説明

排気ガス制御弁

【課題】ポペットバルブのバルブ本体がゼロリフト付近の低リフト時におけるEGRガス洩れ量を低減することを課題とする。
【解決手段】ポペットバルブのバルブ本体6がノズル1のバルブシート3に着座するゼロリフト時に、バルブ本体6のメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との金属同士のメタルタッチによってメタルシール部41とメタルシート部42との環状隙間をシールすることにより、バルブ本体6の凹溝12に嵌め込まれたシールリング8のみで、バルブ本体6とノズル1との環状隙間を気密シールするタイプ(従来の技術)と比べて、ゼロリフト時またはその近傍の低リフト時におけるEGRガス洩れ流量を低減することができる。また、EGRガス中に含まれる異物による噛み込み現象を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関の排気通路に連通する流路を流れる排気ガスを制御する排気ガス制御弁に関するもので、特に内燃機関の排気循環装置(EGRシステム)に使用される排気ガス制御弁に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関の燃焼室より排出される排気ガス中に含まれる有害物質(例えば窒素酸化物:NOx)の低減を図るという目的で、排気ガスの一部であるEGRガスを排気通路から吸気通路へ再循環(還流)させる排気ガス還流管(EGRガスパイプ)を備えた排気ガス循環装置(EGRシステム)が公知である。
このEGRシステムにおいて、EGRガスを吸気通路に戻し、燃焼室に還流させると、内燃機関の出力および運転性の低下を伴うので、EGRガスパイプの途中にEGRガス制御弁(EGRV)が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
EGRVは、内燃機関の排気管の分岐部と吸気管の合流部とを接続するEGRガスパイプを流れるEGRガスの流量を制御する排気ガス制御弁であって、外部から内部へEGRガスを導入する導入ポート、および内部から外部へEGRガスを排出する2つの第1、第2導出ポートを有する円筒状のボディと、このボディの内部に設置されたシャフトと、このシャフトの先端外周に一体移動可能に連結されて、2つのフランジを有するバルブと、2つのフランジの外周に設けられ、ボディに支持された筒状のバルブシートに摺接する2つのシールリングと、シャフトを介してバルブを往復駆動するアクチュエータとを備えている。
【0004】
バルブは、導入ポートと第1導出ポートとの連通状態または導入ポートと第2導出ポートとの連通状態を切り替え自在な弁体である。また、アクチュエータは、モータ、ピニオンギヤ、ラックロッド、リフトセンサを有している。このような構造のEGRVは、ボディの一端部側の側方で開口した導入ポートと、ボディの略中央部で開口した第1導出ポートとが所定間隔離間して設けられている。なお、第2導出ポートは、導入ポートおよび第1導出ポートの開口方向と直交する方向に開口している。
ここで、従来のEGRVにおいては、バルブ全閉時におけるEGRガスの洩れ流量を低減するという目的で、バルブの各フランジの外周端面全周に円環状の凹溝をそれぞれ形成し、これらの凹溝内にC字状のシールリングをそれぞれ嵌め込んでいる。これにより、2つのシールリングがバルブシートの内周面に摺接することで、バルブシートの内周面とバルブの外周面との隙間からEGRガスが洩れるのを防止している。
【0005】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載のEGRVにおいては、バルブシートの内周面とバルブの外周面との隙間をシールする構造として、バルブの凹溝内に嵌め込まれた2つのシールリングのみを用いた気密シール構造を採用しているため、金属同士の接合によりバルブの外周面とバルブシートの内周面との隙間をメタルシールするシール構造に対して、バルブ全閉時におけるEGRガスの洩れ流量が大きいという問題がある。
【0006】
また、EGRVは、燃焼残滓やカーボン等の微粒子状の異物が含まれているEGRガスが流れる流路内に開閉自在に収容されている。
このため、EGRVのバルブの表面、シールリングの表面、バルブシートの内周面に微粒子状の異物が付着してデポジットを形成すると、シールリングの外周面とバルブシートの内周面との間の微少な隙間にデポジットが噛み込まれることにより、バルブがシールリングの外周面に固着(スティック)される。
これにより、デポジットの噛み込みによってシールリングの外周面とバルブシートの内周面との隙間が大きくなり、バルブ全閉時におけるEGRガス洩れ流量が増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−243337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、バルブのゼロリフト時またはその近傍の低リフト時における排気ガス洩れ流量を低減することのできる排気ガス制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明(排気ガス制御弁)は、金属製の筒体、金属製のバルブおよびアクチュエータを備えている。
筒体は、排気ガスが流れる流路、およびこの流路の周囲に設けられる環状のシートを有している。
バルブは、筒体の内部に往復移動可能に収容されている。このバルブは、シートに対して着座、離脱して流路を閉鎖、開放するように構成されている。
アクチュエータは、バルブのゼロリフトからバルブの最大リフトに至るまでの動作範囲内においてバルブをその軸線方向に往復駆動するように構成されている。
【0010】
なお、バルブのゼロリフトとは、バルブが筒体のシートに着座した時のリフト量(リフト位置)のことである。また、バルブの最大リフトとは、バルブが筒体のシートから所定の距離(最大距離)だけ離間した時のフルリフト量(フルリフト位置)のことである。
そして、バルブは、ゼロリフト時に、金属同士のメタルタッチによってシートとの隙間をシールするメタルシール部を有している。
すなわち、メタルシール部とシートとの隙間は、メタルシール部とシートとのメタルタッチによってメタルシールされる。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、バルブが筒体のシートに着座するゼロリフト(バルブのゼロリフト)時に、バルブのメタルシール部と筒体のシートとの金属同士のメタルタッチによってメタルシール部とシートとの隙間をシールすることにより、シールリングのみで、バルブと筒体またはシートとの隙間を気密シールするタイプ(従来の技術)と比べて、ゼロリフト時またはその近傍の低リフト時における排気ガス洩れ流量を低減することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、バルブのメタルシール部に、流路(筒体)の軸線方向に対して傾斜したテーパ状のシール面を設けている。
また、シートには、バルブのゼロリフト時にバルブのメタルシール部が着座可能な傾斜面(バルブシート面)が形成されている。
請求項3に記載の発明によれば、筒体の内周面との摺動接触によって筒体との隙間をシールするシールリングを備えている。
すなわち、シールリングと筒体との隙間は、シールリングの外周面と筒体の内周面との摺動接触によって気密シールされる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、バルブの外周端面に、凹溝が周方向に連続して形成されている。シールリングは、バルブの凹溝内に嵌め込まれて保持されている。つまりシールリングは、バルブと一体移動可能に連結されている。
ここで、バルブの外周端面の凹溝に、筒体の内周面とバルブの外周端面との隙間をシールするシールリングを配置したことにより、バルブのゼロリフト時またはその近傍の低リフト時における排気ガス洩れ流量を更に低減することができる。
また、バルブのメタルシール部と筒体のシートとの間に異物が噛み込んでも、筒体の内周面とバルブの外周端面との隙間をシールリングによってシールできるので、異物噛み込み時における排気ガス洩れ流量の増加を防止することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、バルブのゼロリフト時に、バルブのメタルシール部との間に所定の距離を隔てた位置にシールリングを設置したことにより、バルブのゼロリフト時にバルブのメタルシール部とシールリングとの間に、異物を溜めるための空間が形成される。これにより、シールリングと筒体との間に異物が挟まることによって、バルブと筒体のシートとの間のメタルシール機能が阻害されることを抑制することができる。また、排気ガス中に含まれる異物による噛み込み現象を抑制することができる。
また、バルブのメタルシール部と筒体のシートとの間に異物が噛み込んでも、筒体の内周面とバルブの外周端面との隙間をシールリングによってシールできるので、異物噛み込み時における排気ガス洩れ流量の増加を防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、筒体の周囲を周方向に取り囲む筒状のハウジングを備えている。
流路は、2つの第1、第2流路および複数の開口窓を有している。
第1流路は、筒体の外周とハウジングの内周との間に形成される外側流路である。
第2流路は、筒体の内部に形成される内側流路である。
複数の開口窓は、2つの第1、第2流路を連通するように筒体をその筒方向に対して垂直な放射方向に貫通する複数の連通路である。これらの開口窓は、筒体の周方向に所定の間隔で設置されている。
これにより、筒体に複数の開口窓を設けたことにより、開口窓の形状で、バルブの開度変化(リフト量の変化)に対する開口面積特性である流量プロフィールを可変することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、バルブのゼロリフト時に、複数の開口窓との間に所定の距離を隔てた位置にシールリングを設置したことにより、バルブのゼロリフト時に複数の開口窓とシールリングとの間に、異物を溜めるための空間が形成される。これにより、シールリングと筒体との間に異物が挟まることによって、バルブと筒体のシートとの間のメタルシール機能が阻害されることを抑制することができる。また、排気ガス中に含まれる異物による噛み込み現象を抑制することができる。
また、バルブのメタルシール部と筒体のシートとの間に異物が噛み込んでも、筒体の内周面とバルブの外周端面との隙間をシールリングによってシールできるので、異物噛み込み時における排気ガス洩れ流量の増加を防止することができる。
【0017】
請求項8に記載の発明によれば、流路の一部として、筒体のシートよりも排気流方向の上流側の流路とシートよりも排気流方向の下流側の流路とを連通する連通孔を備えている。
なお、筒体のシートの中央部をその板厚方向に貫通するように、連通孔を設けても良い。
請求項9に記載の発明によれば、バルブを、筒体のシートに対するリフト量に応じて流路(連通孔等)の開口面積(流路(連通孔)を流れる排気ガスの流量)を変更する排気ガス流量(圧力)制御弁の弁体に適用しても良い。
【0018】
請求項10に記載の発明によれば、筒体の周囲を周方向に取り囲む筒状のハウジングを備えている。
流路は、2つの第1、第2流路および流路孔を有している。
第1流路は、筒体の外周とハウジングの内周との間に形成される外側流路である。
第2流路は、筒体の内部に形成される内側流路である。
流路孔は、2つの第1、第2流路を連通するように筒体をその筒方向に対して垂直な放射方向に貫通する連通路である。
これにより、筒体に流路孔を設けたことにより、流路孔の形状で、バルブの開度変化(リフト量の変化)に対する開口面積特性である流量プロフィールを可変することができる。
【0019】
請求項11に記載の発明によれば、筒体の周囲を周方向に取り囲む筒状のハウジングを備えている。
ハウジングには、筒体の一部を嵌合固定(例えば圧入固定)する筒状の支持部が設けられている。これにより、筒体が、ハウジングの内部に組み込まれた状態で嵌合保持される。
請求項12に記載の発明によれば、筒体は、バルブをその軸線方向に往復摺動可能に支持する筒状の支持部を有している。
なお、筒体の支持部には、バルブのゼロリフトから最大リフトに至るまでの動作範囲に渡って、バルブの外周端面またはシールリングの外周面と摺動する摺動面が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は排気ガス流量制御弁(EGRV)のリフトゼロ状態を示した断面図で、(b)はEGRVの主要部を示した断面図である(実施例1)。
【図2】排気ガス流量制御弁(EGRV)のフルリフト状態を示した断面図である(実施例1)。
【図3】(a)〜(c)はノズルを示した側面図、断面図、平面図である(実施例1)。
【図4】(a)、(b)はポペットバルブを示した側面図、断面図である(実施例1)。
【図5】(a)、(b)はシールリングを示した正面図、側面図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、バルブのゼロリフト時またはその近傍の低リフト時における排気ガス洩れ流量を低減するという目的を、バルブのゼロリフト時に、バルブのメタルシール部とノズルのメタルシート部との金属同士のメタルタッチによってメタルシール部とメタルシート部との隙間をメタルシールすることで実現した。
【実施例1】
【0022】
[実施例1の構成]
図1ないし図5は本発明の実施例1を示したもので、図1は排気ガス流量制御弁(EGRV)のゼロリフト状態を示した図で、図2は排気ガス流量制御弁(EGRV)のフルリフト状態を示した図である。
【0023】
本実施例の内燃機関の排気制御装置(エンジン制御システム)は、複数の気筒を有する内燃機関(エンジン)の各気筒毎の燃焼室より流出した排気ガスの一部であるEGRガスを、排気管から吸気管へ再循環(還流)させる排気ガス循環装置(EGRシステム)を備えている。
【0024】
ここで、エンジンとして、燃料が直接燃焼室内に噴射供給される直接噴射式のディーゼルエンジンが採用されている。
エンジンの各気筒毎の燃焼室には、吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ連通している。また、エンジンの各気筒には、インテークマニホールドおよびエキゾーストマニホールドが接続されている。また、エンジンの各気筒には、燃焼室内に燃料を噴射供給するインジェクタが搭載されている。
【0025】
インテークマニホールドに接続される吸気管には、エアクリーナ、ターボチャージャのコンプレッサ、インタークーラ、スロットルバルブが設置されている。また、インテークマニホールドおよび吸気管の内部には、エンジンの各気筒毎の燃焼室および吸気ポートに連通する吸気通路が形成されている。インテークマニホールドまたは吸気管には、EGRシステムから導入されるEGRガスをエアクリーナで濾過された清浄な外気(新気)に合流させるEGRガス合流部(合流部)が設けられている。
【0026】
エキゾーストマニホールドに接続される排気管には、ターボチャージャのタービン、排気浄化装置(触媒またはディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)、マフラが設置されている。また、エキゾーストマニホールドおよび排気管の内部には、エンジンの各気筒毎の燃焼室および排気ポートに連通する排気通路が形成されている。エキゾーストマニホールドまたは排気管には、エンジンの排気ガスの一部であるEGRガスをEGRシステムへ分岐させるEGRガス分岐部(分岐部)が設けられている。
【0027】
EGRシステムは、EGRガスパイプ、EGRガス流量制御弁(排気ガス制御弁:EGRV)を備えている。このEGRシステムは、EGRガス流量制御弁が開弁している時、エンジンより排出された排気ガスの一部が、EGRガスパイプを経由し、EGRガスとして吸気通路へ戻される。
【0028】
EGRガスパイプは、タービンよりも上流側の排気通路とインタークーラよりも下流側の吸気通路とを接続する排気ガス還流管(EGRパイプ)である。あるいはタービンまたは排気浄化装置よりも下流側の排気通路とコンプレッサよりも上流側の吸気通路とを接続する排気ガス還流管(EGRパイプ)である。このEGRガスパイプの内部には、エンジンの排気ガスの一部であるEGRガスを排気通路から吸気通路へ再循環(還流)させるための排気ガス流路(EGRガス流路)が形成されている。
【0029】
EGRガス流量制御弁は、EGRガスパイプの途中に設置されている。このEGRガス流量制御弁は、EGRガス流路の開口面積を連続的または段階的に変更することで、EGRガス流路を経由して排気通路から吸気通路へ再循環(還流)されるEGRガスの流量(EGRガス量)を可変制御する排気ガス流量制御弁である。
EGRガス流量制御弁は、円筒体を構成する円筒状のノズル1と、このノズル1の軸方向孔(摺動孔)2内に往復移動(摺動)可能に嵌合配置されるポペットバルブと、このポペットバルブを駆動する電磁アクチュエータであるリニアソレノイド(図示せず)と、内部にノズル1(バルブシート3、連通孔4)、ポペットバルブ、リニアソレノイドを収容するバルブハウジング(ハウジング)5とを備えている。
【0030】
ノズル1の内部には、軸線方向の一端側(図示下端側)から他端側(図示上端側)まで真っ直ぐに延びる軸方向孔2が形成されている。また、ノズル1の他端側には、ポペットバルブのバルブ本体6が着座可能な円環状のバルブシート3が一体的に設けられている。このバルブシート3の内部には、EGRガス流量制御弁の弁孔を構成する連通孔4が形成されている。
【0031】
ポペットバルブは、バルブ本体6、バルブシャフト(シャフト)7およびシールリング8を備えている。
バルブ本体6は、シールリング8を介して、ノズル1の軸方向孔2内に往復摺動可能に嵌合支持されている。このバルブ本体6は、シャフト7の軸線方向の一端側端部に一体的に形成されている。
【0032】
シャフト7は、ブッシング9を介して、ハウジング5の軸受け保持部内に往復摺動可能に支持されている。このシャフト7の軸線方向の他端側端部(ソレノイド側端部)は、軸方向に延びるリニアソレノイドのシャフト(ソレノイドシャフト)を介して、リニアソレノイドのプランジャの接触部に当接している。
シールリング8は、バルブ本体6の外周端部(肉厚部)11に形成された円環状の凹溝12に嵌め込まれて保持されている。
なお、ノズル1およびポペットバルブの詳細は後述する。
【0033】
リニアソレノイドは、プランジャがその軸線方向に移動することで、ソレノイドシャフトを介してポペットバルブをその軸線方向へ駆動するように構成されている。
リニアソレノイドは、ポペットバルブのシャフト7と一体移動可能に連結した非磁性体製のソレノイドシャフトと、シャフト7およびソレノイドシャフトと一体移動可能に連結した磁性体製のプランジャ(ムービングコア、可動子)とを備えている。
【0034】
また、リニアソレノイドは、通電されると周囲に磁束を発生するコイルと、このコイルへの通電に伴って形成される磁気回路の一部を構成する磁気固定子(ステータコア、ヨーク等)と、外周にコイルを巻装した合成樹脂製のボビンと、ポペットバルブおよびプランジャを閉弁方向に付勢するリターンスプリングとを備えている。
なお、リニアソレノイドのコイルは、エンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECUと言う)によって電子制御される駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
【0035】
ここで、ECUには、制御処理や演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックや各種データを保存する記憶装置(ROMやRAM等のメモリ)等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。
ECUは、エアフロメータ、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、リフトセンサ、吸気温度センサおよび冷却水温センサ等の各種センサから出力されるセンサ出力値(センサ出力信号)が、A/D変換器によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
このマイクロコンピュータは、リフトセンサから出力される電気信号に基づいて、排気管から吸気管へ還流するEGRガスの流量を計測(演算)し、この演算したEGRガスの流量を各種エンジン制御に使用する。
【0036】
ハウジング5は、例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等の耐熱性金属によって所定の形状に形成されている。
ハウジング5は、ノズル1の周囲を円周方向に取り囲むように設置されている。このハウジング5は、内部に軸受け孔19が形成された円筒状の軸受け保持部(ベアリングホルダ)と、EGRガス流路(連通孔4、EGRガス導入ポート20、第1〜第3流路21〜23、EGRガス排出ポート24)と、内部に連通孔4および第1、第2流路21、22が形成された上流側流路管部と、内部に第3流路23が形成された下流側流路管部とが一体的に設けられている。
【0037】
軸受け保持部は、ブッシング9の周囲を円周方向に取り囲むように設置されている。この軸受け保持部の内部には、ポペットバルブのシャフト7の軸線方向に延びる軸受け孔19が形成されている。
上流側流路管部は、ノズル1との間に排気ガス流路(第1流路21)を形成する円筒状のパイプ(薄肉部)25、およびノズル1を圧入固定する支持部である円筒状のブロック(肉厚部)26を有している。
【0038】
下流側流路管部の内部には、ノズル1から導入されたEGRガスを外部(吸気通路側)へ排出する第3流路23が形成されている。下流側流路管部および第3流路23は、湾曲している。
EGRガス導入ポート20は、ハウジング5の排気流方向の上流側端面で開口している。このEGRガス導入ポート20は、排気管の分岐部(排気通路)に連通している。
EGRガス排出ポート24は、ハウジング5の排気流方向の下流側端面で開口している。このEGRガス排出ポート24は、吸気管の合流部(吸気通路)に連通している。
【0039】
次に、本実施例のノズル1の詳細を図1ないし図3に基づいて簡単に説明する。
ノズル1は、ハウジング5と同様に、例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等の耐熱性金属によって所定の形状に形成されている。このノズル1は、ハウジング5と別体で製造された後に、ハウジング5のブロック26の内周面に圧入固定されている。
ノズル1は、排気通路から吸気通路へEGRガスが流れるEGRガス流路、およびこのEGRガス流路の周囲に設けられる円環状のバルブシート3を有している。
【0040】
ノズル1は、バルブシート3と、このバルブシート3よりも排気流方向の上流側に接続されて、バルブシート3よりも排気流方向の上流側の流路を、2つの第1、第2流路21、22に区画する円筒状の仕切り壁(隔壁)31を備えている。この仕切り壁31は、ハウジング5のブロック26の内周面(圧入面)に圧入嵌合される円筒状の嵌合壁(肉厚部)32よりも肉厚が薄くなっている。
【0041】
EGRガス流路は、ノズル1のバルブシート3の内部に形成される円形状の連通孔4と、ハウジング5のパイプ25の内周とノズル1の仕切り壁31の外周との間に形成される円筒状の第1流路21と、ノズル1の内部に形成される円形状の第2流路22と、2つの第1、第2流路21、22を連通するようにノズル1の仕切り壁31の軸線方向(筒方向)に対して垂直な放射方向に貫通する複数の開口窓(流路孔)33とを有している。
なお、複数の開口窓33は、リセス34を含んで構成されている。リセス34は、開口窓33の下流側中央部から下流側(バルブシート側)へ向かって凸な切欠き溝(凹部)である。
【0042】
次に、本実施例のポペットバルブの詳細を図1、図2、図4および図5に基づいて簡単に説明する。
ポペットバルブは、ハウジング5およびノズル1と同様に、例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等の耐熱性金属によって所定の形状に形成されている。このポペットバルブは、シールリング8およびシャフト7を備えている。
【0043】
ポペットバルブは、バルブシート3に対して着座、離脱してバルブシート3の内部に形成される連通孔4を閉鎖、開放するバルブ本体6を備えている。
ポペットバルブは、バルブ本体6がバルブシート3に着座するゼロリフト(バルブ全閉位置)から、バルブ本体6がバルブシート3より所定の距離だけ離間(リフト)するフルリフト(バルブ全開位置)に至るまでの動作範囲内でリニアソレノイドにより往復駆動されることで、EGRガス流路(連通孔4)の開口面積を変更してEGRガス量を調整する。
【0044】
バルブ本体6は、シャフト7の軸線方向の一端側端部に一体的に設けられている。このバルブ本体6は、ノズル1の内部において軸線方向に往復摺動可能に配設されている。また、バルブ本体6の外周端部11の内周側には、円形状の凹部13が形成されている。
なお、バルブ本体6を、シャフト7の軸線方向の一端側端部の外周に溶接等の手段を用いて組み付けても良い。また、バルブ本体6を、シャフト7の軸線方向の一端側端部の外周に圧入固定して組み付けても良い。
【0045】
バルブ本体6の外周端部11には、排気流方向の上流側に突出する円環状の突条部が一体的に設けられている。バルブ本体6の外周端面には、凹溝12が円周方向に連続して形成されている。バルブ本体6の凹溝12には、耐熱性金属によりC字形状に形成されたシールリング8が嵌め込まれている。
【0046】
シールリング8は、その外周端部がバルブ本体6の外周端面より径方向外側に突出した状態で、内周側部が凹溝12内を径方向、軸線方向および円周方向に移動できるように凹溝12の内部に嵌め込まれて保持されている。このシールリング8は、バルブ本体6の凹溝12への組み付け性を考慮して、シールリング8の円周方向の両側の端部間に合い口隙間(切欠き)14を設けている。
【0047】
[実施例1の特徴]
ノズル1は、バルブシート3から排気流方向の上流側に向かって軸線方向に延びる円筒状の仕切り壁31を有している。この仕切り壁31の内部には、シールリング8が摺接する軸方向孔2が形成されている。
【0048】
ノズル1は、第1流路21と第2流路22とを連通するように仕切り壁31をノズル1の軸線方向に対して垂直な径方向(放射方向)に貫通する複数の開口窓33を有している。これらの開口窓33は、ノズル1の仕切り壁31の円周方向に所定の間隔で設置されている。また、複数の開口窓33には、四角形状の開口部と、三角形状のリセス34がそれぞれ形成されている。
ノズル1は、その周囲を円周方向に取り囲むように設置されるハウジング5のブロック26に圧入固定される嵌合壁32を備えている。
【0049】
ノズル1は、嵌合壁32よりも下流側に、円環状のバルブシート3を有している。
バルブシート3は、連通孔4の周囲に設けられている。このバルブシート3は、ポペットバルブのゼロリフト時に、ポペットバルブのバルブ本体6のメタルシール部41が着座可能な傾斜面を有するメタルシート部42を備えている。
連通孔4は、バルブシート3よりも排気流方向の上流側の第2流路22と、バルブシート3よりも排気流方向の下流側の第3流路23とを連通するようにノズル1のバルブシート3をその軸線方向(板厚方向)に貫通して形成されている。
【0050】
ポペットバルブは、ゼロリフト近傍の低リフト時に、凹溝12に嵌め込まれたシールリング8の軸線方向に対して垂直な径方向(拡径方向)の張力を利用して、バルブ本体6の外周端面とノズル1の内周面(軸方向孔2の孔壁面)との隙間を密閉(気密シール)するように構成されている。
バルブ本体6は、ポペットバルブのゼロリフト時に、金属同士のメタルタッチによってバルブシート3との隙間をシールするメタルシール部41を備えている。
メタルシール部41は、EGRガス流路(連通孔4、第1、第2流路21、22)の軸線方向に対して所定の傾斜角度分だけ傾斜したテーパ状(円錐台形状)のシール面を有している。
【0051】
シールリング8は、ポペットバルブのゼロリフト時に、バルブ本体6のメタルシール部41との間に所定の軸方向距離(L1)を隔てた位置に設置されている。これにより、ポペットバルブのゼロリフト時には、ノズル1の嵌合壁32の内周面とバルブシート3の上流側端面とバルブ本体6の外周端面とシールリング8の下流側端面とで囲まれる空間が形成される。この空間は、EGRガス中に含まれる異物(微粒子状の不純物、排気浄化装置(例えばDPF等)の破片等)を一時的に溜める異物溜り部43として使用される。
ここで、バルブ本体6のメタルシール部41とシールリング8との軸方向距離として、許容する異物の大きさが0.5mmならば、0.5mm以上の距離を設定することが望ましい。
【0052】
シールリング8は、ポペットバルブのゼロリフト時に、複数の開口窓33との間に所定の軸方向距離(L2)を隔てた位置に設置されている。これにより、ポペットバルブのゼロリフト時には、複数の開口窓33とシールリング8との間に空間が形成される。この空間は、EGRガス中に含まれる異物(微粒子状の不純物、排気浄化装置(例えばDPF等)の破片等)を一時的に溜める異物溜り部44として使用される。
ここで、複数の開口窓33とシールリング8との軸方向距離として、許容する異物の大きさが0.5mmならば、0.5mm以上の距離を設定することが望ましい。
【0053】
ここで、リニアソレノイドを収容するアクチュエータケースの内部には、ポペットバルブのシャフト7、ソレノイドシャフトまたはプランジャのリフト量を電気信号に変換し、ECUへどれだけポペットバルブがバルブシート3に対してリフトしているかを出力するリフトセンサが搭載されている。
リフトセンサは、ノズル1のバルブシート3に対するバルブリフト量(図示下方へのストローク量)を検出するストローク検出手段である。このリフトセンサは、例えばシャフト7に固定された磁石(マグネット)より放出される磁束を検出する非接触式の磁気検出素子を有するホールICを主体として構成されている。ホールICは、アクチュエータケースまたはこの開口部を閉塞するカバーに装着されている。ホールICより出力される電気信号(センサ出力値)は、ホール素子の感磁面を鎖交する磁束密度に対応した電圧信号である。
【0054】
ここで、仮にポペットバルブのメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間に異物が噛み込んだ時には、ポペットバルブのゼロリフト時におけるセンサ出力値に対して異なるセンサ出力値が出力される。これにより、ポペットバルブのゼロリフト時に、リフトセンサの出力値変動が大きければ、ポペットバルブのメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間に異物が噛み込んでいると判定(異物噛み込み判定)できる。この場合には、ポペットバルブのゼロリフト近傍でポペットバルブを上下動させて、ポペットバルブのメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間から異物を除去するようにしても良い。
【0055】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のEGRシステムに組み込まれるEGRガス流量制御弁(EGRV)の作動を図1ないし図5に基づいて簡単に説明する。
【0056】
本実施例のポペットバルブをその軸線方向に往復駆動するリニアソレノイドのコイルは、ECUによって通電制御されるように構成されている。
ここで、コイルへの電力供給が成されない場合には、リターンスプリングの付勢力(スプリング力)によってバルブシート3に着座して連通孔4を全閉するゼロリフトとなるようにポペットバルブのリフト量が設定される。
これにより、EGRガスが新気(エアクリーナで濾過された清浄な吸入空気)に混入しない。
【0057】
次に、ポペットバルブを、シールリング8の位置がゼロリフトから複数の開口窓33までの範囲内で開閉作動させる場合には、ポペットバルブのリフト量がゼロリフト近傍の低リフト量となるように、リニアソレノイドのコイルへの電力供給を制御する。
コイルが通電されると、プランジャ、ステータコアおよびヨークが磁化される。これにより、プランジャがステータコアの吸引部に吸引される。そして、プランジャの軸線方向の移動に伴ってソレノイドシャフトも軸線方向に移動する。
【0058】
これに伴って、ソレノイドシャフトの移動によってシャフト7が軸線方向に押し出されるため、シャフト7に連結されたバルブ本体6が、ノズル1のバルブシート3より離脱(離座)し、連通孔4が開放される。
しかし、ポペットバルブのバルブ本体6の凹溝12に嵌め込まれたシールリング8は、未だ複数の開口窓33とメタルシート部42との間の嵌合壁32の内周面(軸方向孔2の孔壁面)に摺接しているので、ゼロリフト近傍の低リフト時におけるEGRガスの洩れが抑止され、EGRガスが新気に混入しない。
【0059】
次に、ポペットバルブを、シールリング8の位置がゼロリフト近傍の低リフトから複数の開口窓33を通ってフルリフトまでの範囲内で開閉作動させる場合には、ポペットバルブのリフト量がゼロリフト近傍の低リフト量からフルリフト量までの範囲内となるように、リニアソレノイドのコイルへの電力供給を制御する。
そして、コイルに供給する電力が大きい程、コイルに発生する磁力が大きくなるので、ゼロリフト近傍の低リフト位置からのプランジャのストローク量も大きくなる。そして、プランジャの軸線方向の移動に伴ってソレノイドシャフトも軸線方向に移動する。
【0060】
これに伴って、ソレノイドシャフトの移動によってシャフト7が軸線方向に押し出されるため、シャフト7に連結されたバルブ本体6が、ノズル1のバルブシート3よりさらに離間し、連通孔4の開口面積がポペットバルブのリフト量に応じて大きくなる。
また、バルブ本体6の凹溝12に嵌め込まれたシールリング8は、複数の開口窓33が部分的に開口している仕切り壁31の内周面(軸方向孔2の孔壁面)に摺接しているので、複数の開口窓33も開放される。
【0061】
したがって、エンジンの各気筒毎の燃焼室より排出された排気ガスは、エキゾーストマニホールドおよび排気管内に形成される排気通路を通って、排気管の分岐部へ流入する。そして、分岐部からEGRガス流路に取り込まれたEGRガスは、ハウジング5の上流側端面で開口したEGRガス導入ポート20からハウジング5とノズル1との間に形成される第1流路21に流入し、ノズル1を貫通する複数の開口窓33を通ってノズル1内に形成される第2流路22に導入される。そして、第2流路22に導入されたEGRガスは、バルブシート3内に形成される連通孔4を通ってハウジング5内に形成される第3流路23に導入される。
【0062】
そして、第3流路23に導入されたEGRガスは、ハウジング5の下流側端面で開口したEGRガス排出ポート24から排出されて、吸気管の合流部に導入される。そして、合流部内でEGRガスと吸入空気とが混合されて混合ガス(吸気ガス)となり、吸気管およびインテークマニホールド内に形成される吸気通路を通って、エンジンの各気筒毎の吸気ポートに流入し、各吸気ポートからエンジンの各気筒毎の燃焼室に導入される。
これによって、エンジンの排気ガス中に含まれる有害物質(例えばNOx)の低減が図られる。
【0063】
[実施例1の効果]
以上のように、EGRシステムに組み込まれるEGRガス流量制御弁(EGRV)においては、ポペットバルブのバルブ本体6がノズル1のバルブシート3に着座するゼロリフト時に、バルブ本体6のメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との金属同士のメタルタッチによってメタルシール部41とメタルシート部42との環状隙間をメタルシールすることにより、バルブ本体6の凹溝12に嵌め込まれたシールリング8のみで、バルブ本体6とノズル1との環状隙間を気密シールするタイプ(従来の技術)と比べて、ゼロリフト時またはその近傍の低リフト時におけるEGRガス洩れ流量を低減することができる。
【0064】
また、本実施例のEGRガス流量制御弁においては、バルブ本体6の凹溝12内にシールリング8が嵌め込まれて保持されている。つまりシールリング8は、ポペットバルブと一体移動可能に連結されている。
ここで、ポペットバルブの外周端面の凹溝12に、ノズル1の嵌合壁32の内周面とバルブ本体6の外周端部11の外周端面との環状隙間を気密シールするシールリング8を配置したことにより、バルブ本体6のゼロリフト時またはその近傍の低リフト時におけるEGRガス洩れ流量を更に低減することができる。
また、バルブ本体6のメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間に異物が噛み込んでも、ノズル1の嵌合壁32の内周面とバルブ本体6の外周端面との環状隙間をシールリング8によってシールできるので、異物噛み込み時におけるEGRガス洩れ流量の増加を防止することができる。
【0065】
また、バルブ本体6のゼロリフト時に、バルブ本体6のメタルシール部41との間に所定の軸方向距離(L1)を隔てた位置にシールリング8を設置したことにより、バルブ本体6のゼロリフト時にバルブ本体6のメタルシール部41とシールリング8との間に、異物を溜めるための空間(異物溜り部43)が形成される。これにより、シールリング8の外周面とノズル1の嵌合壁32の摺動面(軸方向孔2の孔壁面)との間に異物が挟まることによって、ノズル1の嵌合壁32の軸方向孔2の孔壁面とバルブ本体6の外周端面との間のメタルシール機能が阻害されることを抑制することができる。また、EGRガス中に含まれる異物による噛み込み現象を抑制することができる。
また、バルブ本体6のメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間に異物が噛み込んでも、ノズル1の嵌合壁32の内周面とバルブ本体6の外周端面との環状隙間をシールリング8によってシールできるので、異物噛み込み時におけるEGRガス洩れ流量の増加を防止することができる。
【0066】
また、バルブ本体6のゼロリフト時に、複数の開口窓33との間に所定の軸方向距離(L2)を隔てた位置にシールリング8を設置したことにより、ポペットバルブのゼロリフト時に複数の開口窓33とシールリング8との間に、異物を溜めるための空間(異物溜り部44)が形成される。これにより、シールリング8とノズル1との間に異物が挟まることによって、バルブ本体6のメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間のメタルシール機能が阻害されることを抑制することができる。また、EGRガス中に含まれる異物による噛み込み現象を抑制することができる。
【0067】
また、バルブ本体6のゼロリフト近傍の低リフト時には、バルブ本体6のメタルシール部41とバルブシート3のメタルシート部42との間に異物が噛み込んでも、バルブ本体6の外周端面とノズル1の嵌合壁32の軸方向孔2の孔壁面との環状隙間をシールリング8によってシールできるので、異物噛み込み時におけるEGRガス洩れ流量の増加を防止することができる。
【0068】
また、ノズル1の仕切り壁31に複数の開口窓33を設けたことにより、開口窓33の形状で、ポペットバルブの開度変化(リフト量の変化)に対する開口面積特性である流量プロフィールを可変することができる。
また、複数の開口窓33の各リセス34の幅は、四角形状の開口部の下流側端縁からバルブシート側へ向かって徐々に狭くなっている。これにより、ポペットバルブのゼロリフトからリフトした場合、ポペットバルブのリフトに伴って複数の開口窓33の開口面積が徐々に増加する、滑らかな開口特性となる。これによって、ポペットバルブの流量特性は、開口特性に依存するので、急激に流量が増加する特性ではなく、滑らかな流量特性を得ることができる。
【0069】
[変形例]
本実施例では、EGRガスパイプの途中にEGRガス流量制御弁(EGRV)を設置したが、EGRガスパイプと排気管との結合部(分岐部)にEGRVを設置しても良い。また、EGRガスパイプと吸気管との結合部(合流部)にEGRVを設置しても良い。
本実施例では、EGRガス流量制御弁の弁体として1つのバルブ本体6を有するポペットバルブを使用しているが、排気ガス制御弁の弁体として2個以上のバルブ本体を有するポペットバルブを使用しても良い。この場合には、シートの個数も、2個または3個以上となる。
【0070】
本実施例では、ポペットバルブをその軸線方向に往復駆動するアクチュエータとして、リニアソレノイド(電磁アクチュエータ)を採用しているが、ポペットバルブをその軸線方向に往復駆動するアクチュエータとして、負圧制御弁を介して電動式バキュームポンプからの負圧により駆動される負圧作動式アクチュエータを採用しても良い。
なお、リニアソレノイドのコイルへの電圧値または電流値等の供給電力が増加する程、ポペットバルブのリフト量が大きく、または小さくなるようにしても良い。
【0071】
また、アクチュエータとして、電力の供給を受けてトルクを発生するモータ、このモータの回転を減速する減速機構、この減速機構の回転運動を往復直線運動に変換する変換機構を備えた電動アクチュエータを採用しても良い。
また、排気ガス制御弁の弁体を構成するバルブとして、バタフライバルブ等の回転型バルブを採用しても良い。
【0072】
本実施例では、EGRガス流量制御弁に本発明を適用したが、EGRクーラの出口側に連通する低温排気ガス流路とEGRガスをEGRクーラより迂回させるバイパス流路(高温排気ガス流路)とを切り替える排気ガス流路切替弁や、エンジン排気管内に設置される排気ガス流量(圧力)制御弁等の他の排気ガス制御弁に本発明を適用しても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、多気筒ディーゼルエンジンの代わりに、多気筒ガソリンエンジンを用いても良い。また、単気筒エンジンに適用しても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 ノズル(筒体)
2 軸方向孔(摺動孔)
3 バルブシート
4 連通孔
5 ハウジング(排気ガス制御弁の弁ケース)
6 バルブ本体(排気ガス制御弁の弁体)
7 ポペットバルブのシャフト(排気ガス制御弁の弁軸)
8 シールリング
12 ポペットバルブの凹溝
21 第1流路(EGRガス流路)
22 第2流路(EGRガス流路)
23 第3流路(EGRガス流路)
26 ブロック(支持部)
31 ノズルの仕切り壁(支持部)
32 ノズルの嵌合壁(支持部)
33 ノズルの開口窓(流路孔、EGRガス流路)
34 ノズルのリセス
41 バルブ本体のメタルシール部
42 ノズルのバルブシートのメタルシート部
43 異物溜り部(異物を溜めるための空間)
44 異物溜り部(異物を溜めるための空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)排気ガスが流れる流路、およびこの流路の周囲に設けられる環状のシートを有する金属製の筒体と、
(b)この筒体の内部に往復移動可能に収容されて、前記シートに対して着座、離脱して前記流路を閉鎖、開放する金属製のバルブと、
(c)このバルブが前記シートに着座するゼロリフトから、前記バルブが前記シートより離間する最大リフトに至るまでの動作範囲内において前記バルブをその軸線方向に往復駆動するアクチュエータと
を備え、
前記バルブは、前記ゼロリフト時に、金属同士のメタルタッチによって前記シートとの隙間をシールするメタルシール部を有していることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス制御弁において、
前記メタルシール部は、前記流路の軸線方向に対して傾斜したテーパ状のシール面を有し、
前記シートは、前記ゼロリフト時に前記メタルシール部が着座可能な傾斜面を有していることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排気ガス制御弁において、
前記筒体の内周面との摺動接触によって前記筒体との隙間をシールするシールリングを備えていることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載の排気ガス制御弁において、
前記バルブは、その外周端面に、周方向に連続して形成された凹溝を有し、
前記シールリングは、前記凹溝内に嵌め込まれて保持されていることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の排気ガス制御弁において、
前記シールリングは、前記ゼロリフト時、前記メタルシール部との間に所定の距離を隔てた位置に設置されていることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の排気ガス制御弁において、
前記筒体の周囲を周方向に取り囲む筒状のハウジングを備え、
前記流路は、前記筒体の外周と前記ハウジングの内周との間に形成される第1流路、前記筒体の内部に形成される第2流路、および前記第1流路と前記第2流路とを連通するように前記筒体をその筒方向に対して垂直な放射方向に貫通する複数の開口窓を有し、
前記複数の開口窓は、前記筒体の周方向に所定の間隔で設置されていることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項7】
請求項6に記載の排気ガス制御弁において、
前記シールリングは、前記ゼロリフト時、前記複数の開口窓との間に所定の距離を隔てた位置に設置されていることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載の排気ガス制御弁において、
前記流路は、前記シートよりも排気流方向の上流側の流路と前記シートよりも排気流方向の下流側の流路とを連通する連通孔を有していることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の排気ガス制御弁において、
前記バルブは、前記シートに対するリフト量に応じて前記流路の開口面積を変更することを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の排気ガス制御弁において、
前記筒体の周囲を周方向に取り囲む筒状のハウジングを備え、
前記流路は、前記筒体の外周と前記ハウジングの内周との間に形成される第1流路、前記筒体の内部に形成される第2流路、および前記第1流路と前記第2流路とを連通するように前記筒体をその筒方向に対して垂直な放射方向に貫通する流路孔を有していることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載の排気ガス制御弁において、
前記筒体の周囲を周方向に取り囲む筒状のハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記筒体の一部を嵌合固定する筒状の支持部を有していることを特徴とする排気ガス制御弁。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載の排気ガス制御弁において、
前記筒体は、前記バルブをその軸線方向に往復摺動可能に支持する筒状の支持部を有していることを特徴とする排気ガス制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219684(P2012−219684A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85046(P2011−85046)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】