説明

排気リサイクルシステム

【課題】所定ゾーンから排出された排気中の揮発性有機化合物を効率的に燃焼除去するとともに、揮発性有機化合物除去後の浄化空気をリサイクルすることが可能な排気リサイクルシステムを提供すること。
【解決手段】揮発性有機化合物を含む排気を排出する所定ゾーンと、前記所定ゾーンから排出された排気中の揮発性有機化合物を吸着する吸着装置200と、前記吸着装置200に吸着された揮発性有機化合物を、前記吸着装置200から離脱させて燃焼装置の燃焼燃料とするとともに、前記吸着装置200を通過して浄化された浄化空気を前記所定ゾーンへ再び導く浄化空気リサイクル装置と、を備えることを特徴とする排気リサイクルシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気リサイクルシステムに関し、より詳しくは、所定ゾーンから排出された排気中に含まれる揮発性有機化合物(以下、VOCともいう)を燃焼除去するとともに、VOCが除去された浄化空気をリサイクルすることが可能な排気リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で発生するVOCを含む排気の処理システムとして、例えば特許文献1に開示されているシステムが挙げられる。このシステムでは、排気中に含まれるVOCは濃縮して回収され、内燃機関の燃焼用空気として利用される。また、内燃機関により発電機を駆動する等して、発電システムと一体化若しくはコージェネレーションシステムと一体化される。このシステムによれば、VOCの処理を目的としながら、ランニングコストを大幅に削減でき、省エネルギー化を実現できるとされている。
【特許文献1】特開2007−177779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、排気中に含まれるVOCの処理システムとして、排気中に含まれるVOCを濃縮して回収した後に燃焼除去するシステムが知られている。しかしながら、この燃焼法を利用したシステムでは、VOC除去後の浄化空気は、大気放出されているのが現状である。VOC除去後の浄化空気は、通常、ある程度高温であることから、省エネルギー化の観点により、浄化空気の有効利用が求められている。
【0004】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定ゾーンから排出された排気中のVOCを効率的に燃焼除去するとともに、VOC除去後の浄化空気をリサイクルすることが可能な排気リサイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、以下のような構成を備える排気リサイクルシステムによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のような排気リサイクルシステムを提供する。
【0006】
請求項1記載の排気リサイクルシステムは、揮発性有機化合物を含む排気を排出する所定ゾーンと、前記所定ゾーンから排出された排気中の揮発性有機化合物を吸着する吸着装置と、前記吸着装置に吸着された揮発性有機化合物を、前記吸着装置から離脱させて燃焼装置の燃焼燃料とするとともに、前記吸着装置を通過して浄化された浄化空気を前記所定ゾーンへ再び導く浄化空気リサイクル装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、排気リサイクルシステムを、所定ゾーンから排出された排気中のVOCを吸着する吸着装置と、吸着装置に吸着されたVOCを離脱させて燃焼装置の燃焼燃料とするとともに、吸着装置を通過して浄化された浄化空気を所定ゾーンへ再び導く浄化空気リサイクル装置と、を含んで構成した。
これにより、吸着装置によりVOCが除去された浄化空気を所定ゾーンへリサイクルできるとともに、吸着装置に吸着されたVOCを燃焼装置で効率的に燃焼除去できるため、VOCの放出を抑制でき、省エネルギー化を達成できる。
【0008】
請求項2記載の排気リサイクルシステムは、請求項1記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記吸着装置は、揮発性有機化合物を吸着する吸着部と、吸着した揮発性有機化合物を離脱させる離脱部と、前記吸着部と前記離脱部との切替えが可能な切替え機構と、を備え、前記浄化空気リサイクル装置は、前記燃焼装置で揮発性有機化合物を燃焼除去する際に生じる高温ガスを前記離脱部に供給することにより、前記吸着装置に吸着された揮発性有機化合物を離脱させることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、吸着装置を、VOCを吸着する吸着部と、吸着したVOCを離脱させる離脱部と、吸着部と離脱部との切替えが可能な切替え機構と、を含んで構成した。また、浄化空気リサイクル装置を、燃焼装置でVOCを燃焼除去する際に生じる高温ガスを離脱部に供給することにより、吸着装置に吸着されたVOCを離脱させる構成とした。
これにより、吸着部に吸着されたVOCは、切替え機構により吸着部が離脱部に切り替えられるに伴い、燃焼装置から供給される高温ガスによって離脱し、燃焼装置へと効率的に導かれる。このため、VOCの効率的な燃焼除去が可能となるうえ、高温ガスを有効利用でき、省エネルギー化に寄与できる。
【0010】
請求項3記載の排気リサイクルシステムは、請求項1又は2記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記排気リサイクルシステムは、前記燃焼装置で揮発性有機化合物を燃焼除去する際に生じる高温ガスを、前記所定ゾーンへ導いてリサイクルする高温ガスリサイクル装置を更に備えることを特徴とする。
【0011】
従来、蓄熱燃焼法等の燃焼法を利用したシステムでは、VOCを燃焼除去する際に発生する高温ガス(廃熱)は、大気放出されていた。そこで、この発明によれば、排気リサイクルシステムを、燃焼装置でVOCを燃焼除去する際に生じる高温ガスを所定ゾーンへ導いてリサイクルする高温ガスリサイクル装置を更に備える構成とした。
これにより、燃焼装置でVOCを燃焼除去する際に発生する高温ガスをリサイクルできるため、大きな省エネルギー効果が得られる。
【0012】
請求項4記載の排気リサイクルシステムは、請求項1から3記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記浄化空気リサイクル装置は、前記浄化空気を前記所定ゾーンに導いてリサイクルするための第1主ダクトと、前記第1主ダクトから分岐して前記浄化空気を大気に放出するための第1排気ダクトと、前記第1主ダクトと前記第1排気ダクトとの分岐部に設けられ、弁切換装置を備えるダンパ装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の排気リサイクルシステムは、請求項4記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記弁切換装置は、前記第1主ダクトの流路を開閉する開閉弁と、前記第1排気ダクトの流路を開閉する排気弁と、前記開閉弁が前記第1主ダクトの流路を閉じているときは前記排気弁が前記第1排気ダクトの流路を開き、前記開閉弁が前記第1主ダクトの流路を開いているときは前記排気弁が前記第1排気ダクトの流路を閉じる切換手段と、を備え、前記切換手段は、前記浄化空気中の揮発性有機化合物の濃度が検出されて作動するとともに、前記燃焼装置から排出される前記高温ガスの温度が検出されて作動することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の排気リサイクルシステムは、請求項3から5いずれか記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記高温ガスリサイクル装置は、前記高温ガスを前記所定ゾーンに導いてリサイクルするための第2主ダクトと、前記第2主ダクトから分岐して前記高温ガスを大気に放出するための第2排気ダクトと、前記第2主ダクトと前記第2排気ダクトとの分岐部に設けられ、弁切換装置を備えるダンパ装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の排気リサイクルシステムは、請求項6記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記弁切換装置は、前記第2主ダクトの流路を開閉する開閉弁と、前記第2排気ダクトの流路を開閉する排気弁と、前記開閉弁が前記第2主ダクトの流路を閉じているときは前記排気弁が前記第2排気ダクトの流路を開き、前記開閉弁が前記第2主ダクトの流路を開いているときは前記排気弁が前記第2排気ダクトの流路を閉じる切換手段と、を備え、前記切換手段は、前記浄化空気中の揮発性有機化合物の濃度が検出されて作動するとともに、前記燃焼装置から排出される前記高温ガスの温度が検出されて作動することを特徴とする。
【0016】
これらの発明によれば、浄化空気リサイクル装置を、第1主ダクトと、第1排気ダクト、これら第1主ダクト及び第1排気ダクトの分岐部に配置された第1弁切換装置を備える第1ダンパ装置と、を含んで構成した。また、高温ガスリサイクル装置を、第2主ダクトと、第2排気ダクト、これら第2主ダクト及び第2排気ダクトの分岐部に配置された第2弁切換装置を備える第2ダンパ装置と、を含んで構成した。
以下、説明の便宜のため、単に主ダクトといえば第1主ダクト及び第2主ダクトを意味し、単に排気ダクトといえば第1排気ダクト及び第2排気ダクトを意味し、単に弁切換装置といえば第1弁切換装置及び第2弁切換装置を意味し、単にダンパ装置といえば第1ダンパ装置及び第2ダンパ装置を意味する。
これにより、浄化空気又は高温ガスが主ダクトを流通し、浄化空気又は高温ガスが所定ゾーンへとリサイクルされる。また、排気ダクトは主ダクトから分岐しており、浄化空気又は高温ガスは排気ダクトを流通して大気に放出される。このため、浄化空気及び高温ガスを安全且つ確実に所定ゾーンへとリサイクルできる。
【0017】
これらの発明では、弁切換装置は、開閉弁、排気弁、及び切換手段を備えている。開閉弁は、主ダクトの流路を開閉する。排気弁は、排気ダクトの流路を開閉する。切換手段は、開閉弁が主ダクトの流路を閉じているときは排気弁が排気ダクトの流路を開き、開閉弁が主ダクトの流路を開いているときは排気弁が排気ダクトの流路を閉じる。
切換手段は、吸着装置から排出される浄化空気のVOCの濃度が検出されて作動するとともに、燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて作動する。
【0018】
ここで、主ダクトは浄化空気又は高温ガスが流通して浄化空気又は高温ガスを所定ゾーンへリサイクルするとは、実態として、浄化空気が流通する第1主ダクトと、高温ガスが流通する第2主ダクトと、を排気リサイクルシステムが備えていることを意味する。第1主ダクトと第2主ダクトは、弁切換装置を通過後は接続されて浄化空気及び高温ガスが合流し、所定ゾーンに帰還させることが好ましい。
同様に、排気ダクトは主ダクトから分岐しており、浄化空気又は高温ガスを大気に放出するとは、第1主ダクトから分岐する第1排気ダクトと、第2主ダクトから分岐する第2排気ダクトと、を排気リサイクルシステムが備えていることを意味する。
【0019】
第1ダンパ装置は、第1主ダクトと第1排気ダクトの分岐部に配置される第1弁切換装置を備え、第2ダンパ装置は、第2主ダクトと第2排気ダクトの分岐部に配置される第2弁切換装置を備えている。第1弁切換装置と第2弁切換装置とは、互いに独立して機能(作動)できる。一方、第1弁切換装置と第2弁切換装置とは、構成を同一としているので、第1弁切換装置と第2弁切換装置とを同じものとして取り扱う。
【0020】
一般に、ダンパ制御は、ダンパと呼ばれる仕切り板をダクトの内部に配置して、ダンパの傾斜角度を変えてダクト内の風量を調整する。即ち、ダクトの内部に風が流れる方向と直交するようにダンパを配置すれば、ダクト内の風量は最小になり、ダクトの内部に風が流れる方向と平行にダンパを配置すれば、ダクト内の風量は最大になり、ダンパの傾斜角度を変えてダクト内の風量を最小から最大の間に調整できる。
通常は、開閉弁が主ダクトの流路を開いており、排気弁が排気ダクトの流路を閉じているので、主ダクトは、浄化空気及び高温ガスが所定ゾーンへと導かれる閉回路を構成している。
【0021】
吸着装置から排出される浄化空気のVOC濃度が検出されて所定値以上になると、切換手段が作動し、開閉弁が主ダクトの流路を閉じ、排気弁が排気ダクトの流路を開いて正常値に復帰できる。また、燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて、所定値以上になると切換手段が作動し、開閉弁が主ダクトの流路を閉じて、排気弁が排気ダクトの流路を開いて正常値に復帰できる。
【0022】
ここで、弁切換装置は、一方のダンパが一方のダクトを閉じているときは、他方のダンパが他方のダクトを開いており、一方のダンパが一方のダクトを開いているときは、他方のダンパが他方のダクトを閉じている、可逆的な動作が許可される機械的なインターロック機能を有しており、リサイクルシステムの確実性が保証される。
【0023】
この発明によるダンパ装置は、浄化空気をリサイクルするに当たり、浄化空気中のVOC濃度を検出して、不適当な検出値の場合には、この浄化空気を大気に放出し、適切な検出値の場合は、この浄化空気をリサイクルする。従って、常に一定レベルのクリーンエアーをリサイクルできる。また、一定の風量を排気するように切換手段を制御することにより、エアバランスを一定の範囲に収めることができる。
【0024】
また、この発明によるダンパ装置は、燃焼装置が発生する高温ガスを所定ゾーンへとリサイクルするに当たり、燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて切換手段が作動する。例えば、燃焼装置立ち上がり時は、高温ガスが所定の温度に到達していないので、この高温ガスを大気に自動放出される。一方、高温ガスが所定の温度に到達した時点から、この高温ガスを所定ゾーンへリサイクルする。
このように、この発明によるダンパ装置は、燃焼装置から排出される高温ガスを所定の温度で熱回収(サーマルリサイクル)することを可能とする。
【0025】
請求項8記載の排気リサイクルシステムは、請求項3から7いずれか記載の排気リサイクルシステムにおいて、前記排気リサイクルシステムは、前記高温ガスリサイクル装置によりリサイクルされる高温ガスが流通する内管と、この内管を隙間をあけて包囲し、前記隙間に、前記浄化空気リサイクル装置によりリサイクルされる浄化空気が流通される外管と、からなる二重管構造体を備えることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、排気リサイクルシステムを、高温ガスが流通する内管と、この内管を隙間をあけて包囲し前記隙間に浄化空気が流通される外管と、からなる二重管構造体を含んで構成した。このため、高温ガスは内管の内部を流通する一方、浄化空気は内管と外管との隙間に流通する。
これにより、高温ガスは浄化空気を介して外気から隔離されるため、外気による高温ガスの急冷(つまり、熱エネルギの大損失)が抑制されるとともに、高温ガスから熱エネルギーが奪われた分、浄化空気が昇温されることになる。即ち、浄化空気及び高温ガスを効率的にリサイクルできる。
【0027】
請求項9記載の排気リサイクルシステムは、請求項3から8いずれか記載の排気リサイクルシステムにおいて、排気リサイクルシステム制御装置を備え、前記排気リサイクルシステム制御装置は、前記浄化空気及び前記高温ガスが導入される静圧調整室と、前記静圧調整室に設けられ、前記所定ゾーンへ新鮮な空気を供給する新鮮空気供給機構と、前記静圧調整室に設けられ、前記静圧調整室内の高温ガス濃度を計測する高温ガス濃度センサと、前記高温ガス濃度センサにより計測された高温ガス濃度に基づいて、前記新鮮空気供給機構を駆動させて前記静圧調整室内の圧力を調整することにより、前記所定ゾーンへ供給される新鮮空気量及びリサイクルされる浄化空気量を制御する排気リサイクル制御機構と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、排気リサイクルシステムを、排気リサイクルシステム制御装置を含んで構成した。また、排気リサイクルシステム制御装置を、浄化空気及び高温ガスが導入される静圧調整室と、所定ゾーンへ新鮮な空気を供給する新鮮空気供給機構と、静圧調整室内の高温ガス濃度を計測する高温ガス濃度センサと、高温ガス濃度センサにより計測された高温ガス濃度に基づいて、新鮮空気供給機構を駆動させて静圧調整室内の圧力を調整することにより、所定ゾーンへ供給される新鮮空気量及びリサイクルされる浄化空気量を制御する排気リサイクル制御機構と、を含んで構成した。
これにより、所定ゾーンから排出される排気中に含まれるVOCを燃焼浄化して生ずる浄化空気及び高温ガスをリサイクルすることが可能な排気リサイクルシステムにおいて、高温ガス濃度に応じて、リサイクルする浄化空気量及び高温ガス量を制御することが可能となる。ひいては、安全且つ安定的な排気リサイクルシステムのリサイクル運転が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、所定ゾーンから排出された排気中のVOCを効率的に燃焼除去するとともに、VOC除去後の浄化空気をリサイクルすることが可能な排気リサイクルシステムを提供できる。このため、VOC排出量の削減、及び省エネルギー化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の排気リサイクルシステムの好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明の排気リサイクルシステムを、自動車車体の塗装を行う塗装設備に適用したものである。
尚、本発明において、「塗布」とは、「塗装」、「印刷」、「コーティング」を含む。
また、「塗料類」とは、塗装に用いられる塗料及び印刷に用いられるインクを含む。
【0031】
[全体構成]
図1は、本発明の塗布設備としての塗装設備100の構成を示す図である。
塗装設備100は、被塗布物としての自動車の車体の塗装を行う設備であり、車体に対して塗装を施す塗布システムとしての塗装システム110と、この塗装システム110から排出された排気中に含まれるVOCを燃焼除去するVOC除去システム120と、このVOC除去システム120によって浄化された浄化空気及び燃焼の際に生ずる高温ガスを塗装システム110へと導いてリサイクルするための浄化空気リサイクル装置及び高温ガスリサイクル装置を備えるリサイクルシステム130と、を備える。
【0032】
塗装システム110は、車体の搬送方向に沿って配置された塗布ゾーンとしての複数の塗装ゾーン111と、これら複数の塗装ゾーン111に、空気を空調して供給する空気供給装置112と、空調された空気が流通する空気供給路113と、複数の塗装ゾーン111で塗装が施された被塗装物を乾燥する乾燥炉114と、を備える。本発明でいう所定ゾーンは、塗装ゾーン111に相当する。
【0033】
空気供給装置112は、後述するリサイクルシステム制御装置800により供給される新鮮空気及びリサイクルガスを空調する空調機(図示せず)と、空調された空気を送り出す給気ファン(図示せず)と、を備える。
【0034】
塗装ゾーン111の内部には、空気供給路113に臨み、供給された空気を拡散させて速度を下げ、圧力を高める静圧室111Aと、この静圧室111Aの下面を一旦塞ぎ、空気を下向きの流れにして下方へ吐出させる上部整流板111Bと、この上部整流板111Bの下方に位置する塗装室111Cと、この塗装室111C内に配置され、被塗装物を塗装する塗装ロボット111Dと、排気供給路115と、を備える。
【0035】
塗装ゾーン111では、被塗装物に対して、塗装ロボット111Dにより塗装が施される。
空気供給装置112では、後述するリサイクルシステム制御装置800により供給される新鮮空気及びリサイクルガスが混合されて空調機により空調され、給気ファンにより空気供給路113を通じて複数の塗装ゾーン111それぞれに供給される。
空気供給装置112から供給された空気は、排気ファン(図示せず)によって複数の塗装ゾーン111から排気供給路115に排出される。
【0036】
VOC除去システム120は、塗装システム110から排出された排気が通過するフィルタ装置400と、このフィルタ装置400の下流に設けられフィルタ装置400を通過した排気が通過する活性炭フィルタ装置500と、この活性炭フィルタ装置500の下流に設けられ活性炭フィルタ装置500を通過した排気中に含まれるVOCを吸着する吸着装置200と、この吸着装置200で吸着されたVOCを燃焼除去する燃焼装置としての蓄熱燃焼装置300と、を備える。
【0037】
フィルタ装置400は、塗装システム110から排出された排気の流路上に配置されており、複数の塗装ゾーン111及び乾燥炉114から排出された排気中に含まれる塗料ミストや塗装かす等を除去する。
【0038】
活性炭フィルタ装置500は、塗装システム110から排出された排気中に含まれるVOCの一部を吸着し、この吸着したVOCの一部を徐々に放出することにより、活性炭フィルタ装置500の下流側に設けられた吸着装置200に供給される排気中のVOC濃度を調整する。
具体的には、活性炭フィルタ装置500は、排気中に含まれるVOCの濃度が高い場合には、その一部を吸着する。また、活性炭フィルタ装置500に吸着されたVOCは、活性炭フィルタ装置500を通過する排気中に含まれるVOCの濃度が低い場合には、その一部を放出する。これにより、塗装ゾーン111で塗装が一時的に行われていないときであっても、後述する蓄熱燃焼装置300へのVOCの供給が途絶えることがない。
また、活性炭フィルタ装置500は、後述する吸着装置200で使用されるゼオライトのVOC吸着能を妨げる物質を除去する効果を有する。
【0039】
吸着装置200は、円筒状であり、VOC吸着剤としてのゼオライトを含んで構成される。活性炭フィルタ装置500を通過した排気は、この吸着装置200を通過することで、VOCが吸着されて除去される。吸着されたVOCは、この吸着装置200により濃縮される。
吸着装置200は、排気の流路に対して並列に2つ配置されており、同時に使用される他、例えばメインとサブのような使い分けが可能となっている。
【0040】
また、吸着装置200は、VOCを吸着する吸着部と、吸着したVOCを離脱させる離脱部と、吸着部と離脱部との切替えが可能な切替え機構と、を備える。このため、吸着装置200では、上述の活性炭フィルタ装置500を通過した排気が通過する吸着部にてVOCが吸着される。後述する蓄熱燃焼装置300で発生する高温ガスが、後述する浄化空気リサイクル装置が備える第1高温ガス供給路310を介して通過する離脱部にてVOCは離脱される。吸着装置200は、切替え機構としてのモータを備え、このモータにより排気の流通方向を軸として軸回りに回転可能となっており、この回転により吸着部と離脱部との切替えが行われる。
吸着装置200を通過して浄化された浄化空気は、リサイクルシステム130により塗装システム110へと導かれる。また、吸着装置200から離脱したVOCは、後述する浄化空気リサイクル装置が備えるVOC供給路320を通じて、後述する蓄熱燃焼装置300に供給される。
【0041】
蓄熱燃焼装置300は、吸着装置200で吸着されて濃縮されたVOCを燃焼除去する。上述の通り、蓄熱燃焼装置300には、吸着装置200に吸着されて濃縮されたVOCが、第1高温ガス供給路310を通じて供給される高温ガスによって離脱されて導入される。蓄熱燃焼装置300は、3塔式の蓄熱燃焼装置であり、大量のVOCが効率的に熱分解処理される。蓄熱燃焼装置300に供給されたVOCは、およそ800℃以上の高温で熱分解処理され、水と炭酸ガスとに変換される。
上述の通り、吸着装置200に吸着されたVOCの離脱には、VOCの燃焼除去の際に発生する高温ガス(廃熱)の一部が利用される。また、この高温ガスの一部は、後述するリサイクルシステム130により塗装システム110へと導かれる。
【0042】
リサイクルシステム130は、吸着装置に吸着されたVOCを離脱させて燃焼装置の燃焼燃料とするとともに、吸着装置を通過して浄化された浄化空気を所定ゾーンへ再び導く浄化空気リサイクル装置と、燃焼装置でVOCを燃焼除去する際に生じる高温ガスを所定ゾーンへ導いてリサイクルする高温ガスリサイクル装置と、を備える。
浄化空気リサイクル装置は、浄化空気を所定ゾーンに導いてリサイクルするための第1主ダクト735と、第1主ダクト735から分岐して浄化空気を大気に放出するための第1排気ダクト736と、第1主ダクト735と前記第1排気ダクト736との分岐部に設けられ、第1弁切換装置を備える第1ダンパ装置610と、を備えている。高温ガスリサイクル装置は、高温ガスを所定ゾーンに導いてリサイクルするための第2主ダクト723と、第2主ダクト723から分岐して高温ガスを大気に放出するための第2排気ダクト726と、第2主ダクト723と第2排気ダクト726との分岐部に設けられ、第2弁切換装置を備える第2ダンパ装置620と、を備えている。
これにより、何らかの異常事態の際に、浄化空気及び高温ガスを確実に大気放出することができる。例えば、蓄熱燃焼装置300の立上げ時等、蓄熱燃焼装置300内での熱分解処理温度が一定温度に達していない場合には、VOC除去システム120によるVOCの除去が十分に行われてはいないため、第1ダンパ装置610、第2ダンパ装置620を開いて浄化空気及び高温ガスを大気放出し、リサイクルは実行されない。
【0043】
また、リサイクルシステム130は、高温ガスリサイクル装置によりリサイクルされる高温ガスが流通する内管720と、この内管720を隙間をあけて包囲し、前記隙間に、浄化空気リサイクル装置によりリサイクルされる浄化空気が流通される外管730と、からなる二重管構造体710を備えている。
外管730は、内管720を包囲するように設けられており、これら外管730と内管720とにより、二重管構造体710が形成されている。内管720には、第2主ダクト723を介して高温ガスが流通する。外管730には、第1主ダクト735を介して浄化空気が流通する。外管730内を流通する浄化空気は、内管720内を流通する高温ガスにより暖められる。即ち、塗装システム110に浄化空気を供給する際に必要とされる所定の温度まで浄化空気を暖める手段として、蓄熱燃焼装置300で発生した高温ガス(廃熱)が有効利用され、省エネルギー化が達成される。
【0044】
また、蓄熱燃焼装置300で発生した高温ガスの一部は、供給管738を通じて、外管730の断熱に利用される。このため、特に冬季において、外管730内を流通する浄化空気の低温化が抑制される。
【0045】
また、リサイクルシステム130は、このリサイクルシステム130によりリサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量を制御するリサイクルシステム制御装置800を備える。このリサイクルシステム制御装置800により、高温ガス濃度に基づいて、塗装システム110にリサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量が制御され、ひいては塗装システム110に供給される新鮮空気量が制御される。
【0046】
以上の塗装設備100によれば、塗装システム110から排出された排気は、VOC除去システム120により塗料ミスト、塗料かす、VOCが除去された後に、リサイクルシステム130によって、再度塗装システム110へと導かれてリサイクルされる。よって、吸着装置200によりVOCが除去された排気をリサイクルできるとともに、この吸着装置200により吸着されて濃縮されたVOCを蓄熱燃焼装置300で効率的に燃焼除去できるため、VOCの放出を抑制でき、省エネルギー化を達成できる。
また、蓄熱燃焼装置300でVOCを燃焼除去する際に発生する高温ガス(廃熱)も高温ガスリサイクル装置としての内管720を通じて塗装システム110に導いてリサイクルできるため、省エネルギー効果をより向上できる。
また、VOCの除去に用いられる蓄熱燃焼装置300から発生する高温ガス(廃熱)が、リサイクルされる浄化空気の暖気に利用されるため、省エネルギー化が更に向上する。
なお、本実施形態の塗装設備100全体の動作は以上の通りであるが、その詳細については構成ごとに、以下に詳細に説明する。
【0047】
[フィルタ装置]
次に、フィルタ装置400について説明する。
図2は、フィルタ装置400の構成を示す図である。
フィルタ装置400は、上述したように、塗装システム110から排出された排気の流路上に配置されており、複数の塗装ゾーン111及び乾燥炉114から排出された排気中に含まれる塗料ミストや塗装かす等を除去する。
【0048】
フィルタ装置400は、排気導入部410と、排気導出部420と、これら排気導入部410及び排気導出部420それぞれを覆うように配置される無端状のフィルタ430と、フィルタ430を回転可能に支持する複数のローラ440と、フィルタ430を洗浄する第1洗浄部450及び第2洗浄部460と、これら第1洗浄部450及び第2洗浄部460で洗浄されたフィルタ430を乾燥するフィルタ乾燥部としての第1フィルタ乾燥部470及び第2フィルタ乾燥部480と、を備える。
【0049】
排気導入部410と排気導出部420とは、互いに対向して設けられている。
無端状のフィルタ430は、複数のローラ440に支持されて排気導入部410と排気導出部420との間に配置されている。フィルタ430は、排気導入部410を覆う位置及び排気導出部420を覆う位置において、排気の流路に対して略直角となるように配置されている。
複数のローラ440のうちの少なくとも1つのローラ440は、モータ(図示せず)に接続されている。そして、このモータを駆動することによりローラ440が回転して、ローラ440に支持されているフィルタ430は、所定方向(図2中a方向)に一定の速度で回転移動する。
【0050】
第1洗浄部450は、排気導入部410の下流側であって排気導出部420の上流側に設けられている。
第1洗浄部450は、帯電除去手段としての除電ブローバー451と、洗浄液噴霧手段としての活性水素水噴射装置452と、気体吹き付け手段としてのエアブロー装置453と、このエアブロー装置453により吹き付けられた気体を排出する排気口454と、第1洗浄部450においてフィルタ430を微振動させるフィルタ振動手段としての微振動発生装置455と、を備える。
【0051】
除電ブローバー451は、フィルタ430の外面側及び内面側に配置され、電荷を含む気体をフィルタ430の外面側及び内面側に吹き付ける。これにより、帯電したフィルタ430や塗料ミストや塗装かすの帯電は除去される。
活性水素水噴射装置452は、除電ブローバー451の下流側に配置される。活性水素水噴射装置452は、フィルタ430の外面側及び内面側に配置され、洗浄液としてのヒドロキシルイオンを含む活性水素水をフィルタ430に噴霧する。これにより、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすを、フィルタ430から容易に分離可能とする。
エアブロー装置453は、活性水素水噴射装置452の下流側に配置される。エアブロー装置453は、フィルタ430の内面側に配置され、フィルタ430の内面側から外面側に向けて空気を吹き付ける。これにより、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすをフィルタ430から除去する。
フィルタ430から除去された塗料ミストや塗装かすは、エアブロー装置453により吹き付けられた空気とともに排気口454から排出される。
【0052】
活性水素水噴射装置462とエアブロー装置463との間には、複数のローラ440のうちの1つのローラ440aが配置されている。
微振動発生装置455は、ローラ440aに取り付けられている。この微振動発生装置455を駆動することで、フィルタ430は第1洗浄部450において微振動する。
【0053】
第2洗浄部460は、排気導出部420の下流側であって排気導入部410の上流側に設けられている。
第2洗浄部460の構成は、エアブロー装置463の配置が異なる他は、第1洗浄部450と同様の構成である。具体的には、第2洗浄部460は、除電ブローバー461と、活性水素水噴射装置462と、エアブロー装置463と、排気口464(図示せず)と、微振動発生装置465と、を備える。
【0054】
第2洗浄部460では、エアブロー装置463は、フィルタ430の内面側及び外面側に配置されている。そして、フィルタ430の内面側に配置されたエアブロー装置463からは、フィルタ430の内面側から外面側に向けて空気が吹き付けられ、フィルタ430の外面側に配置されたエアブロー装置463からは、フィルタ430の外面側から内面側に向けて空気が吹き付けられる。
【0055】
第1フィルタ乾燥部470は、第1洗浄部450の下流側に、第1洗浄部450に隣接して設けられており、第2フィルタ乾燥部480は、第2洗浄部460の下流側に、第2洗浄部460に隣接して設けられている。
第1フィルタ乾燥部470及び第2フィルタ乾燥部480には、それぞれ、吸着装置200を通過して暖められ且つ低湿度となった浄化空気が、浄化空気供給路210を介して導入されて、第1洗浄部450で洗浄されたフィルタ430、及び第2洗浄部460で洗浄されたフィルタ430を乾燥する。
【0056】
以上のフィルタ装置400は、以下のように動作する。
先ず、モータ(図示せず)を駆動させると、複数のローラ440のうちモータに接続されたローラが回転し、複数のローラ440に支持されたフィルタ430は、所定方向に一定の速度で回転移動する。
この状態で、塗装システム110から排出された排気が排気導入部410から導入される。排気導入部410から導入された排気は、先ず、無端状のフィルタ430の排気導入部410を覆う部分をフィルタ430の外面側から内面側に向けて通過する。これにより、排気中に含まれる塗料ミストや塗装かすは、主としてフィルタ430の外面側に付着して捕集される。
【0057】
フィルタ430の排気導入部410を覆う部分を通過した排気は、次いで、無端状のフィルタ430の排気導出部420を覆う部分をフィルタ430の内面側から外面側に向けて通過する。これにより、フィルタ430の排気導入部410に位置する部分により捕集されなかった塗料ミストや塗装かすは、主としてフィルタ430の排気導出部420を覆う部分におけるフィルタ430の内面側に付着して捕集される。
【0058】
ここで、フィルタ430は、所定方向に一定の速度で回転移動しているので、フィルタ430の排気導入部410を覆っていた部分に付着した塗料ミストや塗装かすは、排気導入部410の下流側に設けられた第1洗浄部450で除去される。また、フィルタ430の排気導出部420を覆っていた部分に付着した塗料ミストや塗装かすは、排気導出部420の下流側に設けられた第2洗浄部460で除去される。
【0059】
図3(a)〜図3(c)は、それぞれ、第1洗浄部450及び第2洗浄部460での各洗浄手段を模式的に示した図である。尚、図3中Aは電荷を含む気体を、Bは塗料ミストや塗装かすを、Cは活性水素水を示す。
第1洗浄部450では、先ず、図3(a)に示すように、除電ブローバー451により、電荷を含む気体Aがフィルタ430の外面側及び内面側に吹き付けられる。これにより、帯電したフィルタ430や塗料ミストや塗装かすBの帯電が除去される。
【0060】
次いで、図3(b)に示すように、活性水素水噴射装置452により、ヒドロキシルイオンを含む活性水素水Cがフィルタ430に噴霧される。これにより、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすBは、フィルタ430から容易に分離可能となる。
【0061】
次いで、図3(c)に示すように、エアブロー装置453により、フィルタ430の内面側から外面側に向けて空気(図示せず)が吹き付けられる。これにより、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすBは、フィルタ430の外面側に分離されてフィルタ430から除去される。
フィルタ430から除去された塗料ミストや塗装かすBは、エアブロー装置453により吹き付けられた空気とともに排気口454から排出される。
【0062】
活性水素水噴射装置462とエアブロー装置463との間には、微振動発生装置455が配置されており、この微振動発生装置455を駆動することで、第1洗浄部450においてフィルタ430は微振動する。これにより、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすは、フィルタ430から剥離しやすくなる。
【0063】
第2洗浄部460においても、第1洗浄部450と同様の工程でフィルタ430から塗料ミストや塗装かすが除去される。
【0064】
第1洗浄部450により塗料ミストや塗装かすが除去されたフィルタ430は、第1フィルタ乾燥部470で乾燥される。この第1フィルタ乾燥部470には、吸着装置200を通過する際に暖められた浄化空気が導入される。
同様に、第2洗浄部460により塗料ミストや塗装かすが除去されたフィルタ430は、第2フィルタ乾燥部480で乾燥される。この第2フィルタ乾燥部480にも、吸着装置200を通過して暖められ且つ低湿度となった浄化空気が導入される。
【0065】
第1フィルタ乾燥部470で乾燥されたフィルタ430は、下流側に移動し、排気導出部420を覆う部分において、排気導入部410から導入された排気中に残存する塗料ミストや塗装かすを除去する。
第2フィルタ乾燥部480で乾燥されたフィルタ430は、下流側に移動し、排気導入部410を覆う部分において、塗装システム110から排出された排気中に含まれる塗料ミストや塗装かすを除去する。
【0066】
以上のフィルタ装置400によれば、以下の効果を奏する。
【0067】
無端状のフィルタ430を排気導入部410及び排気導出部420それぞれを覆うように配置するとともに、排気導入部410の下流側に第1洗浄部450を設け、排気導出部420の下流側に第2洗浄部460を設けた。これにより、排気導入部410から導入された排気は、先ず、無端状のフィルタ430の排気導入部410を覆う部分を通過した後、更に無端状のフィルタ430の排気導出部420を覆う部分を通過する。よって、塗装システム110から排出された排気に含まれる塗料ミストや塗装かすを効率的に除去できる。
【0068】
また、フィルタ430の排気導入部410を覆う部分で除去されてフィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすは、第1洗浄部450でフィルタ430から除去され、フィルタ430の排気導出部420を覆う部分で除去されてフィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすは、第2洗浄部460でフィルタ430から除去される。これにより、フィルタ430は、常に、塗料ミストや塗装かすが除去された状態で排気導入部410及び排気導出部420に位置するので、時間が経過してもフィルタ430に目詰まりを生じない。よって、フィルタ装置400のメンテナンスの頻度を低減できる。
【0069】
また、第1洗浄部450及び第2洗浄部460を、それぞれ、除電ブローバー451と、活性水素水噴射装置452と、エアブロー装置453と、を含んで構成した。よって、第1洗浄部450及び第2洗浄部460でのフィルタ430の洗浄効果が向上し、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすを効果的に除去できる。
【0070】
また、第1洗浄部450及び第2洗浄部460を、それぞれ、フィルタ430を微振動させる微振動発生装置455,465を含んで構成した。よって、第1洗浄部450及び第2洗浄部460において、フィルタ430に付着した塗料ミストや塗装かすは、フィルタ430から剥離しやすくなる。
【0071】
また、第1洗浄部450の下流側に第1フィルタ乾燥部470を設け、第2洗浄部460の下流側に第2フィルタ乾燥部480を設けた。これにより、第1洗浄部450及び第2洗浄部460で洗浄されたフィルタ430は、乾燥されて排気導入部410及び排気導出部420に配置される。よって、フィルタ装置400による塗料ミストや塗装かすの除去効果を安定化できる。
【0072】
また、第1フィルタ乾燥部470及び第2フィルタ乾燥部480それぞれに、吸着装置200を通過した浄化空気を導入した。これにより、吸着装置200を通過することにより暖められ且つ低湿度となった浄化空気を、フィルタ430の乾燥に用いるので、浄化空気を有効利用できる。
【0073】
なお、本実施形態の塗装設備100に用いられるフィルタ装置は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、洗浄液噴霧手段として活性水素水噴射装置452を用い洗浄液として活性水素水を用いたが、これに限らず、洗浄液として界面活性剤を使用してもよい。
【0074】
[活性炭フィルタ装置]
次に、活性炭フィルタ装置500について説明する。
図4は、活性炭フィルタ装置500の構成を示す平面図である。図5は、図4のX−X線断面図である。
活性炭フィルタ装置500は、上述したように、この活性炭フィルタ装置500の下流側に設けられた吸着装置200に供給される排気中のVOC濃度を調整する。
【0075】
活性炭フィルタ装置500は、フィルタ装置400の下流側に設けられており、フィルタ装置400を通過した排気の流路590に配置された2つのフィルタ装置本体510を備える。2つのフィルタ装置本体510は、流路590の上流側及び下流側に、互いに所定間隔をあけて配置されている。
フィルタ装置本体510は、筐体520と、この筐体520の内部に配置される複数の活性炭カートリッジ530と、この筐体520の内部に配置される複数の仕切り板540と、を備える。
【0076】
複数の活性炭カートリッジ530は、筐体520の内部に、それぞれ、高さ方向に所定間隔をあけて多段に積層配置されて収容される。より具体的には、複数の活性炭カートリッジ530は、それぞれ、略直方体形状を有しており、筐体520の幅方向に複数列配置されるとともに、筐体520の高さ方向にも複数段配置されている。
複数の仕切り板540は、高さ方向に隣り合う2つの活性炭カートリッジ530の間に形成される隙間にそれぞれ配置される。これら複数の仕切り板540は、排気の流れ方向に向けて下方に傾斜している。
ここで、排気の流れ方向とは、排気が筐体520を通過する場合の排気の通過方向を示す。
【0077】
筐体520は、第1本体部521と、一対の第2本体部522と、一対の第3本体部523と、を備える。
第1本体部521は、フィルタ装置400を通過した排気の流路590の幅方向中央部に、排気の導入方向(図4中a方向)に対して略垂直に配置されている。
一対の第2本体部522は、第1本体部521の幅方向の両端部から流路590の下流側に延び、且つ、この第1本体部521に略垂直に配置されている。
一対の第3本体部523は、一対の第2本体部522それぞれの先端部から外方に延び、且つ、一対の第2本体部522それぞれに略垂直に配置されている。
このように、流路590には、2つの筐体520(フィルタ装置本体510)が上流側に向けて凸字状に配置されている。
これにより、活性炭フィルタ装置500は、流路590の全域を覆っている。
【0078】
図6(a)は、活性炭カートリッジ530の平面図であり、図6(b)は、活性炭カートリッジ530の底面図である。図7は、底面部に調節機構531が設けられた活性炭カートリッジ530の底面図である。
活性炭カートリッジ530は、底面部及び側面部が網状部材から構成されるカートリッジ本体に活性炭が充填されて形成されている。
また、図7に示すように、複数の活性炭カートリッジ530のうちの所定の活性炭カートリッジ530の底面部には、この活性炭カートリッジ530を通過する排気の流通量を調節する調節機構531が設けられている。
【0079】
調節機構531は、略同形の2枚の板状部材532,533から構成されており、この2枚の板状部材532,533で活性炭カートリッジ530の底面部を覆っている。2枚の板状部材532,533のうちの一方の板状部材532は、他方の板状部材533側にスライド可能に構成されており、この一方の板状部材532をスライドされることにより活性炭カートリッジ530の底面部の開放される面積を調整可能となっている。
【0080】
複数の活性炭カートリッジ530は、筐体520に着脱自在に構成されている。具体的には、第1本体部521及び一対の第3本体部523に収容配置される複数の活性炭カートリッジ530は、上流側から筐体520に取り付け及び取り外しが可能に構成されている(図5の2点鎖線部分参照)。また、一対の第2本体部522に収容配置される複数の活性炭カートリッジ530は、外側(流路590の側壁側)から筐体520に取り付け及び取り外しが可能に構成されている。
【0081】
次に、活性炭フィルタ装置500における排気の流れについて説明する。
フィルタ装置400を通過した排気が活性炭フィルタ装置500に導入されると、排気導入部410から導入された排気は、先ず、上流側に配置されたフィルタ装置本体510に到達する。そして、筐体520の内部の高さ方向に隣り合う2つの活性炭カートリッジ530の間にそれぞれ形成された複数の隙間に進入する。これら複数の隙間には、それぞれ流れ方向に向けて下方に傾斜した仕切り板540が配置されているので、これらの隙間に進入した排気は、仕切り板540に導かれてこの仕切り板540の下方に配置された活性炭カートリッジ530の上面側から導入され、この活性炭カートリッジ530の底面側から排出される。
これにより、排気中に含まれるVOCのうちの一部は、活性炭カートリッジに吸着されて一時的に保持される。また、活性炭フィルタ装置500に導入される排気中に含まれるVOCの濃度が低い場合には、活性炭カートリッジ530に吸着されて保持されたVOCの一部は排気中に放出される。
また、これら複数の活性炭カートリッジ530により、吸着装置200で使用されるゼオライトのVOC吸着能を妨げる物質が除去される。
【0082】
複数の活性炭カートリッジ530のうち所定の活性炭カートリッジ530の底面部には、調節機構531が設けられている。
底面部に調節機構531が設けられている活性炭カートリッジ530では、2枚の板状部材532,533で底面部が覆われた状態では、排気は、この底面部が覆われた活性炭カートリッジ530を通過しないので、この活性炭カートリッジ530に吸着して保持されたVOCは、排気中には放出されない。
一方、2枚の板状部材532,533のうちの一方の板状部材532をスライドさせて、底面部の一部が開放された状態では、排気は、底面部の開放された部分を通過できるので、この活性炭カートリッジに吸着して保持されたVOCの一部は、放出される。
このように、底面部に調節機構531が設けられた活性炭カートリッジ530では、2枚の板状部材532,533を開閉させて底面部の開放された部分の面積を調整することで、この活性炭カートリッジ530に吸着されて保持されたVOCの放出量を調整できる。
【0083】
フィルタ装置本体510に到達した排気は、筐体520を構成する第1本体部521及び一対の第3本体部523からは、導入された排気の流れ方向(図4中a方向)に沿って進入して活性炭カートリッジ530を通過する。
一方、一対の第2本体部522からは、排気は、導入された排気の流れ方向に略直交する方向(図4中b方向)に向かって進入して活性炭カートリッジ530を通過する。
【0084】
上流側に配置されたフィルタ装置本体510を通過した排気は、次に、下流側に配置されたフィルタ装置本体510に到達する。下流側に配置されたフィルタ装置本体510においては、排気は、上流側に配置されたフィルタ装置本体510を通過する場合と同様の態様で、この下流側に配置されたフィルタ装置本体510を通過する。
【0085】
下流側に配置されたフィルタ装置本体510を通過した排気は、次に、吸着装置200に供給される。
【0086】
以上の活性炭フィルタ装置500によれば、以下の効果を奏する。
複数の活性炭カートリッジ530を高さ方向に所定間隔をあけて多段に積層配置し、隣り合う2つの活性炭カートリッジ530の間にそれぞれ仕切り板540を設けた。
これにより、フィルタ装置400から排出されて活性炭フィルタ装置500に導入された排気は、仕切り板540に導かれてこの仕切り板540の下方に配置された活性炭カートリッジ530の上面側から導入され、この活性炭カートリッジ530の底面側から排出される。よって、排気中に含まれるVOCのうちの一部は、活性炭カートリッジ530に吸着されて保持されるので、高濃度のVOCを含む排気が排出された場合でも、吸着装置200に供給される排気中に含まれるVOCの濃度を低減できる。
また、活性炭フィルタ装置500に導入される排気中に含まれるVOCの濃度が低い場合には、活性炭カートリッジ530に吸着されて一時的に保持されたVOCの一部が放出されて吸着装置200に供給される。よって、活性炭フィルタ装置500に導入される排気中に含まれるVOCの濃度が低い場合でも、吸着装置200に供給される排気中に含まれるVOCの濃度を所定の範囲に維持できる。
このように、吸着装置200に供給される排気中に含まれるVOCの濃度を安定化できる。
【0087】
また、活性炭フィルタ装置500を通過する排気と活性炭カートリッジ530との接触面積を広くできるので、活性炭カートリッジ530によるVOCの吸着効率を向上できる。
【0088】
また、仕切り板540を、排気の流れ方向に向けて下方に傾斜させた。これにより、排気は、仕切り板540に導かれて、この仕切り板540の下方に配置された活性炭カートリッジ530の上面から底面に向けて通過する。よって、空気よりも比重の大きいVOCを活性炭カートリッジ530に効果的に吸着して保持できる。
【0089】
また、筐体520を、第1本体部521と、第2本体部522と、第3本体部523とを含んで構成した。これにより、活性炭フィルタ装置500に導入された排気は、排気の流れ方向に対して略垂直に配置される第1本体部521及び第3本体部523から進入するとともに、第1本体部521及び第3本体部523に略垂直に配置される第2本体部522からも進入する。よって、活性炭フィルタ装置500に導入された排気が多方向から進入するので、排気が活性炭フィルタ装置500を通過する速度を低下でき、VOCの吸着効率を向上できる。
【0090】
また、フィルタ装置本体510を、排気の流れ方向に2つ配置した。これにより、活性炭フィルタ装置500によるVOCの保持容量を増加できるので、吸着装置200に供給する排気中に含まれるVOC濃度をより安定化できる。
【0091】
また、複数の活性炭カートリッジ530それぞれを筐体520に着脱自在に構成した。これにより、複数の活性炭カートリッジ530のうち交換を要する活性炭カートリッジ530のみを交換できるので、活性炭フィルタ装置500のメンテナンスを容易に行える。
【0092】
また、複数の活性炭カートリッジ530のうちの所定の活性炭カートリッジ530の底面部に、排気の流通量を調節する調節機構531を設けた。これにより、調節機構531を調整することで、活性炭カートリッジ530に吸着して保持されたVOCの放出量を調整できる。よって、吸着装置200に供給する排気中に含まれるVOCの濃度をより安定化できる。
【0093】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、流路590にフィルタ装置本体510を2つ配置したが、これに限らず、フィルタ装置本体510を1つのみ配置してもよく、また、3つ以上のフィルタ装置本体510を配置してもよい。
【0094】
また、本実施形態では、活性炭カートリッジ530を、筐体520の幅方向に複数列配置したが、これに限らない。すなわち、活性炭カートリッジの幅方向の長さを、筐体の幅方向の長さと略同一に構成して、この活性炭カートリッジを筐体の高さ方向に多段に積層配置してもよい。
【0095】
[ダンパ装置]
次に、ダンパ装置について説明する。なお、第1ダンパ装置610と第2ダンパ装置620とは、構成を同一としているので、第1ダンパ装置610を代表して説明する。
【0096】
図8を参照すると、第1ダンパ装置610は、開閉弁611、排気弁612、及び切換手段613を有している。開閉弁611は、第1主ダクト735の流路を開閉する。排気弁612は、第1排気ダクト736の流路を開閉する。切換手段613は、開閉弁611が第1主ダクト735の流路を閉じているときは排気弁612が第1排気ダクト736の流路を開き、開閉弁611が第1主ダクト735の流路を開いているときは排気弁612が第1排気ダクト736の流路を閉じる。
【0097】
図1を参照すると、切換手段613は、吸着装置200から排出される浄化空気のVOCの濃度が検出されて作動するとともに、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出されて作動する。なお、切換手段613は、吸着装置200から排出される浄化空気のVOCの濃度が検出されて作動するか、あるいは蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出されて作動するものであってもよい。
【0098】
図8を参照すると、開閉弁611は、第1梃子クランク611aを有している。第1梃子クランク611aの一端部を回動すると、開閉弁611を回動できる。又、排気弁612は、第2梃子クランク612aを有している。第2梃子クランク612aの一端部を回動すると排気弁612を回動できる。
【0099】
図8を参照すると、切換手段613は、回動軸614、回動手段615(図9及び図10参照)、揺動円板616、第1リンク棒617、及び第2リンク棒618を有している。回動軸614は、第1主ダクト735の浄化空気(又は第2主ダクト723の高温ガス)の流通方向と略直交する向きに、第1主ダクト735を横断している。回動手段615は、第1主ダクト735の外部に配置されており、回動軸614を回動させる(図9及び図10参照)。
【0100】
図8を参照すると、揺動円板616は、回動軸614と同軸に取り付けられている。又、揺動円板616は、中心から所定の角度に開角する円周上の2点に回転結合点C1・C2を設けている。
【0101】
図8を参照すると、第1リンク棒617は、一方の回転結合点C1に一端部が回転結合し、第1梃子クランク611aの一端部に他端部が回転結合している。第2リンク棒618は、他方の回転結合点C2に一端部が回転結合し、第2梃子クランク612aの一端部に他端部が回転結合している。
【0102】
図8を参照すると、第1ダンパ装置610は、第1梃子クランク611a、第1リンク棒617、及び揺動円板616が第1の梃子クランク機構K1を構成している。第1の梃子クランク機構K1は、最短リンクである第1梃子クランク611aと対偶をなすリンク(本発明の実施形態の場合、第1主ダクト735の隔壁が相当する)が固定リンクの場合に成り立っている。第1の梃子クランク機構K1は、揺動円板616を所定の角度に往復角運動をすると、第1リンク棒617に運動が伝達されて、第1梃子クランク611aを揺動できる。すなわち、開閉弁611を所定の角度に傾動できる。
【0103】
又、図8を参照すると、第1ダンパ装置610は、第2梃子クランク612a、第2リンク棒618、及び揺動円板616が第2の梃子クランク機構K2を構成している。第2の梃子クランク機構K2は、最短リンクである第2梃子クランク612aと対偶をなすリンク(本発明の実施形態の場合、第1主ダクト735の隔壁が相当する)が固定リンクの場合に成り立っている。第2の梃子クランク機構K2は、揺動円板616を所定の角度に往復角運動をすると、第2リンク棒618に運動が伝達されて、第2梃子クランク612aを揺動できる。すなわち、排気弁612を所定の角度に傾動できる。
【0104】
図8を参照すると、通常時は、第1梃子クランク611aが第1主ダクト735の浄化空気(又は、第2主ダクト723の高温ガス)の流通方向と略直交する向き配置され、開閉弁611が第1主ダクト735を開いている。一方、第2梃子クランク612aが第1排気ダクト736の浄化空気(又は、第2主ダクト723の高温ガス)の流通方向と平行する向き配置され、排気弁612が第1排気ダクト736を閉じている。
【0105】
そして、揺動円板616を一方の方向に所定の角度に回動すると、第1梃子クランク611aの一端部は第1リンク棒617に引きずられて、開閉弁611が第1主ダクト735を閉じることができる。一方、揺動円板616を一方の方向に所定の角度に回動すると、第2梃子クランク612aの一端部は第2リンク棒618に押されて、排気弁612が第1排気ダクト736を開くことができる。
【0106】
反対に、揺動円板616を他方の方向に所定の角度に回動すると、第1梃子クランク611aの一端部は第1リンク棒617に押されて、弁が第1主ダクト735を開くことができる。一方、揺動円板616を他方の方向に所定の角度に回動すると、第2梃子クランク612aの一端部は第2リンク棒618に引きずられて、排気弁612が第1排気ダクト736を閉じることができる。
【0107】
図8を参照すると、揺動円板616は、二つの回転結合点C1・C2を等間隔に設けている。第1リンク棒617及び第2リンク棒618は、それらの長さが固定されているので、例えば、第2リンク棒618の一端部を別の回転結合点C2に付け替えて、排気弁612の開口率を微調整できる。
【0108】
図9及び図10を参照すると、第1ダンパ装置610は、開閉弁611、排気弁612、及び揺動円板616を4つに分割配置している。第1ダンパ装置610は、第1の梃子クランク機構K1及び第2の梃子クランク機構K2を4つに分割配置しているということもできる。第1ダンパ装置610は、開閉弁611、排気弁612、及び揺動円板616を分割配置しているので、開閉弁611及び排気弁612の開口率を更に微調整できる。
【0109】
図9を参照すると、回動手段615は、出力軸が回動軸614の一端部と連結するサーボモータ615mからなっている。
【0110】
サーボモータ615mに油圧サーボモータを用いれば、リサイクルシステム130の確実性が保証されるメカニカルなダンパ装置を実現できる。サーボモータ615mで揺動円板616を角度制御することにより、常に一定量のガスを排気して、塗装ゾーン111のエアバランスの乱れを防止できる(図1参照)。
【0111】
図10を参照すると、回動手段615は、ピストンロッド615rのストロークを可変可能なポジショニングエアシリンダ615cからなっている。回動軸614の一端部は、回動軸614を回動させるクランク棒614cを有している。そして、進退するピストンロッド615rの先端部がクランク棒614cの先端部と連結している。
【0112】
図10において、第1ダンパ装置610は、ピストンロッド615rのストロークが揺動円板616の回動角度に変換される。揺動円板616を駆動するアクチュエータとしてエアシリンダを用いることにより、メカニカルなダンパ装置を実現できる。ポジショニングエアシリンダは、ピストンロッドのストロークを細分化できるという利点がある。
【0113】
次に、ダンパ装置の動作、効果について説明する。
【0114】
図1及び図8を参照すると、通常、塗装設備100が稼働中は、開閉弁611が第1主ダクト735及び第2主ダクト723の流路を開いており、排気弁612が第1排気ダクト736、第2排気ダクト726の流路を閉じているので、第1主ダクト735及び第2主ダクト723は、浄化空気及び高温ガスが複数の塗装ゾーン111、111に帰還する閉回路を構成している。
【0115】
図1及び図8を参照すると、吸着装置200から排出される浄化空気のVOCの濃度が検出器S1で検出されて、所定値以上になると切換手段613が作動して、開閉弁611が第1主ダクト735の流路を閉じ、排気弁612が第1排気ダクト736の流路を開いて正常値に復帰できる。なお、検出器S1は、図示された場所に限定されない、インターロック機能が作用する適正な場所に配置されることが好ましい。
【0116】
又、図1及び図8を参照すると、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出器S2で検出されて、所定値以上になると切換手段613が作動して、開閉弁611が第2主ダクト723の流路を閉じ、排気弁612が第2排気ダクト726の流路を開いて正常値に復帰できる。なお、検出器S2は、図示された場所に限定されない、インターロック機能が作用する適正な場所に配置されることが好ましい。
【0117】
本発明の実施形態によるダンパ装置は、一方のダンパが一方のダクトを閉じているときは、他方のダンパが他方のダクトを開いており、一方のダンパが一方のダクトを開いているときは、他方のダンパが他方のダクトを閉じている、可逆的な動作が許可される機械的なインターロック機能を有しており、リサイクルシステム130の確実性が保証される。
【0118】
図1を参照すると、本発明の実施形態による第1ダンパ装置610は、図示しない空調機を介して複数の塗装ゾーン111、111に吸着装置200の浄化空気を帰還させるに当たり、浄化空気中のVOCの濃度を検出して、不適当な検出値の場合には、この浄化空気を大気に放出し、適切な検出値の場合には、この浄化空気を空調機に送出する。従って、常に一定レベルのクリーンエアーをリサイクルできる。又、一定の風量を排気するように切換手段613を制御することにより、塗装ゾーン111のエアバランスを一定の範囲に収めることができる。
【0119】
又、図1を参照すると、本発明の実施形態による第2ダンパ装置620は、蓄熱燃焼装置300が発生する高温ガスを複数の塗装ゾーン111、111に帰還させるに当たり、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出されて切換手段613が作動する。例えば、蓄熱燃焼装置300が立ち上がり時は、高温ガスが所定の温度に到達していないので、この高温ガスを大気に自動放出する。一方、高温ガスが所定の温度に到達した時点から、この高温ガスを複数の塗装ゾーン111、111に帰還させてリサイクルする。
【0120】
このように、本発明の実施形態による第2ダンパ装置620は、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスを所定の温度で熱回収(サーマルリサイクル)できる。
【0121】
図8から図10を参照すると、本発明の実施形態によるダンパ装置は、一方のダンパが一方のダクトを閉じているときは、他方のダンパが他方のダクトを開いており、一方のダンパが一方のダクトを開いているときは、他方のダンパが他方のダクトを閉じている、可逆的な動作が許可される機械的なインターロック機能を有しており、リサイクルシステム130の確実性が保証されるメカニカルなダンパ装置を実現している。電気的に制御されるダンパ装置と比較して、メカニカルなダンパ装置は、一般に、誤動作が少ないとされている。
【0122】
なお、本発明の塗装設備に用いられるダンパ装置は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0123】
[リサイクルシステム]
次に、リサイクルシステム130について説明する。
リサイクルシステム130は、吸着装置200を通過した浄化空気、及び蓄熱燃焼装置300によりVOCを燃焼し除去する際に生じる高温ガスを塗装システム110へと導いてリサイクルする。
【0124】
ここで、本発明に係るリサイクルシステム130は、高温ガスリサイクル装置によりリサイクルされる高温ガスが流通する内管720と、この内管720を隙間をあけて包囲し、前記隙間に、浄化空気リサイクル装置によりリサイクルされる浄化空気が流通される外管730と、からなる二重管構造体710を備えている。
外管730は、内管720を包囲するように設けられており、これら外管730と内管720とにより、二重管構造体710が形成されている。内管720には、第2主ダクト723を介して高温ガスが流通する。外管730には、第1主ダクト735を介して浄化空気が流通する。
【0125】
内管720は蓄熱燃焼装置300に連通され、この蓄熱燃焼装置300からの高温ガスが内管720の内部729を流通する。一方、外管730は、吸着装置200に連通する第1主ダクト735が延長したものであり、第1主ダクト735を通ってきた浄化空気が隙間728を流通する。このようにして、高温ガスは浄化空気を介して外気から隔離されるため、外気による高温ガスの急冷(つまり、熱エネルギーの大損失)が抑制されるとともに、高温ガスから熱エネルギーが奪われた分、浄化空気が昇温される。なお、二重管構造体710を備えている限りにおいて、更なる管状体を備えた構成が除外されるものではない。例えば、内管720と外管730との間、又は外管730の外側に、第3の管が配置されていてもよい。
【0126】
二重管構造体710の設置範囲は、特に限定されず、吸着装置200及び蓄熱燃焼装置300の位置関係に応じて適宜設定されてよい。本実施形態における二重管構造体710は、後述のリサイクルシステム制御装置800の直前まで設けられていて、これにより、高温ガス及び浄化空気の低温化が最大限に抑制される。また、第2主ダクト723の長さを短くして高温ガスの低温化を抑制できるよう、二重管構造体710は蓄熱燃焼装置300の近傍から下流側へと設けられている。
【0127】
図11は図1の二重管構造体710の全体斜視図であり、図12は図11の平面図である。本実施形態では、図11に示されるように、内管720の内部729が、外管730を貫通する連通管としての第2主ダクト723を介して蓄熱燃焼装置300に連通され、第2主ダクト723を通った高温ガスが内部729へと供給される。そして、図1に示されるように、第2主ダクト723は蓄熱燃焼装置300の比較的近傍にて外管730を貫通するよう配置されているため、第2主ダクト723を流通する間における高温ガスの外気による冷却が最小限に抑えられる。なお、内管720を蓄熱燃焼装置300に連通させる構造は、これに限られず、例えば内管が外管の基端まで延長され、更に外管の基端から蓄熱燃焼装置300へと延出された構造であってもよい。
【0128】
本実施形態の内管720の基端721には、浄化空気の反流れ方向(外管730の上流側)に向かって縮径するテーパ部722が設けられている。これにより、上流側から流れてきた浄化空気の基端721への衝突が緩和され、浄化空気の流通が円滑化される。なお、テーパ部722は内管720と一体であってもよいし、別体でもよく、また、テーパ部722の内部が内管720の内部729に連通していてもよいし、連通していなくともよい。
【0129】
また、本実施形態では基端721にテーパ部722を設けたが、第2主ダクト723のうち外管730内に侵入している部分に、浄化空気の反流れ方向に向かって縮径するテーパ部を設けてもよい。これによっても、浄化空気の流通が円滑化される。なお、本実施形態のテーパ部722は四角錐形状であるが、浄化空気の反流れ方向に向かって縮径する限り、任意の形状であってよい。また、二重管構造体710の設置位置において外管730の内径を増加する設計変更を行うことで、浄化空気が流通可能なスペースを充分に確保し、浄化空気の流通を円滑化してもよい。
【0130】
本実施形態では、第1主ダクト735の途中、具体的にはテーパ部722よりも上流側に第1ダンパ装置610が設けられており、この第1ダンパ装置610の開閉に応じて、吸着装置200からの浄化空気は外管730内を流通するか、第1排気ダクト736から外気へ放出される。同様に、第2主ダクト723の途中に第2ダンパ装置620が設けられており、この第2ダンパ装置620の開閉に応じて、蓄熱燃焼装置300からの気体は内部729に供給されるか、第2排気ダクト726から外気へ放出される。これにより、高温ガス及び浄化空気に何らかの異常が生じた場合、外気に放出することで事故発生を予防できる。例えば、蓄熱燃焼装置300の立上げ時等、蓄熱燃焼装置300内での熱分解処理温度が一定温度に達していない場合には、VOC除去システム120によるVOCの除去が十分に行われてはいないため、第1ダンパ装置610、第2ダンパ装置620を開いて浄化空気及び高温ガスを大気放出し、リサイクルを実行しない。
【0131】
図13は図12のY−Y線断面図である。図13に示されるように、本実施形態の外管730は、内側に配置された(本実施形態では第1主ダクト735の周囲に設けられている)管状の第1断熱部材731と、外側に配置された管状の第2断熱部材733と、第1断熱部材731及び第2断熱部材733の間に介在し外管730の軸方向(図13における上下方向)に沿って延びる空所734と、を有する。この空所734は供給手段としての供給管738を介して蓄熱燃焼装置300に連通され、供給管738が蓄熱燃焼装置300からの高温ガスを空所734に供給する。これにより、728を流通する浄化空気が外気から隔離される結果、外気による浄化空気の冷却が抑制される。また、空所734を流れる高温ガスは第1断熱部材731及び第2断熱部材733に挟まれているため、浄化空気の低温化、それに伴う内部729の高温ガスの低温化を効率的に抑制できる。なお、空所734を流れる高温ガスは、やがて空所734の終端739から外気へと放出される。
【0132】
空所734に供給される高温ガスの冷却を抑制できるよう、供給管738の長さを短くし、蓄熱燃焼装置300の近傍から下流側へと設けられている。結果的に本実施形態では、供給管738が上流側の空所734に設けられているため、空所734を流通する高温ガスが浄化空気と同じ方向に流通するが、これに限られるものではない。また、本実施形態では空所734は第1断熱部材731の周囲全体に形成されているが、これに限られず、周囲の一部のみに形成されていてもよい。
【0133】
本実施形態では、第2断熱部材733の外周に第3断熱部材737が設けられており、空所734を流れる高温ガスの低温化が更に抑制されている。なお、本実施形態の第1断熱部材731及び第2断熱部材733はアルミ断熱シートで構成され、第1主ダクト735はアルタイト鋼板で構成され、第3断熱部材737はロックウールで構成されているが、これに限られるものではない。
【0134】
このようにして728を流通した浄化空気、及び内部729を流通した高温ガスは、リサイクルシステム制御装置800へと導入される。そして、これらのガスは、エアーダンパ装置810から導入される新鮮空気と混合され、必要に応じてガスバーナ840で所望の温度にまで暖められた後、塗装システム110へと導かれ、リサイクルされることになる。
【0135】
ここでリサイクルシステム制御装置800は、リサイクルシステム130によりリサイクルされるリサイクルガス(浄化空気及び高温ガス)量を制御し、具体的には、高温ガス濃度センサとしてのCOセンサ820で検出される高温ガス濃度に基づいて、エアーダンパ装置810の開度を調節し、リサイクルシステム制御装置800の内圧を変動させることで塗装システム110に供給される新鮮空気量、浄化空気量及び高温ガス量を制御する。これにより、リサイクルガス(浄化空気及び高温ガス)中の高温ガス濃度に応じてリサイクルガス(浄化空気及び高温ガス)量を制御できるため、ひいては、安全且つ安定的な塗装設備100のリサイクル運転が可能になる。
【0136】
以上のリサイクルシステム130によれば、以下の効果を奏する。
高温ガスは内管720の内部729を流通される一方、浄化空気は内管720と外管730との隙間728に流通される。これにより、高温ガスは浄化空気を介して外気から隔離されるため、外気による高温ガスの急冷(つまり、熱エネルギの大損失)が抑制されるとともに、高温ガスから熱エネルギが奪われた分、浄化空気が昇温されることになる。よって、浄化空気及び高温ガスを効率的にリサイクルできる。
【0137】
外管730を貫通する第2主ダクト723を介して内管720を蓄熱燃焼装置300に連通させたので、蓄熱燃焼装置300と吸着装置200との位置関係にかかわらず、第2主ダクト723を比較的短く設計できる。これにより、高温ガスの低温化が抑制され、浄化空気及び高温ガスをより効率的にリサイクルできる。
【0138】
内管720の基端721にテーパ部722を設けたので、上流側から流れてきた浄化空気の基端721への衝突が緩和される。これにより、特段の設計変更を行わずに浄化空気の流通が円滑化されるため、浄化空気のリサイクルをより効率化できる。
【0139】
外管730の軸方向、つまり浄化空気の流れ方向に沿って延びる空所734に高温ガスが供給されるため、浄化空気が外気から隔離される結果、外気による浄化空気の冷却が抑制される。また、空所734は第1断熱部材731及び第2断熱部材733の間に介在するよう形成されているため、空所734を流れる高温ガスの低温化が抑制される。これにより、浄化空気の低温化、それに伴う内部729の高温ガスの低温化がより抑制されるため、浄化空気及び高温ガスのリサイクルをより効率化できる。
【0140】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0141】
[リサイクルシステム制御装置]
次に、リサイクルシステム制御装置800について説明する。
図14は、リサイクルシステム制御装置800の構成を示す図である。
リサイクルシステム制御装置800は、上述したように、リサイクルシステム130によりリサイクルされるリサイクルガス(浄化空気及び高温ガス)量を制御する。
【0142】
リサイクルシステム制御装置800は、上述のリサイクルシステム130によりリサイクルされる浄化空気を導入する導入口860を有する静圧調整室850と、塗装システム110へ新鮮な空気を供給する新鮮空気供給機構としてのエアーダンパ装置810と、静圧調整室850内の高温ガス濃度を計測する高温ガス濃度センサとしてのCOセンサ820と、このCOセンサ820により計測された高温ガス濃度に基づいて新鮮空気供給機構を駆動させて静圧調整室850内の圧力を調整することにより、塗装システム110へ供給される新鮮空気量、リサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量を制御するリサイクル制御機構としてのECU830(図示せず)と、を備える。
【0143】
エアーダンパ装置810は、モータ812と、このモータ812により開度の調整が可能な複数の多翼ダンパ811と、を備える。ECU830からの制御信号により、多翼ダンパ811の開度が調整される。
ECU830はCOセンサ820と接続されており、COセンサ820の検出信号はECU830に供給される。ECU830は、COセンサ820からの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下、CPUという)とを備える。この他、ECU830は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、エアーダンパ装置810に制御信号を出力する出力回路と、を備える。
【0144】
また、静圧調整室850内には、導入された新鮮空気と浄化空気とを暖気するガスバーナ840と、隔壁フィルタ871、872と、空気を塗装システム110に導くための給気ファン880、及び給気路891、892を備える。
【0145】
以上のリサイクルシステム制御装置800の動作について説明する。
先ず、上述のリサイクルシステム130により、浄化空気が導入口860から静圧調整室850内に導入される。静圧調整室850内の高温ガス濃度は、COセンサ820により検出され、その検出信号はECU830に供給される。次いで、ECU830からエアーダンパ装置810に制御信号が出力され、検出された高温ガス濃度に基づいて、多翼ダンパ811の開度が調整される。
【0146】
多翼ダンパ811が全開されると、静圧調整室850内に新鮮空気が大量に導入されて静圧調整室850内の負圧が低くなるため、リサイクルシステム130によりリサイクルされる浄化空気量は大幅に減少する。逆に、多翼ダンパ811が全閉されると、静圧調整室850内の負圧が高くなるため、100%リサイクル状態となる。
このため、COセンサ820により検出された高温ガス濃度が設定値を超えたときには、多翼ダンパ811の開度を大きくして新鮮空気の導入量を増加させることにより、静圧調整室850内の負圧を低くして、リサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量を減少させることができる。一方、COセンサ820により検出された高温ガス濃度が設定値未満であったときには、多翼ダンパ811の開度を小さくして新鮮空気の導入量を減少させることにより、静圧調整室850内の負圧を大きくして、リサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量を増加させることができる。
【0147】
エアーダンパ装置810から導入された新鮮空気と、導入口860から導入された浄化空気は、静圧調整室850内で混合され、ガスバーナ840により暖められる。ガスバーナ840により暖められた空気は、隔壁フィルタ871、872を通過した後、給気ファン880により、給気路891、892を通じて塗装システム110へと導かれる。
【0148】
以上のリサイクルシステム制御装置800によれば、以下のような効果が奏される。
塗装により生ずる排気(VOC)を浄化してリサイクルすることが可能な塗装設備100のリサイクルシステム制御装置800を、リサイクルシステム130によりリサイクルされる浄化空気を導入する導入口860を有する静圧調整室850と、塗装システム110へ新鮮な空気を供給する新鮮空気供給機構と、静圧調整室850内の高温ガス濃度を計測する高温ガス濃度センサとしてのCOセンサ820と、COセンサ820により計測された高温ガス濃度に基づいて新鮮空気供給機構を駆動させて静圧調整室850内の圧力を調整することにより、塗装システム110へ供給される新鮮空気量、リサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量を制御するリサイクル制御機構と、で構成した。
これにより、塗装により生ずる排気(VOC)を浄化してリサイクルすることが可能な塗装設備100において、静圧調整室850内の高温ガス濃度に応じてリサイクルガス(浄化空気及び高温ガス)量を制御することが可能となった。ひいては、安全且つ安定的な塗装設備100のリサイクル運転が可能となった。
【0149】
また、新鮮空気供給機構を、開度の調整が可能なエアーダンパ装置810で構成した。これにより、COセンサにより計測された高温ガス濃度に基づいて、エアーダンパ装置810の開度が調整され、塗装システム110へ供給される新鮮空気量及びリサイクルされる浄化空気量及び高温ガス量を、容易且つ確実に制御することが可能となった。
【0150】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、本実施形態では、新鮮空気供給機構に相当するエアーダンパ装置810として、多翼ダンパ811を用いたが、回転式のダンパ等を用いてもよい。
また、本実施形態では、本発明を、自動車の車体に塗装を施す塗装設備100に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、冷蔵庫や洗濯機等の家電に塗装を施す塗装設備に適用してもよく、また、紙等の媒体にインクを転写する印刷設備に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の塗装設備の構成を示す図である。
【図2】フィルタ装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は、それぞれ、第1洗浄部及び第2洗浄部での各洗浄手段を模式的に示した図である。
【図4】活性炭フィルタ装置の構成を示す平面図である。
【図5】図4のX−X線断面図である。
【図6】図6(a)は、活性炭カートリッジの平面図であり、図6(b)は、底面図である。
【図7】底面部に調節機構が設けられた活性炭カートリッジの底面図である。
【図8】ダンパ装置の正面図である。
【図9】ダンパ装置の斜視図であり、ダンパ装置の駆動にサーボモータを用いている態様を示す図である。
【図10】ダンパ装置の斜視図であり、ダンパ装置の駆動にエアシリンダを用いている態様を示す図である。
【図11】二重管構造体の全体斜視図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】図12のY−Y線断面図である。
【図14】リサイクルシステム制御装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0152】
110 塗装システム
120 VOC除去システム
130 リサイクルシステム
200 吸着装置
300 蓄熱燃焼装置
400 フィルタ装置
410 排気導入部
420 排気導出部
430 フィルタ
440 ローラ
450 第1洗浄部
460 第2洗浄部
500 活性炭フィルタ装置
510 フィルタ装置本体
520 筐体
530 活性炭カートリッジ
540 仕切り板
590 流路
610 第1ダンパ装置
620 第2ダンパ装置
611 開閉弁
612 排気弁
613 切換手段
723 第2主ダクト
735 第1主ダクト
720 内管
726 第2排気ダクト
736 第1排気ダクト
730 外管
800 リサイクルシステム制御装置
820 COセンサ
850 静圧調整室
860 導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含む排気を排出する所定ゾーンと、
前記所定ゾーンから排出された排気中の揮発性有機化合物を吸着する吸着装置と、
前記吸着装置に吸着された揮発性有機化合物を、前記吸着装置から離脱させて燃焼装置の燃焼燃料とするとともに、前記吸着装置を通過して浄化された浄化空気を前記所定ゾーンへ再び導く浄化空気リサイクル装置と、を備えることを特徴とする排気リサイクルシステム。
【請求項2】
前記吸着装置は、揮発性有機化合物を吸着する吸着部と、吸着した揮発性有機化合物を離脱させる離脱部と、前記吸着部と前記離脱部との切替えが可能な切替え機構と、を備え、
前記浄化空気リサイクル装置は、前記燃焼装置で揮発性有機化合物を燃焼除去する際に生じる高温ガスを前記離脱部に供給することにより、前記吸着装置に吸着された揮発性有機化合物を離脱させることを特徴とする請求項1記載の排気リサイクルシステム。
【請求項3】
前記排気リサイクルシステムは、前記燃焼装置で揮発性有機化合物を燃焼除去する際に生じる高温ガスを、前記所定ゾーンへ導いてリサイクルする高温ガスリサイクル装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の排気リサイクルシステム。
【請求項4】
前記浄化空気リサイクル装置は、
前記浄化空気を前記所定ゾーンに導いてリサイクルするための第1主ダクトと、
前記第1主ダクトから分岐して前記浄化空気を大気に放出するための第1排気ダクトと、
前記第1主ダクトと前記第1排気ダクトとの分岐部に設けられ、第1弁切換装置を備える第1ダンパ装置と、を備えることを特徴とする請求項3記載の排気リサイクルシステム。
【請求項5】
前記第1弁切換装置は、前記第1主ダクトの流路を開閉する開閉弁と、前記第1排気ダクトの流路を開閉する排気弁と、前記開閉弁が前記第1主ダクトの流路を閉じているときは前記排気弁が前記第1排気ダクトの流路を開き、前記開閉弁が前記第1主ダクトの流路を開いているときは前記排気弁が前記第1排気ダクトの流路を閉じる切換手段と、を備え、
前記切換手段は、前記浄化空気中の揮発性有機化合物の濃度が検出されて作動するとともに、前記燃焼装置から排出される前記高温ガスの温度が検出されて作動することを特徴とする請求項4記載の排気リサイクルシステム。
【請求項6】
前記高温ガスリサイクル装置は、
前記高温ガスを前記所定ゾーンに導いてリサイクルするための第2主ダクトと、
前記第2主ダクトから分岐して前記高温ガスを大気に放出するための第2排気ダクトと、
前記第2主ダクトと前記第2排気ダクトとの分岐部に設けられ、第2弁切換装置を備える第2ダンパ装置と、を備えることを特徴とする請求項3から5いずれか記載の排気リサイクルシステム。
【請求項7】
前記第2弁切換装置は、前記第2主ダクトの流路を開閉する開閉弁と、前記第2排気ダクトの流路を開閉する排気弁と、前記開閉弁が前記第2主ダクトの流路を閉じているときは前記排気弁が前記第2排気ダクトの流路を開き、前記開閉弁が前記第2主ダクトの流路を開いているときは前記排気弁が前記第2排気ダクトの流路を閉じる切換手段と、を備え、
前記切換手段は、前記浄化空気中の揮発性有機化合物の濃度が検出されて作動するとともに、前記燃焼装置から排出される前記高温ガスの温度が検出されて作動することを特徴とする請求項6記載の排気リサイクルシステム。
【請求項8】
前記排気リサイクルシステムは、前記高温ガスリサイクル装置によりリサイクルされる高温ガスが流通する内管と、この内管を隙間をあけて包囲し、前記隙間に、前記浄化空気リサイクル装置によりリサイクルされる浄化空気が流通される外管と、からなる二重管構造体を備えることを特徴とする請求項3から7いずれか記載の排気リサイクルシステム。
【請求項9】
前記排気リサイクルシステムは排気リサイクルシステム制御装置を備え、
前記排気リサイクルシステム制御装置は、
前記浄化空気及び前記高温ガスが導入される静圧調整室と、
前記静圧調整室に設けられ、前記所定ゾーンへ新鮮な空気を供給する新鮮空気供給機構と、
前記静圧調整室に設けられ、前記静圧調整室内の高温ガス濃度を計測する高温ガス濃度センサと、
前記高温ガス濃度センサにより計測された高温ガス濃度に基づいて、前記新鮮空気供給機構を駆動させて前記静圧調整室内の圧力を調整することにより、前記所定ゾーンへ供給される新鮮空気量及びリサイクルされる浄化空気量を制御する排気リサイクル制御機構と、を備えることを特徴とする請求項3から8いずれか記載の排気リサイクルシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−51932(P2010−51932A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222772(P2008−222772)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】