説明

振動型乾燥機

【課題】 振動発生装置からの振動を効率的に容器本体の伝達することができるとともに、容器本体底部における設計の自由度や、操作性およびメンテナンス性を向上させることができる振動型乾燥機を提供する。
【解決手段】 支持部材20、21と、この支持部材に弾性体22を介して揺動自在に支承され、原料の投入口30および排出口36並びに内部を加熱する加熱手段32が設けられた容器本体23と、この容器本体23に固定されて当該容器本体23に振動を与える1以上の振動発生装置26とを備えた振動型乾燥機において、排出口36を、容器本体23の底部に設け、かつ振動発生装置26を、容器本体23の側胴部23aに固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に供給された原料に振動を与えつつ加熱乾燥するための振動型乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品あるいは化学製品等の製造工程においては、各種粉末を乾燥処理するための様々な形式の乾燥機が用いられている。
図3は、上記乾燥機の一種である従来の振動型真空乾燥機を示すものである。
この乾燥機は、基台1上に立設された4本の支柱2と、これら支柱2の上端部に、弾性を有するラバースプリング3を介して支持された構造部材4と、この構造部材4に一体化された容器本体5とから概略構成されたものである。
【0003】
ここで、容器本体5は、上部に容器本体5内を真空引きするための真空吸引管6と、原料の投入管(真空吸引管6の紙面後方側に位置するため図には現れない。)が接続され、底部にボールバルブ7を介してフレキシブルな原料排出管8が接続されるとともに、2重管構造とされた外殻5aとの間に温水や蒸気等の加熱媒体が供給されるようになっている。また、容器本体5の外周面には、保温材9が施されている。
【0004】
そして、容器本体5に一体化された構造部材4には、支柱2間を下方に垂下する平板状の一対の取付板10が一体化されており、これら取付板10の外周面に、それぞれ電動の振動発生装置11が、上記支柱2間に位置するように固定されている。なお、図中符号12は、容器本体5の底部中央から突出して環状の粉末通路を形成することにより、当該粉末の流動性を促進させとともに、内部に加熱媒体が供給されることにより、加熱性能も向上させるためのセンターポールである。
【0005】
上記構成からなる従来の振動型真空乾燥機によれば、図示されない原料管から容器本体5内に乾燥処理すべき粉末を投入し、真空吸引管6によって内部を数torrの真空雰囲気とした後に、これを外殻5aとの間に供給された熱媒体によって加熱しつつ、振動発生装置11を作動させて容器本体5自体を支柱2に対して揺動させることにより、上記粉末を均一かつ効率的に乾燥処理することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の振動型真空乾燥機にあっては、構造部材4から垂下させた取付板10に振動発生装置11を取り付けているために、当該振動発生装置11が、これら全体の重心位置よりも低い位置になってしまう。この結果、振動発生装置11において発生する振動が、効率的に容器本体5に伝達されないという問題点があった。
【0007】
また、上記取付板10および振動発生装置11が、容器本体5の下方に位置しているために、底部に設けられるボールバルブ7の位置や、原料排出管8をフレキシブルに形成しなければならない等の設計上の制約を受けるとともに、上記底部には、他に温度計等の測定計器も取り付けられているために、これらの操作やメンテナンスが難しいという問題点もあった。
【0008】
加えて、構造部材4に対する取付板10の溶接作業や、取付板10への振動発生装置11の取付作業が、容器本体5下方の狭隘な空間での作業となるために、当該振動型真空乾燥機の製造自体にも、多くの手間を要するという問題点もあった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、振動発生装置からの振動を効率的に容器本体の伝達することができるとともに、容器本体底部における設計の自由度や、操作性およびメンテナンス性を向上させることができる振動型乾燥機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持部材と、この支持部材に弾性体を介して揺動自在に支承され、原料の投入口および排出口並びに内部を加熱する加熱手段が設けられた容器本体と、この容器本体に固定されて当該容器本体に振動を与える1以上の振動発生装置とを備えた振動型乾燥機において、上記排出口を、上記容器本体の底部に設け、かつ上記振動発生装置を、上記容器本体の側胴部に固定したことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の容器本体には、内部を減圧する減圧手段が接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または2に記載の発明によれば、振動発生装置を容器本体の側胴部に固定しているために、上記振動発生装置によって生じる振動を、容器本体にその重心近傍の高さ位置において直接伝達させることができる。このため、振動発生装置による振動の伝達効率を向上させることができる。
【0013】
また、振動発生装置を容器本体の側胴部に固定した結果、容器本体の下部に大型の構造物が無くなるために、排出口を、極力容器本体の底部の中央に近づけて粉末の排出性を向上させたり、あるいは上記排出口に接続される排出管として剛性を有する直管を用いたり、さらには容器本体の下部を取り外し自在に設けて内部の清掃やメンテナンスを向上させたりする等の自由な設計を行うことが可能になる。
【0014】
加えて、上記容器本体の底部に取り付けられる排出口用の開閉弁や、各種測定計器類の操作およびメンテナンスが容易になるとともに、振動発生装置を固定するための溶接作業等を周囲が開放された容器本体の側部で行うことができるために、製造時における作業性にも優れるといった効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2は、本発明に係る振動型乾燥機を振動型真空乾燥機に適用した一実施形態を示すもので、図中符号20がこの乾燥機全体を床上に固定するための下部ベースである。この下部ベース20は、一部20aが凹状に切り欠かれた厚肉板状の部材で、その四角隅部に、支柱21が一体的に立設されている。ここで、下部ベース20および支柱21によってこの乾燥機における支持部材が構成されている。
【0016】
そして、支柱21の上端部に、ゴム製のスプリング(弾性体)22を間に介して容器本体23と一体化された構造部材24が設けられている。
この構造部材24は、容器本体23の側胴部23aの上下部にそれぞれ一体化された平板部材24a、24bと、スプリング22の上方位置において平板部材24a、24b間を一体的に連結する4組のブラケット24cとから概略構成されている。
【0017】
そして、構造部材24の平板部材24a、24b間であって、かつ周方向に180°離間した位置に、それぞれ取付板25を介して振動発生装置26が固定されている。ここで、2組の上記振動発生装置26は、中心部に設けられたモータの回転軸の両端部に偏心荷重部が設けられたもので、モータの回転軸を鉛直線に対して約45°傾斜させた状態で、かつ互いに点対称となるように設けられている。
【0018】
他方、容器本体23は、上記側胴部23aの上端部に、例えばVバンドカップリング等の締結具27を介して鏡部23bが着脱自在に設けられたもので、当該鏡部23bに原料粉末の投入口30が設けられている。また、この鏡部23bの頂部には、内部を真空引きするための真空吸引管(減圧手段)31が接続されており、この真空吸引管31には容器本体23内に垂下するバグフィルターが設けられている。
【0019】
他方、側胴部23aは、外殻23cとの間に空間32が形成された2重管構造とされており、この空間32内に温水または蒸気(加熱手段)が供給可能になっている。なお、図中符号33が、上記温水の供給口兼ドレンの排出口である。そして、外殻23cの外周には、保温材34が設けられている。
【0020】
また、側胴部23aの底面中央には、これから中空円柱状に突出するセンターポール35が形成されており、センターポール35の内部は、上記空間32と連通されている。そして、このセンターポール35によって容器本体23の底部に形成された円環状の空間の最も低い位置に、乾燥された粉末の排出口36が形成されている。さらに、この排出口36には、開閉弁37を介して直管状の排出管38が下方に傾斜するように接続されている。また、容器本体23の底部には、測温抵抗体38を挿入するための取付管39が設けられている。
【0021】
以上の構成からなる振動型真空乾燥機においては、従来のものと同様に、原料の粉末を投入口30から容器本体23内に投入し、真空吸引管31によって内部を1〜数torrの真空雰囲気にするとともに、容器本外23の外殻23cとの間の空間32に温水または蒸気を供給して内部の粉末を加熱しつつ、振動発生装置26を作動させて容器本体23自体を支柱21に対して揺動させる。
【0022】
これにより、内部の上記粉末が飛散流動することにより、当該粉末を均一かつ効率的に乾燥処理することができるとともに、乾燥処理後は、ハンドル40によって開閉弁37を開くことにより、容器本体23の底部であって最も低い位置に設けられた排出口36から、内部の粉末を余すところ無く排出管38を介して別途容器等へと排出することができる。
【0023】
この際に、上記振動型真空乾燥機によれば、振動発生装置26を容器本体23の側胴部23aに固定しているために、振動発生装置26によって生じる振動を、容器本体23にその重心とほぼ等しい高さ位置において直接伝達させることができる。このため、振動発生装置26による振動の伝達効率を向上させることができる。
【0024】
また、振動発生装置26を容器本体23の側胴部23aに固定した結果、容器本体23の下部に大型の構造物が無く、よって排出口36を容器本体23の底部の最も低い位置に形成することができるために、粉末の排出性を向上させることができる。また、排出口36に接続される排出管38として、上述したような剛性を有する直管を用いたり、あるいは容器本体23の下部を取り外し自在に設けて内部の清掃やメンテナンスを向上させたりするなどの自由な設計を行うことが可能になる。
【0025】
加えて、容器本体23の底部の排出口36に取り付けた開閉弁37を、容易に着脱式のハンドル40によって操作することができるとともに、測温抵抗体38等の容器本体23の底部に取り付けた各種測定計器類の操作やメンテナンスも容易になる。
さらには、振動発生装置26を固定するための取付板25等の溶接作業も、周囲が開放された容器本体23の側部で行うことができるために、製造時における作業性にも優れる。
【0026】
なお、上記実施の形態においては、振動発生装置26を2組設けた場合に付いてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、1組あるいは3組以上設けることもできる。
また、加熱手段として、2重管構造とした容器本体23の空間32に温水や蒸気等の熱媒体を供給する構成を例示したが、これに限らず、例えば容器本体23の外周に伝熱式のヒーターを巻回する等の他の加熱手段を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の振動型乾燥機の一実施形態を示す一部断面視した正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】従来の振動型真空乾燥機を示す一部断面視した正面図である。
【符号の説明】
【0028】
20 下部ベース
21 支柱
22 スプリング(弾性体)
23 容器本体
24 構造部材
26 振動発生装置
30 原料の投入口
31 真空吸引管(減圧手段)
32 温水または蒸気の充填空間(加熱手段)
36 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、この支持部材に弾性体を介して揺動自在に支承され、原料の投入口および排出口並びに内部を加熱する加熱手段が設けられた容器本体と、この容器本体に固定されて当該容器本体に振動を与える1以上の振動発生装置とを備えた振動型乾燥機において、
上記排出口を、上記容器本体の底部に設け、かつ上記振動発生装置を、上記容器本体の側胴部に固定したことを特徴とする振動型乾燥機。
【請求項2】
上記容器本体には、内部を減圧する減圧手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−24321(P2007−24321A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202476(P2005−202476)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】