振動片、振動子、発振器、センサー及びデバイス
【課題】CI値を抑え、かつ振動特性を悪化させることなく小型化が可能な圧電振動片と、このような圧電振動片を利用した圧電デバイスを提供すること。
【解決手段】圧電材料により形成された基部51と、前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕35,36と前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝33,34と、前記長溝に形成した励振用の電極とを備えており、前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成。
【解決手段】圧電材料により形成された基部51と、前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕35,36と前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝33,34と、前記長溝に形成した励振用の電極とを備えており、前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片と、パッケージやケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器や圧電ジャイロセンサー等において、圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスが広く使用されている。
図9は、圧電デバイスに従来より用いられている圧電振動片の一例を示す概略平面図であり、図10は図9のA−A線切断端面図である。
図において、圧電振動片1は、水晶などの圧電材料をエッチングすることにより、図示する外形を形成するもので、パッケージ(図示せず)等に取付けられる矩形の基部2と、基部2から図において右方に延長された一対の振動腕3,4を備えており、これら振動腕の主面(表裏面)に長溝3a,4aを形成するとともに、必要な励振用の電極を形成したものである(特許文献1参照)。
このような圧電振動片1においては、励振用の電極を介して駆動電圧が印加されると、各振動腕3,4の先端部を近接・離間するようにして、屈曲振動することにより、所定の周波数の信号が取り出されるようになっている。
【0003】
ところで、このような圧電振動片1は、これを利用した圧電デバイスが取付けられる上記した種々の製品の小型化にともない、小型に形成することがもとめられており、このため、圧電振動片1もできる限り小型に形成しなければならず、特にその全長AL1を小さくすることがもとめられる。そして、製品の小型化は不断に進展していることから、圧電振動片1においては、より小型に形成していくことができる構造がもとめられている。
ここで、図示のような音叉型圧電振動片である圧電振動片1の周波数fは、振動腕3,4の長さをl、腕幅をwとした場合、w/l2に比例する。
このことは、一方向に長い圧電振動片1を小型化しようとして、図9における全長AL1の大きさを小さくしようとする場合、振動腕の長さlを短くすると、周波数が高くなることを意味する。また、振動腕の幅wが小さくなると、周波数は下がる。このことから、従来の周波数を維持して、小型化を図るためには、振動腕の長さをある程度短くしつつ腕幅wを小さくしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−261575
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧電振動片1を小型化する上では、これまでの周波数である例えば32kHz(32.768kHz)を維持するために、振動腕3,4の長さlを短くし、腕幅wを小さくすることがもとめられるが、小型の圧電振動片1を加工する上では、その特性を維持しながら、特に腕幅wを小さく加工しようとすると、以下のような困難がある。
【0006】
具体的には、振動腕3,4には、図10に示すような溝3a,4aを加工する必要がある。図10のtの寸法は、例えば水晶ウエハなどの加工材料の条件に拘束されるため変化しないので、これまでのものが例えば100μmである場合においては、小型化する場合にも100μmである。
これに対して、腕幅wが、これまでのものが100μmであったものを、小型化により50μm程度とする場合を考える。腕幅100μmの際に、溝幅C1が70μm程度、側壁厚みS1,S1がそれぞれ15μm程度づつあったものが、腕幅wを50μm程度とすると、溝幅C1が40μm程度、側壁厚みS1,S1はそれぞれ5μm程度づつとしなければならない。
【0007】
このような圧電振動片を作った場合には、振動腕3,4の剛性は大きく低下し、駆動電圧の印加による上述の屈曲振動の際には、図10におけるZ方向の振幅が加わり、振動腕3,4のX方向に沿った屈曲振動が、矢印SF,SFで誇張して示すような屈曲振動になってしまう。
図11は、従来構造のまま圧電振動片を小型化した場合の振動特性を示すグラフであり、図の横軸に沿って、駆動電圧のレベルを徐々に増大させると、縦軸の周波数変化がマイナス方向に生じる。このことは、図10のZ方向振動の成分が多くなって、エネルギーロスの多い振動となってしまうことを示しており、CI(クリスタルインピーダンス)値の増大の原因となる。
【0008】
また、CI値を抑制するための効果的な対策としては、図9で説明した長溝3a,4aを長くして、励振用の電極を形成する面積を増やす方法がある。しかしながら、圧電振動片には、複数の振動モードがあり、通常使用される基本波は、例えば32.768kHzで、これに対して、圧電振動片1の2次の高調波は、250kHz付近にある。長溝3a,4aを長くして、基本波のCI値を低くできたとしても、2次の高調波のCI値も低くなることで、高調波のCI値/基本波のCI値、である「CI値比」が小さくなると、基本波ではなく高調波での発振の可能性が出てくる。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、CI値を抑え、かつ振動特性を悪化させることなく小型化が可能な圧電振動片と、このような圧電振動片を利用した圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、第1の発明にあっては、圧電材料により形成された基部と、前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、前記長溝に形成した励振用の電極とを備えており、前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている圧電振動片により、達成される。
第1の発明の構成によれば、振動腕の根本部分が先端側と比較してその剛性を強化されることにより、2次の高調波における振動の際の大きく歪む位置をより先端側に位置させることができると考えられる。このことにより、長溝を長くして圧電材料の電界効率を上げて、基本波のCI値を低くしつつも、このことが、2次の高調波のCI値の低下を招くことがないようにすることができる。かくして、小型化しても、基本波のCI値だけを低く抑えることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記各振動腕は、先端にいくに従って徐々に腕幅が小さくなるように構成されていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、振動腕に関して基部側の剛性が高く、先端にいくにしたがって剛性が低くなる構造を容易に実現できる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの構成において、前記長溝が前記基部側において、溝幅が狭くなるように構成されていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、長溝が設けられる振動腕においては、この長溝が前記基部側のその溝幅が小さくなるようにされることにより、長溝の両側の側壁の壁厚が増大するので、その領域の剛性は高くなる。このため、振動腕の基部側の剛性を高くし、先端側の剛性をこれより低くする構造を実現することができる。
【0013】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明の構成において、前記長溝には、溝幅の方向に設けたリブ状もしくは壁状の補強部が、長溝の長さ方向に沿って複数設けられており、前記複数の補強部が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、長溝に設けた前記補強部が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されているので、前記基部側で振動腕の剛性が高く、先端側にいくにしたがい剛性が低下する構造を実現することができる。
【0014】
第5の発明は第1ないし第4のいずれかの発明の構成において、前記基部の前記振動腕の基端部に近接した箇所には、部分的に幅方向に切り込んだ切り込み部が形成されていることを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、振動腕側からの振動が基部側へ漏れ込むことを防止し、一層、CI値を低く抑えることができる。
【0015】
また、上述の目的は、第6の発明にあっては、パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、前記圧電振動片が、圧電材料により形成された基部と、前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、前記長溝に形成した励振用の電極とを備えており、前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている圧電デバイスにより、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧電デバイスの実施形態を示す概略平面図。
【図2】図1のB−B線概略断面図。
【図3】図1のC−C線切断端面図。
【図4】圧電振動片の長さ方向に関して、各部の歪み量を縦軸に示したグラフ。
【図5】図1の圧電振動片のドライブレベル特性を示すグラフ。
【図6】図1の圧電振動片のCI値比を示すグラフ。
【図7】変形例1の概略平面図。
【図8】変形例2の概略平面図。
【図9】従来の圧電振動片の概略平面図。
【図10】図9のA−A線切断端面図。
【図11】図10の圧電振動片のドライブレベル特性を示すグラフ。
【図12】図10の圧電振動片のCI値比を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし図3は、本発明の圧電デバイスの実施形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のB−B線概略断面図、図3は図1のC−C線切断端面図である。
これらの図において、圧電デバイス30は、圧電振動子を構成した例を示しており、この圧電デバイス30は、図1および図2に示すように、パッケージ37内に圧電振動片32を収容している。パッケージ37は、図2に示すように、第1の基板55と第2の基板56とを積層して形成されており、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して図示の形状とした後で、焼結して形成されている。
【0018】
パッケージ37は、図2に示すように、第2の基板56の内側の材料を除去することで、内部空間Sのスペースを形成している。この内部空間Sが圧電振動片32を収容するための収容空間である。そして、第1の基板55に形成した電極部31,31の上に、導電性接着剤43,43を用いて、圧電振動片32の基部に設けた引出し電極33a,34aの箇所を載置して接合している。なお、電極部31,31はパッケージ裏面の実装端子41,42と導電スルーホールなどで接続されている。パッケージ37は、圧電振動片32を収容した後で、透明なガラス製の蓋体40が封止材38を用いて接合されることにより、気密に封止されている。これにより、蓋体40を封止した後で、外部からレーザ光LBを照射して圧電振動片32の電極(図示せず)などをトリミングして、周波数調整できるようになっている。
【0019】
圧電振動片32は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。この圧電振動片32は、図1に示すように、パッケージ37側と固定される基部51と、この基部51を基端として、図において右に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕35,36を備えている。
各振動腕35,36の主面には、好ましくは、それぞれ長さ方向に延びる長溝33,34を形成し、図3に示すように、この長溝内に励振用の電極が設けられている(符号省略)。このような圧電振動片32の音叉状の外形と、各振動腕に設ける長溝は、それぞれ例えば水晶ウエハなどの材料をフッ酸溶液などでウエットエッチングしたり、ドライエッチングすることにより精密に形成することができる。
【0020】
励振電極は、この長溝内と、各振動腕の側面とに形成され、各振動腕について長溝内の電極と、側面に設けた電極が対となるようにされ、各電極は、図1で説明した引出し電極33a,34aにそれぞれ引き回されている。これにより、圧電デバイス30を実装基板などに実装した場合に、外部からの駆動電圧が、各実装端子41,42から、電極部31,31を介して圧電振動片32の各引出し電極33a,34aに伝えられ、上記した各励振電極に伝えられるようになっている。
【0021】
これにより、長溝33,34内の励振電極に駆動電圧が印加されることによって、駆動時に、各振動腕の長溝が形成された領域の内部の電界効率を高めることができるようになっている。長溝33,34が長い程、振動腕35,36を形成する材料について電界効率が向上し、振動腕の全長Lに対して、長溝33,34の基部51からの長さPLが、少なくともPL/L=0.7程度までは、長くするほど圧電振動片32のCI値は下がることがわかっている。
また、好ましくは、基部51には、この基部51の幅方向の寸法に関して部分的に縮幅して形成した凹部もしくは切り込み部44,44が形成されている。この切り込み部44,44は、基部51の各振動腕35,36の付け根に近接した箇所である。これにより、各振動腕35,36の屈曲振動による振動の基部51側への漏れ込みを大きく低減することができ、CI値の抑制効果を得ることができる。
【0022】
さらに、圧電振動片32においては、図1に示されている形状に各振動腕35,36が形成されている。各振動腕は同じ形状であるから、振動腕35について説明する。この実施形態では、基部51から延びる振動腕35の腕幅はW1で、その全長にわたって変化がない。
ところが、長溝33は、その基部51寄りの基端部で、溝幅MW1が小さく、先端にいくに従って溝幅MW2が次第に大きくなるようにされている。
【0023】
これにより、振動腕35の根本部分が先端側と比較してその剛性を強化される。すなわち、振動腕35の長溝33において、溝幅が小さくされている符号MW1の箇所では、長溝33の両側の壁部(図3参照)の厚みが、振動腕35のより先端側の領域よりも厚くされることによって、剛性が強化されている。
このため、後述するように、2次の高調波における振動の際に大きく歪む位置を、振動腕35のより先端側に位置させることができると考えられ、このことにより、長溝33を長くして圧電材料の電界効率を上げて、基本波のCI値を低くしつつも、2次の高調波のCI値の低下を招くことがないようにすることができる。かくして、小型化しても、基本波のCI値を低く抑えることができる圧電振動片を提供することができる。
【0024】
この点について、さらに詳しく説明する。
図4は、従来の圧電振動片1と、本実施形態の圧電振動片32について、駆動電圧を印加して屈曲振動させる場合、横軸に示した圧電振動片の長さ方向に関して、各部の歪み量を縦軸に示したグラフであり、図4(a)は従来の圧電振動片1、図4(b)は本実施形態の圧電振動片32を示し、Aは基本波による振動時の歪み量、Bは2次の高調波による振動時の歪み量をそれぞれ表している。なお、これらの図において、圧電振動片の基部の切り込み部または凹部は図が複雑になるので、記載を省略している。
【0025】
図4のグラフで示す歪み量に関して、基本波Aは、振動腕の先端になるに従い歪みは小さくなっていくが、高調波Bでは振動腕先端側に大きな歪みを持っているところがある。こうした歪み方の違いにより、励振電極を長くして行った時の基本波のCI値低下に比べ高調波のCI値低下は大きくなる。 また、図4(a)の従来の圧電振動片1においては、長溝3a,4aの長さPL1は、図9の振動腕の全長lを1としたとき、例えば0.5程度になるようにされている。これに対して、図4(b)の本実施形態の圧電振動片32では、長溝33,34の長さPL2は、図1の振動腕の全長Lを1としたとき、たとえば0.6程度としている。これによって、CI値が抑制されるようになっている。
【0026】
ここで、圧電振動片の振動腕に関して、従来と同じ構造を採用すると、形成されている励振電極位置における2次高調波Bのマイナス歪み量が急激に増大する。
そうすると、基本波のCI値を低くできたとしても、2次の高調波のCI値はさらに低くなり、高調波のCI値/基本波のCI値であるCI値比が小さくなり、「1」を下回る。そうなると基本波ではなく高調波での発振の可能性がでてくる。
【0027】
そこで、長溝33について、図1で説明したように、その基部51寄りの基端部で、溝幅MW1が小さく、先端にいくに従って溝幅MW2が次第に大きくなるようにしたことで、図4(a)と、図4(b)とを比較して理解されるように、2次の高調波の歪み量Bにおけるマイナス方向のピーク位置が、符号CM1と符号CM2とでそれぞれ示すように、距離MBで示す分だけ、圧電振動片の振動腕の長さ方向(図示のY方向)に沿って、先端側に移動する。
【0028】
このことにより、形成されている励振電極位置における2次高調波Bのマイナス歪み量は低く抑えることができるようになる。こうして、基本波のCI値を低くしつつも、高調波のCI値の低下は抑えられることになる。 図5は、本実施形態の圧電振動片32についてのドライブ特性を示すグラフであり、図の横軸に沿って、駆動電圧のレベルを徐々に増大させると、縦軸の周波数変化がプラス方向に生じている。このことは、図10で説明したZ方向振動の成分を抑制でき、エネルギーロスが僅かであって、CI値が抑制できることを示している。
また、図6は、圧電振動片32のCI値比(高調波のCI値/基本波のCI値)を示しており、CI値比は全体として1よりも大きい。
かくして、圧電振動片32では、各振動腕35,36の電界効率を向上させて、CI値を低くすることができ、しかも2次の高調波のCI値は低くならないので、基本波での良好な振動特性を維持できる。
【0029】
図7は、圧電振動片の変形例1を示す概略平面図であり、図1の圧電振動片32と同じ符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
圧電振動片60の各振動腕35,36の長溝33,34には、溝幅の方向に設けたリブ状もしくは壁状の補強部61が形成されている。各振動腕35,36は同じ構造であるから、振動腕36についてだけ説明すると、補強部61は、複数個が、長溝34の長さ方向にY沿って複数設けられている。
【0030】
そして、これら複数の補強部61,61,61は、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程、その間隔t1,t2,t3が次第に大きな間隔となるように設けられている。
このように、長溝34に設けた各補強部61,61,61が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されているので、基部51側で振動腕36の剛性が高く、先端側にいくにしたがい剛性が低下する構造とされている。
これによって、上述の実施形態と同様、図4で説明したように、2次の高調波の歪み量Bにおけるマイナス方向のピーク位置が、符号CM1と符号CM2とでそれぞれ示すように、距離MBで示す分だけ、圧電振動片60の振動腕36の長さ方向(Y方向)に沿って、先端側に移動されているので、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0031】
図8は、圧電振動片の変形例2を示す概略平面図であり、図1の圧電振動片32と同じ符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
変形例2の圧電振動片70においては、各振動腕35,36が、先端にいくに従って徐々に腕幅が小さくなるように構成されている。各振動腕35,36は同じ構造であるから、振動腕36についてだけ説明すると、振動腕36の基端部側の腕幅W3は、先端側の腕幅W2よりも大きく、腕幅は、基端部から先端側にいくに従って、徐々に小さくなるようにされている。
これにより、基部51側で振動腕36の剛性が高く、先端側にいくにしたがい剛性が低下する構造とされている。
【0032】
さらに好ましくは、長溝34に関して、その基部51寄りの領域である領域Rtの箇所において、溝幅が小さく形成されている。
このため、長溝34の領域Rtに関しては、溝をはさむ両側の壁部の厚みが大きいことから、振動腕36の基部51に近接した領域の剛性は、その領域より先端側と比べると、より高い剛性となるようにされている。
これによって、上述の実施形態と同様、図4で説明したように、2次の高調波の歪み量Bにおけるマイナス方向のピーク位置が、符号CM1と符号CM2とでそれぞれ示すように、距離MBで示す分だけ、圧電振動片70の振動腕36の長さ方向(Y方向)に沿って、先端側に移動されているので、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限定されない。所謂音叉型の圧電振動片において、その振動腕の根本付近の剛性が高くされる構成を備えていれば、上述の実施形態や変形例以外の構造を備えるものも本発明の範囲である。
また、各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、この発明は、箱状のパッケージに圧電振動片を収容したものに限らず、シリンダー状の容器に圧電振動片を収容したもの、圧電振動片をジャイロセンサとして機能するようにしたもの、さらには、圧電振動子、圧電発振器等の名称にかかわらず、圧電振動片を利用したあらゆる圧電デバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
30・・・圧電デバイス、32,60,70・・・圧電振動片、33,34・・・長溝、35,36・・・振動腕
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片と、パッケージやケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器や圧電ジャイロセンサー等において、圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスが広く使用されている。
図9は、圧電デバイスに従来より用いられている圧電振動片の一例を示す概略平面図であり、図10は図9のA−A線切断端面図である。
図において、圧電振動片1は、水晶などの圧電材料をエッチングすることにより、図示する外形を形成するもので、パッケージ(図示せず)等に取付けられる矩形の基部2と、基部2から図において右方に延長された一対の振動腕3,4を備えており、これら振動腕の主面(表裏面)に長溝3a,4aを形成するとともに、必要な励振用の電極を形成したものである(特許文献1参照)。
このような圧電振動片1においては、励振用の電極を介して駆動電圧が印加されると、各振動腕3,4の先端部を近接・離間するようにして、屈曲振動することにより、所定の周波数の信号が取り出されるようになっている。
【0003】
ところで、このような圧電振動片1は、これを利用した圧電デバイスが取付けられる上記した種々の製品の小型化にともない、小型に形成することがもとめられており、このため、圧電振動片1もできる限り小型に形成しなければならず、特にその全長AL1を小さくすることがもとめられる。そして、製品の小型化は不断に進展していることから、圧電振動片1においては、より小型に形成していくことができる構造がもとめられている。
ここで、図示のような音叉型圧電振動片である圧電振動片1の周波数fは、振動腕3,4の長さをl、腕幅をwとした場合、w/l2に比例する。
このことは、一方向に長い圧電振動片1を小型化しようとして、図9における全長AL1の大きさを小さくしようとする場合、振動腕の長さlを短くすると、周波数が高くなることを意味する。また、振動腕の幅wが小さくなると、周波数は下がる。このことから、従来の周波数を維持して、小型化を図るためには、振動腕の長さをある程度短くしつつ腕幅wを小さくしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−261575
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧電振動片1を小型化する上では、これまでの周波数である例えば32kHz(32.768kHz)を維持するために、振動腕3,4の長さlを短くし、腕幅wを小さくすることがもとめられるが、小型の圧電振動片1を加工する上では、その特性を維持しながら、特に腕幅wを小さく加工しようとすると、以下のような困難がある。
【0006】
具体的には、振動腕3,4には、図10に示すような溝3a,4aを加工する必要がある。図10のtの寸法は、例えば水晶ウエハなどの加工材料の条件に拘束されるため変化しないので、これまでのものが例えば100μmである場合においては、小型化する場合にも100μmである。
これに対して、腕幅wが、これまでのものが100μmであったものを、小型化により50μm程度とする場合を考える。腕幅100μmの際に、溝幅C1が70μm程度、側壁厚みS1,S1がそれぞれ15μm程度づつあったものが、腕幅wを50μm程度とすると、溝幅C1が40μm程度、側壁厚みS1,S1はそれぞれ5μm程度づつとしなければならない。
【0007】
このような圧電振動片を作った場合には、振動腕3,4の剛性は大きく低下し、駆動電圧の印加による上述の屈曲振動の際には、図10におけるZ方向の振幅が加わり、振動腕3,4のX方向に沿った屈曲振動が、矢印SF,SFで誇張して示すような屈曲振動になってしまう。
図11は、従来構造のまま圧電振動片を小型化した場合の振動特性を示すグラフであり、図の横軸に沿って、駆動電圧のレベルを徐々に増大させると、縦軸の周波数変化がマイナス方向に生じる。このことは、図10のZ方向振動の成分が多くなって、エネルギーロスの多い振動となってしまうことを示しており、CI(クリスタルインピーダンス)値の増大の原因となる。
【0008】
また、CI値を抑制するための効果的な対策としては、図9で説明した長溝3a,4aを長くして、励振用の電極を形成する面積を増やす方法がある。しかしながら、圧電振動片には、複数の振動モードがあり、通常使用される基本波は、例えば32.768kHzで、これに対して、圧電振動片1の2次の高調波は、250kHz付近にある。長溝3a,4aを長くして、基本波のCI値を低くできたとしても、2次の高調波のCI値も低くなることで、高調波のCI値/基本波のCI値、である「CI値比」が小さくなると、基本波ではなく高調波での発振の可能性が出てくる。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、CI値を抑え、かつ振動特性を悪化させることなく小型化が可能な圧電振動片と、このような圧電振動片を利用した圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、第1の発明にあっては、圧電材料により形成された基部と、前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、前記長溝に形成した励振用の電極とを備えており、前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている圧電振動片により、達成される。
第1の発明の構成によれば、振動腕の根本部分が先端側と比較してその剛性を強化されることにより、2次の高調波における振動の際の大きく歪む位置をより先端側に位置させることができると考えられる。このことにより、長溝を長くして圧電材料の電界効率を上げて、基本波のCI値を低くしつつも、このことが、2次の高調波のCI値の低下を招くことがないようにすることができる。かくして、小型化しても、基本波のCI値だけを低く抑えることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記各振動腕は、先端にいくに従って徐々に腕幅が小さくなるように構成されていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、振動腕に関して基部側の剛性が高く、先端にいくにしたがって剛性が低くなる構造を容易に実現できる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの構成において、前記長溝が前記基部側において、溝幅が狭くなるように構成されていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、長溝が設けられる振動腕においては、この長溝が前記基部側のその溝幅が小さくなるようにされることにより、長溝の両側の側壁の壁厚が増大するので、その領域の剛性は高くなる。このため、振動腕の基部側の剛性を高くし、先端側の剛性をこれより低くする構造を実現することができる。
【0013】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明の構成において、前記長溝には、溝幅の方向に設けたリブ状もしくは壁状の補強部が、長溝の長さ方向に沿って複数設けられており、前記複数の補強部が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、長溝に設けた前記補強部が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されているので、前記基部側で振動腕の剛性が高く、先端側にいくにしたがい剛性が低下する構造を実現することができる。
【0014】
第5の発明は第1ないし第4のいずれかの発明の構成において、前記基部の前記振動腕の基端部に近接した箇所には、部分的に幅方向に切り込んだ切り込み部が形成されていることを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、振動腕側からの振動が基部側へ漏れ込むことを防止し、一層、CI値を低く抑えることができる。
【0015】
また、上述の目的は、第6の発明にあっては、パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、前記圧電振動片が、圧電材料により形成された基部と、前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、前記長溝に形成した励振用の電極とを備えており、前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている圧電デバイスにより、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧電デバイスの実施形態を示す概略平面図。
【図2】図1のB−B線概略断面図。
【図3】図1のC−C線切断端面図。
【図4】圧電振動片の長さ方向に関して、各部の歪み量を縦軸に示したグラフ。
【図5】図1の圧電振動片のドライブレベル特性を示すグラフ。
【図6】図1の圧電振動片のCI値比を示すグラフ。
【図7】変形例1の概略平面図。
【図8】変形例2の概略平面図。
【図9】従来の圧電振動片の概略平面図。
【図10】図9のA−A線切断端面図。
【図11】図10の圧電振動片のドライブレベル特性を示すグラフ。
【図12】図10の圧電振動片のCI値比を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし図3は、本発明の圧電デバイスの実施形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のB−B線概略断面図、図3は図1のC−C線切断端面図である。
これらの図において、圧電デバイス30は、圧電振動子を構成した例を示しており、この圧電デバイス30は、図1および図2に示すように、パッケージ37内に圧電振動片32を収容している。パッケージ37は、図2に示すように、第1の基板55と第2の基板56とを積層して形成されており、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して図示の形状とした後で、焼結して形成されている。
【0018】
パッケージ37は、図2に示すように、第2の基板56の内側の材料を除去することで、内部空間Sのスペースを形成している。この内部空間Sが圧電振動片32を収容するための収容空間である。そして、第1の基板55に形成した電極部31,31の上に、導電性接着剤43,43を用いて、圧電振動片32の基部に設けた引出し電極33a,34aの箇所を載置して接合している。なお、電極部31,31はパッケージ裏面の実装端子41,42と導電スルーホールなどで接続されている。パッケージ37は、圧電振動片32を収容した後で、透明なガラス製の蓋体40が封止材38を用いて接合されることにより、気密に封止されている。これにより、蓋体40を封止した後で、外部からレーザ光LBを照射して圧電振動片32の電極(図示せず)などをトリミングして、周波数調整できるようになっている。
【0019】
圧電振動片32は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。この圧電振動片32は、図1に示すように、パッケージ37側と固定される基部51と、この基部51を基端として、図において右に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕35,36を備えている。
各振動腕35,36の主面には、好ましくは、それぞれ長さ方向に延びる長溝33,34を形成し、図3に示すように、この長溝内に励振用の電極が設けられている(符号省略)。このような圧電振動片32の音叉状の外形と、各振動腕に設ける長溝は、それぞれ例えば水晶ウエハなどの材料をフッ酸溶液などでウエットエッチングしたり、ドライエッチングすることにより精密に形成することができる。
【0020】
励振電極は、この長溝内と、各振動腕の側面とに形成され、各振動腕について長溝内の電極と、側面に設けた電極が対となるようにされ、各電極は、図1で説明した引出し電極33a,34aにそれぞれ引き回されている。これにより、圧電デバイス30を実装基板などに実装した場合に、外部からの駆動電圧が、各実装端子41,42から、電極部31,31を介して圧電振動片32の各引出し電極33a,34aに伝えられ、上記した各励振電極に伝えられるようになっている。
【0021】
これにより、長溝33,34内の励振電極に駆動電圧が印加されることによって、駆動時に、各振動腕の長溝が形成された領域の内部の電界効率を高めることができるようになっている。長溝33,34が長い程、振動腕35,36を形成する材料について電界効率が向上し、振動腕の全長Lに対して、長溝33,34の基部51からの長さPLが、少なくともPL/L=0.7程度までは、長くするほど圧電振動片32のCI値は下がることがわかっている。
また、好ましくは、基部51には、この基部51の幅方向の寸法に関して部分的に縮幅して形成した凹部もしくは切り込み部44,44が形成されている。この切り込み部44,44は、基部51の各振動腕35,36の付け根に近接した箇所である。これにより、各振動腕35,36の屈曲振動による振動の基部51側への漏れ込みを大きく低減することができ、CI値の抑制効果を得ることができる。
【0022】
さらに、圧電振動片32においては、図1に示されている形状に各振動腕35,36が形成されている。各振動腕は同じ形状であるから、振動腕35について説明する。この実施形態では、基部51から延びる振動腕35の腕幅はW1で、その全長にわたって変化がない。
ところが、長溝33は、その基部51寄りの基端部で、溝幅MW1が小さく、先端にいくに従って溝幅MW2が次第に大きくなるようにされている。
【0023】
これにより、振動腕35の根本部分が先端側と比較してその剛性を強化される。すなわち、振動腕35の長溝33において、溝幅が小さくされている符号MW1の箇所では、長溝33の両側の壁部(図3参照)の厚みが、振動腕35のより先端側の領域よりも厚くされることによって、剛性が強化されている。
このため、後述するように、2次の高調波における振動の際に大きく歪む位置を、振動腕35のより先端側に位置させることができると考えられ、このことにより、長溝33を長くして圧電材料の電界効率を上げて、基本波のCI値を低くしつつも、2次の高調波のCI値の低下を招くことがないようにすることができる。かくして、小型化しても、基本波のCI値を低く抑えることができる圧電振動片を提供することができる。
【0024】
この点について、さらに詳しく説明する。
図4は、従来の圧電振動片1と、本実施形態の圧電振動片32について、駆動電圧を印加して屈曲振動させる場合、横軸に示した圧電振動片の長さ方向に関して、各部の歪み量を縦軸に示したグラフであり、図4(a)は従来の圧電振動片1、図4(b)は本実施形態の圧電振動片32を示し、Aは基本波による振動時の歪み量、Bは2次の高調波による振動時の歪み量をそれぞれ表している。なお、これらの図において、圧電振動片の基部の切り込み部または凹部は図が複雑になるので、記載を省略している。
【0025】
図4のグラフで示す歪み量に関して、基本波Aは、振動腕の先端になるに従い歪みは小さくなっていくが、高調波Bでは振動腕先端側に大きな歪みを持っているところがある。こうした歪み方の違いにより、励振電極を長くして行った時の基本波のCI値低下に比べ高調波のCI値低下は大きくなる。 また、図4(a)の従来の圧電振動片1においては、長溝3a,4aの長さPL1は、図9の振動腕の全長lを1としたとき、例えば0.5程度になるようにされている。これに対して、図4(b)の本実施形態の圧電振動片32では、長溝33,34の長さPL2は、図1の振動腕の全長Lを1としたとき、たとえば0.6程度としている。これによって、CI値が抑制されるようになっている。
【0026】
ここで、圧電振動片の振動腕に関して、従来と同じ構造を採用すると、形成されている励振電極位置における2次高調波Bのマイナス歪み量が急激に増大する。
そうすると、基本波のCI値を低くできたとしても、2次の高調波のCI値はさらに低くなり、高調波のCI値/基本波のCI値であるCI値比が小さくなり、「1」を下回る。そうなると基本波ではなく高調波での発振の可能性がでてくる。
【0027】
そこで、長溝33について、図1で説明したように、その基部51寄りの基端部で、溝幅MW1が小さく、先端にいくに従って溝幅MW2が次第に大きくなるようにしたことで、図4(a)と、図4(b)とを比較して理解されるように、2次の高調波の歪み量Bにおけるマイナス方向のピーク位置が、符号CM1と符号CM2とでそれぞれ示すように、距離MBで示す分だけ、圧電振動片の振動腕の長さ方向(図示のY方向)に沿って、先端側に移動する。
【0028】
このことにより、形成されている励振電極位置における2次高調波Bのマイナス歪み量は低く抑えることができるようになる。こうして、基本波のCI値を低くしつつも、高調波のCI値の低下は抑えられることになる。 図5は、本実施形態の圧電振動片32についてのドライブ特性を示すグラフであり、図の横軸に沿って、駆動電圧のレベルを徐々に増大させると、縦軸の周波数変化がプラス方向に生じている。このことは、図10で説明したZ方向振動の成分を抑制でき、エネルギーロスが僅かであって、CI値が抑制できることを示している。
また、図6は、圧電振動片32のCI値比(高調波のCI値/基本波のCI値)を示しており、CI値比は全体として1よりも大きい。
かくして、圧電振動片32では、各振動腕35,36の電界効率を向上させて、CI値を低くすることができ、しかも2次の高調波のCI値は低くならないので、基本波での良好な振動特性を維持できる。
【0029】
図7は、圧電振動片の変形例1を示す概略平面図であり、図1の圧電振動片32と同じ符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
圧電振動片60の各振動腕35,36の長溝33,34には、溝幅の方向に設けたリブ状もしくは壁状の補強部61が形成されている。各振動腕35,36は同じ構造であるから、振動腕36についてだけ説明すると、補強部61は、複数個が、長溝34の長さ方向にY沿って複数設けられている。
【0030】
そして、これら複数の補強部61,61,61は、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程、その間隔t1,t2,t3が次第に大きな間隔となるように設けられている。
このように、長溝34に設けた各補強部61,61,61が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されているので、基部51側で振動腕36の剛性が高く、先端側にいくにしたがい剛性が低下する構造とされている。
これによって、上述の実施形態と同様、図4で説明したように、2次の高調波の歪み量Bにおけるマイナス方向のピーク位置が、符号CM1と符号CM2とでそれぞれ示すように、距離MBで示す分だけ、圧電振動片60の振動腕36の長さ方向(Y方向)に沿って、先端側に移動されているので、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0031】
図8は、圧電振動片の変形例2を示す概略平面図であり、図1の圧電振動片32と同じ符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
変形例2の圧電振動片70においては、各振動腕35,36が、先端にいくに従って徐々に腕幅が小さくなるように構成されている。各振動腕35,36は同じ構造であるから、振動腕36についてだけ説明すると、振動腕36の基端部側の腕幅W3は、先端側の腕幅W2よりも大きく、腕幅は、基端部から先端側にいくに従って、徐々に小さくなるようにされている。
これにより、基部51側で振動腕36の剛性が高く、先端側にいくにしたがい剛性が低下する構造とされている。
【0032】
さらに好ましくは、長溝34に関して、その基部51寄りの領域である領域Rtの箇所において、溝幅が小さく形成されている。
このため、長溝34の領域Rtに関しては、溝をはさむ両側の壁部の厚みが大きいことから、振動腕36の基部51に近接した領域の剛性は、その領域より先端側と比べると、より高い剛性となるようにされている。
これによって、上述の実施形態と同様、図4で説明したように、2次の高調波の歪み量Bにおけるマイナス方向のピーク位置が、符号CM1と符号CM2とでそれぞれ示すように、距離MBで示す分だけ、圧電振動片70の振動腕36の長さ方向(Y方向)に沿って、先端側に移動されているので、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限定されない。所謂音叉型の圧電振動片において、その振動腕の根本付近の剛性が高くされる構成を備えていれば、上述の実施形態や変形例以外の構造を備えるものも本発明の範囲である。
また、各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、この発明は、箱状のパッケージに圧電振動片を収容したものに限らず、シリンダー状の容器に圧電振動片を収容したもの、圧電振動片をジャイロセンサとして機能するようにしたもの、さらには、圧電振動子、圧電発振器等の名称にかかわらず、圧電振動片を利用したあらゆる圧電デバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
30・・・圧電デバイス、32,60,70・・・圧電振動片、33,34・・・長溝、35,36・・・振動腕
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と
前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、
前記長溝に形成した励振用の電極と
を備えており、
前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている
ことを特徴とする、圧電振動片。
【請求項2】
前記各振動腕は、先端にいくに従って徐々に腕幅が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記長溝が前記基部側において、溝幅が狭くなるように構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記長溝には、溝幅の方向に設けたリブ状もしくは壁状の補強部が、長溝の長さ方向に沿って複数設けられており、前記複数の補強部が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記基部の前記振動腕の基端部に近接した箇所には、部分的に幅方向に切り込んだ切り込み部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項6】
パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、
前記圧電振動片が、
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と
前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、
前記長溝に形成した励振用の電極と
を備えており、
前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている
ことを特徴とする、圧電デバイス。
【請求項1】
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と
前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、
前記長溝に形成した励振用の電極と
を備えており、
前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている
ことを特徴とする、圧電振動片。
【請求項2】
前記各振動腕は、先端にいくに従って徐々に腕幅が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記長溝が前記基部側において、溝幅が狭くなるように構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記長溝には、溝幅の方向に設けたリブ状もしくは壁状の補強部が、長溝の長さ方向に沿って複数設けられており、前記複数の補強部が、長溝の長さ方向に沿って、先端側にいく程大きな間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記基部の前記振動腕の基端部に近接した箇所には、部分的に幅方向に切り込んだ切り込み部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項6】
パッケージまたはケース内に圧電振動片を収容した圧電デバイスであって、
前記圧電振動片が、
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕と
前記各振動腕の長手方向に沿って形成された長溝と、
前記長溝に形成した励振用の電極と
を備えており、
前記各振動腕が、前記基部側において最も剛性が高く、先端側にいくに従い、徐々に剛性が低下する構成とされている
ことを特徴とする、圧電デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−66210(P2013−66210A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251555(P2012−251555)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2009−298771(P2009−298771)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2009−298771(P2009−298771)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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