説明

振動アクチュエータ、レンズユニット、及び撮像装置

【課題】出力を効率よく高めることができると共に、被駆動部の設計の自由度を広げることができる振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】振動アクチュエータ100は、回転軸周りに回転するロータ140と、ロータ140と同軸に配されてロータ140が回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材120と、振れ回り部材120を振れ回り運動させる駆動部130と、を備え、ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う円環状且つ無端状の凸部152及び凹部154をそれぞれ、ロータ140の外周部143と振れ回り部材120の内周部121に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、当該振動アクチュエータを備えるレンズユニット及び撮像装置に関する。本発明は、特に、振れ回り部材によりロータを回転させる振動アクチュエータ、当該振動アクチュエータを備えるレンズユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動部としての複数の電気機械変換素子が周囲に配された筒状体である振れ回り部材としてのステータと、当該ステータに挿通された回転軸としてのロータとを備える振動アクチュエータとしての超音波モータが知られている(例えば、特許文献1参照)。この振動アクチュエータでは、電気機械変換素子がステータに発生させる振れ回り運動によりロータが回転される。
【0003】
他の超音波モータとして、複数の周回突条を有する回転子と、当該回転子の周回突条を収容する複数の周回溝を有する軸受部材と、回転子の軸方向の一端を振動させる固定子を用いる形態がある(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特表2007−505599号公報
【特許文献2】特開2005−354775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の振動アクチュエータでは、ロータの外周部にネジ山が形成され、ステータの内周部に上記ネジ山と螺合するネジ溝が形成されており、これらの当接部において、ステータからロータへ振動が伝達され、ネジ山がネジ溝に対して摺動する。ここで、上記振動アクチュエータでは、ロータとステータとが螺合していることから、ロータとステータとの摺動面積を効率的に増加させることができ、振動アクチュエータの出力を効率よく高めることができる。一方で、ロータは、回転すると共に軸方向へ移動するので、振動アクチュエータの用途が、ロータをボールネジとして使用する場合等、ロータの軸方向への移動を許容できる場合に限定される。
【0005】
また、特許文献2に記載の超音波モータにおいて、回転子と軸受部材とを与圧によって当接させている当接部分と、駆動力の伝達のために回転子と固定子とが当接している当接部分とが別個であるので、駆動力の伝達の効率が低い。また、固定子を回転子の軸方向の一端に設けるので、軸方向の長さが長くなり、装置全体を小型化することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、振動アクチュエータは、回転軸周りに回転するロータと、前記ロータと同軸に配されて前記ロータが回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材と、前記振れ回り部材を振れ回り運動させる駆動部と、を備え、前記ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う環状の凸部及び凹部の何れか一方を、前記ロータの外周部に備え、他方を前記振れ回り部材の内周部に有し、前記振れ回り部材の凸部及び凹部の前記他方が振れ回ることにより前記ロータの凸部及び凹部の前記一方に摺動して前記ロータを回転駆動する。
【0007】
また、レンズユニットは、光学部材と、前記光学部材を収容するレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒の内部に設けられて、前記光学部材を移動させる振動アクチュエータと、を備えるレンズユニットであって、前記振動アクチュエータは、回転軸周りに回転するロータと、前記ロータと同軸に配されて前記ロータが回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材と、前記振れ回り部材を振れ回り運動させる駆動部と、を備え、前記ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う環状の凸部及び凹部の何れか一方を、前記ロータの外周部に備え、他方を前記振れ回り部材の内周部に有し、前記振れ回り部材の凸部及び凹部の前記他方が振れ回ることにより前記ロータの凸部及び凹部の前記一方に摺動して前記ロータを回転駆動する。
【0008】
また、撮像装置は、光学部材と、前記光学部材を収容するレンズ鏡筒と、前記光学部材を移動させる振動アクチュエータと、前記光学部材によって結像された画像を撮像する撮像部と、前記振動アクチュエータおよび前記撮像部を制御する制御部と、を備える撮像装置であって、前記振動アクチュエータは、回転軸周りに回転するロータと、前記ロータと同軸に配されて前記ロータが回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材と、前記振れ回り部材を振れ回り運動させる駆動部と、を備え、前記ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う環状の凸部及び凹部の何れか一方を、前記ロータの外周部に備え、他方を前記振れ回り部材の内周部に有し、前記振れ回り部材の凸部及び凹部の前記他方が振れ回ることにより前記ロータの凸部及び凹部の前記一方に摺動して前記ロータを回転駆動する。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
まず、本発明の一実施形態に係る振動アクチュエータ100について説明する。図1は、本実施形態に係る振動アクチュエータ100の分解斜視図を示す。また、図2は、振動アクチュエータ100の斜視図を示す。さらに、図3は、振動アクチュエータ100を、ロータ140の軸方向と直交する方向(以下、径方向という)から見た断面図を示す。
【0012】
なお、説明の便宜上、ロータ140の軸方向における駆動出力側を出力側、その反対側を非出力側と記載する。また、ロータ140の径方向から見た断面を縦断面、ロータ140の軸方向から見た断面を平断面と記載する。
【0013】
図1から図3までに示すように、振動アクチュエータ100は、ロータ140と、振れ回り部材120と、駆動部130とを備えている。ロータ140は、回転軸周りに回転して動力を出力する。
【0014】
振れ回り部材120は、平断面形状が円状の内周部121を有する筒型とされている。振れ回り部材120内には、ロータ140が回転軸の周りに摺動可能に挿通されている。また、振れ回り部材120は、ロータ140と同軸上に配されている。振れ回り部材120の軸方向両端部は、保持部180により固定保持されている。駆動部130は、振れ回り部材120に、軸心がロータ140の回転軸の周りに回転するように湾曲する運動、即ち、振れ回り運動をさせる。
【0015】
また、振れ回り部材120は、周方向に分割された複数(例えば、図示するように3個)の分割片125が結合されることにより形成されている。この複数の分割片125は、結束部材としての環状部材156により結束されている。
【0016】
ロータ140の外周部143における軸方向両端側と振れ回り部材120の内周部121における軸方向両端側との間には、微小なクリアランスが確保されている。ロータ140の外周部143の軸方向中央部には、回転軸周りに延びる円環状且つ無端状の凸部152が、軸方向に沿って複数連続して形成されている。一方、振れ回り部材120の内周部121の軸方向中央部には、回転軸周りに延びる円環状且つ無端状の凹部154が、軸方向に沿って複数連続して形成されており、凸部152と凹部154とが嵌り合っている。これにより、ロータ140は、振れ回り部材120に対して挿入・抜き出し不能となる。
【0017】
ここで、凸部152と凹部154との「嵌り合い」には、ロータ140の軸方向及び径方向にあそびがある状態での嵌り合い、いわゆる「遊嵌」が含まれる。なお、凸部152を振れ回り部材120の内周部121に設け、凹部154をロータ140の外周部143に設けてもよい。
【0018】
以下、本実施形態に係る振動アクチュエータ100の構成について詳細に説明する。図1から図3までに示すように、振れ回り部材120は、弾性変形可能な種々の金属材料、樹脂材料、セラミックス材料等により、ロータ140の軸方向を長手方向とする円筒形状に形成されている。なお、振れ回り部材120の外形は矩形柱状などの他の形状であってもよい。
【0019】
ロータ140は円柱形状に形成されており、ロータ140の出力側の端部には、平断面形状が矩形状のギア結合部146が形成されている。ギア結合部146は、振れ回り部材120から出力側へ突出している。
【0020】
ロータ140の出力側の端部には、出力ギア170が配されている。出力ギア170の軸心には、ギア結合部146と嵌合可能な矩形状の軸孔172が形成されている。出力ギア170は、ギア結合部146と軸孔172とが嵌合した状態でロータ140と一体的に回転する。
【0021】
振れ回り部材120の外周部123には、駆動部130が配されている。駆動部130は、振れ回り部材120の周方向に沿って配された複数枚(本実施形態においては3枚)の電気機械変換素子132、134、136を備えている。電気機械変換素子132、134、136は、振れ回り部材120の軸方向を長手方向とする矩形板状体であり、それぞれ、分割片125の外周部123に接着等により取り付けられている。電気機械変換素子132、134、136には、図示しない電極が設けられている。電気機械変換素子132、134、136は、図示しない電源部から上記電極を介して駆動電圧を印加される。
【0022】
また、電気機械変換素子132、134、136は、駆動電圧を印加された場合に伸張する圧電材料を含んでいる。具体的には、チタン酸チタン酸ジルコン酸鉛、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電材料を含んでいる。
【0023】
なお、多くの圧電材料は脆いので、りん青銅等の高弾性金属材料で補強することが好ましい。あるいは、分割片125自体を担体にして、分割片125の外周部123に圧電材料層を形成することにより、電気機械変換素子132、134、136を形成してもよい。また、上記電極は、ニッケル、金等の電極材料を、鍍金、スパッタ、蒸着、厚膜印刷等の方法で、圧電材料の表面に直接に形成される。
【0024】
各電気機械変換素子132、134、136は、各分割片125の外周部123内に収まるように配されている。即ち、各電気機械変換素子132、134、136は、後述の分割線127から振れ回り部材120の周方向へオフセットして(ずらして)配されている。
【0025】
各凸部152はそれぞれ縦断面がV字状になるように形成されている。これにより、ロータ140の外周部143の軸方向中央部には、ロータ140の軸方向に連続する複数の凸部152により、V字状の凸凹が繰り返される、所謂鋸歯形状が形成されている。
【0026】
また、各凹部154は、それぞれ凸部152と相似形の断面V字状に形成されている。これにより、振れ回り部材120の内周部121の軸方向中央部には、ロータ140の軸方向に連続する複数の凹部154により、V字状の凸凹が繰り返される、所謂鋸歯形状が形成されている。なお、本実施形態では、凸部152及び凹部154を鋸歯形状としたが、波形状等の他の凸凹形状としてもよい。
【0027】
上述したように、凸部152と凹部154とは遊嵌状態で嵌り合っている。また、凸部152には、ロータ140の径方向外方へ向けて互いに近接し合う一対の傾斜面151、153が存する。一方、凹部154には、振れ回り部材120の径方向外方へ向けて互いに近接し合う一対の傾斜面155、157が存する。傾斜面151、155は、出力側に配されており、傾斜面153、157は、非出力側に配されている。ロータ140が出力側へ付勢された場合には、傾斜面151と傾斜面155とが当接する一方、ロータ140が非出力側へ付勢された場合には、傾斜面153と傾斜面157とが当接する。
【0028】
ロータ140の非出力側には、軸受プレート160が配されている。この軸受プレート160は、ロータ140の非出力側端部を回転自在に支持している。また、軸受プレート160と振れ回り部材120の非出力側端部との間には、付勢部材としての引張コイルバネ162が配されている。
【0029】
引張コイルバネ162の軸方向一端部は、軸受プレート160の振れ回り部材120と対向する面に取り付けられている。引張コイルバネ162の軸方向他端部は、振れ回り部材120の非出力側の端面に取り付けられている。また、引張コイルバネ162は、弾性伸張している。これにより、軸受プレート160は、引張コイルバネ162により振れ回り部材120側へ付勢されており、以って、凸部152の傾斜面151が凹部154の傾斜面155に圧接されている。
【0030】
このため、ロータ140が回転するときには、傾斜面151が傾斜面155に対して相対的に摺動する。即ち、傾斜面151と傾斜面155とにより、摺動部159が形成されている。なお、本実施形態では、引張コイルバネ162の弾性伸張力によりロータ140を振れ回り部材120側へ付勢したが、圧縮コイルバネの弾性収縮力によりロータ140を振れ回り部材120側へ付勢してもよい。また、ロータ140を振れ回り部材120側へ付勢する付勢部材を設けることは必須ではなく、例えば、出力ギア170をはすば歯車として、出力ギア170が発生するスラスト力により、ロータ140が振れ回り部材120側へ付勢されるようにしてもよい。
【0031】
図4は、図3の4−4断面図を示す。環状部材156の外形は、図3及び図4に示すように、平面視にて矩形状に形成されている。環状部材156には、振れ回り部材120と同軸の円孔158が形成されている。円孔158の直径は、振れ回り部材120の外周部123の軸方向両端部における直径よりも僅かに小径とされており、振れ回り部材120の外周部123の軸方向両端部が円孔158に圧入される。即ち、環状部材156は、振れ回り部材120の軸方向両端部に固定状態で嵌合する。上下一対の環状部材156により、振れ回り部材120の軸方向両端部において、複数の分割片125が結束されている。複数の分割片125は、ロータ140の軸方向に沿って延びる分割線127を境に周方向に分割されている。本実施形態では、振れ回り部材120は、3本の分割線127を境にロータ140の周方向に3等分されている。各分割片125は、平断面形状が円弧状、側面視にて矩形状の板材とされている。
【0032】
なお、本実施形態では、環状部材156により複数の分割片125を結束したが、複数の分割片125を接着することにより結合してもよい。また、振れ回り部材120の内部に配される結合部材に各分割片125を係止すること等によっても、複数の分割片を結合できる。
【0033】
また、環状部材156には、前記したように、保持部180が取り付けられている。保持部180は、ロータ140と同軸に配された円盤状部材である。保持部180には、振れ回り部材120が挿通される矩形状の開口186と、ネジ等が挿通される取付孔184とが形成されている。
【0034】
ここで、環状部材156の対角間は開口186の各辺よりも僅かに長く設定されており、環状部材156の角部と開口186の縁辺の中央部とが当接した状態で、環状部材156と開口186とが嵌合する。また、環状部材156の上記角部の軸方向中央部には、開口186の縁辺の中央部が嵌合可能な切欠き部102(図1〜図3参照)が形成されている。このため、環状部材156を、開口186に挿通した後に軸線周りに回転させ、四方の切欠き部102を四方の開口186の縁辺の中央部に嵌合させることにより、環状部材156を、軸線周りに位置決めした状態で保持部180と一体化できる。なお、保持部180は、取付孔184に挿通されるネジ等により、振動アクチュエータ100を駆動源として用いる被駆動装置に取り付けられる。
【0035】
次に、本実施形態における作用について説明する。図5(A)、(B)には、振動アクチュエータ100の駆動状態における振れ回り部材120の振れ回り運動を説明する概念図が示されている。振動アクチュエータ100の駆動状態では、電気機械変換素子132、134、136に対して、順次2π/3遅れた位相の交流電圧が印加される。
【0036】
ここで、電気機械変換素子132、134、136の一の電気機械変換素子に正の駆動電圧が印加されたときに、残りの二つの電気機械変換素子に負の駆動電圧が印加される。これにより、当該一の電気機械変換素子が伸張して残りの二つの電気機械変換素子が収縮する動作が起こる。そして、正の駆動電圧が印加される電気機械変換素子が、振れ回り部材120の周方向に沿った一方向へシフトしていき、また、それに合わせて、負の駆動電圧が印加される二つの電気機械変換素子も、正の駆動電圧の印加のシフト方向と同方向にシフトしていくことにより、上記動作が、振れ回り部材120の周方向へシフトしていく。
【0037】
また、振れ回り部材120の軸方向両端部は、前記したように、保持部180により固定保持されている。このため、図5(B)に示すように、振れ回り部材120の軸方向中央部が、ロータ140の周りに円運動する。即ち、振れ回り部材120全体に、軸方向中央部を腹X、軸方向両端部を節Yとする振れ回り運動が生じる。そして、振れ回り部材120の振れ回り運動によって、摺動部159において傾斜面155が傾斜面151に対して摺動することによって、当該振れ回り運動がロータ140に伝達されることにより、ロータ140が回転され、出力ギア170を介して動力が出力される。
【0038】
ここで、本実施形態では、ロータ140の回転軸周りに1周する摺動部159を設けたことにより、ロータ140と振れ回り部材120とが周方向の一部で摺動する場合と比較して、ロータ140と振れ回り部材120との摺動面積を効率良く増やすことができる。よって、振動アクチュエータ100が小型だとしても、ロータ140と振れ回り部材120との摺動面積を同等のサイズの物と比較して大きくすることができる。従って、同等のサイズの振動アクチュエータと比較して高トルクを発生させることができる。また、引張コイルバネ162の与圧により当接しているのが摺動部159であって、同じ摺動部159によって駆動力が伝達されるので、与圧による当接部分と駆動力の伝達のために当接する部分とが別個である場合に比べて、効率的にロータ140を回転駆動することができる。さらに、ロータ140を囲う振れ回り部材120を当該振れ回り部材120の外周から電気機械変換素子134によって駆動しているので、電気機械変換素子134がロータ140の軸方向の一端に配される場合に比べて、装置全体を小型化することができる。
【0039】
また、摺動部159を形成する傾斜面151及び傾斜面155は、それぞれ凸部152、凹部154に備えられている。この凸部152と凹部154とは、螺旋状ではなく、円環状且つ無端状に形成されており、ロータ140の軸方向に並んだ複数の凸部152及び凹部154により、ネジ形状ではなく、鋸歯形状の嵌め合い部が形成されている。
【0040】
このため、振れ回り部材120が振れ回り運動しているときに、ロータ140は、一定の軸方向位置で回転する。よって、出力ギア170の軸方向の位置が一定となるので、出力ギア170の軸方向への移動を許容できない被駆動部に対しても採用できる。従って、小型にも関わらず高トルクを発生でき、且つ、用途の限定を受けない振動アクチュエータを提供できる。
【0041】
また、凸部152及び凹部154をロータ140の軸方向へ複数連続して設けたことにより、ロータ140と振れ回り部材120との摺動面積をより一層増やすことができる。よって、発生するトルクをより一層大きくすることができる。
【0042】
また、摺動部159を、ロータ140の外径側へかけてロータ140の軸方向へ傾斜した傾斜面としたことにより、振れ回り部材120からロータ140へ軸方向及び径方向に振動及び荷重を伝達できる。よって、発生するトルクを効率的に高めることができる。
【0043】
また、摺動部159を、凹部154の開口側から底側へかけて、摺動部159とロータ140の軸方向に対向する孔壁としての傾斜面157側へ傾斜する傾斜面としている。即ち、凹部154を、底側から開口側へかけて幅が広がるV溝とすると共に、凸部152を、底側から頂部側へかけて幅が狭まるV字状の突起としている。このため、凸部152及び凹部154を、ロータ140の軸方向へ連続的に形成できるので、摺動部159を高密に配置できる。従って、ロータ140と振れ回り部材120との摺動面積をより一層効率良く増やすことができ、以って、発生するトルクをより一層高くすることができる。
【0044】
また、凸部152及び凹部154を、振れ回り部材120で発生する振動の腹Xの位置に配したことにより、振れ回り部材120からロータ140へ効率よく振動を伝達できる。従って、ロータ140からの出力をより一層効率的に高めることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、凸部152及び凹部154を、振れ回り部材120で発生する振動の腹Xの位置、即ち、ロータ140及び振れ回り部材120の軸方向中央部に配したが、図6に示すように、振れ回り部材120の内周部121の軸方向における全体に配してもよい。この場合には、ロータ140と振れ回り部材120との摺動面積をより一層増やすことができ、発生するトルクをより一層高くすることができる。一方で、凸部152及び凹部154を複数形成することは必須ではなく、1個でもよい。
【0046】
また、本実施形態では、振れ回り部材120の軸方向両端部を保持部180により固定保持することにより、振動の腹Xを振れ回り部材120の軸方向中央部に配したが、振れ回り部材120の軸方向中央部を保持部180により固定保持することにより、振動の腹Xを振れ回り部材120の軸方向両端部に配してもよい。この場合には、凸部152及び凹部154を、ロータ140及び振れ回り部材120の軸方向両端部に配すればよい。
【0047】
また、本実施形態では、凸部152と凹部154とは、上述したように相似形状だが、これに限られない。例えば、図7に示すように、凸部152の断面形状を、断面V字状の凹部154と嵌り合う矩形状に形成してもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、駆動部130を3枚の電気機械変換素子132、134、136で構成したが、2枚もしくは4枚以上の電気機械変換素子で構成してもよい。図8に示すように、4枚の電気機械変換素子132、134、136、138で駆動部130を構成した場合には、軸対称に配された一対の電気機械変換素子の一方にsin波の駆動電圧をかけ、他方にcos波の駆動電圧を印加することにより、振れ回り部材120を振れ回り運動させることができる。これにより、駆動電圧の制御を単純化できる。
【0049】
次に、他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。図9には、本実施形態に係る振動アクチュエータ200の振れ回り部材120及び環状部材210等が分解斜視図にて示されている。また、図10には、振れ回り部材120及び環状部材210等が斜視図にて示されている。
【0050】
これらの図に示すように、振動アクチュエータ200は、振れ回り部材120の軸方向における全体を覆う環状部材210を備えている。環状部材210は、円筒状に形成されており、その内周部が、振れ回り部材120の外周部123の軸方向における全体に嵌められている。そして、電気機械変換素子132、134、136が環状部材210の外周部に取り付けられる。
【0051】
これにより、振れ回り部材120の軸方向における全体が、環状部材210により結束される。従って、振れ回り部材120が振れ回り運動をしているときに、隣り合った分割片125の間に隙間ができることをより確実に防止でき、振れ回り部材120の振れ回り運動を安定させることができる。
【0052】
次に、他の実施形態に係る撮像装置700について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。図11には、撮像装置700の概略構成が側断面図にて示されている。
【0053】
撮像装置700は、光学部材420と、レンズ鏡筒430と、フォーカスリング710と、振動アクチュエータ100と、撮像部500と、制御部550と、を備える。レンズ鏡筒430は光学部材420を収容する。フォーカスリング710は、円環状であって手動による回転力で光学部材420を移動させる。
【0054】
振動アクチュエータ100は、光学部材420を移動させ、フォーカスリング710を回転させる。撮像部500は、光学部材420によって結像された画像を撮像する。制御部550は、振動アクチュエータ100および撮像部500を制御する。
【0055】
また、撮像装置700は、光学部材420、レンズ鏡筒430及び振動アクチュエータ100を備えるレンズユニット410と、ボディ460を含む。レンズユニット410は、マウント450を介して、ボディ460に対して着脱自在に装着される。
【0056】
光学部材420は、図中で左側にあたる入射端から順次配列された、フロントレンズ422、コンペンセータレンズ424、フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428を含む。フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428の間には、アイリスユニット440が配置される。
【0057】
振動アクチュエータ100は、一対の保持部180において、螺子等の固定部材によって、レンズ鏡筒430の内部に固定される。一対の保持部180は、振れ回り部材120の振れ回り振動における節の位置で、振れ回り部材120を支持する。これにより、振れ回り部材120の振動をレンズ鏡筒430に伝達させることがなく、振れ回り部材120の振動の撮像装置700への影響を軽減することができる。
【0058】
フォーカシングレンズ426は、レンズ鏡筒430の内径よりも小さい径を有し、光軸方向についてレンズ鏡筒430の中程に配置されている。振動アクチュエータ100は、フォーカシングレンズ426の下方に配置される。これにより、レンズ鏡筒430の径を拡大することなく、振動アクチュエータ100はレンズ鏡筒430内に収容される。振動アクチュエータ100は、例えばギア列を介してフォーカシングレンズ426を光軸方向に前進または後退させる。また、振動アクチュエータ100は、例えばギア列を介してフォーカスリング710を回転させる。
【0059】
ボディ460は、メインミラー540、ペンタプリズム470、接眼系490を含む光学部材を収容する。メインミラー540は、レンズユニット410を介して入射した入射光の光路上に傾斜して配置される待機位置と、入射光を避けて上昇する撮影位置(図中に点線で示す)との間を移動する。
【0060】
待機位置にあるメインミラー540は、入射光の大半を、上方に配置されたペンタプリズム470に導く。ペンタプリズム470は、入射光の鏡映を接眼系490に向かって出射するので、フォーカシングスクリーンの映像を接眼系490から正像として見ることができる。入射光の残りは、ペンタプリズム470により測光ユニット480に導かれる。測光ユニット480は、入射光の強度およびその分布等を測定する。
【0061】
なお、ペンタプリズム470および接眼系490の間には、ファインダ液晶494に形成された表示画像を、フォーカシングスクリーンの映像に重ねるハーフミラー492が配置される。表示画像は、ペンタプリズム470から投影された画像に重ねて表示される。
【0062】
また、メインミラー540は、入射光の入射面に対する裏面にサブミラー542を有する。サブミラー542は、メインミラー540を透過した入射光の一部を、下方に配置された測距ユニット530に導く。これにより、メインミラー540が待機位置にある場合は、測距ユニット530が被写体までの距離を測定する。なお、メインミラー540が撮影位置に移動した場合は、サブミラー542も入射光の光路から退避する。
【0063】
更に、入射光に対してメインミラー540の後方には、シャッタ520、光学フィルタ510および撮像部500が順次配置される。シャッタ520が開放される場合、その直前にメインミラー540が撮影位置に移動するので、入射光は直進して撮像部500に入射される。これにより、入射光の形成する画像が電気信号に変換される。これにより、撮像部500は、レンズユニット410によって結像された画像を撮像する。
【0064】
撮像装置700において、レンズユニット410とボディ460とは電気的にも結合されている。従って、例えば、ボディ460側の測距ユニット530が検出した被写体までの距離の情報に基づいて振動アクチュエータ100の回転を制御することにより、オートフォーカス機構を形成できる。また、測距ユニット530が振動アクチュエータ100の動作量を参照することにより、フォーカスエイド機構を形成することもできる。振動アクチュエータ100および撮像部500は、制御部550により上記の通り制御される。
【0065】
なお、振動アクチュエータ100によりフォーカシングレンズ426を移動させる場合について例示したが、アイリスユニット440の開閉、ズームレンズのバリエータレンズの移動等を振動アクチュエータ100で駆動できることはいうまでもない。この場合も、電気信号を介して測光ユニット480、ファインダ液晶494等と情報を参照し合うことにより、振動アクチュエータ100は、露出の自動化、シーンモードの実行、ブラケット撮影の実行等に寄与する。
【0066】
ところで、撮像装置700には、オートフォーカス動作中にフォーカスリング710によるマニュアルフォーカス操作が可能になる、いわゆるM/Aモードが搭載されている。即ち、フォーカシングレンズ426は、振動アクチュエータ100の出力に代えて、フォーカスリング710の手動操作による回転力によっても、フォーカス動作される。
【0067】
ここで、振動アクチュエータ100において、ロータ140と振れ回り部材120との摺動面積を効率良く増加できることにより、振動アクチュエータ100の出力を効率良く高めることができる。従って、小型の振動アクチュエータ100により同等のサイズのものと比較して大きな出力を得ることができるので、レンズユニット410及び撮像装置700における振動アクチュエータ100の占有スペースを狭小化でき、以って、レンズユニット410及び撮像装置700を小型化できる。
【0068】
以上のように、振動アクチュエータ100、200は、撮影機、双眼鏡等の光学系において、合焦機構、ズーム機構、手振れ補正機構等の駆動に好適に使用できる。さらに、精密ステージ、より具体的には電子ビーム描画装置、検査装置用各種ステージ、バイオテクノロジ用セルインジェクタの移動機構、核磁気共鳴装置の移動ベッド等の動力源に使用されうるが、用途がこれらに限られないことはいうまでもない。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る振動アクチュエータ100を分解斜視図にて示す。
【図2】本発明の実施形態に係る振動アクチュエータ100を斜視図にて示す。
【図3】本発明の実施形態に係る振動アクチュエータ100を径方向から見た断面図にて示す。
【図4】図3の4−4断面図を示す。
【図5】(A)は振れ回り部材120の径方向から見た断面図を示す。また、(B)は、振れ回り部材120の振れ回り運動を説明するための概念図を示す。
【図6】本発明の実施形態に係る振動アクチュエータの変形例を斜視図にて示す。
【図7】凸部152と凹部154との変形例を径方向から見た拡大断面図にて示す。
【図8】本発明の実施形態に係る振動アクチュエータの変形例を斜視図にて示す。
【図9】他の実施形態に係る振動アクチュエータ200を分解斜視図にて示す。
【図10】他の実施形態に係る振動アクチュエータ200を斜視図にて示す。
【図11】本発明の実施形態に係る撮像装置700の概略構成を側断面図にて示す。
【符号の説明】
【0071】
100 振動アクチュエータ、102 切欠き部、120 振れ回り部材、121 内周部、123 外周部、125 分割片、127 分割線、130 駆動部、132 電気機械変換素子、134 電気機械変換素子、136 電気機械変換素子、138 電気機械変換素子、140 ロータ、143 外周部、146 ギア結合部、151 傾斜面、152 凸部、153 傾斜面、154 凹部、155 傾斜面、156 環状部材、157 傾斜面、158 円孔、159 摺動部、160 軸受プレート、162 引張コイルバネ、170 出力ギア、172 軸孔、180 保持部、184 取付孔、186 開口、200 振動アクチュエータ、210 環状部材、410 レンズユニット、420 光学部材、422 フロントレンズ、424 コンペンセータレンズ、426 フォーカシングレンズ、428 メインレンズ、430 レンズ鏡筒、440 アイリスユニット、450 マウント、460 ボディ、470 ペンタプリズム、480 測光ユニット、490 接眼系、492 ハーフミラー、494 ファインダ液晶、500 撮像部、510 光学フィルタ、520 シャッタ、530 測距ユニット、540 メインミラー、542 サブミラー、550 制御部、700 撮像装置、710 フォーカスリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転するロータと、
前記ロータと同軸に配されて前記ロータが回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材と、
前記振れ回り部材を振れ回り運動させる駆動部と、
を備え、
前記ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う環状の凸部及び凹部の何れか一方を、前記ロータの外周部に備え、他方を前記振れ回り部材の内周部に有し、前記振れ回り部材の凸部及び凹部の前記他方が振れ回ることにより前記ロータの凸部及び凹部の前記一方に摺動して前記ロータを回転駆動する振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記凸部と前記凹部とを、前記ロータの軸方向へ複数連続して設けたことを特徴とする請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記凸部と前記凹部との摺動部を、前記ロータの外径側へかけて前記ロータの軸方向へ傾斜した傾斜面としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記摺動部を、前記凹部の開口側から底側へかけて、前記摺動部と前記ロータの軸方向に対向する前記凹部の孔壁の側へ傾斜する傾斜面としたことを特徴とする請求項3に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記凸部と前記凹部とを、前記振れ回り部材の振動の腹の位置に配したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
光学部材と、
前記光学部材を収容するレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒の内部に設けられて、前記光学部材を移動させる振動アクチュエータと、
を備えるレンズユニットであって、
前記振動アクチュエータは、
回転軸周りに回転するロータと、
前記ロータと同軸に配されて前記ロータが回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材と、
前記振れ回り部材を振れ回り運動させる駆動部と、
を備え、
前記ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う環状の凸部及び凹部の何れか一方を、前記ロータの外周部に備え、他方を前記振れ回り部材の内周部に有し、前記振れ回り部材の凸部及び凹部の前記他方が振れ回ることにより前記ロータの凸部及び凹部の前記一方に摺動して前記ロータを回転駆動するレンズユニット。
【請求項7】
光学部材と、
前記光学部材を収容するレンズ鏡筒と、
前記光学部材を移動させる振動アクチュエータと、
前記光学部材によって結像された画像を撮像する撮像部と、
前記振動アクチュエータおよび前記撮像部を制御する制御部と、
を備える撮像装置であって、
前記振動アクチュエータは、
回転軸周りに回転するロータと、
前記ロータと同軸に配されて前記ロータが回転軸周りに摺動可能に挿通された筒型の振れ回り部材と、
前記振れ回り部材を振れ回り運動させる駆動部と、
を備え、
前記ロータの回転軸周りに摺動可能に嵌り合う環状の凸部及び凹部の何れか一方を、前記ロータの外周部に備え、他方を前記振れ回り部材の内周部に有し、前記振れ回り部材の凸部及び凹部の前記他方が振れ回ることにより前記ロータの凸部及び凹部の前記一方に摺動して前記ロータを回転駆動する撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−219324(P2009−219324A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63214(P2008−63214)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】