説明

排気ガス浄化装置

【課題】 誘電体間に放電電力の高いプラズマを発生させることにより、排気ガスを効果的に浄化することができる排気ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】 放電プラズマにより排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置1において、誘電体8を、排気ガスが通過するように間隔を空けて対向配置する。互いに向き合う誘電体8の間には、波状に起伏し、プラズマを発生させるための電圧が印加される主電極9を、その頂点15が誘電体8の対向面11に当接するように配置する。そして、対向面11において、隣接する頂点15の間に補助電極14を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させて排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排気ガスには、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)およびPM(粒子状物質)などの物質が含有されている。
【0003】
従来、このような排気ガスを、プラズマを発生させて浄化する装置が知られており、例えば、内燃機関の排気管の途中に設けられた排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この排気浄化装置は、耐熱性絶縁体により形成された流路構造体と、流路構造体の内部に埋め込まれ、外部端子との接続部のみが露出した放電電極とを備えている。
【0005】
流路構造体は、複数個積層され、各流路構造体間に放電電極が位置した状態で、絶縁性のハウジング内に収納されている。また、流路構造体には、排気ガスが通過する複数の流路が1列に形成されている。各流路構造体の流路内には、それぞれ波板状の導電性耐熱金属からなる補助電極が収納されている。
【0006】
上記の排気浄化装置では、流路構造体の各流路内に補助電極が配置されている。そのため、各流路構造体を挟んで対向する放電電極間に高電圧が印加されると、各流路内では、放電電極と補助電極との間に放電プラズマが発生する。これにより、各流路の内壁やそれにコーティングされた触媒が活性化して、各流路内を通過する排気ガスが浄化される。
【特許文献1】特開2001−9232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1に記載の排気浄化装置では、放電電極間に高電圧を印加しても、放電電力の高いプラズマ(強いプラズマ)を発生させることが困難である。そのため、排気ガスを効果的に浄化できないという不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、誘電体間に放電電力の高いプラズマを発生させることにより、排気ガスを効果的に浄化することができる排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガスが通過するように間隔を空けて対向配置された1対の誘電体と、波状に起伏し、互いに向き合う各前記誘電体の対向面に頂部が当接するように配置され、プラズマを発生させるための電圧が印加される主電極と、前記対向面の少なくとも一方において、隣接する前記頂部の間に配置された補助電極とを備えることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、1対の誘電体の対向面の少なくとも一方において、主電極における隣接する頂部の間に補助電極が備えられている。そのため、放電電力の高いプラズマを誘電体間(排気ガスの通過する部分)に発生させることができる。その結果、排気ガスを効果的に浄化することができる。
【0011】
また、本発明の排気ガス浄化装置では、前記補助電極が、排気ガスの流れ方向上流側に配置されていることが好適である。
【0012】
排気ガスの浄化が長期にわたって行なわれると、誘電体における排気ガスの上流側に排気ガス中のPMが堆積し、排気ガスの浄化性能が低下する場合がある。
【0013】
これに対し、この構成では、排気ガスの流れ方向上流側に発生するプラズマの放電電力を高くすることができるので、誘電体にPMが堆積しても、PMを効率よく除去することができる。その結果、排気ガスを一層効果的に浄化することができる。
【0014】
また、本発明の排気ガス浄化装置では、前記補助電極が、排気ガスの流れ方向上流側から下流側へ向かって複数形成されており、相対的に上流側に形成される前記補助電極の厚さと、相対的に下流側に形成される前記補助電極の厚さとが異なることが好適である。
【0015】
この構成では、補助電極が複数形成されているため、PMの堆積を効果的に抑制することができる。しかも、相対的に上流側に形成される補助電極の厚さと、相対的に下流側に形成される補助電極の厚さとが異なるので、例えば、相対的にPMの堆積しやすい上流側で補助電極の厚さを大きくすることにより、上流側でPMを効率よく除去しつつ、相対的にPMの堆積しにくい下流側で補助電極の厚さを小さくすることにより、補助電極のコストを低減することができる。
【0016】
さらに、本発明の排気ガス浄化装置では、前記主電極がメッシュ状に形成されていることが好適である。
【0017】
この構成では、主電極がメッシュ状であるため、排気ガス中のPMを主電極により効率よく捕捉することができる。そして、捕捉されたPMを、プラズマにより燃焼させて除去することができる。その結果、排気ガスをより一層効果的に浄化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排気ガス浄化装置によれば、放電電力の高いプラズマを誘電体間(排気ガスの通過する部分)に発生させることができる。その結果、排気ガスを効果的に浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略断面図である。
【0020】
排気ガス浄化装置1は、例えば、自動車のディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される、PM(Particulate Matter:粒子状物質)が含有される排気ガスを浄化する装置であって、エキゾーストパイプ(図示せず)などの排気流路の一部として設けられる。
【0021】
排気ガス浄化装置1は、排気流路の一部を形成する流路形成管2と、流路形成管2内に放電プラズマを発生させるプラズマ反応器3と、プラズマ反応器3に電力を供給するパルス電源4とを備えている。
【0022】
流路形成管2は、例えば、ステンレス鋼を用いて形成されており、略四角筒状の角管5と、角管5の長手方向両端部に接続され、当該両端部から角管5の長手方向外側に向かって窄む錐形の1対の錐管6とを有している。
【0023】
各錐管6は、互いに対称に形成されている。各錐管6における角管5の反対側には、流路形成管2をエキゾーストパイプ(図示せず)に接続するための略円筒状の円管7が接続されている。
【0024】
流路形成管2は、一方の円管7がエキゾーストパイプ(図示せず)における排気ガスの流れ方向上流側に接続され、他方の円管7がエキゾーストパイプ(図示せず)における排気ガスの流れ方向下流側に接続されることにより、エキゾーストパイプの上流側と下流側との間に介在される。
【0025】
プラズマ反応器3は、複数の誘電体8と、プラズマを発生させるための電圧が印加される主電極9とを備えている。
【0026】
誘電体8は、例えば、板状に形成されており、その厚さは、例えば、0.5〜3mmである。
【0027】
誘電体8を構成する材料としては、例えば、Al(酸化アルミニウム)、ZrO(酸化ジルコニウム)、AlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化ケイ素)、SiO(酸化ケイ素)などの低誘電率材料、例えば、BaTiO(チタン酸バリウム)、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)、Ba(Sr)TiO(チタン酸バリウムストロンチウム)、CaTiO(チタン酸カルシウム)、CaZrO(ジルコニウム酸カルシウム)、SrZrO(ジルコニウム酸ストロンチウム)、BaCeO(セリウム酸バリウム)、PbTiO(チタン酸鉛)、(Pb、La)TiO(チタン酸鉛ランタン)、Pb(Zr、Ti)O(チタンジルコニウム酸鉛)PbNb(ニオブ酸鉛)、BiTi12(チタン酸ビスマス)、Bi(Ni、Ti)O(ニッケルチタン酸ビスマス)などの高誘電率材料が挙げられる。
【0028】
主電極9は、仮想線10を高さの基準として、一定の振幅および一定の波長で上下に起伏する三角波状に形成されている。つまり、主電極9は、仮想線10から上下に一定の距離を隔てた位置において、上下交互に等間隔で配置される頂点15を有する三角波状に形成されている。
【0029】
主電極9における仮想線10よりも上側の頂点15Uと下側の頂点15Lとの距離(頂点高さH)は、主電極9を三角波に見立てたときの振幅の約2倍の距離であり、例えば、0.5〜5mm、好ましくは、1〜3mmである。
【0030】
また、仮想線10の上下各側において隣接する主電極9の頂点15の間の距離(頂点距離D)は、主電極9を三角波に見立てたときの波長の約1/2の距離であり、例えば、2〜15mm、好ましくは、3〜7mmである。
【0031】
例えば、誘電体8および主電極9は、排気ガスが通過するように間隔を空けて積層された5枚の誘電体8の各間に、互いに向き合う各誘電体8の対向面11に各頂点15が当接するように主電極9が介在されることにより、積層構造体を形成している。
【0032】
この積層構造体において、複数の主電極9は、それらを三角波に見立てたときにおける位相が同じである。したがって、最上方および最下方の誘電体8を除く3枚の誘電体8の対向面11には、主電極9の頂点15が、長手方向一方側から他方側へ向かって上下交互に当接される。
【0033】
そして、積層構造体は、主電極9を三角波に見立てたときの波長方向が排気ガスの流れ方向になるように角管5内に収容されている。
【0034】
主電極9には、積層方向下側から順に高電圧配線12および接地配線13が交互に接続されている。
【0035】
主電極9に接続された高電圧配線12は、1本に集約されてパルス電源4に接続されている。一方、主電極9に接続された接地配線13は、1本に集約されて接地されている。
【0036】
なお、図1では表れていないが、高電圧配線12は、流路形成管2を貫通する部分(流路形成管2と接触する部分)において、例えば、Alなどの絶縁体により被覆されている。これにより、高電圧配線12と流路形成管2とは互いに絶縁されている。
【0037】
上記した積層構造体において、各誘電体8間の空間に臨む1対の対向面11には、複数の補助電極14が設けられている。
【0038】
複数の補助電極14は、隣接する主電極9の頂点15の間および、最上流側および最下流側の主電極9の頂点15に隣接する位置に1つずつ、排気ガスの流れ方向上流側から下流側へ向かって上下交互に配置され、対向面11の全域にわたって設けられている。
【0039】
対向面11における排気ガスの流れ方向中央よりも下流側領域に位置する下流側の補助電極14Dの厚さは、その全部が同じ厚さであり、それらよりも上流側(上流側領域)に位置する上流側の補助電極14Uの厚さよりも相対的に小さい。
【0040】
一方、上流側の補助電極14Uの厚さは、上流側の補助電極14Uが配置される上流側領域において、排気ガスの流れ方向中央の電極の厚さを最大厚さとし、中央の電極から上流側および下流側の電極へ向かって段階的に厚さが小さくなり、最上流側および最下流側の電極の厚さが最小厚さとされている。
【0041】
補助電極14の具体的な厚さは、主電極9の頂点高さHおよび頂点距離Dにより異なるが、例えば、上流側の補助電極14Uの最大厚さが0.8〜1mmであり、最小厚さが0.5〜0.8mmである。一方、上流側の補助電極14Uの最小厚さよりも小さい下流側の補助電極14Dの厚さは、例えば、0.1〜0.5mmである。
【0042】
パルス電源4は、例えば、内燃機関などの動作を制御する制御ユニット(図示せず)に電気的に接続されており、当該内燃機関の動作とリンクしてその動作が制御される。
【0043】
図2は、図1に示す主電極の構造を説明するための積層構造体の要部拡大斜視図である。
【0044】
主電極9は、金属製の線材からなる金属網を用いて、上記のように三角波状に形成されている。
【0045】
線材を構成する金属としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、銅、タングステンなどが挙げられる。
【0046】
そして、金属網を用いて主電極9を形成するには、例えば、まず、複数の金属製の線材を一方向に間隔を空けて整列させ、整列した線材に対して、他の複数の線材を一方向に直交する他方向に編み込むことにより金属網を形成する。次いで、金属網を、図1に示す上側の頂点15Uが集合してなる上側の稜線16Uおよび下側の頂点15Lが集合してなる下側の稜線16Lが形成されるように、繰り返して折り曲げる。このようにして、排気ガスの通過可能な多数の貫通孔17が全域にわたって配列される網状(メッシュ状)の主電極9が形成される。
【0047】
なお、金属網は、一方向に整列した線材上において、複数の線材を他方向に間隔を空けて整列させることにより一方向および他方向の線材を交差させ、各交点を溶接や接着剤などにより固定することにより形成されてもよい。また、貫通孔17の形状は、金属網の編み方を変えることにより、長方形、三角形、ひし形などであってもよい。
【0048】
そのように形成される主電極9は、稜線16Uおよび稜線16Lに沿う方向の長さ(幅)Wが、通電を防止する観点から、誘電体8の一辺の長さよりもやや短い。そして、主電極9は、誘電体8の下側の対向面11Lに上側の稜線16U(上側の頂点15U)が当接するように、上側の対向面11Uに下側の稜線16L(下側の頂点15L)が当接するように、誘電体8間に介在される。
【0049】
また、主電極9において、排気ガスの流れ方向に向かって順に、対向面11に対して傾斜して立ち上がる複数の部分は、排気ガス中のPMを捕捉するための捕集部18である。
【0050】
また、主電極9と誘電体8との間には、捕集部18および対向面11により区画され、補助電極14が設けられる略三角柱状のギャップ19が形成されている。
【0051】
図3は、図1に示す補助電極の形状を説明するための誘電体の(a)平面図(b)底面図である。
【0052】
補助電極14は、略四角板状に形成された誘電体8の各対向面11において、長方形状の各電極が所定の間隔を空けて整列するストライプ状に形成されている。補助電極14は、最上方の誘電体8の上面および最下方の誘電体8の下面を除く各誘電体8の上面および下面において、例えば、図3に示すように、積層構造体の積層方向上側の対向面11U(図3(a)に示される対向面11U)に9本、積層方向下側の対向面11L(図3(b)に示される対向面11L)に10本、合計19本設けられている。また、最上方の誘電体8には、下側の対向面11L(下面)にのみ10本設けられ、最下方の誘電体8には、上側の対向面11U(上面)にのみ9本設けられている。
【0053】
各補助電極14の長さLは、例えば、ギャップ19(図2参照)の長手方向の長さと同じ長さであり、具体的には、100〜200mmである。したがって、補助電極14は、ギャップ19の長手方向一端から他端まで至るように設けられる。
【0054】
また、補助電極14の幅Wは、主電極9の頂点距離D(図1参照)により異なるが、例えば、0.5〜2mmである。
【0055】
また、隣接する補助電極14間の間隔Dは、例えば、1〜4.5mmである。また、誘電体8の対向面11に対する補助電極14の総面積は、例えば、5〜70%である。
【0056】
補助電極14は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、タングステン、ステンレス鋼(SUS)、カーボンなどの導電材料を用いて形成されている。
【0057】
補助電極14を対向面11上に形成するには、例えば、上記した導電材料を、特開2005−79504号公報に記載されている、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、インクジェット方式、また、無電解めっき法などの公知の方法により、対向面11上に上記パターンで塗布し、乾燥させる。
【0058】
以上説明した排気ガス浄化装置1では、内燃機関などの稼動にともない、高電圧配線12を介して主電極9にパルス電圧が印加される。
【0059】
印加されるパルス電圧の条件は、排出される排気ガスの圧力により異なるが、パルスピーク電圧Vが、例えば、4〜20kVである。また、パルス繰返し周波数fが、例えば、10〜300Hzである。
【0060】
パルス電圧の印加により、各主電極9における上側の稜線16Uおよび下側の稜線16L付近に電荷が集中する。そして、電荷の集中した部分から電子が誘電体8間を通過する排気ガス中に放出されて、荷電粒子(イオンや電子)や遊離基(ラジカル)などの活性種を含む放電プラズマがギャップ19内に発生する。この放電プラズマ中の活性種によってPMが酸化分解(燃焼)されて、排気ガスが浄化される。
【0061】
さらに、この排気ガス浄化装置1では、対向面11において隣接する主電極9の頂部としての頂点15(稜線16)の間に1つずつ、つまり、各ギャップ19内の対向面11に1つずつ補助電極14が備えられている。そのため、放電電力の高い放電プラズマをギャップ19内に発生させることができる。その結果、排気ガスを効果的に浄化することができる。
【0062】
また、排気ガス浄化装置1では、補助電極14が、排気ガスの流れ方向上流側から下流側へ向かって対向面11の全域に配置されており、下流側の補助電極14Dの厚さが上流側の補助電極14Uの厚さよりも相対的に小さい。
【0063】
排気ガスの浄化が長期にわたって行なわれると、誘電体8における排気ガスの上流側に排気ガス中のPMが堆積し、排気ガスの浄化性能が低下する場合がある。
【0064】
これに対し、上記のような構成では、補助電極14が対向面11の全域に複数配置されているため、対向面11の全域にわたってPMの堆積を抑制することができる。しかも、相対的にPMの堆積しやすい上流側の補助電極14Uの厚さを大きくすることにより、上流側でPMを効率よく除去しつつ、相対的にPMの堆積しにくい下流側の補助電極14Dの厚さを小さくすることにより、補助電極14のコストを低減することができる。
【0065】
さらに、上流側の補助電極14Uが、上流側の補助電極14Uが配置されている領域において、排気ガスの流れ方向中央の電極の厚さを最大厚さとし、中央の電極から上流側および下流側の電極へ向かって段階的に厚さが小さくなり、最上流側および最下流側の電極の厚さが最小厚さとされている。
【0066】
最上流側に向かって補助電極14の厚さを段階的に小さくすることにより、最上流側により近い補助電極14にPMが堆積して当該補助電極がコートされてしまうことを抑制することができる。その一方で、中央の補助電極14およびその付近の補助電極14の厚さを大きくすることにより、これらの電極でPMを効率よく除去することができる。また、最下流側に向かって補助電極14の厚さを段階的に小さくすることにより、補助電極14のコストを一層低減することができる。
【0067】
また、排気ガス浄化装置1では、主電極9が、多数の貫通孔17が全域にわたって配列される網状(メッシュ状)に形成されている。そのため、排気ガスの流れ方向に対向する主電極9の捕集部18によりPMを効率よく捕捉し、酸化分解(燃焼)させて除去することができる。その結果、排気ガスをより一層効果的に浄化することができる。
【0068】
図4は、図1の実施形態の変形例に適用される誘電体の(a)平面図(b)底面図である。図4において、図3に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。
【0069】
この誘電体8には、上側の対向面11Uおよび下側の対向面11Lのそれぞれの上流側にのみ、補助電極14が設けられている。例えば、図4に示すように、補助電極14は、上側の対向面11Uに3本、下側の対向面11Lに3本、合計6本設けられている。
【0070】
補助電極14を対向面の上流側にのみ設けることにより、排気ガスの流れ方向上流側に発生する放電プラズマの放電電力を高くすることができる。そのため、上流側の誘電体8に堆積するPMを効率よく除去することができる。その結果、排気ガスを一層効果的に浄化することができる。また、下流側の補助電極14が省略されるので、補助電極14のコストを低減することもできる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
【0072】
例えば、補助電極14は、長方形状でなく、例えば、ドット状、三角形状、円状などであってもよい。
【0073】
また、主電極9を三角波に見立てたときの波長は、一定でなくてもよく、例えば、排気ガスの上流側の波長が下流側の波長よりも相対的に大きくなっていてもよい。
【0074】
また、主電極9の形状は、三角波状でなく、正弦波状、余弦波状、のこぎり波状であってもよい。さらに、波状に起伏していれば、例えば、図5に示すように、金属網に規則的もしくは不規則的に凹部20および凸部21が設けられた三次元曲面状の主電極22であってもよい。この場合、主電極22は、凸部21が誘電体8の対向面11に当接するように、誘電体8間に配置される。したがって、補助電極は、対向面11と凹部20とにより区画されるギャップ内に設けられる。
【0075】
また、主電極9は、ステンレス鋼などの金属板からなる波状であってもよく、また、金属板の表面に、部分的に尖る突出部が形成されていてもよい。
【0076】
また、補助電極14は、例えば、図6に示すように、長さLがギャップ19(図2参照)の長手方向の長さの約1/2の大きさとされることにより、対向面11において部分的に配置されてもよい。
【0077】
本発明の排気ガス浄化装置の用途としては、例えば、ディーゼル機関から排出される排気ガスの浄化、化学プラントから排出される排気ガスの浄化などが挙げられる。
【実施例】
【0078】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
図1に示す排気ガス浄化装置1と同様の構成の排気ガス浄化装置を組立てた。なお、主電極、誘電体および補助電極としては、以下のものを用いた。
【0079】
主電極: ステンレス鋼線材からなる金属網を用いて形成した電極(頂点高さH=1.6mm 頂点距離D=5mm)
誘電体: 平板アルミナ誘電体
補助電極:平板アルミナ誘電体にタングステンをスクリーン印刷法により塗布・乾燥して形成した電極(厚さ=0.3mm 長さL=110mm 幅W=1mm 各電極間の間隔D=4mm 誘電体の対向面に対する総面積=30%)
比較例1
補助電極を省略したこと以外は、実施例1と同様の構成を有する排気ガス浄化装置を組立てた。
比較例2
図7に示す排気ガス浄化装置23と同様の構成の排気ガス浄化装置を組立てた。図7において、排気ガス浄化装置23は、板状の誘電体24と、誘電体24の内部に埋め込まれた板状の主電極25と、一定の振幅および一定の波長で上下に起伏する三角波状の補助電極26とを有している。
【0080】
誘電体24、主電極25および補助電極26は、排気ガスが通過するように間隔を空けて積層された誘電体24の各間に、互いに向き合う各誘電体24の対向面27に各頂点28が当接するように補助電極26が介在されることにより、積層構造体を形成している。そして、この積層構造体が、角管5内に収容されている。主電極25には、積層方向下側から順に接地配線29および高電圧配線30が交互に接続されている。
【0081】
なお、図7において、図1に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
また、比較例2において、主電極、誘電体および補助電極としては、以下のものを用いた。
【0083】
主電極: ステンレス鋼板からなる電極
誘電体: 平板アルミナ誘電体
補助電極:ステンレス鋼線材からなる金属網を用いて形成した電極
比較例3
図8に示す排気ガス浄化装置31と同様の構成の排気ガス浄化装置を組立てた。図8において、排気ガス浄化装置31は、補助電極26を省略したこと以外は、図7の排気ガス浄化装置23と同様の構成を有する。
評価実験
実施例1および比較例1〜3の排気ガス浄化装置の主電極に対して、高電圧パルス電源(パルス電子社製)により電圧を印加し、浄化装置内に放電プラズマを発生させた。なお、電圧の印加条件は、パルスピーク電圧V=0〜12kV、パルス繰返し周波数f=100Hzとした。
1)放電電力測定
電圧プローブ、電流プローブ、オシロスコープを用いて計測した放電電圧・電流の値から放電電力を計算した。結果を図9に示す。
2)プラズマ分布測定
各浄化装置に発生した放電プラズマの放電写真を、CCDカメラにより撮影した。撮影した写真を図10に示す。
考察
図9に示すように、ピーク電圧の増加量に対する、実施例1の放電電力の増加割合が比較例1〜3の放電電力の増加割合よりも高く、パルスピーク電圧Vの範囲が実用的な範囲である場合、実施例1の放電電力が比較例1〜3の放電電力よりも高いことが確認された。
【0084】
また、図10において、白く光っている部分が放電プラズマである。図10を参照すると、実施例1では、放電プラズマが誘電体間において全体的に強く発生し、放電プラズマが均一に分布していることが確認された。一方、比較例2および比較例3では、放電プラズマが誘電体間において局所的に弱くしか発生しておらず、放電プラズマの分布が不均一であることが確認された。また、比較例1では、比較例2および比較例3よりも放電プラズマが強く発生しているものの、図9で示したように、実施例1よりも弱いことが確認された。
【0085】
以上のように、この実施例により、本発明の排気ガス浄化装置によれば、誘電体間に放電電力の高いプラズマを発生させることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す主電極の構造を説明するためのプラズマ反応器の要部拡大斜視図である。
【図3】図1に示す補助電極の形状を説明するための誘電体の(a)平面図(b)底面図である。
【図4】図1の実施形態の変形例に適用される誘電体の(a)平面図(b)底面図である。
【図5】図1の実施形態の変形例に適用される主電極の概略斜視図である。
【図6】図1の実施形態の変形例に適用される誘電体の(a)平面図(b)底面図である。
【図7】比較例2に係る排気ガス浄化装置の概略断面図である。
【図8】比較例3に係る排気ガス浄化装置の概略断面図である。
【図9】パルス電源のピーク電圧とプラズマ反応器の放電電力との間の関係を示すグラフである。
【図10】各浄化装置内に発生する放電プラズマを撮影した写真である。
【符号の説明】
【0087】
1 排気ガス浄化装置
8 誘電体
9 主電極
11 対向面
14 補助電極
15 頂点
17 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが通過するように間隔を空けて対向配置された1対の誘電体と、
波状に起伏し、互いに向き合う各前記誘電体の対向面に頂部が当接するように配置され、プラズマを発生させるための電圧が印加される主電極と、
前記対向面の少なくとも一方において、隣接する前記頂部の間に配置された補助電極と
を備えることを特徴とする、排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記補助電極が、排気ガスの流れ方向上流側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記補助電極が、排気ガスの流れ方向上流側から下流側へ向かって複数形成されており、
相対的に上流側に形成される前記補助電極の厚さと、相対的に下流側に形成される前記補助電極の厚さとが異なることを特徴とする、請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記主電極がメッシュ状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142758(P2010−142758A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324208(P2008−324208)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー産業技術総合開発機構、次世代低公害車技術開発プログラム/『革新的次世代低公害車総合技術開発 開発項目「革新的後処理システムの研究開発」』(副題:低温プラズマシステム)に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】