説明

排気ガス再循環制御装置

【課題】 作動不良の防止と耐振性の向上とを達成する小型且つ安価な排気ガス再循環制御装置を提供する。
【解決手段】 排気ガスを冷却しつつ流通させる冷却通路75と、冷却通路75を迂回して排気ガスを流通させるバイパス通路81と、冷却通路75及びバイパス通路81の各出口部72、73を開閉する揺動弁56と、揺動弁56の揺動軸84を支持する軸受78、79と、冷却通路75及びバイパス通路81のうち出口部72、73が開いた通路に連通し、エンジンの吸気系へ排気ガスを導出する導出口83とを設け、冷却通路81内を延伸するように揺動軸84を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)の吸気系へ導いて再循環させる排気ガスの温度を制御する排気ガス再循環制御装置(以下、「排気ガス再循環」をEGRという)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気ガスを冷却しつつ流通させる冷却通路と、冷却通路を迂回して排気ガスを流通させるバイパス通路と、バイパス通路を開閉するバタフライ弁とを備えたEGR制御装置が開示されている。このEGR制御装置では、バタフライ弁によりバイパス通路を開放することで、当該バイパス通路を通過した排気ガスと冷却通路を通過した排気ガスとを混合して吸気系へと導くことができる。したがって、バタフライ弁の開度を調整すれば、各通路からの排気ガスの混合率が変化して、吸気系へ導かれる排気ガスの温度も変化する。
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0987427号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のEGR制御装置では、バタフライ弁の弁軸がバイパス通路内を延伸しているため、当該弁軸を支持する軸受は、バイパス通路を通過した高温の排気ガスに晒される。そのため、高温の排気ガスの熱が弁軸を通じて軸受へ伝達されると、軸受が温度上昇して溶融してしまい、弁ロック等の作動不良が生じる。また、温度上昇により軸受の熱膨張量が大きくなるため、弁軸と軸受との間のクリアランスを大きく設定しなければならず、それにより耐振性が低下する。
尚、こうした問題を解決する方法として、高温に晒された軸受を冷媒により冷却する方法が考えられるが、この方法では、冷媒の流通装置を追加しなければならないため、EGR制御装置の大型化とコストアップとを招いてしまう。
本発明の目的は、作動不良の防止と耐振性の向上とを達成する小型且つ安価なEGR制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、軸受に支持されて冷却通路及びバイパス通路の各出口部を開閉する揺動弁の揺動軸は冷却通路内を延伸しているので、当該揺動軸は、冷却通路により冷却された低温の排気ガスに晒されることとなる。これにより、揺動軸を通じて伝達される排気ガスの熱によって軸受の温度が上昇することを抑制できる。そのため、排気ガスからの受熱によっては軸受が溶融し難くなるので、弁ロック等の作動不良を防止できる。また、排気ガスからの受熱による軸受の熱膨張量が小さくなるので、揺動軸と軸受との間のクリアランスを小さく設定して、耐振性を向上することができる。そして、このような効果は、冷却装置等を用いなくても、冷却通路内を延伸するように揺動軸を配置するだけで得られるので、小型且つ安価なEGR制御装置を実現できる。
【0006】
揺動軸と軸受との間をシールするシール部材を備えた請求項2に記載の発明によれば、揺動軸を通じて伝達される排気ガスの熱に起因して軸受並びに当該シール部材が溶融することを防止できる。このようにシール部材の溶融が防止されることによって、揺動軸と軸受との間のシール性が長期に亘って確保され得る。
【0007】
請求項3に記載の発明によると、揺動軸は、冷却通路の出口部とバイパス通路の出口部とを仕切る隔壁を挟んでバイパス通路の出口部とは反対側に設けられる。これにより、バイパス通路を流通する高温の排気ガスが隔壁に遮られて揺動軸の周囲に到達し難くなるので、当該高温の排気ガスによって軸受が温度上昇することを抑制できる。
請求項4に記載の発明によると、隔壁において排気ガス流れの下流側端部は揺動軸側へ曲げられているので、バイパス通路を流通する高温の排気ガスが揺動軸の周囲に一層到達し難くなり、軸受の温度上昇の抑制効果が促進される。
【0008】
請求項5に記載の発明によると、揺動弁は、バイパス通路を開くとき揺動軸と隔壁との間の隙間を通じて冷却通路と導出口とを連通させる。これにより、バイパス通路が開かれても、冷却通路により冷却された低温の排気ガスが揺動軸と隔壁との間の隙間を流通するようになるため、バイパス通路から導出口へと流出した高温の排気ガスが揺動軸の周囲に到達し難くなる。したがって、高温の排気ガスにより軸受が温度上昇することを抑制できる。
【0009】
請求項6に記載の発明によると、揺動弁の連通遮断部は、揺動弁が冷却通路を閉じるとき隔壁に係止されて冷却通路と導出口との連通を遮断する。これにより、冷却通路及びバイパス通路の双方を開くときには、低温の排気ガスを揺動軸と隔壁との間の隙間に流して軸受の温度上昇を抑制することができ、また一方、バイパス通路のみを開くときには、冷却通路を閉塞して高温の排気ガスを確実に吸気系へ導くことができる。
【0010】
請求項7に記載の発明によると、揺動弁がバイパス通路を閉じるとき隔壁の下流側端部が揺動弁を係止するので、当該係止機能を発揮する部品を新たに設ける必要がない。したがって、部品点数の減少、ひいてはコストダウンに貢献できる。
請求項8に記載の発明によると、揺動弁がバイパス通路を閉じるとき隔壁の下流側端部は、揺動弁において揺動軸から径方向外側へ突出する弁本体を係止する。これにより、バイパス通路を流通する高温の排気ガスが弁本体に遮られて揺動軸の周囲に一層到達し難くなるため、軸受の温度上昇の抑制効果が促進される。
【0011】
請求項9に記載の発明によると、揺動弁が冷却通路を閉じるとき隔壁の下流側端部が揺動弁を係止するので、当該係止機能を発揮する部品を新たに設ける必要がない。したがって、部品点数の減少、ひいてはコストダウンに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明が適用された第一実施形態によるエンジンシステム10を示している。車両に搭載されて用いられるエンジンシステム10は、エンジン12、吸気系20、排気系30、EGR系40等から構成されている。
【0013】
吸気系20は、吸気管21、吸気マニホールド22、エアクリーナ23及びスロットル装置24を有している。吸気管21及び吸気マニホールド22は、車外から吸入された空気が流通する吸気通路を形成している。吸気管21の中途部には、エアクリーナ23及びスロットル装置24が上流側からこの順で介装されている。エアクリーナ23は、吸気通路を流れる吸入空気中の異物を除去する。スロットル装置24は、吸気通路における吸入空気の流量を調整する。吸気管21とエンジン12との間を接続している吸気マニホールド22は、サージタンク26及び複数の分枝管27を備えている。スロットル装置24により流量調整された吸入空気は、サージタンク26により脈動を吸収された後、各分枝管27によってエンジン12の各シリンダへと分配される。
【0014】
排気系30は、排気マニホールド31及び排気管32を有している。排気マニホールド31及び排気管32は、エンジン12から排出された排気ガスが流通する排気通路を形成している。排気マニホールド31は、複数の分枝管34及び合流部35を備えている。エンジン12の各シリンダから各分枝管34へ排出された排気ガスは合流部35において合流する。排気管32は合流部35に接続されており、合流部35から流れ込む排気ガスを車両のマフラーを通じて車外へ放出する。
【0015】
EGR系40は、環流管41、温度調整装置42、流量調整装置43、温度センサ44及びコントローラ45を有している。環流管41は排気マニホールド31の合流部35と吸気マニホールド22のサージタンク26との間を接続しており、合流部35から流れ込む排気ガスの一部をサージタンク26へと導いてエンジン12に再循環させるEGR通路を形成している。環流管41の中途部には、温度調整装置42及び流量調整装置43が上流側からこの順で介装されている。即ち環流管41は、合流部35と温度調整装置42との間の第一管部47、温度調整装置42と流量調整装置43との間の第二管部48、並びに流量調整装置43とサージタンク26との間の第三管部49とからなる。温度調整装置42はコントローラ45に電気的に接続されており、コントローラ45の指令に従ってサージタンク26へ導く排気ガスの温度を調整する。流量調整装置43はコントローラ45に電気的に接続されており、コントローラ45の指令に従ってEGR弁の開度を変化させることで、サージタンク26へ導く排気ガスの流量を調整する。温度センサ44は第三管部49に付設されており、サージタンク26へ導く排気ガスの温度を検出する。温度センサ44はコントローラ45に電気的に接続されており、排気ガス温度の検出結果をコントローラ45へ出力する。コントローラ45はマイクロコンピュータを主体に構成されており、温度調整装置42、流量調整装置43等を制御する。
【0016】
次に、温度調整装置42及びコントローラ45について詳細に説明する。図1及び図4に示すように温度調整装置42は、導入部51、冷却部52、バイパス部53、弁支持部54、導出部55、隔壁58、揺動弁56及び弁駆動部57を備えている。
導入部51はSUS等の金属で筒状に形成されている。第一管部47に接続される導入部51は、排気マニホールド31からの排気ガスが導入される導入口60を内側に形成している。
【0017】
冷却部52の冷却ケース61はSUS等の金属で筒状に形成されている。冷却ケース61には、エンジン12の冷却水系に冷却水管62、63(図2参照)を介して接続される二つの開口部64、65が形成されており、一方の冷却水管62により冷却ケース61内へ引水し、他方の冷却水管63により冷却水系へ戻水する循環路が形成されている。冷却部52のガス管66はSUS等の金属で直管状に形成され、冷却ケース61内を互いに平行に延伸する形態で複数設けられている。各ガス管66の両端部は、冷却ケース61の両端部を覆うリテーナ67、68を貫通する形態で当該リテーナ67、68に保持されている。これにより、各ガス管66がそれぞれ内側に形成する複数の第一通路69が、冷却ケース61内における冷却水の流通部分との連通を遮断されている。冷却ケース61の一端部を覆うリテーナ67は導入部51に接続されており、当該リテーナ67に保持される各ガス管66内の第一通路69の一端部が導入口60に連通している。各第一通路69は、導入口60から一端部側へ流入する排気ガスを他端部側へ向かって流通させる。このとき各第一通路69を通過する排気ガスは、冷却ケース61内に引き込まれた冷却水によって冷却される。
【0018】
バイパス部53はSUS等の金属で形成されており、冷却部52の各ガス管66に対して略平行の筒状を呈している。バイパス部53の一端部はリテーナ67を介して導入部51に接続されており、当該バイパス部53が内側に形成する第二通路70の一端部が導入口60に連通している。第二通路70は、導入口60から一端部側へ流入する排気ガスを他端部側へ向かって流通させる。
【0019】
図1、図3及び図4に示すように弁支持部54は、SUS等の金属で筒状に形成されており、隔壁58により内側を二つに仕切られている。弁支持部54は、隔壁58を挟む両側に第三通路72と第四通路73とを形成している。
【0020】
弁支持部54の一端部の第三通路72側は、冷却ケース61の導入部51とは反対側の端部を覆うリテーナ68に接続されており、当該リテーナ68に保持される各ガス管66内の第一通路69の下流側端部が第三通路72に連通している。これにより、排気ガスを冷却しつつ流通させる冷却通路75が複数の第一通路69と第三通路72とから構成されており、第三通路72が当該冷却通路75の出口部72を形成している。弁支持部54の側壁76、77にそれぞれ埋設された軸受78、79は揺動弁56の揺動軸84の両端部を揺動可能に支持しており、当該揺動軸84の中間部84aが冷却通路75の出口部72内を当該出口部72の幅方向へ延伸している。尚、軸受79と揺動軸84との間には、冷却通路75から弁駆動部57内への排気ガス漏れを防ぐシール部材80が介装されている。
【0021】
また、弁支持部54の上記一端部の第四通路73側は、バイパス部53の導入部51とは反対側の端部にリテーナ68を介して接続されており、当該バイパス部53内の第二通路70の下流側端部が第四通路73に連通している。これにより、上記冷却通路75を迂回して排気ガスを流通させるバイパス通路81が第二通路70と第四通路73とから構成されており、第四通路73が当該バイパス通路81の出口部73を形成している。
【0022】
導出部55は、SUS等の金属で弁支持部54と一体に形成されている。円筒状の導出部55は、揺動軸84に対して中心軸線が略垂直である導出口83を内側に形成している。一端部が第二管部48に接続される導出部55の他端部は、弁支持部54における冷却部52及びバイパス部53とは反対側の端部に接続されている。導出部55内の導出口83は、冷却通路75及びバイパス通路81のうち出口部72、73が開かれた通路に連通し、連通した通路から流入する排気ガスを第二管部48内のEGR通路へ導出する。
【0023】
隔壁58はSUS等の金属で板状に形成され、弁支持部54の側壁76、77に固定されている。隔壁58において、冷却通路75及びバイパス通路81を通過する排気ガス流れの下流側に位置した端部87は揺動軸84側へ曲げられており、当該下流側端部87を除く部分は導出口83の中心軸線に対して略平行となっている。
【0024】
揺動弁56はSUS等の金属で形成されている。揺動弁56の揺動軸84は、上述の如く軸受78、79に支持されて冷却通路75内を延伸している。これにより揺動軸84は、隔壁58を挟んでバイパス通路81の出口部73とは反対側に位置している。揺動弁56の弁本体85は、揺動軸84の外周面から径方向外側へ突出する板状に形成されている。揺動弁56の突起部86は、弁本体85とV字をなす形態で揺動軸84の外周面から径方向外側へ突出する板状に形成されている。
【0025】
揺動弁56は、弁支持部54及び導出部55内において揺動することで、冷却通路75及びバイパス通路81の各出口部72、73を開閉する。
具体的には、いずれの揺動位置においても、弁本体85及び突起部86は弁支持部54の側壁76、77に当接する。
【0026】
そして、図4に示す第一揺動位置では、弁本体85が弁支持部54の第一係止壁88に係止される。これにより、冷却通路75の出口部72が閉じられると共にバイパス通路81の出口部73が開かれ、当該バイパス通路81を通過した高温の排気ガスが導出口83を介して第二管部48へと導かれる。尚、このとき、突起部86と隔壁58とが僅かに離間するため、揺動軸84と隔壁58の下流側端部87との間の隙間90を通じて冷却通路75と導出口83とが連通し、当該隙間90を冷却通路75の排気ガスが流れる。
【0027】
また、図5に示す第二揺動位置では、弁本体85が弁支持部54の第二係止壁89及び隔壁58の下流側端部87に係止される。これにより、バイパス通路81の出口部73が閉じられると共に冷却通路75の出口部72が開かれ、当該冷却通路75により冷却された低温の排気ガスが導出口83を介して第二管部48へと導かれる。
【0028】
またさらに、図6に示すように第一揺動位置と第二揺動位置の間となる揺動位置では、弁本体85が第一及び第二係止壁88、89並びに隔壁58のいずれにも係止されない。これにより、冷却通路75及びバイパス通路81の双方の出口部72、73が開放され、導出口83では、各通路75、81からの排気ガスが合流して混ざり合い、当該混合ガスが導出口83から第二管部48へと導出される。したがって、第一揺動位置と第二揺動位置の間において揺動弁56の揺動位置が変化することで、各通路75、81からの排気ガスの混合率が変化し、第二管部48への導出ガスの温度が変化する。尚、このとき、突起部86と隔壁58とが離間するため、揺動軸84と隔壁58の下流側端部87との間の隙間90を通じて冷却通路75と導出口83とが連通し、当該隙間90を冷却通路75の排気ガスが流れる。
【0029】
図1に示す弁駆動部57は、図2に示すコントローラ45と電気的に接続されており、コントローラ45の指令に従って揺動弁56の揺動位置を調整する。
コントローラ45は、温度センサ44から出力された排気ガス温度の検出結果等に基づいて、所望の排気ガス温度を実現するのに必要な揺動弁56の揺動位置を弁駆動部57に指令する。したがって、エンジンシステム10では、排気ガス温度がフィードバック制御されることとなる。このように、温度調整装置42、温度センサ44及びコントローラ45が共同して、特許請求の範囲に記載の「EGR制御装置」を構成している。
【0030】
以上説明した温度調整装置42では、揺動弁56の揺動軸84が冷却通路75内を延伸しているので、当該揺動軸84は、冷却通路75により冷却された低温の排気ガスに晒されることとなる。これにより、揺動軸84を通じて伝達される排気ガスの熱によって軸受78、79及びシール部材80の温度が上昇することを抑制できる。
【0031】
また、温度調整装置42では、冷却通路75の出口部72とバイパス通路81の出口部73とを仕切る隔壁58を挟んでバイパス通路81の出口部73とは反対側に揺動軸84が設けられ、当該揺動軸84側へ隔壁58の下流側端部87が曲げられている。そのため、バイパス通路81を流通する高温の排気ガスが隔壁58に十分に遮られて揺動軸84の周囲に到達し難くなり、軸受78、79及びシール部材80の温度上昇の抑制効果が高められる。
【0032】
さらに温度調整装置42では、揺動弁56がバイパス通路81を開くとき、揺動軸84と隔壁58との間の隙間90を通じて冷却通路75と導出口83とが連通する。そのため、バイパス通路81が開かれても、冷却通路75により冷却された低温の排気ガスが隙間90を流れるようになるので、バイパス通路81から導出口83へと流出した高温の排気ガスが揺動軸84の周囲に到達し難くなる。したがって、軸受78、79及びシール部材80の温度上昇の抑制効果が高められる。
【0033】
またさらに、温度調整装置42では、揺動弁56がバイパス通路81を閉じるとき、揺動軸84の径方向外側へ突出する弁本体85が隔壁58の下流側端部87により係止される。これにより、バイパス通路81を流通する高温の排気ガスは弁本体85に遮られて揺動軸84の周囲に到達し難くなる。したがって、軸受78、79及びシール部材80の温度上昇の抑制効果が高められる。
【0034】
このように軸受78、79及びシール部材80の温度上昇が効果的に抑制され得る温度調整装置42では、それらの要素78、79、80が排気ガスからの受熱によっては溶融し難くなるので、弁ロック等の作動不良並びにシール性の低下を防止できる。また、軸受78、79において排気ガスからの受熱による熱膨張量が小さくなるので、揺動軸84と軸受78、79との間のクリアランスを小さく設定して耐振性を向上することができる。
【0035】
そして、こうした作動不良及びシール性低下の防止効果や耐振性の向上効果は、冷却装置等を用いなくても、冷却通路75内を延伸するように揺動軸84を配置するだけで得られるので、小型化とコストダウンとを図ることができる。
しかも温度調整装置42では、バイパス通路81を閉じるときに隔壁58の下流側端部87が揺動弁56を係止する機能を発揮するので、当該係止機能を発揮する新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の減少、ひいてはコストダウンをもたらすことができる。
【0036】
(第二実施形態)
図7は、本発明の第二実施形態による温度調整装置100の要部を示している。第一実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付すことで、説明を省略する。
温度調整装置100では、第一揺動位置において揺動弁110が冷却通路75を閉じるとき、隔壁120の下流側端部121が揺動弁110の突起部111を係止するように、それら要素121、111が形成されている。
【0037】
そして温度調整装置100では、第一揺動位置と第二揺動位置との間の揺動位置において揺動弁110が冷却通路75及びバイパス通路81の双方を開くとき、第一実施形態の場合と同様に冷却通路75と導出口83とが隙間90を通じて連通し、揺動軸84の温度上昇が抑えられる。
【0038】
一方、図7に示す第一揺動位置において揺動弁56が冷却通路75を閉じるときには、隔壁120の下流側端部121が揺動弁110の突起部111を係止することにより、隙間90を通じた冷却通路75と導出口83との連通が遮断される。そのため、高温の排気ガスを吸気系20へ導くためにバイパス通路81のみを開くとき、冷却通路75を閉塞して吸気系20へ導く排気ガスの温度低下を防ぐことができる。以上、突起部111が特許請求の範囲に記載の「連通遮断部」に相当する。
【0039】
さらに温度調整装置100では、冷却通路75を閉じるときに隔壁58の下流側端部87が揺動弁56を係止する機能を発揮するので、当該係止機能を発揮する新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の減少、ひいてはコストダウンをもたらすことができる。
【0040】
(第三実施形態)
図8は、本発明の第三実施形態による温度調整装置150の要部を示している。第一実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付すことで、説明を省略する。
温度調整装置150では、冷却通路75内において隔壁160の下流側端部161より下流側を揺動弁170の揺動軸171が延伸している。そのため、隔壁160を挟んでバイパス通路81の出口部73とは反対側には揺動軸171が位置しておらず、隔壁160の長さが排気流れ方向において短くなっている。したがって、隔壁160の材料費が低減されるので、コストダウン効果が促進される。
【0041】
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるべきではない。
例えば上記第一〜第三実施形態では、軸受と揺動弁の揺動軸との間をシールするシール部材を設けているが、そのようなシール部材を設けないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第一実施形態による温度調整装置の要部を示す一部切り欠き側面図である。
【図2】第一実施形態によるエンジンシステムを示す模式図である。
【図3】第一実施形態による温度調整装置を示す一部切り欠き正面図である。
【図4】第一実施形態による温度調整装置の要部を示す断面図である。
【図5】第一実施形態による温度調整装置の作動を説明するための断面図である。
【図6】第一実施形態による温度調整装置の作動を説明するための断面図である。
【図7】第二実施形態による温度調整装置の要部を示す断面図である。
【図8】第三実施形態による温度調整装置の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 エンジンシステム、12 エンジン、20 吸気系、30 排気系、40 EGR系、42、100、150 温度調整装置(EGR制御装置)、44 温度センサ(EGR制御装置)、45 コントローラ(EGR制御装置)、51 導入部、52 冷却部、53 バイパス部、54 弁支持部、55 導出部、56、110、170 揺動弁、57 弁駆動部、58、120、160 隔壁、60 導入口、61 冷却ケース、66 ガス管、69 第一通路(冷却通路)、70 第二通路(バイパス通路)、72 第三通路、出口部(冷却通路)、73 第四通路、出口部(バイパス通路)、75 冷却通路、78、79 軸受、80 シール部材、81 バイパス通路、83 導出口、84、171 揺動軸、85 弁本体、86 突起部、87、121、161 下流側端部、90 隙間、111 突起部(連通遮断部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系へ導いて再循環させる排気ガスの温度を制御する排気ガス再循環制御装置であって、
排気ガスを冷却しつつ流通させる冷却通路と、
前記冷却通路を迂回して排気ガスを流通させるバイパス通路と、
第一揺動位置において前記冷却通路の出口部を閉じると共に前記バイパス通路の出口部を開き、第二揺動位置において前記冷却通路の出口部を開くと共に前記バイパス通路の出口部を閉じ、前記第一揺動位置と前記第二揺動位置との間において前記冷却通路及び前記バイパス通路の双方の出口部を開く揺動弁と、
前記揺動弁の揺動軸を支持する軸受と、
前記冷却通路及び前記バイパス通路のうち出口部が開いた通路に連通し、前記吸気系へ排気ガスを導出する導出口とを備え、
前記揺動軸は、前記冷却通路内を延伸していることを特徴とする排気ガス再循環制御装置。
【請求項2】
前記揺動軸と前記軸受との間をシールするシール部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項3】
前記冷却通路の出口部と前記バイパス通路の出口部とを仕切る隔壁をさらに備え、
前記揺動軸は、前記隔壁を挟んで前記バイパス通路の出口部とは反対側に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項4】
前記隔壁において排気ガス流れの下流側端部は前記揺動軸側へ曲げられていることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項5】
前記揺動弁は、前記バイパス通路を開くとき前記揺動軸と前記隔壁との間の隙間を通じて前記冷却通路と前記導出口とを連通させることを特徴とする請求項3又は4に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項6】
前記揺動弁は、前記冷却通路を閉じるとき前記隔壁に係止されて前記冷却通路と前記導出口との連通を遮断する連通遮断部を有することを特徴とする請求項5に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項7】
前記隔壁において排気ガス流れの下流側端部は、前記揺動弁が前記バイパス通路を閉じるとき前記揺動弁を係止することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項8】
前記揺動弁は、前記揺動軸から径方向外側へ突出する弁本体を有し、
前記揺動弁が前記バイパス通路を閉じるとき前記隔壁の前記下流側端部は前記弁本体を係止することを特徴とする請求項7に記載の排気ガス再循環制御装置。
【請求項9】
前記隔壁において排気ガス流れの下流側端部は、前記揺動弁が前記冷却通路を閉じるとき前記揺動弁を係止することを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の排気ガス再循環制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−37765(P2006−37765A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215714(P2004−215714)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】