説明

排ガス浄化装置

【課題】排ガスの高温域においてNOx及びパティキュレートを効率良く低減する。
【解決手段】パティキュレートフィルタ20の流入穴24cの内面の全部に銀系触媒からなる第1触媒層21が形成され、第1触媒層21の内面の全部に排ガス中のパティキュレート20を捕集可能な捕集層23が形成され、フィルタ20の流出穴20dの内面の全部に銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層22が形成される。フィルタ20に向けて炭化水素系液体を噴射可能な第1液体噴射ノズルがフィルタ20より排ガス上流側の排気管に設けられる。第1炭化水素系液体供給手段が第1液体噴射ノズルに第1液体噴射量調整弁を介して液体を供給する。フィルタ20に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサの検出出力に基づいてコントローラが第1液体噴射量調整弁を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を低減して排ガスを浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排ガス浄化装置として、排ガス中の粒子状物質を一時捕集可能でかつアンモニア選択還元型触媒を担持したパティキュレートフィルタが内燃機関の排気通路に設けられ、尿素供給手段がパティキュレートフィルタの上流から尿素を供給するように構成された内燃機関の排気浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この排気浄化装置では、アンモニア選択還元触媒は、チタニア−バナジウム、ゼオライト、クロム、マンガン、モリブデン、タングステンの少なくとも1つである。このアンモニア選択還元触媒は、パティキュレートフィルタの隔壁の壁面よりも隔壁内に多く担持される。
【0003】
このように構成された内燃機関の排気浄化装置では、排ガスがパティキュレートフィルタを通過する際に排ガスに含まれる粒子状物質がパティキュレートフィルタに捕集され、排ガス中のNOxは、アンモニア選択還元触媒により還元される。ここで、パティキュレートフィルタにアンモニア選択還元触媒を担持させることにより、アンモニア選択還元触媒と排ガスとの接触面積が広くなるため、排ガス中のNOxがアンモニア還元触媒に接触する機会が増加する。この結果、アンモニア還元触媒によるNOx還元率を向上できる。従って、排ガス中の粒子状物質の除去及びNOxの浄化を1つのフィルタで行うことができるようになっている。
【0004】
またハニカム配列中の多数のチャンネルのいくつかが上流端でプラグされ、上流端でプラグされていないチャンネルが下流端でプラグされ、下流端でプラグされたチャンネルの上流端で、実質的にガス不透過性であるゾーンの上に酸化触媒が形成され、この酸化触媒の下流に煤を捕捉するガス透過性のフィルタゾーンが形成されたフィルタが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。このフィルタでは、酸化触媒が白金族金属(PGM)、好ましくはPt又はPdのいずれか一方又は双方を包含し、フィルタゾーンが煤の燃焼を促進する触媒を包含する。また上記フィルタは燃焼エンジンの排気機構に配置される。
【0005】
このように構成されたフィルタでは、最初にNOを含有する排ガスを濾過せずに酸化触媒上を通過させることにより、この酸化触媒が400℃未満の温度で排ガス中のNOをNO2に転化し、その後、NO2を含有する排ガスを用いてフィルタ上の煤を連続的に燃焼するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−60494号公報(請求項1、請求項4、段落[0012]、図1)
【特許文献2】特表2005−500147号公報(請求項1、請求項6、請求項25)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の特許文献1に示された内燃機関の排気浄化装置では、還元剤として尿素を用いているため、排気浄化装置を車両に搭載する場合、車両に尿素水を貯留する尿素水タンクを燃料タンクとは別に設けなければならず、また尿素水タンクに尿素水を補給する作業が比較的煩わしい不具合があった。また、上記従来の特許文献2に示されたフィルタでは、酸化触媒がガス不透過性であるため、ガス透過性のフィルタゾーンの面積が狭められ、ガス透過性のフィルタゾーンの面積を確保しようとすると、フィルタが大型化してしまう問題点があった。更に、上記従来の特許文献2に示されたフィルタでは、下流端でプラグされたチャンネルの上流端に酸化触媒が形成されているため、パティキュレートを含む排ガスがフィルタのチャンネルに流入すると、パティキュレートが酸化触媒に堆積してしまい、排ガス中のNOをNO2に転化する酸化触媒の機能を阻害する問題点もあった。
【0008】
本発明の第1の目的は、排ガスの高温域においてNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる、排ガス浄化装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、還元剤として、尿素水ではなく、比較的取扱いの容易な燃料等の炭化水素系液体を用いることができる、排ガス浄化装置を提供することにある。本発明の第3の目的は、パティキュレートフィルタを大型化させず、また触媒層へのパティキュレートの堆積を防止できる、排ガス浄化装置を提供することにある。本発明の第4の目的は、排ガスの低温域から高温域までの幅広い温度域にわたってNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる、排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、図1及び図2に示すように、エンジン11の排気管16に排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ20が設けられ、パティキュレートフィルタ20が、多孔質の隔壁24aで仕切られた貫通孔24bが互いに平行に複数形成された担体24を有し、複数の貫通孔24bの相隣接する出口部及び入口部を交互に封止することにより流入穴24c及び流出穴24dがそれぞれ形成された排ガス浄化装置において、流入穴24cの内面の全部又は一部に銀系触媒からなる第1触媒層21が排ガスの通過可能な状態で形成され、第1触媒層21の内面の全部に排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層23が排ガスの通過可能な状態で形成され、流出穴24dの内面の全部又は一部に銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層22が排ガスの通過可能な状態で形成され、パティキュレートフィルタ20より排ガス上流側の排気管16に設けられパティキュレートフィルタ20に向けて炭化水素系液体32を噴射可能な第1液体噴射ノズル31と、第1液体噴射ノズル31に第1液体噴射量調整弁44を介して液体32を供給する第1炭化水素系液体供給手段41と、パティキュレートフィルタ20に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサ81と、第1温度センサ81の検出出力に基づいて第1液体噴射量調整弁44を制御するコントローラ86とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点は、図3に示すように、エンジンの排気管に排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ100が設けられ、パティキュレートフィルタ100が、多孔質の隔壁101aで仕切られた貫通孔101bが互いに平行に複数形成された担体101を有する排ガス浄化装置において、複数の貫通孔101bの入口部を1つ置きに封止することにより流入流出孔101c及び流出穴101dがそれぞれ形成され、流入流出孔101cの内面の全部又は一部に銀系触媒からなる第1触媒層21が排ガスの通過可能な状態で形成され、第1触媒層21の内面の全部に排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層23が排ガスの通過可能な状態で形成され、流出穴101dの内面の全部又は一部に銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層22が排ガスの通過可能な状態で形成され、パティキュレートフィルタ100より排ガス上流側の排気管に設けられパティキュレートフィルタに向けて炭化水素系液体を噴射可能な第1液体噴射ノズルと、第1液体噴射ノズルに第1液体噴射量調整弁を介して液体を供給する第1炭化水素系液体供給手段と、パティキュレートフィルタ100に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサと、第1温度センサの検出出力に基づいて第1液体噴射量調整弁を制御するコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図4に示すように、第1触媒層121の流入穴24c内面へのコーティング面積及びコーティング位置と、第2触媒層22の流出穴24d内面へのコーティング面積及びコーティング位置とが、パティキュレートフィルタ120の圧損又はNOxの要求低減率のいずれか一方又は双方に基づいて設定されるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更に図5に示すように、第1触媒層121の流入流出孔101c内面へのコーティング面積及びコーティング位置と、第2触媒層122の流出穴101d内面へのコーティング面積及びコーティング位置とが、パティキュレートフィルタ140の圧損又はNOxの要求低減率のいずれか一方又は双方に基づいて設定されるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、第1液体噴射ノズル31より排ガス上流側の排気管16に酸化機能及びNOxの還元機能を有する第1酸化還元触媒51が設けられ、第1酸化還元触媒51より排ガス上流側の排気管16に第1酸化還元触媒51に向けて炭化水素系液体32を噴射可能な第2液体噴射ノズル52が設けられ、第2液体噴射ノズル52に第2液体噴射量調整弁64を介して液体32を供給する第2炭化水素系液体供給手段62が第2液体噴射ノズル52に接続され、第1酸化還元触媒51に関係する排ガスの温度が第2温度センサ82により検出され、コントローラ86が第2温度センサ82の検出出力に基づいて第2液体噴射量調整弁64を制御するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、第1触媒層21がパティキュレートフィルタ20の担体24に銀ゼオライト又は銀アルミナをコーティングして形成され、第2触媒層22がパティキュレートフィルタ20の担体24に銅ゼオライト、鉄ゼオライト又はバナジウム系酸化物をコーティングして形成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、パティキュレートフィルタ20より排ガス下流側の排気管16に第2酸化還元触媒72が設けられ、第2酸化還元触媒72が、パティキュレートフィルタ20から炭化水素系液体32が排出されたときにこの炭化水素系液体32を酸化する酸化機能と、パティキュレートフィルタ20からアンモニアが排出されたときにこのアンモニアを酸化する酸化機能と、パティキュレートフィルタ20からNOxが排出されたときにNOxを還元する還元機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点の排ガス浄化装置では、排ガスの高温域において、第1液体噴射ノズルから炭化水素系液体を噴射すると、この炭化水素系液体がエンジンの排ガスとともに、パティキュレートフィルタの入口部から流入穴に流入して、捕集層で排ガス中のパティキュレートが捕集され、このパティキュレートの除去された排ガスが炭化水素系液体とともに銀系の第1触媒層に流入すると、この第1触媒層上でアンモニアが生成され、このアンモニアを含む排ガスが銅系、鉄系又はバナジウム系の第2触媒層に流入すると、この第2触媒層上でアンモニアとNOxが反応して、NOxの還元反応とアンモニアの酸化反応とが促進される。この結果、排ガスの高温域において排ガス中のNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる。
【0017】
また車両に搭載した場合、還元剤として尿素水を貯留する尿素水タンクを燃料タンクとは別に設ける必要があり、この尿素水タンクに尿素水を補給する作業が比較的煩わしい従来の内燃機関の排気浄化装置と比較して、本発明では、還元剤として軽油等の炭化水素系液体を用いるため、車両に搭載した場合、燃料タンクに貯蔵する軽油を用いることができ、燃料タンクとは別に新たなタンクを設ける必要がなく、また還元剤の取扱いが比較的容易になる。また酸化触媒がガス不透過性であるため、ガス透過性のフィルタゾーンの面積が狭められ、ガス透過性のフィルタゾーンの面積を確保しようとすると、フィルタが大型化してしまう従来のフィルタと比較して、本発明では、捕集層、第1触媒層及び第2触媒層が排ガスの通過可能な状態で形成されているため、パティキュレートフィルタを大型化させずに済む。更に下流端でプラグされたチャンネルの上流端に酸化触媒が形成されているため、パティキュレートを含む排ガスがフィルタのチャンネルに流入すると、パティキュレートが酸化触媒に堆積してしまい、排ガス中のNOをNO2に転化する酸化触媒の機能を阻害するおそれのあった従来のフィルタと比較して、本発明では、第1及び第2触媒層に排ガスが流入する前に捕集層で排ガス中のパティキュレートが捕集されるため、第1及び第2触媒層へのパティキュレートの堆積を防止できる。
【0018】
本発明の第2の観点の排ガス浄化装置では、流出穴の出口部を封止部材で封止する工数は必要であるけれども、流入流出孔の入口部を封止部材で封止する工数は不要であるため、パティキュレートフィルタの製造工数を削減できる。この結果、パティキュレートフィルタの製造コストを低減できる。またパティキュレートフィルタの出口側の方が入口側より圧力が低いため、流入流出孔の入口から入って流入流出孔の出口からそのまま出る排ガスより、流入流出孔の入口から入り多孔質の隔壁を通過して流出穴の出口から出る排ガスの方が多い。この結果、上記と同様に、排ガスの高温域において排ガス中のNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる。
【0019】
本発明の第3及び第4の観点の排ガス浄化装置では、第1触媒層に用いられる銀の使用量や、第2触媒層に用いられる銅、鉄又はバナジウムの使用量を低減できる。この結果、パティキュレートフィルタの製造コストを低減できる。
【0020】
本発明の第5の観点の排ガス浄化装置では、排ガスの低温域において、炭化水素系液体を第2液体噴射ノズルから噴射すると、排ガス中のNOxの還元性能を発現する第1酸化還元触媒上で排ガス中のNOxと反応して、NOxが速やかに還元されるので、排ガスの低温域においてNOxを効率良く低減できる。一方、排ガスの高温域において、第1液体噴射ノズルから炭化水素系液体を噴射すると、この炭化水素系液体がエンジンの排ガスとともに、パティキュレートフィルタの入口部から流入穴に流入して、捕集層で排ガス中のパティキュレートが捕集され、このパティキュレートの除去された排ガスが炭化水素系液体とともに銀系の第1触媒層に流入すると、この第1触媒層上でアンモニアが生成され、このアンモニアを含む排ガスが銅系、鉄系又はバナジウム系の第2触媒層に流入すると、この第2触媒層上でアンモニアとNOxが反応して、NOxの還元反応とアンモニアの酸化反応とが促進される。この結果、排ガスの低温域から高温域までの幅広い温度域にわたってNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる。
【0021】
本発明の第7の観点の排ガス浄化装置では、パティキュレートフィルタから炭化水素系液体が排出されたときに、この炭化水素系液体を第2酸化還元触媒が酸化し、パティキュレートフィルタからアンモニアが排出されたときに、このアンモニアを第2酸化還元触媒が酸化し、パティキュレートフィルタからNOxが排出されたときに、このNOxを第2酸化還元触媒が還元する。この結果、炭化水素系液体、アンモニア及びNOxが大気中に排出されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明第1実施形態のパティキュレートフィルタの断面構成図である。
【図2】そのパティキュレートフィルタを含む排ガス浄化装置を示す構成図である。
【図3】本発明第2実施形態のパティキュレートフィルタの断面構成図である。
【図4】本発明第3実施形態のパティキュレートフィルタの断面構成図である。
【図5】本発明第4実施形態のパティキュレートフィルタの断面構成図である。
【図6】実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置に排ガスを模したモデルガスを流しこのモデルガス温度を変化させたときのNOx低減率の変化を示す図である。
【図7】実施例1の第1触媒層にモデルガスを流しこのモデルガス温度を変化させたときの第1触媒層におけるNOxのNH3への転換率の変化を示す図である。
【図8】実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置を同型のディーゼルエンジンの排気管にそれぞれ取付けて排ガス温度を変化させたときのトータルのNOx低減率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<第1の実施の形態>
図2に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド12を介して吸気管13が接続され、排気ポートには排気マニホルド14を介して排気管16が接続される。吸気管13には、ターボ過給機17のコンプレッサハウジング17aと、ターボ過給機17により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ18とがそれぞれ設けられ、排気管16にはターボ過給機17のタービンハウジング17bが設けられる。コンプレッサハウジング17aにはコンプレッサ回転翼(図示せず)が回転可能に収容され、タービンハウジング17bにはタービン回転翼(図示せず)が回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼とタービン回転翼とはシャフト(図示せず)により連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼及びシャフトを介してコンプレッサ回転翼が回転し、このコンプレッサ回転翼の回転により吸気管13内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0025】
排気管16の途中には排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ20が設けられる。このパティキュレートフィルタ20は排気管16より大径のケース19に収容される。またパティキュレートフィルタ20は、図1に示すように、例えばコージェライト、炭化ケイ素のようなセラミックからなる多孔質の隔壁24aで仕切られた貫通孔24bが互いに平行に複数形成されたハニカム状の担体24を有する。複数の貫通孔24bの相隣接する出口部及び入口部を交互に封止することにより流入穴24c及び流出穴24dがそれぞれ形成される。即ち、複数の貫通孔24bのうち出口側を封止部材24eにより封止しかつ入口側を開放することにより流入穴24cが形成され、複数の貫通孔24bのうち入口側を封止部材24eにより封止しかつ出口側を開放することにより流出穴24dが形成される。ここで、貫通孔24bの出口部とは、貫通孔24bの封止部材24eで封止される出口を含む奥行きのある部分をいう。即ち、貫通孔24bの出口部は、封止部材24eの厚さに応じてその奥行きが変化し、封止部材24eが厚い場合にはその奥行きは深くなり、封止部材24eが薄い場合にはその奥行きは浅くなる。また、貫通孔24bの入口部とは、貫通孔24bの封止部材24eで封止される入口の部分をいう。即ち、貫通孔24bの入口部は、封止部材24eの厚さに応じてその奥行きが変化し、封止部材24eが厚い場合にはその奥行きは深くなり、封止部材24eが薄い場合にはその奥行きは浅くなる。
【0026】
パティキュレートフィルタ20の流入穴24cの全面(内面の全部)には、銀系触媒からなる第1触媒層21が排ガスの通過可能な状態で形成される(図1)。また第1触媒層21の全面(内面の全部)には、排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層23が排ガスの通過可能な状態で形成される。更に流出穴24dの全面(内面の全部)には、銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層22が排ガスの通過可能な状態で形成される。上記第1触媒層21は、フィルタ20の担体24に銀ゼオライト又は銀アルミナをコーティングして形成される。具体的には、銀ゼオライトからなる第1触媒層21は、銀をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをフィルタ20の担体24にコーティングして形成される。また銀アルミナからなる第1触媒層21は、銀を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをフィルタ20の担体24にコーティングして形成される。
【0027】
捕集層23は、γ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをフィルタ20の担体24のうち第1触媒層21表面にコーティングして形成される(図1)。また第2触媒層22はフィルタ20の担体24に銅ゼオライト、鉄ゼオライト又はバナジウム系酸化物をコーティングして形成される。具体的には、銅ゼオライトからなる第2触媒層22は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをフィルタ20の担体24にコーティングして形成される。また鉄ゼオライトからなる第2触媒層22は、鉄をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをフィルタ20の担体24にコーティングして形成される。更にバナジウム系酸化物からなる第2触媒層22は、バナジウム酸化物のみの粉末を含むか、或いはバナジウム酸化物にチタン酸化物及びタングステン酸化物を含有する複合酸化物粉末を含むスラリーをフィルタ20の担体24にコーティングしてそれぞれ形成される。
【0028】
一方、パティキュレートフィルタ20より排ガス上流側のケース19には、このフィルタ20に向けて炭化水素系液体32を噴射可能な第1液体噴射ノズル31が設けられる(図2)。この第1液体噴射ノズル31には第1炭化水素系液体供給手段41が接続される。第1炭化水素系液体供給手段41は、第1液体噴射ノズル31に一端が接続された第1液体供給管42と、この第1液体供給管42の他端に接続され液体32が貯留された燃料タンク43と、第1液体噴射ノズル31から噴射される液体32の噴射量を調整する第1液体噴射量調整弁44とを有する。上記炭化水素系液体32は、この実施の形態では、軽油等の燃料である。また第1液体噴射量調整弁44は、第1液体供給管42に設けられ第1液体噴射ノズル31への液体32の供給圧力を調整する第1圧力調整弁45と、第1液体噴射ノズル31の基端に設けられ第1液体噴射ノズル31を開閉する第1ノズル開閉弁46とからなる。更に第1圧力調整弁45と燃料タンク43との間の第1液体供給管42には燃料タンク43内の液体32を第1液体噴射ノズル31に供給可能なポンプ47が設けられる。
【0029】
第1圧力調整弁45は第1〜第3ポート45a〜45cを有する三方弁である(図2)。第1ポート45aは第1液体供給管42を介してポンプ47の吐出口に接続され、第2ポート45bは第1ノズル開閉弁46を介して第1液体噴射ノズル31に接続され、第3ポート45cは第1戻り管48を介して燃料タンク43に接続される。第1圧力調整弁45がオンすると、ポンプ47により圧送された液体が第1ポート45aから第1圧力調整弁45に流入し、この第1圧力調整弁45で所定の圧力に調整された後、第2ポート45bから第1液体噴射ノズル31に圧送される。また第1圧力調整弁45がオフすると、ポンプ47により圧送された液体32が第1ポート45aから第1圧力調整弁45に流入した後、第3ポート45cから第1戻り管48を通って燃料タンク43に戻される。
【0030】
一方、第1液体噴射ノズル31より排ガス上流側のケース19には、酸化機能及びNOxの還元機能を有する第1酸化還元触媒51が設けられる(図2)。第1酸化還元触媒51はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に白金等の貴金属ゼオライト又は白金等の貴金属アルミナをコーティングして構成される。具体的には、白金等の貴金属ゼオライトからなる第1酸化還元触媒51は、白金等の貴金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また白金等の貴金属アルミナからなる第1酸化還元触媒51は、白金等の貴金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。
【0031】
第1酸化還元触媒51より排ガス上流側のケース19には、この第1酸化還元触媒51に向けて炭化水素系液体32を噴射可能な第2液体噴射ノズル52が設けられる(図2)。この第2液体噴射ノズル52には第2炭化水素系液体供給手段62が接続される。第2炭化水素系液体供給手段62は、第2液体噴射ノズル52に一端が接続され他端が第1液体供給管42のポンプ47吐出口近傍に接続された第2液体供給管63と、第2液体噴射ノズル52から噴射される液体32の噴射量を調整する第2液体噴射量調整弁64と、上記燃料タンク43と、上記ポンプ47とを有する。なお、第1炭化水素系液体供給手段41の燃料タンク43及びポンプ47は第2炭化水素系液体供給手段62の構成部品として用いられる。即ち、燃料タンク43及びポンプ47は第1及び第2炭化水素系液体供給手段41,62の共通部品である。また第2液体噴射量調整弁64は、第2液体供給管63に設けられ第2液体噴射ノズル52への液体32の供給圧力を調整する第2圧力調整弁65と、第2液体噴射ノズル52の基端に設けられ第2液体噴射ノズル52を開閉する第2ノズル開閉弁66とからなる。
【0032】
第2圧力調整弁65は第1〜第3ポート65a〜65cを有する三方弁である(図2)。第1ポート65aは第2液体供給管63及び第1液体供給管42を介してポンプ47の吐出口に接続され、第2ポート65bは第2ノズル開閉弁66を介して第2液体噴射ノズル52に接続され、第3ポート65cは第2戻り管67を介して燃料タンク43に接続される。第2圧力調整弁65がオンすると、ポンプ47により圧送された液体32が第1ポート65aから第2圧力調整弁65に流入し、この第2圧力調整弁65で所定の圧力に調整された後、第2ポート65bから第2液体噴射ノズル52に圧送される。また第2圧力調整弁65がオフすると、ポンプ47により圧送された液体32が第1ポート65aから第2圧力調整弁65に流入した後、第3ポート65cから第2戻り管67を通って燃料タンク43に戻される。
【0033】
一方、パティキュレートフィルタ20より排ガス下流側のケース19には、第2酸化還元触媒72が設けられる(図2)。第2酸化還元触媒72は第1酸化還元触媒51と同一に構成される。即ち第2酸化還元触媒72はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に白金等の貴金属ゼオライト又は白金等の貴金属アルミナをコーティングして構成される。具体的には、白金等の貴金属ゼオライトからなる第2酸化還元触媒72は、白金等の貴金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また白金等の貴金属アルミナからなる第2酸化還元触媒72は、白金等の貴金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。上記第2酸化還元触媒72は、フィルタ20から炭化水素系液体32が排出されたときにこの炭化水素系液体32を酸化する酸化機能と、フィルタ20からアンモニアが排出されたときにこのアンモニアを酸化する酸化機能と、フィルタ20からNOxが排出されたときにNOxを還元する還元機能を有する。
【0034】
パティキュレートフィルタ20より排ガス上流側であって第1酸化還元触媒51より排ガス下流側のケース19には、フィルタ20に関係する排ガスの温度、この実施の形態では、フィルタ20を流れる直前の排ガスの温度を検出する第1温度センサ81が設けられる(図2)。また第1酸化還元触媒51より排ガス上流側の排気管16には、第1酸化還元触媒51に関係する排ガスの温度を検出する第2温度センサ82が設けられる。更にエンジン11の回転速度は回転センサ83により検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ84により検出される。第1温度センサ81、第2温度センサ82、回転センサ83及び負荷センサ84の各検出出力はコントローラ86の制御入力に接続され、コントローラ86の制御出力はポンプ47、第1圧力調整弁45、第1ノズル開閉弁46、第2圧力調整弁65及び第2ノズル開閉弁66にそれぞれ接続される。コントローラ86にはメモリ87が設けられる。このメモリ87には、エンジン回転速度、エンジン負荷、フィルタ入口(フィルタ20を流れる直前)の排ガス温度等に応じた第1圧力調整弁45の圧力、第1ノズル開閉弁46の開閉回数、ポンプ47の作動の有無が予め記憶される。またメモリ87には、エンジン回転速度、エンジン負荷、第1酸化還元触媒入口(第1酸化還元触媒51を流れる直前)の排ガス温度等に応じた第2圧力調整弁65の圧力、第2ノズル開閉弁66の開閉回数、ポンプ47の作動の有無が予め記憶される。
【0035】
なお、第1の実施の形態では、第1温度センサをフィルタより排ガス上流側であって第1酸化還元触媒より排ガス下流側のケースに設けたが、フィルタより排ガス下流側であって第2酸化還元触媒より排ガス上流側のケースに第1温度センサを設けたり、或いはフィルタより排ガス上流側であって第1酸化還元触媒より排ガス下流側のケースと、フィルタより排ガス下流側であって第2酸化還元触媒より排ガス上流側のケースとに第1温度センサをそれぞれ設けてもよい。フィルタより排ガス下流側であって第2酸化還元触媒より排ガス上流側のケースに第1温度センサを設けた場合、この第1温度センサによりフィルタ出口(フィルタを流れた直後)の排ガスの温度が検出される。またフィルタより排ガス上流側であって第1酸化還元触媒より排ガス下流側のケースと、フィルタより排ガス下流側であって第2酸化還元触媒より排ガス上流側のケースとに第1温度センサをそれぞれ設けた場合、即ちフィルタの直前及び直後に第1温度センサをそれぞれ設けた場合、フィルタ入口(フィルタを流れる直前)の排ガス温度とフィルタ出口(フィルタを流れた直後)の排ガス温度とがそれぞれ検出されるため、両温度の平均値を算出することにより、フィルタを流れている排ガスの温度を検出できる。
【0036】
また、第1の実施の形態では、第2温度センサを第1酸化還元触媒より排ガス上流側の排気管に設けたが、第1酸化還元触媒より排ガス下流側であってフィルタより排ガス上流側のケースに第2温度センサを設けたり、或いは第1酸化還元触媒より排ガス上流側の排気管と、第1酸化還元触媒より排ガス下流側であってフィルタより排ガス上流側のケースとに第2温度センサをそれぞれ設けてもよい。第1酸化還元触媒より排ガス下流側であってフィルタより排ガス上流側のケースに第2温度センサを設けた場合、この第2温度センサにより第1酸化還元触媒出口(第1酸化還元触媒を流れた直後)の排ガスの温度が検出される。また第1酸化還元触媒より排ガス上流側の排気管と、第1酸化還元触媒より排ガス下流側であってフィルタより排ガス上流側のケースとに第2温度センサをそれぞれ設けた場合、即ち第1酸化還元触媒の直前及び直後に第2温度センサをそれぞれ設けた場合、第1酸化還元触媒入口(第1酸化還元触媒を流れる直前)の排ガス温度と第1酸化還元触媒出口(第1酸化還元触媒を流れた直後)の排ガス温度とがそれぞれ検出されるため、両温度の平均値を算出することにより、第1酸化還元触媒を流れている排ガスの温度を検出できる。
【0037】
このように構成された排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の始動直後のように、排ガス温度が180℃未満と極めて低い場合には、第1酸化還元触媒51の入口側の排ガス温度が低過ぎて第1酸化還元触媒51によりNOxを殆ど還元できず、またパティキュレートフィルタ20の入口側の排ガス温度が低過ぎてフィルタ20の第1及び第2触媒層21,22によりNOxを殆ど還元できないので、コントローラ86は、第1温度センサ81、第2温度センサ82、回転センサ83及び負荷センサ84の各検出出力に基づいて、ポンプ47を不作動にし、第1圧力調整弁45、第1ノズル開閉弁46、第2圧力調整弁65及び第2ノズル開閉弁66をオフにして、第1及び第2液体噴射ノズル31,52から炭化水素系液体32を噴射しない状態に保つ。
【0038】
排ガス温度が上昇して低温域(例えば180〜300℃)になると、コントローラ86は第1温度センサ81、第2温度センサ82、回転センサ83及び負荷センサ84の各検出出力に基づいて、ポンプ47を作動させ、第2圧力調整弁65をオンし、かつ第2ノズル開閉弁66のオンオフを繰返して、第2液体噴射ノズル52から炭化水素系液体32を間欠的に噴射する。第2液体噴射ノズル52から噴射された炭化水素系液体32は、ガス化して第1酸化還元触媒51に流入する。この第1酸化還元触媒51は排ガスの低温域においてNOxの還元機能を大きく発現するので、上記ガス化した炭化水素系液体32は第1酸化還元触媒51上で排ガス中のNOxと反応して、大部分のNOxが速やかに還元される。第1酸化還元触媒51を通過したNOxは排ガスとともにフィルタ20に流入し、排ガス中のパティキュレートは捕集層23で捕集される。パティキュレートの除去された排ガスはフィルタ20から排出されて第2酸化還元触媒72に流入する。この第2酸化還元触媒72は、第1酸化還元触媒51と同様に、排ガスの低温域においてNOxの還元機能を大きく発現するので、上記第1液体噴射ノズル31から噴射されて第1酸化還元触媒51及びフィルタ20を通過した炭化水素系液体32は第2酸化還元触媒72上で排ガス中のNOxと反応して、NOxが速やかに還元される。この結果、排ガスの低温域において排ガス中のNOxがパティキュレートともに効率良く低減される。
【0039】
排ガス温度が更に上昇して高温域(例えば、300〜600℃)になると、コントローラ86は第1温度センサ81、第2温度センサ82、回転センサ83及び負荷センサ84の各検出出力に基づいて第1圧力調整弁45、第1ノズル開閉弁46、第2圧力調整弁65及び第2ノズル開閉弁66を制御して、第1及び第2液体噴射ノズル31,52から炭化水素系液体32を間欠的に噴射する。第2液体噴射ノズル52から噴射された炭化水素系液体32がガス化して第1酸化還元触媒51に流入すると、この触媒51が酸化触媒として機能し、この触媒51で炭化水素系液体32が燃焼するので、排ガス温度が上昇する。この温度上昇した排ガスは、第1液体噴射ノズル31から噴射されてガス化した炭化水素系液32とともに、フィルタ20に流入し、排ガス中のパティキュレートは捕集層23で捕集される。このパティキュレートの除去された排ガスが銀系の第1触媒層21に流入すると、この触媒層21上でアンモニアが生成される。このアンモニアを含む排ガスが銅系、鉄系又はバナジウム系の第2触媒層22に流入すると、次の式(1)〜式(3)に示すように、第2触媒層22上で排ガス中のNOx(NO及びNO2)がアンモニアと反応してN2に還元される。
【0040】
NO + NO2 + 2NH3 → 2N2 + 3H2O …(1)
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O …(2)
6NO2 + 8NH3 → 7N2 + 12H2O …(3)
この結果、排ガスの高温域において排ガス中のNOxがパティキュレートともに効率良く低減される。またフィルタ20に流入する排ガスの温度が600℃を越えると、フィルタ20の捕集層23に堆積したパティキュレートが高温の排ガスにより燃焼して除去される。更に第2触媒層22から余剰の炭化水素系液体32や余剰のアンモニアが排出されると、これらの炭化水素系液体32やアンモニアの余剰分は第2酸化還元触媒72で酸化されるため、大気中に排出されることはない。従って、排ガスの低温域から高温域の幅広い温度域にわたってNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる。
【0041】
<第2の実施の形態>
図3は本発明の第2の実施の形態を示す。図3において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、パティキュレートフィルタ100の担体101の多孔質の隔壁101aで仕切られた複数の貫通孔101bの入口部を1つ置きに封止することにより流入流出孔101c及び流出穴101dがそれぞれ形成される。即ち、複数の貫通孔101bのうち入口側及び出口側を封止部材101eにより封止しないことにより流入流出孔101cが形成され、複数の貫通孔101bのうち入口側を封止部材101eにより封止しかつ出口側を開放することにより流出穴101dが形成される。そして、流入流出孔101cの全面(内面の全部)に銀系触媒からなる第1触媒層21が排ガスの通過可能な状態で形成され、第1触媒層21の全面(内面の全部)に排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層23が排ガスの通過可能な状態で形成され、流出穴101dの全面(内面の全部)に銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層22が排ガスの通過可能な状態で形成される。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0042】
このように構成された排ガス浄化装置では、パティキュレートフィルタ100の出口側の方が入口側より圧力が低いため、流入流出孔101cの入口から入って流入流出孔101cの出口からそのまま出る排ガスより、流入流出孔101cの入口から入り多孔質の隔壁101aを通過して流出穴101dの出口から出る排ガスの方が多い。この結果、上記第1の実施の形態と同様に、排ガスの高温域において排ガス中のNOx及びパティキュレートを効率良く低減できる。また流出穴101dの出口部を封止部材101eで封止する工数は必要であるけれども、流入流出孔101cの入口部を封止部材101eで封止する工数は不要であるため、パティキュレートフィルタ100の製造工数を削減できる。この結果、パティキュレートフィルタ100の製造コストを低減できる。上記以外の動作は第1の実施の形態の動作と略同様であるため、繰返しの説明を省略する。
【0043】
<第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態を示す。図4において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、第1触媒層121の流入穴24c内面へのコーティング面積及びコーティング位置と、第2触媒層122の流出穴24d内面へのコーティング面積及びコーティング位置とが、パティキュレートフィルタ120の圧損又はNOxの要求低減率のいずれか一方又は双方に基づいて設定されるように構成される。具体的には、第1触媒層121がフィルタ120の流入穴24cの入口側の半分にだけコーティングされ、第2触媒層122がフィルタ120の流出穴24dの出口側の半分にだけコーティングされる。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0044】
このように構成された排ガス浄化装置では、第1触媒層121に用いられる銀の使用量や、第2触媒層122に用いられる銅、鉄又はバナジウムの使用量を低減できる。この結果、パティキュレートフィルタ120の製造コストを低減できる。またNOxの低減率は若干低下するけれども、フィルタ120の圧損を低減できる。上記以外の動作は第1の実施の形態の動作と略同様であるため、繰返しの説明を省略する。
【0045】
<第4の実施の形態>
図5は本発明の第4の実施の形態を示す。図5において図3と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、第1触媒層121の流入流出孔101c内面へのコーティング面積及びコーティング位置と、第2触媒層122の流出穴101d内面へのコーティング面積及びコーティング位置とが、パティキュレートフィルタ140の圧損又はNOxの要求低減率のいずれか一方又は双方に基づいて設定されるように構成される。具体的には、第1触媒層121がフィルタ140の流入流出孔101cの入口側の半分にだけコーティングされ、第2触媒層122がフィルタ140の流出穴101dの出口側の半分にだけコーティングされる。上記以外は第2の実施の形態と同一に構成される。
【0046】
このように構成された排ガス浄化装置では、第1触媒層121に用いられる銀の使用量や、第2触媒層122に用いられる銅、鉄又はバナジウムの使用量を低減できる。この結果、パティキュレートフィルタ140の製造コストを低減できる。またNOxの低減率は若干低下するけれども、フィルタ140の圧損を低減できる。上記以外の動作は第2の実施の形態の動作と略同様であるため、繰返しの説明を省略する。
【0047】
なお、上記第1〜第4の実施の形態では、本発明の排ガス浄化装置をディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス浄化装置をガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記第1〜第4の実施の形態では、本発明の排ガス浄化装置をターボ過給機付ディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス浄化装置を自然吸気型ディーゼルエンジン又は自然吸気型ガソリンエンジンに適用してもよい。更に、上記第1及び第2の実施の形態では、第1触媒層を流入穴又は流入流出孔の全面(100%)にコーティングし、第2触媒層を流出穴の全面(100%)にコーティングし、上記第3及び第4の実施の形態では、第1触媒層を流入穴又は流入流出孔の入口側の半分(全面の50%)にだけコーティングし、第2触媒層を流出穴の出口側の半分(全面の50%)にだけコーティングしたが、これらは一例であって、パティキュレートフィルタの圧損やNOxの要求低減率に応じて適宜変更することができる。
【実施例】
【0048】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0049】
<実施例1>
図2に示すように、排気管16に設けたケース19に排ガス上流側から順に第1酸化還元触媒51、パティキュレートフィルタ20及び第2酸化還元触媒72を収容した。第1及び第2酸化還元触媒51,72は、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングしてそれぞれ作製した触媒であった。
【0050】
一方、図1に示すように、フィルタ20の流入穴24cの全面(内面の全部)に第1触媒層21を排ガスの通過可能な状態で形成し、第1触媒層21の全面(内面の全部)に排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層23を排ガスの通過可能な状態で形成し、更にフィルタ20の流出穴24dの全面(内面の全部)に第2触媒層22を排ガスの通過可能な状態で形成した。なお、第1触媒層21は、銀をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをフィルタの担体にコーティングして作製した銀系の触媒層であった。また第2触媒層22は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをフィルタの担体にコーティングして作製した銅系の触媒層であった。
【0051】
図2に戻って、フィルタ20より排ガス上流側であって第1酸化還元触媒51より排ガス下流側のケース19に、炭化水素系液体32を噴射する第1液体噴射ノズル31を設け、第1酸化還元触媒51より排ガス上流側の排気管16に第2液体噴射ノズル72を設けた。この排ガス浄化装置を実施例1とした。
【0052】
<比較例1>
排気管に設けたケースに排ガス上流側から順に第1酸化還元触媒、パティキュレートフィルタ及び第2酸化還元触媒を収容した。第1及び第2酸化還元触媒は、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であった。またフィルタの流入穴及び流出穴の全面(内面の全部)に触媒層を排ガスの通過可能な状態で形成した。なお、触媒層は、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをフィルタの担体にコーティングして作製した白金系の触媒層であった。更に第1酸化還元触媒より排ガス上流側の排気管に第2液体噴射ノズルを設けた。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
【0053】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置をガス生成装置の排気管に接続した。このガス生成装置は、排ガスを模したモデルガスを生成して排出可能に構成される。またモデルガスは、NOを200ppm、軽油を4000ppmC、O2を10質量%、H2Oを10質量%含むガスであった。更にガス生成装置から排出されるモデルガスの温度を電気炉により、室温、150℃、200℃、300℃、400℃、500℃及び600℃の各温度にコントロールされ、各温度におけるモデルガスの空間速度(SV)を50,000h-1とした。そしてガス生成装置から排出されるモデルガスの温度を上記のように室温から600℃まで段階的に上昇させたときの、実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図6に示す。また実施例1の第1触媒層を通過した直後の排ガスに含まれるアンモニアの量を測定した。その結果を図7に示す。このアンモニアの量の測定は第2触媒層が形成されていないフィルタを用いて行った。
【0054】
図6から明らかなように、比較例1の排ガス浄化装置ではNOx低減率が最大で約40%であったのに対し、実施例1の排ガス浄化装置ではNOx低減率が最大で約50%と高くなり、実施例1の排ガス浄化装置の方が比較例1の排ガス浄化装置より排ガス温度200〜600℃にわたって、NOx低減率が向上したことが分かった。また図7から明らかなように、第1触媒層からのアンモニアの排出量はモデルガスの温度が約200℃から生成され始め、モデルガスの温度上昇に伴って次第に増加することが分かった。
【0055】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置を排気量8000ccのターボ過給機付ディーゼルエンジンの排気管に接続した。そしてエンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度を室温から600℃まで徐々に上昇させたときの、実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置によるトータルのNOx低減率を測定した。その結果を図8に示す。
【0056】
図8から明らかなように、比較例1の排ガス浄化装置ではトータルのNOx低減率が約30%と低かったのに対し、実施例1の排ガス浄化装置ではトータルのNOx低減率が約40%と高くなり、実施例1の排ガス浄化装置の方が比較例1の排ガス浄化装置よりトータルのNOx低減率が向上したことが分かった。
【符号の説明】
【0057】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
16 排気管
20,100,120,140 パティキュレートフィルタ
21,121 第1触媒層
22,122 第2触媒層
23,123 捕集層
24,101 担体
24a,101a 隔壁
24b,101b 貫通孔
24c 流入穴
24d,101d 流出穴
31 第1液体噴射ノズル
32 炭化水素系液体
41 第1炭化水素系液体供給手段
44 第1液体噴射量調整弁
51 第1酸化還元触媒
52 第2液体噴射ノズル
62 第2炭化水素系液体供給手段
64 第2液体噴射量調整弁
72 第2酸化還元触媒
81 第1温度センサ
82 第2温度センサ
86 コントローラ
101c 流入流出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の排気管(16)に排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ(20,120)が設けられ、前記パティキュレートフィルタ(20,120)が、多孔質の隔壁(24a)で仕切られた貫通孔(24b)が互いに平行に複数形成された担体(24)を有し、前記複数の貫通孔(24b)の相隣接する出口部及び入口部を交互に封止することにより流入穴(24c)及び流出穴(24d)がそれぞれ形成された排ガス浄化装置において、
前記流入穴(24c)の内面の全部又は一部に銀系触媒からなる第1触媒層(21,121)が前記排ガスの通過可能な状態で形成され、
前記第1触媒層(21,121)の内面の全部に前記排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層(23,123)が前記排ガスの通過可能な状態で形成され、
前記流出穴(24d)の内面の全部又は一部に銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層(22,122)が前記排ガスの通過可能な状態で形成され、
前記パティキュレートフィルタ(20,120)より排ガス上流側の排気管(16)に設けられ前記パティキュレートフィルタ(20,120)に向けて炭化水素系液体(32)を噴射可能な第1液体噴射ノズル(31)と、
前記第1液体噴射ノズル(31)に第1液体噴射量調整弁(44)を介して前記液体(32)を供給する第1炭化水素系液体供給手段(41)と、
前記パティキュレートフィルタ(20,120)に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサ(81)と、
前記第1温度センサ(81)の検出出力に基づいて前記第1液体噴射量調整弁(44)を制御するコントローラ(86)と
を備えたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
エンジンの排気管に排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ(100,140)が設けられ、前記パティキュレートフィルタ(100,140)が、多孔質の隔壁(101a)で仕切られた貫通孔(101b)が互いに平行に複数形成された担体(101)を有する排ガス浄化装置において、
前記複数の貫通孔(101b)の入口部を1つ置きに封止することにより流入流出孔(101c)及び流出穴(101d)がそれぞれ形成され、
前記流入流出孔(101c)の内面の全部又は一部に銀系触媒からなる第1触媒層(21,121)が前記排ガスの通過可能な状態で形成され、
前記第1触媒層(21,121)の内面の全部に前記排ガス中のパティキュレートを捕集可能な捕集層(23,123)が前記排ガスの通過可能な状態で形成され、
前記流出穴(101d)の内面の全部又は一部に銅系触媒、鉄系触媒又はバナジウム系触媒からなる第2触媒層(22,122)が前記排ガスの通過可能な状態で形成され、
前記パティキュレートフィルタ(100,140)より排ガス上流側の排気管に設けられ前記パティキュレートフィルタ(100,140)に向けて炭化水素系液体を噴射可能な第1液体噴射ノズルと、
前記第1液体噴射ノズルに第1液体噴射量調整弁を介して前記液体を供給する第1炭化水素系液体供給手段と、
前記パティキュレートフィルタ(100,140)に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサと、
前記第1温度センサの検出出力に基づいて前記第1液体噴射量調整弁を制御するコントローラと
を備えたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第1触媒層(21,121)の前記流入穴(24c)内面へのコーティング面積及びコーティング位置と、前記第2触媒層(22,122)の前記流出穴(24d)内面へのコーティング面積及びコーティング位置とが、前記パティキュレートフィルタ(20,120)の圧損又は前記NOxの要求低減率のいずれか一方又は双方に基づいて設定されるように構成された請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第1触媒層(21,121)の前記流入流出孔(101c)内面へのコーティング面積及びコーティング位置と、前記第2触媒層(22,122)の前記流出穴(101d)内面へのコーティング面積及びコーティング位置とが、前記パティキュレートフィルタ(100,140)の圧損又は前記NOxの要求低減率のいずれか一方又は双方に基づいて設定されるように構成された請求項2記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記第1液体噴射ノズル(31)より排ガス上流側の排気管(16)に酸化機能及び前記NOxの還元機能を有する第1酸化還元触媒(51)が設けられ、
前記第1酸化還元触媒(51)より排ガス上流側の排気管(16)に前記第1酸化還元触媒(51)に向けて炭化水素系液体(32)を噴射可能な第2液体噴射ノズル(52)が設けられ、
前記第2液体噴射ノズル(52)に第2液体噴射量調整弁(64)を介して前記液体(32)を供給する第2炭化水素系液体供給手段(62)が前記第2液体噴射ノズル(52)に接続され、
前記第1酸化還元触媒(51)に関係する排ガスの温度が第2温度センサ(82)により検出され、
前記コントローラ(86)が前記第2温度センサ(82)の検出出力に基づいて前記第2液体噴射量調整弁(64)を制御するように構成された請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記第1触媒層(21,121)が前記パティキュレートフィルタ(20,100,120,140)の担体(24,101)に銀ゼオライト又は銀アルミナをコーティングして形成され、前記第2触媒層(22,122)が前記パティキュレートフィルタ(20,100,120,140)の担体(24,101)に銅ゼオライト、鉄ゼオライト又はバナジウム系酸化物をコーティングして形成された請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記パティキュレートフィルタ(20,100,120,140)より排ガス下流側の排気管(16)に第2酸化還元触媒(72)が設けられ、前記第2酸化還元触媒(72)が、前記パティキュレートフィルタ(20,100,120,140)から前記炭化水素系液体(32)が排出されたときに前記炭化水素系液体(32)を酸化する酸化機能と、前記パティキュレートフィルタ(20,100,120,140)からアンモニアが排出されたときに前記アンモニアを酸化する酸化機能と、前記パティキュレートフィルタ(20,100,120,140)から前記NOxが排出されたときに前記NOxを還元する還元機能を有する請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15087(P2013−15087A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148850(P2011−148850)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】