説明

振動手段及び冷却手段を備えた電子機器

【課題】
一つのモータで振動の発生及び冷却ファンの駆動の両方が行われ、冷却ファンの駆動時に発生する振動によるユーザの使用上の不都合を解消するとともに、電力消費も抑制される電子機器を提供する。
【解決手段】
モータ401と、当該モータ401の回転に対してそれぞれ従動回転する振動体403及び冷却ファン404とを内蔵する電子機器100であって、前記電子機器100の駆動時には、前記振動体403又はこれに加えて前記冷却ファン404を従動回転させて振動を発生させる振動モードと、前記振動モードよりも振動発生を小さくしながら前記冷却ファン404を従動回転させる冷却モードとを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動手段及び冷却手段を備えた電子機器に関し、特に振動手段と冷却手段との相互の関係に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器、特に携帯電話機などに代表される携帯電子機器において、高機能化に向けた進歩は著しい。例えば携帯電話機には、当初から備えられている着信時にモータで振動体駆動して振動を発生させることで着信通知する機能の他にも、文字や画像の送受信や、さらにはインターネット接続を可能とするなどの多種多様な機能が搭載されている。さらに、携帯電話機には、上記高機能化を進めながら、所謂、「短小軽薄」も求められ、これらの要望はさらに強くなることが十分に考えられる。
【0003】
そのため、上記高機能化による内部電子素子の発熱量の増大と、小型化及び薄型化による機器内部における蓄熱量の増大といった問題が深刻なものとなってくる。
これに対して、省スペース化及び軽量化を重視する観点より、現状では上記問題に関して積極的には対応策は採られていないが、その中で携帯電子機器内への冷却ファンの設置が考えられている。しかし、冷却ファンの駆動モータが新たに設けられると、携帯電子機器の小型化及び薄型化の阻害要因や新たな発熱源となる恐れがある。そこで、振動用のモータを利用して、冷却ファンと振動モータとが一体に駆動される構成を採り、新たなモータを設けることなく冷却を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004-72420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように振動及び冷却の両方に一つのモータを兼用する構成では、冷却ファンを駆動させるときにモータが駆動されると、必然的に振動が発生してしまう。個人用携帯情報端末(PDA)などでは今後、ユーザがスタイラスや指キーボードを用いて更に多様な入力あるいは操作を行うことで、パーソナルコンピュータ(PC)に近い形態での使用(PC使用)となることが想定されており、このような使用形態を考慮するとき、冷却ファンが駆動されるたびに振動が生じていては、上記入力時においてユーザはその煩いに耐え難く、確実な入力の実行にも支障が出てしまう。
【0005】
また、上述のように冷却ファンの駆動時に常に振動が発生すれば、その振動の発生が着信によるものかについて、ユーザが判別し難い状況となることも考えられる。
また、上記のように不要な振動を発生させることは、電力を無駄に使用することになるので消費電流の低減という観点からは望ましくない。
本発明は以上の課題に鑑みてなされており、一つのモータで振動の発生及び冷却ファンの駆動の両方が行われ、冷却ファンの駆動時に発生する振動によるユーザの使用上の不都合を解消するとともに、電力消費も抑制される電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子機器の構成は以下のようにする。
モータと、当該モータの回転に対してそれぞれ従動回転する振動体及び冷却ファンとを内蔵する電子機器であって、前記電子機器の駆動時には、前記振動体又はこれに加えて前記冷却ファンを従動回転させて振動を発生させる振動モードと、前記振動モードよりも振動発生を小さくしながら前記冷却ファンを従動回転させる冷却モードとを有する構成とする。
【0007】
特に、前記振動体は、モータ軸又はこれに従動回転する軸に対し第1のワンウェイクラッチを介して配設されており、前記振動モードにおいて、前記振動体の従動回転が入状態となる向きに前記モータの回転方向が規制され、前記冷却モードにおいて、前記振動体の従動回転が切状態となるように、前記モータの回転方向が規制されることを特徴とする。
また、前記振動体は、モータ軸又はこれに従動回転する軸に対し第1のワンウェイクラッチを介して配設されており、前記冷却ファンと前記モータ軸との間には、前記第1のワンウェイクラッチが切状態となる回転方向で入状態となる第2のワンウェイクラッチが介在していることを特徴としても構わない。
【0008】
また、前記振動モードにおいて、前記振動体に対してバランス部材が離されており、前記冷却モードにおいて、前記振動体に前記バランス部材が取付けられて、前記バランス部材と前記振動体とを合わせたものの回転重心がモータ軸の軸芯に略一致されることを特徴とする電子機器としてもよい。
また、前記2つのモードは、前記振動体が前記モータ軸又はこれに従動回転する軸に対する着脱によって切り替えられることを特徴としても構わない。
【0009】
その他の構成として、前記振動体は、変形可能な材料を備えており、前記冷却モードでは、前記材料をその回転重心がモータ軸又はこれに従動回転する軸と一致する形状で保持し、前記振動モードでは、前記材料をその回転重心が前記モータ軸又はこれに従動回転する軸から偏心した形状とで保持する形状保持機構を備えるようにしても構わない。
この場合、前記材料は磁性流体であり、前記形状保持機構は、前記モータ軸に取付けられ前記磁性流体を収納する容器を有し、前記冷却モードでは、前記容器内で前記磁性流体を一方に引きつけることにより、その回転重心がモータ軸と一致する形状を保持し、前記振動モードでは、他方に引きつけることにより回転重心が前記モータ軸からずれる形状を保持することを特徴とする。
【0010】
以上のような構成に加えて、内方空間における熱を感知する熱感知装置が配されており、当該熱感知装置からの信号に基いて前記モータの駆動を制御する制御装置を備えても構わない。
さらに、前記モータの回転数は、前記冷却モードの方が前記振動モードよりも小さいことを特徴とする。
【0011】
上記構成を有する電子機器における放熱方法は、モータと、当該モータの回転に対して従動回転する振動体及び冷却ファンのうち前記冷却ファンの従動回転によって行われるものであって、前記振動体及び前記冷却ファンのうち少なくとも前記振動体を従動回転させて振動を発生させる振動モードと、当該振動モードよりも振動を小さくしながら前記冷却ファンを従動回転させる冷却モードとを有し、前記冷却モードに切替えて前記冷却ファンを従動回転させることを特徴とする。
【0012】
特に、前記冷却モードにおいて、前記振動体の回転重心とモータ軸とを一致させる。
また、前記冷却モードにおいて、前記振動モードよりも前記モータの回転数を小さくする。
また、内方に配設された電子素子の熱感知をする熱感知装置からの信号に基いて、前記モータの駆動制御を行う。
【0013】
さらに、前記駆動制御は、前記熱感知装置からの信号波形を変換する波形変換工程と、前記波形変換工程による信号に基いて前記モータの駆動を行うモータ駆動工程によって行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、モータの回転に対してそれぞれ従動回転する振動体及び冷却ファンが搭載された電子機器が、上記2つのモードを有しており、どちらのモードにおいても同一のモータからの駆動力が利用されるので、電子機器の小型化及び薄型化の妨げとならないことは勿論のこと、さらなる発熱源を設けることにもならない。さらに、冷却モードでは、振動モードのときよりも振動を小さくした状態を維持しながら冷却できるので、ユーザに対して、従来の機器で懸念されるような使用の際に入力操作を阻害するなどの煩わしさを与えることはない。
【0015】
また、冷却ファンが駆動しているときにユーザが着信であると誤認することもない。さらに、モータを共用しても、モードごとにその駆動力を調整することで、消費電力の低減を図ることができるので効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは携帯電話機を電子機器の一例として説明するが、本発明はこれに限定されず、PDA、薄型小型ノートPCなどの他の電子機器にも適用可能であることは留意すべきである。
(実施形態1)
(1)全体構成
本実施形態に係る携帯電話機100の構成について、図1を用いて説明する。
【0017】
携帯電話機100は、上部体110と下部体120とがヒンジ12を介して折りたたみ可能な構成となっている。この内、上部体110の一端側には、アンテナ61が伸縮可能に設けられている。一方、下部体120は、前面ケース11a及び背面ケース11bが組合わされてなり、側面には携帯電話機100の使用形態を切り替えるための切替部51が備えられている。下部体120の内方には、無線回路(不図示)、CPU(Central Processing Unit)32、HDD(Hard Disk Drive)(不図示)、熱量や温度を感知する熱センサ34、メモリ33などが配されたプリント基板31や、上記電子素子の冷却手段として、振動用モータを駆動源として兼用する振動冷却部40などが配されている。なお、図示していないが、上部体110には受話部、表示部などが設けられ、下部体120には送話部、キー操作部などが備えられている。以下で、上記振動冷却部40に関して説明する。
(1−1)振動冷却部40
(1−1−1)振動冷却部40の構成
図2(a)に示すように、振動冷却部40はモータ401と、振動体403と、冷却ファン404と、振動体用クラッチ機構部(以下、「振動用クラッチ」と記す。)405と、冷却ファン用クラッチ機構部(以下、「冷却用クラッチ」と記す。)406とを主要構成として有する。
【0018】
モータ401は上記プリント基板31に配され、モータ軸に従動軸402が直接あるいは変速機構(不図示)を介して連結される。なお、モータ401としては、市販のモータであれば利用でき、例えば、公称の最高回転数が10000rpm程度の性能を有するものが使用され得る。
振動体403は、その重心位置がモータ401の軸芯に対してオフセットされた異径筒型の形態を有し、従動軸402を外套する状態で配されている。ただし、振動体403は従動軸402に対して、図2(b)に示すようにベアリング407、408と振動用クラッチ405を介して回転自在に設けられている。
【0019】
振動用クラッチ405は、振動体403と従動軸402との間に設けられ、冷却用クラッチ406は、冷却ファン404と従動軸402との間に設けられている。そして、振動用クラッチ405と冷却用クラッチ406とは、従動軸402に対して互いに異なる回転方向でクラッチオンするように設定されている。なお、両クラッチ405、406は公知のワンウェイクラッチを利用したものでよく、詳細な説明は省略する。
【0020】
冷却ファン404は、図2(b)のとおり、軸体410aと略皿状体410bとからなる支持軸410に固着されており、当該支持軸410は、冷却用クラッチ406を介して従動軸402に連結されている。
これにより、振動用クラッチ405がクラッチオンする向き(A方向)にモータ401が駆動するときにだけ、その回転駆動力が振動用クラッチ405を介して振動体403に伝導される。
また、冷却用クラッチ406がクラッチオンする向き(B方向)にモータ401が回転するときにだけ、その回転駆動力が冷却用クラッチ406を介して冷却ファン404に伝導される。なお、上記の支持軸410は、図2(b)のとおり、ベアリング409により回転自在に支持され、その軸芯は従動軸402の軸芯と一致している。
(1−1−2)振動冷却部40の制御
上記構成の振動冷却部40を内蔵する携帯電話機100が電話として使用される状態(以下、「電話機能時」と記す。)のとき、振動冷却部40は、ユーザに対して振動によって着信通知を行うための振動発生源として用いられる。
【0021】
電話機能時には、図3に示すように、無線回路600を介して受話部62や送話部63などを用いることができる。このとき、モータ401の回転方向は、一方向(A方向)に設定されており、予めユーザが振動による着信通知手段を選択している場合、着信時にモータ401の回転に従って振動体403が回転する。また、鳴音手段が選択されている場合には、着信時にスピーカ64が稼動する。
【0022】
反対に、ユーザが切替部51を介して携帯電話100をPCとして使用できる状態とするとき(以下、「PC機能時」と記す。)には、振動冷却部40は内部実装素子の冷却機能を果たす。このとき、モータ401の回転方向は上記電話機能時とは逆方向(B方向)に設定される。
PC機能時には、図3に示すように、熱センサ34が常にCPU32やHDD35などの発熱量や温度を検知し、これらの電子素子の制御を統括するアプリケーション制御回路300に出力し、所定の温度または熱量が予め設定されたしきい値を超えた場合には、制御回路700が当該信号に基いてモータ401を駆動させて冷却ファン404を従動回転させる。
【0023】
なお、熱センサ34からの信号が制御回路700に至るまでには、図示していないが、信号変換装置(例えば、RCフィルター)及び電源ASICを介して信号伝達が行われる。熱センサの出力信号は、不規則な振幅値及び周期波形を有しており、信号変換装置により、振幅値がほぼ一定で安定した、所謂、直流信号に変換され、当該直流信号は、アプリケーション制御回路300に組み込まれた電源ASICに入力される。当該電源ASICには所定の振幅値が設定されており、入力信号(直流信号)の振幅値と、この設定値との大小関係の判別を行い、設定値を超える場合には、冷却が必要としてモータを駆動する信号を制御回路700に出力する。
(1−1−3)携帯電話機100が有する優位性
携帯電話機100では、振動体403及び冷却ファン404が、回転方向がそれぞれ規制されたワンウェイクラッチを介して従動軸402に接続されているため、ユーザの選択により、電話機能時には振動体403のみが従動回転可能で、PC機能時には冷却ファン404のみが従動回転可能となる。従って、携帯電話機100では、ユーザの選択により振動体403と冷却ファン404との各駆動が切り替えられる。特に、PC機能時では、ユーザが入力作業等を行っていても、振動体403が駆動されないので振動が生じず、その入力作業等が阻害されることはない。このため、ユーザが煩わしさをおぼえることはない。
【0024】
また、振動体403及び冷却ファン404は独立して適宜駆動されるが、その駆動源には従来から用いられている振動用のモータを兼用しているので、携帯電話機100のデザインや容積に大きな支障を及ぼすことなく、小型化や薄型化及び高性能化の両面をさらに充実させた携帯電話機100の実現にも繋がる。
さらに、携帯電話機100では、電話機能時及びPC機能時ごとに振動体403と冷却ファン404とを区別して駆動できるので、振動体403を駆動する際のモータ401の回転数と冷却ファン404を駆動する際のモータ401の回転数とに差異を設けることができる。これにより、携帯電話機100での消費電力の低減を図ることができる。例えば、一般に、携帯電話機において振動発生のために必要とされる回転数は、9000〜10000rpmであるが、冷却させるために必要とされる回転数は、ノートパソコンでは冷却ファンが3000〜4000rpm程度とされていることから、携帯電話機の内容積などを考慮して同程度の回転数で十分だと考えられる。
(変形例)
次に、変形例に係る携帯電話機について説明する。なお、本変形例に係る携帯電話機と上記実施形態1に係る携帯電話機100との相異点は、振動冷却部41の構成のみなので、以下ではこれについて説明する。
【0025】
図4のように、振動冷却部41では、冷却ファン414が従動軸412に固着され、さらにクラッチ機構部を1つだけ備え、このクラッチ機構部で振動体413の回転を制御する構成となっている。
振動体413は、実施形態1の振動体403と同様に、外周形状が異径筒型をし、さらに内周が同径ではあるが、半周部及び残りの半周部の互いの中心が半径方向に微小距離ずれてなり、従動軸412を外套する状態で略中央部に配されている。ただし、振動体413は図5(a)に示すように、端面にベアリング部416が接合されており、当該ベアリング部416を介して従動軸412に対して回転自在に設けられている。
【0026】
本変形例に係る振動冷却部41では、径方向に伸張及び収縮可能なZ字形状のプーリ415が従動軸412に固着され、振動体413に収容される位置に配されてなる構成でクラッチ機構部を構成しており、本変形例における大きな特徴部分となっている。このクラッチ機構部は、所謂、遠心クラッチ機構といわれるものであって、図5(b)のように、B1の方向に従動軸412が回転するときは、プーリ415の先端415aは振動体413内周の凹部413aに対して噛合することなく、クラッチオフの状態を維持する。よって、この状態ではモータ411の回転駆動力がプーリ415から振動体413に伝導されないので、振動体413は回転せずに冷却ファン414のみが回転する。一方、従動軸412がB2の方向に回転するときには、図5(c)のようにプーリ415が回転径方向に拡がるように変形し、その先端415aが振動体413内周の凹部413aに噛合して、クラッチ機構部はクラッチオンする。よって、モータ411の回転駆動力がプーリ415を介して振動体413に伝導され、振動体413も回転する。
【0027】
なお、上記プーリ415は、弾性部材からなり、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂あるいはエラストマー等の合成ゴムからなる部材である。
このように本変形例でも、PC機能時に、ユーザに対して振動による煩わしさを与えることはない。また、電話機能時では振動だけではなく同時に冷却を行うこともでき、温度上昇の抑制効果も兼ね備えることができる。さらに、1つのクラッチ機構部しか配置しないのでコスト面、省スペースの面で優位となる。
(実施形態2)
次に、実施の形態2に係る携帯電話機について説明する。なお、本実施形態においても、上記実施の形態1及び変形例との相異点である振動冷却部42にポイントを絞って説明する。
(2−1)振動冷却部42の構成
図6(a)のように、振動冷却部42は、モータ421、振動体423、冷却ファン424の他に、バランス部材425aと、円柱部材425bと、ベアリング部426と、切替部427とを有する。
【0028】
本実施形態に係る振動体423は、従動軸422方向に延びた柱状体であり、従動軸422に対する垂直断面は、従動軸422を中心とする円形の一部が切り欠かれてなり、上記実施形態1及び変形例とは相異し、振動体423は従動軸422の先端に固着されている。これにより、モータ421が駆動されると、振動体423は常に従動軸422に対して従動回転する。
また、振動体423とモータ421との間には、円柱部材425bとベアリング部426とが接合された状態で従動軸422に配されている。なお、円柱部材425bにはバランス部材425aが固着され、ベアリング部426には切替部427が固着されている。
【0029】
上記円柱部材425bは、連結部材428を介して従動軸422に配されている。上記連結部材428は、図6(b)に示す仮想平面Cの概略断面図のように、球体4281が配設された筒型部材4282と、これを覆う筒型部材4283がユニット化された、所謂、「ストロークブッシュ構造」もしくは「スライドロータリーブッシュ構造」である。これにより、従動軸422が回転しても、球体4281がその摩擦力を抑制し、外方の筒型部材4283に回転力を伝導しない。従って、連結部材428により、円柱部材425bは従動軸422に対して回転自在、且つ摺動可能となる。
【0030】
バランス部材425aは、円柱部材425bに固着されているので、上記摺動に伴って同様に従動軸422方向にスライド可能な構成である。このバランス部材425aは、上述したように、振動体423における円形断面の切り欠き部分と略同等の大きさを有しているので、振動体423の位置までスライドされることで、これらが組み合わされてなるものは、従動軸422を中心軸とする円柱体となる。
【0031】
また、冷却ファン424は、振動体423に取着されている2枚の羽根部424aと、バランス部材425aに取着されている1枚の羽根部424bとからなる。この1枚の羽根部424bも上記バランス部材425aのスライドに伴い、2枚の羽根部424aと組み合わされる。
なお、ベアリング部材426は、スラストベアリングであり、これにより、円柱部材425bの回転力が切替部427に伝導されることはない。
(2−2)振動冷却部42の駆動
電話機能時において、図7(a)のように、振動体423にはバランス部材425aは組み合わされない。この状態でモータが回転すると、振動体423は従動軸422に対して従動回転し、その回転重心は従動軸422の軸芯から外れた状態となる。同時に、2枚の羽根部424aも同様に従動回転し、その回転重心も従動軸422の軸芯から外れた状態となる。
【0032】
従って、振動体423及び上記羽根部424aの回転運動は偏心運動となるため、振動が発生する。このとき、円柱部材425b及びバランス部材425aには、連結部材428によって従動軸422の回転駆動力が伝導されることはない。
一方で、切替部427を介してPC機能時に切り替えると、図7(a)のように、振動体423の窪み部分に円柱部材425bの先端部が挿入され、それとともにバランス部材425aが振動体423に組み合わされる。この状態でモータが矢印方向に回転すると、振動体423も従動回転し、その回転力を受けてバランス部材425aも矢印方向に回転する。冷却ファン424も3枚の羽根が組み合った状態で、同様に従動回転する。
【0033】
従って、冷却ファン424の回転により、携帯電話機内の冷却を行うことができるとともに、振動体423とバランス部材425aとが組み合わされたものは、その中心軸が従動軸422の軸芯と一致した状態で回転しているので、振動体423が回転しても振動が打ち消されている。このようにして、PC機能時には、モータ421を駆動させて振動の発生を大きく抑制しながら冷却を行い、電話機能時には、確実に振動を発生することができる。
【0034】
なお、上述した構成に加えて、振動体423及び円柱部材425bの上部(Z方向)に磁極体を配し、これらが対向する背面ケースの領域にも磁極体を配し、且つ、それぞれ対向する磁極体が吸引し合うようにしても構わない。それにより、モータ421を駆動しないとき、所定の状態で振動体423及び円柱部材425bが静置するので、円柱部材425bをスライドさせたときに、振動体423とバランス部材425aとを容易に組合わせることができる。他にも、円柱部材425bと振動体423の窪み部分、又はバランス部材425aと振動体423との接触部分のそれぞれに嵌合部を設けておくと、組合わせたときに、回転力が振動体423及びバランス部材425aの両方に良好に伝導される。
【0035】
さらに、本実施形態では、電話機能時及びPC機能時の切替に対応させて、振動体423とバランス部材425aとを組み合わせているが、本発明の特徴を有していれば上記構成だけに限定せず他の構成も適用可能である。例えば、バランスのとれている振動体を従動軸に接続し、その振動体の一部を着脱可能な構成とし、PC機能時ではバランスのとれている状態、電話機能時では一部が従動軸から外れてバランスのとれていない状態としても構わない。
(実施形態3)
次に、実施の形態3に係る携帯電話機について、上記実施の形態1、2などと相違する振動冷却部43にポイントを絞って説明する。
(3−1)振動冷却部43の構成
図8(a)に示すように振動冷却部43は、モータ431、振動体433、冷却ファン434と、切替部437が接合された2つの磁極体435、436とを主要構成として有している。
【0036】
磁極体435、436はともに薄型円盤部材であり、一方はモータ431と振動体433との間、他方は振動体433と冷却ファン434との間に各々配されている。ただし、これらの磁極体435、436は各々が対向する端面側が同極性を有し、従動軸432に対して固着されておらず、切替部437のスライドに従動して従動軸方向(Y方向)にスライド可能となっている。
振動体433は、略有底筒型形状であり、底面が従動軸432に固着されている。一方で、もう片側の端面は冷却ファン434の支持軸の基端に固着されている。その内部の構造は、図8(b)のように、内表面における両端面のうち、冷却ファン434側は、従動軸方向に垂直となる平坦面(以下、「前方面」と記す。)であり、モータ431側は、従動軸に対して所定の角度だけ傾斜した平坦面(以下、「後方面」と記す。)433cである。また長手方向の略中央部には、内方側に突起するように厚肉加工された壁部433bが設けられている。
【0037】
また、当図には便宜上図示していないが、振動体433の内方には変形可能な磁性流体(例えば、水、炭化水素系オイル及びフッ素系オイルを媒体とする磁性流体)及び絶縁流体が注入されている。
本実施形態では、上記構成の振動体433に対して上記磁極体435、436を移動させることで、モータ431の駆動時において振動体433の回転バランスの調整が行われることを大きな特徴としている。
(3−2)振動冷却部43の駆動
電話機能時には、図9(a)に示すように、冷却ファン434と振動体433との間に配された磁極体(以下、「第1磁極体」と記す。)435が振動体433から最も離間して位置し、振動体433とモータ431との間に配された磁極体(以下、「第2磁極体」と記す。)436は最も近接して位置し、磁性流体438が第2磁極体436に吸引されて後方面側に分布する。この状態から、切替部437を介してPC機能時に切り替えて、図9(b)のように、電話機能時とは反対に、第1磁極体435を振動体433に最も近接させ、第2磁極体436を最も離間させると、第2磁極体436よりも第1磁極体435の吸引力の方が大きくなって、磁性流体438が前方面側に移動して均一分布する。
【0038】
この状態でモータ431を駆動して振動体433を従動回転させ、併せて冷却ファン434も従動回転させて冷却を行う。このとき、振動体433の回転遠心力により、図9(c)のように磁性流体438は周端部に移動して均一分布するので、振動体433の回転重心は従動軸432に一致しているので偏心運動とはならず、振動が生じることはない。
次に、電話機能時の状態に切り替え、図9(d)に示すように、再び第1磁極体435を振動体433から離間し、第2磁極体436を振動体433に近接させると、第2磁極体436の吸引力の方が強くなり、磁性流体438は後方面側に移動する。この状態で、モータ431を駆動させて振動体433を従動回転させると、振動体433の回転遠心力により、図9(e)のように磁性流体438は周端部に移動する。このとき、後方面が傾斜しているので、磁性流体438の分布状態に偏りが生じる。特に、上記壁部433bによって、長手方向(Y方向)への磁性流体の拡がりは制限され、その偏りは顕著となる。結果、振動体433の回転重心は従動軸432から外れ、振動体433の回転は偏心運動となって振動を発生する。
【0039】
以上のようにして、振動の発生を抑制しながら冷却を実行できる状態と、確実に振動を発生させる状態とを切り替えることができる。
(その他の事項)
なお、本発明は上記構成に限定されず、電子機器の使用に適応させてモータの駆動力を振動用及び冷却用として適宜利用できれば、他の構成であっても構わない。また、その構成部材に関しても振動や冷却を行うことのできるものであれば他でも適用可能である。例えば、冷却ファンには3枚の羽根を有する形状を用いているが、その羽根の数は勿論のこと、羽根を有しないファンレス構造でも構わない。さらに、振動冷却部や切替部の配設位置に関しても、電子機器の仕様に対応していれば他の位置でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のような冷却機能を有する構造は、小型の携帯電子機器だけなく、他の電子機器にも同様に消費電流の低減を可能としながら冷却を行うことができるため有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1に係る携帯電話の概略斜視図である。
【図2】実施形態1に係る振動冷却部の概略斜視図および概略断面図である。
【図3】実施形態1に係る携帯電話のブロック図である。
【図4】変形例に係る振動冷却部の概略斜視図である。
【図5】変形例に係る振動冷却部の模式断面図である。
【図6】実施形態2に係る振動冷却部の概略斜視図である。
【図7】実施形態2に係る振動冷却部の部分斜視図である。
【図8】実施形態3に係る振動冷却部の概略斜視図である。
【図9】実施形態3に係る振動冷却部の駆動工程断面図である。
【符号の説明】
【0042】
40、41、42、43 振動冷却部
51、427、437 切替部
100 携帯電話
401、411、421、431 モータ
402、412a、422、432 従動軸
403、413、423、433 振動体
405、406 クラッチ機構部
414、424、434 冷却ファン
430a、430b 磁極体
436 磁性流体
437 絶縁流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、当該モータの回転に対してそれぞれ従動回転する振動体及び冷却ファンとを内蔵する電子機器であって、
前記電子機器の駆動時には、
前記振動体又はこれに加えて前記冷却ファンを従動回転させて振動を発生させる振動モードと、
前記振動モードよりも振動発生を小さくしながら前記冷却ファンを従動回転させる冷却モードとを有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記振動体は、モータ軸又はこれに従動回転する軸に対し第1のワンウェイクラッチを介して配設されており、
前記振動モードにおいて、前記振動体の従動回転が入状態となる向きに前記モータの回転方向が規制され、
前記冷却モードにおいて、前記振動体の従動回転が切状態となるように、前記モータの回転方向が規制される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記振動体は、モータ軸又はこれに従動回転する軸に対し第1のワンウェイクラッチを介して配設されており、
前記冷却ファンと前記モータ軸との間には、前記第1のワンウェイクラッチが切状態となる回転方向で入状態となる第2のワンウェイクラッチが介在している
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記振動モードにおいて、前記振動体に対してバランス部材が離されており、
前記冷却モードにおいて、前記振動体に前記バランス部材が取付けられて、前記バランス部材と前記振動体とを合わせたものの回転重心がモータ軸の軸芯に略一致される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記2つのモードは、前記振動体が前記モータ軸又はこれに従動回転する軸に対する着脱によって切り替えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記振動体は、変形可能な材料を備えており、
前記冷却モードでは、前記材料をその回転重心がモータ軸又はこれに従動回転する軸と一致する形状で保持し、
前記振動モードでは、前記材料をその回転重心が前記モータ軸又はこれに従動回転する軸から偏心した形状とで保持する形状保持機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記材料は磁性流体であり、
前記形状保持機構は、前記モータ軸に取付けられ前記磁性流体を収納する容器を有し、
前記冷却モードでは、前記容器内で前記磁性流体を一方に引きつけることにより、その回転重心がモータ軸と一致する形状を保持し、
前記振動モードでは、他方に引きつけることにより回転重心が前記モータ軸からずれる形状を保持する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
内方空間における熱を感知する熱感知装置が配されており、
当該熱感知装置からの信号に基いて前記モータの駆動を制御する制御装置を備える
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
前記モータの回転数は、前記冷却モードの方が前記振動モードよりも小さい
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
モータと、当該モータの回転に対して従動回転する振動体及び冷却ファンのうち前記冷却ファンの従動回転によって行われる電子機器の放熱方法であって、
前記振動体及び前記冷却ファンのうち少なくとも前記振動体を従動回転させて振動を発生させる振動モードと、当該振動モードよりも振動を小さくしながら前記冷却ファンを従動回転させる冷却モードとを有し、
前記冷却モードに切替えて前記冷却ファンを従動回転させる
ことを特徴とする電子機器の放熱方法。
【請求項11】
前記冷却モードにおいて、前記振動体の回転重心とモータ軸とを一致させる
ことを特徴とする請求項10に記載の電子機器の放熱方法。
【請求項12】
前記冷却モードにおいて、前記振動モードよりも前記モータの回転数を小さくする
ことを特徴とする請求項10または11に記載の電子機器の放熱方法。
【請求項13】
内方に配設された電子素子の熱感知をする熱感知装置からの信号に基いて、前記モータの駆動制御を行う
ことを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の電子機器の放熱方法。
【請求項14】
前記駆動制御は、前記熱感知装置からの信号波形を変換する波形変換工程と、前記波形変換工程による信号に基いて前記モータの駆動を行うモータ駆動工程によって行う
ことを特徴とする請求項13に記載の電子機器の放熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−6672(P2007−6672A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186752(P2005−186752)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】