説明

振動検出装置

【課題】車両用ドアが備える複数の機能の制御を実現するために、歪センサへの外力の入力形態を工夫することにより、複数の振動を検出可能な振動検出装置を提供する。
【解決手段】振動又は外力による歪を受けて電気信号を生成する圧電体1と、圧電体1が取り付けられた電極板2と、電極板2を支持する支持部3とを備え、電極板2は支持部3から伝達される全体振動を検出可能であり、全体振動とは異なる個別振動を夫々生じさせる複数の押圧力が付与される押圧手段10を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア開閉装置等に設けられる振動検出装置に関する。より詳細には、圧電体と電極板と支持部とを備えた振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のドアには、ユーザの利便性や防犯等を目的として、ドアに対する接触や振動等を検出する検出装置が設けられている。
例えば、ドアハンドルに検出電極を設け、この検出電極とドアとの間で形成される静電容量の変化を検出することによりドアの開閉動作を行うドア開閉装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1のドア開閉装置は、ユーザがドアハンドルを握るとユーザの手が検出電極に触れて静電容量が変化する。コントローラは、この静電容量の変化に基づいて、ドアのロック解除を行う。
【0003】
また、歪センサによってドアハンドルへの接触や振動を検出するドアハンドル装置も知られている(例えば、特許文献2)。
特許文献2のドアハンドル装置は、ドアハンドルの開閉操作時に一体又は連動して動作するアーム部と、そのアーム部の変位を検出する歪センサと、歪センサの出力信号に基づいてドアハンドルへの接触や開閉動作を判別する判別手段とを備えている。ここで、判別手段は、防犯性を向上させることを目的として、ユーザによるドアハンドルの開閉動作とは別に、錠破り時に発生する振動を判別できるよう構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−295064号公報(第0022段落)
【特許文献2】特開2006−207120号公報(請求項1〜4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にドア開閉装置においては、車両のユーザが行う操作に対して、要求された動作のみを確実に実行する信頼性が求められる。
【0006】
この点について、特許文献1のドア開閉装置は、検出電極とドアとの間で形成される静電容量の変化を検出するものであるため、検出電極とドアとの間に異物が存在すると誤作動を起こし易いという問題があった。例えば、雨天時に雨滴が検出電極に接触すると、検出電極とドアとの間の静電容量が変化し、ドアロックが解除されてしまうおそれがある。また、ユーザが誤って電極に軽く触れてしまったような場合にも、静電容量の変化は直ちに発生するため、ユーザが意図しない動作をすることがある。
また、特許文献1のドア開閉装置では、ドアハンドル(すなわち、検出電極がある位置)への接触がなければ、例えば、別の部位に何かが接触したり、犯罪によって衝撃が与えられたりしても、それらを検出することは困難である。
【0007】
一方、特許文献2のドアハンドル装置は、歪センサによってドアハンドルへの接触や振動を検出するものであるため、雨滴の付着や軽い接触等によって誤作動を起こす可能性はそれ程高くはない。また、判別手段によって、ドアハンドルの開閉動作とは別の振動等を判別することができるので、防犯性についてもある程度向上させることができる。
ところが、特許文献2のドアハンドル装置は、アーム部の変位が歪センサに入力される構成であるため、ドアハンドルの動きから生じる単純な振動しか検出することができない。現在の車両用ドアには、ドアハンドルへの接触によるドア開閉、ドアロックの施錠・解除、パワーウィンドウの開閉、ノックによるドア開閉等、複数の機能が備えられるが、これらの機能を単純な振動の検出のみで総合的に制御することは不可能である。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば、車両用ドアが備える複数の機能の制御を実現するために、歪センサへの外力の入力形態を工夫することにより、複数の振動を検出可能な振動検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る振動検出装置の特徴構成は、振動又は外力による歪を受けて電気信号を生成する圧電体と、前記圧電体が取り付けられた電極板と、前記電極板を支持する支持部とを備え、前記電極板は前記支持部から伝達される全体振動を検出可能であり、前記電極板に複数の押圧力を付与して、前記全体振動とは異なる複数の個別振動を発生させる押圧手段を備えた点にある。
【0010】
本構成の振動検出装置によれば、圧電体が取り付けられた電極板は、支持部から伝達される全体振動、及び押圧手段により付与される複数の押圧力によって発生する複数の個別振動を検出可能である。従って、圧電体は、少なくとも3種類の波形を有する振動を検出することができるので、各振動を車両用ドアの複数の機能制御のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
【0011】
本発明に係る振動検出装置において、前記押圧手段は、前記電極板の両面において、各面に夫々異なる前記押圧力を付与する対向押圧手段であってもよい。
【0012】
本構成の振動検出装置によれば、対向押圧手段が電極板の両面に対して異なる方向から押圧力を付与することにより、圧電体は位相が異なる波形を有する2つの振動を検出することができる。つまり、支持部から伝達される全体振動と合わせて、3種類の振動を検出することができる。従って、この3種類の振動を車両用ドアの複数の機能制御のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
また、対抗押圧手段は、圧電体に対して、電極板の両面側から直接押圧力を付与することができるので、圧電体はS/N比が小さいクリアな電気信号を発生させることができる。
【0013】
本発明に係る振動検出装置において、前記押圧手段は、前記電極板が前記支持部により中間支持され、前記電極板の一面において、前記支持部を跨ぐ2つの位置に夫々異なる前記押圧力を付与する並列押圧手段であってもよい。
【0014】
本構成の振動検出装置によれば、並列押圧手段が電極板の支持部を跨ぐ2つの位置に対して夫々押圧力を付与することにより、圧電体は、例えば、位相が異なる波形を有する2つの振動を検出することができる。つまり、支持部から伝達される全体振動と合わせて、3種類の振動を検出することができる。従って、この3種類の振動を車両用ドアの複数の機能制御のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
また、並列押圧手段は、電極板に対して片面側から押圧力を付与する構成であるので、比較的簡単な構造で実現することができる。
【0015】
本発明に係る振動検出装置において、前記外力の入力特性を変更し、前記電極板に伝達する入力特性変更手段を備えてもよい。
【0016】
本構成の振動検出装置によれば、入力特性変更手段によって、さらに異なる波形を有する振動を電極板に付与することができるので、先に説明した3種類の振動と合わせて、4種類の振動を検出することができる。従って、この4種類の振動を車両用ドアの複数の機能制御のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態および図面に記載される構成に限定されるものではなく、これらと均等な構成も含む。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による振動検出装置100を示す概略構成図である。図2は、振動検出装置100の要部を示す概略斜視図である。
【0019】
この振動検出装置100は、例えば、車両に装備されるパワースライドドアやパワーバックドア等(以下、車両用ドアと称する)に使用される。振動検出装置100は、圧電体である歪センサ1、金属製の電極板2、及び電極板2を支持する支持部3を、硬質ゴム(例えば、硬度約90)又は樹脂製の筐体4の内部に備えている。筐体4は、例えば、ドアハンドルの一部を構成する。従って、筐体4は車両のボディパネルに固定される。また、筐体4の内面にはメインケース5となる樹脂層がライニングされている。
【0020】
図2に示すように、歪センサ1は電極板2にハンダ付けされ(ハンダ付け部W1)、さらに電極板2は筐体4の側に設けられた基板6から側方に突出するようにハンダ付けされる(ハンダ付け部W2)。また、電極板2は基板6に対してリベットで係止される(リベット部R)。従って、電極板2が直接取り付けられる基板6が上記支持部3となる。また、この構成において、歪センサ1は+電極として機能し、電極板2は−電極として機能する。
【0021】
電極板2は、支持部3から伝達される筐体4の振動を検出可能に構成される。ここで、筐体4の振動とは、図示しない車両用ドアを、例えば、6〜100Nの力でノックすることにより、車両用ドア全体が振動する全体振動であり、図3(a)のような正弦波に近い波形を有する電気信号を歪センサ1に生じさせる振動である。この振動は、例えば、100〜300Hzの周波数を有する。
例えば、車両用ドアを6Nの力でノックすることにより、車両用ドアに発生した全体振動が筐体4、基板6、支持部3を順に介して電極板2に伝わると、歪センサ1は約0.3mm変位し、7mVの電圧が生じる。
【0022】
また、振動検出装置100には、電極板2に複数の押圧力を付与して、上記全体振動とは異なる複数の振動(後述する個別振動)を発生させる押圧手段が設けられる。具体的には、図1に示すように、電極板2の両面(上面2a、及び下面2a)において、各面に夫々異なる押圧力を付与する対向押圧手段10が設けられる。対向押圧手段10は、電極板2を上面2aの側から押圧する第1押圧部11、及び電極板2を下面2bの側から押圧する第2押圧部12で構成される。
【0023】
第1押圧部11は、筐体4の一部に設けた軟質ゴム7(例えば、硬度約30)の作用により押圧方向に沿って往復動作可能な第1ボタン部11a、第1ボタン部11aに一端が取り付けられた硬質ゴム(例えば、硬度約90)又は樹脂製の第1移動部材11b、第1移動部材11bの他端に回動自在に取り付けられた樹脂又は金属製の当接部材11c、及び当接部材11cを筐体4に対して回動可能に支持する回転軸11dで構成される。当接部材11cと歪センサ1との間には、適宜隙間(例えば、約1mmの隙間)が設けられる。
【0024】
ユーザが第1ボタン部11aを押圧すると、第1移動部材11bが図1において上方に移動する。これに伴って、当接部材11cは回転軸11dを中心として時計回りに回動し、その結果、当接部材11cの先端部が電極板2(歪センサ1)に対して電極板2の上面2aの側から押圧力を付与する。このとき、電極板2には、図3(b)に示す波形を有する電気信号を歪センサ1に生じさせる振動が発生する。この振動は第1押圧部11によってもたらされる固有の振動であり、本発明では個別振動と称する。この個別振動は、例えば、20Hz以下の周波数を有する。そして、このような個別振動が電極板2に発生すると、例えば、歪センサ1は約1.0mm変位し、20mVの電圧が生じる。
【0025】
第2押圧部12は、筐体4の一部に設けた軟質ゴム7の作用により押圧方向に沿って往復動作可能な第2ボタン部12a、及び第2ボタン部12aに一端が取り付けられた硬質ゴム又は樹脂製の第2移動部材12bで構成される。第2移動部材12bと電極板2との間には適宜隙間(例えば、約1mmの隙間)が設けられる。
【0026】
ユーザが第2ボタン部12aを押圧すると、第2移動部材12bが図1において上方に移動する。その結果、第2移動部材12bの先端部が電極板2に対して電極板2の下面2bの側から押圧力を付与する。このとき、電極板2には、図3(c)に示す波形を有する電気信号を歪センサ1に生じさせる振動が発生する。この振動は、第2押圧部12によってもたらされる個別振動であり、図3(b)に示した波形とは逆位相の波形を有する。個別振動は、例えば、20Hz以下の周波数を有する。そして、このような個別振動が電極板2に発生すると、例えば、歪センサは約1.0mm変位し、20mVの電圧が生じる。
【0027】
これらの全体振動、及び2種類の個別振動は、以下に説明する処理が行われることで、車両用ドアの種々の機能制御に利用される。
【0028】
図4は、電極板2が検出した振動を処理する電気回路のブロック図である。
先ず、電極板2に振動が伝達されると、その振動により歪センサ1が歪を受けて電気信号を生成する。電気信号は一旦バッファ部20に保存され、その後、2つの増幅部21a,21bで夫々適切な倍率(例えば、200倍及び600倍)に増幅される。増幅信号の一方はフィルタ部であるローパスフィルタ22aに通され、所定周波数以上(例えば、20Hz以上)の成分が除去される。つまり、ローパスフィルタ22aは筐体4から伝達される全体振動を遮断し、第1押圧部11、及び第2押圧部12によって発生した個別振動のみを通過させる。他方の増幅信号はもう一つのフィルタ部であるバンドパスフィルタ22bに通され、所定周波数帯域(例えば、100〜300Hz)の成分のみが通過させられる。つまり、バンドパスフィルタ24は全体振動のみを通過させ、個別振動を遮断する。
【0029】
夫々のフィルタ22a,22bを通過した電気信号は、A/D変換部23a,23bにおいて閾値電圧(例えば、±0.3V)を基準としてA/D変換され、その結果が判定部24に送られる。
【0030】
なお、閾値電圧は、処理された電気信号の大きさに応じて適宜変更可能である。また、A/D変換部23a,23bの代わりとして、アナログデータを所定の閾値と比較して二値化を行う比較部を設けてもよい。
【0031】
判定部24では、A/D変換後のデータと記憶部(図示せず)に予め格納されている参照データとの比較が行われ、検出した電気信号の種類が判定される。そして電気信号の種類が特定されると、電気信号の種類別に割り当てられた車両用ドアの動作(例えば、ドアロックの施錠・解除、パワーウィンドウの開閉、ノックによるドア開閉)が判定部24からの指令により実行される。
なお、車両が走行状態にある場合は、判定部24はオフ状態又はスリープ状態となるため、車両用ドアの動作は実行されない。これにより、走行中に車両用ドアが開く等の不意の事故が防止され、乗員や歩行者の安全が確保される。
【0032】
このように、本実施形態の振動検出装置100においては、支持部3から伝達される全体振動と、対向押圧手段10によって付与される2種類の振動(すなわち、第1押圧部11、及び第2押圧部12による2種類の個別振動)とを合わせた3種類の振動を検出することができる。従って、この3種類の振動を車両用ドアの3つの機能制御(例えば、ドアロックの施錠・解除、パワーウィンドウの開閉、ノックによるドア開閉)のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
【0033】
また、この振動検出装置100に用いる対抗押圧手段10は、歪センサ1に対して、電極板2の上面2aの側、及び下面2bの側から直接押圧力を付与することができるので、歪センサ1はS/N比が小さいクリアな電気信号を発生させることができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による振動検出装置200を示す概略構成図である。なお、この第2実施形態における振動検出装置200では、先に説明した第1実施形態による振動検出装置100と同一の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
この振動検出装置200では、電極板2が支持部3により中間支持されている。具体的には、図5に示すように、電極板2は筐体4の上部に設けた支持ベース3aにゴム製緩衝材3b(例えば、硬度約50)を介して固定ネジ3cで螺着されている。筐体4は、例えば、ドアハンドルの一部を構成する。従って、筐体4は車両のボディパネルに固定される。歪センサ1は、電極板2の上面2aに支持部3に接近させた状態で固定される。
【0036】
また、電極板2の下面2bにおいて、支持部3を跨ぐ2つの位置に夫々異なる押圧力を付与する押圧手段として、並列押圧手段20を設けている。並列押圧手段20は、電極板2を下面2bの側から押圧する第1押圧部21、及び第2押圧部22で構成される。第1押圧部21は、筐体4の一部に設けた軟質ゴム7の作用により押圧方向に沿って往復動作可能な第1ボタン部21a、及び第1ボタン部21aに一端が取り付けられた硬質ゴム又は樹脂製の第1移動部材21bで構成される。第2押圧部22は、筐体4の一部に設けた軟質ゴム7の作用により押圧方向に沿って往復動作可能な第2ボタン部22a、及び第2ボタン部22aに一端が取り付けられた硬質ゴム又は樹脂製の第2移動部材22bで構成される。
【0037】
ユーザが第1ボタン部21aを押圧すると、第1移動部材21bが図1において上方に移動する。その結果、第1移動部材21bの先端部が電極板2に対して電極板2の下面2bの側から押圧力を付与する。第2ボタン部22a、及び第2移動部材22bの動作も、基本的には第1ボタン部21a、及び第1移動部材21bの動作と同様である。ただし、第1ボタン部21aを押圧した場合と第2ボタン部22aを押圧した場合とでは、歪センサ1の歪み方が異なる。
【0038】
第1ボタン部21aを押圧すると、図5において、電極板2は支持部3の左側が上方に反り返ると共に、支持部3の右側は反動を受けて下方に下がる。このとき、電極板2には、図3(c)に示す波形を有する電気信号を歪センサ1に生じさせる振動が発生する。
一方、第2ボタン部22aを押圧すると、図5において、電極板2は支持部3の右側が上方に反り返ると共に、支持部3の左側は反動を受けて下方に下がる。このとき、電極板2には、図3(b)に示す波形を有する電気信号を歪センサ1に生じさせる振動が発生する。
【0039】
このように、第1ボタン部21aと第2ボタン部22aとでは、それらの押圧時に振動板2に発生する振動の波形は互いに逆位相となる。
【0040】
本実施形態においては、第1移動部材21bと支持部3との距離が、第2移動部材22bと支持部3との距離より短くなるよう設定しておくのが好適である。このような距離設定とすれば、電極板2の左右での夫々の押圧によって生じる歪センサ1の歪量の差が小さくなるので、2種類の個別振動の検出が確実となる。
【0041】
このように、本実施形態の振動検出装置200においても、支持部3から伝達される全体振動と第1押圧部21、及び第2押圧部22による2種類の個別振動とを合わせた3種類の振動を検出することができる。そして、この3種類の振動を車両用ドアの3つの機能制御(例えば、ドアロックの施錠・解除、パワーウィンドウの開閉、ノックによるドア開閉)のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
【0042】
また、本実施形態において採用する並列押圧手段20は、電極板2に対して片面側から押圧力を付与する構成であるので、比較的簡単な構造で実現することができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態による振動検出装置300を示す概略構成図である。この第3実施形態における振動検出装置300は、先に説明した第1実施形態による振動検出装置100において、入力特性変更手段30を追加したものである。従って、第1実施形態による振動検出装置100と同一の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
入力変更手段30は、外力の入力特性(例えば、入力速度)を変更し、当該変更後の力を電極板2に付与するために設けられる。具体的には、図6に示すように、入力特性変更手段30は、筐体4の一部に設けた軟質ゴム7の作用により押圧方向に沿って往復動作可能な第3ボタン部30a、第3ボタン部30aに一端が取り付けられた硬質ゴム又は樹脂製の第3移動部材30b、第3移動部材の移動速度を変換する変換機構30c、及び変換機構30cによって変換された速度で電極板2の上面2aの側に衝突する衝突部材30dで構成される。
【0045】
ユーザが第3ボタン部30aを押圧すると、第3移動部材30bが図6において上方に移動する。このときの第3移動部材30bの移動速度をv1とする。第3移動部材30bの移動速度v1が変換機構30cに入力されると、この移動速度v1はより大きい移動速度v2に増速され、衝突部材30dに伝達される。衝突部材30dは移動速度v2で電極板2の上面2aの側に衝突し、その後直ちに元の位置に復帰する。このとき、電極板2には、図8のような波形を有する減衰振動が発生する。この減衰振動は入力特性変更手段30によってもたらされる固有の振動であり、本発明において個別減衰振動と称する。
【0046】
入力特性変更手段30は具体的には、例えば、図7に示す機構を採用することができる。この入力特性変更手段30では、第3移動部材30bにラチェット部30fが設けられ、メインケース5に一端が固定された衝突部材30dにピン30eが設けられる。第3移動部材30bが上方に移動すると、ラチェット部30fは衝突部材30dのピン30eを押し上げる。そして、第3移動部材30fが所定の位置を超えるとピン30eがラチェット部30fから外れ、その弾みで衝突部材30dが電極板2又は歪センサ1を殴打し、その後、衝突部材30dは電極板2又は歪センサ1から直ちに離間する。
【0047】
上記入力特性変更手段30によってもたらされる個別減衰振動は、第1実施形態、及び第2実施形態で説明した全体振動および2つの個別振動とは波形が全く異なるものであるから、車両用ドアの機能制御のためのスイッチとして利用することができる。
【0048】
このように、本実施形態の振動検出装置300では、4種類の振動を車両用ドアの4つの機能制御(例えば、ドアロックの施錠・解除、パワーウィンドウの開閉、ノックによるドア開閉、通常のドア開閉)のためのスイッチとして利用することにより、車両用ドアの総合的な制御が可能となる。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)上記第1実施形態では、対向押圧手段10のうちの第1押圧部11を、筐体4の一部に設けた軟質ゴム(例えば、硬度約30)の作用により押圧方向に沿って往復動作可能な第1ボタン部11a、第1ボタン部11aに一端が取り付けられた硬質ゴム(例えば、硬度約90)又は樹脂製の第1移動部材11b、第1移動部材11bの他端に回動自在に取り付けられた樹脂又は金属製の当接部材11c、及び当接部材11cを筐体4に対して回動可能に支持する回転軸11dで構成したが、第1押圧部11を電極板2の上面側に当該電極板2を挟むように第2押圧部12に対して対向配置しても構わない。この場合、第1移動部材11bは歪センサ1に直接当接するので、当接部材11c、及び回転軸11dは不要となる。
【0050】
(2)上記第2実施形態では、電極板2はゴム製緩衝材3bを介して筐体4の上方に固定ネジ3cで螺着されているが、第1実施形態のように筐体4に対して水平方向に突出するように固定されても構わない。
【0051】
(3)上記第3実施形態では、第1実施形態による振動検出装置100に入力特性変更手段30を追加した構成としたが、第2実施形態による振動検出装置200に入力特性変更手段30を追加した構成としても構わない。
【0052】
(4)本発明の振動検出装置は、様々な機能制御のためのスイッチに適用することができる。例えば、ハンマーのような硬い物体で車両用ドアのガラスを割ると、ドアノックよりも周波数が高く強い振動が発生するので、これを検出することにより、防犯装置のスイッチとして利用することができる。また、車両の足回りのバランスが左右で崩れると、走行時に低い周波数の振動が発生するので、これを検出することにより、足回りの異常検出装置のスイッチとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態による振動検出装置を示す概略構成図
【図2】振動検出装置の要部を示す概略斜視図
【図3】各種の振動によって生じる電気信号の波形図
【図4】電極板が検出した振動を処理する電気回路のブロック図
【図5】本発明の第2実施形態による振動検出装置を示す概略構成図
【図6】本発明の第3実施形態による振動検出装置を示す概略構成図
【図7】入力特性変更手段の一例を示す概略構成図
【図8】減衰振動によって生じる電気信号の波形図
【符号の説明】
【0054】
1 歪センサ(圧電体)
2 電極板
3 支持部
10 対向押圧手段(押圧手段)
20 並列押圧手段(押圧手段)
30 入力特性変更手段
100 振動検出装置
200 振動検出装置
300 振動検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動又は外力による歪を受けて電気信号を生成する圧電体と、
前記圧電体が取り付けられた電極板と、
前記電極板を支持する支持部とを備え、
前記電極板は前記支持部から伝達される全体振動を検出可能であり、
前記電極板に複数の押圧力を付与して、前記全体振動とは異なる複数の個別振動を発生させる押圧手段を備えた振動検出装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記電極板の両面において、各面に夫々異なる前記押圧力を付与する対向押圧手段である請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記電極板が前記支持部により中間支持され、前記電極板の一面において、前記支持部を跨ぐ2つの位置に夫々異なる前記押圧力を付与する並列押圧手段である請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項4】
前記外力の入力特性を変更し、前記電極板に伝達する入力特性変更手段を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の振動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−123659(P2009−123659A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299349(P2007−299349)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】