説明

振幅及び位相変調された超音波を用いた粘弾性測定

【課題】外部からの加圧量には依存せずに、超音波を用いて粘弾性特性を測定する。
【解決手段】組織の粘弾性特性を生体内で測定するようにプログラムされたプロセッサにより実行される命令を表すデータが記憶された非揮発性のコンピュータ可読記憶媒体であって、異なる複数の時点に1つの周波数範囲に属する異なる複数の周波数のサイクルを含む振幅位相変調された波形を患者体内の組織へ送信するための命令と、振幅位相変調された波形に応答して組織の変位を時間の関数として計算するための命令であって、変位を組織の走査から計算する命令と、経時的変位にフーリエ変換を適用するための命令と、剪断波動方程式のフーリエ変換と経時的変位のフーリエ変換とから粘弾性特性を決定するための命令とを有する、コンピュータ可読記憶媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘弾性測定に関するものである。特に、組織の粘弾性を生体内で測定する。
【背景技術】
【0002】
組織の剪断弾性率特性はレオメーターで測定してよい。レオメーターは試料を動的(例えば正弦波状)または静的(例えば直線状)に変形させることのできる機械的な装置である。レオメーターはある周波数範囲の貯蔵剪断弾性率と損失剪断弾性率とを測定する。この周波数範囲は物質のスティフネスに応じて限定される。例えば軟組織ならば1〜10Hzに限定される。医療上の用途では、患者から採取した組織がレオメーターに置かれる。レオメーターは生体内測定には使用されない。測定は採取した組織試料の大きさと形状、ならびに採取に付随する周辺条件に依存する。
【0003】
剪断特性は超音波を用いて生体内測定される。例えば剪断速度の検出は、肝臓疾患の検査などのさまざまな診断において用いられている。剪断波検出の場合には、走査線に沿って超音波プッシングパルス(例えば1サイクルパルス)が発射される。プッシングパルスは剪断波を生じ、この剪断波が組織を変位させる。変位は測定される。剪断波速度を検出するためには、同じ走査線に沿った複数のプッシングパルスと、それに相応する変位の検出走査とが用いられる。これらの剪断測定は限られた情報しか有していないか、または加圧レベルに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、外部からの加圧量には依存せずに、超音波を用いて粘弾性特性を測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、本発明に従い、組織の粘弾性特性を生体内で測定するようにプログラムされたプロセッサにより実行される命令を表すデータが記憶された非揮発性のコンピュータ可読記憶媒体であって、異なる複数の時点に異なる複数の周波数のサイクルを含む振幅位相変調された波形を患者体内の組織へ送信するための命令であって、前記異なる複数の周波数が1つの周波数範囲に属している命令と、前記振幅位相変調された波形に応答して前記組織の変位を時間の関数として計算するための命令であって、前記変位を前記組織の走査から計算する命令と、前記経時的変位にフーリエ変換を適用するための命令と、剪断波動方程式のフーリエ変換と前記経時的変位のフーリエ変換とから前記粘弾性特性を算出するための命令とを有することを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】組織の粘弾性特性を生体内で測定する方法の1つの実施形態のフローチャートである。
【図2】剪断を生じさせる超音波送信の図解である。
【図3】振幅および位相が変調された波形の一例を示す。
【図4】図3の振幅および位相が変調された波形に関する変位を検出するための走査の1つの実施形態を示す。
【図5】磁気共鳴の1つの実施形態における、目標とする組織内に剪断波を伝播させるトランスジューサと変位を測定する無線周波コイルとの相対的な位置を示す。
【図6】超音波を用いて剪断波を計算するシステムの1つの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
まず初めに言っておくと、以下に説明する有利な実施形態には、軟組織の粘弾性を生体内で測定するための方法、命令およびシステムが含まれている。より多くの情報を収集するために、および/または、粘性率、剪断弾性率および/または他の剪断特性を推定するために、振幅位相変調された波形が組織に送信される。この波形により生じる経時的な変位には、異なる複数の周波数への応答に対応した変位が含まれている。周波数領域においてこの変位を調べることにより、異なる複数の周波数に関して1つ以上の粘弾性特性を計算してもよい。周波数応答は組織の健康状態を示すものである。
【0008】
第1の態様では、プログラムされたプロセッサにより実行可能な、組織の粘弾性特性を生体内で測定するための命令を表すデータが、不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されている。この記憶媒体には、異なる複数の時点に異なる複数の周波数のサイクルを含む振幅変調および位相変調された波形を送信するための命令、前記振幅変調および位相変調された波形に応じた組織の変位を時間の関数として計算するための命令、経時的変位にフーリエ変換を適用するための命令、および剪断波動方程式のフーリエ変換と経時的変位のフーリエ変換とから粘弾性特性を求めるための命令が含まれている。なお、前記異なる複数の周波数は1つの周波数範囲に属しており、前記振幅変調および位相変調された波形は患者の組織へ送信される。また、前記変位は組織の走査から計算される。
【0009】
第2の態様では、超音波を用いた粘弾性測定のための方法が提供される。振幅位相変調された超音波波形が患者の生体内に送信される。粘弾性特性は振幅位相変調された超音波波形により生じる剪断から測定される。粘弾性特性は振幅位相変調された超音波波形に割り当てられた周波数範囲にわたって測定され、送信中に外部から患者にかかる加圧の量には依存しない。
【0010】
第3の態様では、超音波を用いて剪断波を計算するシステムが提供される。送信ビームフォーマが振幅位相変調された超音波波形を発生させる。この送信ビームフォーマには超音波トランスジューサが接続されており、超音波トランスジューサは振幅位相変調された超音波波形に応じて患者の組織に音響エネルギーを送る。受信ビームフォーマは受信した音響信号の関数として空間的位置を表すデータを出力する。プロセッサは出力データの関数として組織の経時的変位を推定し、組織の経時的変化の関数として剪断情報を計算するよう構成されている。ディスプレイは剪断情報の関数である画像を表示する。
【0011】
本発明は特許請求の範囲により確定されるものであり、本明細書のいずれの記載も特許請求の範囲に対する限定してとってはならない。本発明のさらなる態様および利点は以下において有利な実施形態と併せて論じられ、後に独立してまたは組み合わせで請求される。
【0012】
図面および構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を図解することに重点が置かれている。さらに、複数の図面において、同じ参照符号は異なる図にわたって相応する部分を指示する。
【実施例】
【0013】
図面の詳細な説明と有利な実施形態
組織の機械的特性が生体内で測定される。例えば軟組織のような、患者体内の何らかの構造または物質の特性が測定される。振幅変調(AM)および位相変調(PM)された超音波波形が組織を変位させる。この1つのAM-PM波形が患者体内の所望の組織に連続する周波数の振動を発生させる。この1回の励振で、組織の剪断弾性率と粘性率がさまざまな周波数において測定されるため、2秒未満の測定が可能となる。低周波数(例えば1−100Hz)での位相変調は高い信号対雑音比をもたらす。このAM-PM波形によれば、剪断を生じさせている最中または生じさせた後に情報を収集することができる。
【0014】
迅速かつ信頼性の高い方法により、1回の測定で物質のスティフネスがさまざまな周波数で推定される。異なる複数の周波数における測定値を収集することにより得られる、物質(例えば組織)の機械的特性に関する知識は、診断手順を補完する。この知識には、歪み、粘性率および/または剪断弾性率のような定量的なパラメータが含まれているものとしてよい。これらの定量的パラメータは変位から派生するものであるから、組織への加圧の量には依存しない。周波数応答は加圧には依存しない。上記の知識には変位のような定性的なパラメータが含まれていてよい。変位は組織にかかる圧力の量に依存する。上記の知識には派生情報が含まれていてよい。周波数に対する剪断弾性率の勾配および/または周波数に対する粘性率の勾配は組織病理学に関係した組織の機械的特性に関する情報を提供する。これらの勾配は予圧のレベルには依存しない。正確度を上げるために測定は繰り返してもよい。これらの測定は接触に依拠していないので、周辺条件、物質のサイズおよび形状には依存しない。
【0015】
図1には、超音波を用いた粘弾性測定の方法が示されている。超音波の送信により、異なる複数の周波数に応じて組織の変位を生じさせる。このようにして、粘弾性特性の計算に超音波が使用される。この方法は図6のシステムまたは異なるシステムによって実現される。付加的なステップまたは異なるステップを設けてもよいし、ステップの数をより少なくしてもよい。例えば、上記方法をステップ38、42および/または44なしで実行してもよい。また別の例として、ステップ32を実行して、ステップ34−40の1つ以上のステップを実行しないようにしてもよい。これらのステップは説明または図示の通りの順序で実行されるが、別の順序で実行してもよい。
【0016】
ステップ30では、振幅変調および位相変調された波形が送信される。超音波トランスジューサが電気波形から変換された音響波形を送信する。振幅変調および位相変調された波形の音響エネルギーは患者体内の組織へ送信される。この送信は生体内で生じる。
【0017】
音響波形は剪断波を発生させるために送信される。この励振は超音波プッシングパルスである。音響エネルギーを集束させることにより、各送信につき1つ以上のビームが生じる。この励振はフェーズドアレイおよび/または機械式集束によって集束される。この励振は1つの場所に集束され、その結果生じる剪断波、例えば、腫瘍かも知れない部位を囲むおよび/または含む組織部位に集束する剪断波の検出が可能となる。
【0018】
図2に示されているように、剪断波52はトランスジューサ54により集束領域50に発生させられ、集束領域50から側方に伝播する。矢印は一方向(例えば水平)に図示されているが、剪断波は複数の方向に進む。剪断波の振幅は剪断波が組織中を進むにつれて低下する。
【0019】
剪断波を発生させるには、高振幅または高パワーの励振が望ましい。例えば、励振は1.9に近いが1.9を超えないメカニカルインデックスを有する。保存的であるためには、またプローブの変動を抑えるためには、上限として1.7または他のレベルのメカニカルインデックスを使用してもよい。また、より高い(例えばMIが1.9を超える)パワーを使用してもよいし、より低いパワーを使用してもよい。同じ走査線または隣接する走査線に沿って送信を行うと、組織の温度が時間とともに上昇してしまう。生体影響には、約41〜45℃の温度における組織の過高熱、43〜45℃を超える温度におけるタンパク質の変性、50℃を超える温度における組織の壊死が含まれる。組織のスティフネスは43〜45℃未満の温度でも影響を受ける。43〜45℃を超える温度では、粘性率および/またはスティフネスの上昇が生じる。50℃を超える温度では、組織は高いスティフネスおよび/または大きな減弱を有する。生体影響は温度上昇が2℃を超えないようにすることで制限される。一方で、送信が生体影響の原因となることもある。
【0020】
電気波形および対応する音響波形は異なる複数の時点に異なる複数の周波数のサイクルを含む。これら異なる複数の周波数は1つの周波数範囲内に属している。この周波数範囲は検査される組織の種類に基づいて最適化されているものとしてよい。例えば、胸部組織は50Hzにおいて最大変位応答を有するので、周波数範囲は50Hzを含む。別の例として、腫瘍は軟組織よりも硬いので、より高い周波数で最大変位応答が生じる。腫瘍を測定する場合には、周波数範囲はより大きくなる。1つの実施形態では、位相変調の場合、周波数範囲は15〜75Hz内である。
【0021】
任意の周波数変更関数を位相変調に用いてよい。例えば、上記範囲内でのチャープ周波数掃引が用いられる。図3には、振幅位相変調されたエンベロープを有する波形が示されている。位相変調は範囲内の最も低い周波数から始まり、最も高い周波数までスイープする、または徐々に変化する。また、非線形の周波数変更やランダムな周波数変更のような他の周波数変更を用いてもよいし、異なる周波数の間の他のステップを任意の順序で用いてもよい。
【0022】
振幅変調は任意の関数である。振幅変調は個々の周波数または周波数のグループを互いに分離する。
【0023】
1つの実施形態では、位相を変更する項を有する正弦波振幅変調(Hz範囲内)を正弦波搬送波(MHz範囲内)に乗じることにより、振幅位相変調された波形を発生させる。位相変更項を有する振幅変調は振幅位相変調によりエンベロープを決定する。波形は次のように表される。
【数1】

ここで、x(t)は時間の関数としての波形であり、Aは振幅の重みであり、ωcは中心周波数または搬送周波数であり、Δωmは時間によって変化する変調周波数である。1つの実施形態では、ωm+Δωmが15〜75Hzの範囲内で変化するが、他の範囲は使用されない。図3には、15〜75Hzの範囲の波形が示されている。
【0024】
波形は任意の数のエンベロープと搬送波サイクルとを有する。1つの実施形態では、波形は1333ミリ秒の十分なサイクルを有しているが、より長いまたはより短い長さの時間を用いてもよい。搬送波のサイクルの数は数十、数百、数千またはそれ以上である。エンベロープまたは変調のサイクルの数は2以上である。
【0025】
組織応答は波形x(t)および組織特性の関数である。組織の経時的変位y(t)は波形x(t)と組織特性または応答h(t)との畳み込みy(t)=x(t)*h(t)として表される。組織応答は組織の粘弾性特性を反映する。
【0026】
ステップ32では、振幅位相変調された超音波波形により生じた剪断から、1つ以上の粘弾性特性が測定される。ステップ32において粘弾性特性を測定するために、ステップ34において、振幅位相変調された波形に応じた組織の経時的変位y(t)が測定される。図示されたステップ32はステップ34、36、38および40を含んでいる。異なるステップまたは付加的なステップを設けてもよいし、ステップの数をより少なくしてもよい。他の実施形態では、粘弾性特性を測定するために他のプロセスが用いられる。
【0027】
ステップ34では、変位が時間の関数として計算される。変位を求めるために、組織は複数回走査される。例えば、2つの異なる時点における変位を求めるために、少なくとも3回、領域を走査する。
【0028】
組織の変位は振幅変調および位相変調された波形に応じる。剪断波により生じた組織の変位は経時的に求められる。剪断波が所定の部位を進むにつれて、組織の変位の量または距離はピーク値まで上昇し、その後組織が静止状態に戻るにつれて低下する。AM-PM波形は多くのサイクルを含んでいるため、組織は連続的に変位する。振幅が低下するにつれて組織は通常の状態に戻り始めるので、振幅変調は変位の経時的分散を生じさせる。位相変調は変位量の経時的変化をもたらす。
【0029】
組織はプッシング波形に組織が反応している最中、例えばAM-PM波形が印加されている最中またはその後に変位を走査することのできる何れかのイメージングモダリティを用いて走査される。この走査は組織が弛緩したまたは通常の状態もしくは位置に戻る前に行われるが、組織が静止状態に戻っている時の組織の走査を含んでいてもよい。超音波イメージングと磁気共鳴イメージングは組織の走査から変位を計算する2つの可能なモダリティである。
【0030】
超音波走査のために、AM-PM波形の集束領域に隣接する、および/またはAM-PM波形の集束領域から離れた位置で剪断波52を検出する。変位を検出するために、超音波エネルギーは変位を被る組織へと送信され、エネルギーの反射が受信される。関心領域における剪断波に対する組織応答を検出するためには、他の集束領域への送信を行い、この他の集束領域の周辺で検出を行う。これら他の送信は剪断波を発生させるためというよりも剪断波を検出するためである。検出のための送信はより低いパワーおよび/または短いパルス(例えば1〜5の搬送波サイクル)を有し、AM-PM波形と同じまたは違う走査線を使用する。検出のための送信は、複数の走査線に沿って同時に受信サンプルを形成するために、少なくとも1つの次元に沿って、例えば横方向に、比較的広いビームプロファイルを有する。剪断波は1つ、2つ、またはそれより多くの方向においてモニターされる。
【0031】
剪断波を検出するために関心領域をモニターする。関心領域は任意のサイズであり、例えば横方向に6mm、軸方向に10mmのサイズで、AM-PM波形の集束位置を囲んでいる。この検出領域は超音波によりモニターされる。例えば、剪断波により生じる組織変位を検出するために、Bモード走査が行われる。ドップラーモード、カラーフローモードまたは他の超音波モードを使用して剪断波をモニターしてもよい。
【0032】
モニタリングは任意の数の走査線について行われる。例えば、各送信に応答して4つの受信ビームが形成される。剪断波を発生させる励振を送信した後、1つ以上の送信走査線に沿ったBモード送信と、相応する受信走査線に沿ったBモード受信が行われる。他の実施形態では、各送信に応答して1つの受信ビームだけが、または他の個数の受信ビームが形成される。超音波データのうちの一部、例えば繰り返しの開始時または終了時における超音波データは剪断波に応答しない。
【0033】
検出のための送信および受信は、経時的変位による変化を求めるために複数回行われる。任意の送受信シーケンスを用いてよい。変位の検出の間に他の走査を行ってもよい、例えば、変位を求めるために複数の異なる領域を別個に走査してもよい。
【0034】
検出のための送信および受信は振幅位相変調された波形によりインタリーブされる。例えば、領域を一回走査するための送信および受信は、振幅変調がゼロレベルになるたびに、またはゼロレベルに近づくたびに行われる。別の例として、組織の走査は周期的に、例えば1.67ミリ秒ごとに、ステップ30の送信によりインタリーブされる。このインタリーブは、振幅位相変調された波形が走査中に停止されることにより波形からのエコーが最小化されるといった障害を防止する。図4には、平面56の走査を振幅位相変調された波形でインタリーブする一例が示されている。インタリーブ周期は多少短い。振幅位相変調が変位走査の停止後に継続される場合、波形は、波形中のポイントのうち、送信が終了したポイントから始まる。代替的な実施形態では、振幅位相変調された波形とは異なる周波数または異なる符号化で走査が行われる。プッシング波形と走査は両方同時に行われるので、それぞれからのエコーを区別するために周波数または符号化が使用される。
【0035】
以上の議論は1つの深度または位置のための議論である。粘弾性特性は1つの位置について測定される。より大きな領域をモニターするには、他の位置に関してステップ30〜40が繰り返される。各受信ビーム位置について、超音波によって表される動き情報の時間プロファイルが与えられる。軸方向の各深度と横方向の各位置について、別個の時間プロファイルが与えられる。
【0036】
変位は超音波走査データから計算される。組織は2つの走査の間に動く。一方の走査のデータは他方の走査におけるデータに対して1つ、2つまたは3つの次元において移動している。可能な各相対位置につき、類似度が計算される。類似度は相互相関のような相関により決定される。絶対差の最小和または他の関数を使用してもよい。最も高いまたは十分な相関を有する空間オフセットが変位の量と方向を示す。
【0037】
複数の変位が逐次的走査に関係する異なる時点において所定の位置に関して求められる。走査データの最初のフレームまたは基準フレームに対する変位(すなわち累積変位)が求められる。あるいは、継続的に走査データの直前のフレームを基準フレームとすることで、この先行フレームから変位(すなわち増分変位)が求められる。所定の位置に関する時間プロファイルは、振幅位相変調された波形の異なる複数の部分に応じて剪断波により引き起こされた経時的変位を示す。
【0038】
磁気共鳴による走査でも類似のプロセスが用いられる。図5には、少なくとも部分的に磁気共鳴ボアにより包囲された集束領域へ送信するトランスジューサ54が示されている。ボアは無線周波コイルを含んでいる。一様磁場が発生させられる。パルス無線周波勾配増幅器を用いて、患者体内の分子のスピンが変化させられる。これらのコイルが変性を検出するために使用され、k空間データが得られる。
【0039】
シーケンス中のフレーム間の相関をとるのではなく、経時的変位データの集合が取得される。患者の組織を表すk空間磁気共鳴データは異なる時点または1つのシーケンスにおいて取得される。1つの集合(基準集合)は組織を振幅位相変調された波形にさらさずに取得される。別の集合は振幅位相変調された波形の印加中に取得される。この波形の超音波はk空間データに干渉しないので、走査データはインタリーブせずに取得される。代替的に、インタリーブを用いてもよい。走査のシーケンスは、振幅変調された波形の低振幅部分または他の関数に基づき周期的である(例えば1.67秒毎)。
【0040】
k空間データは心臓または呼吸のサイクルのような1つ以上の生理的サイクルと同期して取得される。基準シーケンスの走査は変位集合と同じサイクル内の点で取得される。k空間データは画像へと処理されることなく使用されるが、代替実施形態では画像データを使用してよい。
【0041】
送信に応答しない組織を表す基準磁気共鳴データは、送信に応答する組織を表す磁気共鳴データから差し引かれる。代替的に、組織応答を表すデータを基準データから差し引いてもよい。生理的サイクルに対して同様の時点からの走査は差し引かれる。この減算により差が割り出される。剪断波は差を生じさせるので、オフセットされた、もしくは変位した組織は残り、他の信号は減算により相殺されてしまう。
【0042】
ローパスフィルタリングまたは他の処理の後に、逐次フレームの間の変位の量および方向が求められる。ピーク強度点またはピーク強度領域の位置が減算データの各フレームごとにデータ中で同定される。逐次フレーム間または基準フレームと異なるフレームとの間の位置の差が変位として計算される。変位は異なる時点に印加される振幅位相変調された波形の差のゆえに経時的に変化する。
【0043】
ステップ36では、経時的変位が周波数領域に変換される。経時的変位にフーリエ変換が適用される。しかし任意の変換を用いてよい。経時的変位は振幅位相変調された波形の異なる複数の周波数に応答するので、周波数領域内への変換により、周波数の関数として異なる複数の応答レベルが得られる。変位y(t)のフーリエ変換はY(Ω)と表される。ここで、Ωは周波数である、すなわち、周波数領域における変位の表現である。
【0044】
変位または組織応答の変換は次のように表される。
【数2】

【0045】
ステップ38では、周波数領域における変位がフィルタリングされる。帯域通過フィルタリングのような任意のフィルタリングを用いてよい。帯域通過フィルタの周波数帯域は送信される振幅位相変調された波形の周波数帯域に基づいて設定される。音響力は圧力の平方の関数である。結果として、波形により誘発される変位または振動は波形の周波数の2倍である。例えば、波形はエンベロープの15〜75Hzの周波数変動を含むので、相応する変位情報は30〜150Hzにおいて生じる。変位の周波数範囲の幅は波形の周波数範囲の幅の2倍であり、変位の周波数範囲の低周波数および高周波数は波形の周波数範囲の低周波数および高周波数の2倍である。フィルタリングがこの範囲または下位範囲における情報を抜き出す。範囲外の周波数データは使用されず、範囲内のデータが使用されるので、結果として帯域通過フィルタリングが実現される。他の帯域通過フィルタリング、他のフィルタリング、他の処理、またはデータを変更しない処理を使用してもよい。
【0046】
ステップ40では、経時的変位のフーリエ変換から粘弾性特性が求められる。剪断波は次のように表される。
【数3】

別の剪断波表現を使用してもよい。
周波数領域では、剪断波動方程式は次のように表される。
【数4】

この方程式は剪断波動方程式のフーリエ変換を表している。剪断波表現と使用するフーリエ変換とに依存して、他の表現を用いてもよい。方程式の左辺の項は既知または測定されたものであり、例えば、周波数領域において結果として生じる動き(変位)Y(Ω)のように、AM-PM周波数の2倍に等しい周波数(ω)で、例えば2×(15〜75Hz)=30Hz〜150Hzで振動する。右辺は変換された剪断波動方程式の虚部と実部を表している。
【0047】
粘弾性特性は周波数領域における剪断波動方程式から求められる。弾性率、粘性率または剪断値のいずれを推定してもよい。組織弾性率の値は組織の硬さまたはスティフネスを表す。例えば、組織の剪断弾性率が推定される。代替実施形態では、ヤング弾性率が推定される。他の実施形態では、定量的であれ定性的であれ、他の剪断値が推定される。
【0048】
1つの実施形態では、粘性率が求められる。粘性率はフーリエ変換の適用結果の関数として計算される。粘性率を求めるには、剪断波動方程式のフーリエ変換の虚部が使用される。粘性率を得るために、虚部は周波数ωで除される。これは次のように表される。
【数5】

【0049】
代替的または付加的な実施形態では、剪断弾性率が求められる。剪断弾性率はフーリエ変換の適用結果の関数として計算される。剪断弾性率を求めるには、剪断波動方程式のフーリエ変換の実部が使用される。この実部自体が剪断弾性率を表す。これは次のように表される。
【数6】

【0050】
粘性率または剪断弾性率のような粘弾性特性は周波数(ω)の範囲にわたって求められる。例えば、変位データは30〜150Hzの範囲内である。粘性率も同じ範囲にわたって求められる。周波数グループに対する粘性率またはサブバンドに対する粘性率は、5Hzごとに値を求めるなどして、平均化される。特性は振幅位相変調された波形と波形印加中の組織の走査とだけに応じて求められる。ステップ30〜40の逐次実行は規定されていないが、行ってもよい。1つの範囲に属する複数の周波数を有する1つの波形を用いることにより、組織の周波数に関連した応答は、走査と波形の送信とをインタリーブするのに十分な短い期間の間に測定される。
【0051】
粘性率と剪断弾性率は定量的特性である。それらの値は加圧量には依存しない。送信中に音響波形または外部ソースから患者にかかる圧力は、定量的特性を求めるためには不要である。代替的実施形態では、変位のような定性的特性が用いられる。
【0052】
ステップ42では、周波数の関数としての粘弾性特性の勾配が求められる。周波数の関数としての粘弾性特性が周波数範囲の少なくとも一部または全部にわたってプロットされる。プロットまたはデータに直線が当てはめられ、勾配が求められる。例えば、周波数の関数としての剪断弾性率と粘性率の勾配が求められる。
【0053】
勾配は組織の健康状態を示すものであり、診断を補助する。例えば、健康な組織は腫瘍に比べてより水平な粘性率勾配を有する。組織の周波数応答は組織が健康であるか否かを示す。周波数の関数としての特性の他の関数、例えば分散、変化量または曲率を計算してもよい。
【0054】
ステップ44では、画像が生成される。この画像は特性を表す。所定の周波数における特性または異なる複数の周波数にわたってデータから計算された特性が、数値または文字により表示される。他の実施形態では、プロットおよび/または直線当てはめ、ならびに勾配値が出力される。粘弾性特性は画像でユーザに通知される。画像は周波数の関数として値をプロットしたグラフであってよい。
【0055】
画像はさらに、空間または位置の関数としての前記特性または他の剪断情報の1次元、2次元または3次元表現を含んでいてよい。例えば、1つの領域全体にわたる剪断速度が表示される。剪断速度はグレースケール変調されたBモード画像内の1つの領域におけるピクセルの色を変調する。前記画像は異なる複数の位置に関して剪断または弾性率(例えば剪断弾性率)のような変位情報を表す。表示グリッドは走査グリッドおよび/または変位を計算するためのグリッドとは異なっていてよい。色、明るさ、輝度、色相または他の特徴は剪断情報の関数として変調される。
【0056】
上記ステップは別の走査線および/または別の深度についても繰り返される。例えば、ステップ30〜40が1次元、2次元または3次元領域の各位置について再度繰り返される。
【0057】
図6には、超音波を用いて剪断波を計算するシステム10の1つの実施形態が示されている。超音波が剪断波を発生させ、この超音波に反応する組織に応じた走査データを用いて特性が求められる。システム10は図1の方法または他の方法を実施する。システム10は送信ビームフォーマ12、トランスジューサ14、受信ビームフォーマ16、画像プロセッサ18、ディスプレイ20およびメモリ22を含んでいる。付加的な構成要素または異なる構成要素を設けてもよいし、構成要素の数をより少なくしてもよい。例えば、剪断情報を得たい関心領域を手動で、またはアシスト付きで指示するために、ユーザ入力部が設けられる。別の例としては、組織を処置するためにさらにHIFUトランスジューサが設けられる。システム10は超音波画像診断システムである。
【0058】
代替実施形態では、システム10はパーソナルコンピュータ、ワークステーション、PACSステーション、または、同じ場所における、または実時間イメージングもしくは取得後イメージングのためのネットワーク全体に分散した他の装置である。
【0059】
さらに別の代替実施形態では、システム10は磁気共鳴システムの一部である。例えば、剪断波を発生させる波形を送信するために送信ビームフォーマ12とトランスジューサ14は設けるが、受信ビームフォーマは設けない。その代わり、走査のために、図5に示されているような磁気共鳴コイルと磁石がプロセッサ18、メモリ22およびディスプレイ20と共に設けられる。
【0060】
送信ビームフォーマ12は、超音波送信器、メモリ、パルサ、アナログ回路、ディジタル回路またはこれらの組み合わせである。送信ビームフォーマ12は、異なる又は相対的な振幅、遅延および/または位相調整を有する複数のチャネルのための波形を発生させることができる。発生した波に応答してトランスジューサ14から音響波を送信する際、1つ以上のビームが形成される。これらの波形はそれぞれ振幅位相変調された波形であるが、集束領域において所望の音響波形(例えば図3参照)を得るために、相対的な遅延およびアポダイゼーションを有する。
【0061】
組織の変位を走査するために、送信ビームのシーケンスが形成され、1次元、2次元または3次元領域で走査が行われる。セクタ走査、Vector(登録商標)走査、または他の走査フォーマットを使用してもよい。図4に示されているように、同じ領域が複数回走査される。送信ビームフォーマ12による走査は、送信ビームフォーマ12による振幅位相変調された波形の送信でインタリーブされる、または送信と同期される。トランスジューサ14の同じ構成要素が剪断波の走査と発生の両方に使用されるが、違う構成要素、トランスジューサおよび/またはビームフォーマを使用してもよい。
【0062】
トランスジューサ14は圧電素子または容量膜素子の1次元、1.25次元、1.5次元、1.75次元または2次元アレイである。あるいは、機械式集束を有する単一素子が設けられる。トランスジューサ14は音響エネルギーと電気エネルギーを変換するための複数の素子を含んでいる。例えば、トランスジューサ14は62〜256個の素子を有する1次元PZTアレイである。
【0063】
トランスジューサ14は電気波形を音響波形に変換するために送信ビームフォーマ12と接続されており、音響エコーを電気信号に変換するために受信ビームフォーマ16と接続されている。トランスジューサ14は振幅位相変調された波形で音響エネルギーを送信する。この波形は患者体内の組織領域または関心領域において集束する。トランスジューサ素子への電気波形の印加に応答して音響波形が生成される。
【0064】
超音波走査により変位を検出するために、トランスジューサは音響エネルギーを送信し、エコーを受信する。受信信号はトランスジューサ14の素子に衝突する超音波エネルギー(エコー)に応答して生成される。
【0065】
受信ビームフォーマ16は、増幅器、遅延器および/または位相回転器ならびに1つ以上の加算器を有する複数のチャネルを含んでいる。各チャネルは1つ以上のトランスデューサ素子に接続されている。受信ビームフォーマ16は、検出のための各送信に応答して1つ以上の受信ビームを形成するために、相対的遅延、位相および/またはアポダイゼーションを与える。受信ビームフォーマ16は受信した音響信号を用いて空間位置を表すデータを出力する。異なる複数の素子からの信号の相対的遅延および/または位相調整ならびに加算により、ビームが形成される。代替実施形態では、受信ビームフォーマ16はフーリエ変換または他の変換を用いてサンプルを形成するプロセッサである。
【0066】
受信ビームフォーマ16は、例えば第2高調波周波数または送信周波数帯域に相対的な他の周波数帯域における情報を抜き出すための、フィルタを含んでいてよい。このような情報には、所望の組織、造影剤および/またはフローに関する情報が含まれている可能性が高い。別の実施形態では、受信ビームフォーマ16はメモリもしくはバッファおよびフィルタもしくは加算器を含む。2つ以上の受信ビームを組み合わせて、第2高調波、3次基本波または他の帯域のような所望の周波数帯域における情報が抜き出される。
【0067】
受信ビームフォーマ16は、複数の空間位置を表す、ビームを加算したデータを出力する。1つの位置、1つの線に沿った位置、1つのエリアにおける位置または1つのボリュームにおける位置に関してデータが出力される。動的集束を行ってもよい。上記データはそれぞれ異なる目的を有していてよい。例えば、Bモードまたは組織データのためには剪断波検出の場合とは異なる走査が行われる。代替的には、Bモードは剪断波により生じた変位を求めるためにも使用される。
【0068】
プロセッサ18は、Bモード検出器、ドップラー検出器、パルス波ドップラー検出器、相関プロセッサ、フーリエ変換プロセッサ、特定用途向け集積回路、汎用プロセッサ、制御プロセッサ、画像プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、デジタル信号プロセッサ、アナログ回路、デジタル回路、これらの組合せ、またはビーム形成された超音波サンプルからの情報を検出および処理する現在公知もしくは将来開発される他の装置である。
【0069】
1つの実施形態では、プロセッサ18には1つ以上の検出器と別個のプロセッサとを含んでいる。この別個のプロセッサは、制御プロセッサ、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、ネットワーク、サーバ、プロセッサ群、データ経路、これらの組合せ、または変位を決定し、組織の特性を計算する現在公知もしくは将来開発される別の装置である。例えば、この別個のプロセッサは図1に示されている1つ以上のステップの任意の組合せを実行する。プロセッサ18はこれらステップを実行するソフトウェアおよび/またはハードウェアにより構成されている。
【0070】
1つの実施形態では、プロセッサ18は受信ビームフォーマ16からの出力データの関数として組織の経時的変位を推定する。これらの変位は時間の関数としての変位量曲線を表すプロファイルまたはデータとして推定される。変位プロファイルは、基準データと振幅位相変調されたプッシング波形の送信中に得られたデータまたは前記送信でインタリーブされたデータとの間の相関、さもなければ類似性のレベルを求めることにより得られる。
【0071】
プロセッサ18は組織の経時的変位を周波数領域内へと変換するよう構成されている。高速フーリエ変換のようなフーリエ変換が変位データに適用される。
【0072】
プロセッサ18は剪断情報を組織の経時的変位の関数として計算するよう構成されている。例えば、経時的変位から剪断速度が計算される。速度は変位量を時間で除することにより求まる。1つの実施形態では、プロセッサ18は周波数の関数としてまたは1つの周波数において粘性率を計算する。粘性率は周波数領域における変位から計算される。変換された変位は周波数の関数として粘性率を求めるために使用される。これらの周波数は振幅位相変調された波形に対応する範囲に属している。1つの周波数における粘性率、平均粘性率または異なる複数の周波数における粘性率が周波数領域において剪断の表現を用いて計算されるが、代わりに時間領域で計算してもよい。プロセッサ18は剪断弾性率のような他の特性を計算してもよい。
【0073】
プロセッサ18は粘弾性特性からマッピングされた画像または表示値を生成し、ディスプレイ20に出力する。例えば、剪断粘性率、剪断弾性率または他の値が求められる。特性は文字または数値によってユーザに表示される。粘性率または時間もしくは周波数に依存する他の特性のグラフを表示してもよい。1つの実施形態では、プロセッサ18が周波数の関数としての前記特性に直線を当てはめ、その勾配が値としてまたはグラフにより表示される。
【0074】
付加的または代替的実施形態では、剪断情報は位置の関数として表示される。剪断値の大きさが、組織領域を表す複数の異なるピクセルの色、色相、明るさおよび/または他の表示特徴を変調する。プロセッサ18はピクセル値(例えば、RGB)またはピクセル値に変換されたスカラー値を求める。画像はこれらのスカラー値または画素値として生成される。この画像はビデオプロセッサ、ルックアップテーブル、カラーマップに出力されるか、または直接ディスプレイ20に出力される。
【0075】
プロセッサ18はメモリ22または別のメモリに記憶されている命令に従って動作する。これらの命令はロードおよび/または実行されることによりプロセッサ18の動作を指定する。プロセッサ18は組織の粘弾性特性を生体内で測定するようプログラムされている。メモリ22は不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体である。本明細書において論じたプロセス、方法および/または技術を実行するこれらの命令は、キャッシュ、バッファ、RAM、リムーバブルメディア、ハードドライブまたは他のコンピュータ可読記憶媒体のような、コンピュータ可読記憶媒体またはメモリ上で提供される。コンピュータ可読記憶媒体には、さまざまな種類の揮発性および非揮発性記憶媒体が含まれる。図面または発明の詳細な説明において示された機能、ステップまたはタスクは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されている1つ以上の命令セットに応答して実行される。上記機能、ステップまたはタスクは、特定の種類の命令セット、記憶媒体、プロセッサまたは処理ストラテジには依存せず、単独または組合せで動作するソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコード等により実行される。同様に、処理ストラテジには、マルチプロセッシング、マルチタスキング、並列処理等が含まれる。1つの実施形態では、ローカルシステムまたはリモートシステムによる読み出しのために、リムーバブルメディアに命令が記憶される。他の実施形態では、コンピュータネットワークまたは電話回線を介して転送できるように、命令はリモートロケーションに記憶される。さらに別の実施形態では、命令は所定のコンピュータ、CPU、GPUまたはシステム内に記憶される。
【0076】
ディスプレイ20は、CRT、LCD、プロジェクタ、プラズマディスプレイ、または2次元画像もしくは3次元表現を表示する他のディスプレイである。ディスプレイ20は剪断情報を表す1つ以上の画像を表示する。画像はグラフ、数字、文字、および/または領域の2次元表現である。例えば、周波数の関数である粘性率値または粘性率グラフが画像として表示される。
【0077】
以上、本発明をさまざまな実施形態を参照しつつ説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えうることが理解されなければならない。したがって、上記の詳細な記述は限定を目的とするものではなく、説明を目的とするものであり、本発明の趣旨と範囲を定めるのは、すべての均等物を含む特許請求の範囲であることを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の粘弾性特性を生体内で測定(32)するようにプログラムされたプロセッサ(18)により実行される命令を表すデータが記憶された非揮発性のコンピュータ可読記憶媒体であって、該記憶媒体は、
異なる複数の時点に異なる複数の周波数のサイクルを含む振幅変調及び位相変調された波形を患者体内の組織へ送信(30)するための命令であって、前記異なる複数の周波数が1つの周波数範囲に属している命令と、
前記振幅変調及び位相変調された波形に応答した組織の変位を時間の関数として計算する(34)ための命令であって、前記変位は前記組織の走査から計算される命令と、
前記経時的変位にフーリエ変換を適用(36)するための命令と、
剪断波動方程式のフーリエ変換と前記経時的変位のフーリエ変換とから前記粘弾性特性を決定(40)するための命令と
を有することを特徴とする、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項2】
前記振幅変調及び位相変調された波形は前記周波数範囲内でのチャープ周波数掃引を含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項3】
前記振幅変調及び位相変調された波形は、位相変更項を有する正弦波振幅変調を乗じた正弦波搬送波を含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項4】
前記変位の計算(34)は、前記送信(30)を合間に挟みつつ前記組織を超音波により走査することと、該走査の間の前記組織の変位を前記走査からのデータの間の相関の関数として計算(34)することを含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項5】
前記変位の計算(34)は、前記組織が前記送信(30)に応答している間、前記組織を表すk空間磁気共鳴データを異なる複数の時点において取得すること、前記送信(30)に応答しない前記組織を表す基準k空間磁気共鳴データを減算すること、および前記減算の結果から変位を計算(34)することを含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項6】
前記フーリエ変換の適用(36)は前記経時的変位を周波数領域内へ変換することを含んでおり、前記異なる複数の時点における変位は前記異なる複数の周波数に応答する、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項7】
前記粘弾性特性の決定(40)は粘性率の決定を含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
前記送信(30)および前記粘弾性特性の決定(40)は、前記周波数範囲にわたって、前記振幅変調及び位相変調された波形と該波形が印加されている間の前記組織の走査とだけに応答した前記粘弾性特性を決定(40)することを含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項9】
前記決定(40)は、粘性率を前記剪断波動方程式のフーリエ変換の虚部の関数として、剪断弾性率を前記剪断波動方程式のフーリエ変換の実部の関数として決定(40)することを含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
さらに前記粘弾性特性の勾配を前記周波数範囲内の周波数の関数として求める(42)ことを含む、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
前記経時的変位にフーリエ変換を適用した結果に対しての帯域通過フィルタリング(38)をさらに含み、通過帯域の幅、高周波数および低周波数は前記周波数範囲のほぼ2倍である、請求項1に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
超音波を用いた粘弾性測定方法であって、
振幅及び位相変調された超音波波形を患者の生体内に送信(30)し、
前記振幅及び位相変調された超音波波形により生じた剪断から粘弾性特性を測定(32)する、
前記粘弾性特性は前記振幅及び位相変調された超音波波形に対応する1つの周波数範囲にわたって測定され、前記送信(30)の間に患者に外部から印加される加圧量には依存しない、
ことを特徴とする超音波を用いた粘弾性測定方法。
【請求項13】
前記送信(30)は、1つの超音波周波数における正弦波搬送波に、前記周波数範囲が15Hz〜75Hzの範囲内となるような振幅及び位相変調を有するエンベロープを乗じることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定(32)は、前記送信(30)を合間に挟んで前記患者を超音波で走査すること、および、前記走査の各走査の間に前記送信(30)により生じた前記患者の組織の変位を計算(34)することを含んでおり、
前記計算(34)は前記各走査からのデータの間の相関の関数として行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記測定(32)は、前記組織が前記送信(30)に応答している間、前記患者の組織を表すk空間磁気共鳴データを異なる複数の時点において取得すること、前記送信(30)に応答しない前記組織を表す基準k空間磁気共鳴データを減算すること、および前記減算の結果から変位を計算(34)することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記測定(32)は、時間の関数としての変位を表すデータにフーリエ変換を適用(36)すること、および前記フーリエ変換の適用(36)の結果の関数としての粘性率を計算(34)することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記計算(34)は剪断波動方程式のフーリエ変換の虚部の関数として計算(34)することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに前記粘弾性特性の勾配を前記周波数範囲内の周波数の関数として求める(42)ことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
超音波を用いて剪断波を計算するシステムであって、
振幅及び位相変調された波形を発生させる送信ビームフォーマ(12)と、
前記送信ビームフォーマ(12)に接続された超音波トランスジューサ(14)であって、前記振幅及び位相変調された波形に応答して患者体内に音響エネルギーを送信する、超音波トランスジューサ(14)と、
受信した音響信号に依存した空間的位置を表す出力データを出力する受信ビームフォーマ(16)と、
前記出力データに依存した前記患者体内における経時的変位を推定し、前記患者体内における経時的変位の関数として剪断情報を計算するよう構成されたプロセッサ(18)と、
前記剪断情報の関数である画像を表示するディスプレイ(20)と
を有することを特徴とする、超音波を用いて剪断波を計算するシステム。
【請求項20】
前記プロセッサ(18)は前記患者体内における経時的変位を周波数領域内へ変換し、前記周波数領域での変位から、周波数の関数としての粘性率と剪断弾性率を計算するよう構成されており、前記周波数は前記振幅及び位相変調された波形に対応した1つの周波数範囲内にある、請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170823(P2012−170823A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−31816(P2012−31816)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】