説明

振動モータ

【課題】モータの振動量を大きくすることができ、駆動時消耗される電流量を減らすことができる。
【解決手段】内部空間を形成するベース13およびケース11と、ベース13およびケース11に回転可能に挿入されるシャフト15と、シャフト15に挿入されて回転する複数個の巻線コイル41および巻線コイル41と繋がる整流子27を含む回転子37と、回転子37のまわりに沿って配置される重量体43と、整流子27と接続されベース13に位置するブラシ25と、回転子37に対向してケース11およびベース13にそれぞれ固定される上部マグネット31および下部マグネット33を含む振動モータが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に振動モータは、回転子が偏心状態で回転する過程中振動が発生されるが、このような振動モータは主に小型に製作されて携帯電話、またはポケットベルなどに内蔵される。
【0003】
図1ないし図2は、一般的なコインタイプの振動モータに関するもので、図1は振動モータの内側上部に位置した回転子と一体型に形成された回転子モールド部の平面図を示し、図2は、図1の断面I−I'を含むコインタイプ振動モータの断面図である。
【0004】
図1および図2に示したように、ブラケット109の上部中央にシャフト105が挿入され、上記ブラケット109の上面にシャフト105と離隔されて上記シャフトの外側まわりを取り巻くドーナツ(donut)形状のマグネット108が設置される。上記マグネット108の間の空間にはベンディング部を具備するブラシ111が上側の整流子基板103と接触される。
【0005】
また、上記の整流子基板103は、回転子102の背面に具備されるし、上記回転子102はマグネット108の上側に位置してベアリング106により支持されてシャフト105を中心として回転するし、上記の整流子基板103が位置する回転子102の上面には巻線コイル107が分離形成され、これらの間に偏心力を作用させるための重量体113が設置される。
【0006】
以下、従来技術によるコインタイプ振動モータの動作に対して説明する。
【0007】
振動モータに外部電源が印加されると、上記ブラシ111と整流子基板103を介して偏心された回転子102の中に配置されている巻線コイル107に電流が流れることになり、マグネット108とケース101から構成された界磁との相互作用により、上記重量体113によって偏心された回転子102がベアリング106を介して上記シャフト105のまわりを回転することで振動が誘発される。
【0008】
しかし、従来のコインタイプの振動モータは、図1に示したように、回転子上部に重量体113が位置するのでコイル107の大きさを大きくすることができなくて、これによりモータの振動量を増加させ得ない問題点がある。また、ブラケット109にだけ配置されるので、上記コイル107を貫く磁気力線の強さが十分ではないためモータの振動量を増加させ得ない問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、モータの振動量を大きくすることができ、駆動時消耗される電流量を減らすことができる振動モータを提供する。また、本発明は、容易に製作することのできる回転子を具備する振動モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による振動モータは、内部空間を形成するベースおよびケースと、ベースおよびケースに回転可能に挿入されるシャフトと、シャフトに挿入されて回転し複数個の巻線コイルおよび巻線コイルと繋がる整流子を含む回転子と、回転子のまわりに沿って配置される重量体と、整流子と接続されベースに位置するブラシと、回転子に対向してそれぞれケースおよびベースに固定される上部マグネットおよび下部マグネットを含む。
【0011】
本発明による振動モータの実施例は次のような特徴を一つまたはその以上具備することができる。例えば、巻線コイルは、回転子上に約120゜の間隔で三つが配置され得る。そして、巻線コイルのうち、一つは中心角が約120゜であり、その他は中心角が約90゜〜120゜であっても良い。また、重量体は中心角が180゜より小さいことができ、タングステンまたはタングステン合金から構成されることができる。
【0012】
シャフトは、ケースおよびベースにベアリングを媒介として挿入され得るし、シャフトの一端部とベースの間にはスライディングワッシャーが介在され得る。また、下部マグネットとベースの間にはヨークが介在されることもできる。ヨークはケースと繋がって、ケースは磁性体で構成されても良い。そして、回転子はハード基板をさらに含み、整流子、シャフト、巻線コイルおよび重量体はハード基板とともにインサート射出により一体に形成されることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、モータの振動量を大きくするこができ、駆動時、消耗される電流量を減らすことができる振動モータを提供する。また、本発明は、容易に製作することのできる回転子を具備する振動モータを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による振動モータの実施例を添付図面に基づいて詳しく説明する。添付図面を参照して説明することにおいて、同一であるかまたは対応する構成要素は同一な図面番号を付与し、これに対する重複される説明は略する。
【0015】
図3を参照すると、本発明の一実施例による振動モータは、内部空間を形成するベース13およびケース11、ベース13およびケース11に回転可能に挿入されるシャフト15、シャフト15により支持されて振動を誘発する回転子37、回転子37のまわりに沿って配置される重量体43、整流子27と接続されてベース13に位置するブラシ25、回転子37に対向してケース11およびベース13にそれぞれ固定される上部マグネット31および下部マグネット33を含む。そして、回転子37はハード基板47上に射出物45により固定される巻線コイル41および重量体43を含む。
【0016】
本実施例による振動モータは、重量体43を回転子37のまわりに沿って配置するので、コイルの大きさを増加させて振動量を大きくすることができる。また、上部マグネットおよび下部マグネットを具備することで磁場の強さを増加させてコイルに流入される電流を減らすことができ、さらに駆動時消耗される電流量を減らすことができるようになる。そして、シャフト15、整流子27、巻線コイル41および重量体43をインサート射出成形により一体にハード基板47上に付着するので生産性を高めるし、回転子37の耐久性を向上させ得る。
【0017】
以下では、本実施例による振動モータの各構成に対して具体的に説明する。
【0018】
ケース11およびベース13は相互結合して振動モータの内部空間を形成する。そして、ケース11の中央にはシャフト15の一端部が上部ベアリング17を媒介として挿入され、ベース13の中央にはシャフト15の他端部が下部ベアリング19を媒介として挿入される。そして、ケース11の内部には上部マグネット31が付着され、ベース13の上面には下部マグネット33が付着される。また、ケース11は磁場の形成され得る磁性体を用いることができるが、この時、ヨーク34の材質と同一であっても良い。すなわち、ヨーク34が磁気透磁率の優れたニッケルなどで構成される場合、ケース11もニッケルで構成され得る。
【0019】
シャフト15は、ケース11およびベース13に、上部ベアリング17および下部ベアリング19を媒介として回転可能に挿入される。そして、シャフト15の一端部は、スライディングワッシャー29を媒介としてベース13と接している。スライディングワッシャー29は、シャフト15の一端部とベース13の間に発生する摩擦を減らしてシャフト15の回転を円滑にする。
【0020】
シャフト15の中央には回転子37が挿入されてシャフト15と一体で回転する。回転子37を接着剤でシャフト15に固定することができるが、生産性を高めるしまた回転子37の耐久性の向上のためにシャフト15、整流子27、巻線コイル41および重量体43をインサート射出成形により一体に形成することもできる。また、シャフト15には回転子37の回転に応ずる離脱を防止するためにワッシャー21が挿入されることができる。
【0021】
上部ベアリング17は、ケース11とシャフト15の間に介在されるし、下部ベアリング19はベース13とシャフト15の間に介在されてシャフト15の回転を円滑にする。上部ベアリング17または下部ベアリング19としては、流体ベアリング、流体動圧ベアリング、オイルレスベアリングなど、多様なベアリングが使用され得る。そして、上部ベアリング17が流体ベアリングである場合、流体が飛散することを防止するために、ケース11の上部中央にはメタルテープ35が付着される。
【0022】
シャフト15には、回転子37の整流子27と電気的に繋がるブラシ25が具備される。ブラシ25はベース13に固定されて、整流子27と接しながら外部から供給される電流が整流子27に流れるようにする。整流子27は回転子37とともに回転する同時にブラシ25と接しながら巻線コイル41に電流を供給する。
【0023】
回転子37は、シャフト15に挿入されて回転しながら振動を誘発するが、ハード基板47、巻線コイル41、重量体43および射出物45で構成される。
【0024】
ハード基板47は円板形状であり、ハード基板47の上面には巻線コイル41および重量体43が射出物45により固定される。
【0025】
重量体43は、図3ないし図4に示すように、回転子37のまわりの一側に偏向されるように固定されて回転子37が回転する場合、偏心を誘発して振動を生成する。重量体43の中心角は180゜以下であることが好ましいが、これは中心角が180゜を超過する場合、超過分だけの偏心量が相殺されるからである。重量体43が配置される部分の巻線コイル41''の中心角は、図4に示すように、120゜より小さいが、これは重量体43が位置する部分程度巻線コイル41の大きさも減るからである。重量体43はインサート射出成形による射出物45によりハード基板47の上に固定される。
【0026】
重量体43は、偏心量を増加させるために比重(specific gravity)の大きい材質、例えば、オスミウム(比重22.5)、白金(比重21.45)、タングステン(比重19.3)および金(比重19.29)などで構成され得る。
【0027】
射出物45はインサート射出成形(insert injection molding)により形成されて、巻線コイル41および重量体43をハード基板47の上に固定する。そして、射出物45は絶縁物質からなり、巻線コイル41の間を絶縁する役目をする。絶縁性を有する射出物45としては、熱硬化性樹脂のようなプラスチック樹脂が使用され得る。例えば、上記射出物45として、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、官能基含有のポリフェニレンエーテル樹脂などの樹脂が単独または2種以上の配合された組成物が使用され得る。
【0028】
巻線コイル41は、図4に示すように、回転子37の中央で120゜の間隔を有して三つが具備される。巻線コイル41の個数は3n(nは自然数)であり得るが、これは振動モータが3相である場合、巻線コイル41の数も3の倍数でなければならないからである。本実施例では巻線コイル41を三つに示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3n個であることができる。
【0029】
三つの巻線コイル41のうち、重量体43と対称される部分に位置する巻線コイル41'の中心角βは120゜であり、重量体43と接する二つの巻線コイル41''の中心角αは120゜以下である。このように重量体43と接する二つの巻線コイル41''の中心角が120゜以下であることは、ハード基板47の上に重量体43が位置できる空間を提供するためである。
【0030】
図4では、二つの巻線コイル41''の中心角が120゜以下であるものを示したが、本発明はこれに限られるものではなく、一つの巻線コイルの中心角が120゜以下であって残りの二つの巻線コイルの中心角は120゜であることもできる。
【0031】
マグネットは、上部マグネット31および下部マグネット33で構成される。上部マグネット31はケース11の内部面に固定されるし下部マグネット33はベース13の上面に固定される。そして、上部マグネット31および下部マグネット33は同一な中心軸を有する。
【0032】
上部マグネット31および下部マグネット33は、フェライトとネオジム(neodymium)などの永久磁石でドーナツ形状を有するように具備されて、互いに対向する方向に引力が作用するように極性が形成される。すなわち、上部マグネット31および下部マグネット33は円周方向にN極およびS極が交互に着磁される構成であり、相互対向する方向に極性が互いに異なるように着磁される。
【0033】
上部マグネット31から出た磁気力線は下部マグネット33に入った後、ヨーク34およびケース11の側面に沿って流れた後、また上部マグネット31に流入される閉磁路(closed magnetic path)を形成する。このように、本実施例は上部マグネット31および下部マグネット33の二つのマグネットを形成することで巻線コイル41をパスする磁気力線の強さが大きくなり、振動量を大きくすることができる。また、同一な振動量を有する場合、磁気力線の強さが大きくなるので、巻線コイル41に入力される電流量を減らすことができる。
【0034】
ヨーク34は下部マグネット33とベース13の間に介在されて、上部マグネット31および下部マグネット33から出た磁気力線が巻線コイル41に集中されるようにする。ヨーク34の側面は、図3に示すように、ケース11と接している。よって、ヨーク34に集中された磁気力線がケース11の側面に沿って上部マグネット31に入ることができる。
【0035】
以下では本実施例による振動モータの作動に対して説明する。
【0036】
図3に示すように、ブラシ25および整流子27を介して電流が入力されると、整流子27と繋がった巻線コイル41に電流が入力されて巻線コイル41のまわりには電場が生成される。そして、上部マグネット31および下部マグネット33により磁場が生成される。このように生成される電場および磁場はフレミングの左手の法則により電磁気力を生成するが、このような電磁気力により回転子37の回転が可能となる。そして、回転子37には重量体43が回転子37の回転中心に対して偏向されるように位置しているため、回転子37の回転に応じて振動が誘発される。このように生成された振動は、回転子37の挿入されたシャフト15を介してケース11およびベース13に伝達されて振動が外部に伝わる。
【0037】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明の多様な変更例と修正例が本発明の技術的な思想を具現するかぎり本発明の範囲に属するものとして解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来技術による振動モータ回転子の平面図である。
【図2】従来技術による振動モータの断面図である。
【図3】本発明の一実施例による振動モータの断面図である。
【図4】本発明の一実施例による回転子の平面図である。
【符号の説明】
【0039】
11 ケース
13 ベース
15 シャフト
17 上部ベアリング
19 下部ベアリング
21 ワッシャー
25 ブラシ
27 整流子
29 スライディングワッシャー
31 上部マグネット
33 下部マグネット
34 ヨーク
35 メタルテープ
37 回転子
41 巻線コイル
43 重量体
45 射出物
47 ハード基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成するベースおよびケースと、
前記ベースおよび前記ケースに回転可能に挿入されるシャフトと、
前記シャフトに挿入されて回転するし、複数個の巻線コイルと、前記巻線コイルと繋がる整流子を含む回転子と、
前記回転子のまわりに沿って配置される重量体と、
前記整流子と接続されて前記ベースに位置するブラシと、
前記回転子に対向して前記ケースおよび前記ベースにそれぞれ固定される上部マグネットおよび下部マグネットを含む振動モータ。
【請求項2】
前記巻線コイルは、前記回転子上に約120゜の間隔で三つが配置される請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記巻線コイルのうち、一つの中心角が約120゜であり、残りの中心角が約90゜〜120゜である請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記重量体は中心角が180゜より小さい請求項1に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記重量体はタングステン、またはタングステン合金から構成される請求項4に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記シャフトは前記ケースおよび前記ベースにベアリングを媒介として挿入される請求項1に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記シャフトの一端部と前記ベースの間にはスライディングワッシャーが介在される請求項1に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記下部マグネットと前記ベースの間にはヨークが介在される請求項1に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記ヨークは前記ケースと繋がり、前記ケースは磁性体から構成される請求項8に記載の振動モータ。
【請求項10】
前記回転子はハード基板をさらに含み、
前記整流子、前記シャフト、前記巻線コイルおよび前記重量体は前記ハード基板とともにインサート射出により一体に形成される請求項1に記載の振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−181392(P2007−181392A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347067(P2006−347067)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】