは有色のフィルムである。
これにより、下地層の金属色を反映させながらもフィルムを着色することができ、デザインの自由度を高めることができる。
【0013】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、フィルムは無色のフィルムである。
これにより、下地層の金属色を明瞭に透過することができる。
【0014】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、下地層とフィルムとの間にデザインを有する透過性の層がさらに備えられている。
【0015】
これにより、デザインの自由度を高めることができる。
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、下地層は、金属層である。
【0016】
これにより、めっきや蒸着により金属色を呈する下地層を形成することができる。
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、下地層は、表面にめっき調印刷が施された印刷層である。
【0017】
これにより、所望のめっき調デザインを印刷により得ることができ、デザインの自由度を高めることができる。
【0018】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、基体から下地層への熱の伝達を防止するための保護フィルムがさらに備えられており、その保護フィルムは基体と下地層との間に形成されている。
【0019】
これにより、基体形成時に、基体側から下地層へ熱が伝達されることを抑制でき、下地層の変色などを防止することができる。
【0020】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、基体に、スイッチング操作するためのアクチュエーターが一体的に形成されている。
【0021】
これにより、アクチュエーターを基体と別個に設ける必要がなくなり、部品の省略化を図ることができる。
【0022】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、基体は中空部を有している。
これにより、軽量化を図ることができる。
【0023】
本発明の他の押し釦スイッチは、釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチであって、釦の基体と、基体表面上に位置し、かつ少なくとも表面が金属色を呈する下地層と、下地層の表面上に位置し、かつ下地層とともに基体の表面に沿って基体を覆うように成形されており、かつ下地層の金属色を透過するフィルムとを備えている。下地層がフィルムの裏面側に金属を蒸着して形成された層である。
【0024】
本発明の押し釦スイッチの製造方法は、釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチの製造方法であって、透過性のシート状のフィルムを釦形状に成形し、かつ、表面が金属色を呈する下地層とフィルムとが積層された積層フィルムの釦形状に沿って積層フィルムに固定された基体を形成する工程を備え、下地層はフィルムの裏面に金属を蒸着することで形成される。
【0025】
本発明の押し釦スイッチの製造方法では、金属調デザインによる高級感を演出でき、デザインの自由度が高く、かつ摩耗による色むらの発生を防止できる押し釦スイッチを簡略な方法で製造することができる。
【0026】
なお、フィルムを釦形状に成形する工程は、フィルム単独で釦形状に成形する工程と、フィルムと下地層とが積層された状態で釦形状に成形する工程とのいずれでもよい。フィルム単独で釦形状に成形されたときは、その成形後にフィルムの形状に沿って下地層が形成されることになる。
【0027】
上記の押し釦スイッチの製造方法において好ましくは、フィルムを釦形状に成形した後に、基体が形成される。
【0028】
これにより、良好な釦形状を得ることができる。
上記の押し釦スイッチの製造方法において好ましくは、フィルムが釦形状に成形されると同時に基体が形成される。
【0029】
これにより、基体の形成と釦形状への成形とを同時に行なえるため、工程の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明に係る押し釦スイッチおよびその製造方法によれば、金属調による高級感の演出、デザインの自由度の向上、および色むらの防止が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1を参照して、押し釦スイッチは、有色フィルム1aと、めっき層(あるいは蒸着層)2と、樹脂成形部3と、ベースラバー4とを主に有している。樹脂成形部3は、樹脂よりなり、かつ押し釦の基体となる。この樹脂成形部3の表面上に、下地層として金属色を呈するめっき層(あるいは蒸着層)2が形成されている。このめっき層(あるいは蒸着層)2は、たとえばCr(クロム)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Cu(銅)などの純金属、またはこれらの合金よりなっている。またこれらの金属の中でも、特にCrやAlはシルバー系の金属色を呈するため、他の金属材料と比較して、有色フィルム1aの模様をより鮮明にすることができる。このめっき層(あるいは蒸着層)2上に、成形された有色フィルム1aが設けられている。有色フィルム1aは、所望のデザイン色を有するとともに、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を透過する透過性を有している。この有色フィルム1aは、樹脂などの成形可能な材質よりなっており、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0032】
樹脂成形部3は、接着層6などを介して、ベースラバー4に貼り付けられている。接着層6は、たとえば熱硬化性接着剤やUV接着剤よりなっている。ベースラバー4は、たとえばシリコンゴムよりなっており、一体的に設けられたアクチュエーター(突起部)5を有している。アクチュエーター5は、基板7に支持されたドーム状の金属板8を押圧することでスイッチング操作を行なわしめる部分である。
【0033】
この押し釦スイッチのキートップは、筐体10から露出しており、このキートップ部を押すことによりスイッチング操作がなされる。
【0034】
なお、樹脂成形部3は、図2に示すように中空部3aが設けられた構成を有していてもよく、また中空部3aがなく密実な構成を有していてもよい。なお、軽量化のためには中空部3aを設けることが好ましい。
【0035】
次に本実施の形態の製造方法について説明する。
図3を参照して、まず所望のデザイン色を有した透過性の有色フィルム1aの裏面に、めっき層(あるいは蒸着層)2がたとえばめっきあるいは蒸着により形成され、積層フィルムが準備される。この際、めっき層2を形成する場合には材質としてCrを用いることが好ましく、蒸着層2を形成する場合にはAlを用いることが好ましい。
【0036】
図4を参照して、この積層フィルム1a、2は、型21、22を用いてプレス成形され、それにより釦状の略湾曲形状に成形される。なお、上記の成形方法に限らず、真空成形により略湾曲形状に成形してもよい。
【0037】
図5を参照して、成形された積層フィルム1a、2は、射出成形用の型23、24に嵌め込まれる。この後、型24のゲート24aから樹脂を流し込むことにより、樹脂成形部3が形成される。
【0038】
この後、積層フィルム1a、2の所望部分がカットされた後、図1に示すようにベースラバー4に、接着層6を介して接着される。この接着層6の材質としては、たとえば熱硬化性接着剤を用いることができるが、これ以外にUV接着剤を用いることもできる。これにより、図1に示す本実施の形態の押し釦スイッチが製造される。
【0039】
なお上記の方法では、積層フィルム1a、2を略湾曲形状に成形した後に樹脂の射出成形を行なったが、この略湾曲形状の成形と射出成形とは同時に行なわれてもよい。以下、その方法について説明する。
【0040】
図3に示す工程で得られた積層フィルム1a、2は、図6に示すように型25、26に挟まれる。この後、図7に示すように、型26のゲート26aから樹脂が注入される。この樹脂の注入圧力により積層フィルム1a、2が略湾曲形状に成形されるとともに、樹脂成形部3が形成される。この場合、樹脂成形部3は中空部のない密実な構成となるが、その後の加工により中空部が設けられてもよい。
【0041】
この後、上述と同様、図1に示すように樹脂成形部3を接着層6を介してベースラバー4に接着することで、本実施の形態の押し釦スイッチが製造される。
【0042】
本実施の形態では、めっき層(あるいは蒸着層)2の表面を、耐摩耗性の高い高分子化合物などよりなる有色フィルム1aが覆っている。このため、有色フィルム1aの剥がれを防止でき、めっき層(あるいは蒸着層)2が部分的に露出することによる色むらの発生を防止することができる。
【0043】
また、有色フィルム1aは、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を透過する材質よりなるため、金属調のデザインを実現でき、高級感を演出することができる。
【0044】
また、有色フィルム1aには着色が可能であるため、その着色によりデザインの自由度を高めることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図8を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、図1に示す実施の形態1の構成と比較して、保護フィルム層11が追加されている点で異なる。この保護フィルム層11は、樹脂成形部3と、めっき層(あるいは蒸着層)2との間に設けられ、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0046】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
本実施の形態の製造方法では、まず有色フィルム1aとめっき層(あるいは蒸着層)2と保護フィルム層11との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0048】
本実施の形態では、樹脂成形部3とめっき層(あるいは蒸着層)2との間に保護フィルム層11が設けられている。このため、樹脂成形部3形成のための射出形成時に熱がめっき層(あるいは蒸着層)2へ伝達されるのを抑制することができ、めっき層(あるいは蒸着層)2の熱による変色などを防止することができる。
【0049】
なお、保護フィルム層11の代わりに印刷層や塗装層が設けられても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0050】
(実施の形態3)
図9を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、図1に示す構成と比較して、めっき層(あるいは蒸着層)2上に、印刷層(あるいは塗装層)12と透明フィルム1bとが形成されている点において異なる。この印刷層(あるいは塗装層)12は、所望のデザインを有し、かつ下地のめっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を透過する透過性を有している。印刷層(あるいは塗装層)12には、インキまたは塗料により所望のデザインが施されている。透明フィルム1bは、無色で、下地を透過する透過性を有している。この透明フィルム1bは、樹脂などの成形可能な材質よりなっており、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0051】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0052】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bと、印刷層(あるいは塗装層)12とめっき層(あるいは蒸着層)2との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0053】
本実施の形態では、塗膜よりも耐摩耗性の高い高分子化合物などよりなる透明フィルム1bが設けられている。このため、透明フィルム1bの剥がれを防止でき、下地の露出による色むらの発生を防止することができる。
【0054】
また、印刷層(あるいは塗装層)12が用いられているため、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を反映させながらもデザインの自由度を高めることができる。
【0055】
また、透明フィルム1bと印刷層(あるいは塗装層)12とが透過性を有する材質よりなるため、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属調デザインを反映でき、高級感を演出することができる。
【0056】
(実施の形態4)
図10を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態3の構成と比較して、保護フィルム層11が追加されている点において異なる。この保護フィルム層11は、樹脂成形部3とめっき層(あるいは蒸着層)2との間に設けられており、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0057】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態3とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bと印刷層12とめっき層2と保護フィルム層11との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0059】
本実施の形態においては、樹脂成形部3とめっき層2との間に保護フィルム層11が設けられているため、樹脂成形部3形成のための射出成形時にめっき層2へ熱が伝達されるのを抑制でき、めっき層(あるいは蒸着層)2の熱による変色などを防止することができる。
【0060】
なお、保護フィルム層11の代わりに印刷層や塗装層が設けられても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0061】
(実施の形態5)
図11を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態1の構成と比較して、樹脂成形部3上にめっき調印刷層12aと、透明フィルム1bとが設けられている点において異なる。めっき調印刷層12aはめっき調を有しているため、金属色を呈する。透明フィルム1bは、無色で、めっき調印刷層12aの金属色を透過する透過性を有している。この透明フィルム1bは、樹脂などの成形可能な材質よりなっており、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0062】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bの裏面にめっき調印刷層12aが設けられる。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0064】
本実施の形態においては、めっき調印刷層12aを設けたことにより、めっき層(あるいは蒸着層)を設けることなく、金属調のデザインを実現することができる。まためっき調印刷層12aでは、印刷により各種のめっき調を表現することができるため、デザインの自由度を高めることができる。
【0065】
(実施の形態6)
図12を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態5の構成と比較して、保護フィルム層11が追加されている点において異なる。この保護フィルム層11は、樹脂成形部3とめっき調印刷層12aとの間に設けられ、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0066】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態5とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bとめっき調印刷層12aと保護フィルム層11との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0068】
本実施の形態では、樹脂成形部3とめっき調印刷層12aとの間に保護フィルム層11が設けられているため、樹脂成形部3形成のための射出成形時にめっき調印刷層12aへ熱が伝達されるのを抑制することができる。
【0069】
なお、保護フィルム層11の代わりに印刷層や塗装層が設けられても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0070】
(実施の形態7)
図13と図14とを参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態1の構成と比較して、樹脂成形部3にアクチュエーター部5が一体的に設けられている点、およびベースラバーが省略されている点において異なる。このため、本実施の形態においては、樹脂成形部3に一体的に設けられたアクチュエーター部5によりドーム状の金属板8が押圧されてスイッチ操作が行なわれることとなる。
【0071】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0072】
本実施の形態の製造方法においては、有色フィルム1aとめっき層2との積層構造が準備され、図3に示す略湾曲形状の成形が施された後、図4に示す射出成形工程にて樹脂成形部3がアクチュエーター部5と一体的に形成される。
【0073】
本実施の形態においては、樹脂成形部3にアクチュエーター部5が一体的に設けられているため、ベースラバーが不要となり、部品点数を少なくすることができる。
【0074】
なお、実施の形態1〜7においては、フィルム1a、1bとめっき層2(またはめっき調印刷層12a)などとの積層構造を準備した後に釦形状の成形を行なっているが、フィルム1a、1b単層で釦形状に成形した後にめっき層2(またはめっき調印刷層12a)や保護フィルム層11や印刷層12がそのフィルム1a、1b形状に沿って形成されてもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように本発明に係る押し釦スイッチは、金属調による高級感の演出、デザインの自由度の向上、および色むらの防止が必要な押し釦スイッチに有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の樹脂成形部の下側から見た図である。
【図3】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの製造方法の第1工程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの製造方法の第2工程を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの製造方法の第3工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの他の製造方法の第1工程を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの他の製造方法の第2工程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態5における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態6における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態7における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図14】図13の樹脂成形部の下側から見た図である。
【図15】従来の押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1a 有色フィルム、1b 透明フィルム、2 メッキ層(あるいは蒸着層)、3 樹脂成形部、3a 中空部、4 ベースラバー、5 アクチュエーター(突起部)、6 接着層、7 基板、8 金属板、10 筐体、11 保護フィルム層、12 印刷層、12a めっき調印刷層、21,23〜26 型、24a,26a ゲート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し釦スイッチおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などに用いられる押し釦スイッチのキートップ(筐体から露出した部分)には高級感のあるデザインとして金属調のものが用いられている。以下、金属調デザインのキートップを備えた従来の押し釦スイッチについて説明する。
【0003】
図15は、従来の押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。図15を参照して、従来の押し釦スイッチは、めっき層101と、樹脂成形部103と、ベースラバー104とを主に有している。めっき層101は、押し釦の基体となる樹脂成形部103の表面に形成されている。樹脂成形部103は、接着層106によりベースラバー104に接着されている。ベースラバー104には、アクチュエーター部105が一体的に形成されている。アクチュエーター部105はドーム状の金属板108を押圧することでスイッチングを行なわしめる部分である。
【0004】
なお、このような押し釦スイッチは基板107上に配置されており、また筐体110からキートップが露出するように配置されている。
【0005】
めっき層101は、たとえば化学ニッケルめっき層、電解銅めっき層、電解ニッケルめっき層または電解クロムめっき層よりなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上述したように、キートップを金属調のデザインにすべく、樹脂成形部103の表面にめっきが施されていた。しかしこのようなめっきによる手法では、キートップのデザインとして金属そのものの色しか選択することができないため、自由なデザインができないという問題があった。
【0007】
また、金属そのものでは実現できない色をデザインする方法として、めっき層101の上面に有色塗装を行なう手法がある。しかしながら、有色塗装は耐摩耗性に劣るため、剥がれやすい。このため、スイッチング操作を繰返すと、有色塗装が剥がれ、めっき層101が露出し、色むらが発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、金属調のデザインにより高級感を演出でき、デザインの自由度が高く、かつキートップの色むらの発生を防止できる押し釦スイッチおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の押し釦スイッチは、釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチであって、釦の基体と、基体表面上に形成されかつ少なくとも表面が金属色を呈する下地層と、下地層の表面に沿って下地層を覆うように成形されておりかつ下地層の金属色を透過するシート状のフィルムとを備えている。
【0010】
本発明の押し釦スイッチによれば、成形されたフィルムが用いられており、塗膜よりも耐摩耗性に優れた材質よりなる。このため、使用時のフィルムの剥がれを防止でき、下地層の露出による色むらの発生を防止することができる。
【0011】
また、フィルムは下地層の金属色を透過する材質よりなるため、金属調のデザインを実現でき高級感を演出することができる。
【0012】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、フィルムは有色のフィルムである。
これにより、下地層の金属色を反映させながらもフィルムを着色することができ、デザインの自由度を高めることができる。
【0013】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、フィルムは無色のフィルムである。
これにより、下地層の金属色を明瞭に透過することができる。
【0014】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、下地層とフィルムとの間にデザインを有する透過性の層がさらに備えられている。
【0015】
これにより、デザインの自由度を高めることができる。
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、下地層は、金属層である。
【0016】
これにより、めっきや蒸着により金属色を呈する下地層を形成することができる。
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、下地層は、表面にめっき調印刷が施された印刷層である。
【0017】
これにより、所望のめっき調デザインを印刷により得ることができ、デザインの自由度を高めることができる。
【0018】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、基体から下地層への熱の伝達を防止するための保護フィルムがさらに備えられており、その保護フィルムは基体と下地層との間に形成されている。
【0019】
これにより、基体形成時に、基体側から下地層へ熱が伝達されることを抑制でき、下地層の変色などを防止することができる。
【0020】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、基体に、スイッチング操作するためのアクチュエーターが一体的に形成されている。
【0021】
これにより、アクチュエーターを基体と別個に設ける必要がなくなり、部品の省略化を図ることができる。
【0022】
上記の押し釦スイッチにおいて好ましくは、基体は中空部を有している。
これにより、軽量化を図ることができる。
【0023】
本発明の他の押し釦スイッチは、釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチであって、釦の基体と、基体表面上に位置し、かつ少なくとも表面が金属色を呈する下地層と、下地層の表面上に位置し、かつ下地層とともに基体の表面に沿って基体を覆うように成形されており、かつ下地層の金属色を透過するフィルムとを備えている。下地層がフィルムの裏面側に金属を蒸着して形成された層である。
【0024】
本発明の押し釦スイッチの製造方法は、釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチの製造方法であって、透過性のシート状のフィルムを釦形状に成形し、かつ、表面が金属色を呈する下地層とフィルムとが積層された積層フィルムの釦形状に沿って積層フィルムに固定された基体を形成する工程を備え、下地層はフィルムの裏面に金属を蒸着することで形成される。
【0025】
本発明の押し釦スイッチの製造方法では、金属調デザインによる高級感を演出でき、デザインの自由度が高く、かつ摩耗による色むらの発生を防止できる押し釦スイッチを簡略な方法で製造することができる。
【0026】
なお、フィルムを釦形状に成形する工程は、フィルム単独で釦形状に成形する工程と、フィルムと下地層とが積層された状態で釦形状に成形する工程とのいずれでもよい。フィルム単独で釦形状に成形されたときは、その成形後にフィルムの形状に沿って下地層が形成されることになる。
【0027】
上記の押し釦スイッチの製造方法において好ましくは、フィルムを釦形状に成形した後に、基体が形成される。
【0028】
これにより、良好な釦形状を得ることができる。
上記の押し釦スイッチの製造方法において好ましくは、フィルムが釦形状に成形されると同時に基体が形成される。
【0029】
これにより、基体の形成と釦形状への成形とを同時に行なえるため、工程の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明に係る押し釦スイッチおよびその製造方法によれば、金属調による高級感の演出、デザインの自由度の向上、および色むらの防止が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1を参照して、押し釦スイッチは、有色フィルム1aと、めっき層(あるいは蒸着層)2と、樹脂成形部3と、ベースラバー4とを主に有している。樹脂成形部3は、樹脂よりなり、かつ押し釦の基体となる。この樹脂成形部3の表面上に、下地層として金属色を呈するめっき層(あるいは蒸着層)2が形成されている。このめっき層(あるいは蒸着層)2は、たとえばCr(クロム)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Cu(銅)などの純金属、またはこれらの合金よりなっている。またこれらの金属の中でも、特にCrやAlはシルバー系の金属色を呈するため、他の金属材料と比較して、有色フィルム1aの模様をより鮮明にすることができる。このめっき層(あるいは蒸着層)2上に、成形された有色フィルム1aが設けられている。有色フィルム1aは、所望のデザイン色を有するとともに、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を透過する透過性を有している。この有色フィルム1aは、樹脂などの成形可能な材質よりなっており、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0032】
樹脂成形部3は、接着層6などを介して、ベースラバー4に貼り付けられている。接着層6は、たとえば熱硬化性接着剤やUV接着剤よりなっている。ベースラバー4は、たとえばシリコンゴムよりなっており、一体的に設けられたアクチュエーター(突起部)5を有している。アクチュエーター5は、基板7に支持されたドーム状の金属板8を押圧することでスイッチング操作を行なわしめる部分である。
【0033】
この押し釦スイッチのキートップは、筐体10から露出しており、このキートップ部を押すことによりスイッチング操作がなされる。
【0034】
なお、樹脂成形部3は、図2に示すように中空部3aが設けられた構成を有していてもよく、また中空部3aがなく密実な構成を有していてもよい。なお、軽量化のためには中空部3aを設けることが好ましい。
【0035】
次に本実施の形態の製造方法について説明する。
図3を参照して、まず所望のデザイン色を有した透過性の有色フィルム1aの裏面に、めっき層(あるいは蒸着層)2がたとえばめっきあるいは蒸着により形成され、積層フィルムが準備される。この際、めっき層2を形成する場合には材質としてCrを用いることが好ましく、蒸着層2を形成する場合にはAlを用いることが好ましい。
【0036】
図4を参照して、この積層フィルム1a、2は、型21、22を用いてプレス成形され、それにより釦状の略湾曲形状に成形される。なお、上記の成形方法に限らず、真空成形により略湾曲形状に成形してもよい。
【0037】
図5を参照して、成形された積層フィルム1a、2は、射出成形用の型23、24に嵌め込まれる。この後、型24のゲート24aから樹脂を流し込むことにより、樹脂成形部3が形成される。
【0038】
この後、積層フィルム1a、2の所望部分がカットされた後、図1に示すようにベースラバー4に、接着層6を介して接着される。この接着層6の材質としては、たとえば熱硬化性接着剤を用いることができるが、これ以外にUV接着剤を用いることもできる。これにより、図1に示す本実施の形態の押し釦スイッチが製造される。
【0039】
なお上記の方法では、積層フィルム1a、2を略湾曲形状に成形した後に樹脂の射出成形を行なったが、この略湾曲形状の成形と射出成形とは同時に行なわれてもよい。以下、その方法について説明する。
【0040】
図3に示す工程で得られた積層フィルム1a、2は、図6に示すように型25、26に挟まれる。この後、図7に示すように、型26のゲート26aから樹脂が注入される。この樹脂の注入圧力により積層フィルム1a、2が略湾曲形状に成形されるとともに、樹脂成形部3が形成される。この場合、樹脂成形部3は中空部のない密実な構成となるが、その後の加工により中空部が設けられてもよい。
【0041】
この後、上述と同様、図1に示すように樹脂成形部3を接着層6を介してベースラバー4に接着することで、本実施の形態の押し釦スイッチが製造される。
【0042】
本実施の形態では、めっき層(あるいは蒸着層)2の表面を、耐摩耗性の高い高分子化合物などよりなる有色フィルム1aが覆っている。このため、有色フィルム1aの剥がれを防止でき、めっき層(あるいは蒸着層)2が部分的に露出することによる色むらの発生を防止することができる。
【0043】
また、有色フィルム1aは、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を透過する材質よりなるため、金属調のデザインを実現でき、高級感を演出することができる。
【0044】
また、有色フィルム1aには着色が可能であるため、その着色によりデザインの自由度を高めることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図8を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、図1に示す実施の形態1の構成と比較して、保護フィルム層11が追加されている点で異なる。この保護フィルム層11は、樹脂成形部3と、めっき層(あるいは蒸着層)2との間に設けられ、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0046】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
本実施の形態の製造方法では、まず有色フィルム1aとめっき層(あるいは蒸着層)2と保護フィルム層11との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0048】
本実施の形態では、樹脂成形部3とめっき層(あるいは蒸着層)2との間に保護フィルム層11が設けられている。このため、樹脂成形部3形成のための射出形成時に熱がめっき層(あるいは蒸着層)2へ伝達されるのを抑制することができ、めっき層(あるいは蒸着層)2の熱による変色などを防止することができる。
【0049】
なお、保護フィルム層11の代わりに印刷層や塗装層が設けられても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0050】
(実施の形態3)
図9を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、図1に示す構成と比較して、めっき層(あるいは蒸着層)2上に、印刷層(あるいは塗装層)12と透明フィルム1bとが形成されている点において異なる。この印刷層(あるいは塗装層)12は、所望のデザインを有し、かつ下地のめっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を透過する透過性を有している。印刷層(あるいは塗装層)12には、インキまたは塗料により所望のデザインが施されている。透明フィルム1bは、無色で、下地を透過する透過性を有している。この透明フィルム1bは、樹脂などの成形可能な材質よりなっており、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0051】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0052】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bと、印刷層(あるいは塗装層)12とめっき層(あるいは蒸着層)2との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0053】
本実施の形態では、塗膜よりも耐摩耗性の高い高分子化合物などよりなる透明フィルム1bが設けられている。このため、透明フィルム1bの剥がれを防止でき、下地の露出による色むらの発生を防止することができる。
【0054】
また、印刷層(あるいは塗装層)12が用いられているため、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属色を反映させながらもデザインの自由度を高めることができる。
【0055】
また、透明フィルム1bと印刷層(あるいは塗装層)12とが透過性を有する材質よりなるため、めっき層(あるいは蒸着層)2の金属調デザインを反映でき、高級感を演出することができる。
【0056】
(実施の形態4)
図10を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態3の構成と比較して、保護フィルム層11が追加されている点において異なる。この保護フィルム層11は、樹脂成形部3とめっき層(あるいは蒸着層)2との間に設けられており、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0057】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態3とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bと印刷層12とめっき層2と保護フィルム層11との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0059】
本実施の形態においては、樹脂成形部3とめっき層2との間に保護フィルム層11が設けられているため、樹脂成形部3形成のための射出成形時にめっき層2へ熱が伝達されるのを抑制でき、めっき層(あるいは蒸着層)2の熱による変色などを防止することができる。
【0060】
なお、保護フィルム層11の代わりに印刷層や塗装層が設けられても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0061】
(実施の形態5)
図11を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態1の構成と比較して、樹脂成形部3上にめっき調印刷層12aと、透明フィルム1bとが設けられている点において異なる。めっき調印刷層12aはめっき調を有しているため、金属色を呈する。透明フィルム1bは、無色で、めっき調印刷層12aの金属色を透過する透過性を有している。この透明フィルム1bは、樹脂などの成形可能な材質よりなっており、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0062】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bの裏面にめっき調印刷層12aが設けられる。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0064】
本実施の形態においては、めっき調印刷層12aを設けたことにより、めっき層(あるいは蒸着層)を設けることなく、金属調のデザインを実現することができる。まためっき調印刷層12aでは、印刷により各種のめっき調を表現することができるため、デザインの自由度を高めることができる。
【0065】
(実施の形態6)
図12を参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態5の構成と比較して、保護フィルム層11が追加されている点において異なる。この保護フィルム層11は、樹脂成形部3とめっき調印刷層12aとの間に設けられ、たとえばPET、PC、ウレタンなどの高分子化合物またはこれらの複合物よりなっている。
【0066】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態5とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
本実施の形態の製造方法では、まず透明フィルム1bとめっき調印刷層12aと保護フィルム層11との積層構造が準備される。この後、図4および図5に示すように略湾曲形状の成形後に射出成形が行なわれてもよく、また図6および図7に示すように略湾曲形状の成形と同時に射出成形が行なわれてもよい。
【0068】
本実施の形態では、樹脂成形部3とめっき調印刷層12aとの間に保護フィルム層11が設けられているため、樹脂成形部3形成のための射出成形時にめっき調印刷層12aへ熱が伝達されるのを抑制することができる。
【0069】
なお、保護フィルム層11の代わりに印刷層や塗装層が設けられても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0070】
(実施の形態7)
図13と図14とを参照して、本実施の形態の押し釦スイッチは、実施の形態1の構成と比較して、樹脂成形部3にアクチュエーター部5が一体的に設けられている点、およびベースラバーが省略されている点において異なる。このため、本実施の形態においては、樹脂成形部3に一体的に設けられたアクチュエーター部5によりドーム状の金属板8が押圧されてスイッチ操作が行なわれることとなる。
【0071】
なお、これ以外の構成については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0072】
本実施の形態の製造方法においては、有色フィルム1aとめっき層2との積層構造が準備され、図3に示す略湾曲形状の成形が施された後、図4に示す射出成形工程にて樹脂成形部3がアクチュエーター部5と一体的に形成される。
【0073】
本実施の形態においては、樹脂成形部3にアクチュエーター部5が一体的に設けられているため、ベースラバーが不要となり、部品点数を少なくすることができる。
【0074】
なお、実施の形態1〜7においては、フィルム1a、1bとめっき層2(またはめっき調印刷層12a)などとの積層構造を準備した後に釦形状の成形を行なっているが、フィルム1a、1b単層で釦形状に成形した後にめっき層2(またはめっき調印刷層12a)や保護フィルム層11や印刷層12がそのフィルム1a、1b形状に沿って形成されてもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように本発明に係る押し釦スイッチは、金属調による高級感の演出、デザインの自由度の向上、および色むらの防止が必要な押し釦スイッチに有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の樹脂成形部の下側から見た図である。
【図3】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの製造方法の第1工程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの製造方法の第2工程を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの製造方法の第3工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの他の製造方法の第1工程を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における押し釦スイッチの他の製造方法の第2工程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態5における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態6における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態7における押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【図14】図13の樹脂成形部の下側から見た図である。
【図15】従来の押し釦スイッチの構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1a 有色フィルム、1b 透明フィルム、2 メッキ層(あるいは蒸着層)、3 樹脂成形部、3a 中空部、4 ベースラバー、5 アクチュエーター(突起部)、6 接着層、7 基板、8 金属板、10 筐体、11 保護フィルム層、12 印刷層、12a めっき調印刷層、21,23〜26 型、24a,26a ゲート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチであって、
前記釦の基体と、
前記基体表面上に位置し、かつ少なくとも表面が金属色を呈する下地層と、
前記下地層の表面上に位置し、かつ前記下地層とともに前記基体の表面に沿って前記基体を覆うように成形されており、かつ前記下地層の金属色を透過するフィルムとを備え、
前記下地層が前記フィルムの裏面側に金属を蒸着して形成された層である、押し釦スイッチ。
【請求項2】
釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチの製造方法であって、
透過性のシート状のフィルムを釦形状に成形し、かつ、表面が金属色を呈する下地層と前記フィルムとが積層された積層フィルムの釦形状に沿って前記積層フィルムに固定された基体を形成する工程を備え、
前記下地層は前記フィルムの裏面に金属を蒸着することで形成される、押し釦スイッチの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムを釦形状に成形した後に、前記基体を形成する、請求項2記載の押し釦スイッチの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムを釦形状に成形すると同時に前記基体を形成する、請求項2記載の押し釦スイッチの製造方法。
【請求項1】
釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチであって、
前記釦の基体と、
前記基体表面上に位置し、かつ少なくとも表面が金属色を呈する下地層と、
前記下地層の表面上に位置し、かつ前記下地層とともに前記基体の表面に沿って前記基体を覆うように成形されており、かつ前記下地層の金属色を透過するフィルムとを備え、
前記下地層が前記フィルムの裏面側に金属を蒸着して形成された層である、押し釦スイッチ。
【請求項2】
釦を押すことによってスイッチング操作をする押し釦スイッチの製造方法であって、
透過性のシート状のフィルムを釦形状に成形し、かつ、表面が金属色を呈する下地層と前記フィルムとが積層された積層フィルムの釦形状に沿って前記積層フィルムに固定された基体を形成する工程を備え、
前記下地層は前記フィルムの裏面に金属を蒸着することで形成される、押し釦スイッチの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムを釦形状に成形した後に、前記基体を形成する、請求項2記載の押し釦スイッチの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムを釦形状に成形すると同時に前記基体を形成する、請求項2記載の押し釦スイッチの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−294473(P2007−294473A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167905(P2007−167905)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【分割の表示】特願2001−520430(P2001−520430)の分割
【原出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【分割の表示】特願2001−520430(P2001−520430)の分割
【原出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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