挿入実装部品の半田付け方法、挿入実装部品の半田付け構造及び電子回路基板
【課題】プリント配線板の部品面側にフィレットを適正に形成することができる挿入実装部品の半田付け方法とその方法により半田付けが行なわれた半田付け構造及び電子回路基板を提供する。
【解決手段】表裏となる部品面及び半田面の各々にスルーホールランド21U、21dが形成されたプリント配線板に挿入実装部品を実装する方法である。部品面のスルーホールランド21Uにクリーム半田を塗布する。クリーム半田をリフローにて加熱し、スルーホールランド21U上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させ、予備半田とする。リフロー工程を経たプリント配線板の部品面側から挿入実装部品のリード30をスルーホールに挿入する。プリント配線板の半田面側からスルーホールに半田を供給し、この供給された半田と予備半田とを一体化させてリード30をスルーホールに半田付けする。
【解決手段】表裏となる部品面及び半田面の各々にスルーホールランド21U、21dが形成されたプリント配線板に挿入実装部品を実装する方法である。部品面のスルーホールランド21Uにクリーム半田を塗布する。クリーム半田をリフローにて加熱し、スルーホールランド21U上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させ、予備半田とする。リフロー工程を経たプリント配線板の部品面側から挿入実装部品のリード30をスルーホールに挿入する。プリント配線板の半田面側からスルーホールに半田を供給し、この供給された半田と予備半田とを一体化させてリード30をスルーホールに半田付けする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入実装部品をプリント配線板に半田付けする方法、挿入実装部品の半田付け構造及び電子回路基板に関するものである。特に、プリント配線板の部品面側に適正な半田接合部を形成することができる挿入実装部品の半田付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表裏となる部品面及び半田面にスルーホールランドが形成されたプリント配線板に、リードの付いた挿入実装部品を実装することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この挿入実装部品の実装手順の一例は、次の通りである。プリント配線板の部品面側からスルーホールにリードを挿入する。次に、半田面側からフローソルダリングなどで半田を供給する。供給された半田は、半田面側のスルーホールランド上にリード側を頂点とするほぼ円錐状のフィレットを形成する。それと共に、この半田はスルーホール内を伝って部品面側に到達し、さらに部品面側のスルーホールランド上とリード表面にも濡れ広がって半田接合部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-111189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の技術では、半田面側から供給した半田が部品面側に到達しても部品面側に適正な形状の半田接合部を形成することが難しいという問題がある。
【0006】
一般に鉛フリーの半田は、プリント配線板の銅箔面やリード表面とのヌレ性が悪い。そのため、鉛フリーの半田がスルーホール内の銅箔面を半田面側から部品面側まで到達することは難しく、到達したとしても良好な半田接合部ができにくい。特に、プリント配線板が多層構造で、スルーホール内の銅箔面に多数の平面状の銅箔面が接続されている場合、半田がスルーホール内を部品面側に伝っていく過程で、この平面状の銅箔面を介して半田の熱が拡散する。そのため、図14に示すように、半田23がプリント配線板20の部品面側にまで到達しても、十分な量の半田23を部品面側のスルーホールランド21U上に濡れ広がらせることが難しく、スルーホールランド21U上を半田23で被覆できないことがある。
【0007】
その結果、リード30の接続強度が劣ったり、銅めっき等からなる部品面側のスルーホールランド21Uの銅箔面が広範囲に露出したままになり、この露出箇所が半田23よりも早く劣化して半田付け箇所の劣化につながる虞がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的の一つは、プリント配線板の部品面側に良好な半田接合部を形成することができる挿入実装部品の半田付け方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、プリント配線板における部品面側のスルーホールランド上を十分に半田で被覆することができる挿入実装部品の半田付け方法を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、プリント配線板における部品面側のスルーホールランド上が十分に半田で被覆され、良好な半田接合部で挿入実装部品が実装された半田付け構造と電子回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、挿入実装部品をプリント配線板に実装するのに際し、表面実装部品の実装技術で用いられているクリーム半田印刷とリフローを利用することで上記の目的を達成する。
【0012】
本発明の挿入実装部品の半田付け方法は、表裏となる部品面及び半田面の各々にスルーホールランドが形成されたプリント配線板に挿入実装部品を実装する方法に係り、以下の工程を備えることを特徴とする。
【0013】
前記部品面のスルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程。
このクリーム半田をリフローにて加熱し、スルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させることで予備半田とする工程。
前記リフロー工程を経たプリント配線板の部品面側から挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程。
前記プリント配線板の半田面側から前記スルーホールに半田を供給し、この供給された半田と前記予備半田とを一体化させてリードをスルーホールに半田付けする工程。
【0014】
この方法によれば、半田面側からの半田の供給に先立って、部品面側のスルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させることで予備半田を形成している。そのため、半田面側から供給された半田が、この予備半田と一体となることで、部品面側にもより確実に適正形状の半田接合部を形成することができる。
【0015】
本発明の半田付け方法において、この挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程よりも前に前記プリント配線板の部品面に設けられたパッドに表面実装部品を実装する工程を備える場合、その表面実装部品の実装工程で、次の工程を行うことが好ましい。前記パッドにクリーム半田を塗布する工程で前記スルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程を行う。さらに、前記パッドに塗布されたクリーム半田をリフローする工程でスルーホールランドに塗布されたクリーム半田のリフロー工程も行う。
【0016】
この方法によれば、表面実装部品を実装する際に行われるクリーム半田の塗布とリフローを、挿入実装部品の実装に用いるクリーム半田の塗布とリフローにも利用する。そのため、表面実装部品と挿入実装部品の双方をプリント配線板に実装する場合、新たな工程を追加することなく本発明の半田付け方法を実施することができる。
【0017】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田は、スルーホールランドの周方向に実質的に均等に分散するように塗布されることが好ましい。
【0018】
この方法によれば、リフローにてスルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させた際、スルーホールランドの表面に、予備半田で覆われない箇所が局部的に大きく形成されることがない。そのため、スルーホールランド上を均等に予備半田で覆いやすい。
【0019】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田を、スルーホールランドの周方向に実質的に均等に分散するように塗布するには、クリーム半田の塗布領域を制御するステンシルを用いることが好ましい。そのステンシルは、スルーホールランドの外周領域を覆う基部と、スルーホールの開口を覆う遮蔽部と、基部と遮蔽部とをつなぐ複数のブリッジと、これら基部、遮蔽部、及びブリッジで囲まれて形成される複数の開口部とを備えるものとすればよい。
【0020】
この方法によれば、遮蔽部により、スルーホールの内部にクリーム半田が入り込むことを抑制しつつ、開口部の形状に応じてスルーホールランド上にクリーム半田を塗布することが容易にできる。
【0021】
本発明の半田付け方法で、上記ステンシルを用いる場合、前記開口部が扇形孔であることが好ましい。
【0022】
この方法によれば、開口部を扇形孔とすることで、スルーホールランド上の極力広範囲にクリーム半田を塗布することが容易にできる。それにより、クリーム半田をリフローで凝固させた際、スルーホールランドの全面を予備半田で覆い易い。
【0023】
本発明の半田付け方法で、扇形孔の開口部を有するステンシルを用いる場合、その扇形孔は、スルーホールの内径と同じ曲率半径の内周縁と、スルーホールランドの外径と同じ曲率半径の外周縁とを有することが好ましい。
【0024】
この方法によれば、スルーホール内へのクリーム半田の浸入を確実に抑制すると共に、スルーホールランドの内縁側から外縁側に亘って広範囲にクリーム半田を塗布することができる。
【0025】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田をスルーホールランドに塗布する場合、スルーホールランドの外縁よりも外側に突出してクリーム半田を塗布することが好ましい。
【0026】
この方法によれば、後工程でクリーム半田をリフローにて加熱した場合、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせ、同ランド上に予備半田で覆われない領域が生じることを可及的に回避できる。
【0027】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田におけるスルーホールランドの径方向の塗布幅(mm)をSw、前記スルーホールランドの内径(mm)をTdとしたとき、Sw/Tdが0.20以上であることが好ましい。
【0028】
この方法によれば、後工程でクリーム半田をリフローにて加熱した場合、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせ、同ランド上に予備半田で覆われない領域が生じることを可及的に回避できる。このSw/Tdの比率は、より具体的には、次のようにすることが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sw/Tdが0.27以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sw/Tdが0.22以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sw/Tdが0.23以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sw/Tdが0.25以上
【0029】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田の体積(mm3)をSv、前記スルーホールランドの孔面積(mm2)をThとしたとき、Sv/Thが0.10以上であることが好ましい。
【0030】
この方法によれば、後工程でクリーム半田をリフローにて加熱した場合、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせ、同ランド上に予備半田で覆われない領域が生じることを可及的に回避できる。このSv/Th の比率は、より具体的には、次のようにすることが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Thが0.11以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Thが0.12以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Thが0.13以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Thが0.11以上
【0031】
本発明の半田付け方法において、前記リフロー工程により、スルーホールランドの実質的に全面が予備半田により被覆されることが好ましい。
【0032】
この方法によれば、部品面側のスルーホールランドが実質的に予備半田により覆われているため、このランドの酸化に伴う半田付け箇所の劣化を抑制することができる。
【0033】
本発明の半田付け方法において、前記リードをスルーホールに半田付けする工程は、噴流槽タイプのソルダリング、静止槽タイプのソルダリング、手半田、又は自動半田により行うことが好ましい。
【0034】
この方法によれば、いずれの半田付け方法であっても、半田面側からの半田の供給に適した方法であるといえる。特に、噴流槽タイプのソルダリングであるフローソルダリングはより効率的に半田の供給を行うことができる。上記4つの半田付け方法は例示であり、これらに限定されるものではなく、他の半田付け方法であっても利用できる。
【0035】
一方、本発明の挿入実装部品の半田付け構造は、上述した実装部品の半田付け方法により形成されたことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、部品面側、半田面側の双方に適正な形状の半田接合部を形成することができる。
【0037】
さらに、本発明の電子回路基板は、上記半田付け構造を備えることを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、挿入実装部品が電気的・機械的に良好な接合状態にて実装された信頼性の高い電子回路基板とすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の挿入実装部品の半田付け方法によれば、プリント配線板の部品面側に半田接合部を適正に形成することができる。
【0040】
また、本発明の挿入実装部品の半田付け構造又は電子回路基板によれば、プリント配線板の特に部品面側に適正形状の半田接合部を備える半田付け構造又は電子回路基板とすることができる。また、本発明の挿入実装部品の半田付け構造又は電子回路基板によれば、部品面側のスルーホールランドの銅箔面の露出を狭小化でき、半田付け構造の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)は実施例1に係る本発明方法で用いた8分割型のステンシルのパターンを示す平面図、(B)は実施例1に係る本発明方法で用いた4分割型のステンシルのパターンを示す平面図である。
【図2】本発明方法における半田塗布工程とリフロー工程の実施段階を示し、(A)は片面THD実装のフロー図、(B)はSMD片面とTHDの片面実装のフロー図である。
【図3】本発明方法における半田塗布工程とリフロー工程の実施段階を示し、(A)は半田印刷とリフローを一回ずつ行うSMD両面とTHDの両面実装のフロー図、(B)は半田印刷とリフローを二回ずつ行うSMD両面とTHDの両面実装のフロー図を示す。
【図4】本発明電子回路基板のTHD実装箇所の概略縦断面図である。
【図5】8分割型にクリーム半田を塗布した後の部品面側ランドの顕微鏡写真である。
【図6】図5のクリーム半田をリフローした後の顕微鏡写真である。
【図7】図6のスルーホールにTHDを半田付けした状態を示す顕微鏡写真である。
【図8】4分割型にクリーム半田を塗布した後の部品面側ランドの顕微鏡写真である。
【図9】図8のクリーム半田をリフローした後の顕微鏡写真である。
【図10】図9のスルーホールにTHDを半田付けした状態を示す顕微鏡写真である。
【図11】実施例2におけるリフロー後の予備半田の付着状態を示す顕微鏡写真で、(A)、(B)は正方形のスルーホールランドの場合、(C)、(D)は楕円のスルーホールランドの場合を示す。
【図12】正方形のスルーホールランドに対して本発明の実施例方法により半田付を行った半田接合箇所の顕微鏡写真である。
【図13】(A)は実施例3におけるスルーホールランドとクリーム半田の塗布領域との関係を示す平面図で、(B)は配線が引き出されたスルーホールランドの平面図である。
【図14】従来のTHD実装箇所の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔半田付け方法〕
本発明の挿入実装部品の半田付け方法は、挿入実装部品をプリント配線板に半田付けする方法で、半田塗布工程、リフロー工程、リード挿入工程、及び半田付け工程を備える。ここで、プリント配線板は、スルーホールが形成され、このスルーホール両端の開口部にはスルーホールランドが形成されている点を除けば、他に限定要件はなく、種々のプリント配線板が利用できる。プリント配線板の表裏のうち、挿入実装部品が実装される側の面を部品面、それと反対側の面を半田面とする。また、実装対象となる挿入実装部品(以下THDという)、及び後述する表面実装部品(以下SMDという)は、いずれも素子本体に端子部を有する構成である。いずれの実装部品も、その形状やリード数(端子数)は限定されない。以下、各工程を詳細に説明する。
【0043】
<半田塗布工程>
この工程では、クリーム半田を部品面のスルーホールランドに塗布する。クリーム半田の塗布には、代表的には、ステンシルを用いればよい。例えば、開口部を有するステンレス製の薄板をステンシルとし、部品面側のスルーホールランドにクリーム半田を塗布する。この開口部の形状は特に限定されず、台形、長方形などの多角形、円、楕円などでもよい。ただし、クリーム半田をスルーホールランド上の広範囲に塗布して、スルーホール内に充填されないようにするには、複数の扇形孔が周方向に等間隔で配列された開口部の構成とすることが好ましい。特に、扇形孔の外周縁が、スルーホールランドの外周縁に応じた曲率半径を有し、内周縁が、スルーホールの内周縁に応じた曲率半径を有する形状が好適である。例えば、図1(A)に示すように、ステンレス板の基部10に、環状孔をほぼ8等分した扇形孔12が等間隔で配置されたパターンとする。つまり、中心部にステンレス板からなる円部14(遮蔽部)が配され、その円部14の外周から8本の帯状のブリッジ16が放射状に伸びて基部10に到達することで、円部14が基部10に対して一体に支持される。この基部10はスルーホールランドの外周領域を覆い、円部14がスルーホールの開口に重なり、各ブリッジ16の間が扇形孔12となる。
【0044】
この扇形孔12の数は、特に限定されない。但し、円部14を基部10に対して安定的に支持するには、複数個所にブリッジ16を設けることが好ましく、結果的に扇形孔12の数も複数とすることが好ましい。例えば、図1(B)に示すように、4つの扇形孔12がほぼ等間隔に配置されたステンシルを用いても良い。このブリッジ16の幅は円部14の支持が可能な範囲で狭い方が扇形孔12を広く採れて好ましい。
【0045】
また、円部14の外径は、理論上、スルーホールの内径と実質的に同径とすることが好ましい。スルーホールの内径よりも円部14の外径が小さければ、スルーホール内にクリーム半田が浸入してスルーホールの内径が小さくなってリードを挿入しにくくなる虞がある。逆に、スルーホールの内径よりも円部14の外径が過度に大きければ、スルーホールランド上にクリーム半田で覆われない領域が広くなる。ただし、実用上、円部14とスルーホールとの位置合わせの誤差を考慮して、円部14の外径は、スルーホールの内径よりも若干大きくすることが好ましい。
【0046】
さらに、扇形孔12の外周縁の曲率半径、つまりブリッジ外周端の包絡円の半径はスルーホールランドの外径半径よりも若干大きくても構わない。つまり、スルーホールランドの外周縁よりも広い範囲にまでクリーム半田が塗布できるようにすることで、ステンシルの公差により、スルーホールランドの外周縁部にクリーム半田が塗布できなくなることを抑制する。また、スルーホールランドの外周縁よりも外方にまでクリーム半田が塗布されていることで、このクリーム半田をリフローにて加熱して予備半田とした際に、スルーホールランドが予備半田に覆われずに露出する箇所(露出領域)を極力小さくすることができる。但し、クリーム半田がスルーホールランドの外周縁よりも外方に突出する寸法(超過幅)が大きくなると、隣接する配線パターンとブリッジが生じる虞があるため、超過幅の上限は0.3mm程度が好ましい。
【0047】
クリーム半田は、スルーホールランドのできるだけ広範囲を覆うように塗布することが好ましい。但し、スルーホールランドの一部にクリーム半田で覆われていない領域(非塗布領域)が存在しても構わない。例えば、基部と、スルーホールの内径よりも大きな外径の円部と、基部と円部をつなぐブリッジとを備えるステンシルを用いた場合、非塗布領域は、スルーホールランドの表面うち、ブリッジで覆われるスリット部と、円部の外縁箇所で覆われる環状内縁部で構成される。通常、このスルーホールランドの非塗布領域は、クリーム半田がリフローにより同ランド上に濡れ広がること、又は半田付け工程で半田面側からスルーホールを介して部品面側に到達した半田が予備半田と一体化して同ランド上に濡れ広がることで狭小化又は消失される。そのため、クリーム半田の塗布段階でランドの非塗布領域がある程度存在しても、挿入実装部品の実装後には、ランドの露出に伴う不具合を十分に抑制できる。クリーム半田の非塗布領域の同ランド面積に対する塗布比率は、65%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは75%以上とする。その際、ステンシルのブリッジの幅が狭いほどクリーム半田の塗布比率は小さくてもよく、逆にブリッジの幅が広いほど半田の塗布比率を大きくすることが好ましい。
【0048】
リフロー後に予備半田に覆われずにスルーホールランドが露出する領域(露出領域)を減少又は皆無にする確率を高めるには、スルーホールランドの孔径が大きいほどクリーム半田の塗布幅(超過幅)や厚みを大きくすることが好ましい。この理由については定かではないが、クリーム半田の塗布幅(超過幅)や厚みが小さい場合、次のような不具合が生じるためと推測される。
(1)スルーホールランドの孔径が大きいほど、孔内を通じてリフロー時の熱が逃げ、スルーホールランド上にクリーム半田が十分に濡れ広がらない。
(2)スルーホールランドの孔径が大きいほど、超過幅にある扇状のクリーム半田のうち、その扇の中央側にあるクリーム半田からスリット部までの距離が遠く、当該クリーム半田が濡れ広がってスリット部を覆うことが難しい。
【0049】
具体的に、スルーホールランドの孔径がどの程度の場合に、クリーム半田をどの程度の塗布幅や厚みとすれば良いかについては、後述する試験例により明らかにする。
【0050】
このクリーム半田の塗布工程は、従来の部品実装工程に塗布工程を付加しても良い。例えば、図2(A)に示すように、プリント配線板の片面にTHDを実装するのみの場合、THDのリードをスルーホールに挿入する前に、クリーム半田の塗布工程と、後述するリフロー工程を付加しておく必要がある。図2(B)の場合は、プリント配線板(基板)の片面にSMDとTHDを実装する。この場合、SMDの実装は接着剤によりSMDをプリント配線板上に位置決めして、フローソルダーによりTHDと共に半田付けしているため、やはり接着剤の塗布工程の前に、クリーム半田の塗布工程と、後述するリフロー工程を付加すればよい。図2では、付加した工程を太枠で示している。
【0051】
一方、THDの実装の前にSMDの実装を行う場合、クリーム半田の塗布には、SMDを実装するための半田塗布工程を利用しても良い。SMDを実装するには、プリント配線板に形成されたパッドにクリーム半田を塗布し、この半田上にSMDのリードを配置してからリフローによりクリーム半田を加熱・溶融し、SMDをプリント配線板に実装する。その実装工程のうち、SMDを実装するためのクリーム半田をパッドに塗布する工程で、THDの実装に利用するクリーム半田を部品面のスルーホールランドに塗布する。この方法により、1回の塗布工程でパッドとスルーホールランドの双方にクリーム半田を塗布することができる。従って、新たにクリーム半田の塗布工程を追加する必要がなく、従来のTHDとSMDの実装工程から効率を悪化させることなく、THD実装用のクリーム半田を塗布することができる。例えばプリント配線板(基板)の両面にSMDを実装し、片面にTHDを実装する場合、図3(A)に示すように、1回の半田印刷と1回のリフローを行ってSMDを配線板の一面に実装する。続いて基板を反転し、他面の所定位置に接着剤の塗布を行って、その接着剤で他面側にもSMDを固定する。その後、配線板の他面にTHDを位置決めし、フローソルダリングによりTHDの実装と接着剤で位置決めされたSMDの実装とを行う。これらの実装工程において、SMD実装のための半田印刷でTHD実装用の予備半田となるクリーム半田の印刷も行えばよい。図3(B)の場合、配線板の一面に第一半田印刷工程と第一リフロー工程とを行って一面側にSMDを実装する。続いて基板を反転し、他面に第二半田印刷工程と第二リフロー工程とを行って他面側にSMDを実装する。その後、配線板の他面にTHDを位置決めし、フローソルダリングによりTHDの実装を行う。これらの実装工程において、他面側に行うSMD実装のための第二半田印刷工程で、予備半田となるクリーム半田の塗布も行えばよい。図3では、クリーム半田の塗布を行なう工程を太枠で示している。
【0052】
このように、THDの実装の前段階でSMDの実装工程があり、配線板におけるTHDの部品面側にSMDのクリーム半田印刷とリフローとを行う場合、そのSMDのクリーム半田印刷を、THDの実装に用いるクリーム半田の塗布工程として利用することができる。
【0053】
<リフロー工程>
リフロー工程は、プリント配線板を加熱して、スルーホールランドに塗布されたクリーム半田を溶融し、その後凝固させて予備半田とする。このリフロー工程も、図2に示したように、THDの実装工程に半田塗布工程と合わせて付加してもよいが、THDの実装工程の前段階にSMDの実装工程がある場合、SMD実装のためのリフローを利用してもよい。例えば、図3(A)で示したように、配線板の一面側にSMDを搭載した後のリフロー工程で、上記クリーム半田の加熱を行えばよい。また、図3(B)で示したように、配線板の他面に第二半田印刷工程と第二リフロー工程とを行って他面側にSMDを実装する際に、この第二リフロー工程で上記クリーム半田の加熱を行えばよい。図3では、THD実装用の予備半田となるクリーム半田のリフロー工程を太枠で示している。この場合、SMDの実装工程の一部を利用することにより、1回のリフロー工程でSMDの実装用のパッドとTHD実装用のスルーホールランドの双方のクリーム半田を加熱することができるため、従来のTHDとSMDの実装工程から効率を悪化させることなく、THD実装用のクリーム半田を加熱することができる。
【0054】
このリフロー工程では、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせることができればよく、このリフロー段階でスルーホールにTHDのリードが挿入されている必要はない。このリフロー段階でTHDのリードがスルーホール内に挿入されていれば、そのTHDはリフロー温度に対して耐熱性を持つ部品でなければならない。しかし、リフロー段階でTHDが配線板に位置決めされていなければ、実装すべきTHDがリフロー温度に対して耐熱性を持たない場合でも、このTHDがリフロー時に加熱されることはなく、何ら問題はない。つまり、リフロー時の耐熱温度を考慮することなくTHDの実装が可能になる。例えば、リフロー時の炉内の加熱温度が250〜260℃程度の場合、THDの耐熱温度が250℃以下であっても、本発明方法により問題なく配線板に実装できる。
【0055】
リフロー工程を経て凝固された予備半田は、スルーホールランドの全面を覆うようになることが好ましい。前述したように、複数の扇形孔のあるステンシルでクリーム半田をスルーホールランドに塗布した場合、クリーム半田は、複数の扇形の半田膜片が等間隔で配列されることになる。このクリーム半田をリフローすれば、溶融した半田膜片が隣接する半田膜片に一体化されることで、スルーホールランドの全周が予備半田で覆われることになる。このようにスルーホールランドの全周を予備半田で覆うには、前述したステンシルのブリッジの幅を細く、例えば0.1〜0.2mm程度とすることが好ましい。
【0056】
<リード挿入工程>
リード挿入工程では、THDのリードを配線板の部品面側からスルーホールに挿入する。ここでは、リードがスルーホールを貫通するように挿入されればよい。
【0057】
<半田付け工程>
半田付け工程では、前記リードの挿入されたスルーホールに、プリント配線板の半田面側から半田を供給する。この供給された半田は、スルーホール内のリードとの間を通って部品面側に到達される。そして、部品面側に到達した半田は、予備半田と一体化されてリードをスルーホール内に固定する。
【0058】
この半田付け工程での半田の供給は、噴流槽タイプのソルダリング、静止槽タイプのソルダリング、手半田、又は自動半田のいずれであってもよい。噴流槽タイプのソルダリングには、フローソルダリング、ウェーブソルダリング、スポットソルダリングがある。静止槽タイプのソルダリングには、溶融半田を貯留するディップ槽を用いたディップソルダリングがある。手半田は、例えば糸半田と半田ごてを用いて手作業で半田付けを行う。自動半田は、例えば糸半田の供給と半田ごての動作をロボットなどで機械化した半田付け方法である。中でも、フローソルダリングであれば、効率的でかつ仕上がり状態にムラのない半田付け工程を行うことができる。この半田付け工程で用いる半田は、クリーム半田と同一組成の半田であっても良いし、異なる組成の半田であっても良い。これらが同一組成の半田であれば、互いに融合して境界ができ難く好ましい。例えば、公知の鉛フリー半田がクリーム半田及び半田面側から供給される半田に好適に利用できる。要は、半田面側から供給した半田と部品面側の予備半田とが良好に一体化されればよい。
【0059】
この半田付け工程を経た後の部品面側のスルーホールランドは、その90%以上の領域が半田(予備半田及び半田面側から供給した半田)で覆われていることが好ましい。スルーホールランドの大半が半田で覆われることで、同ランドの酸化に伴う不都合を低減できる。もちろん、この被覆比率は、95%以上、特に100%が好ましい。
【0060】
この半田の供給は、半田を部品面側のスルーホールランドの表面にまで到達するように行えればよく、同表面を大きく超えて半田を供給する必要はない。つまり、供給する半田量を抑制でき、かつ半田付け時間も削減できる。それに伴って、実装部品やプリント配線板への熱的損傷も抑制できる。また、この半田の供給に際して、半田付け箇所へのフラックスの塗布が必要になるが、部品面側のスルーホールランドの表面には予備半田が形成されているため、半田面側のスルーホールランド表面及びスルーホール内にフラックスの塗布ができればよく、部品面側のスルーホールランドの表面にまでフラックスを塗布するような過剰な供給は必要ない。そのため、フラックスの塗布量も抑制でき、かつ塗布に特別な条件や設備も必要としない。
【0061】
〔半田付け構造及び電子回路基板〕
上記の方法によりTHDを半田付けした電子回路基板は、図4に示すように、表裏となる部品面及び半田面にスルーホールランド21U、21dが形成されたプリント配線板20と、この配線板20のスルーホールにリード30が挿入される挿入実装部品(図示略)と、この挿入実装部品を前記スルーホールに固定する半田接合部とを備える。この半田接合部は、部品面上に形成される部品面側半田部22と、半田面上に形成される半田面側半田部24と、スルーホール21H内とリード30の間に介在されて両半田部22,24をつなぐ連結部26とを備える。
【0062】
そのうち、部品面側半田部22は、部品面側のスルーホールランド21Uを覆ってリード30に貫通される環状体で、リード30の外周近傍が窪み、その縦断面がほぼ弓形である。この部品面側半田部22は、予備半田と半田面側から供給された半田とが一体化することで構成されるが、この予備半田と半田面側から供給された半田の境界が必ずしも明らかなわけではない。通常、部品面側半田部22は、主として予備半田から構成される。
【0063】
半田面側から供給された半田は、予備半田と一体化されれば良いため、予備半田を乗り越える高さにまで達する必要はない。そのため、通常、リード30の周囲における部品面側半田部22には窪みが形成される。但し、半田面側から供給された半田が部品面側に大きく吐出し、予備半田を包含して、部品面側にも円錐状のフィレットを形成しても良い。
【0064】
一方、半田面側半田部24は、半田面側から供給された半田で構成され、半田面側のスルーホールランド21dからリード30に向かって円錐状となるフィレットを形成している。
【0065】
そして、連結部26は、スルーホール21H内でリード30の表面を覆うほぼ円筒状に形成されている。
【0066】
このような半田付け構造によれば、半田接合部の部品面側も適正形状に形成されており、信頼性の高い挿入実装部品の実装を実現できる。特に、この半田付け構造は、リードの接合強度が十分で、かつ部品面側のスルーホールランドが露出する領域を極力なくすことができ、この露出に伴う半田接合部の劣化を抑制することができる。
【実施例1】
【0067】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0068】
一方が部品面、他方が半田面となるプリント配線板で、スルーホール及びスルーホールランドを有する配線板に本発明方法を用いてTHDを実装する。スルーホールランドは、部品面及び半田面の各々に銅めっきにより設けられ、その外径は1.4mm、スルーホールの内径は0.9mmである。このような配線板の部品面のスルーホールランドにステンレス製ステンシルを用いて鉛フリーのクリーム半田を印刷する。このステンシルは、図1に示したように、円部の外周領域の周方向をブリッジで8分割(4分割)して複数の扇形孔を形成した構成である。ステンシルの仕様は次の通りとする。
【0069】
(8分割型)
円部(遮蔽部)の外形:0.9mm
扇形孔の包絡円の径:1.6mm
ブリッジの幅:0.15mm
ブリッジの本数:8本
(4分割型)
円部(遮蔽部)の外形:0.9mm
扇形孔の包絡円の径:1.6mm
ブリッジの幅:0.20mm
ブリッジの本数:4本
【0070】
このようなステンシルを配線板の部品面上に密着させ、その状態でステンシル上に供給したクリーム半田をスキージで摺動させることで扇形孔からクリーム半田をスルーホールランド上に押し出して印刷する。
【0071】
このクリーム半田を印刷した後のスルーホールランドの拡大写真を図5(8分割型)及び図8(4分割型)に示す。これらの写真から明らかなように、スルーホールランド上に扇形片がほぼ等間隔で周方向に並列されていることがわかる。各図の中央の黒色円がスルーホールである。スルーホールランドの面積に対するクリーム半田の印刷面積の塗布比率は、スルーホールランドの面積とステンシルのブリッジのサイズ及び本数から求めた概算値で、8分割型が67%、4分割型が78%である。
【0072】
次に、この配線板をリフロー工程に導入する。リフロー工程は、炉内に配線板を導入することで行い、その炉内の設定温度は最高で約250℃〜260℃である。このリフローにより、扇形片の各クリーム半田は溶融されて広がり、場合によっては隣接する扇形片のクリーム半田と融合してから凝固される。8分割型の場合、図6に示すように、隣接する扇形片同士が融合され、予備半田がスルーホールランドの全周を覆う。図6の中央の黒色円がスルーホールである。一方、4分割型の場合、図9に示すようにステンシルのブリッジに対応する箇所にスルーホールランドの露出箇所が若干見られる。このことから、ブリッジの幅が狭ければ、上記クリーム半田の塗布比率が小さくても良いことがわかる。
【0073】
次に、リフロー工程を経た配線板のスルーホールに挿入実装部品のリードを挿入する。8分割型・4分割型のいずれのステンシルを用いた場合も、スルーホールの内周面にクリーム半田が浸入することがないため、予備半田がリードをスルーホールに挿入する際の障害になることはない。
【0074】
続いて、半田面側のスルーホールランド、スルーホール内面、及びリード表面にフラックスの塗布を行なう。スルーホール内面に予備半田が形成されていないため、スルーホール内の全面にフラックスを塗布しやすい。それに伴って、次工程で半田面側から半田を供給した際、その半田がスルーホール内を伝って部品面側にまで到達しやすくできる。
【0075】
次に、配線板の半田面側から、フローソルダリングにてスルーホールに半田を供給する。ここでは、クリーム半田と同一組成の鉛フロー半田を用いる。このフローソルダリングにより、半田面側のスルーホールランドには、リードに向かって円錐状となる半田面側半田部が形成される。また、このフローソルダリングにより供給された半田は、スルーホール内を通って、部品面側に到達する。部品面側にまで到達した半田は、予備半田と一体に融合し、部品面側のスルーホール上にも部品面側半田部を形成する。
【0076】
8分割型の場合、部品面側半田部は、図7に示すように、スルーホールランドの全面を覆い、同ランドの露出する箇所がない。また、この部品面側半田部は、同ランドからリードに向かって円錐状に形成される。
【0077】
一方、4分割型の場合、図10に示すように、極一部の露出領域を除き、同ランドのほぼ全面が部品面側半田部により覆われている。この4分割型において、同ランドが半田で覆われた面積のランドの面積に対する比率は90%以上である。また、この部品面側半田部も、部品面側のスルーホールランドからリードに向かって円錐状に形成される。
【0078】
このように、4分割型でも部品面側及び半田面側の双方に適正な半田部が形成され、8分割型とすれば同様の半田部が形成されると共に、部品面側のスルーホールランドの全面を半田部で覆うことができる。
【実施例2】
【0079】
実施例1ではスルーホールランドの輪郭形状が円形の場合について説明したが、この輪郭形状が異なる場合にリフロー後の予備半田が同ランドを被覆する状況に相違があるかどうかについて調べた。具体的には、輪郭形状が正方形と楕円の各スルーホールランドについて、クリーム半田の塗布量を変えて塗布し、リフローにて加熱した後にスルーホールランドがどの程度予備半田に覆われるかどうかを評価した。スルーホールランドの輪郭形状に関わらず、スルーホールの断面形状は円形である。また、クリーム半田の塗布領域は、8つの扇形片をスルーホールの周方向に等間隔で並列して形成され、各扇形片の間にスルーホールランドが露出するスリット部が形成されている。各条件を以下に示す。
【0080】
クリーム半田の材種:株式会社ニホンゲンマ製 NP303−CQS−2
クリーム半田の厚み:120μm
正方形スルーホールランドの場合
ランドの外寸(正方形の1辺の長さ):1.4mm
最小ランド幅(スルーホール開口縁と正方形の1辺との対辺寸法):0.25mm
スルーホールの内径:0.9mm
クリーム半田の塗布領域(円形)の外径:1.5、1.6、1.9、2.0mm
楕円スルーホールランドの場合
ランドの外寸
楕円の長径:2.1mm
楕円の短径:1.4mm
最小ランド幅:0.25mm
スルーホールの内径:0.9mm
クリーム半田の塗布領域(楕円)の外寸
楕円の長径;2.2、2.3、2.6、2.7mm
楕円の短径;1.5、1.6、1.9、2.0mm
リフロー温度:260℃
【0081】
リフロー後の予備半田の状況を図11に示す。図11(A)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域の外径が1.5mm、同右側の2つは前記塗布領域の外径が1.6mm、図11(B)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域の外径が1.9mm、同右側の2つは前記塗布領域の外径が2.0mmの場合を示す。また、図11(C)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域における楕円の長径が2.2mm、同右側の2つは前記塗布領域の長径が2.3mm、図11(D)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域における楕円の長径が2.6mm、同右側の2つは前記塗布領域の長径が2.7mmの場合を示す。
【0082】
これらの各図の対比から、スルーホールランドの輪郭形状が正方形の場合、スルーホールの開口縁から正方形の対角方向にはスリット部の露出箇所が見られないが、スルーホールランドの対辺方向には同露出箇所が見られる。また、スルーホールランドの輪郭形状が楕円の場合、スルーホールの開口縁から楕円の長軸方向にはスリット部の露出箇所が見られないが、同短軸方向にはスリット部の露出箇所が見られる。そして、いずれの場合も、スルーホールの輪郭外縁よりも外側に突出されたクリーム半田の塗布領域が広い方がスリット部の露出が抑制できている。従って、スルーホールランドにおける最小ランド幅の箇所に対して、より外側に突出してクリーム半田を塗布することが好ましいことがわかる。また、各スルーホールランドは、配線が引き出された構成となっているが、この配線の引き出し方向とスリットの露出する発生箇所については、特に相関関係が認められなかった。さらに、スルーホールランドの輪郭形状が正方形の場合に、予備半田を形成した後にスルーホールに挿入実装部品のリードを挿入し、基板の半田面側から半田を供給して実施例1と同様に同部品の実装を行った。その結果、予備半田の形成段階でスリット部があれば、図12に示すように、スリット部の一部が半田に覆われず、残ることが確認された。逆に予備半田の形成段階でスリット部がなければ、半田付け工程後にスルーホールランドの全面を半田で覆うことができる。
【実施例3】
【0083】
リフロー工程を経て予備半田を形成した段階で、スルーホールランドの全面が予備半田で覆われていることが好ましい。そのため、スルーホール孔径が異なるスルーホールランドに対して、異なる塗布条件でクリーム半田の塗布を行ってリフロー工程を行い、どのような条件でスルーホールランド上にクリーム半田を塗布しておけば、より高い確率でスルーホールランドの全面を予備半田で覆うことができるか、或いはスルーホールランドの露出領域を低減できるかを調べた。
【0084】
この試験に用いたスルーホールランドと塗布されるクリーム半田との位置関係を図13に基づいて説明する。スルーホールランド21Uは、基板上に形成された円形ドーナツ状の金属パターンである。このスルーホールランド21U上に、図1(A)に示したようなステンシルを用いてクリーム半田40を塗布する。クリーム半田40は、8つの扇形の塗布領域が同ランドの周方向に間隔をあけて形成される。各塗布領域間でクリーム半田が塗布されずにスルーホールランド21Uが露出した領域がスリット部となる。また、各塗布領域におけるスルーホール21Hの径方向の長さがクリーム半田40の塗布幅Sw(クリーム半田の外径Soと内径Siとの差の半分)となる。一方、同ランド21Uの表面のうち、8つの塗布領域の内側にもクリーム半田の塗布されない領域がある。この領域が環状内縁部である。また、各塗布領域には、スルーホールランド21Uの外縁から外方に突出して基板上に位置する超過塗布領域がある。この超過塗布領域におけるスルーホールランド21Uの外縁からスルーホール21Hの径方向への距離を超過幅Ewとする。クリーム半田40の厚みは、ステンシルの厚みを変えることで調整できる。試験に供したスルーホールランド21U、クリーム半田40、リフローの各条件を以下に示すと共に、スルーホールランドとクリーム半田の各寸法から求めた各部の面積や長さの比率を表1〜表5に示す。各表において、「対ランド比」は(塗布幅Sw/ランド幅Tw)×100であり、「対ランド面積比」は(クリーム半田の塗布面積/ランド面積)×100である。
【0085】
スルーホールランド
輪郭形状:円形
内径(孔径)Td:0.9、1.1、1.3、1.6、1.8mm
スルーホールランド幅Tw(スルーホールランドの内外径差の半分):0.25mm
クリーム半田の塗布条件
半田の材種:株式会社ニホンゲンマ製 NP303−LD155−GK
超過幅Ew(クリーム半田の外径Soとスルーホールランドの外径との差の半分):0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30mm
ステンシルのブリッジの幅=スリット部の幅Bw:0.15mm
ステンシルのブリッジの本数:8本
クリーム半田の厚み:80、100、120μm
リフロー温度:240℃
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
そして、スルーホールランドとクリーム半田の各寸法ごとに、図13(B)に示す配線28の引き出しパターン含む計4パターンの条件にてクリーム半田の塗布工程とリフロー工程を行って、リフロー後のスルーホールランドにおける予備半田の形成状況を観察した。具体的には、リフロー前の段階でクリーム半田の塗布されていない計8つのスリット部のうち、リフロー後にスルーホールランドが露出した状態になっている数を数え、この数が2つ以下の場合を「良好」と判断した。その結果を表6に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
表6において、スルーホールランドとクリーム半田の各寸法ごとの4パターンのいずれもが「良好」となった条件を二重枠線で囲み、さらに表1〜表5において、この「良好」となった条件に対応する「塗布幅/孔径」、「体積/孔面積」にも二重枠線を付した。ここでの「体積」はクリーム半田の体積、「孔面積」はスルーホールの孔断面積である。
【0094】
これら表1〜表6の結果より、概略的には以下の知見が得られる。
(1)リフロー後に予備半田に覆われずにスルーホールランドが露出する領域を減少又は皆無にする確率を高めるには、スルーホールランドの孔径が大きいほどクリーム半田の塗布幅(超過幅)や厚みを大きくすることが好ましい。
【0095】
(2)クリーム半田におけるスルーホールランドの径方向の塗布幅(mm)をSw、スルーホールランドの内径(mm)をTdとしたとき、Sw/Tdが0.20以上であることが好ましく、特に、次の条件を満たすことが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sw/Tdが0.27以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sw/Tdが0.22以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sw/Tdが0.23以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sw/Tdが0.25以上
【0096】
(3)クリーム半田の体積(mm3)をSv、スルーホールランドの孔面積(mm2)をThとしたとき、Sv/Thが0.10以上であること、特に、次の条件を満たすことが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Thが0.11以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Thが0.12以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Thが0.13以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Thが0.11以上
【0097】
(4)クリーム半田の体積(mm3)をSv、スルーホールランドのランド面積(mm2)をTaとしたとき、Sv/Taが0.08以上であること、特に、次の条件を満たすことが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Taが0.08以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Taが0.08以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Taが0.10以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Taが0.15以上
【0098】
(5)今回の試験よりも、スルーホールランドに対してより濡れ性に優れる材種の半田のクリーム半田を用いれば、より一層リフロー後の露出領域を低減できることが期待される。
【0099】
なお、本発明の範囲は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の半田付け方法及び電子回路基板は、挿入実装部品をプリント配線板に実装する分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 基部 12 扇形孔 14 円部 16 ブリッジ
20 プリント配線板 21U、21d スルーホールランド
21H スルーホール
22 部品面側半田部 24 半田面側半田部 26 連結部 28 配線
23 半田
30 リード
40 クリーム半田
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入実装部品をプリント配線板に半田付けする方法、挿入実装部品の半田付け構造及び電子回路基板に関するものである。特に、プリント配線板の部品面側に適正な半田接合部を形成することができる挿入実装部品の半田付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表裏となる部品面及び半田面にスルーホールランドが形成されたプリント配線板に、リードの付いた挿入実装部品を実装することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この挿入実装部品の実装手順の一例は、次の通りである。プリント配線板の部品面側からスルーホールにリードを挿入する。次に、半田面側からフローソルダリングなどで半田を供給する。供給された半田は、半田面側のスルーホールランド上にリード側を頂点とするほぼ円錐状のフィレットを形成する。それと共に、この半田はスルーホール内を伝って部品面側に到達し、さらに部品面側のスルーホールランド上とリード表面にも濡れ広がって半田接合部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-111189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の技術では、半田面側から供給した半田が部品面側に到達しても部品面側に適正な形状の半田接合部を形成することが難しいという問題がある。
【0006】
一般に鉛フリーの半田は、プリント配線板の銅箔面やリード表面とのヌレ性が悪い。そのため、鉛フリーの半田がスルーホール内の銅箔面を半田面側から部品面側まで到達することは難しく、到達したとしても良好な半田接合部ができにくい。特に、プリント配線板が多層構造で、スルーホール内の銅箔面に多数の平面状の銅箔面が接続されている場合、半田がスルーホール内を部品面側に伝っていく過程で、この平面状の銅箔面を介して半田の熱が拡散する。そのため、図14に示すように、半田23がプリント配線板20の部品面側にまで到達しても、十分な量の半田23を部品面側のスルーホールランド21U上に濡れ広がらせることが難しく、スルーホールランド21U上を半田23で被覆できないことがある。
【0007】
その結果、リード30の接続強度が劣ったり、銅めっき等からなる部品面側のスルーホールランド21Uの銅箔面が広範囲に露出したままになり、この露出箇所が半田23よりも早く劣化して半田付け箇所の劣化につながる虞がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的の一つは、プリント配線板の部品面側に良好な半田接合部を形成することができる挿入実装部品の半田付け方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、プリント配線板における部品面側のスルーホールランド上を十分に半田で被覆することができる挿入実装部品の半田付け方法を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、プリント配線板における部品面側のスルーホールランド上が十分に半田で被覆され、良好な半田接合部で挿入実装部品が実装された半田付け構造と電子回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、挿入実装部品をプリント配線板に実装するのに際し、表面実装部品の実装技術で用いられているクリーム半田印刷とリフローを利用することで上記の目的を達成する。
【0012】
本発明の挿入実装部品の半田付け方法は、表裏となる部品面及び半田面の各々にスルーホールランドが形成されたプリント配線板に挿入実装部品を実装する方法に係り、以下の工程を備えることを特徴とする。
【0013】
前記部品面のスルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程。
このクリーム半田をリフローにて加熱し、スルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させることで予備半田とする工程。
前記リフロー工程を経たプリント配線板の部品面側から挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程。
前記プリント配線板の半田面側から前記スルーホールに半田を供給し、この供給された半田と前記予備半田とを一体化させてリードをスルーホールに半田付けする工程。
【0014】
この方法によれば、半田面側からの半田の供給に先立って、部品面側のスルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させることで予備半田を形成している。そのため、半田面側から供給された半田が、この予備半田と一体となることで、部品面側にもより確実に適正形状の半田接合部を形成することができる。
【0015】
本発明の半田付け方法において、この挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程よりも前に前記プリント配線板の部品面に設けられたパッドに表面実装部品を実装する工程を備える場合、その表面実装部品の実装工程で、次の工程を行うことが好ましい。前記パッドにクリーム半田を塗布する工程で前記スルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程を行う。さらに、前記パッドに塗布されたクリーム半田をリフローする工程でスルーホールランドに塗布されたクリーム半田のリフロー工程も行う。
【0016】
この方法によれば、表面実装部品を実装する際に行われるクリーム半田の塗布とリフローを、挿入実装部品の実装に用いるクリーム半田の塗布とリフローにも利用する。そのため、表面実装部品と挿入実装部品の双方をプリント配線板に実装する場合、新たな工程を追加することなく本発明の半田付け方法を実施することができる。
【0017】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田は、スルーホールランドの周方向に実質的に均等に分散するように塗布されることが好ましい。
【0018】
この方法によれば、リフローにてスルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させた際、スルーホールランドの表面に、予備半田で覆われない箇所が局部的に大きく形成されることがない。そのため、スルーホールランド上を均等に予備半田で覆いやすい。
【0019】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田を、スルーホールランドの周方向に実質的に均等に分散するように塗布するには、クリーム半田の塗布領域を制御するステンシルを用いることが好ましい。そのステンシルは、スルーホールランドの外周領域を覆う基部と、スルーホールの開口を覆う遮蔽部と、基部と遮蔽部とをつなぐ複数のブリッジと、これら基部、遮蔽部、及びブリッジで囲まれて形成される複数の開口部とを備えるものとすればよい。
【0020】
この方法によれば、遮蔽部により、スルーホールの内部にクリーム半田が入り込むことを抑制しつつ、開口部の形状に応じてスルーホールランド上にクリーム半田を塗布することが容易にできる。
【0021】
本発明の半田付け方法で、上記ステンシルを用いる場合、前記開口部が扇形孔であることが好ましい。
【0022】
この方法によれば、開口部を扇形孔とすることで、スルーホールランド上の極力広範囲にクリーム半田を塗布することが容易にできる。それにより、クリーム半田をリフローで凝固させた際、スルーホールランドの全面を予備半田で覆い易い。
【0023】
本発明の半田付け方法で、扇形孔の開口部を有するステンシルを用いる場合、その扇形孔は、スルーホールの内径と同じ曲率半径の内周縁と、スルーホールランドの外径と同じ曲率半径の外周縁とを有することが好ましい。
【0024】
この方法によれば、スルーホール内へのクリーム半田の浸入を確実に抑制すると共に、スルーホールランドの内縁側から外縁側に亘って広範囲にクリーム半田を塗布することができる。
【0025】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田をスルーホールランドに塗布する場合、スルーホールランドの外縁よりも外側に突出してクリーム半田を塗布することが好ましい。
【0026】
この方法によれば、後工程でクリーム半田をリフローにて加熱した場合、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせ、同ランド上に予備半田で覆われない領域が生じることを可及的に回避できる。
【0027】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田におけるスルーホールランドの径方向の塗布幅(mm)をSw、前記スルーホールランドの内径(mm)をTdとしたとき、Sw/Tdが0.20以上であることが好ましい。
【0028】
この方法によれば、後工程でクリーム半田をリフローにて加熱した場合、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせ、同ランド上に予備半田で覆われない領域が生じることを可及的に回避できる。このSw/Tdの比率は、より具体的には、次のようにすることが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sw/Tdが0.27以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sw/Tdが0.22以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sw/Tdが0.23以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sw/Tdが0.25以上
【0029】
本発明の半田付け方法において、前記クリーム半田の体積(mm3)をSv、前記スルーホールランドの孔面積(mm2)をThとしたとき、Sv/Thが0.10以上であることが好ましい。
【0030】
この方法によれば、後工程でクリーム半田をリフローにて加熱した場合、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせ、同ランド上に予備半田で覆われない領域が生じることを可及的に回避できる。このSv/Th の比率は、より具体的には、次のようにすることが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Thが0.11以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Thが0.12以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Thが0.13以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Thが0.11以上
【0031】
本発明の半田付け方法において、前記リフロー工程により、スルーホールランドの実質的に全面が予備半田により被覆されることが好ましい。
【0032】
この方法によれば、部品面側のスルーホールランドが実質的に予備半田により覆われているため、このランドの酸化に伴う半田付け箇所の劣化を抑制することができる。
【0033】
本発明の半田付け方法において、前記リードをスルーホールに半田付けする工程は、噴流槽タイプのソルダリング、静止槽タイプのソルダリング、手半田、又は自動半田により行うことが好ましい。
【0034】
この方法によれば、いずれの半田付け方法であっても、半田面側からの半田の供給に適した方法であるといえる。特に、噴流槽タイプのソルダリングであるフローソルダリングはより効率的に半田の供給を行うことができる。上記4つの半田付け方法は例示であり、これらに限定されるものではなく、他の半田付け方法であっても利用できる。
【0035】
一方、本発明の挿入実装部品の半田付け構造は、上述した実装部品の半田付け方法により形成されたことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、部品面側、半田面側の双方に適正な形状の半田接合部を形成することができる。
【0037】
さらに、本発明の電子回路基板は、上記半田付け構造を備えることを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、挿入実装部品が電気的・機械的に良好な接合状態にて実装された信頼性の高い電子回路基板とすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の挿入実装部品の半田付け方法によれば、プリント配線板の部品面側に半田接合部を適正に形成することができる。
【0040】
また、本発明の挿入実装部品の半田付け構造又は電子回路基板によれば、プリント配線板の特に部品面側に適正形状の半田接合部を備える半田付け構造又は電子回路基板とすることができる。また、本発明の挿入実装部品の半田付け構造又は電子回路基板によれば、部品面側のスルーホールランドの銅箔面の露出を狭小化でき、半田付け構造の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)は実施例1に係る本発明方法で用いた8分割型のステンシルのパターンを示す平面図、(B)は実施例1に係る本発明方法で用いた4分割型のステンシルのパターンを示す平面図である。
【図2】本発明方法における半田塗布工程とリフロー工程の実施段階を示し、(A)は片面THD実装のフロー図、(B)はSMD片面とTHDの片面実装のフロー図である。
【図3】本発明方法における半田塗布工程とリフロー工程の実施段階を示し、(A)は半田印刷とリフローを一回ずつ行うSMD両面とTHDの両面実装のフロー図、(B)は半田印刷とリフローを二回ずつ行うSMD両面とTHDの両面実装のフロー図を示す。
【図4】本発明電子回路基板のTHD実装箇所の概略縦断面図である。
【図5】8分割型にクリーム半田を塗布した後の部品面側ランドの顕微鏡写真である。
【図6】図5のクリーム半田をリフローした後の顕微鏡写真である。
【図7】図6のスルーホールにTHDを半田付けした状態を示す顕微鏡写真である。
【図8】4分割型にクリーム半田を塗布した後の部品面側ランドの顕微鏡写真である。
【図9】図8のクリーム半田をリフローした後の顕微鏡写真である。
【図10】図9のスルーホールにTHDを半田付けした状態を示す顕微鏡写真である。
【図11】実施例2におけるリフロー後の予備半田の付着状態を示す顕微鏡写真で、(A)、(B)は正方形のスルーホールランドの場合、(C)、(D)は楕円のスルーホールランドの場合を示す。
【図12】正方形のスルーホールランドに対して本発明の実施例方法により半田付を行った半田接合箇所の顕微鏡写真である。
【図13】(A)は実施例3におけるスルーホールランドとクリーム半田の塗布領域との関係を示す平面図で、(B)は配線が引き出されたスルーホールランドの平面図である。
【図14】従来のTHD実装箇所の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔半田付け方法〕
本発明の挿入実装部品の半田付け方法は、挿入実装部品をプリント配線板に半田付けする方法で、半田塗布工程、リフロー工程、リード挿入工程、及び半田付け工程を備える。ここで、プリント配線板は、スルーホールが形成され、このスルーホール両端の開口部にはスルーホールランドが形成されている点を除けば、他に限定要件はなく、種々のプリント配線板が利用できる。プリント配線板の表裏のうち、挿入実装部品が実装される側の面を部品面、それと反対側の面を半田面とする。また、実装対象となる挿入実装部品(以下THDという)、及び後述する表面実装部品(以下SMDという)は、いずれも素子本体に端子部を有する構成である。いずれの実装部品も、その形状やリード数(端子数)は限定されない。以下、各工程を詳細に説明する。
【0043】
<半田塗布工程>
この工程では、クリーム半田を部品面のスルーホールランドに塗布する。クリーム半田の塗布には、代表的には、ステンシルを用いればよい。例えば、開口部を有するステンレス製の薄板をステンシルとし、部品面側のスルーホールランドにクリーム半田を塗布する。この開口部の形状は特に限定されず、台形、長方形などの多角形、円、楕円などでもよい。ただし、クリーム半田をスルーホールランド上の広範囲に塗布して、スルーホール内に充填されないようにするには、複数の扇形孔が周方向に等間隔で配列された開口部の構成とすることが好ましい。特に、扇形孔の外周縁が、スルーホールランドの外周縁に応じた曲率半径を有し、内周縁が、スルーホールの内周縁に応じた曲率半径を有する形状が好適である。例えば、図1(A)に示すように、ステンレス板の基部10に、環状孔をほぼ8等分した扇形孔12が等間隔で配置されたパターンとする。つまり、中心部にステンレス板からなる円部14(遮蔽部)が配され、その円部14の外周から8本の帯状のブリッジ16が放射状に伸びて基部10に到達することで、円部14が基部10に対して一体に支持される。この基部10はスルーホールランドの外周領域を覆い、円部14がスルーホールの開口に重なり、各ブリッジ16の間が扇形孔12となる。
【0044】
この扇形孔12の数は、特に限定されない。但し、円部14を基部10に対して安定的に支持するには、複数個所にブリッジ16を設けることが好ましく、結果的に扇形孔12の数も複数とすることが好ましい。例えば、図1(B)に示すように、4つの扇形孔12がほぼ等間隔に配置されたステンシルを用いても良い。このブリッジ16の幅は円部14の支持が可能な範囲で狭い方が扇形孔12を広く採れて好ましい。
【0045】
また、円部14の外径は、理論上、スルーホールの内径と実質的に同径とすることが好ましい。スルーホールの内径よりも円部14の外径が小さければ、スルーホール内にクリーム半田が浸入してスルーホールの内径が小さくなってリードを挿入しにくくなる虞がある。逆に、スルーホールの内径よりも円部14の外径が過度に大きければ、スルーホールランド上にクリーム半田で覆われない領域が広くなる。ただし、実用上、円部14とスルーホールとの位置合わせの誤差を考慮して、円部14の外径は、スルーホールの内径よりも若干大きくすることが好ましい。
【0046】
さらに、扇形孔12の外周縁の曲率半径、つまりブリッジ外周端の包絡円の半径はスルーホールランドの外径半径よりも若干大きくても構わない。つまり、スルーホールランドの外周縁よりも広い範囲にまでクリーム半田が塗布できるようにすることで、ステンシルの公差により、スルーホールランドの外周縁部にクリーム半田が塗布できなくなることを抑制する。また、スルーホールランドの外周縁よりも外方にまでクリーム半田が塗布されていることで、このクリーム半田をリフローにて加熱して予備半田とした際に、スルーホールランドが予備半田に覆われずに露出する箇所(露出領域)を極力小さくすることができる。但し、クリーム半田がスルーホールランドの外周縁よりも外方に突出する寸法(超過幅)が大きくなると、隣接する配線パターンとブリッジが生じる虞があるため、超過幅の上限は0.3mm程度が好ましい。
【0047】
クリーム半田は、スルーホールランドのできるだけ広範囲を覆うように塗布することが好ましい。但し、スルーホールランドの一部にクリーム半田で覆われていない領域(非塗布領域)が存在しても構わない。例えば、基部と、スルーホールの内径よりも大きな外径の円部と、基部と円部をつなぐブリッジとを備えるステンシルを用いた場合、非塗布領域は、スルーホールランドの表面うち、ブリッジで覆われるスリット部と、円部の外縁箇所で覆われる環状内縁部で構成される。通常、このスルーホールランドの非塗布領域は、クリーム半田がリフローにより同ランド上に濡れ広がること、又は半田付け工程で半田面側からスルーホールを介して部品面側に到達した半田が予備半田と一体化して同ランド上に濡れ広がることで狭小化又は消失される。そのため、クリーム半田の塗布段階でランドの非塗布領域がある程度存在しても、挿入実装部品の実装後には、ランドの露出に伴う不具合を十分に抑制できる。クリーム半田の非塗布領域の同ランド面積に対する塗布比率は、65%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは75%以上とする。その際、ステンシルのブリッジの幅が狭いほどクリーム半田の塗布比率は小さくてもよく、逆にブリッジの幅が広いほど半田の塗布比率を大きくすることが好ましい。
【0048】
リフロー後に予備半田に覆われずにスルーホールランドが露出する領域(露出領域)を減少又は皆無にする確率を高めるには、スルーホールランドの孔径が大きいほどクリーム半田の塗布幅(超過幅)や厚みを大きくすることが好ましい。この理由については定かではないが、クリーム半田の塗布幅(超過幅)や厚みが小さい場合、次のような不具合が生じるためと推測される。
(1)スルーホールランドの孔径が大きいほど、孔内を通じてリフロー時の熱が逃げ、スルーホールランド上にクリーム半田が十分に濡れ広がらない。
(2)スルーホールランドの孔径が大きいほど、超過幅にある扇状のクリーム半田のうち、その扇の中央側にあるクリーム半田からスリット部までの距離が遠く、当該クリーム半田が濡れ広がってスリット部を覆うことが難しい。
【0049】
具体的に、スルーホールランドの孔径がどの程度の場合に、クリーム半田をどの程度の塗布幅や厚みとすれば良いかについては、後述する試験例により明らかにする。
【0050】
このクリーム半田の塗布工程は、従来の部品実装工程に塗布工程を付加しても良い。例えば、図2(A)に示すように、プリント配線板の片面にTHDを実装するのみの場合、THDのリードをスルーホールに挿入する前に、クリーム半田の塗布工程と、後述するリフロー工程を付加しておく必要がある。図2(B)の場合は、プリント配線板(基板)の片面にSMDとTHDを実装する。この場合、SMDの実装は接着剤によりSMDをプリント配線板上に位置決めして、フローソルダーによりTHDと共に半田付けしているため、やはり接着剤の塗布工程の前に、クリーム半田の塗布工程と、後述するリフロー工程を付加すればよい。図2では、付加した工程を太枠で示している。
【0051】
一方、THDの実装の前にSMDの実装を行う場合、クリーム半田の塗布には、SMDを実装するための半田塗布工程を利用しても良い。SMDを実装するには、プリント配線板に形成されたパッドにクリーム半田を塗布し、この半田上にSMDのリードを配置してからリフローによりクリーム半田を加熱・溶融し、SMDをプリント配線板に実装する。その実装工程のうち、SMDを実装するためのクリーム半田をパッドに塗布する工程で、THDの実装に利用するクリーム半田を部品面のスルーホールランドに塗布する。この方法により、1回の塗布工程でパッドとスルーホールランドの双方にクリーム半田を塗布することができる。従って、新たにクリーム半田の塗布工程を追加する必要がなく、従来のTHDとSMDの実装工程から効率を悪化させることなく、THD実装用のクリーム半田を塗布することができる。例えばプリント配線板(基板)の両面にSMDを実装し、片面にTHDを実装する場合、図3(A)に示すように、1回の半田印刷と1回のリフローを行ってSMDを配線板の一面に実装する。続いて基板を反転し、他面の所定位置に接着剤の塗布を行って、その接着剤で他面側にもSMDを固定する。その後、配線板の他面にTHDを位置決めし、フローソルダリングによりTHDの実装と接着剤で位置決めされたSMDの実装とを行う。これらの実装工程において、SMD実装のための半田印刷でTHD実装用の予備半田となるクリーム半田の印刷も行えばよい。図3(B)の場合、配線板の一面に第一半田印刷工程と第一リフロー工程とを行って一面側にSMDを実装する。続いて基板を反転し、他面に第二半田印刷工程と第二リフロー工程とを行って他面側にSMDを実装する。その後、配線板の他面にTHDを位置決めし、フローソルダリングによりTHDの実装を行う。これらの実装工程において、他面側に行うSMD実装のための第二半田印刷工程で、予備半田となるクリーム半田の塗布も行えばよい。図3では、クリーム半田の塗布を行なう工程を太枠で示している。
【0052】
このように、THDの実装の前段階でSMDの実装工程があり、配線板におけるTHDの部品面側にSMDのクリーム半田印刷とリフローとを行う場合、そのSMDのクリーム半田印刷を、THDの実装に用いるクリーム半田の塗布工程として利用することができる。
【0053】
<リフロー工程>
リフロー工程は、プリント配線板を加熱して、スルーホールランドに塗布されたクリーム半田を溶融し、その後凝固させて予備半田とする。このリフロー工程も、図2に示したように、THDの実装工程に半田塗布工程と合わせて付加してもよいが、THDの実装工程の前段階にSMDの実装工程がある場合、SMD実装のためのリフローを利用してもよい。例えば、図3(A)で示したように、配線板の一面側にSMDを搭載した後のリフロー工程で、上記クリーム半田の加熱を行えばよい。また、図3(B)で示したように、配線板の他面に第二半田印刷工程と第二リフロー工程とを行って他面側にSMDを実装する際に、この第二リフロー工程で上記クリーム半田の加熱を行えばよい。図3では、THD実装用の予備半田となるクリーム半田のリフロー工程を太枠で示している。この場合、SMDの実装工程の一部を利用することにより、1回のリフロー工程でSMDの実装用のパッドとTHD実装用のスルーホールランドの双方のクリーム半田を加熱することができるため、従来のTHDとSMDの実装工程から効率を悪化させることなく、THD実装用のクリーム半田を加熱することができる。
【0054】
このリフロー工程では、クリーム半田をスルーホールランド上に濡れ広がらせることができればよく、このリフロー段階でスルーホールにTHDのリードが挿入されている必要はない。このリフロー段階でTHDのリードがスルーホール内に挿入されていれば、そのTHDはリフロー温度に対して耐熱性を持つ部品でなければならない。しかし、リフロー段階でTHDが配線板に位置決めされていなければ、実装すべきTHDがリフロー温度に対して耐熱性を持たない場合でも、このTHDがリフロー時に加熱されることはなく、何ら問題はない。つまり、リフロー時の耐熱温度を考慮することなくTHDの実装が可能になる。例えば、リフロー時の炉内の加熱温度が250〜260℃程度の場合、THDの耐熱温度が250℃以下であっても、本発明方法により問題なく配線板に実装できる。
【0055】
リフロー工程を経て凝固された予備半田は、スルーホールランドの全面を覆うようになることが好ましい。前述したように、複数の扇形孔のあるステンシルでクリーム半田をスルーホールランドに塗布した場合、クリーム半田は、複数の扇形の半田膜片が等間隔で配列されることになる。このクリーム半田をリフローすれば、溶融した半田膜片が隣接する半田膜片に一体化されることで、スルーホールランドの全周が予備半田で覆われることになる。このようにスルーホールランドの全周を予備半田で覆うには、前述したステンシルのブリッジの幅を細く、例えば0.1〜0.2mm程度とすることが好ましい。
【0056】
<リード挿入工程>
リード挿入工程では、THDのリードを配線板の部品面側からスルーホールに挿入する。ここでは、リードがスルーホールを貫通するように挿入されればよい。
【0057】
<半田付け工程>
半田付け工程では、前記リードの挿入されたスルーホールに、プリント配線板の半田面側から半田を供給する。この供給された半田は、スルーホール内のリードとの間を通って部品面側に到達される。そして、部品面側に到達した半田は、予備半田と一体化されてリードをスルーホール内に固定する。
【0058】
この半田付け工程での半田の供給は、噴流槽タイプのソルダリング、静止槽タイプのソルダリング、手半田、又は自動半田のいずれであってもよい。噴流槽タイプのソルダリングには、フローソルダリング、ウェーブソルダリング、スポットソルダリングがある。静止槽タイプのソルダリングには、溶融半田を貯留するディップ槽を用いたディップソルダリングがある。手半田は、例えば糸半田と半田ごてを用いて手作業で半田付けを行う。自動半田は、例えば糸半田の供給と半田ごての動作をロボットなどで機械化した半田付け方法である。中でも、フローソルダリングであれば、効率的でかつ仕上がり状態にムラのない半田付け工程を行うことができる。この半田付け工程で用いる半田は、クリーム半田と同一組成の半田であっても良いし、異なる組成の半田であっても良い。これらが同一組成の半田であれば、互いに融合して境界ができ難く好ましい。例えば、公知の鉛フリー半田がクリーム半田及び半田面側から供給される半田に好適に利用できる。要は、半田面側から供給した半田と部品面側の予備半田とが良好に一体化されればよい。
【0059】
この半田付け工程を経た後の部品面側のスルーホールランドは、その90%以上の領域が半田(予備半田及び半田面側から供給した半田)で覆われていることが好ましい。スルーホールランドの大半が半田で覆われることで、同ランドの酸化に伴う不都合を低減できる。もちろん、この被覆比率は、95%以上、特に100%が好ましい。
【0060】
この半田の供給は、半田を部品面側のスルーホールランドの表面にまで到達するように行えればよく、同表面を大きく超えて半田を供給する必要はない。つまり、供給する半田量を抑制でき、かつ半田付け時間も削減できる。それに伴って、実装部品やプリント配線板への熱的損傷も抑制できる。また、この半田の供給に際して、半田付け箇所へのフラックスの塗布が必要になるが、部品面側のスルーホールランドの表面には予備半田が形成されているため、半田面側のスルーホールランド表面及びスルーホール内にフラックスの塗布ができればよく、部品面側のスルーホールランドの表面にまでフラックスを塗布するような過剰な供給は必要ない。そのため、フラックスの塗布量も抑制でき、かつ塗布に特別な条件や設備も必要としない。
【0061】
〔半田付け構造及び電子回路基板〕
上記の方法によりTHDを半田付けした電子回路基板は、図4に示すように、表裏となる部品面及び半田面にスルーホールランド21U、21dが形成されたプリント配線板20と、この配線板20のスルーホールにリード30が挿入される挿入実装部品(図示略)と、この挿入実装部品を前記スルーホールに固定する半田接合部とを備える。この半田接合部は、部品面上に形成される部品面側半田部22と、半田面上に形成される半田面側半田部24と、スルーホール21H内とリード30の間に介在されて両半田部22,24をつなぐ連結部26とを備える。
【0062】
そのうち、部品面側半田部22は、部品面側のスルーホールランド21Uを覆ってリード30に貫通される環状体で、リード30の外周近傍が窪み、その縦断面がほぼ弓形である。この部品面側半田部22は、予備半田と半田面側から供給された半田とが一体化することで構成されるが、この予備半田と半田面側から供給された半田の境界が必ずしも明らかなわけではない。通常、部品面側半田部22は、主として予備半田から構成される。
【0063】
半田面側から供給された半田は、予備半田と一体化されれば良いため、予備半田を乗り越える高さにまで達する必要はない。そのため、通常、リード30の周囲における部品面側半田部22には窪みが形成される。但し、半田面側から供給された半田が部品面側に大きく吐出し、予備半田を包含して、部品面側にも円錐状のフィレットを形成しても良い。
【0064】
一方、半田面側半田部24は、半田面側から供給された半田で構成され、半田面側のスルーホールランド21dからリード30に向かって円錐状となるフィレットを形成している。
【0065】
そして、連結部26は、スルーホール21H内でリード30の表面を覆うほぼ円筒状に形成されている。
【0066】
このような半田付け構造によれば、半田接合部の部品面側も適正形状に形成されており、信頼性の高い挿入実装部品の実装を実現できる。特に、この半田付け構造は、リードの接合強度が十分で、かつ部品面側のスルーホールランドが露出する領域を極力なくすことができ、この露出に伴う半田接合部の劣化を抑制することができる。
【実施例1】
【0067】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0068】
一方が部品面、他方が半田面となるプリント配線板で、スルーホール及びスルーホールランドを有する配線板に本発明方法を用いてTHDを実装する。スルーホールランドは、部品面及び半田面の各々に銅めっきにより設けられ、その外径は1.4mm、スルーホールの内径は0.9mmである。このような配線板の部品面のスルーホールランドにステンレス製ステンシルを用いて鉛フリーのクリーム半田を印刷する。このステンシルは、図1に示したように、円部の外周領域の周方向をブリッジで8分割(4分割)して複数の扇形孔を形成した構成である。ステンシルの仕様は次の通りとする。
【0069】
(8分割型)
円部(遮蔽部)の外形:0.9mm
扇形孔の包絡円の径:1.6mm
ブリッジの幅:0.15mm
ブリッジの本数:8本
(4分割型)
円部(遮蔽部)の外形:0.9mm
扇形孔の包絡円の径:1.6mm
ブリッジの幅:0.20mm
ブリッジの本数:4本
【0070】
このようなステンシルを配線板の部品面上に密着させ、その状態でステンシル上に供給したクリーム半田をスキージで摺動させることで扇形孔からクリーム半田をスルーホールランド上に押し出して印刷する。
【0071】
このクリーム半田を印刷した後のスルーホールランドの拡大写真を図5(8分割型)及び図8(4分割型)に示す。これらの写真から明らかなように、スルーホールランド上に扇形片がほぼ等間隔で周方向に並列されていることがわかる。各図の中央の黒色円がスルーホールである。スルーホールランドの面積に対するクリーム半田の印刷面積の塗布比率は、スルーホールランドの面積とステンシルのブリッジのサイズ及び本数から求めた概算値で、8分割型が67%、4分割型が78%である。
【0072】
次に、この配線板をリフロー工程に導入する。リフロー工程は、炉内に配線板を導入することで行い、その炉内の設定温度は最高で約250℃〜260℃である。このリフローにより、扇形片の各クリーム半田は溶融されて広がり、場合によっては隣接する扇形片のクリーム半田と融合してから凝固される。8分割型の場合、図6に示すように、隣接する扇形片同士が融合され、予備半田がスルーホールランドの全周を覆う。図6の中央の黒色円がスルーホールである。一方、4分割型の場合、図9に示すようにステンシルのブリッジに対応する箇所にスルーホールランドの露出箇所が若干見られる。このことから、ブリッジの幅が狭ければ、上記クリーム半田の塗布比率が小さくても良いことがわかる。
【0073】
次に、リフロー工程を経た配線板のスルーホールに挿入実装部品のリードを挿入する。8分割型・4分割型のいずれのステンシルを用いた場合も、スルーホールの内周面にクリーム半田が浸入することがないため、予備半田がリードをスルーホールに挿入する際の障害になることはない。
【0074】
続いて、半田面側のスルーホールランド、スルーホール内面、及びリード表面にフラックスの塗布を行なう。スルーホール内面に予備半田が形成されていないため、スルーホール内の全面にフラックスを塗布しやすい。それに伴って、次工程で半田面側から半田を供給した際、その半田がスルーホール内を伝って部品面側にまで到達しやすくできる。
【0075】
次に、配線板の半田面側から、フローソルダリングにてスルーホールに半田を供給する。ここでは、クリーム半田と同一組成の鉛フロー半田を用いる。このフローソルダリングにより、半田面側のスルーホールランドには、リードに向かって円錐状となる半田面側半田部が形成される。また、このフローソルダリングにより供給された半田は、スルーホール内を通って、部品面側に到達する。部品面側にまで到達した半田は、予備半田と一体に融合し、部品面側のスルーホール上にも部品面側半田部を形成する。
【0076】
8分割型の場合、部品面側半田部は、図7に示すように、スルーホールランドの全面を覆い、同ランドの露出する箇所がない。また、この部品面側半田部は、同ランドからリードに向かって円錐状に形成される。
【0077】
一方、4分割型の場合、図10に示すように、極一部の露出領域を除き、同ランドのほぼ全面が部品面側半田部により覆われている。この4分割型において、同ランドが半田で覆われた面積のランドの面積に対する比率は90%以上である。また、この部品面側半田部も、部品面側のスルーホールランドからリードに向かって円錐状に形成される。
【0078】
このように、4分割型でも部品面側及び半田面側の双方に適正な半田部が形成され、8分割型とすれば同様の半田部が形成されると共に、部品面側のスルーホールランドの全面を半田部で覆うことができる。
【実施例2】
【0079】
実施例1ではスルーホールランドの輪郭形状が円形の場合について説明したが、この輪郭形状が異なる場合にリフロー後の予備半田が同ランドを被覆する状況に相違があるかどうかについて調べた。具体的には、輪郭形状が正方形と楕円の各スルーホールランドについて、クリーム半田の塗布量を変えて塗布し、リフローにて加熱した後にスルーホールランドがどの程度予備半田に覆われるかどうかを評価した。スルーホールランドの輪郭形状に関わらず、スルーホールの断面形状は円形である。また、クリーム半田の塗布領域は、8つの扇形片をスルーホールの周方向に等間隔で並列して形成され、各扇形片の間にスルーホールランドが露出するスリット部が形成されている。各条件を以下に示す。
【0080】
クリーム半田の材種:株式会社ニホンゲンマ製 NP303−CQS−2
クリーム半田の厚み:120μm
正方形スルーホールランドの場合
ランドの外寸(正方形の1辺の長さ):1.4mm
最小ランド幅(スルーホール開口縁と正方形の1辺との対辺寸法):0.25mm
スルーホールの内径:0.9mm
クリーム半田の塗布領域(円形)の外径:1.5、1.6、1.9、2.0mm
楕円スルーホールランドの場合
ランドの外寸
楕円の長径:2.1mm
楕円の短径:1.4mm
最小ランド幅:0.25mm
スルーホールの内径:0.9mm
クリーム半田の塗布領域(楕円)の外寸
楕円の長径;2.2、2.3、2.6、2.7mm
楕円の短径;1.5、1.6、1.9、2.0mm
リフロー温度:260℃
【0081】
リフロー後の予備半田の状況を図11に示す。図11(A)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域の外径が1.5mm、同右側の2つは前記塗布領域の外径が1.6mm、図11(B)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域の外径が1.9mm、同右側の2つは前記塗布領域の外径が2.0mmの場合を示す。また、図11(C)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域における楕円の長径が2.2mm、同右側の2つは前記塗布領域の長径が2.3mm、図11(D)の左側の2つはクリーム半田の塗布領域における楕円の長径が2.6mm、同右側の2つは前記塗布領域の長径が2.7mmの場合を示す。
【0082】
これらの各図の対比から、スルーホールランドの輪郭形状が正方形の場合、スルーホールの開口縁から正方形の対角方向にはスリット部の露出箇所が見られないが、スルーホールランドの対辺方向には同露出箇所が見られる。また、スルーホールランドの輪郭形状が楕円の場合、スルーホールの開口縁から楕円の長軸方向にはスリット部の露出箇所が見られないが、同短軸方向にはスリット部の露出箇所が見られる。そして、いずれの場合も、スルーホールの輪郭外縁よりも外側に突出されたクリーム半田の塗布領域が広い方がスリット部の露出が抑制できている。従って、スルーホールランドにおける最小ランド幅の箇所に対して、より外側に突出してクリーム半田を塗布することが好ましいことがわかる。また、各スルーホールランドは、配線が引き出された構成となっているが、この配線の引き出し方向とスリットの露出する発生箇所については、特に相関関係が認められなかった。さらに、スルーホールランドの輪郭形状が正方形の場合に、予備半田を形成した後にスルーホールに挿入実装部品のリードを挿入し、基板の半田面側から半田を供給して実施例1と同様に同部品の実装を行った。その結果、予備半田の形成段階でスリット部があれば、図12に示すように、スリット部の一部が半田に覆われず、残ることが確認された。逆に予備半田の形成段階でスリット部がなければ、半田付け工程後にスルーホールランドの全面を半田で覆うことができる。
【実施例3】
【0083】
リフロー工程を経て予備半田を形成した段階で、スルーホールランドの全面が予備半田で覆われていることが好ましい。そのため、スルーホール孔径が異なるスルーホールランドに対して、異なる塗布条件でクリーム半田の塗布を行ってリフロー工程を行い、どのような条件でスルーホールランド上にクリーム半田を塗布しておけば、より高い確率でスルーホールランドの全面を予備半田で覆うことができるか、或いはスルーホールランドの露出領域を低減できるかを調べた。
【0084】
この試験に用いたスルーホールランドと塗布されるクリーム半田との位置関係を図13に基づいて説明する。スルーホールランド21Uは、基板上に形成された円形ドーナツ状の金属パターンである。このスルーホールランド21U上に、図1(A)に示したようなステンシルを用いてクリーム半田40を塗布する。クリーム半田40は、8つの扇形の塗布領域が同ランドの周方向に間隔をあけて形成される。各塗布領域間でクリーム半田が塗布されずにスルーホールランド21Uが露出した領域がスリット部となる。また、各塗布領域におけるスルーホール21Hの径方向の長さがクリーム半田40の塗布幅Sw(クリーム半田の外径Soと内径Siとの差の半分)となる。一方、同ランド21Uの表面のうち、8つの塗布領域の内側にもクリーム半田の塗布されない領域がある。この領域が環状内縁部である。また、各塗布領域には、スルーホールランド21Uの外縁から外方に突出して基板上に位置する超過塗布領域がある。この超過塗布領域におけるスルーホールランド21Uの外縁からスルーホール21Hの径方向への距離を超過幅Ewとする。クリーム半田40の厚みは、ステンシルの厚みを変えることで調整できる。試験に供したスルーホールランド21U、クリーム半田40、リフローの各条件を以下に示すと共に、スルーホールランドとクリーム半田の各寸法から求めた各部の面積や長さの比率を表1〜表5に示す。各表において、「対ランド比」は(塗布幅Sw/ランド幅Tw)×100であり、「対ランド面積比」は(クリーム半田の塗布面積/ランド面積)×100である。
【0085】
スルーホールランド
輪郭形状:円形
内径(孔径)Td:0.9、1.1、1.3、1.6、1.8mm
スルーホールランド幅Tw(スルーホールランドの内外径差の半分):0.25mm
クリーム半田の塗布条件
半田の材種:株式会社ニホンゲンマ製 NP303−LD155−GK
超過幅Ew(クリーム半田の外径Soとスルーホールランドの外径との差の半分):0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30mm
ステンシルのブリッジの幅=スリット部の幅Bw:0.15mm
ステンシルのブリッジの本数:8本
クリーム半田の厚み:80、100、120μm
リフロー温度:240℃
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
そして、スルーホールランドとクリーム半田の各寸法ごとに、図13(B)に示す配線28の引き出しパターン含む計4パターンの条件にてクリーム半田の塗布工程とリフロー工程を行って、リフロー後のスルーホールランドにおける予備半田の形成状況を観察した。具体的には、リフロー前の段階でクリーム半田の塗布されていない計8つのスリット部のうち、リフロー後にスルーホールランドが露出した状態になっている数を数え、この数が2つ以下の場合を「良好」と判断した。その結果を表6に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
表6において、スルーホールランドとクリーム半田の各寸法ごとの4パターンのいずれもが「良好」となった条件を二重枠線で囲み、さらに表1〜表5において、この「良好」となった条件に対応する「塗布幅/孔径」、「体積/孔面積」にも二重枠線を付した。ここでの「体積」はクリーム半田の体積、「孔面積」はスルーホールの孔断面積である。
【0094】
これら表1〜表6の結果より、概略的には以下の知見が得られる。
(1)リフロー後に予備半田に覆われずにスルーホールランドが露出する領域を減少又は皆無にする確率を高めるには、スルーホールランドの孔径が大きいほどクリーム半田の塗布幅(超過幅)や厚みを大きくすることが好ましい。
【0095】
(2)クリーム半田におけるスルーホールランドの径方向の塗布幅(mm)をSw、スルーホールランドの内径(mm)をTdとしたとき、Sw/Tdが0.20以上であることが好ましく、特に、次の条件を満たすことが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sw/Tdが0.27以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sw/Tdが0.22以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sw/Tdが0.23以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sw/Tdが0.25以上
【0096】
(3)クリーム半田の体積(mm3)をSv、スルーホールランドの孔面積(mm2)をThとしたとき、Sv/Thが0.10以上であること、特に、次の条件を満たすことが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Thが0.11以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Thが0.12以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Thが0.13以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Thが0.11以上
【0097】
(4)クリーム半田の体積(mm3)をSv、スルーホールランドのランド面積(mm2)をTaとしたとき、Sv/Taが0.08以上であること、特に、次の条件を満たすことが好ましい。
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Taが0.08以上
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Taが0.08以上
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Taが0.10以上
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Taが0.15以上
【0098】
(5)今回の試験よりも、スルーホールランドに対してより濡れ性に優れる材種の半田のクリーム半田を用いれば、より一層リフロー後の露出領域を低減できることが期待される。
【0099】
なお、本発明の範囲は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の半田付け方法及び電子回路基板は、挿入実装部品をプリント配線板に実装する分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 基部 12 扇形孔 14 円部 16 ブリッジ
20 プリント配線板 21U、21d スルーホールランド
21H スルーホール
22 部品面側半田部 24 半田面側半田部 26 連結部 28 配線
23 半田
30 リード
40 クリーム半田
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏となる部品面及び半田面の各々にスルーホールランドが形成されたプリント配線板に挿入実装部品を実装する挿入実装部品の半田付け方法であって、
前記部品面のスルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程と、
このクリーム半田をリフローにて加熱し、スルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させることで予備半田とする工程と、
前記リフロー工程を経たプリント配線板の部品面側から挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程と、
前記プリント配線板の半田面側から前記スルーホールに半田を供給し、この供給された半田と前記予備半田とを一体化させてリードをスルーホールに半田付けする工程とを備えることを特徴とする挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項2】
この挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程よりも前に、前記プリント配線板の部品面に設けられたパッドに表面実装部品を実装する工程を備え、
その表面実装部品の実装工程において、
前記パッドにクリーム半田を塗布する工程で前記スルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程を行い、
前記パッドに塗布されたクリーム半田をリフローする工程でスルーホールランドに塗布されたクリーム半田をリフローする工程も行うことを特徴とする請求項1に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項3】
前記クリーム半田は、スルーホールランドの周方向に実質的に均等に分散するように塗布されることを特徴とする請求項1または2に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項4】
前記クリーム半田の塗布には、クリーム半田の塗布領域を規制するステンシルが用いられ、
そのステンシルが、スルーホールランドの外周領域を覆う基部と、スルーホールの開口を覆う遮蔽部と、基部と遮蔽部とをつなぐ複数のブリッジと、これら基部、遮蔽部、及びブリッジで囲まれて形成される複数の開口部とを備えることを特徴とする請求項3に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項5】
前記開口部が扇形孔であることを特徴とする請求項4に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項6】
前記扇形孔は、スルーホールの内径と同じ曲率半径の内周縁と、スルーホールランドの外径と同じ曲率半径の外周縁とを有することを特徴とする請求項5に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項7】
前記クリーム半田をスルーホールランドに塗布する工程において、スルーホールランドの外縁よりも外側に突出してクリーム半田を塗布することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項8】
前記クリーム半田におけるスルーホールランドの径方向の塗布幅(mm)をSw、前記スルーホールランドの内径(mm)をTdとしたとき、
Sw/Tdが0.20以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項9】
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sw/Tdが0.27以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sw/Tdが0.22以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sw/Tdが0.23以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sw/Tdが0.25以上であることを特徴とする請求項8に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項10】
前記クリーム半田の体積(mm3)をSv、前記スルーホールランドの孔面積(mm2)をThとしたとき、
Sv/Thが0.10以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項11】
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Thが0.11以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Thが0.12以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Thが0.13以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Thが0.11以上であることを特徴とする請求項10に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項12】
前記リフロー工程により、スルーホールランドの実質的に全面が予備半田により被覆されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項13】
前記リードをスルーホールに半田付けする工程は、噴流槽タイプのソルダリング、静止槽タイプのソルダリング、手半田、又は自動半田により行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法により形成されたことを特徴とする挿入実装部品の半田付け構造。
【請求項15】
前記部品面側に形成される半田接合部は、リードの外周近傍が窪み、同接合部の断面形状が弓形状であることを特徴とする請求項14に記載の挿入実装部品の半田付け構造。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の挿入実装部品の半田付け構造を備えることを特徴とする電子回路基板。
【請求項1】
表裏となる部品面及び半田面の各々にスルーホールランドが形成されたプリント配線板に挿入実装部品を実装する挿入実装部品の半田付け方法であって、
前記部品面のスルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程と、
このクリーム半田をリフローにて加熱し、スルーホールランド上にクリーム半田を濡れ広がらせて凝固させることで予備半田とする工程と、
前記リフロー工程を経たプリント配線板の部品面側から挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程と、
前記プリント配線板の半田面側から前記スルーホールに半田を供給し、この供給された半田と前記予備半田とを一体化させてリードをスルーホールに半田付けする工程とを備えることを特徴とする挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項2】
この挿入実装部品のリードをスルーホールに挿入する工程よりも前に、前記プリント配線板の部品面に設けられたパッドに表面実装部品を実装する工程を備え、
その表面実装部品の実装工程において、
前記パッドにクリーム半田を塗布する工程で前記スルーホールランドにクリーム半田を塗布する工程を行い、
前記パッドに塗布されたクリーム半田をリフローする工程でスルーホールランドに塗布されたクリーム半田をリフローする工程も行うことを特徴とする請求項1に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項3】
前記クリーム半田は、スルーホールランドの周方向に実質的に均等に分散するように塗布されることを特徴とする請求項1または2に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項4】
前記クリーム半田の塗布には、クリーム半田の塗布領域を規制するステンシルが用いられ、
そのステンシルが、スルーホールランドの外周領域を覆う基部と、スルーホールの開口を覆う遮蔽部と、基部と遮蔽部とをつなぐ複数のブリッジと、これら基部、遮蔽部、及びブリッジで囲まれて形成される複数の開口部とを備えることを特徴とする請求項3に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項5】
前記開口部が扇形孔であることを特徴とする請求項4に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項6】
前記扇形孔は、スルーホールの内径と同じ曲率半径の内周縁と、スルーホールランドの外径と同じ曲率半径の外周縁とを有することを特徴とする請求項5に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項7】
前記クリーム半田をスルーホールランドに塗布する工程において、スルーホールランドの外縁よりも外側に突出してクリーム半田を塗布することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項8】
前記クリーム半田におけるスルーホールランドの径方向の塗布幅(mm)をSw、前記スルーホールランドの内径(mm)をTdとしたとき、
Sw/Tdが0.20以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項9】
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sw/Tdが0.27以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sw/Tdが0.22以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sw/Tdが0.23以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sw/Tdが0.25以上であることを特徴とする請求項8に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項10】
前記クリーム半田の体積(mm3)をSv、前記スルーホールランドの孔面積(mm2)をThとしたとき、
Sv/Thが0.10以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項11】
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm以下の場合、Sv/Thが0.11以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.0mm超、1.2mm以下の場合、Sv/Thが0.12以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.2mm超、1.5mm以下の場合、Sv/Thが0.13以上、
スルーホールランドの内径Tdが1.5mm超の場合、Sv/Thが0.11以上であることを特徴とする請求項10に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項12】
前記リフロー工程により、スルーホールランドの実質的に全面が予備半田により被覆されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項13】
前記リードをスルーホールに半田付けする工程は、噴流槽タイプのソルダリング、静止槽タイプのソルダリング、手半田、又は自動半田により行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の挿入実装部品の半田付け方法により形成されたことを特徴とする挿入実装部品の半田付け構造。
【請求項15】
前記部品面側に形成される半田接合部は、リードの外周近傍が窪み、同接合部の断面形状が弓形状であることを特徴とする請求項14に記載の挿入実装部品の半田付け構造。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の挿入実装部品の半田付け構造を備えることを特徴とする電子回路基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−80945(P2010−80945A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194660(P2009−194660)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】
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