説明

拡張成形方法およびトグル式型締装置

【課題】装置の温度変化による熱膨張や熱収縮による影響を受けることがなく、寸法精度の高い発泡成形品を得る拡張成形方法を提供する。
【解決手段】トグル式型締装置(1)において、タイバー(6)に型締力センサ(29)を設け、型締工程において型締力を監視する。金型(15、16)がタッチすると型締力が検出されるので、このときの可動盤(8)の位置を基準型盤位置とする。型締された金型(15、16)内のキャビティ(C)に発泡剤が添加された溶融樹脂を射出後、可動盤(8)を基準型盤位置から相対的な移動量だけ駆動して所定の型開量だけ型開する。溶融樹脂内で気泡が発泡して発泡成形品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤が添加された溶融樹脂を型締された金型内のキャビティに射出し、金型を所定量だけ型開して前記キャビティを拡張し、それによって樹脂内で微細な気泡を発泡させて所望の寸法の発泡成形品を得る拡張成形方法、およびトグル式型締装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に微細な気泡を大量に含む発泡成形品は、軽量であるだけでなく発泡剤、発泡率によっては十分な強度を有するという優れた特徴を有するので色々な分野で利用されている。例えば自動車においては、ダッシュボード等の内装部品がこのような発泡成形品から成形されており、燃費向上を目的とした車両の軽量化および材料費削減によるコスト低減に不可欠なものとなっている。このような発泡成形品は色々な成形法で成形することができ、コアバック成形法、すなわち拡張成形法も周知である。具体的には次のように成形する。発泡剤が添加された溶融樹脂、例えば超臨界状態の不活性ガスが添加された溶融樹脂を、型締された金型内のキャビティに射出・充填する。キャビティ内において金型に接している溶融樹脂の表面にスキン層が形成されたら金型を所定量だけ型開して、キャビティを拡張する。そうするとキャビティの容積が増加して溶融樹脂内で微細な気泡が発泡し、成形品の体積も増加する。冷却固化を待って型開し、発泡成形品を得る。気泡は、スキン層が形成された後に樹脂内で発泡するので、表面に気泡による傷は形成され難く優れた成形品を得ることができる。拡張成形法は型開された状態で製品の形状が決定されるが、型開量を正確に制御することは難しいので、従来、発泡成形品は要求される寸法精度が比較的緩やかな製品に適用されてきた。しかしながら、発泡成形品は十分な強度を有しながら軽量化およびコスト削減を図ることができるので、高い寸法精度が要求される製品についても適用が求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−254607号公報
【0004】
特許文献1には、トグル式型締め装置のトグル機構における、いわゆるガタによって生じる型盤の開き量のずれの影響を考慮して、型盤を正確に制御して所望の型開量にして、寸法精度の高い発泡成形品を得る拡張成形方法が記載されている。特許文献1には次のように記載されている。すなわち、トグル機構を構成しているリンクは、型盤のクレビスにピンを介して接続されているが、リンクに明けられているピン穴の内径はピンの外径よりもわずかに大きく形成されているので、ピン穴とピンとの間にはわずかな隙間が存在する。従って、拡張成形法において型締された金型に溶融樹脂を射出した後に樹脂中に気泡を発泡させるために型開するとき、この隙間によって意図した型開量よりも型盤が開いてしまうことになる。そこで特許文献1に記載の拡張成形方法においては、この隙間を考慮して型開量を制御するようにしている。従って比較的高い寸法精度の発泡成形品を得ることができる。なお、特許文献1に記載の拡張方法においては、型締状態から型開きするときの型締力が零になるクロスヘッド位置が正確に分からなければならない。このクロスヘッド位置を基準にしてクロスヘッドが正確に制御されるからである。この基準となるクロスヘッド位置は、金型が型締装置に取り付けられたときに最初に一度だけ測定され、金型を型締してゆっくりと型盤を開き、型締力センサによって検出される型締力が零になったときのクロスヘッド位置が読み取られる。そして、クロスヘッド位置は射出成形機を制御する制御装置のメモリに保存され、以後の拡張成形において利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の拡張成形方法によっても、トグル機構のガタを考慮して型盤を開くので、ガタの影響を受けずに比較的正確に型開量を制御することができる。従って、比較的寸法精度の高い発泡成形品を得ることができる。しかしながら特許文献1に記載の拡張成形方法においては改良すべき点も見受けられる。具体的には、基準となるクロスヘッド位置は金型が型締装置に取り付けられたときの1回だけしか測定されないので、射出成形中に金型や型締装置の温度が変化すると、熱膨張したり熱収縮してクロスヘッド位置にずれが生じてしまう。そうすると、拡張成形のときに正確に型開量を制御することができず、成形品の寸法精度が十分に高くならない。仮に、基準となるクロスヘッド位置を頻繁に測定するようにすれば、熱膨張や熱収縮による問題を解決できそうであるが別の問題がある。すなわち、基準となるクロスヘッド位置を頻繁に測定するためには拡張成形中にも測定する必要があるが、金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂は、内部で気泡が発泡して膨張し所定の力で金型を押すので、正確に型締力が零になるクロスヘッド位置を検出することができない。また、成形方法によっては型開した後にも射出装置から若干射出を継続することがあり、この場合には型締力が零になるクロスヘッド位置の測定は不可能である。つまり、特許文献1に記載の方法を採る場合には、基準となるクロスヘッド位置を頻繁に測定することはできない。そうすると、金型や型締装置の温度の変化による熱膨張や熱収縮による寸法精度の低下の問題を回避することができない。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した拡張成形方法、および型締装置を提供することを目的としており、具体的には、金型や型盤装置の温度変化による熱膨張や熱収縮による影響を受けることがなく、正確に型開量を制御することができ、それによって寸法精度の高い発泡成形品を得ることができる拡張成形方法、およびそのような拡張成形方法を実施することができる型盤装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、発泡剤が添加された溶融樹脂を型締された金型内のキャビティに射出して、金型を所定の型開量だけ型開してキャビティを拡張し、それによって溶融樹脂内で気泡を発泡させて発泡成形品を得る、いわゆる拡張成形方法を実施するトグル式型締装置において、固定側金型と可動側金型を型締するときには、毎回タイバーに設けられている型締力センサによって型締力を監視して、金型がタッチするタイミングを検出する。そして、このときの可動盤の位置を基準型盤位置とする。射出後に金型を所定量だけ開く拡張工程においては、可動盤を基準型盤位置から相対的な移動量だけ駆動するようにし、それによって型開量が一定になるようにする。
【0008】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、トグル式型締装置を駆動して該トグル式型締装置の固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とを型締する型締工程と、型締された前記固定側金型と前記可動側金型とによって構成されているキャビティに発泡剤が添加された溶融樹脂を射出充填する射出工程と、前記可動側金型を所定の型開量だけ型開して前記キャビティを拡張して、樹脂内で発泡させる拡張工程と、から発泡成形品を得る成形方法であって、前記型締工程には、前記トグル式型締装置の構成部材のタイバーに設けられている型締力センサによって型締力を監視して、前記固定側金型に前記可動側金型がタッチして型締力が発生するタイミングを検出し、そのときの可動盤の位置を基準型盤位置とする基準型盤位置検出工程も含まれており、前記拡張工程は、前記基準型盤位置から前記可動盤を相対的な移動量だけ駆動するように構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記可動盤位置は、前記可動盤に関連して設けられ前記可動盤の位置を検出できるようになっている型盤位置センサによって測定するように構成される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、固定側金型が取り付けられる固定盤と、可動側金型が取り付けられる可動盤と、型締ハウジングと、前記可動盤を貫通して前記固定盤と前記型締ハウジングとを連結している複数本のタイバーと、前記可動盤と前記型締ハウジングとの間に設けられているトグル機構とを備え、所定のコントローラからの指令によって前記トグル機構が駆動されて、型締および型開されるようになっている射出成形機用のトグル式型締装置であって、前記タイバーには型締力を検出する型締力センサが設けられ、前記固定側金型と前記可動側金型が型締される度に型締力が監視されて、前記固定側金型と前記可動側金型がタッチするタイミングが検出され、そのときの前記可動盤の位置が基準型盤位置として前記コントローラに保存されるようになっており、前記可動盤が所定の型開量だけ型開されるとき、前記可動盤が前記基準型盤位置から相対的な移動量だけ駆動されるように構成される。
さらには、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のトグル式型締装置において、前記トグル式型締装置が設置されるベッド上には前記可動盤に関連して型盤位置センサが設けられ、前記可動盤の位置が検出されるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によると、発泡剤が添加された溶融樹脂を型締された金型内のキャビティに射出し、金型を所定量だけ型開して前記キャビティを拡張し、それによって樹脂内で微細な気泡を発泡させて所望の寸法の発泡成形品を得る拡張成形方法において、金型を型締めする型締工程には、タイバーに設けられている型締力センサによって型締力を監視して、金型がタッチして型締力が発生するタイミングを検出する。そして、そのときの可動盤位置を基準型盤位置とする基準型盤位置検出工程も含まれているので、毎回、基準型盤位置が検出されることになる。そして、金型を所定量だけ型開する拡張工程は、基準型盤位置から可動盤を相対的な移動量だけ駆動するように構成されているので、トグル式型締装置や金型の温度が変化して熱膨張や熱収縮しても、型開量は一定に維持されることになる。すなわち、寸法精度の高い発泡成形品を得ることができる。そして、特許文献1においては、トグル機構のガタが問題になっていたが、そもそも溶融樹脂内で気泡が発泡して可動側金型が型開方向に常時押されることになるので、本発明の方法を実施して基準型盤位置から可動盤を所定量だけ型開するときにも、ガタによって可動盤が固定盤方向にずれることがない。すなわち、ガタによる可動盤のずれは発生しないので、精度良く型開量を一定にすることができる。また、他の発明によると、可動盤位置は、可動盤に関連して設けられ可動盤の位置を検出できるようになっている型盤位置センサによって測定するように構成されているので、可動盤の位置を容易にかつ正確に測定できることが保障されている。つまり、寸法精度の高い発泡成形品を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るトグル式型締装置を備えた射出成形機を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るトグル式型締装置において、可動盤位置と型締力との関係を示すグラフである。
【図3】本実施の形態に係るトグル式型締装置を備えた射出成形機によって拡張成形を実施するときに、関連して動作するトグル式型締装置の可動盤と、射出装置のスクリュの、それぞれの位置の変化を示すグラフである。
【図4】本実施の形態に係るトグル式型締装置を備えた射出成形機における拡張成形の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る射出成形機SMは、図1に示されているように、トグル式型締装置1と射出装置3とから構成されている。本実施の形態に係るトグル式型締装置1も、従来のトグル式型締装置と略同様に構成されており、ベット2上に固定的に設けられている固定盤4、ベット2上に軸方向に移動自在に設けらている型締ハウジング5、固定盤4と型締ハウジング5との間に設けられている4本のタイバー6、6、…、これらのタイバー6、6、…が挿通され、軸方向に移動可能な可動盤8、型締ハウジング5と可動盤8との間に設けられているトグル機構10、トグル機構10を駆動する、例えば、サーボモータ11、プーリ12、ボールネジ13などからなる型開閉用アクチュエータ等から概略構成されている。このように構成されている固定盤4には固定側金型15が、そして可動盤8には可動側金型16がそれぞれ取り付けられている。
【0013】
トグル機構10は、短リンク18、18、長リンク19、19、クロスリンク20、20、クロスヘッド21等から構成されている。短リンク18、18の一方の端部はピン24、24により型締ハウジング5に設けられているクレビス23、23に、長リンク19、19の一方の端部はピン26、26により可動盤8に設けられているクレビス27、27に、それぞれ枢着されている。そして、短リンク18、18の他方の端部と、長リンク19、19の他方の端部は、ピン28、28によって回動自在に連結されている。クロスヘッド21にはボールナットが設けられ、ボールネジ13に螺合しており、クロスヘッド21と短リンク18、18とは、クロスリンク20、20と所定のピンによって回動自在に連結されている。従って型開閉用アクチュエータ、すなわちサーボモータ11を駆動してプーリ12を介してボールネジ13を回転すると、クロスヘッド21が図1において左右方向に駆動されてトグル機構10が駆動される。そうすると、可動盤8が固定盤4の方向に駆動されて、固定側金型15と可動側金型16が型締される。あるいは可動盤8が固定盤4から離れる方向に駆動されて固定側金型15と可動側金型16が型開される。
【0014】
本実施の形態に係るトグル式型締装置1においては、1本のタイバー6に、型締力を検出する型締力センサ29が設けられ、型締力センサ29は信号線31を介してコントローラ32に接続されている。型締力センサ29は、具体的には歪みセンサからなり、型締時に生じるタイバー6の歪みが抵抗の変化として検出されて、コントローラ32にて型締力に変換されている。
【0015】
ベッド2には、固定のガイド35と該ガイド35をスライドするスライダ36とからなる型盤位置センサ34が設けられ、スライダ36が可動盤8に固定されている。そして、ガイド35上におけるスライダ36の位置が検出されるようになっている。従って、スライダ36の位置を検出することによって、可動盤8の位置が検出できる。スライダ36の位置は、アブソリュートエンコーダ、インクリメンタルエンコーダ等の周知のエンコーダによって精度良く検出することができる。型盤位置センサ34も、信号線38を介してコントローラ32に接続されている。このコントローラ32は、信号線39を介してサーボモータ11に信号を送信できるようになっており、サーボモータ11はコントローラ32によって制御されるようになっている。
【0016】
射出装置3は、周知であり詳しくは説明しないが、シリンダ41、シリンダ41内に軸方向と回転方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、シリンダ41の前方に設けられている射出ノズル42等から構成されている。そして、シリンダ41の外周面にはシリンダ41を加熱するヒータが巻かれている。図1には、ヒータ、スクリュについては示されていない。固定盤4には射出ノズル挿入穴44が明けられており、射出装置3が固定盤4の背面から挿入され、ノズル42が固定側金型15のスプルにタッチしている。射出装置3も、信号線45によってコントローラ32に接続されており、コントローラ32からの指令で制御されるようになっている。
【0017】
本実施の形態に係る射出成形機SMによって、拡張成形して発泡成形品を得る方法を図2、図3、図4を参照しながら説明する。
射出装置3において次のようにして計量工程を実施する。ヒータでシリンダ41を加熱してスクリュを回転しながら樹脂材料をシリンダ41に供給する。そうすると、樹脂材料はヒータによる熱とスクリュの回転による摩擦熱によって溶融・混練されてシリンダ41の前方に送られ、スクリュは後退する。シリンダ41の前方に所定量の溶融樹脂が計量されたらスクリュの回転を低速にする。超臨界状態の二酸化炭素からなる発泡剤をシリンダ41に注入して、溶融樹脂と混練する。計量工程を終了する。なお、図4のフローチャートには、最初に実施されるこの計量工程は示されていない。
【0018】
トグル式型締装置1において、次のようにして型締工程を実施する。コントローラ32からの指令によってサーボモータ11を駆動する。そうすると、プーリ12、ボールネジ13を介してクロスヘッド21が駆動される。可動盤8が図1において右方向に駆動され、型閉する。固定側金型15と可動側金型16がタッチするまでは型締力は発生しないので、型締力センサ29で検出される型締力は実質的に零になっているが、金型15、16がタッチした瞬間に型締力が検出される。金型15、16がタッチしたタイミングにおける可動盤8の位置を型盤位置センサ34で検出し、これを基準型盤位置としてコントローラ32に入力する。実際には、型締力センサ29で検出される型締力にはノイズが乗っているので、金型15、16がタッチしていない状態でも、微小な型締力が検出されてしまう。そこで型締力が小さな型締力である所定のしきい値に達したときに、金型15、16がタッチしたものと見なす。図2のグラフには、可動盤8の位置と型締力センサで検出される型締力の関係が示されており、型締力がしきい値に達したタイミングにおける可動盤8の位置を基準型盤位置としていることが示されている。金型15、16がタッチした後も型締力が設定型締力に達するまで可動盤8を駆動する。図3のグラフには、可動盤8が基準型盤位置47を越えて型締完了位置まで駆動されている様子が示されている。サーボモータ11を停止して型締工程を完了する。
【0019】
型締工程完了後、所定時間だけ射出待機した後に、射出装置3において射出保圧工程を開始する。射出装置3のスクリュを軸方向に駆動する。そうすると、発泡剤が添加された溶融樹脂が射出されて、固定側金型15と可動側金型16によって構成されているキャビティCに溶融樹脂が充填される。このとき、金型15、16に接している溶融樹脂の表面は冷却・固化してスキン層が形成される。
【0020】
スクリュが所定の位置に到達したことをコントローラ32が検出したら、トグル式型締装置1において次のようにして拡張工程を開始する。コントローラ32からの指令によってサーボモータ11を駆動して、可動盤8を図1において左方向に所定量だけ駆動して、固定側金型15と可動側金型16が、予めコントローラ32に設定されている設定型開量だけ開く様にする。具体的には、可動盤8を基準型盤位置から相対的に設定型開量だけ駆動する。そうすると、型締工程において決定された基準型盤位置に基づいて型開されるので、トグル式型締装置1や金型15、16の温度変化による熱膨張や熱収縮の影響を受けずに、型開量は一定になることが保障される。設定型開量だけ型開した位置でサーボモータ11を停止して、拡張保持工程に入る。金型15、16が型開されるとキャビティCの容量が増加して、溶融樹脂内で発泡剤が発泡する。
【0021】
トグル式型締装置1において拡張保持工程に移行した後も、図3のグラフに示されているように、射出装置3においてはスクリュを保圧完了位置まで駆動する。所定時間スクリュ位置を維持する計量待機を経た後に、射出装置3において前記したように計量工程を実施し、次の成形サイクルに備える。すなわち、ヒータでシリンダ41を加熱してスクリュを回転しながら樹脂材料をシリンダ41に供給する。そうすると、樹脂材料はヒータによる熱とスクリュの回転による摩擦熱によって溶融・混練されてシリンダ41の前方に送られ、スクリュは計量完了位置まで後退する。シリンダ41の前方に所定量の溶融樹脂が計量されたらスクリュの回転を低速にする。超臨界状態の二酸化炭素からなる発泡剤をシリンダ41に注入して、溶融樹脂と混練する。計量工程を終了する。
【0022】
トグル式型締装置1において拡張保持工程の後半は、キャビティ内に射出された溶融樹脂が冷却固化される冷却工程にもなっている。溶融樹脂が冷却固化したら、コントローラ32からの指令によってサーボモータ11を駆動して可動盤8を型開完了位置まで駆動する。型開された後、図1には示されていないが、エジェクタピンによって成形品を突き出し、成形品を取り出す。以下、同様にして成形する。
【0023】
本実施の形態に係る射出成形機SMは、色々な変形が可能である。例えば、可動盤8の位置は、型盤位置センサ34によって直接検出されるように説明されているが、クロスヘッド21に関連して位置センサが設けられ、クロスヘッド21の位置を検出して、間接的に可動盤8の位置を検出するようにしてもよい。または、サーボモータ11の回転角を検出して、間接的に可動盤8の位置を検出するようにしてもよい。また、溶融樹脂に添加される発泡剤は、超臨界状態の二酸化炭素であるように説明されているが、窒素や他の不活性ガスでもよく、さらには化学的発泡剤であってもよい。そして、本実施の形態の説明においては、トグル式型締装置1がベッド2上に寝かせられているタイプの射出成形機によって説明されているが、竪型射出成形機であっても同様に実施することができる。また、成形方法についても変形が可能である。例えば、上記した説明においては、拡張工程を開始した後にも射出装置3においてスクリュを駆動するように説明されており、所定の型開量だけ型開した後にも所定量の溶融樹脂が射出されているが、射出が完了した後に拡張工程を開始するようにしてもよい。また、拡張工程において型開は1回しか実施されていないが、複数回にわたって段階的に型開されるようにして、キャビティの容量が少しずつ増加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
SM 射出成形機 1 トグル式型締装置
2 ベット 3 射出装置
4 固定盤 5 型締ハウジング
6 タイバー 8 可動盤
10 トグル機構 11 サーボモータ
15 固定側金型 16 可動側金型
29 型締力センサ 32 コントローラ
34 型盤位置センサ
C キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トグル式型締装置を駆動して該トグル式型締装置の固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とを型締する型締工程と、型締された前記固定側金型と前記可動側金型とによって構成されているキャビティに発泡剤が添加された溶融樹脂を射出充填する射出工程と、前記可動側金型を所定の型開量だけ型開して前記キャビティを拡張して、樹脂内で発泡させる拡張工程と、から発泡成形品を得る成形方法であって、
前記型締工程には、前記トグル式型締装置の構成部材のタイバーに設けられている型締力センサによって型締力を監視して、前記固定側金型に前記可動側金型がタッチして型締力が発生するタイミングを検出し、そのときの可動盤の位置を基準型盤位置とする基準型盤位置検出工程も含まれており、
前記拡張工程は、前記基準型盤位置から前記可動盤を相対的な移動量だけ駆動することを特徴とする拡張成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記可動盤位置は、前記可動盤に関連して設けられ前記可動盤の位置を検出できるようになっている型盤位置センサによって測定することを特徴とする拡張成形方法。
【請求項3】
固定側金型が取り付けられる固定盤と、可動側金型が取り付けられる可動盤と、型締ハウジングと、前記可動盤を貫通して前記固定盤と前記型締ハウジングとを連結している複数本のタイバーと、前記可動盤と前記型締ハウジングとの間に設けられているトグル機構とを備え、所定のコントローラからの指令によって前記トグル機構が駆動されて、型締および型開されるようになっている射出成形機用のトグル式型締装置であって、
前記タイバーには型締力を検出する型締力センサが設けられ、前記固定側金型と前記可動側金型が型締される度に型締力が監視されて、前記固定側金型と前記可動側金型がタッチするタイミングが検出され、そのときの前記可動盤の位置が基準型盤位置として前記コントローラに保存されるようになっており、
前記可動盤が所定の型開量だけ型開されるとき、前記可動盤が前記基準型盤位置から相対的な移動量だけ駆動されることを特徴とするトグル式型締装置。
【請求項4】
請求項3に記載のトグル式型締装置において、前記トグル式型締装置が設置されるベッド上には前記可動盤に関連して型盤位置センサが設けられ、前記可動盤の位置が検出されるようになっていることを特徴とするトグル式型締装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−35441(P2012−35441A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175495(P2010−175495)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】