説明

振動制御装置

【課題】 制振手段の出力を低減することができ、小型の制振手段で実現できる効率的な振動制御装置を提供する。
【解決手段】 設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する制振手段21を有する振動制御部20とを備えた振動制御装置1において、天秤部33の一端33b側にかかる荷重によるモーメントと、天秤部33の他端33c側にかかる付勢手段35によるモーメントとの釣り合いの状態から荷重支持部10が変位すると、釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の搭乗部、特に移動体等に設置されるシート等の搭乗部に加わる振動を抑制、又は低減する振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動加速度に応じて シート下の直動型電動アクチュエータを動作制御してシートに加わる振動を抑制するシート用振動制御装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−180202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図14(a)に示すように、シートSの支持をアクチュエータ121のみでする場合、停止状態を含め常にアクチュエータ121の出力が必要となる。また、図14(b)に示すように、シートSの支持をアクチュエータ121とトーションスプリング122でする場合、停止状態ではアクチュエータ121の出力を0とすることができるが、シートSの振動を制御する場合、トーションスプリング122のバネ力が反力となってしまい、振動制御分の出力の他にバネの反力分の出力がアクチュエータ121に必要となり、大きな出力が要求されていた。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであって、制振手段の出力を低減することができ、小型の制振手段で実現できる効率的な振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端側を前記第2移動手段に回動可能に連結された天秤部と、前記天秤部の他端側と前記設置部との間に介在された付勢手段と、前記天秤部の他端側と前記設置部との間に介在されると共に、前記付勢手段と連結され長さを調整する調整手段と、を有し、前記天秤部の一端側にかかる前記荷重によるモーメントと、前記天秤部の他端側にかかる前記付勢手段によるモーメントとの釣り合いの状態から、前記荷重支持部が変位すると、前記釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなることを特徴とする。
【0006】
また、前記荷重支持部の変位が大きいほど、前記付勢手段によるモーメントの絶対値と前記荷重によるモーメントの絶対値との差が大きくなることを特徴とする。
【0007】
また、前記天秤部の支点は、一端と他端を通る直線に対して前記付勢手段側に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、前記天秤部の他端側の変位方向を前記調整手段の変位方向に変換する変位方向変換手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記変位方向変換手段は、前記天秤部他端側に連結された第3移動手段と、前記第3移動手段に対して相対移動し、前記付勢手段の他端に連結された第4移動手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記付勢手段を複数設けたことを特徴とする。
【0011】
また、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、
前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端側を前記第2移動手段に回動可能に連結された天秤部と、前記天秤部の他端側と前記設置部との間に介在された付勢手段と、前記天秤部の他端側と前記設置部との間に介在されると共に、前記付勢手段と連結され長さを調整する調整手段と、を有し、前記天秤部の一端側にかかる前記荷重によるモーメントと、前記天秤部の他端側にかかる前記付勢手段によるモーメントとの釣り合いの状態から、前記荷重支持部が変位すると、前記釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなるので、制振手段の出力を低減し、小型の制振手段で実現でき、荷重支持部材が水平方向に移動することがなく、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がない。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、前記荷重支持部の変位が大きいほど、前記付勢手段によるモーメントの絶対値と前記荷重によるモーメントの絶対値との差が大きくなるので、付勢手段によるモーメントをより効率的に使用することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、前記天秤部の支点は、一端と他端を通る直線に対して前記付勢手段側に配置されるので、小さなスペースに設置することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、前記天秤部の他端側の変位方向を前記調整手段の変位方向に変換する変位方向変換手段と、を有するので、前記天秤部の他端側と前記調整手段の変位方向を揃えることで耐久性が向上し、小スペースに配置することができ、設計の自由度が増す。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、前記変位方向変換手段は、前記天秤部他端側に連結された第3移動手段と、前記第3移動手段に対して相対移動し、前記付勢手段の他端に連結された第4移動手段と、を有するので、簡単な構造で、前記天秤部の他端側と前記調整手段の変位方向を揃えることで耐久性が向上し、小スペースに配置することができ、設計の自由度が増す。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、前記付勢手段を複数設けたので、付勢手段によるモーメントをより精密に設定することができる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたので、荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、10は荷重支持部、11は荷重支持部材、12は第1移動手段の一例としての第1スライダ、13は第1案内手段の一例としての第1スライダレール、20は振動制御部、21は制振手段の一例としての制振用アクチュエータ、22は検知手段の一例としての荷重センサ、23は検知手段の一例としての加速度センサ、30はカウンタバランス部、31は第2案内手段の一例としての第2スライダレール、32は第2移動手段の一例としての第2スライダ、33は天秤部、34は調整手段の一例としてのプリロード調整用アクチュエータ、35は付勢手段の一例としてのスプリング、Fは設置部、Sはシートである。
【0020】
振動制御装置1は、荷重支持部10により床等の設置部Fに設置され、振動制御部20で振動制御装置1上のシートS等の荷重の振動をアクティブに制御すると共に、カウンタバランス部30で荷重に対する力の釣り合いを設定するものである。
【0021】
荷重支持部10は、シートSを支持する荷重支持部材11、荷重支持部材11に設けた第1スライダ12及び設置部Fに設置された第1スライダレール13等を有する。荷重支持部材11は、シートSの下方に設置され、第1スライダレール13により上下方向に案内される第1スライダ12を有し、振動制御部20及びカウンタバランス部30に載置されている。第1スライダ12は、荷重支持部材11に設けられ、第1スライダレール13により上下方向に案内され、設置部Fに対して相対移動する。第1スライダレール13は、設置部Fに設置され、第1スライダ12及び荷重支持部材11を上下方向に案内する。
【0022】
振動制御部20は、ボイスコイルモータ等の制振用アクチュエータ21、ロードセル等の荷重センサ22、図2に示す加速度センサ23等を有する。制振用アクチュエータ21は、下部を設置部Fに設置、上部を荷重支持部材11に当接され、荷重センサ22や加速度センサ23等の状態を検知するセンサからの信号により、上下動可能に制御される。荷重センサ22は、シートSと荷重支持部材11の間に備えられ、その検出値により主にプリロード調整用アクチュエータを制御するものである。加速度センサ23は、荷重支持部10上の加速度を検知するもので、その検出値により主に制振用アクチュエータを制御するものである。なお、本実施形態では、加速度センサ23を適用したが、速度センサや変位センサ等の荷重支持部10上の状態を検知するものを適用してもよい。
【0023】
カウンタバランス部30は、第2スライダレール31、第2スライダ32、天秤部33、プリロード調整用アクチュエータ34、スプリング35等を有する。第2スライダレール31は、荷重支持部材11に設置され、第2スライダ32を移動可能に案内する。第2スライダ32は、天秤部33の一端側に連結されると共に、第2スライダレール31に案内され、荷重支持部10に対して相対移動するものである。
【0024】
天秤部33は、設置部Fに支点33aを有し、一端側33bを第2スライダ32に、他端側33cをプリロード調整用アクチュエータ34を介してスプリング35に回動可能に連結する。
【0025】
プリロード調整用アクチュエータ34は、長さを可変することができるもので、一端を天秤部33に連結され、他端をスプリング35に固着されている。スプリング35は、一端をプリロード調整用アクチュエータ34に固着され、他端を設置部Fに固着されている。
【0026】
図2は、このような構造の振動制御装置1のブロック図を示す。加速度センサ23及び荷重センサ22からの入力信号を制御手段としてのECU40に入力し、制振用アクチュエータ21及びプリロード調整用アクチュエータ34を制御することで、荷重にあわせてアクティブに振動を制御する。
【0027】
次に、プリロード調整制御について説明する。図3は、プリロード調整制御のフローチャートを示す。まず、ステップ1で、振動のない停止時における荷重を荷重センサ22により検出する(ST1)。次に、ステップ2で、検出した荷重値の一定時間分をECU40に読み込む(ST2)。続いて、ステップ3で、一定時間分の荷重値から例えば平均値を計算して基準荷重値を算出する(ST3)。次に、ステップ4で、算出した基準荷重値にあわせてプリロード調整用アクチュエータ34を作動制御する(ST4)。
【0028】
図4は、プリロード調整制御前後の振動制御装置1の状態を示すもので、図4(a)はプリロード調整制御前、図4(b)はプリロード調整制御後の状態を示すものである。図4(a)に示すプリロード調整制御前の状態から、例えば乗員PがシートSに座り、初期荷重に乗員Pの荷重が足されると、カウンタバランス部30の天秤部33が反時計方向に回転し、スプリング35に負荷がかかる。そこで、図4(b)に示すように、プリロード調整用アクチュエータ34を作動させ、天秤部33の長さを変えることにより、荷重とスプリング35による負荷とを釣り合わせる。
【0029】
このように、プリロード調整用アクチュエータ34を作動させることにより、荷重がキャンセルされ、その状態から振動制御をすることができるようになる。
【0030】
次に、本実施形態の振動制御について説明する。図5は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ11で、振動時の荷重を荷重センサ22により検出する(ST11)。次に、ステップ12で、検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値と同じか比較する(ST12)。同じ場合、制振用アクチュエータ21を作動せず、振動制御を終了する。同じでない場合、ステップ13で、検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きいか判断する(ST13)。検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合、ステップ14で、制振用アクチュエータ21を縮ませる(ST14)。検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合、ステップ15で、制振用アクチュエータ21を伸ばす(ST15)。
【0031】
ここで、本実施形態のスプリング35の特性について説明する。図6は本実施形態のスプリングの特性を示すグラフである。グラフ内の実線は天秤部33の支点33aを中心とした制御対象となる荷重によるモーメントを示し、点線はスプリング35によるモーメントを示す。そして、横軸は釣り合い位置からのシート変位、縦軸はモーメント量を示す。
【0032】
図3に示したプリロード調整制御によって求めた荷重によるモーメントとスプリング35によるモーメントとの釣り合い位置を横軸の0とした場合、荷重によるモーメントと、スプリング35によるモーメントとの釣り合いの状態から荷重支持部材11が変位すると、釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなるように設定する。例えば、
本実施形態では、荷重支持部材11が上方へ変位すると、荷重によるモーメントがスプリング35によるモーメントより大きくなり、荷重支持部材11が下方へ変位すると、スプリング35によるモーメントが荷重によるモーメントより大きくなる。特に、シートSの釣り合い位置からの変位量が大きいほど、スプリング35によるモーメントも大きくなるようにするとよい。
【0033】
このように、荷重支持部材11が変位すると、釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなるようにし、特に、シートSの変位が大きいほど、荷重によるモーメントとスプリング35によるモーメントとの差の絶対値を大きくすることにより、荷重又はスプリング35による釣り合い位置に戻ろうとする力を利用して、変位が大きい震動時の制振用アクチュエータ21の推力をカバーすることができ、制振用アクチュエータ21を小さいものとすることができる。
【0034】
図7は、振動制御の状態を示すもので、図7(a)は制振用アクチュエータ21を収縮した状態、図7(b)は制振用アクチュエータ21を伸張した状態を示すものである。
【0035】
図7(a)はステップ14に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を収縮すると、第2スライダ32が前方に移動すると共に、カウンタバランス部30の天秤部33が反時計方向に回転する。この時、シートSの変位が大きいほど、スプリング35による釣り合い位置に戻ろうとする力が働き、荷重とスプリング35による負荷は、より早くほぼ釣り合い状態に戻ることができる。
【0036】
図7(b)はステップ15に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を伸張すると、第2スライダ32が後方に移動すると共に、カウンタバランス部30の天秤部33が時計方向に回転する。この時、シートSの変位が大きいほど、荷重による釣り合い位置に戻ろうとする力が働き、荷重とスプリング35による負荷は、より早くほぼ釣り合い状態に戻ることができる。
【0037】
このように、荷重とスプリング35による負荷は、常にほぼ釣り合い状態を保持することができるので、制振用アクチュエータ21の出力を小さくすることができる。
【0038】
図8は、本実施形態の振動制御装置1を用いた場合と、図14に示す従来技術の場合とをシミュレーションで比較した結果を示す。シミュレーションは、振幅25mm周期750mmの波状路を速度70km/hで走行する条件で、荷重の振動を0にするために必要な制振用アクチュエータを求めた。
【0039】
図8(a)は、図14(a)に示すように、シートSの支持をアクチュエータのみでする場合、図8(b)は、図14(b)に示すように、シートSの支持をアクチュエータとスプリングでする場合、図8(c)は、本実施形態の場合である。
【0040】
このように、本実施形態の振動制御装置1によれば、制振用アクチュエータ21の出力を低減し、小型の制振用アクチュエータ21で実現することができる。
【0041】
図9は、第2実施形態を示すものである。本実施形態では、天秤部33の支点33aは、一端33bと他端33cを通る直線に対してスプリング35の反対側に配置されるように、一端33b側に対して他端33c側を支点33aで屈曲させている。これによって、天秤部33を配置するためのスペースが小さくなる。なお、天秤部33の形状は、支点33aでの屈曲に限らず、他の部分で屈曲させたり、湾曲形状としてもよい。
【0042】
図10は、第3実施形態を示すものである。本実施形態では、カウンタバランス部30は、第2スライダレール31、第2スライダ32、天秤部33、プリロード調整用アクチュエータ34、スプリング35、変位方向変換手段40等を有し、変位方向変換手段40は、第3スライダ41、第3スライダレール42、第4スライダ43及び第4スライダレール44等を有する。
【0043】
天秤部33は、設置部Fに支点33aを有し、一端33bを第2スライダ32に、他端33cを第3スライダ41に連結する。第3スライダ41は、第4スライダ43に設けた第3スライダレール42により案内され、第4スライダ43は、設置部Fに設けた第4スライダレール44により案内され、第3スライダに対して相対移動する。これら、天秤部33他端側に連結された第3スライダ41と、第3スライダ41を案内する第3スライダレールと、第3スライダレールを設け、スプリング35の他端に連結された第4スライダと、設置部Fに設置され、第4スライダをプリロード調整用アクチュエータ34の変位方向に案内する第4スライダレールとは、変位方向変換手段40の一例である。
【0044】
プリロード調整用アクチュエータ34は、長さを可変にすることができるもので、一端を設置部Fに連結され、他端をスプリング35に固着されている。スプリング35は、一端をプリロード調整用アクチュエータ34に固着され、他端を第4スライダ43に固着されている。プリロード調整用アクチュエータ34及びスプリング35を配置する際、プリロード調整用アクチュエータ34の伸縮方向とスプリング35の伸縮方向とを同一にすると、耐久性が向上する。
【0045】
第11図は、第4実施形態を示し、第1図に示した第1実施形態のスプリング35を第1スプリング35aと第2スプリング35bとで構成したもので、第12図は、第5実施形態を示し、第9図に示した第2実施形態のスプリング35を第1スプリング35aと第2スプリング35bとで構成したものである。
【0046】
また、第13図は、第6実施形態を示し、第10図に示した第3実施形態で使用したスプリング35を第1スプリング35aとし、それに加えて天秤部33の他端33c側と設置部Fとの間に第2スプリング35bを連結した構造である。
【0047】
このように、設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御するアクチュエータ21を有する振動制御部20とを備えた振動制御装置1において、荷重支持部10は、設置部Fに対して相対移動する第1スライダ12を有し、 カウンタバランス部30は、荷重支持部10に対して相対移動する第2スライダ32と、設置部Fに支点33aを枢支され、一端33b側を第2スライダ32に回動可能に連結された天秤部33と、天秤部33の他端33c側と設置部Fとの間に介在されたスプリング35と、天秤部33の他端33c側と設置部Fとの間に介在されると共に、スプリング35と連結され長さを調整するプリロード調整用アクチュエータ34と、を有し、天秤部33の一端33b側にかかる荷重によるモーメントと、天秤部33の他端33c側にかかるスプリング35によるモーメントとの釣り合いの状態から荷重支持部材11が変位すると、釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなるので、アクチュエータ21の出力を低減し、小型のアクチュエータ21で実現でき、荷重支持部材が水平方向に移動することがなく、スプリング35の水平方向の負荷をキャンセルすると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がない。
【0048】
また、荷重支持部10の変位が大きいほど、スプリング35によるモーメントの絶対値と荷重によるモーメントの絶対値との差が大きくなるので、スプリング35によるモーメントをより効率的に使用することができる。
【0049】
また、天秤部33の支点33aは、一端33bと他端33cを通る直線に対してスプリング35の反対側に配置されるので、小さなスペースに設置することができる。
【0050】
また、天秤部33の他端33c側の変位方向をプリロード調整用アクチュエータ34の変位方向に変換する変位方向変換手段40と、を有するので、天秤部33の他端33c側とプリロード調整用アクチュエータ34の変位方向を揃えることで耐久性が向上し、小スペースに配置することができ、設計の自由度が増す。
【0051】
また、変位方向変換手段40は、天秤部33他端33c側に連結された第3スライダ41と、前記第3スライダ41に対して相対移動し、スプリング35の他端に連結された第4スライダ43と、を有するので、簡単な構造で、天秤部33の他端33c側とプリロード調整用アクチュエータ34の変位方向を揃えることで耐久性が向上し、小スペースに配置することができ、設計の自由度が増す。
【0052】
また、スプリング35を複数設けたので、スプリング35によるモーメントをより精密に設定することができる。
【0053】
また、荷重支持部10上の状態を検知する加重センサ22又は加速度センサ23等を備え、荷重センサ22又は加速度センサ23等で検知した状態に応じてプリロード調整用アクチュエータ34又は制振用アクチュエータ21を作動するECU50を備えたので、荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図2】振動制御装置のシステム構成を示したブロック図である。
【図3】プリロード調整制御のフローチャートを示す図である。
【図4】プリロード調整制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図5】振動制御のフローチャートを示す図である。
【図6】荷重によるモーメントとスプリングによるモーメントの差を示す図である。
【図7】振動制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図8】本実施形態の振動制御装置と従来の技術とを比較したシミュレーションを示す図である。
【図9】第2実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図10】第3実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図11】第4実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図12】第5実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図13】第6実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図14】従来の技術を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1…振動制御装置、10…荷重支持部、11…支持部材、12…第1スライダ(第1移動手段)、13…第1スライダレール(第1案内手段)、20…振動制御部、21…制振用アクチュエータ(制振手段)、22…荷重センサ(検知手段)、23…加速度センサ(検知手段)、30…カウンタバランス部、31…第2スライダレール(第2案内手段)、32…第2スライダ(第2移動手段)、33…天秤部、34…プリロード調整用アクチュエータ(調整手段)、35…スプリング(付勢手段)、40…変位方向変換手段、41…第3スライダ(第3移動手段)、42…第3スライダレール(第3案内手段)、43…第4スライダ(第4移動手段)、44…第4スライダレール(第4案内手段)、50…ECU(制御手段)、F…設置部、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、
前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、
前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端側を前記第2移動手段に回動可能に連結された天秤部と、前記天秤部の他端側と前記設置部との間に介在された付勢手段と、前記天秤部の他端側と前記設置部との間に介在されると共に、前記付勢手段と連結され長さを調整する調整手段と、を有し、
前記天秤部の一端側にかかる前記荷重によるモーメントと、前記天秤部の他端側にかかる前記付勢手段によるモーメントとの釣り合いの状態から、前記荷重支持部が変位すると、前記釣り合いの状態へ戻そうとするモーメントの方が大きくなることを特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
前記荷重支持部の変位が大きいほど、前記付勢手段によるモーメントの絶対値と前記荷重によるモーメントの絶対値との差が大きくなることを特徴とする請求項1に記載された振動制御装置。
【請求項3】
前記天秤部の支点は、一端と他端を通る直線に対して前記付勢手段の反対側に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された振動制御装置。
【請求項4】
前記天秤部の他端側の変位方向を前記調整手段の変位方向に変換する変位方向変換手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の振動制御装置。
【請求項5】
前記変位方向変換手段は、前記天秤部他端側に連結された第3移動手段と、前記第3移動手段に対して相対移動し、前記付勢手段の他端に連結された第4移動手段と、を有することを特徴とする請求項4に記載の振動制御装置。
【請求項6】
前記付勢手段を複数設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の振動制御装置。
【請求項7】
前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の振動制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−223809(P2008−223809A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59532(P2007−59532)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】