説明

持続放出オンダンセトロン組成物を用いたPDNV及びPONVの処置方法

本発明の持続放出オンダンセトロン組成物は、術後悪心・嘔吐(PONV)及び/又は退院後悪心・嘔吐(PDNV)の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年7月6日付で提出された米国仮特許出願第61/223,218号及び2010年1月15日付で提出された米国非仮特許出願第12/688,493号の利益を主張するものであり、これらの出願の全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
手術後の術後悪心・嘔吐(PONV)及び外来手術後の退院後悪心・嘔吐(PDNV)は一般的な術後合併症である。PONV及びPDNVはそれぞれ別個の臨床徴候と認識されている(例えば非特許文献1及び2参照)。例えば、手術直後の悪心及び嘔吐(PONV)のリスクは退院後の悪心及び嘔吐(PDNV)のリスクとは異なることが示されており、PONVとPDNVの危険因子は異なる。更に、手術直後の期間(PONV)と退院後の期間(PDNV)における従来の制吐療法の有効性も異なることが示されている。入院患者手術後のPONVの全体的発生頻度はおよそ20〜30%と推定される。PONVは、単一の事象により起こるものではなく、80%までの患者で術後最初の2時間以内に起こる一般的な愁訴である。
【0003】
PONVは、通常、手術直後等の術後に起こる悪心及び嘔吐を指す。PDNVは、術後の悪心及び嘔吐を指すが、特に、麻酔の直接の効果が切れて患者が比較的歩行可能になった後、患者が退院した後に起こる悪心及び嘔吐を指す。更に、PDNVは病院施設の外で起こるため、従来の静脈内制吐療法が容易に利用可能でない状況であり、悪心及び嘔吐の制御が施設内ほど容易でない。
【0004】
悪心及び嘔吐の化学受容器引金帯(chemical triggering zone:CTZ)は脳の第四脳室底の最後野に位置し、脳圧上昇が脳室の圧力上昇を介して嘔吐を引き起こすと考えられている。CTZは嘔吐刺激に対する感受性が非常に高い。セロトニン、アセチルコリン、ドーパミン、ムスカリン、ニューロキニン−1、ヒスタミン、オピオイド、及び5−HTを含む種々の種類の神経伝達物質及び受容体が悪心及び嘔吐に関係づけられている。前庭−蝸牛神経、舌咽神経、又は迷走神経の刺激も関与し得る。したがって、PONV及びPDNVの危険因子は複雑であり、公知の制吐薬はPONV及びPDNVの処置の有効性が大きく異なる。
【0005】
制吐薬は通常、すぐに予防効果が得られるように手術中(例えば手術の最終段階)に静脈内投与され、その後は、患者が悪心及び/又は嘔吐を経験しない限り又は経験するまで、あまり投与されない。場合によっては、即放性経口制吐薬が投与される。経口製剤は、例えば初回通過代謝のために、経口製剤の方がバイオアベイラビリティが低いことが多いという点で静脈内製剤と異なる。
【0006】
PONV及びPDNVは、患者に不快感(軽度から重度)を与え得るだけでなく、デリケートな手術部位へのダメージ、患者が麻酔後回復室(post anesthesia care unit)に滞在する時間の延長、経口薬の投与又は飲食物の摂取の妨げ又は遅れ、究極的には計画外の再入院又は外来手術後の入院等の大きな臨床的結果も招き得、その結果、医療費を増大させる(非特許文献3)。
【0007】
外来手術(例えば婦人科外来手術)後、PDNVのリスクが中程度〜高度の患者の約30%が退院後に悪心及び嘔吐を経験し、PDNVを最終的に経験する患者の約36%は退院前には悪心又は嘔吐を全く経験しない(非特許文献4)ため、退院前に制吐薬で処置されにくい。PDNVの事象はPONVと同程度には詳しく研究されていないが、一部の患者は5日目までPDNVを経験する(非特許文献5〜7)。
【0008】
オンダンセトロン等の5−HT受容体拮抗薬は、悪心及び嘔吐に対して非常に特異性が高く且つ選択的であり、手術前に経口投与された時、手術の終りに静脈内(IV)投与された時、又は手術後のPONVの早い時期(すなわち0〜2時間)にIV投与された時に最も効果的であることが知られている。オンダンセトロンの推奨IV投与量は、成人では4〜8mg IV、小児では50〜100μg/kgである。
【0009】
実際問題として、退院後にIV制吐薬を投与することは困難であるか不便である。経口投与がIV投与よりも便利であり、費用が安く、安全である。したがって、手術後少なくとも最初の24時間におけるPONV又はPDNVの防止に効果的な経口投与制吐薬は有益である。しかし、PONV又はPDNVの処置又は防止について、経口投与されたオンダンセトロンの有効性はせいぜい不確定である。一部の研究は、経口投与されたオンダンセトロンは手術後24時間における悪心及び嘔吐の制御向上に無効であることを示している(非特許文献8)。退院後24時間を超える期間について経口送達オンダンセトロンの使用を評価したその他の研究では結果が一貫していない。例えば非特許文献9参照。非特許文献9では、術後24時間及び72時間にわたり、経口投与されたオンダンセトロンとプラセボの間に差は見られなかった(非特許文献9)。一方、非特許文献10は、プラセボと比べて、経口投与されたオンダンセトロンが退院後の悪心及び嘔吐を低減することを見出している。更に別の研究では、手術後24時間の期間に経口投与されたオンダンセトロンは効果を有さないが、手術後24時間の期間の後に投与されたオンダンセトロンのみ有効であることが示された(非特許文献2)。
【0010】
オンダンセトロンは現在、即放性錠剤(従来の錠剤又は経口崩壊錠(ODT))としてのみ利用可能である。即放性剤形では、オンダンセトロンのインビボ半減期が比較的短いため、鋭いピーク及びトラフを特徴とする血漿中オンダンセトロン濃度となる。そのため、24時間にわたり有効であるためには、この製剤は定期的に投与する必要がある。しかし、この種の薬物動態プロファイルは、多くの場合、理想的治療範囲の外側の血漿中薬物濃度サイクルとして交互に副作用増加期及び無効期を伴う。この血漿中薬物レベルサイクルは、症状(すなわち悪心及び嘔吐)のブレークスルーを招き得る。このため、患者間での治療効果及び反復投与による治療効果の両方が予測不可能となる。反復投与スケジュールは更に、悪心及び嘔吐を経験して苦しんでいる且つ嚥下困難であり得る患者にとって別の問題を生じる。これらの要因に、反復投与スケジュールに関連する投与スケジュール違反が加わる。これらの要因は全て、制吐薬の予防的経口投与の有効性を低減させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Tong et al., "Consensus Guidelines for Managing Postoperative Nausea and Vomiting", Anest. Analg. 2003, 97, pp. 62-71
【非特許文献2】Pan et al., "Antiemetic Prophylaxis for Postdischarge Nausea and Vomiting and Impact on Functional Quality of Living during Recovery in Patients with High Emetic Risks: A Prospective, Randomized, Double-Blind Comparison of Two Prophylactic Antiemetic Regimens", Ambulatory Anesthesiology, vol. 107, No. 2, pp. 429-438, August 2008
【非特許文献3】Kovac, AL. Drugs; 59(2): 213-243
【非特許文献4】Anesthesiology 2002; 96: 994-1003
【非特許文献5】Caroll NV, et al. Ansesth. Analg. 1995; 80(5):903-909
【非特許文献6】Pfisterer M, et al. Ambul Surg. 2001; 9(1): 13-18
【非特許文献7】Odom-Forren J and Moser DK. J. Ambul. Surg. 2005;12: 99-105
【非特許文献8】Kovac AL, O'Connor TA, Pearman MH, Kekoler LJ, Edmondson D, Baughman VL, Angel JJ, Campbell C, Jense HG, Mingus ML, Shahvari MBG, Creed MR. Efficacy of repeat intravenous dosing of ondansetron in controlling postoperative nausea and vomiting: a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial. Journal of Clinical Anesthesia 1999; 11(6):453-459
【非特許文献9】Thagaard KS, Steine S, Raeder J. Ondansetron disintegrating tablets of 8 mg twice a day for 3 days did not reduce the incidence of nausea and vomiting after laparoscopic surgery. Eur J Anaesth 2003; 20:153-157
【非特許文献10】Gan TJ, Randall F, Reeves J, Ondansetron Orally Disintegrating Tablet Versus Placebo for the Prevention of Postdischarge Nausea and Vomiting After Ambulatory Surgery Anesth Analg 2002; 94:1199-1200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、入院患者手術又は外来手術後のPONV/PDNVのリスクが中程度〜高度の患者のための、制吐薬製剤を1日1回用いるPONV及び/又はPDNVを処置する方法に対する満たされていないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む少なくとも1つの持続放出製剤をそれが必要な手術患者に手術の前及び/又は後に経口投与することを含む、PONV又はPDNVを処置又は防止する方法に関する。
【0014】
一実施形態では、本方法の持続放出製剤は、TPR粒子及びIR粒子を含み;TPR粒子はそれぞれ、TPR層でコーティングされたコアを含み;コアは、選択的セロトニン5−HT拮抗薬及び薬学的に許容される有機酸を含み、選択的セロトニン5−HT拮抗薬及び薬学的に許容される有機酸は、SR層によって互いに隔てられており;TPR層は、非水溶性ポリマー及び腸溶性ポリマーを含み;SR層は、非水溶性ポリマーを含み;IR粒子はそれぞれ、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含み、米国薬局方の溶解方法(装置2−50RPMでパドル、0.1N HCl、37℃)を用いて溶解試験した場合に約5分で選択的セロトニン5−HT拮抗薬の少なくとも約80wt%を放出する。
【0015】
特定の実施形態では、本方法の持続放出製剤は、TPR粒子及びIR粒子を含み;TPR粒子はそれぞれ、不活性ビーズと、不活性ビーズ上に設けられた、フマル酸等の薬学的に許容される有機酸を含む酸層と、酸層の上に設けられたSR層と、SR層の上に設けられた薬物層(例えばエチルセルロースを含み、必要に応じて可塑化されている)とを含み、薬物層は、オンダンセトロン等の選択的セロトニン5−HT拮抗薬(又はその塩及び/若しくは溶媒和物)を含み;薬物層の上にTPR層(例えばエチルセルロース及びフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、必要に応じて可塑化されている)が設けられている。IR粒子は、薬学的に許容される有機酸(例えばフマル酸)の顆粒、選択的セロトニン5−HT拮抗薬(例えばオンダンセトロン又はその塩及び/若しくは溶媒和物)、及び必要に応じて用いるバインダー(例えばヒドロキシプロピルセルロース)、並びに1又は複数の更なる補形剤(例えば、ラクトース及び/又は微結晶性セルロース等の充填剤、クロスポビドン等の崩壊剤)を含む。
【0016】
ほとんどの実施形態では、持続放出製剤は、退院後1日1回で最大5回投与され、例えば退院後の朝及び最初の投与後更に約4回まで1日1回投与される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】SRコーティングされたフマル酸含有コアの断面図である。
【図1B】SRコーティングされたフマル酸含有コアを含むTPRビーズの断面図である。
【図2】実施例1のTSRビーズからのフマル酸(「酸」)及び塩酸オンダンセトロン(「化合物」)の両方の放出プロファイルを示す図である。
【図3】実施例2のTSRビーズからの塩酸オンダンセトロンの放出プロファイルを示す図である。
【図4】実施例3のRR顆粒(速放性顆粒)とTPRビーズとを含むMRカプセル製剤(PF391EA0001、PF392EA0001、及びPF379EA0001)の血漿中オンダンセトロン濃度−時間プロファイルを示す図である。
【図5】実施例3又は4のMRカプセル製剤(パイロットCTM:PF392EA0001、ピボタルCTM:PF392EA0002、及びパイロットCTM:PF379EA0001))の薬物放出プロファイルを示す図である。
【図6A】24mgオンダンセトロンMR製剤及び1日2回8mgゾフラン(登録商標)錠経口投与後0〜24及び120〜144時間における血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図6B】24mgオンダンセトロンMR製剤及び1日2回8mgゾフラン(登録商標)錠経口投与後1日目の血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図7A】24mgオンダンセトロンMR製剤及び1日3回8mgゾフラン(登録商標)錠経口投与後0〜24及び120〜144時間における血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図7B】24mgオンダンセトロンMR製剤及び1日3回8mgゾフラン(登録商標)錠経口投与後1日目における血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図8A】24mgオンダンセトロンMR製剤及び8mgゾフラン(登録商標)錠を1日目に1回投与した後(1日目)の血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図8B】24mgオンダンセトロンMR製剤及び8mgゾフラン(登録商標)錠を3日目に1日2回経口投与した後(3日目)の血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図8C】24mgオンダンセトロンMR製剤及び8mgゾフラン(登録商標)錠を6日目に1日3回投与した後(6日目)の血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。
【図9】モデルに基づく創薬手法の模式図である。
【図10A】(0−2hr)発生率(嘔吐又は悪心率)vsオンダンセトロン(0−1hr)曝露量反応の関係を示す図である。
【図10B】異なるPONV歴での(0−2hr)発生率(嘔吐又は悪心率)vs(0−1hr)オンダンセトロン曝露量反応の関係を示す図である。
【図10C】異なるPONV歴での(0−24hr)発生率(嘔吐又は悪心率)vs(0−1hr)オンダンセトロン曝露量反応の関係を示す図である。
【図11A】(0−2hr)又は(0−24hr)発生率(嘔吐又は悪心率)vs(0−1hr)オンダンセトロン曝露反応(exposure response)の、シミュレーションされた関係を示す図である。
【図11B】対応する発生頻度曝露量vs(0−1hr)曝露反応を示す図である。
【図12A】異なるPONV歴での(0−2hr)曝露発生頻度(exposure incidence)(嘔吐又は悪心AUC)vs(0−1hr)オンダンセトロン曝露反応の関係を示す図である。
【図12B】異なるPONV歴での(0−24hr)曝露発生頻度(嘔吐又は悪心AUC)vsオンダンセトロン(0−1hr)曝露反応の関係を示す図である。
【図13A】全てのデータセットをモデル化した、(0−24hr)発生頻度反応(incidence response)(嘔吐又は悪心)vsオンダンセトロン曝露量(AUC0−2hr)(線)の平均的なシミュレーションされた関係を示す図である。
【図13B】術後の悪心又は嘔吐に対して1日1回24mg投与を用いた(0−24hr)方法vsゾフラン(登録商標)8mg(線)の関係をシミュレーションした結果を予測区間90%で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中に引用されている全ての文献の全体をあらゆる目的のために参照により援用する。いかなる文献の参照も本発明の先行技術であることを自認するものと解釈されるべきではない。
【0019】
本発明における種々の用語は"How to study postoperative nausea and vomiting", Acta Anaesthesiol. Scand. 2002:46:921-928に記載されているように定義される:
・「悪心(nausea)」は、排出的筋肉運動を伴わない、吐きたいという衝動の主観的感覚を意味し、重度の場合、唾液分泌の増加、血管運動障害、及び発汗を伴う。
・「嘔吐(vomiting又はemesis)」は、口を介した胃内容物の強制的排出を意味する。嘔吐は、腹筋、肋間筋、喉頭筋、及び咽頭筋の協調運動による。
・「レッチング(retching)」は、嘔吐に至らない吐こうとする努力又は嘔吐に先立つ呼吸筋の律動的活動を意味する。
・「発生頻度(incidence)」は、特定の期間内に何らかの新たな状態を発症することに関連するリスク尺度を意味する。発生頻度=1又は複数の事象を有する患者の%(ここで事象とは悪心、嘔吐、又は救済投薬を受けることである)。
・「発生率(incidence rate)」は、発生事象総数を事象が生じた観察期間で割ったものであり、比率(例えば、%/時間)で表される。
・「曝露量(exposure)」は、時間=0から時間=tまでの血漿中濃度下面積−時間プロファイル(例えばAUC0−2hr)を意味する。
【0020】
本発明及びその具体例において、薬物又は薬物クラス(例えば、選択的セロトニン5−HT拮抗薬、オンダンセトロン等)への言及は、薬物自体並びにその薬学的に許容される塩、多形(polymorph)、立体異性体、及び混合物を含む。
【0021】
本発明において、「即放性(immediate release:IR)」という用語は、0.1NのHCl中で溶解試験を行った時に約30分以内又は製剤投与後約1時間以内に、薬物の約50%以上、いくつかの実施形態では約75%超又は約90%超、特定の実施形態では約95%超が放出されることを意味する。即放性粒子(IR粒子)とは、薬物の即放性を提供する薬物含有粒子である。
【0022】
本発明において、薬物含有粒子に関して「速放性(rapid release:RR)」という用語は、粒子に含まれる薬物の少なくとも約80%が、例えば米国薬局方(USP)の溶解方法(装置2−50RPMでパドル、0.1N HCl、37℃を用いて溶解試験を行った時に、約5分以内に放出される、薬物含有粒子を意味する。例えば、RR粒子としては、限定されるものではないが、45〜60メッシュ又は60〜80メッシュの白糖球状顆粒(sugar sphere)上に薬物が積層された粒子、並びに薬物、充填剤(例えばラクトース)、及び有機酸(例えばフマル酸)を含有する水溶性マイクロ顆粒が含まれ得る。速放性粒子は、薬物放出の速度が比較的大きい特定の種類のIR粒子である。
【0023】
「TPR(時限パルス放出(timed, pulsatiel release))ビーズ」又は「TPR製剤(TPR dosage form)」という用語は、本明細書で定義されるように、予め決められたラグタイム後の即放性パルス又は徐放性プロファイルを特徴とする。「ラグタイム」という用語は、投与量(薬物)の放出が約10%未満、より具体的には実質的にない期間を意味し、典型的には非水溶性ポリマー及び腸溶性ポリマー(例えばエチルセルロース及びフタル酸ヒプロメロース)の組合せを用いてコーティングすることにより少なくとも約2〜10時間のラグタイムを実現することができる。同様に、TPRコーティング又はTPR層とは、そのような特性を提供する層、膜、又はコーティングを意味する。本明細書に記載されているように、TPRコーティング又はTPR層は、1又は複数の薬学的に許容される可塑剤で可塑化されてもよい腸溶性ポリマーと組み合わせた薬学的に許容される非水溶性ポリマーを含む。
【0024】
「SR層」、「SRコーティング」等の用語は、1又は複数の薬学的に許容される可塑剤で可塑化されてもよい薬学的に許容される非水溶性ポリマーを含む層又はコーティングを意味する。
【0025】
「血漿中濃度−時間プロファイル」、「Cmax」、「AUC」、「Tmax」、及び「排出半減期」という臨床用語は、それらの一般的に受け入れられている意味を有するものであるので、再定義しない。特に断りのない限り、全ての百分率及び比率は全組成物に基づいて重量により計算される。
【0026】
「コーティング重量」という用語は、コーティング前の基体重量の百分率で表した、コーティングの乾燥重量を意味する。例えば1mgのコーティング(乾燥重量)でコーティングされた10mgの粒子のコーティング重量は10%である。
【0027】
本発明は、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む製剤を経口投与することによりPONV及び/又はPDNVを処置又は防止する方法である。この製剤は、選択的セロトニン5−HT拮抗薬(例えばオンダンセトロン)をそれぞれが含むTPR粒子及びIR粒子(特にRR粒子)を含む。TPR粒子は、非水溶性ポリマー(例えばエチルセルロース)を含むSR層により互いに隔てられた選択的セロトニン5−HT拮抗薬及び薬学的に許容される有機酸(例えばフマル酸)を含むコアを含む。IR粒子は、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含み、(USPの溶解方法(装置2−50RPMでパドル、0.1N HCl、37℃)を用いて)約5分以内に選択的セロトニン5−HT拮抗薬の少なくとも80wt%を放出する。
【0028】
本発明の方法における使用に適した経口製剤は、1日1回の製剤の経口投与後に選択的セロトニン5−HT拮抗薬を持続放出する。持続放出製剤としては、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1990 ed., pp. 1682-1685に記載されているような、拡散システム(例えばリザーバーデバイス及びマトリックスデバイス)、溶解システム(例えば、「小型時限ピル(tiny time pill)」等のカプセル封入溶解システム)、マトリックス溶解システム、拡散/溶解システムの組合せ、浸透圧システム、及びイオン交換樹脂システムが含まれ得る。
【0029】
一実施形態では、本発明の方法で使用するための経口製剤は、2008年9月12日付で提出された同時継続中の米国特許出願第12/209,285号(その全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する)に記載されている通りに調製することができる。
【0030】
添付の図1A及び1Bを参照して本発明の具体的実施形態を更に詳細に記載する。図1Aでは、SRコーティングされたコア10が、不活性粒子コア16上にコーティングされたバインダー14中に薬学的に許容される有機酸の層を含む有機酸含有コア上に塗布されたSRコーティング12を含む。不活性粒子コア16、有機酸コーティング層14、及び溶解速度を制御するSR層12が、SRコーティングされた有機酸含有コア10を構成する。図1Bは代表的TPRビーズを示す図である。TPRビーズ20は、第1のSR層24上に塗布されたラグタイムコーティング22、保護シールコート26、及びSRコーティングされた酸含有コア10上に塗布された弱塩基性薬物層28を含む。本発明の特定の実施形態では、中間SRバリア層を塗布しない、すなわち、シールコーティングされた即放性ビーズ上にTPR層が直接塗布される。
【0031】
一実施形態では、本発明の方法における使用に適した医薬組成物は、複数のTPR粒子及びIR粒子を含み、各TPR粒子は、TPR層でコーティングされたコアを含み;コアは、SR層によって互いに隔てられた選択的セロトニン5−HT拮抗薬(例えばオンダンセトロン)及び薬学的に許容される有機酸を含み;各IR粒子は、好適な補形剤と組み合わせられた選択的セロトニン5−HT拮抗薬(例えばオンダンセトロン)を含む。
【0032】
特定の実施形態では、TPR粒子は、薬学的に許容される有機酸(例えばフマル酸)及び薬学的に許容されるバインダー(例えばヒドロキシプロピルセルロース);徐放性(SR)層(例えば、エチルセルロース等の薬学的に許容される非水溶性ポリマーを含み、必要に応じてクエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール等の薬学的に許容される可塑剤で可塑化されてもよい);選択的セロトニン5−HT拮抗薬(例えば、オンダンセトロン又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物)と薬学的に許容されるバインダー(例えばポビドン)とを含む薬物層;必要に応じて用いるシーリング層(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性ポリマーを含む);及びTPR層(例えば、エチルセルロース等の非水溶性ポリマー、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の腸溶性ポリマー、及び必要に応じて用いるクエン酸トリエチル等の薬学的に許容される可塑剤)、で順番にコーティングされた不活性コア(例えば糖ビーズ等)を含む。
【0033】
IR粒子は、0.1N HCl中で溶解試験した時に約30分以内又は製剤投与後約1時間以内に、選択的セロトニン5−HT拮抗薬の少なくとも約50%を放出する。特定の実施形態では、IR粒子はRR粒子であり、米国薬局方(USP)の溶解方法(装置2−50RPMでパドル、0.1NのHCl、37℃)を用いた溶解試験時に約5分以内に選択的セロトニン5−HT拮抗薬の少なくとも約80wt%を放出する。
【0034】
RR粒子は、必要な速放性特性を提供する任意の好適な構造を有し得る。例えば、RR粒子は、不活性コア(例えば、必要に応じてTPR粒子の不活性コアよりも平均直径が小さくてもよい、糖ビーズ)上に設けられた選択的セロトニン5−HT拮抗薬を、必要に応じて薬学的に許容されるバインダーと共に、含み得る。別の実施形態では、RR粒子は、薬学的に許容されるポリマーバインダー、薬学的に許容される有機酸、及び少なくとも1つの補形剤(例えば、ラクトース及び/若しくは微結晶性セルロース等の1又は複数の充填剤;クロスポビドン等の崩壊剤等)の存在下で顆粒化された、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む。
【0035】
特定の実施形態では、本発明の方法において使用するための持続放出経口製剤は、TPR粒子とRR粒子の組合せを充填したカプセルを含み、TPR粒子は、フマル酸及びバインダー(例えばヒドロキシプロピルセルロース);エチルセルロース及び必要に応じて用いる可塑剤(例えば、必要に応じて用いるクエン酸トリエチル)を含む徐放性(SR)層;オンダンセトロン及びバインダー(例えばポビドン)を含む薬物層;必要に応じて用いるシーリング層(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース);及びエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び必要に応じて用いる可塑剤(例えば、必要に応じて用いるクエン酸トリエチル)を含むTPR層、で順番にコーティングされた糖ビーズを含み;RR粒子は、オンダンセトロン、フマル酸、クロスポビドン、微結晶性セルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースの顆粒化物を含む。
【0036】
持続放出組成物中での使用に適した選択的セロトニン5−HT拮抗薬の非限定的なリストとしては、オンダンセトロン、トロピセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、パロノセトロン、ラモセトロン、並びにその塩及び/又は溶媒和物が含まれる。特定の実施形態では、選択的セロトニン5−HT拮抗薬はオンダンセトロン又はその塩及び/若しくは溶媒和物である。
【0037】
TPR層及びSR層中での使用に適した非水溶性ポリマーの非限定的なリストとしては、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、エチルアクリラートとメチルメタクリラートの中性コポリマー、第四級アンモニウム基を含むアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマー、及びワックスが含まれる。TPR層中で使用する非水溶性ポリマーは、SR層中で使用する非水溶性ポリマーと同じであってもよく、異なってもよい。特定の実施形態では、TPR層及びSR層の両方の非水溶性ポリマーがエチルセルロースである。
【0038】
TPR層中での使用に適した腸溶性ポリマーの非限定的なリストとして、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸とメチルメタクリラートのpH感受性コポリマー、及びセラックが含まれる。特定の実施形態では、TPR層の腸溶性ポリマーはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0039】
薬学的に許容される有機酸の非限定的なリストとしては、クエン酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸が含まれる。特定の実施形態では、薬学的に許容される有機酸はフマル酸である。
【0040】
本明細書に記載されているように、TPR層及びSR層はそれぞれ必要に応じて可塑剤を含んでもよい。場合によっては、可塑剤を含めない方が望ましいことがある(例えば、コストを低減するため、可塑剤への患者の曝露を低減するため等)。薬学分野の当業者であれば、可塑剤を用いずにコーティング形成させ易い好適なグレードの非水溶性ポリマー及び/又は腸溶性ポリマーを選択することができる。あるいは、TPR層及びSR層の一方又は両方に可塑剤を含めることが望ましい場合もあり得る(例えば、各層の物理的性質を調整するため、あるいは薬物及び/又は有機酸の放出速度を調整するため)。可塑剤を使用する場合、好適な可塑剤の非限定的なリストとしては、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルトリ−n−ブチルシトラート、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ひまし油、アセチル化モノ−及びジ−グリセリド、並びにこれらの混合物が含まれる。TPR層及びSR層の両方で可塑剤を使用する場合、可塑剤は同じであってもよく、異なってもよい。一実施形態では、SR層の可塑剤はクエン酸トリエチルである。別の実施形態では、TPR層の可塑剤はクエン酸トリエチルである。更に別の実施形態では、TPR層及びSR層の両方の可塑剤がクエン酸トリエチルである。
【0041】
本明細書に記載されているように、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む任意の種類の経口持続放出製剤を本発明の方法に使用することができる。一実施形態では、TPR粒子は、不活性コア上に有機酸及び薬物層が積層された「積層ビーズ(layered bead)」を含む。不活性コアは、薬学的に許容される任意の不活性コアであってよく、特に、平均粒径25〜30メッシュのものであってよい。好適な不活性コアの非限定的なリストとしては、白糖球状顆粒(sugar sphere)、セルロース球状顆粒(cellulose sphere)、ラクトース球状顆粒、ラクトース−MCC球状顆粒、マンニトール−MCC球状顆粒、及び二酸化シリコーン球状顆粒が含まれる。
【0042】
ドンペリドン、グラニセトロン、シクリジン、ドロペリドール、デキサメタゾン、オンダンセトロン等の制吐薬及びこれらの薬物の組合せは、術後悪心・嘔吐の処置に用いられてきた。最も一般的には、制吐薬は、手術前又は手術直後のいずれかにIVによって予防的に投与され、術後に経験される急激な(breakthrough)悪心及び嘔吐は全て、IV制吐薬又は即放性経口制吐薬の「救済」投与によって処置される。経口制吐薬は一般的に、「初回通過」代謝によりバイオアベイラビリティが低下するため、IV制吐薬よりも効果が低いと見なされる。更に、術後悪心・嘔吐に苦しんでいる患者に経口製剤を投与することは困難又は不可能であり得る。
【0043】
あるいは、本発明の方法は更に、他の種類の制吐薬を含む経口製剤と組み合わせた選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む経口持続放出製剤の投与を含む。例えば、本発明の方法は、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む少なくとも1つの持続放出製剤をそれを必要とする手術患者に、ほとんどの実施形態では手術後又は退院時に、投与すること及び1又は複数のNK−I拮抗薬、ドーパミン拮抗薬、H1ヒスタミン受容体拮抗薬、カンナビノイド、ベンゾジアゼピン、抗コリン薬、ステロイド等を含む少なくとも1つの更なる経口制吐薬を更に投与することにより、PONV及び/又はPDNVを処置又は防止することを含む。更なる経口制吐薬中に選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤の共投与には、患者中に臨床的意義のある血漿中濃度の選択的セロトニン5−HT拮抗薬及び更なる経口制吐薬が存在するように、2つの製剤をある程度同時又は異なる時間に投与することが含まれ得る。
【0044】
選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤が更なる経口制吐薬と共投与される本発明の方法では、NK−1拮抗薬として、アプレピタント又はカソピタントが含まれ得;ドーパミン拮抗薬として、ドンペリドン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、又はプロクロルペラジンが含まれ得;H1ヒスタミン受容体拮抗薬として、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、メクリジン、プロメタジン、又はヒドロキシジンが含まれ得;カンナビノイドとして、カンナビス、ドロナビノール、又はナビロンが含まれ得;ベンゾジアゼピンとして、ミダゾラム又はロラゼパムが含まれ得;抗コリン薬としてスコパラミンを挙げることができ;ステロイドとしてデキサメタゾンを挙げることができる。
【0045】
本発明の方法では、持続放出経口製剤は、手術前、手術直後、又は退院時に投与することができ、あるいは、手術の前、最中、直後、又は退院時に投与されるIV制吐薬の予防的投与と組み合わせて使用することもできる。例えば、予防的IV制吐薬の代わりに持続放出製剤を手術前に投与してもよく、これにより、手術直後、退院時、及び術後長期間にわたるPONV/PDNVに対して保護効果を発揮する選択的セロトニン5−HT拮抗薬の効果的な予防的投与が実現される。あるいは、手術直前又は手術後にIV制吐薬を投与してもよく、退院前又は退院時に選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤を投与してもよく、これにより、長期間、例えば手術翌日までのPONV及び/又はPDNVに対する効果的な保護が実現される。いずれの状況(IV制吐薬との組合せ又はIV制吐薬の代わりの投与)でも、PDNVに対する持続的保護効果を得るために、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤を手術後1日以上にわたり1日1回更に投与してもよい。手術後に投与される場合、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤は、退院時及び/又は退院翌日(例えば退院後の朝)、及び必要に応じて退院後5日間まで(例えば退院後毎朝、1日1回投与)投与することができる。
【0046】
本発明の方法は、例えば実施例に記載されているように、PONV及び/又はPDNVを臨床的に有意義に予防、処置、又は軽減し、これは従来の治療法により得られるPONV及び/又はPDNVの予防、処置、又は軽減と同等であるか、それよりも優れている。更に、本明細書に記載されているように、1日1回の経口持続放出製剤を使用する本発明の方法は、従来の即放性経口製剤よりも利便性に優れ且つ効果的であり、IV投与よりも安全である。本発明の方法は、少なくとも手術後3日間にわたり悪心及び/又は嘔吐の発生を防止し、予期されない入院期間の延長(PONV)を回避するか退院前のオンダンセトロンのIV投与(PDNV)を回避し、患者のコンプライアンス及びクオリティ・オブ・ライフを向上させ、更に、医療費を低減する。
【0047】
本発明の方法は、本明細書に記載されているように、入院患者及び外来患者両方の外科手技に使用することができる。例えば、入院患者の手技では静脈内投与の方が容易に利用可能であるが、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤の投与を含む本発明の方法では、静脈内投与に関連するリスク及び費用が回避される。外来患者の外科手技では、退院後に制吐薬を静脈内投与することは一般的に困難であり、したがって、経口製剤の投与の方が相当、便利であり且つ費用が低い。更に、即放性製剤はPDNVを連続的に処置又は予防するために1日複数回の投与を必要とするが、本方法で投与が1日1回であり、そのため、コンプライアンスを向上させ且つPDNVの発生を低減するため、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤を投与する本方法は、現在利用可能な即放性製剤に対するかなりの改善である。したがって、例えば、本明細書に記載の選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤は、PONV及び/又はPDNVを処置又は軽減するために、退院直前及び/又は退院後1日1回(例えば退院の約24時間後に開始、例えば退院後の朝)、最大で1週間まで(例えば退院後5日間まで)投与することができる。
【0048】
本発明の方法は一般的に入院患者手術及び外来患者手術の両方に使用することができ、あるいは、PONVの危険因子が中〜高レベルの特定の患者又はPDNVの危険因子が中〜高レベルの患者を標的としてもよい。例えば、PONVの危険因子としては、女性であること、術後悪心・嘔吐歴があること及び/又は動揺病歴があること、禁煙状態、並びに術後オピオイドの投与が含まれる。PDNVの危険因子はPONVと幾分異なり、若年齢であること、女性であること、術後悪心・嘔吐歴があること及び/又は麻酔後回復室(PACU)における術後悪心・嘔吐歴があること、並びに術後オピオイドの投与(経口オピオイド鎮痛薬を含む)が含まれる。したがって、一実施形態では、本発明は、これらの危険因子の1又は複数を有する患者に退院前に選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤を投与することを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む持続放出製剤は、鎮痛のために術後オピオイド投与された手術患者のPONV/PDNVの予防又は処置に効果的である。そのようなオピオイドとしては、例えばコデイン、モルヒネ、テバイン、オリパビン、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェンタニル、α−メチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、メペリジン、ブプレノルフィン、エトルフィン、メタドン、及びトラマドールが含まれ得る。
【0050】
実施例1
1.A SRコーティングされたフマル酸結晶:40〜80メッシュのフマル酸結晶(3750g)を、9インチのボトムスプレーWursterインサート、10インチのカラム長、及び16mmのチューブを備えたGlatt GPCG 5流動床コータに投入した。250gのエチルセルロース(EC−10:Ethocel Premium 10cps)及び166.7gのポリエチレングリコール(PEG400)を60/40の(EC−10/PEG400の)比で98/2のアセトン/水(6528.3g)に溶解させた溶液(6%固形分)を用いて10重量%までのコーティング重量でフマル酸結晶をコーティングした。プロセス条件は以下の通りである:噴霧化空気圧(atomization air pressure):2.0バール;ノズル直径:1.00mm;ボトム分配板(bottom distribution plate):15ゲージ、100メッシュの篩を備えたB;噴霧/振盪間隔:30s/3s;生成物の温度は35±1℃に維持;吸気体積:155〜175立方フィート/分(cfm);噴霧量は約8g/分から30g/分へと増加。
【0051】
更に、異なる比率のエチルセルロース及びPEGを用いて上記と同様にフマル酸結晶をコーティングした。より具体的には、フマル酸結晶を、75/25又は67.5/32.5の比率のEC−10/PEG400溶液でコーティングし、それぞれの比率でコーティング重量は10重量%までとした。
【0052】
1.B 塩酸オンダンセトロンIRビーズ:ポビドン(PVP K−29/32;23g)を50/50の水/変性アルコール3C、190 Proof(3699.4g)に徐々に添加し、溶解するまで混合した。オンダンセトロン塩酸塩二水和物(197.2g)を、塩酸オンダンセトロンが溶解するまでポビドンバインダー溶液に徐々に添加した。上記実施例1.Aで得られたSRコーティングされたフマル酸結晶(3000g)を、Glatt GPCG 5中でオンダンセトロン溶液(5%固形分)を用いてコーティングした。コーティングは、生成物温度を40±1℃、吸気体積を180〜195cfmに維持しながら、噴霧量を8g/分から15g/分に増加させて行った。得られた薬物積層ビーズにOpadry Clear(ヒプロメロース2910;3cps)の保護シールコート(2%コーティング重量)を設けて、IRビーズを形成した。
【0053】
1.C 塩酸オンダンセトロンTPRビーズ:実施例1.Bの塩酸オンダンセトロンIRビーズ(2800g)を、EC−10/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP;HP−55)/クエン酸トリエチル(TEC)が45.5/40/14.5である98/2のアセトン/水の溶液(6%固形分)を噴霧することでコーティングし、Glatt中にて60℃で約10分間乾燥させて余分な残留溶剤を除去し、コーティング重量を50%までとした。乾燥したビーズを篩にかけ、形成された「2倍体(double)」を全て捨てた。
【0054】
図2は、SRコーティングされた酸結晶を含むTPRビーズからのフマル酸及びオンダンセトロン両方の放出プロファイルを示す図である。より具体的には、図2で評価されているTPRビーズは以下の組成を有する:
【0055】

【0056】
オンダンセトロンの放出はフマル酸の放出よりも有意に速いが、フマル酸結晶上のバリアコート(SR層)の厚さを減少させ且つ/又はTPR層の下に更にSR層を塗布して薬物の放出を持続させることにより、オンダンセトロン及びフマル酸の両方の放出プロファイルを同調させることができるこは当業者には明らかである。
【0057】
実施例2
2.A フマル酸含有コア:ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、53.6g)を、90/10の190 proofアルコール/水に4%固形分で徐々に添加し、溶解するまで激しく撹拌し、その後、フマル酸(482.1g)を徐々に添加し、溶解するまで撹拌した。9インチのボトムスプレーWursterインサート及び10インチの分配カラムを備えたGlatt GPCG 5に25〜30メッシュの白糖球状顆粒3750gを投入した。生成物温度を約33〜35℃、噴霧量を8〜60mL/分に維持しつつ、白糖球状顆粒にフマル酸溶液を積層した。酸コアをGlattユニット中で10分間乾燥させ、残留溶剤/湿気を除去し、40〜80メッシュの篩を用いて篩い分けた。
【0058】
2.B SRコーティングされたフマル酸含有コア:実施例1.Aの手順に従い、98/2のアセトン/水にEC−10及び可塑剤としてPEG400(B.1)を比率60/40で混合して溶解させた溶液(6%固形分)又はEC−10及び可塑剤としてTEC(B.2)を比率90/10で混合して溶解させた溶液(6%固形分)を用いて実施例2.Aのフマル酸コア(3750g)をコーティングし、コーティング重量を10%とした。
【0059】
2.C 塩酸オンダンセトロンIRビーズ:実施例1.Bと同様にして、実施例2.BのSRコーティングされたフマル酸含有コアにオンダンセトロン塩酸塩二水和物/ポビドン(90/10)の溶液を用いて薬物充填量4wt%(オンダンセトロンベース)でコーティングすることにより、塩酸オンダンセトロンIRビーズ(B.1及びB.2)を調製した。得られた薬物積層ビーズに、Pharmacoat 603(ヒプロメロース2910;3cps)を用いて保護シールコートを2%重量増加で設けた。
【0060】
2.D 塩酸オンダンセトロンSRビーズ:98/2のアセトン/水にEC−10及び可塑剤としてのPEG400(D.1)を60/40の比率で溶解させた溶液(7.5%固形分)又はEC−10及び可塑剤としてのTEC(D.2)を90/10の比で溶解させた溶液(7.5%固形分)を噴霧することで、実施例2.Cの塩酸オンダンセトロンIRビーズ(1080g)をSRコーティングし、Glattで同じ温度で10分間乾燥させて余分な残留溶剤を除去し、コーティング重量10%とした。乾燥したビーズを篩い分け、二倍体が形成されていた場合には全ての二倍体を除いた。
【0061】
2.E 塩酸オンダンセトロンTSRビーズ:実施例2.Dの塩酸オンダンセトロンSRビーズ(D.1及びD.2)に更に、90/10のアセトン/水に3種類の比率で溶解させたEC−10/HP−55/TECのTPRコーティング(7.5%固形分)を用いて50%までのコーティング重量でコーティングした:45.5/40/14.5(E.1−ロット番号1084−066)、50.5/35/14.5(E.2−ロット番号1117−025)、及び60.5/25/14.5(E.3−ロット番号1117−044)。得られたTSRビーズをGlatt中で乾燥させ、残留溶剤を除去し、18メッシュの篩を用いて篩い分けた。図3は、3種類の異なる比率のEC−10/HP−55/TECでコーティングされたTSRビーズからの塩酸オンダンセトロンの放出プロファイルを示す図である。より具体的には、図3は、以下の表1に記載されている製剤の放出プロファイルを示す図である。
【0062】

【0063】
実施例3
3.A 薬物充填量10%の塩酸オンダンセトロンRRビーズ:ヒドロキシプロピルセルロース(アクアロン社(Aqualon)製Klucel LF、33g)を、50/50の水/変性アルコール3C、190 Proof(それぞれ2500g)に徐々に添加しながら混合して溶解させた。上記バインダー溶液に、オンダンセトロン塩酸塩二水和物(300g)を徐々に添加し、薬物を溶解させた。60〜80メッシュの白糖球状顆粒(2607g)を、Glatt GPCG 5中で薬物溶液(5%固形分)を用いて以下の条件下でコーティングし、薬物含有量を10wt%(オンダンセトロンベース)にした:空気分配板(air distribution plate):100メッシュの篩を有するB;ノズル直径:1mm;パーティション高さ:10インチ;9インチボトムスプレーWursterインサート;生成物温度36〜37℃;吸気体積60〜65cfm;噴霧量は約20g/分から25g/分へと増加させた。得られた薬物積層ビーズにPharmacoat 603(ヒプロメロース2910;3cps)の保護シールコートを設けて(2%重量増加)RRビーズを形成した。RRビーズをGlattユニット中で10分間乾燥させて残留溶剤/湿気を除去し、40〜80メッシュの篩を用いて篩い分けた。IRビーズの90%超は粒径が100〜350μmであった。
【0064】
3.B 薬物充填量10%の塩酸オンダンセトロンRR顆粒:フマル酸(270g)、Klucel LF(120g)、及びオンダンセトロンHCl(600g)を、ステンレス鋼タンク中で、変性190 Proofエチルアルコール及び水の50/50混合物(それぞれ5000g)に徐々に添加し、溶解するまで撹拌した。トップスプレーWursterインサートを備えたGlatt GPCG 5を30分未満で予熱し、噴霧乾燥したラクトース(Fast Flo Lactose;2130g)、微結晶性セルロース(MCC、Avicel PH102;2400g);クロスポビドン(XL−10;480g)を投入し、次いでこれらを、以下の条件下にてオンダンセトロン溶液を25〜100g/分で噴霧しながら顆粒化した:顆粒化ボウル:トップスプレーを備えたGPCG 5;ノズルチップ:1.2mm;吸気温度:55℃;気流目標値:80cfm;噴霧化空気圧:2.0バール;生成物温度目標値:50℃。顆粒化物を、乾燥減量(LoD)2%未満で、55℃で乾燥させた。この顆粒を20メッシュの篩を用いて篩い分け、21RPMで回転する0.5立方フィートのV型ブレンダー中でステアリン酸マグネシウム(顆粒剤5000g当たり10g)と5分間ブレンドした。
【0065】
3.C フマル酸含有コア:25〜30メッシュの白糖球状顆粒(3750g)に、上記実施例2.Aと同様にして、Klucel LF(53.6g)の溶液(4%固形分)からフマル酸(482.1g)を積層させ、フマル酸充填量を11.25重量%とした。フマル酸含有コアをGlattユニット中で10分間乾燥させて残留溶剤/湿気を除去し、20〜30メッシュの篩を用いて篩い分けた。
【0066】
3.D SRコーティングされたフマル酸コア:実施例3.Cのフマル酸含有コア(3750g)を、95/5のアセトン/水に177.6gのエチルセルロース(EC−10)及び19.7gのクエン酸トリエチル(TEC)を90/10の比率で溶解させた溶液(7.5%固形分)を用いてコーティングし、コーティング重量を5%とした。
【0067】
3.E 塩酸オンダンセトロンIRビーズ:50/50のエタノール/水混合物(それぞれ4247.4g)にオンダンセトロン塩酸塩二水和物(402.8g)及びKlucel LF(44.3g)を溶解させた溶液(5%固形分)を、以下の条件下でGlatt GPCG 5中にて、上記実施例3.DのSRコーティングされたフマル酸コア(3500g)上に噴霧することにより、薬物充填量が10重量%のオンダンセトロン塩酸塩二水和物のIRビーズを生成した:空気分配板:15ゲージ、100メッシュの篩を備えたB;ノズル直径:1mm;パーティション高さ:10インチ;9インチのボトムスプレーWursterインサート;生成物温度34±1℃;吸気体積150cfm;噴霧化空気圧約1.5バール;噴霧量は8mL/分から30mL/分へと増加させた。得られた薬物積層ビーズにPharmacoat 603(ヒプロメロース2910;3cps)の保護シールコートを設けて(2%重量増加)オンダンセトロン含有量10wt%(オンダンセトロンベース)のIRビーズを形成した。得られたIRビーズをGlattユニット中で10分間乾燥させ、残留溶剤/湿気を除去し、篩い分け、サイズが小さ過ぎる又は大き過ぎる粒子を除いた。
【0068】
3.F−1 15%コーティングの塩酸オンダンセトロンTPRビーズ:エチルセルロース(389.1g)、HP−55(135.9g)、及びTEC(92.6g)(比率:63/22/15)を90/10のアセトン/水に溶解させた溶液(18%固形分)を噴霧することにより上記実施例3.Eの塩酸オンダンセトロンIRビーズ(3500g)にTPRコーティングをコーティング重量15%で施し、Glatt中にてコーティング温度で10分間乾燥させ、余分な残留溶剤を除去した。乾燥したビーズを篩い分け、二倍体が形成されている場合には二倍体を全て除いた。
【0069】
3.F−2 10%コーティングの塩酸オンダンセトロンTPRビーズ:エチルセルロース(245.0g)、HP−55(85.6g)、及びTEC(58.3g)(比率:63/22/15)を90/10のアセトン/水に溶解させた溶液(18%固形分)を噴霧することにより上記実施例3.Eの塩酸オンダンセトロンIRビーズ(3500g)にTPRコーティングをコーティング重量10%で施し、Glatt中にてコーティング温度で10分間乾燥させ、余分な残留溶剤を除去した。乾燥したビーズを篩い分け、二倍体が形成されている場合には二倍体を全て除いた。
【0070】
3.G−1 塩酸オンダンセトロンMRカプセル(PF391EA0001):上記実施例3.Bに記載されているように調製した速放性顆粒(100.0mgのRR顆粒、ロット番号PE391EA0001)及び上記実施例3.F−1に記載されているように調製したTPRビーズ(166.2mgのTPRビーズ、ロット番号E392EA0001)をサイズ「0」の硬質ゼラチンカプセルに充填して試験製剤Aを作製した:MRカプセル、20mg(8mgRR+12mgTPR(T80%〜約8時間))(T80%とは薬物の80%が放出されるまでの合計時間を意味する)。
【0071】
3.G−2 塩酸オンダンセトロンMRカプセル(PF392EA0001):上記実施例3.Bに記載されているように調製した速放性顆粒(100.0mgのRR顆粒、ロット番号PE391EA0001)及び上記実施例3.F−1に記載されているように調製したTPRビーズ(221.6mgのTPRビーズ、ロット番号PE292EA0001)をサイズ「0」の硬質ゼラチンカプセルに充填して試験製剤Bを作製した:MRカプセル、24mg(8mgRR+16mgTPR(T80% 〜約8時間))。
【0072】
3.G−3 塩酸オンダンセトロンMRカプセル(PF379EA0001):上記実施例3.Bに記載されているように調製した速放性顆粒(100.0mgのRR顆粒、ロット番号PE391EA0001)及び上記実施例3.F−2に記載されているように調製したTPRビーズ(234.6mgのTPRビーズ、ロット番号PE393EA0001)をサイズ「0」の硬質ゼラチンカプセルに充填して試験製剤Cを作製した:MRカプセル、24mg(8mgRR+16mgTPR(T80%〜約12時間))。
【0073】
実施例4
4.A パイロットPK試験(ODO−P7−220):塩酸オンダンセトロンMRカプセル対ゾフラン:4群の交差パイロットPK(薬物動態)試験を行った。試験には18〜55歳の健康男性志願者12名を含め、休薬期間を7日間とした。各志願者に、一晩絶食後(少なくとも12時間;昼食はAM11時に提供)、250mLの炭酸入りでないミネラルウォーター及び単回分の試験製剤:試験製剤A(20mg;PF391EA0001);試験製剤B(24mg;PF392EA0001)、試験製剤C(24mg;PF379EA0001)をAM8時に服用させるか、ゾフラン(登録商標)(8mg)を2回、AM8時及びPM4:30に服用させた。血液サンプルの採取を時間0(投与前)、20分、40分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8.5時間(2回目の投薬前)、9時間10分、9.5時間、10時間、10.5時間、11.5時間、12.5時間、14.5時間、17時間、20時間、22時間、24時間、及び36時間に行った。図4は、得られた平均血漿中濃度−時間プロファイルを示す図である。PKパラメータ(実際の値及び投与量で補正した値)を表2に示す。全試験製剤(試験製剤A、B、及びC)について、8mgのIR(ゾフラン)(bid)投与参照と比較した相対的バイオアベイラビリティは24時間の終りにおいて約0.85であった。
【0074】

【0075】
4.B オンダンセトロンRR顆粒(PE391EA0004):プロペラミキサを備えた100ガロンのステンレス鋼タンク中で、フマル酸(3.60kg)、Klucel LF(1.60kg)、及びオンダンセトロンHCl(8.00kg)を、変性190 Proofエチルアルコールと水の50/50混合物(それぞれ66.7kg)に徐々に添加し、溶解するまで約850rpmで撹拌した。トップスプレーWursterインサート及び32インチの顆粒化ボウルを備えたGlatt GPCG 120をプロセス空気温度76℃に予熱し、空気体積を600cfm(約16990リットル/分)にし、ラクトース一水和物(28.4kg)、微結晶性セルロース(MCC;Avicel PH102、32.0kg)、及びクロスポビドン(XL−10;6.4kg)を投入し、薬物溶液を以下の条件下で0.45〜0.60kg/分の量で噴霧しながら顆粒化した:トップスプレーノズルチップ(3):1.8mm;吸気温度:71〜86℃;気流目標値:500〜900cfm;噴霧化空気圧:2.0バール;生成物温度目標値:36〜37℃。この顆粒化物を、乾燥減量値が2%未満になるまで、77℃のプロセス空気温度及び空気体積800cfmで乾燥させた。次いで、30メッシュの篩を用いて顆粒を篩い分け(大き過ぎる材料を除去)、17.5rpmで回転する10立方フィート(約283リットル)のV型ブレンダー中でステアリン酸マグネシウム(ビーズ77.8kg当たり0.17kg)と6分間ブレンドし、その後、ポリエチレンバッグで二重に裏張りした41ガロンのドラムに放出した。
【0076】
4.C フマル酸SRビーズ(PE363EA0001):プロペラミキサを備えた100ガロン(約379リットル)のステンレス鋼タンク中で、Klucel LF(1.00kg)及びフマル酸(8.50kg)を変性190Proof SD3エチルアルコール(205.2kg)と水(22.8kg)の混合物に徐々に添加しつつ、Klucel及びフマル酸が溶解するまで約1000rpmで撹拌した。18インチのボトムスプレーWursterインサートと、空気分配板(内側:G 1−122−00017−3;外側:C 1−122−00022−4)と、200メッシュの生成物支持篩とを備えたGlatt GPCG 120をプロセス空気温度53℃に予熱し、空気体積を600cfmとし、25〜30メッシュの白糖球状顆粒(66.5kg)を投入し、以下の条件下で150〜600g/分でフマル酸/Klucel溶液を噴霧することによりこれをコーティングした:ボトムスプレーノズルチップ:3mm;吸気温度:60〜70℃;気流体積:570〜730cfm;噴霧化空気圧:2.0バール;生成物温度目標値:32〜34℃。
【0077】
フマル酸の積層完了後、エチルアルコール(約200g)で噴霧システムをすすぎ、30ガロンのステンレス鋼ミキサー中で、エチルセルロース(3.60kgのEthocel Standard 10 Premium)及びクエン酸トリエチル(0.40kg)を95/5のアセトン(46.9kg)/水(2.5kg)に溶解させた溶液(7.4%固形分)をフマル酸積層ビーズに噴霧し、850rpmで撹拌した。得られたフマル酸SRビーズをプロセス空気温度43℃及び空気体積700cfmで10分間乾燥させ、湿気を含む残留溶剤を除去した。次いで、ビーズを、30メッシュの篩を用いて篩い分け(大き過ぎる材料を除去)、17.5rpmで回転している10立方フィートのV型ブレンダー中でステアリン酸マグネシウム(ビーズ77.8kg当たり0.17kg)と6分間ブレンドし、その後、ポリエチレンバッグで二重に裏張りされた41ガロンのドラムに放出した。
【0078】
4.D オンダンセトロンTPRビーズ(PE392EA0005):Glatt GPCG 120(実施例4.Cに記載通りの装備)中で、オンダンセトロン塩酸塩二水和物(3.6kg)及びKlucel LF(0.40kg)を50/50の変性190Proof SD 3Cエチルアルコール/水混合物(それぞれ38.0kg)に溶解させた溶液(5%固形分)を上記実施例4.Cのフマル酸SRビーズ(31.3kg)上に以下の条件下で噴霧することにより、薬物充填量10重量%(オンダンセトロンベース)のオンダンセトロン塩酸塩二水和物のIRビーズを作製した:プロセス空気温度:75〜80℃;生成物温度:34±1℃;吸気体積450〜500cfm;噴霧量は100g/分から400g/分へと増加させた。得られた薬物積層ビーズにPharmacoat 603(ヒプロメロース2910;3cps)の保護シールコートを設けて(2%重量増加)オンダンセトロン含有IRビーズを形成した。
【0079】
30ガロンのステンレス鋼タンク中で、アセトン(33.8kg)と精製水(2.16kg)の混合物にエチルセルロース(2.50kg)、フタル酸ヒプロメロース(0.90kgのHP−55)、及びクエン酸トリエチル(0.60kg)を徐々に添加しながら、HP−55及びクエン酸トリエチルが溶解するまで約850rpmで撹拌した。上記実施例4.Dで調製した塩酸オンダンセトロンIRビーズに、TPRコーティング溶液(10%固形分;63/22/15のエチルセルロース/HP−55/TEC)を100〜300g/分で噴霧し、次いで、Glatt中で、プロセス空気温度45℃及び空気体積500cfmで10分間乾燥させて余分な残留溶剤を除去した。10%のTPRコーティング重量が得られた。乾燥したビーズを18及び30メッシュの篩を用いて篩い分け、二倍体が形成されている場合には全ての二倍体を除いた。
【0080】
4.E 塩酸オンダンセトロンMRカプセル(PF392EA0002):実施例4.Bの速放性顆粒(100.0mgのRR顆粒、ロット番号PE391EA0004)及び実施例4.DのTPRビーズ(221.6mgのTPRビーズ、ロット番号PE292EA0005)を白色の不透明なサイズ「1」の硬質ゼラチンカプセルに充填し(シェル重量:76mg、カプセル重量397.6mg)、ピボタルなCTM試験製剤を25,000カプセル作製した:MRカプセル、24mg(8mgRR+16mgTPR(T80%〜約8時間))。図5は、POC(概念実証)CTM製品(試験B−PF392EA0001及び試験C−PF279EA001)と比較したPF392EA0002のオンダンセトロン放出プロファイルを示す図である。
【0081】
ゾフラン(登録商標)(IRオンダンセトロン製剤)のオンダンセトロン曝露量及び対応する制吐反応の開始及び期間に基づくPK/PDモデルを用いてオンダンセトロンの3種類の放出制御製剤及びゾフラン(登録商標)(bid)のオンダンセトロンのバイオアベイラビリティを比較した。このモデルでは、本発明の放出制御製剤及びゾフラン(登録商標)(bid)は同様な薬物曝露量(血漿中濃度曲線下面積、AUC)を示す。
【0082】
規制基準に従い、本発明の放出制御製剤の1回投与量(qd、24mg)の食品影響実験及び探求する各適応について承認された個々の投与計画に基づく本発明の製剤(qd、24mg)対ゾフランの比較PK実験を行い、後述するように、ゾフラン(登録商標)が現在販売されている各適応の特定の投与量及び投与頻度に従って更なる薬物動態学的データを収集した。各適応に対して承認された個々の投与計画に基づいて、摂食条件又は絶食条件下で製品を投与した。あらゆる有害事象の性質、重症度、頻度、期間、及び処置との関連を記録することにより、各処置の安全性プロファイルも評価した。
【0083】
実施例5
5.A 食事摂取の影響についてのピボタル試験:食事摂取の影響についての健康被験者20名における2群、単回投与、交差試験を行い、被験者17名(女性10名及び男性7名)が投薬順序を全て完了した。本発明の制御放出製剤は、絶食状態における動態と比べて、高脂肪食では、Cmaxがわずかに減少し、Tmaxが遅くなった。しかし、全体的な曝露量(AUC)は絶食状態及び摂食状態で同様であった。
【0084】
5.B 単回投与及び複数回投与のピボタルPK試験:、単施設、並行群(各群につき被験者30名で4群)、4処置(各処置につき被験者7又は8名)、単回投与及び複数回投与による、IRオンダンセトロン(ゾフラン(登録商標))及び本発明の制御放出オンダンセトロン製剤のPK試験を健康志願者120名で実施した。本試験の目的は、PONV/PDNVのリスクが中程度〜高度の患者における術後の嘔吐及び/又は悪心の防止について、本発明の制御放出製剤(「MR」;qd、24mg)及びIR製剤(ゾフラン(登録商標)8mg)として投与されたオンダンセトロンの単回又は複数回経口投与後のPK特性を評価することである。オンダンセトロンはそれぞれ約240mLの水と共に経口投与した。処置1:24mgのオンダンセトロンMR製剤、1日1回、朝、6日間連続。処置2:8mgのIRオンダンセトロン(ゾフラン(登録商標)1錠)、1日2回、12時間毎(朝及び夕方)、6日連続。処置3:8mgのオンダンセトロン(ゾフラン(登録商標)1錠)、1日3回、8時間毎(朝、昼、及び夕方)、6日間連続。処置4:以下の投与量のオンダンセトロンを朝に投与:1日目:1回投与量分のゾフラン(登録商標);2日目:プラセボを1カプセル;3日目:16mgのオンダンセトロンを単回投与(8mgのゾフラン(登録商標)×2);4及び5日目:各日、プラセボを2カプセル;6日目:24mgのオンダンセトロンを単回投与(8mgのゾフラン(登録商標)錠×3)。投与の前及び後の適切なタイミング(各処置の前に予め選択)で、静脈穿刺により血液サンプル(2×6mL)をK2 EDTAを含む予冷したバキュテナーチューブ中に回収し、分析範囲約0.5〜300μg/mLの検証されたHPLC/MSアッセイを用いて分析した。健康志願者120名(男性+女性)での、ゾフラン(登録商標)IR錠8mg(bid)対本発明のMR製剤(qd、24mg)の単回投与及び複数回投与による並行群試験で、被験者117名が投与条件の試験を完了した。1日1回24mgのオンダンセトロンMR製剤の単回及び反復経口投与は、1日3回投与された8mgのゾフラン(登録商標)と曝露の割合及び程度が同様であった。図6A及び6Bは、24mgのオンダンセトロンMR製剤1日1回投与後対8mgのゾフラン(登録商標)1日2回投与後の血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。図7A及び7Bは、24mgのオンダンセトロンMR製剤1日1回投与後対8mgのゾフラン(登録商標)1日3回投与後の血漿中オンダンセトロン濃度を示す図である。上記の結果に基づき、24mgのオンダンセトロンMR製剤により、1日3回投与の8mgゾフラン(登録商標)と同様な有効性が得られると予想される。
【0085】
相対的バイオアベイラビリティ:オンダンセトロン(QD、24mg)対ゾフラン(登録商標)(BID/TID)
ゾフラン(登録商標)をBID及びTIDで投与した後、6日目のオンダンセトロンの総曝露量(AUC0−24)は、1日目の観察よりそれぞれ21%及び29%高かった。このことは、6日間のBID及びTIDによる反復投与後の最小限の蓄積を示唆している。24mgオンダンセトロン(QD)による6日目のオンダンセトロンの総曝露量(AUC0−24)は、1日目の観察よりも約12%高かった(それぞれ936対825ng*h/mL)。このことは、反復投与後の微量の(minor)蓄積を示唆している(図6A)。8mgのゾフラン(登録商標)(BID)処置と比べた24mgのオンダンセトロン(QD)処置の合計1日投与量と一致して、24mgのオンダンセトロン(QD)経口投与後のAUC0−24の幾何最小二乗平均(LSM)は8mgのゾフラン(登録商標)(BID)処置で観察されたよりも約40〜50%高かった(図6A及び6B)。8mgのゾフラン(登録商標)(TID)処置に対する、経口投与による24mgのオンダンセトロン(QD)処置後1日目と6日目のオンダンセトロンAUC0−24のLSMの比率は98.4%及び86.6%であり、1日目では90%CIが80〜125%の範囲内であった(図7A及び7B)。6日目の90%CIは80〜125%範囲内ではなかったが、AUC0−24のLSMの比率はそれでも80〜125%の範囲内であった。1日目及び6日目におけるオンダンセトロンのCmaxのLSMの比率はそれぞれ108%及び94.0%であり、どちらも90%CIは80〜125%の範囲内であった。これらの結果は、24mgのオンダンセトロン(QD)の単回反復経口投与による曝露の割合及び程度が8mgのゾフラン(登録商標)(TID)処置と同様であることを示唆している。上記の結果に基づき、24mgのオンダンセトロンMR製剤は、1日3回投与される8mgのゾフラン(登録商標)と同程度の有効性であると予想される。
【0086】
相対的バイオアベイラビリティ:オンダンセトロン24mg(QD)対ゾフラン(登録商標)単回投与
表3は、オンダンセトロン24mg(QD)対ゾフラン(登録商標)単回投与、8mg、16mg、及び24mg(処置1対処置4)の相対的バイオアベイラビリティを示している。対応する1日目、3日目、及び6日目の血漿中濃度−時間曲線(処置1対処置4)をそれぞれ図8A、8B、及び8Cに示す。24mgのゾフラン(登録商標)(6日目)と比べたオンダンセトロン(QD、24mg)経口投与後のオンダンセトロンのAUC0−24、AUC0−inf、及びCmaxのLSMの比率はそれぞれ73.8%、77.9%、及び38.6%であった。
【0087】


【0088】
実施例6
6.A PONVのモデリング:モデルに基づく創薬手法の模式図を図9に示す。曝露量により反応が引き起こされる(exposure driven response)と仮定した(すなわち、オンダンセトロンは投与後に直接効果を発揮するものであるので、部分的AUC(例えばAUC0−1hr)が適切な効果予測因子であるとみなした)。このモデルは、投与計画、投与経路(静脈内又は経口)、投与時(すなわち手術前、手術後)等も考慮したものである。2つの別個のモデル、すなわち(1)全データを用いた発生率モデル及び(2)(0−2hr)及び(0−24hr)のデータのみに対する発生頻度−曝露量モデル、を確立した。悪心、嘔吐、及び救済投薬の3つの発生頻度評価項目を考慮することにより、全ての発生頻度評価項目を同時にモデリングすることが可能になり、手術後の任意の時間区間において発生頻度を推測することが可能になる。複数の異なる曝露量測定値−投与後15、30、45、60、及び120分までのAUC(処置が手術前であるか手術後であるかによって調整)及び期間の中間における濃度を調べた。患者の過去のPONVについての人口統計学的情報をモデルに含めた。
【0089】
嘔吐及び悪心の発生率/発生頻度−曝露量の同時分析:発生率及び発生頻度−曝露量に基づくモデリングから、様々な角度から発生率又は発生頻度−曝露量とAUC0−t hrの間の関係を調べることにより、有用且つ予測可能なモデルが得られた。各評価項目、すなわち悪心、嘔吐、及び救済投薬発生の発生頻度について同様な発生頻度プロファイルが得られた。このことは、単一のモデルで各評価項目を予測できることを示している。文献の発生頻度評価項目(例えば悪心、嘔吐、又は救済投薬)のグラフを考察した結果、典型的なPONVデータセットで評価項目を測定するタイミングが重複していることが明らかになり(すなわち0〜2時間及び0〜24時間)、患者のPONV既往歴で階層化した発生頻度評価項目の要約から、これらの患者がPONVに感受性であり得ることが示された。悪心及び嘔吐のデータが明確な曝露量/反応シグナルを示す(救済投薬データは示さない)ことも明らかであった。PONV歴のある患者は、救済投薬評価項目について曝露量/反応の関係が様々であり得る。予備分析から明らかになったように、救済投薬は価値をほとんど付加せず、データがまばら且つ多様であったので、分析から除外した。図10A、10B、及び10Cはそれぞれ、(0−1hr)曝露−反応に対する、(0−24hr)発生率、異なるPONV歴での(0−2hr)発生率、又は異なるPONV歴での(0−24hr)発生率の関係を示している。結論として、(1)手術後の時間全体における本モデルの適合性は適当(reasonable)であり、(2)本モデルはオンダンセトロン曝露反応(0−2hr)又は(0−24hr)の関係及びPONV歴の差をかなり良く(reasonably well)予測している。投与後AUC(処置が手術前であるか手術後であるかで補正)としてのオンダンセトロン(0−1hr)曝露−反応に対する(0−2hr)又は(0−24hr)の発生率又は曝露−発生頻度の予測を図11A又は11Bに示す。これには患者の過去のPONVについての人口統計的情報も含まれる。手術後の(0−1hr)曝露−反応に対する発生頻度−曝露量(例えば曝露量−悪心又は曝露量−嘔吐)のモデルによる予測はかなり良く(reasonably good)、また、PONV歴が評価されている(図12A及び12B)。PONV発生頻度反応の予測を図13Bに示す。不確かさバンド(uncertainty band)は中程度であり(図13A及び13B参照)、このことは、本発明に係る制御放出オンダンセトロン組成物の投与の有効性について有用な予測が可能であることを示している。発生率モデルと異なり、発生頻度−曝露量モデルは、PONV歴のある患者で異なる用量反応を記述しない。文献のモデルは、オンダンセトロン処置により、曝露量に関連する向上された効果が得られることを示唆している。
【0090】
実施例7
7.A 臨床試験シミュレーション:シミュレーションは、将来の臨床試験について推測し、次回のサンプルサイズnの臨床試験において非劣性である確率を予測する。技術的側面は以下の通りである:
・サンプルサイズnの臨床試験デザインXを考察する;
・パラメータ不確定性全体の固定効果推定値から多数のパラメータセットをランダムに取り出して、オンダンセトロンPK曝露量に基づいて特定の将来の試験における0〜2時間及び0〜24時間の発生頻度をシミュレーションする;
・オンダンセトロンPK曝露量に基づいてシミュレーションされた事象の確率を用いて、デザインXにおいてn名の個々の患者の反応をシミュレーションする;
・患者の反応:0=嘔吐なし、又は1=嘔吐;
・試験群のレスポンダーの比率は、サンプルサイズn、デザインXのモデルに基づく結果の1つを表す;
・デザインX及びサンプルサイズnにおいてモデルに基づいて予測されるあり得る試験結果の範囲が多数のシミュレーション結果の分布に反映される;
・これらの結果に種々の統計的検定を用いて例えば非劣性基準を試験することができる。
【0091】
将来の臨床試験の推論を得るためのシミュレーションを行うために、各臨床試験についてパラメータ不確定性から反応確率を引き出す。サンプルサイズ全体にわたるレスポンダー/非レスポンダーの0〜24時間の数をシミュレーションする。各試験のいずれかの群において予測されるレスポンダーの割合を計算する(すなわち、p1、p2;ここで、p1=制御放出(MR)オンダンセトロンのレスポンダーの割合、p2=IRオンダンセトロン(ゾフラン(登録商標))のレスポンダーの割合)。比率p1/p2の下限値(95%CI)を計算し、下限値が非劣性マージンδ(δは非劣性を示すために0.5〜1の範囲であるべき)を超える試験の比率を報告する。例えば、MRオンダンセトロン対ゾフラン(登録商標)(16mg、SD)(どちらも手術前に投与)の将来の試験において予測される平均的完全レスポンダー(0−24hr)の比率は、悪心、悪心(PONV歴あり)、嘔吐、及び嘔吐(PONV歴あり)についてn=300で、約1である。
【0092】
7.B PONV/PDNVの臨床有効性/非劣性試験:PONV/PDNVのリスクが中程度〜高度(FDAガイドラインに基づくPONVリスク40%)の患者の術後悪心・嘔吐におけるMRオンダンセトロンカプセルの安全性及び有効性を評価するための無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設研究を手術後72時間行った。患者は、手術前及びその後24時間毎に1個のMRオンダンセトロンカプセル(本明細書に記載のRR粒子及びTPR粒子を含む24mgのカプセル)又はプラセボカプセルを与えられる(あるいは、退院した場合、患者はMRオンダンセトロンカプセル/プラセボカプセルを適切なスケジュールで自己投与する)。患者は、術後期48〜72時間にわたり悪心の症状及び悪心又はレッチングの発生を評価するように頼まれる。更に入院の頻度を記録する。嘔吐は2択(yes又はno)で評価し、悪心は数値による11段階尺度(0〜10)で定量する。目標とする処置有効性は50%の低減、すなわち事象40%から20%への発生頻度の低減である。50%の低減を達成するためには、80%及び90%のCI(信頼区間)でそれぞれ90名及び120名の評価可能な患者が必要である。
【0093】
モデリングの結果、悪心及び/又は嘔吐の防止において、MRオンダンセトロンカプセルの1日1回経口投与が、bidで投与されたゾフランより優れてはいなくても、それと同様な有効性であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む少なくとも1つの持続放出製剤をそれが必要な手術患者に手術の前及び/又は後に経口投与することを含む、PONV又はPDNVを処置又は防止する方法。
【請求項2】
前記持続放出製剤がTPR粒子及びIR粒子を含み、
前記TPR粒子それぞれがTPR層でコーティングされたコアを含み;
前記コアが、選択的セロトニン5−HT拮抗薬及び薬学的に許容される有機酸を含み、前記選択的セロトニン5−HT拮抗薬と前記薬学的に許容される有機酸がSR層により互いに隔てられており;
前記TPR層が、非水溶性ポリマー及び腸溶性ポリマーを含み;
前記SR層が、非水溶性ポリマーを含み;
前記IR粒子それぞれが、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含み、米国薬局方の溶解方法を用いて溶解試験した時に(装置2−50RPMでパドル、0.1N HCl、37℃)約5分以内に前記選択的セロトニン5−HT拮抗薬の少なくとも約80wt%を放出する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択的セロトニン5−HT拮抗薬が、オンダンセトロン、トロピセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、パロノセトロン、ラモセトロン、並びにその塩及び/又は溶媒和物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択的セロトニン5−HT拮抗薬が、オンダンセトロン並びにその塩及び/又は溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記TPR層及び前記SR層の前記非水溶性ポリマーが、独立して、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、エチルアクリラートとメチルメタクリラートの中性コポリマー、第四級アンモニウム基を含むアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマー、及びワックスからなる群から選択され;
前記腸溶性ポリマーが、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、メタクリル酸とメチルメタクリラートのpH感受性コポリマー、及びセラックからなる群から選択され;
前記薬学的に許容される有機酸が、クエン酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択される、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記TPR層及び/又は前記SR層が、それぞれ独立して、薬学的に許容される可塑剤を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記TPR層及び/又は前記SR層の前記薬学的に許容される可塑剤が、独立して、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルトリ−n−ブチルシトラート、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ひまし油、アセチル化モノ−及びジ−グリセリド、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記TPR粒子それぞれが、
不活性ビーズ;
前記不活性ビーズ上に設けられた、薬学的に許容される有機酸を含む酸層;
前記酸層上に設けられたSR層;
前記SR層上に設けられた、選択的セロトニン5−HT拮抗薬を含む薬物層;及び
前記薬物層上に設けられたTPR層
を含む請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性粒子が、25〜30メッシュの平均粒径を有し、白糖球状顆粒、セルロース球状顆粒、ラクトース球状顆粒、ラクトース−MCC球状顆粒、マンニトール−MCC球状顆粒、及び二酸化シリコーン球状顆粒からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸層がフマル酸を含み;
前記SR層がエチルセルロースを含み;
前記薬物層がオンダンセトロン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含み;
前記TPR層がエチルセルロース及びフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記IR粒子が、薬学的に許容される有機酸を更に含み、前記IR粒子及び前記TPR粒子の前記薬学的に許容される有機酸が同じか異なる、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記IR粒子が、前記薬学的に許容される有機酸、前記選択的セロトニン5−HT拮抗薬、及び必要に応じて用いるバインダーを含む顆粒化物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記IR粒子が、フマル酸、オンダンセトロン又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、並びにバインダーを含む顆粒化物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記IR粒子が、フマル酸、オンダンセトロン又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、並びにバインダーを含む顆粒化物である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記持続放出製剤が、治療有効量の前記TPR粒子及び前記IR粒子を含むカプセルであり、これにより、前記カプセルに含まれるオンダンセトロン又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物の総量がオンダンセトロン24mg相当する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、前記持続放出製剤を手術前に投与することを含み、これにより、PONV及び/又はPDNVが軽減又は防止される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、前記持続放出製剤を手術前に投与することを含み、これにより、PONV及び/又はPDNVが軽減又は防止される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、前記持続放出製剤を手術後及び退院時に投与することを含み、これによりPDNVが軽減又は防止される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、前記持続放出製剤を手術後及び及び退院時に投与することを含み、これによりPDNVが軽減又は防止される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が、前記持続放出製剤を退院後に投与することを含み、これによりPDNVが軽減又は防止される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記投与が、前記持続放出製剤を退院後に投与することを含み、これによりPDNVが改善又は防止される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの更なる持続放出製剤を退院後に1日1回投与することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの更なる持続放出製剤を退院後に1日1回投与することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの更なる持続放出製剤を退院後の朝及び必要に応じて更に4日間まで1日1回投与することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの更なる持続放出製剤を退院後の朝及び必要に応じて更に4日間まで1日1回投与することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
手術の前又は直後に静脈内制吐薬を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記患者のPONV又はPDNVのリスクが中程度以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記患者のPONV又はPDNVのリスクが中程度以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が以下の基準の1又は複数を満たす、請求項27に記載の方法:
(a)女性;
(b)PONV及び/又は動揺病の既往歴;
(c)非喫煙者;
(d)前記患者が外来手術を受けた;
(e)前記患者が少なくとも60分間の外来手術を受けた;
(f)前記患者が吸入によるバランス麻酔である全身麻酔を受けた;
(g)前記患者が亜酸化窒素麻酔を受けた;
(h)前記患者が、手術中又は手術後にオピオイドを投与されている;
(i)前記患者が、腹腔鏡検査、耳鼻咽喉、脳神経手術、乳房手術(breast surgery)、斜視手術、開腹手術、及び形成手術からなる群から選択される手術を受けた。
【請求項30】
前記手術患者が、手術後にオピオイド鎮痛薬で処置される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記オピオイドが、コデイン、モルヒネ、テバイン、オリパビン、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェンタニル、α−メチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、メペリジン、ブプレノルフィン、エトルフィン、メタドン、及びトラマドールからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記手術患者が、手術後にオピオイド鎮痛薬で処置される、請求項15に記載の方法。
【請求項33】
前記オピオイドが、コデイン、モルヒネ、テバイン、オリパビン、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェンタニル、α−メチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、メペリジン、ブプレノルフィン、エトルフィン、メタドン、及びトラマドールからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの更なる経口制吐薬を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記更なる経口制吐薬が、NK−1拮抗薬、ドーパミン拮抗薬、H1ヒスタミン受容体拮抗薬、カンナビノイド、ベンゾジアゼピン、抗コリン薬、及びステロイドからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記NK−1拮抗薬が、アプレピタント及びカソピタントからなる群から選択され;前記ドーパミン拮抗薬が、ドンペリドン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、及びプロクロルペラジンからなる群から選択され;前記H1ヒスタミン受容体拮抗薬が、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、メクリジン、プロメタジン、及びヒドロキシジンからなる群から選択され;前記カンナビノイドが、カンナビス、ドロナビノール、及びナビロンからなる群から選択され;前記ベンゾジアゼピンが、ミダゾラム及びロラゼパムからなる群から選択され;前記抗コリン薬がスコパラミンであり;前記ステロイドがデキサメタゾンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの更なる経口制吐薬を投与することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項38】
前記更なる経口制吐薬が、NK−1拮抗薬、ドーパミン拮抗薬、H1ヒスタミン受容体拮抗薬、カンナビノイド、ベンゾジアゼピン、抗コリン薬、及びステロイドからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記NK−1拮抗薬が、アプレピタント及びカソピタントからなる群から選択され;前記ドーパミン拮抗薬が、ドンペリドン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、及びプロクロルペラジンからなる群から選択され;前記H1ヒスタミン受容体拮抗薬が、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、メクリジン、プロメタジン、及びヒドロキシジンからなる群から選択され;前記カンナビノイドが、カンナビス、ドロナビノール、及びナビロンからなる群から選択され;前記ベンゾジアゼピンが、ミダゾラム及びロラゼパムからなる群から選択され;前記抗コリン薬がスコパラミンであり;前記ステロイドがデキサメタゾンである、請求項38に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−532194(P2012−532194A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519612(P2012−519612)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/040868
【国際公開番号】WO2011/005671
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512000167)アプタリス ファーマテク,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】APTALIS PHARMATECH,INC.
【Fターム(参考)】