説明

排気弁及びそれを有する減圧収納袋

【課題】袋内の空気を排気する一方向弁として機能し、軽量で厚さ寸法が微小であり、構成が簡素化で、コストが低く、耐久性が高く、信頼性が高くなるようにする。
【解決手段】基体21は、第1排気孔22が厚さ方向に貫通するように形成されたプレート状の部材であり、第1排気孔22が減圧収納袋10の袋本体11に形成された第3排気孔17と重なるように袋本体11の表面に固着され、ダイヤフラム25は、第2排気孔26が厚さ方向に貫通するように形成されたフィルム状の部材であり、第2排気孔26が第1排気孔22と重ならないように基体21の表面に剥離可能に貼付され、ダイヤフラム25の表面が吸引されると、第2排気孔26と第1排気孔22とが連通し、表面が吸引されないと第2排気孔26と第1排気孔22との間が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気弁及びそれを有する減圧収納袋に関するものであり、特に、家庭において衣類、寝具等を内部に収納した状態で減圧することによって嵩(かさ)を小さくして保管する用途に適した排気弁及びそれを有する減圧収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭内の衣装ケース、箪笥(たんす)、押入、クローゼット等の収納スペースを有効利用するために、セーター等の厚手の衣類や布団等の寝具などの収納物を密封式の収納袋内に収納した後、電気掃除機等の吸引装置によって収納袋内の空気を吸引排気することにより、収納物を圧縮減容して嵩を小さくした状態で保管する減圧収納袋が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような減圧収納袋を使用することによって、衣類や寝具などの収納物を1/3程度に圧縮減容して保管することができるので、家庭内の収納スペースを極めて有効に利用することができる。また、減圧収納袋の内部が減圧状態又は真空状態に維持されるので、防カビ、防虫等の効果も期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の減圧収納袋は、袋の本体に厚みのある逆止弁が装着されているので、減圧収納袋自体を複数重ねると嵩張ってしまい、コンパクトに収納することが困難である。前記逆止弁は、袋の本体を構成するフィルムに取り付けられた弁ケースと、該弁ケースに対してフィルムの厚さ方向に移動可能な弁体とを有し、該弁体の移動によって袋内部と外気との連通状態及び遮断状態を切り替えるものである。したがって、薄いフィルムから成る袋の本体の厚さに比較して、前記逆止弁の厚さはかなり厚いので、特に、複数の減圧収納袋を重ねた場合には、前記逆止弁の装着部分だけが大きく盛り上がってしまい、使用しない減圧収納袋を狭いスペースに収納することができなくなってしまう。
【0006】
もっとも、減圧収納袋を重ねる際に、逆止弁の装着部分が重なり合わないように、隣接する減圧収納袋同士の向きを変化させることも考えられる。しかし、この場合、重ねた中から一つの減圧収納袋を引き出そうとすると、当該減圧収納袋の本体から突出している逆止弁が隣接する減圧収納袋の本体を擦って損傷を与えてしまうことがある。また、隣接する減圧収納袋の逆止弁に引っ掛かり、引き出すことができなくなったり、逆止弁が損傷を受けたりすることがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、第1排気孔(こう)を備え、袋本体の表面に固着されるプレート状の基体の表面に、第2排気孔を備えるフィルム状のダイヤフラムを剥(はく)離可能に貼(てん)付することにより、袋内の空気を排気する一方向弁として機能し、軽量で厚さ寸法が微小であり、構成が簡素化で、コストが低く、耐久性が高く、信頼性の高い排気弁及び該排気弁を有する減圧収納袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の排気弁においては、第1排気孔を備える基体と、第2排気孔を備えるダイヤフラムとを有し、減圧収納袋に取り付けられ、該減圧収納袋内の空気を排出し、前記減圧収納袋内への空気の流入を阻止する一方向弁として機能する排気弁であって、前記基体は、前記第1排気孔が厚さ方向に貫通するように形成されたプレート状の部材であり、前記第1排気孔が前記減圧収納袋の袋本体に形成された第3排気孔と重なるように前記袋本体の表面に固着され、前記ダイヤフラムは、前記第2排気孔が厚さ方向に貫通するように形成されたフィルム状の部材であり、前記第2排気孔が前記第1排気孔と重ならないように前記基体の表面に剥離可能に貼付され、前記ダイヤフラムの表面が吸引されると、前記第2排気孔と前記第1排気孔とが連通し、前記表面が吸引されないと前記第2排気孔と前記第1排気孔との間が遮断される。
【0009】
本発明の他の排気弁においては、さらに、前記ダイヤフラムの裏面は、微粘着性を備え、かつ、再貼付性及び再剥離性を備える。
【0010】
本発明の更に他の排気弁においては、さらに、前記第2排気孔は、複数であり、前記第1排気孔の周辺に均等に配置される。
【0011】
本発明の減圧収納袋においては、本発明の排気弁を有する減圧収納袋であって、第3排気孔が厚さ方向に貫通するように形成された樹脂フィルムから成る袋本体を有し、前記排気弁は、前記袋本体の表面における第3排気孔に対応する位置に取り付けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1排気孔を備え、袋本体の表面に固着されるプレート状の基体の表面に、第2排気孔を備えるフィルム状のダイヤフラムを剥離可能に貼付する。これにより、袋内の空気を排気する一方向弁として機能し、軽量で厚さ寸法が微小であり、構成が簡素化で、コストが低く、耐久性が高く、信頼性の高い排気弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における排気弁及び減圧収納袋の構造を示す断面図であり図3におけるX−X矢視断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における減圧収納袋の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における減圧収納袋の要部拡大平面図であり図2におけるY部拡大平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における減圧収納袋内の空気を排気する動作を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態における減圧収納袋内の空気を排気した後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態における排気弁及び減圧収納袋の構造を示す断面図であり図3におけるX−X矢視断面図、図2は本発明の実施の形態における減圧収納袋の斜視図、図3は本発明の実施の形態における減圧収納袋の要部拡大平面図であり図2におけるY部拡大平面図である。
【0016】
図において、10は本実施の形態における減圧収納袋であり、略矩(く)形に形成された2枚のフィルム状の袋本体11を重ね合わせ、矩形の三辺を接着、熱融着、超音波溶着等の方法によって気密に固着することにより形成された袋状部材であり、排気弁20を有する。なお、12は2枚の袋本体11を重ね合わせて気密に固着することによって形成された閉止縁部であり、略矩形の減圧収納袋10の閉じた三辺に相当する。また、図2に示されるように、2枚の袋本体11の残り一辺は、固着されておらず開閉可能な出入口13となっている。該出入口13には、開閉機構としてのチャック部14が配設され、該チャック部14を操作することによって、出入口13を開放及び閉止させることができる。
【0017】
前記減圧収納袋10は、いかなる用途にも使用することができ、その内部に収納される対象物である収納物31は、いかなる種類の物であってもよいが、好適には、ある程度の柔軟性を備える物である。本実施の形態においては、説明の都合上、前記収納物31が肌着、セーター等の衣類や毛布、布団、シーツ等の寝具であり、前記収納物31を内部に収納した状態で減圧収納袋10内の空気を吸引して排出し、前記収納物31を圧縮減容して嵩を小さくした状態で保管するために前記減圧収納袋10を使用する場合についてのみ説明することとする。
【0018】
なお、本実施の形態において、減圧収納袋10及び排気弁20における各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記減圧収納袋10及び排気弁20における各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0019】
そして、前記袋本体11は、厚さが、例えば、10〜60〔μm〕程度の柔軟性を備える樹脂フィルムから成り、典型的には、内部の収納物31を外側から視認することができるように、透明又は半透明であるが、不透明であってもよい。また、前記袋本体11は、ガスバリア性を備えることが望ましく、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等から成る複数の樹脂層をラミネートして成る基材の表面にアルミニウムを蒸着したフィルムや、シリカを蒸着したフィルムであってもよいし、ガスバリア性が良好な二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等のフィルム、又は、該フィルムを含むラミネートフィルムであってもよい。
【0020】
前記チャック部14は、袋本体11と同様の材質の樹脂フィルムから成る帯状の部材であって、2枚の袋本体11の各々における出入口13の側縁に一体的に接続された一対の帯状基部14aと、各帯状基部14aの互いに対向する面に形成され、帯状基部14aの長手方向に延在する咬(か)み合い条部14bとを備える。一方の帯状基部14aに形成された咬み合い条部14bは連続する凸条の部材であり、他方の帯状基部14aに形成された咬み合い条部14bは連続する凹溝を備え、前記凸条と凹溝とが咬み合うことによって、帯状基部14a同士が気密に結合し、チャック部14が閉じ、出入口13が閉止される。これにより、減圧収納袋10の内部は、外気、つまり、外部の空気から気密に遮断された状態となる。
【0021】
なお、図2に示される例においては、咬み合い条部14bが2本並んで形成されているが、必ずしも2本である必要はなく、1本であっても、3本以上であってもよい。また、咬み合い条部14bを咬み合わせてチャック部14を閉止する場合には、スライダ部材15を使用すると、容易に、かつ、確実にチャック部14を閉止することができるが、必ずしも、スライダ部材15を使用する必要はない。
【0022】
図1に示されるように、2枚の袋本体11のうちの一方には、袋本体11を厚さ方向に貫通する排気孔としての第3排気孔17が形成され、該第3排気孔17に対応する位置に、排気弁20が配設されている。前記第3排気孔17は、例えば、直径が10〜20〔mm〕程度の円形の孔(あな)であることが望ましいが、円形以外の形状であってもよく、大きさも適宜変更することができる。また、第3排気孔17は、必ずしも、前記袋本体11の中央付近に形成される必要はなく、いかなる位置に形成されてもよいが、周縁からはある程度離れた位置に形成されることが望ましい。
【0023】
そして、前記排気弁20は、プレート状の基体21と、該基体21に取り付けられたフィルム状のダイヤフラム25とを有し、減圧収納袋10内部の空気を第3排気孔17を通して外部に排出するとともに、外気が第3排気孔17を通して減圧収納袋10内に流入することを阻止する一方向弁として機能する。なお、図1においては、袋本体11と基体21とが離間し、かつ、基体21とダイヤフラム25とが離間しているように描かれているが、実際には、袋本体11の表面11aと基体21の裏面21bとは密着し、かつ、基体21の表面21aとダイヤフラム25の裏面25bとは密着している。
【0024】
前記基体21には該基体21を厚さ方向に貫通する排気孔としての第1排気孔22が形成され、前記基体21は、第1排気孔22が第3排気孔17と対応するように、すなわち、重なるように袋本体11の表面11aに取り付けられている。前記第1排気孔22は、いかなる形状のいかなる大きさの孔であってもよいが、前記第3排気孔17と同一形状及び同一径の孔であることが望ましく、かつ、前記基体21は、第1排気孔22の中心と第3排気孔17の中心とが一致する位置に取り付けられことが望ましい。なお、前記第1排気孔22は、必ずしも、前記基体21の中央付近に形成される必要はなく、いかなる位置に形成されてもよいが、周縁からはある程度離れた位置に形成されることが望ましい。
【0025】
また、前記基体21の平面形状は、図3に示される例においては、円形であるが、必ずしも円形である必要はなく、半円形であっても、楕(だ)円形であっても、三角形であっても、四角形であっても、五角形以上の多角形であってもよく、いかなる形状であってもよい。前記基体21は、排気弁20の弁座として機能する部材であり、厚さが、例えば、0.2〜3〔mm〕程度の剛性を備える板部材であるが、ある程度の柔軟性を備え、弾性的に変形可能な部材であってもよい。さらに、前記基体21は、例えば、アルミニウム、鋼等の金属、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネイト等の樹脂、ガラス等のセラミクス、繊維等を含む複合材(コンポジット)等から成るが、空気を透過しない材質であれば、いかなる種類の材質から成るものであってもよい。
【0026】
そして、前記基体21の裏面21bは、接着、熱融着、超音波溶着等の方法によって、袋本体11の表面11aに気密に固着される。つまり、外気が、基体21の裏面21bと袋本体11の表面11aの間を通って、第1排気孔22及び第3排気孔17内に流入することがないように、基体21は袋本体11に固着される。典型的には、前記基体21の裏面21b及び袋本体11の表面11aは、ともに、平滑面である。なお、基体21の裏面21bと袋本体11の表面11aとが気密に密着するのであれば、通しボルト、リベット等の固着部材を使用して、基体21を袋本体11に固着してもよい。
【0027】
また、前記ダイヤフラム25には該ダイヤフラム25を厚さ方向に貫通する排気孔としての第2排気孔26が形成され、前記ダイヤフラム25は、第2排気孔26が第1排気孔22と対応しないように、すなわち、重ならないように基体21の表面21aに剥離可能に貼付されている。つまり、図3に示されるように、第2排気孔26は、第1排気孔22とオーバーラップしないように配設されている。前記第2排気孔26は、いかなる形状の孔であってもよいが、円形の孔であることが望ましい。
【0028】
図3に示される例において、前記第2排気孔26の数は、4つであるが、適宜変更することができ、例えば、1つであってもよく、2つ又は3つであってもよく、さらに、5つ以上であってもよいが、複数であることが望ましい。また、各第2排気孔26は、例えば、直径が0.5〜5〔mm〕程度の大きさであることが望ましいが、大きさは適宜変更することができる。さらに、前記第2排気孔26は、図3に示されるように、上から観て、第1排気孔22の周辺に均等に配置されることが望ましい。なお、第1排気孔22の周縁から第2排気孔26までの距離は、例えば、1〜4〔mm〕程度であるが、適宜変更することができる。
【0029】
もっとも、本実施の形態における減圧収納袋10は、主として一般家庭において使用されることを想定し、そのため、減圧収納袋10内の空気を吸引して排出するための吸引装置としては、一般的な家庭用電気掃除機の使用が想定されている。具体的には、図1に示されるように、家庭用電気掃除機の備える吸引筒35の先端をダイヤフラム25の表面25aに押し当てた状態で、減圧収納袋10内の空気を吸引することが想定されている。そのため、すべての第2排気孔26は、図3に示されるように、我が国での平均的な家庭用電気掃除機の吸引筒35における先端面内縁の位置を示す仮想円35aの内側に位置することが望ましい。なお、前記仮想円35aの径は、30〔mm〕程度と考えられる。また、図3に示される例において、前記仮想円35aは、その中心が第1排気孔22の中心と一致するように描かれている。つまり、前記吸引筒35の先端が、その先端面内縁の中心が第1排気孔22の中心と一致するように、ダイヤフラム25の表面25aに押し当てられるものとして、説明されている。
【0030】
そして、前記ダイヤフラム25は、排気弁20の弁体として機能する部材であり、厚さが、例えば、10〜60〔μm〕程度の柔軟性を備える樹脂フィルムから成り、典型的には、第1排気孔22の位置を外側から視認することができるように、透明又は半透明であるが、不透明であってもよい。また、前記ダイヤフラム25は、ガスバリア性を備えることが望ましく、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等から成る複数の樹脂層をラミネートして成る基材の表面にアルミニウムを蒸着したフィルムや、シリカを蒸着したフィルムであってもよいし、ガスバリア性が良好な二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等のフィルム、又は、該フィルムを含むラミネートフィルムであってもよい。
【0031】
また、前記ダイヤフラム25の平面形状は、図3に示される例においては、円形であるが、必ずしも円形である必要はなく、半円形であっても、楕円形であっても、三角形であっても、四角形であっても、五角形以上の多角形であってもよく、いかなる形状であってもよいが、前記基体21の平面形状と対応するものであることが望ましい。なお、前記ダイヤフラム25の外形寸法は、図1及び3に示されるように、前記基体21の外形寸法とほぼ同様、又は、少し大きい程度であることが望ましい。
【0032】
さらに、前記ダイヤフラム25の裏面25bは、基体21の表面21aに剥離可能に貼付されるために、弱い粘着性、すなわち、微粘着性を備え、かつ、再貼付性及び再剥離性を備える。すなわち、前記ダイヤフラム25の裏面25bは、基体21の表面21aへの貼付及び剥離を何度も繰り返して行うことができるものである。例えば、ダイヤフラム25の裏面25bをそれ自体が接着性又は粘着性を備えるポリ塩化ビニリデンフィルムで形成することによって、微粘着性を備え、かつ、再貼付性及び再剥離性を備える裏面25bを得ることができる。また、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等を含む接着剤の層をダイヤフラム25の裏面25bに形成することによって、微粘着性を備え、かつ、再貼付性及び再剥離性を備える裏面25bを得ることができる。
【0033】
前記ダイヤフラム25の裏面25bの微粘着性は、吸引筒35の先端を表面25aに押し当てた状態で家庭用電気掃除機による吸引を行った場合に、吸引筒35の先端に対応する部分の裏面25bが基体21の表面21aから離間して前記裏面25bと基体21の表面21aとの間を空気が流通可能となり、前記家庭用電気掃除機による吸引を停止すると、吸引筒35の先端に対応する部分の裏面25bが基体21の表面21aに再び粘着して前記裏面25bと基体21の表面21aとの間を空気が流通不能となる程度のものである。なお、前記ダイヤフラム25の周縁における裏面25bは、接着、熱融着、超音波溶着等の方法によって基体21の表面21aに気密に固着されていてもよい。つまり、前記ダイヤフラム25の一部は、基体21に対して剥離不能に取り付けられていてもよい。これにより、家庭用電気掃除機の吸引力が強くても、ダイヤフラム25が基体21から外れてしまうことがなく、外気が、ダイヤフラム25の裏面25bと基体21の表面21aの間を通って、第1排気孔22及び第2排気孔26内に流入することがない。
【0034】
また、前記基体21の表面21aは、平滑面であることが望ましい。これにより、家庭用電気掃除機による吸引を行わない状態、すなわち、減圧収納袋10内部の空気の排気を行わない状態では、ダイヤフラム25の裏面25bが基体21の表面21aと気密に密着することができ、ダイヤフラム25の裏面25bと基体21の表面21aとの間の空気の流通を確実に防止することができる。また、ダイヤフラム25の表面25aも平滑面であることが望ましい。これにより、家庭用電気掃除機による吸引を行う場合、吸引筒35の先端がダイヤフラム25の表面25aに密着することができ、吸引効率が高くなる。
【0035】
次に、前記構成の減圧収納袋10の使用方法について説明する。
【0036】
図4は本発明の実施の形態における減圧収納袋内の空気を排気する動作を示す斜視図、図5は本発明の実施の形態における減圧収納袋内の空気を排気した後の状態を示す斜視図である。
【0037】
まず、減圧収納袋10の使用者は、減圧収納袋10のチャック部14を開いて出入口13を開放する。続いて、使用者は、前記出入口13から収納物31を減圧収納袋10内に収納する。図に示される例において、収納物31は寝具としての布団であり、折り畳んで重ねた状態で減圧収納袋10内に収納されている。
【0038】
続いて、使用者は、チャック部14を閉じて出入口13を閉止する。なお、この際にスライダ部材15を使用すると、容易に、かつ、確実にチャック部14を閉止することができる。これにより、減圧収納袋10の内部は、外気から気密に遮断された状態となる。
【0039】
続いて、使用者は、家庭用電気掃除機を用意し、図4に示されるように、その吸引筒35の先端を減圧収納袋10の袋本体11に配設された排気弁20の表面に位置するダイヤフラム25の表面25aに押し当てる。なお、前記吸引筒35は、可撓(とう)性を備える吸引ホース36の先端に接続され、吸引ホース36の基端は図示されない家庭用電気掃除機の本体に接続されている。また、一般的な家庭用電気掃除機においては、吸引筒35の先端に床、畳等の清掃に適した形状の開口を備える吸引ヘッドが着脱可能に取り付けられるが、ここでは、このような吸引ヘッドを取り外した状態で使用する。さらに、吸引筒35の先端に延長用吸引筒が着脱可能に取り付けられる場合には、延長用吸引筒も取り外すことが望ましい。
【0040】
また、前記吸引筒35の先端から電源ライン等を接続するための端子等が突出している場合、前記吸引筒35の先端面内縁の径が通常の値である30〔mm〕程度よりも著しく大きかったり小さかったりする場合、前記吸引筒35の先端面内縁の形状が通常の円形でなく、矩形等の形状である場合等には、先端が平坦(たん)で、先端面内縁の形状が円形であり、かつ、その径が30〔mm〕程度である図示されない筒状のアダプタを前記吸引筒35の先端に取り付け、前記アダプタの先端を排気弁20の表面に位置するダイヤフラム25の表面25aに押し当てることが望ましい。
【0041】
続いて、使用者が前記家庭用電気掃除機を作動させ吸引を開始させると、吸引筒35の先端に対応する部分のダイヤフラム25は、前記吸引筒35から受ける吸引力により吸引されて基体21から離間する方向(図1における上方向)に変位させられる。これにより、吸引筒35の先端に対応する部分のダイヤフラム25の裏面25bが基体21の表面21aから離間して前記ダイヤフラム25の裏面25bと基体21の表面21aとの間を空気が流通可能となる。すなわち、排気弁20は開状態となる。これにより、減圧収納袋10内の空気は、第3排気孔17、第1排気孔22、離間してダイヤフラム25の裏面25bと基体21の表面21aとの間、及び、第2排気孔26を通って、吸引されて排気される。なお、ダイヤフラム25の裏面25bが基体21の表面21aから離間する距離は、極めて微小であってもよい。
【0042】
そして、図5に示されるように、減圧収納袋10内の空気が十分に排気されて減圧状態又は真空状態となり、収納物31が十分に圧縮減容されると、使用者は前記家庭用電気掃除機を停止させる。すると、吸引筒35の吸引力が消滅するので、前記吸引筒35の先端に対応する部分のダイヤフラム25は元の状態に復帰する。これにより、吸引筒35の先端に対応する部分のダイヤフラム25の裏面25bが基体21の表面21aに再び密着し、前記ダイヤフラム25の裏面25bと基体21の表面21aとの間は空気が流通不能となる。すなわち、排気弁20は閉状態に復帰する。これにより、減圧収納袋10の内部は、外気から気密に遮断された状態となるので、減圧状態又は真空状態が維持される。また、減圧収納袋10内の圧力が外気の圧力よりも低くなるので、圧力差によってダイヤフラム25が基体21に押し付けられ、ダイヤフラム25の裏面25bと基体21の表面21aとの密着性が高まり、排気弁20の閉状態が確実に維持される。
【0043】
したがって、収納物31を圧縮減容して嵩を小さくした状態で保管することができ、家庭内の収納スペースを極めて有効に利用することができる。また、減圧収納袋10の内部が減圧状態又は真空状態に維持されるので、防カビ、防虫等の効果も期待することができる。
【0044】
なお、吸引筒35の先端をダイヤフラム25の表面25aに押し当てる際には、吸引筒35における先端面内縁が図3に示されるような仮想円35aとほぼ一致するようにすることが望ましい。これにより、すべての第2排気孔26が吸引筒35における先端面内縁の内側に位置することとなるので、すべての第2排気孔26を通して減圧収納袋10内の空気が吸引筒35によって吸引されることとなる。
【0045】
そのため、ダイヤフラム25が透明又は半透明である場合には基体21の表面21aに、また、ダイヤフラム25が不透明である場合にはダイヤフラム25の表面25aに、前記仮想円35aと同様の円を、印刷等によって描画しておくことが望ましい。これにより、使用者は、描画された円を目標として、吸引筒35の先端をダイヤフラム25の表面25aの適切な位置に、容易、かつ、正確に押し当てることが可能となる。
【0046】
もっとも、吸引筒35の位置が大きくずれてしまい、その先端面内縁が仮想円35aと一致しなくても、第1排気孔22の一部分及び第2排気孔26のうちのいくつかが、前記先端面内縁の内側に位置していればよい。この場合、前記先端面内縁の内側に位置する第2排気孔26のみを通して減圧収納袋10内の空気が吸引筒35によって吸引されることとなる。また、前記先端面内縁の内側に位置しない第2排気孔26の周囲のダイヤフラム25は、吸引されないのであるから、その裏面25bが基体21の表面21aから離間することがない。したがって、前記先端面内縁の内側に位置しない第2排気孔26を通して、外気が減圧収納袋10内又は吸引筒35に流入することがない。
【0047】
特に、図3に示されるように、複数の第2排気孔26が第1排気孔22の周辺に均等に配置されている場合、吸引筒35の位置がいずれの方向にずれても、第2排気孔26のうちのいくつかが、前記吸引筒35の先端面内縁の内側に位置することとなる。したがって、使用者による吸引筒35の操作にばらつきがあっても、確実に減圧収納袋10内の空気を排気することができる。
【0048】
このように、本実施の形態においては、排気弁20は、第1排気孔22を備える基体21と、第2排気孔26を備えるダイヤフラム25とを有し、減圧収納袋10に取り付けられ、減圧収納袋10内の空気を排出し、減圧収納袋10内への空気の流入を阻止する一方向弁として機能する。そして、基体21は、第1排気孔22が厚さ方向に貫通するように形成されたプレート状の部材であり、第1排気孔22が減圧収納袋10の袋本体11に形成された第3排気孔17と重なるように袋本体11の表面11aに固着され、ダイヤフラム25は、第2排気孔26が厚さ方向に貫通するように形成されたフィルム状の部材であり、第2排気孔26が第1排気孔22と重ならないように基体21の表面21aに剥離可能に貼付され、ダイヤフラム25の表面25aが吸引されると、第2排気孔26と第1排気孔22とが連通し、表面25aが吸引されないと第2排気孔26と第1排気孔22との間が遮断される。
【0049】
これにより、軽量で厚さ寸法が微小であり、構成が簡素化で、コストが低く、耐久性が高く、信頼性の高い一方向弁を提供することができる。
【0050】
また、ダイヤフラム25の裏面25bは、微粘着性を備え、かつ、再貼付性及び再剥離性を備える。したがって、長期間に亘(わた)って繰り返し使用することができる。
【0051】
さらに、第2排気孔26は、複数であり、第1排気孔22の周辺に均等に配置される。したがって、使用者による吸引筒35の操作にばらつきがあっても、確実に減圧収納袋10内の空気を排気することができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、排気弁及びそれを有する減圧収納袋に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 減圧収納袋
11 袋本体
11a、21a、25a 表面
17 第3排気孔
20 排気弁
21 基体
21b、25b 裏面
22 第1排気孔
25 ダイヤフラム
26 第2排気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1排気孔を備える基体と、第2排気孔を備えるダイヤフラムとを有し、減圧収納袋に取り付けられ、該減圧収納袋内の空気を排出し、前記減圧収納袋内への空気の流入を阻止する一方向弁として機能する排気弁であって、
(b)前記基体は、前記第1排気孔が厚さ方向に貫通するように形成されたプレート状の部材であり、前記第1排気孔が前記減圧収納袋の袋本体に形成された第3排気孔と重なるように前記袋本体の表面に固着され、
(c)前記ダイヤフラムは、前記第2排気孔が厚さ方向に貫通するように形成されたフィルム状の部材であり、前記第2排気孔が前記第1排気孔と重ならないように前記基体の表面に剥離可能に貼付され、
(d)前記ダイヤフラムの表面が吸引されると、前記第2排気孔と前記第1排気孔とが連通し、前記表面が吸引されないと前記第2排気孔と前記第1排気孔との間が遮断されることを特徴とする排気弁。
【請求項2】
前記ダイヤフラムの裏面は、微粘着性を備え、かつ、再貼付性及び再剥離性を備える請求項1に記載の排気弁。
【請求項3】
前記第2排気孔は、複数であり、前記第1排気孔の周辺に均等に配置される請求項1又は2に記載の排気弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気弁を有する減圧収納袋であって、
第3排気孔が厚さ方向に貫通するように形成された樹脂フィルムから成る袋本体を有し、
前記排気弁は、前記袋本体の表面における第3排気孔に対応する位置に取り付けられる減圧収納袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−102142(P2011−102142A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258180(P2009−258180)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(597006861)株式会社オリエント (10)
【Fターム(参考)】