説明

排気ポートの構造

【課題】フィンを付設して伝熱面積の拡大を図るとともに、排気ガスの流れをフィンに確実に沿わせる構造とすることによって、排気ポートにおける熱交換効率の改善を図ることができるシリンダヘッドにおける排気ポートの構造を提供する。
【解決手段】シリンダヘッド1に形成される本発明の一実施形態に係る排気ポート3の構造は、該排気ポート3の内壁面3aに、排気ガスと冷却媒体である冷却水とを熱交換するためのフィン9が、排気ガスの流れ方向に沿って形成される構成とした排気ポート3の構造であって、フィン9の、排気ガスの流れ方向上流側端部9aにおける頂部9bと、排気ポート3の内壁面3aに形成される排気バルブ6の支持部を構成する平面状の部位であるバルブステム座7の、排気ガスの流れ方向下流側の端部7aを一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドに形成される排気ポートの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドに形成される排気ポートの構造として、当該排気ポートを通じて排気される排気ガスを冷却するため(あるいは、排気ガスから熱を回収するため)に、排気ポート内にフィンを付設する構造が知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され、公知となっている。
【0003】
特許文献1に開示された従来技術では、排気ポートの内壁面から排気ガスの流通経路に対してフィンを突設させて形成する構成としており、排気ポートの内壁面の面積にフィンの表面積を加えることによって、伝熱面積を拡大して、排気ポートにおける排気ガスの熱交換効率の改善を図る構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、排気ポート内を流れる排気ガスが、フィンの排気ガス流れ方向における上流側の端面に衝突してしまう構成となっているため、排気ポート内における排気ガスの流れが乱流化してしまい、排気ガスがフィンに沿って流れにくくなってしまうとともに、排気抵抗の増大が懸念される。
このため、特許文献1に開示された従来技術では、思うように熱交換効率を改善できないという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、フィンを付設して伝熱面積の拡大を図るとともに、排気ガスの流れをフィンに確実に沿わせる構造とすることによって、排気ポートにおける熱交換効率の改善を図ることができるシリンダヘッドにおける排気ポートの構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、シリンダヘッドに形成される排気ポートにおいて、該排気ポートの内壁面に、排気ガスと冷却媒体とを熱交換するためのフィンが、排気ガスの流れ方向に沿って形成される構成とした排気ポートの構造であって、前記フィンの、排気ガスの流れ方向上流側端部における頂部と、前記排気ポートの内壁面に形成される排気バルブの支持部を構成する平面状の部位であるバルブステム座の、排気ガスの流れ方向下流側の端部を一致させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、排気ポートにおける伝熱面積の拡大を図りつつ、排気ガスの流れを確実にフィンに沿わせることができる。
これにより、排気ポートにおける排気ガスの熱交換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る構造を有する排気ポートを備えるシリンダヘッドのを示す部分断面模式図、(a)側面断面模式図、(b)図1(a)におけるA方向矢視図。
【図2】従来の構造を有する排気ポートを備えたシリンダヘッドを示す部分断面模式図。
【図3】従来の構造を改良した構造を有する排気ポートを備えたシリンダヘッドを示す部分断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る排気ポートの構造を有するシリンダヘッドの構成について、図1を用いて説明をする。尚、以下の説明では、図1(a)中に示す矢印Xの方向を上方と規定して、説明を行うものとする。
図1(a)(b)に示す如く、本発明の一実施形態に係る構造を有する排気ポートを備えたシリンダヘッドであるシリンダヘッド1は、図示しないシリンダブロックの上部に載置する状態で取り付けられて、該シリンダブロックに形成されるシリンダに対する吸排気経路を形成するとともに、当該吸排気経路の開閉状態を切り換えるための吸排気バルブを支持するための部材であり、燃焼室2、排気ポート3、ジャケット4・5、吸気ポート(図示せず)等が形成されている。
【0013】
本発明の一実施形態に係る構造を有する排気ポートである排気ポート3は、燃焼室2で発生した排気ガスを排気するための流通経路であり、シリンダヘッド1の下方に形成される燃焼室2と、シリンダヘッド1の側方に接続されるエキゾーストマニホールド(図示せず)とを連通する略90度の角度で湾曲した空隙部としてシリンダヘッド1に形成される部位である。
尚、本実施形態では、排気ポート3を形成する壁面を内壁面3aと呼ぶものと規定している。
【0014】
また、排気ポート3内には、該排気ポート3の開閉状態を切り換えるための排気バルブ6が配設され、また、シリンダヘッド1における排気バルブ6の支持部となる部位においては、バルブステム座7が形成されている。
【0015】
バルブステム座7は、排気バルブ6を往復変位可能に支持するためのバルブステムガイド8を嵌挿して保持するための支持孔10を、所定の角度で機械加工することを可能にするために形成される平面状の部位である。
このため、バルブステム座7は、排気ポート3内において、排気ポート3の内壁面3aの接線方向に対して傾斜した平面部として形成されており、排気ポート3における排気ガスの経路に対して突設して形成された部位となっている。
【0016】
燃焼室2において発生した排気ガスは、排気バルブ6を「開」状態とすることによって、排気ポート3を通じて、該排気ポート3に接続されるエキゾーストマニホールド(図示せず)に向けて排気される。
【0017】
排気ガスは高温であり、シリンダヘッド1の下流に配置されるエキゾーストマニホールドや触媒等の過熱を避けるため、排気ガスを排気ポート3から排気する際に、熱交換を行うことが必要である。
このため、排気ポート3の内壁面3aの裏側にあたる部位等にはジャケット4・5が形成されている。
ジャケット4・5には、ラジエータ(図示せず)等により適宜冷却されながらポンプ(図示せず)等により循環される冷却水が流通している。
【0018】
そして、排気ポート3から排気される排気ガスと、ジャケット4・5内を流通する冷却水とを内壁面3aを介して熱交換させることによって、排気ガスやシリンダヘッド1自体の温度を低下させる構成としている。
【0019】
またさらに、シリンダヘッド1では、排気ガスと冷却水との熱交換効率を高めるために、伝熱面積の拡大を図るべく、排気ポート3の内壁面3aからフィン9を突設させる構成としている。
フィン9は、排気ポート3内における排気ガスの流れ方向に対して平行に、排気ポート3の内壁面3aのより高温な排気ガスが流れる部位である半径方向外側にあたる上部から突設させる構成としており、当該部分を流通する高温の排気ガスに対して、当該フィン9により効果的に熱交換ができる構成としている。
【0020】
ここで、従来のシリンダヘッドにおける排気ポートの構造について、図2を用いて説明をする。
尚、図2に示す従来のシリンダヘッド21は、本発明に係る排気ポートの構造を有するシリンダヘッド1に対して、排気ポート23におけるフィン29の構造のみが相違しており、その他の構成は、シリンダヘッド1の構成と共通している。
【0021】
図2に示す如く、従来構造の排気ポート23を有するシリンダヘッド21において、フィン29は、バルブステム座7の端部7aからさらに排気ガスの流れ方向における下流側に離間した位置に、フィン29の上流側端部29aが位置する態様で形成されている。
このため、フィン29の上流側端部29aの頂部29bは、バルブステム座7の端部7aとは一致していない。
【0022】
このような構成では、燃焼室2から排気ポート23内に流入した排気ガスは、バルブステム6aの流れ方向に向かって左右両側に分かれて流れ、バルブステム6aの下流において合流するとともに、フィン29に沿って流れる以前に、フィン29の上流側端部29aに衝突する。
このため、従来の構造を有する排気ポート23では、排気ポート23内における排気ガスの流れが乱流化してしまい、排気ガスがフィン29に沿わずに流れていってしまう。
これにより、排気ポート23内を流れる排気ガスについて、熱交換効率が思うように改善できなくなっている。また、この場合、さらに排気抵抗が増大してしまうという問題も生じてしまう。
【0023】
ここで、フィンの上流側端部に排気ガスを衝突させないように改良した態様であるシリンダヘッドにおける排気ポートの構造について、図3を用いて説明をする。
尚、図3に示す従来から改良した態様のシリンダヘッド31は、本発明に係る排気ポートの構造を有するシリンダヘッド1に対して、排気ポート33におけるフィン39の構造のみが相違しており、その他の構成は、シリンダヘッド1における構成と共通している。
【0024】
図3に示す如く、従来の問題点を改良した態様の排気ポート33を備えたシリンダヘッド31において、フィン39は、バルブステム座7の端部7aからさらに排気ガスの流れ方向における下流側に離間した位置に、フィン39の上流側端部39aが位置する態様で形成されている。
【0025】
また、排気ポート33においては、フィン39の上流側端部39aの頂部39bは、内壁面33aからの高さが「0」となっており、フィン39が内壁面33aから連続的に形成される態様としている。
【0026】
このような構成では、燃焼室2から排気ポート33に流入してきた排気ガスは、バルブステム6aの流れ方向に向かって左右両側に分かれて流れ、バルブステム6aの下流において合流することなく、フィン39の左右に分かれて、該フィン39に沿って流れるようになり、また、フィン39の上流側端部39aに衝突することもなくなる。また、流れがスムーズになるため、排気抵抗の増大も抑えることができる。
【0027】
しかしながら、このような構成では、フィン39の表面積が、前述したフィン29に比して小さくなってしまい、伝熱面積の確保が困難になっている。
このため、排気ポート33では、該排気ポート33内を流れる排気ガスに対する熱交換効率の改善という観点では、未だ改善の余地が残されている。
【0028】
そして、本発明に係る構造を有する排気ポート3を備えるシリンダヘッド1では、各シリンダヘッド21・31における各排気ポート23・33の構造に見られる問題点を解消している。
【0029】
ここで、シリンダヘッド1における本発明に係る排気ポート3の構造について、図1を用いて説明をする。
図1(a)(b)に示す如く、本発明に係る構造を有する排気ポート3を備えるシリンダヘッド1において、フィン9は、バルブステム座7の端部7aと、フィン9の上流側端部9aにおける頂部9bを一致させる態様で形成されている。
即ち、シリンダヘッド1では、バルブステム座7の端部7aにフィン9の頂部9bが位置するような態様でフィン9を形成して、フィン9が、バルブステム座7から段差なく連続的に、排気ポート3の内壁面3aに形成される構成としている。
【0030】
このような構成では、燃焼室2から排気ポート3に流入してきた排気ガスは、バルブステム6aの流れ方向に向かって左右両側に分かれて流れ、バルブステム6aの下流において合流することなく、フィン9の左右に分かれて、該フィン9に沿って流れるようになり、また、フィン9の上流側端部9aに衝突することがないため、排気ガスの流れの乱流化が低減される。
このため、本発明に係る構造を有する排気ポート3では、排気ガスをフィン9に精度良く沿わせて流通させることができる。また、流れがスムーズになるため、排気抵抗の増大も抑えることができる。
【0031】
また、このような構成では、バルブステム座7の下流直後からフィン9を付設することが可能であるため、フィン9の表面積が、前述した従来のフィン29の表面積に比して拡大されており、伝熱面積の拡大が図られている。
このため、本発明に係る構造を有する排気ポート3では、排気ポート3内を流れる排気ガスについて、従来に比して熱交換効率の改善が図られている。
【0032】
即ち、シリンダヘッド1に形成される本発明の一実施形態に係る排気ポート3の構造は、該排気ポート3の内壁面3aに、排気ガスと冷却媒体である冷却水とを熱交換するためのフィン9が、排気ガスの流れ方向に沿って形成される構成とした排気ポート3の構造であって、フィン9の、排気ガスの流れ方向上流側端部9aにおける頂部9bと、排気ポート3の内壁面3aに形成される排気バルブ6の支持部を構成する平面状の部位であるバルブステム座7の、排気ガスの流れ方向下流側の端部7aを一致させるものである。
このような構成により、排気ポート3における伝熱面積の拡大を図りつつ、排気ガスの流れを確実にフィン9に沿わせることができる。
これにより、排気ポート3における排気ガスの熱交換効率を高めることができる。
【0033】
尚、本実施形態では、排気ポート3内に形成されるフィン9の本数が、一本である場合を例示して説明をしているが、本発明に係る排気ポートの構造を、排気ポート内に形成されるフィンの本数が一本である場合に限定するものではなく、排気ポート内に複数のフィンが形成される場合において、複数の各フィンの上流側端部における各頂部とバルブステム座の端部を一致させる構成としてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、排気ポート3がエキゾーストマニホールドまで単独で形成されている場合を例示して説明をしているが、本発明に係る排気ポートの構造をこれに限定するものではなく、排気ポートがエキゾーストマニホールドに至るまでの間で、複数合流するような態様で形成される場合であっても、本発明に係る構造を採用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 シリンダヘッド
3 排気ポート
3a 内壁面
7 バルブステム座
7a 端部
9 フィン
9a 上流側端部
9b 頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに形成される排気ポートにおいて、
該排気ポートの内壁面に、排気ガスと冷却媒体とを熱交換するためのフィンが、排気ガスの流れ方向に沿って形成される構成とした排気ポートの構造であって、
前記フィンの、排気ガスの流れ方向上流側端部における頂部と、
前記排気ポートの内壁面に形成される排気バルブの支持部を構成する平面状の部位であるバルブステム座の、排気ガスの流れ方向下流側の端部を一致させる、
ことを特徴とする排気ポートの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41891(P2012−41891A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185431(P2010−185431)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】