説明

振動発生装置およびこの振動発生装置を用いた電子機器

【課題】 振動発生手段に姿勢検出手段を一体化することにより、小型化が可能な振動発生装置およびこの振動発生装置を用いた電子機器を提供する。
【解決手段】 筐体2内に可動部5が弾性支持部材3によって弾性的に支持されており、振動駆動回路を構成するコイルに所定の駆動電流を与えると、可動部5が振動させられるようになっている。筐体2を傾かせると、それに応じて可動部5が傾き、可動部5の表面5aが第1〜第3の姿勢検出端子12〜14を持ち上げるため、第2〜第4のスイッチ部SW2〜SW4が非導通状態に設定される。よって、制御部は前記各スイッチ部の動作状態を検出することにより、振動発生装置1の姿勢を検知することができる。振動発生手段に姿勢検出手段を一体化したことにより、小型の振動発生装置およびこの振動発生装置を用いた電子機器を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筐体に振動を発生させる振動発生装置およびこの振動発生装置を用いた電子機器に係り、特に、筐体の姿勢を検知する姿勢検出手段が振動発生手段と一体に構成されて、小型化が可能な振動発生装置およびこの振動発生装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の発明では、コイルに通電すると、通電されたコイルのコアの両端面にNS磁極が励磁され、錘が設けられた可動子の右側端面が、対向するコアの端面方向(左方向)に向けて引き付けられる。そして、可動子の右側端面が、対向するコアの端面に接近したときに、コイルに供給する電流の方向を反転すると、可動子は逆方向(右方向)に移動を始める。このように、前記電流の反転を可動子の振動周波数に合わせて繰り返し行うと、可動子の左右両端面がコアの右端面および左端面に当接する寸前で可動子が反転移動し、可動子が左右へ単振動を繰り返す。また、可動子は、左右一対の弾性支持部材によって支持されており、そのため、左右方向へほぼ平行に移動して単振動する。
【0003】
また、本願出願人が先に出願した特願2003−331375および特願2003−331379には、携帯電話機,ゲーム機器およびゲーム機器のコントローラなどの小型の電子機器に搭載可能な振動発生装置が記載されている。
【0004】
前記振動発生装置では、錘または分銅としての可動部が、水平姿勢を保った状態で鉛直方向に運動させられる。このため、小型化に適し、少ないエネルギーで効率よく振動を発生することが可能とされている。
【特許文献1】特開2002−153818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の携帯電話機器は、カメラ機構をはじめ、携帯テレビなどの各種の付加機能を備えつつも小型かつ軽量のものが開発されている。このような小型で携行に優れた携帯電話機は、ユーザーの好みに応じ左右に傾いたり、上下逆さまになるといったような様々な姿勢に設定されることから、これらの各姿勢に合わせた画面表示機能が必要とされる。
【0006】
しかし、上記携帯電話機に搭載されている振動発生装置は、錘や分銅などの姿勢を検出することが可能な部品を備えていながら、ユーザーに着信を知らせる着信通知用のバイブレーターとしての機能しか有さないのが一般的である。
【0007】
このため、前記錘や前記分銅を姿勢検出用に兼用することがでるようになれば、姿勢検出機能を備えた振動発生装置を提供できる。しかも、専用の姿勢検出手段を必要としないため、部品点数を削減して小型軽量化を推進することができるだけでなく、製造コストの低減をも図ることが可能となる。
【0008】
さらに、振動発生装置と姿勢検出手段とを別個に設ける必要がなくなるため、携帯電話機を組み立てる際の組立て工数も少なくすることができる。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、携帯電話機など電子機器の筐体の姿勢を検知する姿勢検出手段が振動発生手段と一体に構成され、小型化が可能な振動発生装置およびこの振動発生装置を用いた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、筐体と、前記筐体に対し振動可能な状態で一方の端部が片持ち支持された弾性支持部材と、前記弾性支持部材の他方の端部に固定された可動部と、前記可動部に振動を生起させる振動駆動回路とを備えた振動発生装置において、
前記可動部が振動の中心となる基準面を一方向に越えたことを検知する姿勢検出手段が設けられており、前記姿勢検出手段により前記筐体の傾き姿勢が検知されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、姿勢検出手段と振動発生手段とが一体に構成されるため、電子機器の筐体内に姿勢検出手段と振動発生手段とそれぞれ別個に設ける必要がない。このため、筐体内部に姿勢検出手段を設ける別途のスペースを設ける必要がなく、電子機器を小型化することができる。
【0012】
例えば、前記姿勢検出手段は、前記基準面に設けられた導通部と、前記導通部に弾圧可能であるとともに前記基準面から前記可動部が移動する領域内に突出する接続部とを有する複数の検出端子を有しており、前記可動部が前記基準面を越えたときに、前記検出端子が持ち上げられて前記接続部と前記導通部との前記弾圧が解除させられるものとして構成される。
【0013】
上記手段では、既存の振動発生装置を利用することができるとともに、簡単な構成により姿勢を検出することができるため、振動発生装置としての品質や信頼性を損なうことがない。
【0014】
また前記検出端子は、前記可動部の長手方向の両端側で対称となる位置と、中央側で対称となる位置にそれぞれ一組づつ設けられており、前記長手方向と直交する幅方向の一方に前記両端側で対称となる一組の検出端子が設けられ、他方に前記中央側で対称となる一組の検出端子が設けられている。
【0015】
上記手段では、検出端子は、可動部の表面に対しバランス良く当接することができる。このため、非振動の状態における可動部の表面が振動の中心である基準面に一致するように設定される。よって、振動発生手段の姿勢が変化したときには、変化後の姿勢を高い精度で検出することが可能となる。
【0016】
また前記振動駆動回路は、前記可動部に固定されて一緒に振動するコイルと、前記コイルに垂直な磁界を与える磁石と、前記コイルに駆動電流を与えるパルス発生回路と、前記パルス発生回路を所定のタイミングで駆動させる制御部とを有するとともに、
前記振動駆動回路内には、前記中央側に設けられた一組の検出端子の一方が、前記可動部の振動に伴って前記振動駆動回路の開閉動作を行うスイッチ部として設けられているものが好ましい。
【0017】
上記手段では、コイルに与える駆動電流のタイミングを図ることができる。よって、振動駆動装置を効率よく駆動させることができる。
【0018】
上記いずれかに記載の振動発生装置が設けられ、外部からの所定の信号を受信したときには前記振動発生装置を駆動させて前記筐体が振動させられ、前記筐体の姿勢が変化したときには前記姿勢検出手段により前記筐体の姿勢が検知されることを特徴とする電子機器。
【0019】
上記手段では、振動発生と姿勢検出の両機構を備えた電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の振動発生装置では、姿勢検出手段が振動発生手段と一体に構成されるため、電子機器の筐体内に姿勢検出手段と振動発生手段とそれぞれ別個に設ける必要がなくなる。その結果、筐体内部に姿勢検出手段を設ける別途のスペースが不要となり、電子機器を小型化することができる。また、電子機器を組み立てる際には、姿勢検出手段のみを取り付ける工程が不要となり、その工程分だけ組み立て工数を減らすことができ、電子機器の組み立て時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の振動発生装置を側方から見た透視側面図、図2は本発明の振動発生装置の平面図、図3は図1のA−A線における断面図、図4は振動発生装置の上部に設けられる姿勢検出手段を示す斜視図である。なお、図1ないし図3は、コイルに通電されていない中立状態を示している。また図1では後述の磁石7,7を省略してその他の部材を示している。
【0022】
振動発生装置1は、図示Z1側の天面に相当する部分が開口する長方形状の筐体2を有している。筐体2のY2側の左側面2Aの底部には筐体2の内方に通ずる通路2aが形成されており、この通路2aには板ばね(弾性部材)によって形成された弾性支持部材3が取り付けられている。
【0023】
弾性支持部材3は一方の端部が固定部3aであり、この固定部3aが通路2aに圧入などの手段で取り付けされることによって強固に片持ち支持されている。弾性支持部材3の他方の端部には、Z1方向に折り曲げられた保持部3cが設けられている。図2に示すように、保持部3cのX方向の両端にはコの字形状に折り曲げられた側片3c1,3c1が形成されており、この側片3c1,3c1間には可動部5が固定されている。可動部5は図示Y方向を長手方向とする長方形状をしており、Y1側の端面が保持部3cに固定され、X方向の両側面が側片3c1,3c1により固定されており、結果として可動部5は弾性支持部材3に対し剛体支持されている。なお、固定部3aと保持部3cとの間の部分は撓み変形部3bであり、図1に示すように、可動部5を保持した弾性支持部材3は片持ち支持の状態で図示Z2方向に撓み変形させられている。
【0024】
なお、撓み変形部3bは、固定部3aと保持部3cとの間で二股に分割されており(図示せず)、両者の間に形成された隙間内には後述するヨーク部材8が設けられている。
【0025】
可動部5は、例えば所定の質量で形成されており、筐体2内の空間、すなわち一方の左側面2Aと他方の右側面2Bとの間の空間内において弾性支持部材3によって図示Z方向に弾性可能な状態で支持されている。なお、この振動発生装置1では、中立状態において、可動部5の重心Gが左側面2Aと右側面2Bとの間の中心を通る鉛直線O−O上に一致するように設定されている。
【0026】
図1に示すように、可動部5の下面5bにはエナメル線などの被覆導線を略円筒状に巻回することによって形成されたコイル6が固定されている。図2に点線で示すように、コイル6は可動部5の重心G(鉛直線O−O)を巻回中心とするとともに、Y方向を長手方向とする細長い形状で形成されている。なお、可動部5とコイル6とが振動発生装置1の錘として機能している。
【0027】
図3に示すように、筐体2には硬磁性材料からなる磁石7,7が筐体2のX1−X2方向の側壁2C,2Cに沿って設けられている。なお、図3では可動部5とコイル6の位置を明確にするために、弾性支持部材3を省略している。
【0028】
筐体2の側壁2C,2Cおよび底部2Eは磁性材料によって形成されている。磁石7は、側壁2Cに接する端面7aと、コイル6に対向する端面7bとが逆の磁極となるように着磁されている。なお、コイル6と磁石7などが、可動部5に振動駆動力を与える駆動回路の一部を構成している。
【0029】
また、筐体2の底部2Eの中心には、図示Z1方向に突出するとともにY方向に延びるヨーク部材8が設けられている。ヨーク部材8も磁性材料で形成されており、このヨーク部材8と磁石7,7とが対向する部分がギャップg,gであり、このギャップg,g内にコイル6が設けられている。
【0030】
本実施の形態では、例えば磁石7の一方(内側)の端面7bがN極に、他方(外側)の端面7aがS極に着磁されている。この場合には、磁石7で発生した磁束は、磁石7,7のN極からギャップg,gを通ってヨーク部材8に向かい、ヨーク部材8、筐体2の底部2E、側壁2C,2Cを経て磁石7,7のS極に達するという磁路を形成する。そして、前記磁束は、磁石7,7からヨーク部材8に向かうギャップg,gにおいて、コイル6に垂直に鎖交する。
【0031】
図2ないし図4に示すように、可動部5のX1側にはY1−Y2方向に延びる導通部9が設けられており、同様に可動部5のX2側にもY1−Y2方向に延びる導通部10が設けられている。導通部9,10のY1側およびY2側の端部にはZ2方向に折り曲げられた接続部9a,9bおよび10a,10bが設けられており、接続部9a,9bおよび10a,10bはZ2方向に延び筐体2内で固定されている。
【0032】
導通部9,10と筐体2の天面に設けられた天板2Fとの間には、金属製の板ばね(弾性部材)を略L字形状に折り曲げることにより形成された制御検出端子11と第1の姿勢検出端子12,第2の姿勢検出端子13および第3の姿勢検出端子14が設けられている。制御検出端子11は可動部5の振動を制御する端子であり、第1,2,3の姿勢検出端子12,13,14は筐体の姿勢を検知する端子である。
【0033】
制御検出端子11は可動部5のX1側で、かつ鉛直線O−OよりもY1側に設けられている。制御検出端子11の一方の端部である基部11aは筐体2の右側面2B内部に固定されている。また、制御検出端子11の他方の端部は折り曲げ部11cでY2方向に向けてほぼ直角に折り曲げられた弾性変形部11bを形成しており、弾性変形部11bの先端には接続部11dが形成されている。図2および図4に示すように、接続部11dは略L字形状に形成されている。そして、図1および図2に示すように、振動発生装置1が釣り合いのとれた中立状態にある場合には、制御検出端子11の弾性変形部11bの弾性力により、接続部11dが中央付近で可動部5の表面5aと導通部9の表面とを同時に当接している。すなわち、接続部11dは、その基端部が導通部9を弾圧し、かつ先端部が可動部5の表面5aを接することが可能な状態にある。
【0034】
一方、第1の姿勢検出端子12は、導通部9と同じ可動部5のX1側で、かつ可動部5の鉛直線O−OよりもY2側に設けられている。すなわち、制御検出端子11に対し長手方向(Y方向)対称の位置に設けられている。第1の姿勢検出端子12の基部12aは、筐体2の左側面2A内部に固定されている。また第2の姿勢検出端子13の他方の端部は折り曲げ部13cで折り曲げられた弾性変形部13bを形成しており、弾性変形部13bの先端には接続部13dが設けられている。図2および図4に示すように、接続部13dも略L字形状で形成されている。
【0035】
図1および図2に示すように、振動発生装置1が中立状態にある場合には、上記同様に第1の姿勢検出端子12の接続部12dの基端部が導通部9を弾圧し、同時に先端部が可動部5の表面5aを当接可能な状態にある。
【0036】
同様に第2の姿勢検出端子13も基部13a,弾性変形部13b,折り曲げ部13cおよび接続部13dを有している。第2の姿勢検出端子13は可動部5のX2側に設けられ、かつ基部13aがY1側の右側面2Bの内部に固定されている。ただし、弾性変形部13bは鉛直線O−Oを越えてY2方向に向かって傾斜しながら延びており、その先端の接続部13dはY2側の位置において可動部5の表面5aと導通部10の双方に当接している。すなわち、接続部13dの基端側は可動部5の表面5aに当接し、接続部13dの先端側は導通部10の表面を弾圧している。
【0037】
同様に、第3の姿勢検出端子14も基部14a,弾性変形部14b,折り曲げ部14cおよび接続部14dを有している。第3の姿勢検出端子14も可動部5のX2側に設けられ、かつ基部14aはY2側の左側面2Aの内部に固定されている。ただし、弾性変形部14bは鉛直線O−Oを越えてY1方向に向かって傾斜しながら延びており、その先端の接続部14dはY1側の位置において可動部5の表面5aと導通部10の双方を当接している。すなわち、第3の姿勢検出端子14は第2の姿勢検出端子13に対し長手方向対称の位置に設けられている。また接続部14dの基端側は導通部10の表面を弾圧し、接続部14dの先端側は可動部5の表面5aに当接可能とされている。
【0038】
このように、導通部9および導通部10は同一平面内にあり、これらの表面を単振動の中心となる基準面とすると、前記中立状態のときに、可動部5の表面5aの高さ方向(Z方向)の位置は前記単振動の基準面に一致している。
【0039】
ここで、制御検出端子11と前記導通部9とは第1のスイッチ部SW1を形成している。同様に、第1の姿勢検出端子12と導通部9とが第2のスイッチ部SW2を形成し、第2の姿勢検出端子13と導通部10とが第3のスイッチ部SW3を形成し、第3の姿勢検出端子14と導通部10とが第4のスイッチ部SW4を形成している。そして、第1のスイッチ部SW1の接続部11dと導通部9の表面、第2のスイッチ部SW2の接続部12dと導通部9の表面、第3のスイッチ部SW3の接続部13dと導通部10の表面、および第4のスイッチ部SW4の接続部14dと導通部10の表面がそれぞれスイッチ接点に相当している。
【0040】
なお、この振動制御装置1では、第1、第2および第4のスイッチ部SW1,SW2およびSW4を構成する接続部11d,12dおよび14dの基端側が導通部9,10側に位置し、接続部11d,12dおよび14dの先端側が可動部5の移動領域内に突出するように設定されており、また第3のスイッチ部SW3では接続部13dの基端側が可動部5の移動領域内に位置する代わりに、先端部は導通部10側に位置するように設定されている。
【0041】
第2ないし第4のスイッチ部のSW2,SW3,SW4のオンおよびオフに関する情報は、振動発生装置1を備えた電子機器内に設けられた制御部(図4参照)31に送られており、制御部31はこれらの各スイッチ部SW2,SW3,SWのスイッチ情報を取得することが可能とされている。
【0042】
図4に示すように、振動発生装置1の近傍には、パルス発生回路(電流供給回路)32が設けられている。パルス発生回路32の一方の出力端子32aは制御検出端子11の基部11aに接続され、他方の出力端子32bはコイル6を形成する被覆導線の一方の端部6aに接続されている。そして、コイル6を形成する被覆導線の他方の端部6bは導通部9の接続部9bに接続されている。
【0043】
すなわち、第1のスイッチ部SW1が閉じている(オン状態)の場合には、パルス発生回路32の一方の出力端子32a→制御検出端子11の基部11a→制御検出端子11の接続部11d→導通部9の表面→導通部9の接続部9b→コイル6の他方の端部6b→コイル6の導線内部→コイル6の一方の端部6a→パルス発生回路32の他方の出力端子32bという振動駆動回路が形成されている。
【0044】
なお、パルス発生回路32は、制御部31からのコマンド信号を受けると、所定のデューティー比またはパルス幅からなる電流を出力してコイル6に与える機能を有している。
【0045】
次に、本発明の振動発生装置1の振動発生手段による振動動作について説明する。
図1ないし図3に示す中立状態では、コイル6が磁石7とヨーク部材8との間に位置するため、磁石7で発生した磁束φがコイル6を垂直に横切ってヨーク部材8に達している。
【0046】
図1および図3に示す中立状態において、すなわち第1ないし第4のスイッチ部SW1ないしSW4のすべてが接続(オン)状態にあるとともに、振動発生装置1が水平姿勢にある状態において、制御部31がパルス発生回路32に対しコマンド信号を出力し、パルス発生回路32から所定のデューティー比またはパルス幅からなる駆動電流Iが出力されたとする。このとき、コイル6に図3に示す方向(図2において時計回り方向)の駆動電流Iが与えられたとすると、コイル6には磁束φと駆動電流Iとによる電磁力FがZ2方向に発生するため、可動部5をZ2方向へ駆動させることができる。このとき、可動部5の表面5aは前記単振動の基準面よりも図示Z2方向に移動させられる。
【0047】
本発明の振動発生装置1では、図3に示すように、可動部5と導通部9とは所定の間隔を隔てて別個に設けられている。このため、可動部5がZ2方向に移動した場合にも、導通部9と制御検出端子11との間の接続を始めとして各スイッチ部SW1ないしSW4はすべて接続状態が維持される。
【0048】
パルス発生回路32で発生するパルス電圧の電圧変化に同期して、コイル6に電流が流れなくなると、コイル6には電磁力Fが作用しなくなる。電磁力Fが作用しなくなると、可動部5は弾性支持部材3のZ1方向への復元弾性力によって付勢され、可動部5がZ1方向に移動する。このとき、可動部5の表面5aが、前記単振動の基準面をZ1方向に越えると、可動部5の移動領域に突出している接続部11d,12dおよび14dの先端側および接続部13dの基端側に当接しこれらをZ1方向に持ち上げるため、第1ないし第4のスイッチ部SW1ないしSW4のすべてが非接続状態に切り換えられる。
【0049】
次に、Z1方向に移動させられた可動部5は、弾性支持部材3のZ2方向への復元弾性力によって付勢され、可動部5はZ2方向に移動させられる。このとき、可動部5の表面5aが前記単振動の基準面をZ2方向に越えると、第1ないし第4のスイッチ部SW1ないしSW4のすべてを再び接続状態に切り換えることができる。
【0050】
そして、制御部31は、可動部5の表面5aが前記単振動の基準面をZ2方向に越えるタイミング、換言すると、少なくとも第1のスイッチ部SW1が再び接続状態に切り換わるタイミングに同期させて、制御部31がパルス発生回路32にコマンド信号を与え、駆動電流Iを再びコイル6に流すようにすると、電磁力FがZ2方向に発生し、可動部5を再度Z2方向に移動させることができる。そして、これら一連の動作を繰り返すことによって、振動発生装置1を一定周期で単振動させることが可能である。
【0051】
なお、制御部31がパルス発生回路32にコマンド信号を与えるタイミングは、可動部5の表面5aが前記単振動の基準面をZ2方向に越える毎回のタイミングである必要はなく、複数回ごとに行うものであってもよい。この場合には、連続的な振動を発生させることができる。
【0052】
また振動が一度停止して一定の時間が経過した後に再び制御部31がコマンド信号を発生するようにしたものであってもよく、この場合には振動発生装置1に間欠的な振動を生じさせることができる。
【0053】
なお、前記振動駆動回路を構成するパルス発生回路32の代わりに電流源を設けると、完全自励式の振動発生装置1とすることができる。
【0054】
次に、本発明の振動発生装置1の姿勢検出手段による、姿勢検出動作について説明する。
【0055】
図5は振動発生装置を傾かせた場合の筐体内部の様子を示す図1同様の透視側面図、図6は振動発生装置が上下逆さまになった場合の筐体内部の様子を示す図1同様の透視側面図である。
【0056】
図5に示すように、底部のB点を中心に筐体のY2側を持ち上げて振動発生装置1全体を傾き角度θ1だけ反時計回り方向に傾かせると、弾性支持部材3が可動部5をZ1方向に付勢する力と、制御検出端子11および第1ないし第3の姿勢検出端子12,13,14が可動部5を図示Z2方向に付勢する力との間の力のつり合いが崩れ、可動部5は筐体2内において反時計回り方向に傾く姿勢に設定させられる。
【0057】
このとき、可動部5の表面5aのY1側のみが、前記単振動の基準面を越えて図示Z1方向に移動させられ、制御検出端子11の接続部11dと第3の姿勢検出端子14の接続部14dとが同時にZ1方向に持ち上げられるため、第1のスイッチ部SW1と第4のスイッチ部SW4とが非接続状態に切り換えられる。そして、制御部31が、第3の姿勢検出端子14の接続の状態を検出することにより、振動発生装置1が角度θ1だけ傾いた姿勢にさせられたことを検知することができる。
【0058】
なお、筐体2が図5に示す前記θ1とは逆の方向に、すなわち底部のC点を中心に筐体のY1側を時計回り方向に傾けた場合も同様である。すなわち、この場合には可動部5は筐体2内において時計回り方向に傾く姿勢に設定させられるため、可動部5の表面5aのY1側のみが前記単振動の基準面を越えて図示Z2方向に移動させられる。よって、第1の姿勢検出端子12の接続部12dと第2の姿勢検出端子13の接続部13dとが同時にZ1方向に持ち上げられ、第2のスイッチ部SW2と第3のスイッチ部SW3とが非接続状態に切り換えられる。よって、制御部31が、第2,第3のスイッチ部SW2,SW3の接続の状態を検出することにより、振動発生装置1が時計回り方向に傾く姿勢に設定されたことを検知することができる。
【0059】
次に、図6に示すように、筐体2が上下逆さまの姿勢に設定された場合を説明する。この場合には、可動部5が水平姿勢を保ちながらZ1方向に移動させられるため、可動部5の表面5aは制御検出端子11の接続部11d、第1の姿勢検出端子12の接続部12d,第2の姿勢検出端子13の接続部13d,第3の姿勢検出端子14の接続部14dの全てがZ1方向に押し下げられる。これによって、第1ないし第4のスイッチ部SW1ないしSW4のすべてが接続状態から非接続状態に切り換えられる。そして、制御部31は、これらのすべてのスイッチ部のスイッチ情報を検出することにより、振動発生装置1が上下逆さまの姿勢に設定されたことを検知することができる。
【0060】
すなわち、第1ないし第3の姿勢検出端子12,13,14から構成される第2ないし第4のスイッチ部SW2,SW3およびSW4は、振動発生手段1の姿勢を検出することが可能な姿勢検出手段として機能している。
【0061】
上記のような姿勢検出手段により筐体2の姿勢を検知するためには、姿勢検出端子と導通部からなるスイッチ接点を、少なくとも可動部5のY1側の側方部に1箇所およびY2側の側方部に1箇所に、そして中央部に1箇所設けた構成が好ましい。このような構成とすることによって、筐体2が、時計回り方向および反時計回り方向に傾いた場合、および上下逆さまにの姿勢とされた場合の、筐体2の姿勢を確実に検知することができる。
【0062】
本発明では、上記のような姿勢検出手段が、弾性支持部材3の構成に用いられる部品の一部を利用して一体で構成することができるため、姿勢検出手段を振動発生手段と別個に設ける必要がなくなる。その結果、振動発生装置1が搭載される電子機器の内部に専用の姿勢検出手段を別途設けるためのスペースを不要とすることができるため、前記電子機器の小型化に貢献することが可能となる。
【0063】
また、電子機器を組み立てる際に、振動発生装置1と姿勢検出手段とを別個の工程で組み立てる必要がなくなるため、その工程分だけ組み立て工数を減らすことができ、電子機器の組み立て時間を短縮することが可能となる。
【0064】
また、制御検出端子11の位置は上記の位置には限定されず、制御検出端子11の接続部11dが、可動部5の表面5aに当接し、かつ導通部9を弾圧できるような位置に設けられればよい。
【0065】
本発明の振動発生装置1は、たとえば携帯電話端末などの電子機器の筐体内に組み込まれ、受信電波などの外部信号が着信したときに、振動発生装置1を駆動させて筐体2を振動させることにより、着信があった旨をユーザーに知らせることができる。
【0066】
図7は本発明の振動発生装置が搭載された携帯電話端末の外観を示す斜視図である。
図7に示すように、携帯電話端末20は、第1のケース21aと第2のケース21bが軸23を支点として回動可能に連結されたケース(筐体)21を有している。第1のケース21aには複数個の押釦式のキー入力部22aが配列された操作部22が設けられ、また第2のケース21bには液晶パネルで形成された表示部24が設けられている。
【0067】
携帯電話端末20では、操作部22の面と表示部24の面とが対向して2つに折り畳まれて非使用状態(第2のケース21bが1点鎖線で示される位置にある状態)となり、第1のケース21aと第2のケース21bとがほぼ180度に近い角度まで拡開したときに使用状態となるように設定されている。
【0068】
携帯電話端末20に対して送られた電波信号が、アンテナ25で受信されると、信号処理が行われて、制御部31からパルス発生回路32にコマンド信号が入力される。そして、パルス発生回路32からコイル6に駆動電流Iが与えられることにより、前述した動作原理に基づいて振動発生装置1が振動し、携帯電話端末20のケース21を振動させ、携帯電話端末20の使用者に着信を知らせる。
【0069】
また、本発明の振動発生装置1を、たとえばPDA等の携帯用電子入力機器に搭載した場合には、操作者がPDAの画面を備え付けの電子ペン等で操作したときに、前述した動作原理に基づいて振動発生装置1を駆動させるようにしてもよい。この場合には、操作者がPDAの画面を操作したことに合わせて、操作者にクリック感を体感させることが可能となる。このため、操作者は自分が操作したかどうかを確実に確認することできるようになる。
【0070】
また小型カメラが内蔵されている携帯電話端末20の場合には、以下のような操作が可能なる。
【0071】
この小型カメラで被写体を撮影する場合には、被写体の大きさや、一度に撮影したい被写体の数、あるいは撮影者の意向により、小型カメラの姿勢、すなわち携帯電話端末20のケース21の姿勢は様々な状態に設定させられる。
【0072】
たとえば、写真の縦横の比が通常と逆となるような写真を撮影するような場合、すなわち横方向の長さよりも縦方向の長さの方が長い写真を撮影したい場合には、携帯電話端末20自体を横向きに傾けた姿勢で撮影する。あるいは上下逆さまな写真を撮影したい場合には、携帯電話端末20自体を上下逆さまにした姿勢で撮影するが、このように携帯電話端末20の姿勢を変化させると、振動発生装置1の姿勢検出手段によって、前述した動作原理に基づいて、携帯電話端末20の姿勢を検知することができる。よって、制御部31は検知された携帯電話端末20の姿勢にあわせて、前記被写体に対する小型カメラの焦点が合うようにフォーカス制御を行わせることが可能となる。このため携帯電話端末20の姿勢が変化した場合でも、被写体に小型カメラの焦点を正確に合わせることができ、被写体を鮮明に撮影することができる。
【0073】
また、本発明の振動発生装置1の姿勢検出手段は、上記のようなカメラ用として用いられることには限定されず、携帯電話端末20やPDAの表示部に表示される画像の切換えにも用いることができる。
【0074】
この場合には、携帯電話端末20やPDAが、傾けられたり、上下逆さまにされると、振動発生装置1の姿勢検出手段が前述した動作原理に基づいて、携帯電話端末20やPDAの姿勢が検知される。検知された携帯電話端末20やPDAの姿勢にあわせて、表示部24やPDAの表示部に表示される画像が、携帯電話端末20やPDAの通常の姿勢(携帯電話端末20やPDAが、傾けられたり、上下逆さまにされる前の姿勢)のときに表示されている場合と同じ表示となるように、すなわち携帯電話端末20の表示部24が横向きや上下逆さまとになったとしても、そこに表示される画像は絶対的な鉛直方向(重心方向)に対して常に正常な上下関係が維持されるように内部のソフトウェアを用いて切換えられる。このため、携帯電話端末20やPDAの姿勢が変化した場合でも、画像を通常と同じ表示とすることができる。その結果、たとえば携帯電話端末20に内蔵された小型カメラで撮影したデジタル画像を編集する際に、画像を容易に見ることができ、画像の編集等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の振動発生装置をX2方向からみた側面図、
【図2】本発明の振動発生装置の平面図、
【図3】図1に示された振動発生装置をY1方向からみた断面図、
【図4】振動発生装置の上部に設けられる姿勢検出手段を示す斜視図、
【図5】筐体が、Y1側が上昇する方向に傾いた場合の筐体内部の様子を示した図、
【図6】筐体が上下逆さまになった場合の筐体内部の様子を示した図、
【図7】本発明の振動発生装置が搭載された携帯電話端末の外観を示す斜視図、
【符号の説明】
【0076】
1 振動発生装置
2 筐体
3 弾性支持部材
3a 固体部
3b 撓み変形部
3c 保持部
5 可動部
6 コイル
7 磁石
8 ヨーク部材
9,10 導通部
11 制御検出端子(検出端子)
12 第1の姿勢検出端子(検出端子)
13 第2の姿勢検出端子(検出端子)
14 第3の姿勢検出端子(検出端子)
SW1 第1のスイッチ部
SW2 第2のスイッチ部
SW3 第3のスイッチ部
SW4 第4のスイッチ部
31 制御部
32 パルス発生回路(電流供給回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に対し振動可能な状態で一方の端部が片持ち支持された弾性支持部材と、前記弾性支持部材の他方の端部に固定された可動部と、前記可動部に振動を生起させる振動駆動回路とを備えた振動発生装置において、
前記可動部が振動の中心となる基準面を一方向に越えたことを検知する姿勢検出手段が設けられており、前記姿勢検出手段により前記筐体の傾き姿勢が検知されることを特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
前記姿勢検出手段は、前記基準面に設けられた導通部と、前記導通部に弾圧可能であるとともに前記基準面から前記可動部が移動する領域内に突出する接続部とを有する複数の検出端子を有しており、前記可動部が前記基準面を越えたときに、前記検出端子が持ち上げられて前記接続部と前記導通部との前記弾圧が解除させられる請求項1記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記検出端子は、前記可動部の長手方向の両端側で対称となる位置と、中央側で対称となる位置にそれぞれ一組づつ設けられており、前記長手方向と直交する幅方向の一方に前記両端側で対称となる一組の検出端子が設けられ、他方に前記中央側で対称となる一組の検出端子が設けられている請求項2記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記振動駆動回路は、前記可動部に固定されて一緒に振動するコイルと、前記コイルに垂直な磁界を与える磁石と、前記コイルに駆動電流を与えるパルス発生回路と、前記パルス発生回路を所定のタイミングで駆動させる制御部とを有するとともに、
前記振動駆動回路内には、前記中央側に設けられた一組の検出端子の一方が、前記可動部の振動に伴って前記振動駆動回路の開閉動作を行うスイッチ部として設けられている請求項3記載の振動発生装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の振動発生装置が設けられ、外部からの所定の信号を受信したときには前記振動発生装置を駆動させて前記筐体が振動させられ、前記筐体の姿勢が変化したときには前記姿勢検出手段により前記筐体の姿勢が検知されることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14518(P2006−14518A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189220(P2004−189220)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】